説明

清掃用器具

【課題】 製造工数的、設備的あるいは製品コストに有利で、汎用性のある清掃用器具を提供する。
【解決手段】 柄部3が連結される扁平な矩形箱状をした保持部5と、この保持部5の下面に取付けられた弾性体20と、を有する清掃用ヘッド部4を備え、弾性体20を覆った繊維布製の拭き材6を保持部5に着脱自在に取り付けてなる清掃用器具1において、弾性体20を、保持部5の下面に着脱自在に取り付けられかつ保持部5と同様の矩形状をした基板部材21と、基板部材21の表面から突出されかつ扁平な板状に形成された弾性変形可能な多数の弾性突出片23と、から構成し、弾性突出片23を、弾性突出片23の扁平な面が基板部材21の長手方向に沿って整列するように配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維布製の拭き材を清掃用ヘッド部に脱着自在に装着し、床面などの清掃を行なうと共に、箒代わりとしても使用できる清掃用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から清掃用器具として、柄付の清掃用ヘッド部に不織布製の拭き材を脱着自在に取付け、これを床面に沿って移動させることにより床面のゴミや塵を拭き材に付着させて収集する、いわゆる「掃除シート」と称されるものが使用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、清掃用ヘッド部が、扁平な矩形箱状をした柄付の保持部と、この保持部の下面部分に取付けられた弾性体とから構成され、この弾性体の表面に半球状に膨出した凸部を複数形成したものが開示されている。この清掃用器具は、床面あるいは絨毯などの清掃に当り、弾性体の表面を不織布製の拭き材で覆い、清掃用ヘッド部を清掃対象である床面に沿って移動させるとき、この清掃対象の表面が平坦でない場合には弾性体が変形し、あるいは絨毯のように複雑な凹凸状となっている場合には弾性体の表面が長い毛足間に食い込むことにより清掃可能としたものである。
【0004】
下記特許文献2には、前記特許文献1と略同様の構成を有する清掃用器具であるが、保持部の下面部分に発泡ウレタンからなる板状の弾性体を設け、この弾性体の表面を中凸状に形成すると共に、この表面に極めて多数の小さな凸部(各凸部は直径が1mm〜2mm、高さが1.3mm〜1.8mm)を形成したものであり、特に、この凸部は、頂部にくぼみを有する半球状凸部とし、このくぼみにより凸部自体が変形容易なものとされており、床面などに対する前後方向への押し引きあるいは左右方向への移動時にも半球状凸部が容易に変形し、表面の不織布製の拭き材との間に隙間を生じさせることなく、清掃が可能となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-140650号公報
【特許文献2】特許第3027345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、清掃用ヘッド部に弾性体を設けると、床面などとの接触時に弾性感を生じさせ、また、弾性体と拭き材との間に隙間のないピンと張った状態にすることができ、好ましいが、この弾性体の床面接触側の面がフラットであれば、中央部分の当りが不十分になり、全面が均一に当る清掃ができず、外周部分のみでの清掃となる傾向がある。
【0007】
特許文献2のように、弾性体を中凸状に形成すれば、このような中央部分の当りが不十分になる点を防止できるが、弾性体成型用の金型などの設備が高価になり、製品コストに不利となる。しかも、弾性体に極めて小さな半球状凸部を多数形成すれば、成形型などがさらにコスト的に不利となることは否めない。
【0008】
特に、清掃用器具は、一般に使用に当たり多機能を有していると利便性があり、好ましいものであるが、特許文献1のように弾性体に半球状凸部を形成したものでは、細長い隙間などに入り込んだゴミなどを掻き出すことはできず、箒としての使用はできない。また、特許文献2のように、弾性体自体を発泡ウレタンから構成しても、極めて小さな半球状凸部であれば、凸部自体の変形代は小さく、凸部自体が実質的に弾性変形して被清掃用対象に当るということはなく、例えば、清掃対象が傷つき易い部分を有するものや小さな凹凸変形部分のあるものの場合には、実質的に使用することができず、汎用性に乏しいものとなっている。
