説明

清浄具

【課題】清浄具の本体から払拭具を容易に取り替えることができ、且つ払拭具を取り付けた箇所に硬質部が露出せず、本体を洗浄,消毒し易く、コンパクトな構成の清浄具を提供することを目的とする。
【解決手段】棒状部材11と軟質材製払拭具12を備えた清浄具10である。棒状部材11は、長手方向両側に掴み部13b,16b、中央に折り曲げ/曲げ戻し自在な可撓性部材14(折曲点)を備える。棒状部材11を直線状にして可撓性部材14(折曲点)及び棒先部分13a,16aに払拭具12を巻き、棒状部材11を二つ折りにして払拭具12を狭圧保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の如き狭隘部はもとより、様々な箇所の清掃に用いることのできる清浄具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術や様々な障害によって長期間口腔から食物を摂取していない患者においては、口腔内に各種細菌が多く繁殖することになり、口臭の原因になったり、就寝中等にその唾液を肺に誤嚥して肺炎を起こす可能性がある。また口腔から食物を摂取できる患者においても、手が不自由である等の理由から、口腔内を歯磨き等により自身で清潔に保つことが困難となり、口腔内の食物残渣によって歯垢や舌苔を多く発生する懸念がある。
【0003】
そこで介護者が、指に巻き付けたガーゼや所謂ウエットティッシュ等により(或いは巻き付けずに平らなガーゼのままで)、口腔内を拭って清掃したり、または綿棒や棒付きスポンジ、割り箸にガーゼを巻いたもの(以下、ガーゼ巻き割り箸と称することがある)等を用いて患者の口腔内を清掃することが行われている。
【0004】
指にガーゼ等を巻いて清掃する方法は、手際よく隅々まで清掃できるという利点があるものの、手袋をしていないと介護者が感染する虞がある上、意識の希薄な患者では口腔への刺激によって反射的に口を閉じ、介護者の指を噛むといった事故が起こり得る。
【0005】
そこで清掃を行っている間、肉厚ゴムホース状の開口保持具(所謂バイトブロック)を歯にあてがい口が閉じないようにして施術することが薦められている。または金属製の指サック型治具を指に填め、この上にガーゼ等を巻いた状態とし、上記バイトブロックの場合と同様に、これを歯にあてがって口が閉じないようにして施術することが薦められている。
【0006】
綿棒や棒付きスポンジによる清掃においても、一般的な綿棒等では強度が弱い或いは細いといったことから患者が強く噛むと口を開けた状態に維持できないので、上記開口保持具を用いることが推奨される。
【0007】
しかしながら開口保持具を用いる場合は、該開口保持具と、綿棒或いはガーゼを巻き付けた指等との両方を口腔に差し入れることになる為、患者にとって不快であるだけでなく、清掃のし残し箇所が多く発生するという決定的な不都合を生じる。
【0008】
指に填めた指サック型治具にガーゼ等を巻いて清掃する場合は、指の動きが制約され、殊に口腔内の奥の部分が清掃し難い。
【0009】
他方、太く強固な棒状体を用いた棒付きスポンジや、上記ガーゼ巻き割り箸の場合は、柄の部分が丈夫であるので、綿棒等と違って開口保持具を用いなくても清掃可能である。また介護者が指を噛まれたりする虞がないという利点がある。
【0010】
しかし、上記棒付きスポンジは棒とスポンジが一体型であるから、衛生面から使い捨てにせざるを得ないこの種用途の製品としては不経済と言わざるを得ない。なお口腔の清浄は毎食後(3回/日)行うことが望ましい。
【0011】
この点、ガーゼ巻き割り箸は安価であるが、巻き付けたガーゼが解けてこないように糸等で縛る必要があり、使用する毎に介護者が作製しなければならないという面倒がある。
【0012】
ところで他の用途(例えば便器用)の清掃具として、汚れを拭う払拭材を取り替え可能に構成し、1回の使用コストを低く抑えたものが提案されている。例えば特許文献1には、2本の棒状把持部材の先端に挟持片を設けると共に他端を弾性部材を介して連結し、先端の挟持片間に払拭材(例えば水溶性パッド)を挟むようにしたものが示されている。なお上記2本の把持部材にはこれらを貫通させたネジが設けられ、このネジの締め付けによって挟持片に挟んだ払拭材を強く固定できるようになっている。
【0013】
