説明

清掃装置および画像形成装置

【課題】 長期に亘って感光体表面にトナーおよびタルクなどの被膜を形成することなく、またキャリアなどによる損傷を防止して、良好なクリーニング性を維持し、均一で高品位な画像を得ることが可能な清掃装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 電極部材264は、クリーニングブラシ支持体262の半径方向の外側に延在するようにブラシ繊維268が設けられるクリーニングブラシ261に、対向面269を対向させて近接して配置される。電源265が電極部材264に予め定める周波数および予め定める振幅を有する電圧を印加すると、電極部材264とクリーニングブラシ261との間隙には振動電界が形成される。この振動電界によって、ブラシ繊維268が振動し、ブラシ繊維268に当接する感光体21に残留する現像剤が回収される。予め定める周波数をブラシ繊維268の固有振動数にすると、ブラシ繊維268は共振し、より大きく振動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体表面に残留したトナー等の付着物を除去する清掃装置および画像形成装置に関し、より詳細には、複写機、レーザプリンタおよびファクシミリなどの電子写真方式を用いる分野で使用される画像形成装置において、感光体上に形成された静電潜像をトナー等によって現像し、現像したトナー像を転写体に転写した後、感光体表面に残留したトナー等の付着物を除去する清掃装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる複写機およびプリンタなどの画像形成装置は、帯電させた感光体に対して、取得した画像データに基づいて露光することによって、感光体上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像にトナー(以下「現像剤」ともいう)を供給することによってトナー像を形成する。感光体上に形成されたトナー像は、転写材に転写されて定着されることによって、転写材に画像が形成される。
【0003】
画像形成装置は、感光体上に形成されたトナー像を転写材へ転写した後、感光体上に残留している現像剤などを逐次除去して回収するクリーニング装置を備えている。繰り返し行われるトナー像の形成処理に際して、感光体上にトナーが残留していると、感光体表面を均一に帯電させることが困難となるため、残留トナーを確実に除去する必要がある。
【0004】
清掃装置は、感光体表面に接触して、感光体表面に残留したトナーを回収するクリーニングブレードまたはクリーニングブラシなどをクリーニング部材として有している。クリーニングブレードは、一般にゴム部材によって構成されており、感光体表面を擦りながらトナーを回収する。クリーニングブラシは、電気抵抗が1.0×106.5〜1.0×109.5Ω・cm程度の導電性を有するナイロン材によって構成されたブラシ部材または繊維からなり、感光体表面に接触しながらトナーを回収する。クリーニングブラシを所定電位に帯電させることによって、逆の電位に帯電しているトナーおよびキャリアをクリーニングブラシに吸着させることもできるので、より効率よく感光体表面を清掃することができる。
【0005】
特許文献1に記載される画像形成装置のクリーニング機構は、転写部とクリーニング部との間に、超音波発生装置が設けられている。この超音波発生装置は、トナーの固有振動数と同じ振動数を持つ超音波を発生し、超音波によってトナーを振動させ、感光体との付着力を弱めて、トナーを感光体からはがれやすくするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−313539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クリーニングブレードのように感光体表面に当接するクリーニング部材を用いるクリーニング装置は、トナーを回収するために当接部分を充分な硬度にするとともに、比較的大きな荷重で感光体表面に当接させる必要がある。したがって、感光体表面にトナーまたはタルクなどの被膜が形成されたり、粒形の粗い紙粉によって感光体表面が損傷することがあり、画質の低下を招くとともに、感光体の寿命を短くするという問題がある。
【0008】
特許文献1に記載される超音波発生装置でトナーを振動させるには、トナーの固有振動数と同レベルの高い振動数、たとえば6μmトナーで2.8×10kHzの振動数が必要であり、発熱が懸念されるとともに、感光体上のトナーに超音波を照射させるため、感光体にも振動が伝搬して、感光体上に形成されるトナー画像に乱れが生じることが懸念される。
【0009】
本発明の目的は、長期に亘って感光体表面にトナーおよびタルクなどの被膜を形成することなく、またキャリアなどによる損傷を防止して、良好なクリーニング性を維持し、均一で高品位な画像を得ることが可能な清掃装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、円柱形状であり、半径方向に移動可能に支持されるブラシ本体と、ブラシ本体の外周円に周方向全周にわたって植設されるブラシ繊維とからなり、ブラシ本体の中心軸が円筒形状の被清掃体の中心軸に平行に配置され、ブラシ繊維の先端が内接する仮想外周円が被清掃体の外周面に接触し、被清掃体の回転方向と逆方向に回転する導電性のブラシと、
仮想外周円に近接して対向する対向面が形成され、ブラシに対して電極となる電極部材と、
予め定める周波数で変化する電圧を電極部材に印加する電圧印加手段とを含むこと特徴とする清掃装置である。
【0011】
また本発明は、前記予め定める周波数は、前記ブラシ本体に設けられるブラシ繊維の固有振動数およびnを自然数とするとき該固有振動数のn次の正規振動周波数のうちのいずれか1つの周波数であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記電圧印加手段が電極部材に印加する電圧は、予め定める電圧値である直流電圧に予め定める振幅の電圧値である交流電圧を重畳した電圧であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記対向面と前記ブラシ本体の中心軸に直交する平面との交線が、前記ブラシ本体を前記ブラシ本体の中心軸に直交する平面で切断したときの外周円と同心円である円の一部であること特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記電極部材は、前記対向面に絶縁材料から成るコート層が形成されることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記電極部材は、前記対向面にフッ素樹脂が被膜されることを特徴とする。