【0009】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたもので、製造工数的、設備的あるいは製品コストに有利で、汎用性のある清掃用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る清掃用器具は、柄部が連結される扁平な矩形箱状をした保持部と、この保持部の下面に取付けられた弾性体と、を有する清掃用ヘッド部を備え、前記弾性体を覆った繊維布製の拭き材を前記保持部に着脱自在に取り付けてなる清掃用器具において、前記弾性体を、前記保持部の下面に着脱自在に取り付けられかつ当該保持部と同様の矩形状をした基板部材と、当該基板部材の表面から突出されかつ扁平な板状に形成された弾性変形可能な多数の弾性突出片と、から構成し、前記弾性突出片を、当該弾性突出片の扁平な面が前記基板部材の長手方向に沿って整列するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、扁平な板状をした弾性変形可能な多数の弾性突出片を基板部材から突出させ、前記弾性突出片を基板部材の長手方向に沿って整列配置したので、繊維布製の拭き材を取付けない場合には、扁平な板状の弾性突出片を利用して細長い隙間などに入り込んだゴミなどを容易に掻き出すことができ、また、弾性突出片自体が弾性変形可能であるため、この点を利用して箒としても使用でき、弾性突出片の突出長を大きくし変形代を大きなものにすれば、被清掃対象が傷つき易い部分や凹凸のあるものであっても容易に清掃することができる。さらに、弾性突出片を覆うように拭き材を取付けると、弾性突出片と拭き材との間に隙間を生じることなく、比較的弾性幅の大きな掃除シートとして使用することができる。したがって、いわゆる「掃除シート」のみでなく箒としても使用でき、汎用性のある清掃用器具となる。しかも、個々の弾性突出片は、扁平な板状という比較的簡単な形状であるため、成形型も安価となり、製造工数的、設備的あるいは製品コストに有利となる。
【0012】
請求項2の発明では、弾性突出片を、保持部の長手方向には等間隔、長手方向に直交する方向には千鳥状配置でかつ前後の弾性突出片の一部が重なり合うようにしたので、箒として使用する場合には、弾性突出片相互間の隙間からゴミなどが通過するおそれがなく、ごみ収集能力が向上する。
【0013】
請求項3の発明では、保持部の下面端部に枕状突部を形成し、この枕状突部より突出するように弾性突出片を設けたので、拭き材で覆った場合に弾性突出片との間に隙間を生じることなくピンと張った状態にすることができるのみでなく、拭き材が中高形状に保持され、中央部分の当りが不十分になる傾向が防止され、全面が均一に当る掃除シートとなる。
【0014】
請求項4の発明では、前記弾性突出片を基板部材と合成樹脂により一体的に成形したので、清掃用ヘッド部から弾性体部分を取り外すと、これを洗うことができ、清潔な清掃用器具として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る清掃用器具を示す概略斜視図である。
【図2】同清掃用器具の清掃用ヘッド部の平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う断面図である。
【図5】同清掃用器具の清掃用ヘッド部を底面側から見た概略斜視図である。
【図6】同清掃用ヘッド部における弾性突出片の配置状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本実施形態の清掃用器具1は、図1に示すように、自在継手2を介して柄部3が連結された清掃用ヘッド部4を有している。この清掃用ヘッド部4は、図2に示すように、拭き材6を保持する保持部5と、保持部5の下面に取付けられた弾性体20(図3参照)と、弾性体20を覆うように着脱自在に取り付けられた不織布などの繊維布製の拭き材6と、を有している。
【0018】
保持部5は、図2に示すように、上板7、側板8及び底板9から構成され、合成樹脂製の扁平な矩形箱状をしたもので、上板7には切り込みKを入れることにより形成された、拭き材6を咬持する咬持部10(図2参照)が4箇所設けられ、拭き材6の端部が指などにより咬持部10から内部空間11内に押し込まれ、弾性体20を覆うように取り付けられる。