特許文献2には、1本の握持用柄の先端に形成された払拭材取付部にシート状払拭材を巻き付け、上記握持用柄の後端部に枢支された止着部材によって、上記巻き付けたシート状払拭材の自由端を止着する構成のものが示されている。
【0014】
特許文献3には、軸方向に導管を備えた柄の先端部分に2つ折りに折れ曲がる洗浄部を設け、この洗浄部に袋状の清浄用パッドを取り付けて使用する清掃具であって、上記柄の導管に挿通されたカギ型係止棒を、上記洗浄部の端に形成された凹部に差し込むことで折り曲げ状態を保持し、上記カギ型係止棒を引き抜いたとき、折曲げ部の復元力により上記洗浄部の折曲げを開く構成のものが提案されている。
【0015】
しかし上記特許文献1,2に記載の清掃具は、払拭材を保持するための硬質の部材(特許文献1では挟持片、特許文献2では止着部材)が外側に露出しているため、この様な機械的構成を口腔内払拭部に適用したとしても、口腔内を清浄するときに、上記硬質部材が口腔内に当たって患者に不快感を与える懸念がある。
【0016】
上記特許文献3に記載の清掃具は構造が複雑であるので、比較的大きなサイズのものとなり、この様な機械的構成は口腔内のような小さい箇所の清掃には適用できない。また口腔内の清浄に用いる場合は、清浄用パッドを取り替えるだけでなく、使用の度に清掃具本体の洗浄、消毒を行う必要があるが、構造が複雑であるため、洗浄、消毒が行き届かずに雑菌が繁殖する懸念があり、口腔内の清浄には不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実開昭57−149857号公報
【特許文献2】特開平9−19397号公報
【特許文献3】実開昭54−32061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、本体からの払拭具の取替を容易に行うことができ、且つ払拭具を取り付けた箇所に硬質部が露出せず、本体を洗浄,消毒し易く、コンパクトな構成の清浄具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る清浄具は、長手方向の両側を掴み部とし、中央或いは中央近傍を折り曲げ自在及び直線状に曲げ戻し自在な折曲点とする棒状部材と、前記折曲点を含めてその両側近傍を覆うように着脱自在に巻着される軟質材製払拭具とを備え、前記折曲点を折り曲げて前記棒状部材を二つ折り状態として前記巻着されている軟質材製払拭具を狭圧保持するように構成されたものであることを特徴とする。なお上記「中央或いは中央近傍」とは、棒状部材を直線状に伸ばしたときの長手方向中央及びこの中央近傍のことを言う。上記「折曲点」とは折れ曲がる部分のことを言い、1箇所で屈曲する場合の他、折曲点に或る程度の長さがあり、これが円弧状に曲がる場合等も含む。
【0020】
まず本発明の清浄具における払拭具の取り替え方法について説明する。払拭具の取り付けにあたっては、上記折曲点を曲げ戻して(広げて)棒状部材を直線状にし、折曲点を含んでその近傍に上記軟質材製払拭具を巻着させ(払拭具がシート状の場合は巻き付ける、筒状の場合は棒状部材の一方端から挿通する)、次いで折曲点で折り曲げて棒状部材を二つ折りにする。この折り曲げによって上記巻着された払拭具が狭圧され、外れずに保持される。取り外しにあたっては、折曲点を広げて払拭具への狭圧を解き、該払拭具を外す。
【0021】
この様に本発明では払拭具の取り付け/取り外しが簡単であり、従来のガーゼ巻き割り箸のように作製に手間がかからない。そして払拭具には比較的安価なガーゼや不織布等の布帛やティッシュペーパー等の紙等を用いることができ、この安価な払拭具を取り替えて何度も使用できるので、費用を低廉に抑えることができる。
【0022】
本発明の清浄具での清浄作業は、上記の様に二つ折りすることにより並べられた2つの掴み部を手に持ち、折り曲げた先(折曲点)の部分に巻かれた払拭具により行うと良い。そしてこの先の部分では払拭具が棒状部材を覆っているので、例えば口腔を清浄する際に棒状部材が口腔内に直接当たることがなく、患者に不快感を与えない。
【0023】
従来では払拭具を棒状体の先に取り付けたものであったが、本発明では上述の様に棒状部材の中央部分に払拭具を取り付け、棒状部材を二つ折りにすることで、2つの掴み部の先部分に払拭具が位置するようにしたものである。こうすることで、棒状部材の中央部分(折り曲げたときの先部分)に取り付けた払拭具をテコの原理で強固に保持できる上(折曲点が支点、掴み部が力点、払拭具を巻着した箇所が作用点となってテコの力が作用する)、棒状部材の中央部分(折り曲げたときの先部分)の構造を簡素、コンパクトなものにできる。従って口腔内のように狭い空間の清浄に用いることができる。また棒状部材が簡素な構造であれば、洗浄、消毒を容易且つ十分に行うことができる。仮に構造が複雑であると、小さな凹みに至る隅々まで洗浄、消毒を十分に行うことが困難となるであろう。
【0024】
上記折曲点に用いる部材としては、可撓性材料からなる棒状或いは板状部材や、ヒンジ、紐等が挙げられる。このうちでも可撓性材料からなる棒状或いは板状部材により折曲点が構成されていることが好ましい。簡素な形状であり、洗浄し易いからである。
【0025】
また二つ折り状態を維持できる係合部材を、前記棒状部材の掴み部に備えることが好ましい。
【0026】
上記係合部材としては引っ掛けリング、鈎状部材、雌雄の嵌合部材等が挙げられる。これらの態様を具体的に述べると、上記引っ掛けリングの場合、引っ掛けリングを一方の掴み部に設け、このリングを他方の掴み部に引っ掛けて二つ折り状態を維持する。上記鈎状部材の場合、鈎状部材を一方の掴み部に設け、この鈎状部材を他方の掴み部に引っ掛けて二つ折り状態を維持する。上記嵌合部材の場合、2つの掴み部のうちの一方に雄型嵌合部材、他方に雌型嵌合部材を設け、これらを着脱自在に嵌合させて二つ折り状態を維持する。
【0027】
上記の様な係合部材を用いずに、2つの掴み部を揃えた状態として手で握ることにより、二つ折り状態を維持するようにしても良いが、上記係合部材を用いれば、手で握り続ける必要が無く、例えば指先で鉛筆や歯ブラシのように持って清浄作業を行うことも可能になる。
【0028】
また上記の通り係合部材は掴み部に設けられており、折曲点から離れて位置しているので、折曲点やその近傍をスッキリとした簡素な形状・外観のままとすることができ、洗浄、消毒のし易さを損なうことがない。加えて折曲点から離れた位置で係合することから、折曲点付近に巻着した払拭具をテコの原理で強力に狭圧することができる。
【0029】
更に本発明において、前記棒状部材は、二つ折り状態の外側面に、前記折曲点に向かって先細の段差部が形成されたものであり、且つその段差部の踏み面を、前記折曲点に向かって水平面または拡大面として構成されたものであることが好ましい。なお上記「踏み面」とは、上記段差部における段差高さに対する略水平方向の面の意味であり、上記段差部を階段に見立てて「踏み面(ふみづら)」と称している(足で踏むわけではない)。上記「折曲点に向かって水平面」とは、後述の図4(b)に示すように踏み面43f,46fを側方から見たときX方向に沿った平面であることを言い、上記「折曲点に向かって拡大面」とは、後述の図6に示すように、踏み面53f,56fを側方から見たときに折曲点(14)に向かって拡大するように傾斜した平面であることを言う。
【0030】
上記清浄具を口腔内に用いた場合において、使用時の清浄具の形態、即ち棒状部材を二つ折りにした形態として、棒状部材が先に向かってテーパ状に厚みが薄くなっている(先細になっている)と、患者が歯で噛んだとき、上記テーパの傾斜に沿って滑って清浄具が口腔から抜け出し易い(後述の図5(b)参照)。しかし上記の様に、段差部の踏み面が先(折曲点)に向かって上がる傾斜(後述の図6参照)或いは水平(後述の図4、図5(a)参照)であると、抜け出す虞が小さい。
【0031】
なお段差部を設けずに踏み面を先(折曲点)に向かって上がる傾斜とすると、清浄具が先(折曲点)に向かって全体的に太くなり、口腔内を清掃し難い。この点図示例の如く段状にすることで、清浄具全体としては先に向かって細くでき(後述の図4(b)、図6参照)、且つ棒状部材を二つ折りにした状態での外側となる面については、先細に傾斜しない構成にすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る清浄具によれば、払拭具を容易に交換することができる上、払拭具を取り付けた箇所に硬質な部材が露出しておらず、また払拭具を取り付けた箇所をコンパクトに構成できるので、口腔にも快適に使用することができる。加えて清浄具の本体である棒状部材の洗浄、消毒を容易に行い得る。なお口腔内の如き狭隘部のみならず、適用対象に応じて大きさ、素材等に変更を加えれば、各種清掃用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1に係る清浄具を示す図であり、(a)はこの清浄具における棒状部材の斜視図、(b)はこの棒状部材を直線状に伸ばしたときの斜視図、(c)は棒状部材に払拭具を巻き付ける様子を表す斜視図、(d)は清浄具の使用状態を表す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る清浄具を示す図であり、(a)はこの清浄具における棒状部材の斜視図、(b)は清浄具の使用状態を表す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態3に係る清浄具を示す図であり、(a)はこの清浄具における棒状部材を示す斜視図、(b)は棒状部材における嵌合部材について、その嵌合の様子を説明する為の断面図である。
【図4】本発明の実施形態4に係る清浄具を示す図であり、(a)はこの清浄具における棒状部材の斜視図、(b)はこの棒状部材を二つ折りにしたときの側面図、(c)は棒状部材に払拭具を巻き付けた様子を表す斜視図、(d)は清浄具の使用状態を表す斜視図である。
【図5】清浄具を患者が噛んでいる様子を表す断面図であり、(a)は実施形態4の清浄具の場合で、(b)は棒状部材における棒先部分がテーパ状の清浄具の場合である。
【図6】本発明の実施形態5に係る清浄具における棒状部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る清浄具に関して、例を示す図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0035】
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1に係る清浄具10を示す図であり、(a)は清浄具10における棒状部材11の斜視図、(b)はこの棒状部材11を直線状に伸ばしたときの斜視図、(c)は棒状部材11に払拭具12を巻き付ける様子を表す斜視図、(d)は清浄具10の使用状態を表す斜視図である。
【0036】
清浄具10は棒状部材11と軟質材製払拭具12とからなる。棒状部材11は、四角柱状の2本の支持棒13,16を、可撓性部材14により連結した構成であり、図1(b)に示すように、直線状にしたとき、長手方向の中央に上記可撓性部材14が位置する。可撓性部材14は板状の部材であり、これを折曲点として折り曲げ及び直線状への曲げ戻し自在となっている(図1(a),(b))。なお以下、支持棒13,16における可撓性部材14に近い部分を棒先部分13a,16aと言い、遠い部分(棒状部材11を直線状に伸ばしたときの両側部分)を掴み部13b,16bと言う。
【0037】
2本の支持棒13,16のうちの一方の支持棒13には、その掴み部13bの位置に鈎状部材15が設けられている。この鈎状部材15は、他方の支持棒16の掴み部16bを係合可能である様なコ字状となっている。
【0038】
棒状部材11の材料としては合成樹脂、金属、木材等が挙げられ、例えば支持棒13,16には硬質の合成樹脂を用い、可撓性部材14には軟質の合成樹脂を用いる。なお支持棒13,16と可撓性部材14を同じ素材で構成し、可撓性部材14の箇所を薄く或いは細くすることで可撓性を発現させるようにしても良い。
【0039】
払拭具12の材料としては、吸水性やクッション性があって衛生的なものが良く、具体的にはガーゼ等の織物、不織布、編物、紙、スポンジ(例えばウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体)等のシート状軟質材が挙げられる。なお紙の場合は所謂ティッシュペーパーやキッチンペーパー等の様に耐水性を示すものを用いる。織物、不織布、編物の場合の繊維素材としては、ポリプロピレン等の合成繊維、綿等の天然繊維、半合成繊維のいずれであっても良く、殊にセルロース系繊維製の場合は吸水性に優れるので好ましい。
【0040】
次に清浄具10における払拭具12の着脱方法及び清浄具10の使用方法について述べる。
【0041】
棒状部材11への払拭具12の取付方法は、まず棒状部材11を直線状に延ばし(図1(a)に示す矢印A、図1(b))、可撓性部材14及びこの両側近傍の棒先部分13a,16aを覆うように払拭具12を巻き付ける(図1(c)、矢印B)。なお払拭具12が紙のように薄い材料の場合は、5〜10回程度巻き付けると良く、スポンジのように厚みのあるものの場合は1〜2回程度、ガーゼの場合は2〜5回程度、不織布の場合は3〜10回程度巻き付けると丁度良い厚みとなる。
【0042】
次いで棒状部材11を二つに折り曲げ(矢印C)、一方の掴み部13bの鈎状部材15を他方の掴み部16bに引っ掛ける(図1(d))。これにより二つ折り状態が維持できる。また二つ折り状態とすることで、棒先部分13a,16aで払拭具12が狭圧され、払拭具12が解けずに確りと保持される。尚このとき、可撓性部材14が支点、掴み部13b,16bが力点、棒先部分13a,16aが作用点となってテコの原理により払拭具12が強力に挟圧される。
【0043】
そして上記清浄具10の使用に際しては、掴み部13b,16bを手に持ち、折り曲げ状態で先部分となる払拭具12により、口腔内等を清浄する(図1(d))。この際、先部分は払拭具12で覆われ、硬質な部分が露出していないので、口腔内に対して柔らかく接触させることができる。仮に患者が強く噛んで棒状部材11が壊れても、その断片は払拭具12内に収まって外に出ない。また先部分はコンパクトであるので、口腔内のような小さな箇所の清浄にも都合が良い。
【0044】
使用後は、鈎状部材15を掴み部16bから外し、棒状部材11を二つ折り状態から直線状態に曲げ戻して(図1(c))、払拭具12を巻解いて外す。そして棒状部材11を洗浄、消毒する。このとき棒状部材11の可撓性部材14や棒先部分13a,16aは、払拭具12を通して染み込んだ唾液により汚れていることがあるが、この部分は簡素な構造であるので、洗浄、消毒を容易且つ十分に行うことができる。
【0045】
次いで再び新しい払拭具12を上記の様にして取り付けて使用すると良い。
【0046】
この様に払拭具12を取り替えて使用することができるので、全体を使い捨てにする場合と違って、費用が低廉となる。しかも払拭具12の交換操作は、上記の通り、払拭具12を巻回し、棒状部材11を二つ折りにして鈎状部材15を引っ掛けるという非常に簡単な操作であるから、手間を要しない。
【0047】
<実施形態2>
図2は本発明の実施形態2に係る清浄具を示す図であり、(a)は清浄具における棒状部材の斜視図、(b)は清浄具の使用状態を表す斜視図である。なお図1と同一の符号を付した箇所は、図1の例と同じ構成部分である。
【0048】
実施形態2の清浄具20は、実施形態1での鈎状部材15に換えて、ゴム製のリング25を用いたものである。リング25はその一箇所がリング取付部25aにて支持棒13の掴み部13bの位置に取り付けられている。
【0049】
上記と同様に、真っ直ぐにした棒状部材21における可撓性部材14(折曲点)及び棒先部分13a,16aに払拭具12を巻き付けた後、棒状部材21を二つ折りにし、リング25を掴み部16bに引っ掛け、該リング25により掴み部13b,16bを合わせた状態に保持する。これにより棒状部材21の二つ折り状態が維持される。また二つ折り状態とすることで、棒先部分13a,16aで払拭具12が狭圧され、払拭具12が解けずに確りと保持される。
【0050】
払拭具12を取り替えるときは、リング25を掴み部16bから外し、棒状部材21を直線状にして払拭具12を外し、棒状部材21の洗浄、消毒をした後、新しい払拭具12を上記と同様にして取り付ける。この様に払拭具12の交換が容易であり、また棒状部材21の洗浄、消毒も容易である。
【0051】
なおリング25としてはゴム製に限らず、伸縮性のない樹脂リング、紐製や金属製のリングであっても良い。この場合、可撓性部材14及び棒先部分13a,16aに払拭具12を巻着して折り曲げた状態での掴み部13b,16bの距離を勘案して、リングの大きさを設定しておくと良い。また支持棒13,16が多少撓むことも考えられるので、これを考慮してやや小さいリングにしておけば、掴み部13b,16bを強く締め付けることができる。
【0052】
<実施形態3>
図3は本発明の実施形態3に係る清浄具を示す図であり、(a)はこの清浄具における棒状部材31を示す斜視図である。なお図1と同一の符号を付した箇所は、図1の例と同じ構成部分である。
【0053】
棒状部材31は、2本の支持棒33,36を可撓性部材14により連結した構成である。支持棒33の掴み部33bには、長円状に突出した雄型嵌合部材35が設けられ、支持棒36の掴み部36bには、長円状に窪んだ雌型嵌合部材37が形成されており、これら雄型嵌合部材35と雌型嵌合部材37により嵌合/解除可能な一対の嵌合部材を構成している。
【0054】
図3(b)はこの嵌合部材について、その嵌合の様子を説明する為の断面図であり(但し、切断部端面のみを画いている)、ここに示す掴み部33b,36bの断面は、図3(a)に示すD−D線断面とE−E線断面に対応する。
【0055】
払拭具の取り付けにあたっては、上記と同様に、真っ直ぐにした棒状部材31の可撓性部材14(折曲点)及び棒先部分13a,16aに払拭具(図3において図示せず)を巻き付け、棒状部材31を二つ折りに折り曲げる。そして雌型嵌合部材37に対して雄型嵌合部材35を押し込んで嵌合させる(矢印F,G)。こうして棒状部材31の二つ折り状態を維持し、折り曲げ状態で先部分となる払拭具により清浄を行う。
【0056】
本実施形態3の清浄具においても払拭具の交換が容易であり、また棒状部材31の洗浄、消毒も容易である。
【0057】
<実施形態4>
図4は、本発明の実施形態4に係る清浄具40を示す図であり、(a)は清浄具40における棒状部材41の斜視図、(b)は棒状部材41を二つ折りにしたときの部分側面図、(c)は真っ直ぐの棒状部材41に払拭具12を巻き付けた様子を表す斜視図、(d)は清浄具40の使用状態を表す斜視図である。なお図1と同一の符号を付した箇所は、図1の例と同じ構成部分である。
【0058】
上記実施形態1では支持棒13,16の棒先部分13a,16aが真っ直ぐな四角柱状であったが、実施形態4では、図4(a),(b)に示すように、支持棒43,46の棒先部分43a,46aについて、棒状部材41を二つ折りした状態での外側となる面に、可撓性部材14(折曲点)に向かって降下する階段状の段差部が形成されている。つまり二つ折りした状態の棒状部材41を全体的に見たときに、可撓性部材14に向かって先細となるように段差部が形成されている(図4(b))。この段差部における踏み面43f,46fの角度は、棒状部材41を二つ折りした状態で、可撓性部材14(折曲点)に向かう方向(X方向)に沿って水平となっている。換言すると、踏み面43f,46fがX−Z平面と同じ方向の平面になっている。
【0059】
棒状部材41への払拭具12の取付、交換についても、上記と同様に、真っ直ぐにした棒状部材41の可撓性部材14(折曲点)及び棒先部分43a,46aに払拭具12を巻き付け(図4(c))、棒状部材41を二つ折りに折り曲げ、一方の掴み部13b(支持棒43の後端側)に設けられたL字型の鈎状部材45を掴み部16b(支持棒46の後端側)に引っ掛ける(図4(d))。
【0060】
この実施形態4の清浄具40では、図4(d)に示すように、二つ折り状態で先となる部分が全体として先細に薄くなる(Y方向に薄くなる)。これは内部に隠れた棒先部分43a,46aが全体として先に向かって細く(Y方向に小さく)なっているからである。この様に清浄具40が先細になっていると、口腔内に入れやすい。
【0061】
他方、上記の様に内部の棒先部分43a,46aが階段状になって踏み面43f,46fがX−Z平面とほぼ同じであると、次のような利点がある。つまり例えば図5(b)に示すように、棒先部分63a,66aがテーパ状に先細になっている清浄具60では、口腔に挿入した清浄具60を仮に患者が噛んだとき、テーパの傾斜に沿って力が加わるので、清浄具60が口腔から抜け出し易い。しかし図5(a)に示すように、実施形態4の清浄具40の如く踏み面43f,46fが水平であると、噛んだ力は踏み面43f,46fに対してほぼ垂直に加わることになるので、抜け出る虞が小さい。
【0062】
この様に抜け出し難い構成の清浄具であれば、口腔内の清浄の他、患者の開口を保持させるための所謂バイトブロックとして用いる場合に好適である。
【0063】
<実施形態5>
図6は本発明の実施形態5に係る清浄具における棒状部材51の側面図である。
【0064】
上記実施形態4では、階段状の棒先部分43a,46aの踏み面43f,46fが、棒状部材41を二つ折りした状態で、可撓性部材14に向かう方向に沿った水平面(X−Y平面と同じ平面)のものを示したが、実施形態5では、棒先部分53a,56aの踏み面53f,56fが、可撓性部材14(折曲点)に向かって上がる傾斜角度に構成されている。換言すると、棒状部材51を二つ折りした状態で側方から見たとき、踏み面53f,56fが可撓性部材14(折曲点)に向かって拡大した(Y方向に大きくなった)構成である。
【0065】
実施形態5の清浄具の場合は、口腔に挿入した清浄具を患者が歯で噛んだときに、口腔から清浄具が一層抜け出る虞がなくなる(勿論、払拭具を巻着した状態で使用する)。なお、踏み面53f,56fの傾斜のために口腔の奥に向かう力が加わるが、棒先部分53a,56aの段差部における蹴上げ面53g,56gによって、それ以上口腔の奥に向かうことが止められる。
【0066】
また踏み面53f,56fは可撓性部材14に向かって拡大しているものの、上記の様に段差部を有するので、全体としては先に向かって細くなっているので、払拭具を巻着した状態においても、先部分が大きくならない。
【0067】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、折曲点である可撓性部材14が、棒状部材11,21,31,41,51の長手方向中央に位置する構成のものを示したが、これに限らず、中央近傍であれば良い。
【0068】
また上記実施形態では折曲点の部材として板状の可撓性部材14を示したが、これに限らず、線状の部材であっても良く、或いは紐やヒンジ等であっても良い。例えば紐の場合は支持棒の先端に孔を開けて通し繋げると良い。
【0069】
上記実施形態では払拭具12の形態としてシート状のものを挙げたが、筒状に構成されたものであっても良く、例えば不織布やガーゼを筒状に形成したものや、筒状スポンジ等が挙げられる。筒状の払拭具12の場合は、棒状部材11の一方端から挿通するようにして可撓性部材14(折曲点)の辺りに位置させると良い。但しこの場合において、使用後の汚れた払拭具12を破棄するとき、破って外すか、或いは棒状部材を挿通して取り除くことになるが、挿通して取り除く場合は掴み部を汚す懸念がある。この点においてシート状の払拭具であれば、巻き解いて取り外すことができるので、掴み部を汚す懸念がない。
【0070】
上記説明では本発明の清浄具を専ら口腔内の清浄に用いる場合を述べたが、これに限らず、ガスレンジの油汚れや換気扇の汚れ、窓のサッシ溝の汚れ等といった家庭内の汚れ、または工作機器などの汚れの清掃にも使用可能である。
【0071】
棒状部材の棒先部分としては様々な形状が可能であり、用途に応じて、折曲点及び棒先部分の形状を細くしたり平たく広げたり(図4(a)のZ軸方向に広げる)、種々の形態が可能である。
【符号の説明】
【0072】
10,20,40 清浄具
11,21,31,41,51 棒状部材
12 払拭具
13,16,33,36,43,46 支持棒
13a,16a,43a,46a,63a,66a 棒先部分
13b,16b,33b,36b 掴み部
14 可撓性部材
15 鈎状部材
25 リング
35 雄型嵌合部材
37 雌型嵌合部材
43f,46f,53f,56f 踏み面
53g,56g 蹴上げ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両側を掴み部とし、中央或いは中央近傍を折り曲げ自在及び直線状に曲げ戻し自在な折曲点とする棒状部材と、
前記折曲点を含めてその両側近傍を覆うように着脱自在に巻着される軟質材製払拭具とを備え、
前記折曲点を折り曲げて前記棒状部材を二つ折り状態として前記巻着されている軟質材製払拭具を狭圧保持するように構成されたものであることを特徴とする清浄具。
【請求項2】
二つ折り状態を維持できる係合部材を、前記棒状部材の掴み部に備える請求項1に記載の清浄具。
【請求項3】
前記棒状部材は、二つ折り状態の外側面に、前記折曲点に向かって先細の段差部が形成されたものであり、且つその段差部の踏み面を、前記折曲点に向かって水平面または拡大面として構成された請求項1または2に記載の清浄具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233656(P2010−233656A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82818(P2009−82818)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(593148804)川本産業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】