また本発明は、前記清掃装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、円柱形状であり、半径方向に移動可能に支持されるブラシ本体と、ブラシ本体の外周円に周方向全周にわたって植設されるブラシ繊維とからなる導電性のブラシは、ブラシ本体の中心軸が円筒形状の被清掃体の中心軸に平行に配置され、ブラシ繊維の先端が内接する仮想外周円が被清掃体の外周面に接触し、被清掃体の回転方向と逆方向に回転する。電極部材は、仮想外周円に近接して対向する対向面が形成され、ブラシに対して電極となる。そして、電圧印加手段によって、予め定める周波数で変化する電圧が電極部材に印加される。
【0017】
すなわち、電極部材に印加される電圧が予め定める周波数で変化することによって、ブラシ本体の周囲に形成される電界が変化し、ブラシ本体が振動する。ブラシ本体が振動することによって、被清掃体である感光体に当接するブラシ繊維の先端も振動し、転写後に感光体表面に残留する残留現像剤などの付着力を低減し、ブラシの弱い掻き取り力(摺擦力)でも、付着物を除去して回収することができる。したがって、長期に亘って感光体表面にトナーおよびタルクなどの被膜が形成されることなく、またキャリアなどによる損傷を防止して、良好なクリーニング性を維持し、均一で高品位な画像を得ることができる。
【0018】
また本発明によれば、前記予め定める周波数は、前記ブラシ本体に設けられるブラシ繊維の固有振動数およびnを自然数とするとき該固有振動数のn次の正規振動周波数のうちのいずれか1つの周波数であるので、ブラシ繊維が共振して、ブラシ繊維の振動振幅がより大きくなり、ブラシ繊維と接触する残留現像剤をより大きく振動させて、付着力を低減することができ、クリーニング性の向上を図ることができる。
【0019】
また本発明によれば、前記電圧印加手段が電極部材に印加する電圧は、予め定める電圧値である直流電圧に予め定める振幅の電圧値である交流電圧を重畳した電圧であるので、印加する電圧に含まれる直流電圧によって、ブラシ本体の周囲に強い電界を形成し、静電吸引力を高めることができる。したがって、ブラシが感光体から除去し、ブラシに付着した残留現像剤をブラシから効率よく剥離させることができる。また、電極部材の静電吸引力によって、ブラシ繊維の先端が電極部材の方に引き寄せられるので、感光体と当接したことによって倒れたブラシ繊維を起こすことができる。
【0020】
また本発明によれば、前記対向面と前記ブラシ本体の中心軸に直交する平面との交線が、前記ブラシ本体を前記ブラシ本体の中心軸に直交する平面で切断したときの外周円と同心円である円の一部である。したがって、電極部材の対向面とブラシ本体の外周円との間隙が一定になるので、ブラシ本体の周囲に形成される電界がブラシ本体の外周面に均一に伝搬され、ブラシ本体を均一に振動させることができ、効率のよいクリーニング性能を長期に亘って維持することができる。
【0021】
また本発明によれば、前記電極部材は、前記対向面に絶縁材料から成るコート層が形成されるので、電極部材に高い電圧を印加しても、大気中放電の発生を防止することができる。したがって、電極部材により高い電圧を印加することができ、ブラシをさらに大きく振動させるとともに、静電吸引力をさらに大きくすることができる。したがって、残留現像剤のクリーニング性、残留現像剤によるブラシの目詰まりの防止、およびブラシの毛倒れをより効率よく防止することができる。
【0022】
また本発明によれば、前記電極部材は、前記対向面にフッ素樹脂が被膜される。すなわち、フッ素樹脂で被膜された面は、ブラシから剥離した残留現像剤が電極部材に付着するのを抑制する効果があるので、電極部材が汚染されることを防止し、安定した電界を形成することができ、ブラシによる残留現像剤の回収を安定化させるとともに、ブラシの毛倒れを長期に亘り維持することができる。
【0023】
また本発明によれば、前記清掃装置を備える。すなわち、残留現像剤の回収効率を向上し、ブラシ繊維の毛倒れを防止することができる清掃装置を備えるので、長期に亘って高い印刷品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態である感光体クリーニング装置26を備える画像形成装置1の構成を示す図である。
【図2】感光体クリーニング装置26の構成を示す図である。
【図3】ブラシ繊維268による現像剤の回収とブラシ繊維268の変形とを示す図である。
【図4】ブラシ繊維268の正規振動を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の他の形態である感光体クリーニング装置26aの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の一形態である感光体クリーニング装置26を備える画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、カラー画像を形成可能とするタンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、ネットワークを介して接続されるパーソナルコンピュータもしくは端末装置から送信される画像データ、またはスキャナなどの原稿読取装置によって読み取られた画像データに基づいて、記録媒体となる記録用紙Pに対して、カラー画像またはモノクロ画像を形成するプリンタ機能を有する。
【0026】
画像形成装置1は、像担持体としての感光体21、帯電器22、露光器23、トナーおよびキャリアからなる二成分現像剤を使用した現像器24、一次転写ローラ25、および感光体クリーニング装置26を含んで構成される画像形成ステーション部2と、二次転写部3と、定着手段4と、用紙供給手段5と、排紙手段6とを含んで主要部が構成されている。
【0027】
画像形成ステーション部2は、カラー画像を表すカラー画像情報に含まれるイエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、およびブラック(k)の各色の画像情報に対応するために、イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用およびブラック画像用の4つの画像形成ステーションに分かれている。そして後述する中間転写ベルト31の進行方向Aに対し、イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用、およびブラック画像用の画像形成ステーションがこの順で並設されている。
【0028】
イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用およびブラック画像用の4つの画像形成ステーションは、それぞれ、実質的に同一の構成を有しており、各色に対応する画像データに基づいて、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの画像を形成して、中間転写ベルト31上で重ね合わせて4色のトナーからなる画像を形成し、二次転写部3で記録用紙P上にトナー像を転写する。そして、記録用紙P上のトナー像を定着手段4で加熱定着することによって、記録用紙P上にフルカラー画像を形成する。
【0029】
画像形成ステーション部2を構成する各部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)、およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。
【0030】
被清掃体である感光体21は、有機感光体(Organic Photoconductor;略称「OPC」)などの感光性材料を表面に有する略円筒のドラム形状を呈し、露光器23の上方に配設され、図示しない駆動手段と制御手段とによって、回転方向Bに回転駆動するように制御されている。帯電器22は、感光体21の表面を所定の電位に均一に帯電するためのスコロトロン方式の帯電器であって、感光体21の外周面に近接して配置されている。
【0031】
露光器23は、図示しない画像処理部から出力された画像データに基づいて、帯電器22にて帯電される感光体21の表面に、レーザ光を照射して露光することによって、感光体21の表面における露光部の電位を低下させ、当該表面に画像データに応じた静電潜像を書き込み形成する機能を有する。露光器23は、各色に対応する画像形成ステーションに応じて、イエロー、マゼンタ、シアン、またはブラックに対応する画像データが入力されることによって、対応する色に応じた静電潜像を形成するようになっている。露光器23としては、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(略称「LSU」)の他、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;略称「EL」)、または発光ダイオード(Light Emitting Diode;略称「LED」)などの発光素子をアレイ状に並べた書き込み装置、たとえば書き込みヘッドを使用することができる。
【0032】
現像器24は、現像剤を担持する現像剤潜像体となる現像ローラと、現像剤を収容する現像槽とを備える。ここで、本発明の実施の形態では、二成分現像剤を用いて、露光器23によって感光体21の表面に形成された静電潜像を、当該トナーによって反転現像してトナー像を形成する。現像剤としては、二成分現像剤に限定されるものでなく、一成分現像剤も用いることができる。また、現像器24は、各色に対応したそれぞれのトナーを収容し、トナーの消費量に応じて現像槽にトナーを補給するトナーボトル27を備える。現像ローラは、トナーが感光体21へ移動し得る現像領域へ現像剤を搬送するように構成されている。また、現像槽に収容される現像剤中のトナーは、感光体21に帯電される表面電位と同極性に帯電されている。感光体21に帯電される表面電位の極性および使用するトナーの帯電極性は、ここでは何れもマイナスとする。
【0033】
中間転写ベルト31は、二次転写部3の構成部材の一部材である転写ローラ32と、後述するベルトクリーナ34に対向する対向ローラ35とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端状のベルト部材であり、対向ローラ35の回転に伴って回転駆動する。
【0034】
中間転写ベルト31が、感光体21に接しながら感光体21を通過する際、中間転写ベルト31を介して感光体21に対向配置される一次転写ローラ25から、感光体21の表面のトナーの帯電極性とは逆極性、ここでは正極性の転写バイアスが印加され、感光体21上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト31上へ転写されて担持される。
【0035】
トナー像の転写工程が終了した感光体21は、感光体21の表面に付着した付着物、つまり感光体21の表面に残留した現像剤(以下「残留現像剤」ともいう)等が後述する感光体クリーニング装置26によって除去され、回収される。
【0036】
二次転写部3では、二次転写ローラ33が、中間転写ベルト31上に担持されるトナー像の搬送とタイミングを合わせて用紙供給手段5によって供給搬送される記録用紙Pを介して、中間転写ベルト31に圧接する。二次転写ローラ33と中間転写ベルト31との圧接部分が転写ニップ部となる。中間転写ベルト31に担持されるトナー像と記録用紙Pとが、タイミングを合わせて転写ニップ部を通過するとき、二次転写ローラ33には、トナーを引き付ける正電位(転写電界)が印加され、中間転写ベルト31上のトナー像を記録用紙Pへ転写させる。
【0037】
定着手段4は、二次転写部3よりも記録用紙Pの搬送方向下流側に設けられ、加熱ローラ41と加圧ローラ42とを含む。加熱ローラ41は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録用紙Pに転写されて担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録用紙Pに定着させる。加熱ローラ41の内部には、図示しない加熱手段が設けられ、加熱ローラ41の表面が所定の温度となるように加熱ローラ41を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータあるいはハロゲンランプなどを使用することできる。
【0038】
加圧ローラ42は、加熱ローラ41に圧接するように設けられ、加圧ローラ42の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ42は、加熱ローラ41によって、トナーが溶融して記録用紙Pに定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録用紙Pへの定着を補助する。加熱ローラ41と加圧ローラ42との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、二次転写部3において、トナー像が転写された記録用紙Pが、加熱ローラ41と加圧ローラ42とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録用紙Pに押圧されることによって、トナー像が記録用紙Pに定着され、画像が形成される。
【0039】
用紙供給手段5は、用紙供給トレイ51と、ピックアップローラ52と、レジストローラ53と、搬送ローラ54と、用紙ガイド55とを含む。用紙供給トレイ51は、画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録用紙Pを貯留する容器状部材である。記録用紙Pとしては、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シートおよび葉書などをあげることができる。
【0040】
ピックアップローラ52は、用紙供給トレイ51に貯留される記録用紙Pを1枚ずつ取り出し、レジストローラ53に向けて送給する。レジストローラ53は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、ピックアップローラ52から送給される記録用紙Pを、中間転写ベルト31に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給されるように、記録用紙Pの搬送経路を規定する用紙ガイド55に送給する。用紙ガイド55に送給された記録用紙Pは、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材である搬送ローラ54に搬送され、転写ニップ部に搬送される。
【0041】
排紙手段6は、排出ローラ61を含む。排出ローラ61は、用紙搬送方向において定着手段4における定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録用紙Pを、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる図示しない排出トレイに排出する。排出トレイは、画像が定着された記録用紙Pを貯留する。
【0042】
図2は、感光体クリーニング装置26の構成を示す図である。清掃装置である感光体クリーニング装置26は、クリーニングブラシ261と、電源263と、電極部材264と、電源265と、トナー落下防止用下シール266と、廃トナーケース267とを含む。
【0043】
ブラシであるクリーニングブラシ261は、クリーニングブラシ支持体262およびブラシ繊維268を含んで構成される。ブラシ本体であるクリーニングブラシ支持体262は、直径が、たとえば10mmの円柱形状であり、半径方向に移動可能に支持される。ブラシ繊維268は、クリーニングブラシ支持体262の半径方向の外側に延在するように設けられ、長さが、たとえば5mmである。
【0044】
クリーニングブラシ支持体262の図示しないシャフト(以下「軸」ともいう)は、たとえばΦ6mmのステンレス(Stainless Used Steel;略称「SUS」)もしくはアルミニウムであり、廃トナーケース267の図示しない軸受けに貫通させて支持されている。軸受けの内径は、たとえば6.1mmであり、シャフトとのすき間を0.1mmとしている。したがって、クリーニングブラシ261が振動する場合は、感光体21に対して0.1mmの幅で離接振動が可能になり、残留現像剤に振動を与えることができる。
【0045】
クリーニングブラシ261は、ブラシ繊維268の先端に内接する仮想外周円が感光体21に当接して配置され、感光体21の回転方向Bと反対の回転方向Cに高速度で回転する。クリーニングブラシ261は、感光体21の周速度以上の周速度で回転するが、クリーニングブラシ261の直径が感光体21の直径よりも短いので、クリーニングブラシ261の方が感光体21よりも高速で回転することになる。クリーニングブラシ261は、トナー像の転写工程が終了した後の感光体21に接触して、感光体21と残留現像剤との付着力を弱め、残留現像剤を掻き落とす。
【0046】
クリーニングブラシ261は、感光体21に対して、ある程度の喰い込み量を持っており、この喰い込み量は、クリーニングブラシ261の性能と感光体21への影響とを考慮して設定する。具体的には、クリーニング性能が悪い場合には、大きな喰い込み量、すなわち高い接触圧で接触させ、クリーニング性能がよい場合には、小さな喰い込み量、すなわち低い接触圧で接触させる。本実施の形態では、喰い込み量は、たとえば0.5〜2.0mm程度に設定されるが、クリーニングブラシ261のブラシ繊維268の材料の選択などによって、感光体21への影響とクリーニング能力との両方を良好にする喰い込み量の選択の幅を広げることができる。
【0047】
ブラシ繊維268の材料としては、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、フッ素系、綿、もしくは羊毛などの繊維、またはガラスもしくは金属などを繊維状に加工したものが用いられる。
【0048】
繊維の太さは、たとえば5〜15デニール/フィラメントのものが使用される。また、ブラシ繊維の密度は、1万〜10万本/inch、ブラシの長さは、1〜10mmが適当である。さらに、ブラシ繊維268が非導電性の場合には、導電性処理を施すことによって、導電性を有するクリーニングブラシ261とする。
【0049】
クリーニングブラシ261は、クリーニングブラシ支持体262上にブラシ繊維268を直接固定することによって構成されるか、あるいは、ブラシ繊維268の織物をクリーニングブラシ支持体262上に接着することによって構成される。すなわち、ブラシ繊維268は、クリーニングブラシ支持体262の外周円に周方向全周にわたって植設される。ブラシ繊維268の先端、つまり毛先は、ブラシ繊維268が切断された後の形状であってもよいし、ループ形状であってもよい。本実施の形態では、ナイロン繊維を導電性加工したものを用い、ブラシ繊維の太さは6デニール/フィラメント、ブラシの密度は5万本/inch、ブラシ繊維の長さは5mmである。
【0050】
電源263は、直流の電源であり、クリーニングブラシ261に対して、転写バイアスと逆極性、つまり負極性の直流のバイアス電圧を印加する。印加されるバイアス電圧は、−200V〜−400Vが好ましく、本実施の形態では、−250Vに設定する。クリーニングブラシ261にバイアス電圧を印加することによって、クリーニングブラシ261は、感光体21に静電吸引力を及ぼし、転写後に残留した正帯電のトナーおよびキャリアを、感光体21から効率よく回収することができる。静電吸引力は、電極間に生じる電気力線の張力による吸引力であり、印加される電圧の2乗に比例し、電極間の距離の2乗に反比例する。
【0051】
電極部材264は、たとえばステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、真鍮またはカーボンなどの導電性材料などの材料によって構成されれば特に限定されないが、本実施の形態ではステンレスによって構成される。電極部材264は、クリーニングブラシ261に対向する対向面269が形成され、対向面269をクリーニングブラシ261に対向させて近接して配置される。
【0052】
より詳細には、対向面269をクリーニングブラシ支持体262の軸線に直交する仮想平面で切断したとき、図2に示すように、切断された対向面269の切断部分は円弧FGである。すなわち、対向面269と仮想平面との交線が円弧FGである。その円弧FGは、クリーニングブラシ支持体262が仮想平面で切断された切断部分の外周円と同心円である。電極部材264は、その同心円の中心に対して、第4象限の位置に、対向面269がブラシ繊維268の先端に内接する仮想外周円から間隙Eをおいて配置されている。本実施の形態では、間隙Eは、200μmと設定される。
【0053】
電圧印加手段である電源265は、電極部材264に予め定める周波数および予め定める振幅を有する電圧を印加する。予め定める周波数は、ブラシ繊維の固有振動数以上の周波数である。本実施の形態では、電源265は、予め定める周波数が198Hzで、予め定める振幅が1.5kVppの正弦波の波形を有する電圧を電極部材264に印加する。このときの予め定める電圧値であるオフセット電圧は−500Vである。したがって、電圧の振幅は、−1250V〜+250Vである。電源265によって、電極部材264に予め定める周波数および予め定める振幅を有する電圧が印加されると、電極部材264とクリーニングブラシ261との間隙には振動電界が形成される。この振動電界によって、クリーニングブラシ261の構成部材であるクリーニングブラシ支持体262は、振動する。
【0054】
図3は、ブラシ繊維268による現像剤の回収とブラシ繊維268の変形とを示す図である。図3では、クリーニングブラシ261が振動しながら一回転する間に、変形したブラシ繊維268が回復する様子を模式的に誇張して示している。
【0055】
クリーニングブラシ261は、電極部材264との間で形成される振動電界の作用を受けて、振動しながら感光体21の表面に接触し、感光体21の表面に残留した現像剤を浮かせると同時に、電源263で印加した直流バイアス電圧による静電吸引力によって引き寄せて回収する。
【0056】
続いて、感光体21に当接したブラシ繊維268の部分は、感光体21との最当接位置、つまり地点Hから回転方向Cで180°回転し、地点Fに最も近接する位置に到達する。この間にも、ブラシ繊維268によって回収された現像剤の一部は、ブラシ繊維268が振動してブラシ繊維268と現像剤との付着力が低減されることによって、ブラシ繊維268から離れ、廃トナーケース267へ回収される。
【0057】
次に、地点Fに最も近接する位置に到達したブラシ繊維268の部分は、続いて1/4回転して地点Gに最も近接する位置に到達する間に、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との振動電界によって、ブラシ繊維268は、振動しながら電極部材264の方向への引力を受けるため、ブラシ繊維に付着している現像剤を回収するとともに、感光体21との接触によって押圧変形したブラシ繊維268の形状を変形する前の元の状態に回復することができる。
【0058】
図2を参照して、電源265によって、電極部材264に予め定める周波数および予め定める振幅を有する電圧が印加されると、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間隙には振動電界が形成される。クリーニングブラシ支持体262は、第4象限に配置される電極部材264の振動電界によって、クリーニングブラシ支持体262の中心軸に直交し、かつ円弧FGの中心と円弧FGを2等分した真ん中の点とを結ぶ直線方向に振動する。
【0059】
たとえば、地点Gに着目すると、この振動電界によって、クリーニングブラシ支持体262が地点Gに対する対向方向Dに振動すると、クリーニングブラシ支持体262に固定されているブラシ繊維268のうち地点Hで感光体21に当接するブラシ繊維268が、対向方向Dと同じ方向に沿ってブラシ繊維268の固有振動数またはn次の正規振動数で振動することになる。地点Gは、クリーニングブラシ261と感光体21とが接触する地点Hで、感光体21をクリーニングする振動方向と同じ対向方向になる地点である。
【0060】
図4は、ブラシ繊維268の正規振動を説明するための図である。ブラシ繊維268は、一端がクリーニングブラシ支持体262に固定され、他端が自由端となっているため、ブラシ繊維268の振動は、図4に示すような片持ちはりの振動となる。図4は、クリーニングブラシ支持体262に振動が与えられたとき、固定されている位置に対して、ブラシ繊維268の各部分が移動するとき、最大振幅のブラシ繊維268の形状を示している。
【0061】
図4(a)は、ブラシ繊維268の固有振動数で振動しているときのブラシ繊維268の形状を示している。固有振動数は、1次正規振動周波数である。図4(b)は、2次正規振動周波数で振動しているときのブラシ繊維268の形状を示している。図4(c)は、3次正規振動周波数で振動しているときのブラシ繊維268の形状を示している。図4(d)は、4次正規振動周波数で振動しているときのブラシ繊維268の形状を示している。2次正規振動は、固定されている位置を除いて、振動しない位置である節が1つであり、3次正規振動は、固定されている位置を除いて、節が2つであり、4次正規振動は、固定されている位置を除いて、節が3つである。n次正規振動周波数の算出式については、後述する。
【0062】
廃トナーケース267は、クリーニングブラシ261によって感光体21から回収された残留現像剤を、廃トナーとして収容するための容器状の部材である。廃トナーケース267に収容された廃トナーは、図示しない廃トナー搬送スクリューによって、図示しない廃トナー廃棄ボトルへ搬送される。トナー落下防止用下シール266は、クリーニングブラシ261によって掻き取られた現像剤が廃トナーケース267から漏出することを防止するためのものである。本実施の形態では、トナー落下防止用下シール266は、厚さ0.1mmのウレタンゴムシートからなる。
【0063】
画像形成装置1は、上述したように構成されるので、クリーニング性能に優れ、次の記録用紙Pへの画像形成時に残留現像剤の影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0064】
次に、感光体21に残留する現像剤を対向方向Dに振動させてクリーニングブラシ261のブラシ繊維268を振動させながら、感光体21の表面を摺擦することによって、残留現像剤を回収するクリーニング効率を向上させるために考慮すべき事項について説明する。
【0065】
クリーニングブラシ261を振動させてブラシ繊維268先端を感光体21の表面に摺擦させるときに考慮すべき重要な事項は、(a)ブラシ繊維268の振動周波数および振動振幅、(b)クリーニングブラシ261の振動領域の大きさ、および(c)クリーニングブラシ261の振動領域における振動振幅の大きさの分布である。
【0066】
まず、(a)ブラシ繊維268の振動周波数および振動振幅について説明する。ブラシ繊維268に発生する対向方向Dの振動の振動周波数および振動振幅は、電極部材264に電圧が印加されることによって発生するクリーニングブラシ支持体262の振動に左右される。電極部材264からクリーニングブラシ支持体262に働く引力Fは、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262とを電極板とするコンデンサとして考えると、式(1)によって求めることができる。Fは電極板間に働く引力を示し、Qは電荷量を示し、Eは電界の強さを示す。
F=(1/2)×Q×E …(1)
【0067】
また、電荷量Qは式(2)によって求めることができる。εは真空の比誘電率を示し、Sは対向面積を示し、dは電極間隔を示し、Vは電位差を示す。
Q=(εS/d)V …(2)
【0068】
たとえば、式(1)および式(2)に、S=300mm×5mm、d=200μm、ε=8.85×10−12(s・A・kg−1・m−3)、V=2kVを代入して、電極板間に働く引力Fを算出すると、F=0.66Nとなる。
【0069】
すなわち、電極部材264に電源265から電圧が印加されると、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間には前述のような引力が働き、この引力は印加される電圧の周波数で繰り返し変化する。これによって、クリーニングブラシ支持体262が対向方向Dに、引力に対応する振動振幅で、かつ印加される電圧の周波数に対応する振動周波数で振動する。そして、クリーニングブラシ支持体262の振動に伴って、クリーニングブラシ261と感光体21とが接触する地点Hでは、ブラシ繊維268は、前記振動振幅および振動周波数で対向方向Dに振動する。
【0070】
ブラシ繊維268の振動周波数は、電極部材264に印加される電圧(以下「印加電圧」という)の周波数を変化することによって調整することができる。残留現像剤の感光体21に対する付着力を低下させて回収効率を向上させるためには、印加電圧の周波数を所定値以上に調整する必要がある。つまり、上述したように、振動するブラシ繊維268が感光体21の表面を振動させることによって、残留する現像剤の感光体21に対する付着力を低下させるが、印加電圧の周波数が低すぎると、感光体21の表面の残留現像剤への振動を与える力が弱く、残留現像剤の回収効率の向上が認められなくなる。そのため、本実施の形態では、電極部材264に印加する印加電圧の周波数は、ブラシ繊維268の固有振動数以上に設定している。
【0071】
また、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間に生じる前記引力に対応する振動振幅は、式(1)および式(2)から、電極部材264およびクリーニングブラシ支持体262を構成する材料の誘電率を高くし、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との対向面積を大きくし、電極部材264に印加する印加電圧を高くし、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間隙幅を小さくすることによって、大きくすることができる。
【0072】
このように、クリーニングブラシ支持体262の振動振幅が大きくなると、ブラシ繊維268が感光体21の表面を振動させる振動振幅が大きくなり、感光体21の表面に付着した現像剤を摺擦する効果が高くなる。しかし、電極部材264に印加する印加電圧が高過ぎる、または、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間隙幅が小さ過ぎると、大気中放電が発生してしまうので、電極部材264に印加する印加電圧を高くし過ぎること、および電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間隙幅を小さくし過ぎることは好ましくない。
【0073】
次に、ブラシ繊維268の振動振幅を効率よく大きくすることが可能な構成について説明する。電源265によって電極部材264に印加する印加電圧を、ブラシ繊維268の固有振動数あるいはn次の正規振動周波数で変化する電圧である固有振動電圧とすることによって、ブラシ繊維268を共振させることができる。具体的には、ブラシ繊維268の片持ちはりの固有振動数fは式(3)によって求めることができる。λは振動数係数を示し、lはブラシ繊維の長さを示し、Eはヤング率を示し、Iは断面2次モーメントを示し、ρは材料の密度を示し、Aは断面積を示す。
【0074】
【数1】

【0075】
片持ちはりに対しては、λ=1.875、λ=4.694、λ=7.855、λ=10.996……である。
【0076】
また、断面2次モーメントIは、式(4)で表される。dはブラシ繊維断面の直径を示す。
【0077】
【数2】

【0078】
式(3)および式(4)に、ブラシ繊維268の長さl=5mm、密度ρ=1.16g/cm、断面積A=5.75×10−10、ヤング率E=0.20×1010kg/m・sを代入して、固有振動数、すなわち1次正規振動周波数fを算出すると、f=198Hzとなる。1次正規振動周波数fまたは2次以上の正規振動周波数で変化する電圧を電極部材264に印加することによって、ブラシ繊維268を共振させることができる。ブラシ繊維268が共振すると、ブラシ繊維268の対向方向Dに振動する振動振幅がより大きくなり、感光体21の表面に残留する現像剤を大きく摺擦させることができ、クリーニング効率を向上させることができる。
【0079】
また、電極部材264は、クリーニングブラシ支持体262に対する対向方向Dへの曲げ剛性が、クリーニングブラシ支持体262の断面方向の曲げ剛性よりも高く設定されるのが好ましい。これによって、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間に生じる振動電界による引力が作用したとき、電極部材264の撓みを抑制しながらクリーニングブラシ支持体262を振動させることができる。具体的には、軸方向に延びる梁を考える場合、その曲げ剛性Aは、A=E×Iで表される。Eはヤング率、Iは断面2次モーメントを示す。
【0080】
電極部材264をクリーニングブラシ支持体262の軸線に直交する平面で切断した切断面は、正方形から扇型形状をくり貫いた形状であり、その半径rが10mmである電極部材264の断面2次モーメントIは、式(5)で表される。
【0081】
【数3】

【0082】
電極部材264の構成材料がステンレスである場合、ステンレスのヤング率E=17×1010kg/m・sであるので、電極部材264の曲げ剛性Aは、
=E×I=13N・mとなる。
【0083】
一方、外径10mmのクリーニングブラシ支持体262では、断面2次モーメントIは、上述した式(4)によって求めることができる。クリーニングブラシ支持体262の構成材料がアルミニウムである場合、アルミニウムのヤング率E=7.0×1010kg/m・sであるので、クリーニングブラシ支持体262の曲げ剛性Aは、A=E×I=34N・mとなる。
【0084】
このように、電極部材264は、電極部材264の対向方向Dへの曲げ剛性がクリーニングブラシ支持体262の断面方向の曲げ剛性よりも高く設定されている場合には、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との間に生じる振動電界による引力が作用したときに、電極部材264の撓みを抑制しながらクリーニングブラシ支持体262を振動させることができる。
【0085】
また、電極部材264が撓む場合には、電極部材264の撓みによって電極部材264とクリーニングブラシ支持体262、さらには、クリーニングブラシ支持体262に固定されているブラシ繊維268との間隙幅が小さくなり、大気中放電が発生しやすくなる。電極部材264の曲げ剛性を高めて電極部材264の撓みを抑制することによって、高い電圧を電極部材264に印加しても、電極部材264とクリーニングブラシ261との間隙幅が小さくなり過ぎるのを防止して、クリーニングブラシ支持体262を大きく振動させることによって、ブラシ繊維268に大きな振動振幅を付与することができる。
【0086】
次に、(b)クリーニングブラシ261の振動領域の大きさについて説明する。振動領域は、クリーニングブラシ261の各地点での振動振幅の最大幅の範囲内である。電極部材264は、クリーニングブラシ支持体262の外周面に対向する対向面269が、クリーニングブラシ支持体262の外周面に沿うように形成されている。したがって、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262とが間隙を有して対向する領域では、全領域に亘って同一の間隙幅となる。すなわち、電極部材264に電圧が印加されたときに、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262とが対向する対向領域に形成される振動電界は、対向領域の全体に亘って均一になる。
【0087】
最後に、(c)クリーニングブラシ261の振動領域における振動振幅の大きさの分布について説明する。分布とは、円弧FG間における振動電界の大小のことである。電極部材264において、クリーニングブラシ支持体262の外周面に対向する対向面269が、クリーニングブラシ支持体262の外周面に沿うように形成されている。したがって、電極部材264とクリーニングブラシ支持体262との対向領域では電極部材264とクリーニングブラシ支持体262とは、常に一定の間隙幅を持って対向している。すなわち、電極部材264に電圧が印加されたときに対向領域に形成される振動電界は均一となり、振動振幅も一定の大きさを有する。
【0088】
図5は、本発明の実施の他の形態である感光体クリーニング装置26aの構成を示す図である。感光体クリーニング装置26aは、感光体クリーニング装置26に類似し、対応する部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。感光体クリーニング装置26aにおいて特徴的な構成は、電極部材264のクリーニングブラシ支持体262に対向する対向面269に、絶縁材料からなるコート層601が設けられている点である。感光体クリーニング装置26aは、電極部材264にコート層601が設けられていること以外は、感光体クリーニング装置26と同様に構成されている。さらには、電極部材264またはコート層601の上部にフッ素樹脂層602を設ける構成としてもよい。
【0089】
コート層601の層厚は、たとえば50〜2000nmの範囲内である。フッ素樹脂層602の層厚は、たとえば50〜400μmの範囲内である。コート層601を構成する材料としては、たとえば、比誘電率が「1200」であるチタン酸バリウム、比誘電率が「332」であるチタン酸ストロンチウム、あるいは比誘電率が「100」である酸化チタンのように、誘電率が高く、かつ絶縁性の材料が望ましい。
【0090】
このように、絶縁材料からなるコート層601が電極部材264の表面に設けられることによって、クリーニングブラシ261に対向する部分が導電体で構成されている場合に比べて、電極部材264に高い電圧を印加しても、大気中放電の発生を防止することができる。したがって、クリーニングブラシ支持体262と電極部材264との間隙に大きな振動電界を発生させることができ、感光体21上に残留した現像剤を除去する除去効率に優れ、次の記録用紙Pへの画像形成時に残留する現像剤の影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態のみではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0092】
このように、円柱形状であり、半径方向に移動可能に支持されるクリーニングブラシ支持体262と、クリーニングブラシ支持体262の外周円に周方向全周にわたって植設されるブラシ繊維268とからなる導電性のクリーニングブラシ261は、クリーニングブラシ支持体262の中心軸が円筒形状の感光体21の中心軸に平行に配置され、ブラシ繊維268の先端が内接する仮想外周円が感光体21の外周面に接触し、感光体21の回転方向と逆方向に回転する。電極部材264は、仮想外周円に近接して対向する対向面269が形成され、クリーニングブラシ261に対して電極となる。そして、電源265によって、予め定める周波数で変化する電圧が電極部材264に印加される。
【0093】
すなわち、電極部材264に印加される電圧が予め定める周波数で変化することによって、クリーニングブラシ支持体262の周囲に形成される電界が変化し、クリーニングブラシ支持体262が振動する。クリーニングブラシ支持体262が振動することによって、感光体21に当接するブラシ繊維268の先端も振動し、転写後に感光体21の表面に残留する残留現像剤などの付着力を低減し、クリーニングブラシ261の弱い掻き取り力(摺擦力)でも、付着物を除去して回収することができる。したがって、長期に亘って感光体21の表面にトナーおよびタルクなどの被膜が形成されることなく、またキャリアなどによる損傷を防止して、良好なクリーニング性を維持し、均一で高品位な画像を得ることができる。
【0094】
さらに、前記予め定める周波数は、クリーニングブラシ支持体262に設けられるブラシ繊維268の固有振動数およびnを自然数とするとき該固有振動数のn次の正規振動周波数のうちのいずれか1つの周波数であるので、ブラシ繊維268が共振して、ブラシ繊維268の振動振幅がより大きくなり、ブラシ繊維268と接触する残留現像剤をより大きく振動させて、付着力を低減することができ、クリーニング性の向上を図ることができる。
【0095】
さらに、電源265が電極部材264に印加する電圧は、予め定める電圧値である直流電圧に予め定める振幅の電圧値である交流電圧を重畳した電圧であるので、印加する電圧に含まれる直流電圧によって、クリーニングブラシ支持体262の周囲に強い電界を形成し、静電吸引力を高めることができる。したがって、クリーニングブラシ261が感光体21から除去し、クリーニングブラシ261に付着した残留現像剤を、クリーニングブラシ261から効率よく剥離させることができる。また、電極部材264の静電吸引力によって、ブラシ繊維268の先端が電極部材264の方に引き寄せられるので、感光体21と当接したことによって倒れたブラシ繊維268を起こすことができる。
【0096】
さらに、対向面269とクリーニングブラシ支持体262の中心軸に直交する平面との交線が、クリーニングブラシ支持体262をクリーニングブラシ支持体262の中心軸に直交する平面で切断したときの外周円と同心円である円の一部である。したがって、電極部材264の対向面269とクリーニングブラシ支持体262の外周円との間隙が一定になるので、クリーニングブラシ支持体262の周囲に形成される電界がクリーニングブラシ支持体262の外周面に均一に伝搬され、クリーニングブラシ支持体262を均一に振動させることができ、効率のよいクリーニング性能を長期に亘って維持することができる。
【0097】
さらに、電極部材264は、対向面269に絶縁材料から成るコート層601が形成されるので、電極部材264に高い電圧を印加しても、大気中放電の発生を防止することができる。したがって、電極部材264により高い電圧を印加することができ、クリーニングブラシ261をさらに大きく振動させるとともに、静電吸引力をさらに大きくすることができる。したがって、残留現像剤のクリーニング性、残留現像剤によるクリーニングブラシ261の目詰まりの防止、およびクリーニングブラシ261の毛倒れをより効率よく防止することができる。
【0098】
さらに、電極部材264は、対向面269にフッ素樹脂が被膜される。すなわち、フッ素樹脂で被膜された面は、クリーニングブラシ261から剥離した残留現像剤が電極部材264に付着するのを抑制する効果があるので、電極部材264が汚染されることを防止し、安定した電界を形成することができ、クリーニングブラシ261による残留現像剤の回収を安定化させるとともに、クリーニングブラシ261の毛倒れを長期に亘り維持することができる。
【0099】
さらに、画像形成装置1は、感光体クリーニング装置26または感光体クリーニング装置26aを備える。すなわち、残留現像剤の回収効率を向上し、ブラシ繊維の毛倒れを防止することができる清掃装置である感光体クリーニング装置26または感光体クリーニング装置26aを備えるので、長期に亘って高い印刷品質を維持することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 画像形成装置
2 画像形成ステーション部
3 二次転写部
4 定着手段
5 用紙供給手段
6 排紙手段
21 感光体
22 帯電器
23 露光器
24 現像器
25 一次転写ローラ
26,26a 感光体クリーニング装置
27 トナーボトル
31 中間転写ベルト
32 転写ローラ
33 二次転写ローラ
34 ベルトクリーナ
35 対向ローラ
41 加熱ローラ
42 加圧ローラ
51 用紙給紙トレイ
52 ピックアップローラ
53 レジストローラ
54 搬送ローラ
55 用紙ガイド
61 排出ローラ
261 クリーニングブラシ
262 クリーニングブラシ支持体
263,265 電源
264 電極部材
266 トナー落下防止用下シール
267 廃トナーケース
268 ブラシ繊維
269 対向面
P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状であり、半径方向に移動可能に支持されるブラシ本体と、ブラシ本体の外周円に周方向全周にわたって植設されるブラシ繊維とからなり、ブラシ本体の中心軸が円筒形状の被清掃体の中心軸に平行に配置され、ブラシ繊維の先端が内接する仮想外周円が被清掃体の外周面に接触し、被清掃体の回転方向と逆方向に回転する導電性のブラシと、
仮想外周円に近接して対向する対向面が形成され、ブラシに対して電極となる電極部材と、
予め定める周波数で変化する電圧を電極部材に印加する電圧印加手段とを含むこと特徴とする清掃装置。
【請求項2】
前記予め定める周波数は、前記ブラシ本体に設けられるブラシ繊維の固有振動数およびnを自然数とするとき該固有振動数のn次の正規振動周波数のうちのいずれか1つの周波数であることを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段が電極部材に印加する電圧は、予め定める電圧値である直流電圧に予め定める振幅の電圧値である交流電圧を重畳した電圧であることを特徴とする請求項1または2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記対向面と前記ブラシ本体の中心軸に直交する平面との交線が、前記ブラシ本体を前記ブラシ本体の中心軸に直交する平面で切断したときの外周円と同心円である円の一部であること特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の清掃装置。
【請求項5】
前記電極部材は、前記対向面に絶縁材料から成るコート層が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の清掃装置。
【請求項6】
前記電極部材は、前記対向面にフッ素樹脂が被膜されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の清掃装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の清掃装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−204580(P2010−204580A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52587(P2009−52587)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】