【0019】
側板8は、図3に示すように、保持部5の長手方向に伸延するように設けられた側板8aと、この長手方向に直交する方向に伸延するように設けられた側板8bと、から構成され、これら両側板8a、8bと一体的に底板9が設けられている。底板9は、基本的は平坦な板材より構成されているが、保持部5の長手方向側端部には、側板8aと一体的に形成された枕状突部12が設けられ、保持部5の長手方向に直交する方向側端部には、図4に示すように、突起部13が設けられている。
【0020】
なお、枕状突部12は、図3に示すように、底板9を越えて突出するように設けられ、拭き材6を取付けたとき、これに当接しきっちりと保持するようになっている。
【0021】
このように枕状突部12と突起部13を底板9に設けると、底板9の下面には平坦な面を有する凹所が形成されることになるので、この凹所内に弾性体20を取付けている。
【0022】
特に、本実施形態の弾性体20は、図3に示すように、底板9の下面に着脱自在に取り付けられ、保持部5と同様の矩形状をしている基板部材21と、基板部材21の表面から下方に突出されかつ扁平な板状に形成された弾性変形可能な多数の弾性突出片23とから構成され、これらは天然ゴムあるいは合成ゴムなどの弾性材料により一体的に構成されている。
【0023】
基板部材21は、図3に示すように、上面に突起部材22が設けられ、底板9に開設された通孔Oに突起部材22を挿通し、突起部材22の頂部に設けられた大径頭部22aが通孔Oに係合することにより、底板9に着脱自在に取り付けられている。
【0024】
弾性突出片23は、図3〜図6に示すように、個々には扁平な矩形短冊状をしたもので、図6に示すように、保持部5若しくは基板部材21の長手方向に等間隔に整列配置され、保持部5若しくは基板部材21の長手方向に直交する方向には千鳥状に整列配置されかつ前後の弾性突出片23の一部が重なり合うように配置されている。
【0025】
ここにおいて、本実施形態における基板部材21及び弾性突出片23の大きさに関し、これを例示的に示すと、基板部材21に関しては、図6に示すように、長手方向の長さLが約22cm〜23cm、幅Wが約7cm〜8cmであり、個々の弾性突出片23に関しては、長手方向の長さaが10mm、相互間の間隔bが5mm、前記長手方向に直交する方向の間隔bが5mm、肉厚tが1mm、高さH(図3参照)が15mm、枕状突部12からの突出長hが7mm程度であり、弾性突出片23が基板部材21略全面に均等に配置されている。
【0026】
次に作用を説明する。
【0027】
まず、本実施形態の清掃用器具は、いわゆる「掃除シート」として使用することができる。この場合は、清掃用ヘッド部4の弾性体20の下面側を拭き材6で覆う。例えば、拭き材6の一端部を指などにより把持し、これを咬持部10内に押し込み、拭き材6の一端部側を清掃用ヘッド部4に固定する。次に、拭き材6の他端部を指などにより把持し、清掃用ヘッド部4の下面から突出している弾性突出片23を覆い、その他端部を咬持部10内に押し込み、固定する。
【0028】
このようにして取り付けられた拭き材6は、る。拭き材6は、長手方向側端部の側板8a及び枕状突部12に沿った状態になり、弾性突出片23を覆った部分は弾性突出片23の弾性によりぴんと張った状態となる。したがって、清掃用ヘッド部4を床面に設置すると、弾性が手に伝わり使用感の良いものとなり、これを床面に沿って移動すると、軽快にすべり移動させることができる。特に、拭き材6の長手方向側端部は、枕状突部12に沿い、弾性突出片23の下面に至るので、図3に示すように、中高状になり、弾性突出片23の弾性変形の影響もあって、清掃用ヘッド部4の下面中央部が床面に当らないという状態が生じるおそれはない。
【0029】
したがって、比較的広いフロアであっても快適に清掃作業を行うことができる。また、弾性突出片23は、その弾性により拭き材6を保持しているので、拭き材6は大きな弾性を有しているので、比較的傷つき易いものの清掃であっても、問題なく行うことができる。
【0030】
このようにして清掃が完了すると、清掃用ヘッド部4から拭き材6を取り外すが、このとき、清掃用ヘッド部4から基板部材21も取り外すと、これを洗浄することもでき、清掃用ヘッド部4全体を清潔に保存できる。
【0031】
次に、フロアにごみや埃などが存在すれば、清掃用ヘッド部4に拭き材6を取付けず、清掃用ヘッド部4の下面から多数の弾性突出片23が露出した状態で掃き掃除を行うこともできる。つまり、本実施形態の清掃用器具1を箒として使用することもできる。
【0032】
清掃用ヘッド部4に拭き材6を取付けず、清掃用ヘッド部4から弾性突出片23を露出した状態のままであれば、弾性突出片23が清掃用ヘッド部4の下面から突出しているので、箒代わりとして使用することができる。フロアにごみや埃などの長辺側を利用すれば、比較的広範囲からごみや埃などを集めることができ、この場合、清掃用ヘッド部4では、弾性突出片23が長手方向に直交する方向に千鳥状配置とされ、前後の弾性突出片23の一部が重なり合うように配置されているので、弾性突出片23相互間の隙間からごみや埃などは逃げ出すことなく効率的にごみなどの収集ができる。
【0033】
また、箒として使用する場合であっても、板敷きのフロアのように板相互間に細長い隙間が存在し、この隙間にゴミなどが入り込んだ状態の場合には、清掃用ヘッド部4の長手方向に直交する方向に配置されている弾性突出片23を板相互間の隙間に沿って移動させると、この隙間からゴミなどを容易に掻き出すことができる。
【0034】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した実施形態は、弾性突出片23が保持部4の長手方向に直交する方向には千鳥状配置でかつ前後の弾性突出片23の一部が重なり合うように配置されているが、これのみでなく、全ての弾性突出片23が扁平な面が保持部5の長手方向に沿って配置された状態であっても良い。また、基板部材21から突出されている弾性突出片23の突出長さを適宜調節することもでき、長い突出長の弾性突出片23であれば、箒性能が高く、傷つき易い被清掃対象であっても容易に清掃することができる。さらに、扁平な面が保持部5の長手方向に沿って配置された弾性突出片23自体にある程度の剛性を付与するために、全てあるいは適数個の弾性突出片23が支柱を備えた、いわゆる「十」字形状となるように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、箒のような掻き出し機能と、いわゆる「掃除シート」のような機能とを備えた清掃用器具して利用できる。
【符号の説明】
【0036】
3…柄部、
4…清掃用ヘッド部、
5…保持部、
6…拭き材、
12…枕状突部、
20…弾性体、
21…基板部材、
23…弾性突出片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部が連結される扁平な矩形箱状をした保持部と、この保持部の下面に取付けられた弾性体と、を有する清掃用ヘッド部を備え、前記弾性体を覆った繊維布製の拭き材を前記保持部に着脱自在に取り付けてなる清掃用器具において、
前記弾性体を、前記保持部の下面に着脱自在に取り付けられかつ当該保持部と同様の矩形状をした基板部材と、当該基板部材の表面から突出されかつ扁平な板状に形成された弾性変形可能な多数の弾性突出片と、から構成し、前記弾性突出片を、当該弾性突出片の扁平な面が前記基板部材の長手方向に沿って整列するように配置したことを特徴とする清掃用器具。
【請求項2】
前記弾性突出片は、前記保持部の長手方向には等間隔の配置とし、前記保持部の長手方向に直交する方向には千鳥状配置でかつ前後の弾性突出片の一部が重なり合うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の清掃用器具。
【請求項3】
前記保持部は、当該保持部の下面であってかつ長手方向の端部に沿って枕状突部が形成され、前記弾性突出片が前記枕状突部より突出するように形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃用器具。
【請求項4】
前記弾性突出片は、前記基板部材と合成樹脂により一体的に成形したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の清掃用器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate