説明

清浄空気製造装置および換気機能付清浄空気製造装置

【課題】粉塵による目詰まりがなく、また、スパークの発生しない、また、簡単な構造で、また、捕集した粉塵が下流側に飛散せず、また、粉塵を自動的に取り除くことが可能な清浄空気製造装置を得る。
【解決手段】極板Aと極板Bとを対向して設けてそれぞれに異なる電圧を印加し、2つの極板の間を通過する粉塵を極板Aから極板Bに向かって移動させ、極板Aの近傍に作り出された清浄空気を取り出すことにより、粉塵による目詰まりがなく、また、スパークの発生しない、また、簡単な構造で、また、捕集した粉塵が下流側に飛散せず、また、粉塵を自動的に取り除くことが可能な清浄空気製造装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電場の力を使って粉塵を取り除いた清浄空気を作り出す清浄空気製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の集塵装置は、特許文献1に記載されるような主にコロナ放電によって空気分子をイオン化して空気中に含まれる粉塵を帯電する帯電部を前段に配置し、異なる電圧が印加される極板Aおよび極板Bが通風方向に対して平行かつ空間を設けながら積層された集塵部を後段に配置した電気集塵ユニットとして知られている。集塵装置の上流側もしくは下流側に送風機などの送風手段を設けることで帯電部、集塵部の順に空気が送り込まれ、帯電部で帯電された空気中の粉塵は集塵部の極板Aおよび極板Bの間に設けられた電場の力を受けて極板Aもしくは極板Bに捕集される。
【0003】
以下、その電気集塵ユニットについて図8を参照しながら説明する。
【0004】
図8に示すように、帯電部101と、その下流側に設けられた集塵部102とで電気集塵ユニットは構成される。帯電部101は、通風方向に対して平行となる棘状の先端103を有する放電極板104および対向極板105とを一定の間隔を開けながら平行となるように積層することで構成される。放電極板104に高電圧を、また、対向極板105に0kVの電圧を印加することで棘状の先端103に不均一な電場を設け、コロナ放電を発生させる。コロナ放電が発生することで空気分子が電離し、電荷を有する空気イオンが作られる。空気中の粉塵に空気イオンが付着することで粉塵を帯電させる。
【0005】
また、集塵部102は、極板A106と極板B107とを通風方向に対して平行かつ空間を設けながら積層することで構成される。高圧電源108によって例えば極板A106に高電圧を、また、極板B107に0kVの電圧が印加され、極板A106と極板B107の間に電場が形成される。帯電部によって帯電した粉塵は集塵部の極板A106および極板B107との間に導入されて極板A106もしくは極板B107のどちらかに捕集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3254134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の電気集塵ユニットでは、極板A106と極板B107を一定の間隔を開けながら交互に積層して集塵部102を構成し、極板A106もしくは極板B107のどちらかに付着させて空気中から粉塵を取り除き、粉塵を取り除いた空気全てを室内などに供給する。そのため、高い清浄度を有する空気を供給するためには集塵効率を上げる必要があり、そのためには極板A106および極板B107の積層間隔を小さくする必要がある。この積層間隔を小さくすると、捕集した粉塵で目が詰まりやすくなり、作り出せる清浄空気の量が減少しやすくなる。また、積層間隔を小さくすると極板A106および極板B107の間で火花を伴う短絡(以下スパーク)が生じやすくなる。このスパークは音や信号のノイズ、または発火の原因となりうる。また、従来の電気集塵ユニットは間隔を開けながら極板Aと極板Bを交互に積層し、同時にそれぞれの極板に異なる電圧を印加するために電気的に短絡させないことが必要とされるため、構造が難しい。また、従来の電気集塵ユニットでは粉塵をたくさん捕集すると、一度極板に捕集した粉塵が風の力で下流側に飛散し、作り出した清浄空気の清浄度を下げやすい。また、下流側に飛散するのを防ぐために捕集した粉塵を取り除く必要があるが、従来の電気集塵ユニットでは洗浄などによって手動で捕集した粉塵を取り除く必要がある。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、粉塵による目詰まりがなく、また、スパークの発生しない、また、簡単な構造で、また、捕集した粉塵が下流側に飛散せず、また、粉塵を自動的に取り除くことが可能な清浄空気製造装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、極板Aと極板Bとを対向して設けてそれぞれに異なる電圧を印加し、2つの極板の間を通過する粉塵を極板Aから極板Bに向かって移動させ、極板Aの近傍に作り出された清浄空気を取り出すことを特徴とするものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉塵による目詰まりがなく、また、スパークの発生しない、また、簡単な構造で、また、捕集した粉塵が下流側に飛散せず、また、粉塵を自動的に取り除くことが可能な清浄空気製造装置および換気機能付清浄空気製造装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1の帯電部を示す構成図
【図2】同粉塵分離部を示す構成図
【図3】同清浄空気製造装置を示す構成図
【図4】本発明の実施の形態2の清浄空気製造装置を示す構成図
【図5】本発明の実施の形態3の清浄空気製造装置を示す構成図
【図6】本発明の実施の形態4の清浄空気製造装置を示す構成図
【図7】本発明の実施の形態5の清浄空気製造装置を示す構成図
【図8】従来の集塵装置を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1記載の清浄空気製造装置は、極板Aと極板Bとを対向して設けてそれぞれに異なる電圧を印加し、2つの極板の間を通過する粉塵を極板Aから極板Bに向かって移動させ、極板Aの近傍に作り出された清浄空気を取り出すことを特徴とするものである。ここで清浄空気とは装置の上流側から取り入れる処理空気よりも粉塵濃度が低い空気を意味しており、処理空気よりも少しでも粉塵濃度が低いものを清浄空気と定義する。
【0013】
極板Aと極板Bとの間に設けられた空間には電場が設けられる。この空間を通過する粉塵はこの電場によって誘電分極作用を引き起こしてクーロン力を受け、極板Bに向かって移動する。すなわち粉塵が遠ざかった極板Aの近傍から清浄空気を得ることが可能となる。ここで、粉塵を極板Bに付着させて捕集するのではなく、極板Bに移動して清浄になった極板A近傍の空気を取り出すという原理であるため、極板Aと極板Bとの間の空間が捕集した粉塵によって目詰まりを起こすことがない。また、極板Bに粉塵を捕集する必要がないため、極板Aと極板Bとを大きく離すことができる。そのためスパークが発生しない。また、極板Aと極板Bとを交互に積層するのではなく、単純にお互いを対向させる構造であるため、極板Aと極板Bとが短絡しない構造を簡単に得ることができる。また、極板Bに向かって移動した粉塵は、空気と一緒に室外などに排出することで自動的に取り除くことができる。ここで、極板Aおよび極板Bは通風方向において、所定の清浄度を有する清浄空気を得るのに必要なだけの寸法を有している。したがって本発明の請求項1に示すように複数ではなく1枚の極板Aと1枚の極板Bとを向かい合わせる構成においても所定の清浄度を有する清浄空気を得ることが可能となっている。
【0014】
また、間隔を開けて極板Bを積層し、極板Aに近づくにつれて極板Bの通風方向の寸法を上流側から遠ざかるように小さくすることを特徴とするものである。極板Aと極板Bとの間の空間は上流側から下流側になるにつれて電場の力が大きくなり、そこを通過する粉塵は上流側から下流側に移動するにつれて大きくなる電場の力を受ける。そのため、より短時間で粉塵は極板Bに移動し、その結果より高い清浄度を有する清浄空気を得ることができる。また、極板Aと極板Bとの間の空間は極板Bで仕切られるため、一度極板Bに移動した粉塵が空気の乱流作用などによって再度極板Aへと移動することを物理的に防ぐことができる。そのためより高い清浄度を有する清浄空気を得ることが可能となる。
【0015】
また、極板Bの通風方向の寸法を小さくする割合を極板Aに近づくほど小さくすることを特徴とするものである。上流側から下流側に向かうにつれて極板Aと極板Bとの間の空間の電場が強くなる。すなわち上流側に位置するほど粉塵が極板Bに向かう速度(以下垂直移動速度)が小さい。そのため、上流側に位置する極板Aと極板Bとの間の空間を長く取り下流側に向かうにつれて極板Aと極板Bとの空間を短くすることで上流側ほど粉塵が垂直方向へ移動するための時間を長くする。その結果、粉塵が垂直方向に移動して極板Bで仕切られた空間へ確実に入るようになり、高い清浄度を有する清浄空気が得られる。
【0016】
また、間隔を開けて極板Aを積層し、極板Bに近づくにつれて極板Aの通風方向の寸法を上流側から遠ざかるように小さくすることを特徴とするものである。すなわち上流側から下流側にいくにつれて電場が強くなる構造であることからより高い清浄度を有する清浄空気を得ることが可能となる。また、極板Aと極板Bとの間の空間を極板Aが仕切る構造であるため、極板Aが粉塵を反発して極板Bへ移動させることで得た清浄空気の清浄度を下流側まで高いまま維持して得ることができる。
【0017】
また、極板Aの通風方向の寸法を小さくする割合を極板Bに近づくほど小さくすることを特徴とするものである。上流側から下流側に向かうにつれて極板Aと極板Bとの間の空間の電場が強くなる。すなわち上流側に位置するほど粉塵の垂直移動速度が小さい。そのため、上流側に位置する極板Aと極板Bとの空間を長く取り、下流側に向かうにつれて極板Aと極板Bとの間の空間を短くすることで上流側ほど粉塵が垂直方向へ移動するための時間を長くする。その結果、粉塵が垂直方向に移動して極板Aと極板Bの間の空間へ確実に入るようになり、高い清浄度を有する清浄空気が得られる。
【0018】
また、間隔を開けて極板Aを積層し、また、間隔を開けて極板Bを積層し、極板Bに近づくにつれて極板Aの通風方向の寸法を上流側から遠ざかるように小さくし、また、極板Aに近づくにつれて極板Bの通風方向の寸法を下流側から遠ざかるように小さくすることを特徴とするものである。こうすることで極板Aと極板Bとの間の空間の電場を上流側から下流側における全ての位置において強くすることができ、粉塵の垂直移動速度を高めてより高い清浄度を有する清浄空気を得ることができる。
【0019】
また、極板Aもしくは極板A群が中央に位置するように2個の粉塵分離部を並列に設けることを特徴とするものである。このようにすることで粉塵分離部の清浄空気を取り出す箇所を大きくすることができ、より多くの清浄空気を得ることができる。
【0020】
また、極板Aと極板Bとで構成される部分を粉塵分離部とし、粉塵分離部の上流側に粉塵を帯電させる帯電部を設けることを特徴とするものである。帯電部は、例えば棘状の突起を有する放電極板と対向極板とで構成され、コロナ放電を起こして棘状の突起近傍から得た空気イオンを粉塵に浴びせて帯電させる作用を有する。粉塵を帯電させることで極板Aと極板Bとの間の空間の電場によるクーロン力を粉塵はより強く受けるようになり、垂直移動速度が高まる。したがってより高い清浄度を有する清浄空気を得ることができる。
【0021】
また、極板Aと極板Bとで構成される部分を粉塵分離部とし、粉塵分離部の上流側もしくは下流側の少なくともどちらか一方に送風手段を設けることを特徴とするものである。送風手段を上流側もしくは下流側の少なくともどちらか一方に設けることで粉塵を含む空気を確実に粉塵分離部に送り込んで清浄空気を得るための処理を行うことができる。
【0022】
また、上流側に圧損体を設けることを特徴とするものである。本発明の清浄空気製造装置は極板Aと極板Bとの間隔が大きいため、空気を通過させる際の圧力損失が小さい。そのため、例えば開口よりも小さくて丸い形状を有するダクトを接続した場合、装置全体に空気が均一に流れず、通風方向における粉塵の移動速度(以下水平移動速度)が大きい部分の空気に含まれる粉塵は確実に垂直移動する前に下流側に到達して清浄空気に含まれてしまう。そうなると清浄空気の清浄度が低くなってしまうという不具合が生じる。そこで上流側の開口に圧損体を設けることで装置全体に空気を均一に流して空気の水平移動速度を一定にする。その結果、清浄空気の清浄度を高く維持することができる。
【0023】
また、帯電部の下流側にオゾン分解手段を設けることを特徴とするものである。帯電部はコロナ放電を起こしており、その副生物としてオゾンを発生する。オゾンはある一定の濃度以上になると人体に対して有害である。活性炭フィルタや二酸化マンガン添着フィルタなどオゾン分解手段を帯電部の下流側に設けることでオゾン濃度を人体に有害ではないレベルまで低減することが可能となる。
【0024】
また、請求項12に記載の換気機能付清浄空気製造装置は、室外から取り入れた空気から清浄空気を作り出して室内へ供給することを特徴とするものである。室外から取り入れた空気を室内に供給することで室内の換気ができるが、室外から取り入れた空気から作り出した清浄空気を室内に入れることで、清浄空気を室内に供給しながら換気することが可能となる。また、非清浄空気を室外などに排出すれば、清浄空気から取り除いた不要な粉塵を自動的に捨てることができ、その結果としてメンテナンスを省くことが可能な清浄空気製造装置が得られる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(実施の形態1)
放電極板1と対向極板2とを、空間を設けながら交互に配列して構成される帯電部3を図1に示す。放電極板1には通風方向5に対して平行となる棘状の先端4が設けられており、例えば放電極板1に6kV、対向極板2に0kVを印加する。電圧を印加することで棘状の先端4の周囲に密度が高くて不均一な電場を設け、棘状の先端4の近傍でコロナ放電を起こす。コロナ放電によってイオンが生成し、高いスピードで対向極板2に向かって拡散し、通風方向5に沿って帯電部3内に導入された空気中の粉塵6に付着して粉塵を帯電させる。
【0027】
次に、極板A7と極板B8からなる粉塵分離部9の構成図を図2に示す。極板B8は通風方向5に対して横に垂直となる方向(以降、垂直方向10)に間隔を開けながら積層することで群をなしており、極板B8に対向する位置に極板A7が設けられている。この時垂直方向に極板A7に向かって積層するにつれて極板B8の通風方向の長さを短くしており、その結果上流側の開口から見て極板B8は階段状となるように設けられている。極板A7および極板B8はそれぞれ通電端子A11および通電端子B12に接続されており、高圧電源13と接続して極板A7および極板B8にそれぞれ異なる電圧を印加できるようになっている。また、極板A7および極板B8を狭い間隔で交互に積層しない構造であるため極板A7と極板B8との間で起こりうるスパークを防止することが可能な構造となっている。
【0028】
次に、帯電部3と粉塵分離部9、清浄空気用送風手段14および非清浄空気用送風手段15を上流側から順に設けた清浄空気製造装置16の上面から見た構成図を図3に示す。清浄空気用送風手段14および非清浄空気用送風手段15によって上流側から下流側に向かって清浄空気製造装置16の中を空気が流れる。最も上流側に位置する帯電部3では放電極板1にプラス極性の高電圧を、また、対向極板2に0kVが印加されており、プラス極性のコロナ放電を起こしている。空気中に含まれる粉塵6はこのコロナ放電によって生じたイオンと結合してプラスに帯電する。プラスに帯電した粉塵6は帯電部の下流側に位置する粉塵分離部9に導入される。粉塵分離部9は間隔を開けて積層した極板B8群とそれに対向する極板A7とで構成され、極板A7にプラス極性の高電圧を、また極板B8に0kVを印加している。そのため粉塵分離部9の内部には極板A7から極板B8へと向かう電場が設けられている。
【0029】
また、間隔を開けて積層されたそれぞれの極板B8は、極板A7に近いものほど通風方向の寸法が上流側から遠ざかるように小さくなっており、すなわち階段状に積層された状態になっている。プラスに帯電した粉塵6は極板A7から極板B8へと向かう垂直方向にクーロン力を受け、通風方向への移動と垂直方向への移動があいまって図3に示すような斜め上への方向に移動する。
【0030】
斜め下に移動した粉塵6は極板B8どうしで仕切られた空間であるスリットB17に入り、下流側へ移動する。この時上流側であるほど極板A7と極板B8は離れており、垂直方向に粉塵6が受けるクーロン力は弱くなる。したがって上流側であるほど垂直方向への移動速度が小さくなり、スリットB17に入るのに時間がかかる。
【0031】
そこで極板B8の通風方向の寸法を小さくする割合を極板A7に近づくほど小さくすることによって上流側ほど粉塵6の移動する時間を大きくして粉塵6がスリットB17に入りやすくするようにしている。
【0032】
そして粉塵6を含み、非清浄空気用送風手段15によって極板B8どうしで仕切られた空間から搬送される空気は非清浄空気19として屋外へ排出されたり、また、濾過フィルタを通して清浄化されたりして処理される。逆に粉塵6が垂直方向に移動してスリットB17に入った後に残された空気の中には粉塵が少ない、もしくは無い状態となり、すなわち清浄空気18となる。このようにして作られた清浄空気18は極板A7と極板B8との間に設けられた空間A20の下流側から清浄空気用送風手段14によって取り出され、室内など清浄空気18が必要とされる空間へ供給される。
【0033】
(実施の形態2)
上流側に帯電部3を有し、その下流側に間隔を開けて積層された極板A7群とそれに対向する位置に設けられた極板B8とからなる粉塵分離部9、その下流側に清浄空気用送風手段14および非清浄空気用送風手段15とを有する清浄空気製造装置16の構成図を図4に示す。
【0034】
帯電部3は実施の形態1に記載したものと同様のものであり帯電部3を通過した粉塵6はプラスに帯電する。プラスに帯電した粉塵6は実施の形態1と同様に粉塵分離部9に導入される。ここで粉塵分離部9は間隔を開けて積層した極板A7群とそれに対向する極板B8とで構成され、極板A7にプラス極性の高電圧を、また極板B8に0kVを印加している。そのため粉塵分離部9の内部には極板A7から極板B8へと向かう電場が設けられている。
【0035】
また、間隔を開けて積層されたそれぞれの極板A7は、極板B8に近いものほど通風方向5の寸法が上流側から遠ざかるように小さくなっているためすなわち階段状に積層された状態となっている。
【0036】
プラスに帯電した粉塵6は極板A7から反発するように極板A7から極板B8へと向かう垂直方向10にクーロン力を受け、通風方向5への移動と垂直方向10への移動があいまって図4に示すような斜め上への方向に移動する。
【0037】
斜め上方向に移動した粉塵6は階段状に積層された極板A7群から次々に垂直方向10にクーロン力を受け、最終的に図4中の空間B21に入るように移動を続ける。この時上流側であるほど極板A7と極板B8は離れており、垂直方向10に粉塵6が受けるクーロン力は弱くなる。したがって上流側であるほど垂直方向10への移動速度が小さくなり、空間B21に入るために十分な距離を移動するのに時間がかかる。
【0038】
そこで極板A7の通風方向5の寸法を小さくする割合を極板B8に近づくほど小さくすることによって上流側ほど粉塵6の移動する時間を大きくして粉塵6が空間B21に入りやすくするようにしている。そして非清浄空気用送風手段15によって空間B21の下流側から粉塵6を含む非清浄空気19が搬送され、実施の形態1と同様に室外へ排出されたり濾過フィルタを通したりして処理される。
【0039】
また、粉塵6が移動して少なくなったもしくは無くなった空気は極板A7どうしで仕切られた空間であるスリットA22に導入され、清浄空気用送風手段14によってスリットA22の下流側から清浄空気18として取り出され、室内など必要とされる空間に供給される。
【0040】
(実施の形態3)
上流側に帯電部を有し、その下流側に間隔を開けて積層された極板A7群とそれに対向する位置に設けられた極板B8群とからなる粉塵分離部9、その下流側に清浄空気用送風手段14および非清浄空気用送風手段15とを有する清浄空気製造装置16の構成図を図5に示す。
【0041】
帯電部3は実施の形態1に記載したものと同様のものであり帯電部3を通過した粉塵6はプラスに帯電する。プラスに帯電した粉塵6は実施の形態1と同様に粉塵分離部9に導入される。
【0042】
ここで粉塵分離部9は間隔を開けて積層した極板A7群とそれに対向する極板B8群とで構成され、極板A7にプラス極性の高電圧を、また極板B8に0kVを印加している。極板A7は極板B8に近いものほど通風方向5の寸法が上流側から遠ざかるように小さくなり、また、極板B8は極板A7に近いものほど通風方向5の寸法が下流側から遠ざかるように小さくなっている。すなわち極板A7群は上流側から遠ざかるように極板A7を上方向に階段状に積層し、極板B8群は下流側から遠ざかるように極板B8を下方向に階段状に積層した形状となっている。
【0043】
このような構造とすることで上流側から下流側にかけて極板A7と極板B8とで形成される空間の電場を均一かつ強くすることが可能となる。そのためプラスに帯電した状態で粉塵分離部9に導入された粉塵6は通風方向5に移動しながら極板A7から極板B8へと向かう垂直方向10へクーロン力を受けることで図5に示すように斜め上方向に移動し、速やかに空間B21へと導入される。そして非清浄空気用送風手段15によって空間B21の下流側から粉塵6を含む非清浄空気19が搬送され、実施の形態1と同様に室外へ排出されたり濾過フィルタを通したりして処理される。
【0044】
また、粉塵6が移動して少なくなったもしくは無くなった空気は極板A7どうしで仕切られた空間であるスリットA22に導入され、清浄空気用送風手段14によってスリットA22の下流側から清浄空気18として取り出され、室内など必要とされる空間に供給される。
【0045】
ここで、実施の形態1、2および3に示したそれぞれの清浄空気製造装置16を作成し、粉塵濃度を測定して清浄空気18の清浄度を確認した結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
粉塵分離部9の通風方向の寸法は310mm、開口寸法は幅150mm、高さ170mmで共通とし、処理空気の通風方向における風速は0.2m/sとした。
【0048】
実施の形態1に示した清浄空気製造装置16の粉塵分離部9は通風方向の寸法が310mmの極板A7を1枚と、通風方向の寸法を310、290、270・・・、70mmと20mm刻みに短くした合計13枚の極板B8群によって構成される。極板B8どうしは4.5mmの等間隔で積層した。
【0049】
また、実施の形態2に示した清浄空気製造装置16の粉塵分離部9は通風方向の寸法が310mmの極板B8を1枚と、通風方向の寸法を310、290、270、・・・、70mmと20mm刻みに短くした合計13枚の極板A7群によって構成される。極板A7どうしは4.5mmの等間隔で積層した。
【0050】
また、実施の形態3に示した清浄空気製造装置16の粉塵分離部9は通風方向の寸法を310、290、270・・・、70mmと20mm刻みに短くした合計13枚の極板A7群と、通風方向の寸法を310、290、270、・・・、70mmと20mm刻みに短くした合計13枚の極板B8群によって構成される。極板A7どうし、および極板B8どうしはそれぞれ4.5mmの等間隔で積層した。
【0051】
清浄度は以下の式により算出した。
清浄度=1−Cp/Cin
【0052】
ここで、Cpは清浄空気18の粉塵濃度であり、Cinは上流側から取り入れた処理空気の粉塵濃度である。レーザーパーティクルカウンターを用いて粒子径0.3μm以上の大気塵の個数濃度(個/L)を測定し、それを粉塵濃度とした。清浄度はすなわち上流側から取り入れた処理空気から得た清浄空気18が元の処理空気に対してどの程度清浄であるかを示す指標となる。
【0053】
清浄空気の清浄度は風速、極板A7と極板B8の間の電場の強さ(すなわち印加する電圧)、極板A7と極板B8の距離、極板A7および極板B8それぞれの通風方向の寸法によって制御することが可能である。
【0054】
表1に示すように、実施の形態1、2および3に示したそれぞれの清浄空気製造装置16で得られた清浄空気18の清浄度は帯電部3の放電電流が100μAの時それぞれ59%、89%、94%となり、処理空気からそれぞれの清浄度を有する清浄空気18を得ることができた。特に実施の形態3に示す清浄空気製造装置16からは高い清浄度を有する清浄空気18が得られた。
【0055】
表1に示す実施の形態1、2の結果から、粉塵の帯電量(帯電部放電電流20〜100μA)にかかわらず、帯電した粉塵と同極の極板A、すなわち粉塵反発極板を複数積層した方が、帯電した粉塵と異極の極板B、すなわち粉塵吸着極板を複数積層するより、極板A近傍の空気をより清浄化できた。この要因としては、清浄空気を取り出す空間AとスリットA22を比較した場合、帯電した粉塵に働くクーロン力は極板との距離の2乗に反比例するため、粉塵と極板との距離が近い実施の形態2の方がクーロン力が強く働き、極板Bへの移動が早くなるためと考えられる。
【0056】
実施の形態3は実施の形態2よりも上流側で粉塵と極板との距離が近くなっており、粉塵の極板Bへの移動が上流側から促進され清浄度が高くなったと考えられる。
【0057】
(実施の形態4)
上流側に帯電部3を有し、その下流側に間隔を開けて積層された極板A7群とそれに対向する位置に設けられた極板B8群とからなる粉塵分離部9、その下流側に清浄空気用送風手段14および非清浄空気用送風手段15とを有する清浄空気製造装置16の構成図を図6に示す。
【0058】
帯電部3および清浄空気18を作り出す原理は実施の形態3と同様であるが、粉塵分離部9は実施の形態3に記載したものを、極板A7群を中心に通風方向5に対して上下対称に並べた構造となっている。このようにすることで粉塵分離部9の中央にスリットA22を並べた広い領域が得られ、その結果、より多くの清浄空気18を取り出すことが可能となる。
【0059】
(実施の形態5)
室外23の空気を処理空気として上流側から取り入れ、作り出した清浄空気18を室内24へ供給する換気機能付きの清浄空気製造装置16の構成図を図7に示す。
【0060】
図7に示すとおり清浄空気製造装置は天井裏28に設置されている。清浄空気製造装置16は上流側から順に圧損体25、帯電部3、粉塵分離部9、オゾン分解フィルタ26、清浄空気用送風手段14および非清浄空気用送風手段15を並べて構成される。そして丸型ダクト27で室外23と清浄空気製造装置16、または清浄空気製造装置16と室内24とを接続している。
【0061】
清浄空気製造装置16は四角い開口を有しており、丸型ダクト27で接続すると清浄空気製造装置16の開口全体に均一に空気が流れない。そのため清浄空気18の清浄度が低下する課題を有する。そこで圧損体25を帯電部3の上流側に設けることで、導入する処理空気の通風方向5の風速を均一にすることができる。
【0062】
また、粉塵分離部9の下流側にオゾン分解フィルタ26を設けることで、主に帯電部3で発生したオゾンを分解して無害化することができる。室外23の空気を取り入れ、得た清浄空気18を室内24へ供給することにより、清浄度の高い空気を供給しながら室内24の換気を行うことが可能となる。また、非清浄空気19は非清浄空気用送風手段15によって室外23へ排出されるため、従来の集塵装置では必要であった、捕集されて内部にたまった粉塵6を取り除くメンテ作業が必要なくなる。
【0063】
なお、全ての実施の形態において送風手段を設けた清浄空気製造装置を例として示したが、予め存在する通風経路の途中に送風手段を持たない状態で設置してもよく、例えば換気扇や空調機などがつながれたダクトの途中に設置しても機能を発揮することができる。
【0064】
また、実施の形態1、2、3、または4において、極板Aもしくは極板Bのいずれか、もしくは極板Aと極板Bの両方を上から見て階段状に設ける粉塵分離部を例として示したが、極板A、極板Bともに階段状に設けなくとも、効果の差はあるが同様の機能を持たせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、粉塵による目詰まりがなく、また、スパークの発生しない、また、簡単な構造で、また、捕集した粉塵が下流側に飛散せず、また、粉塵を自動的に取り除くことが可能であるため、換気扇、エアコンなどに搭載する清浄空気製造装置として有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 放電極板
2 対向極板
3 帯電部
4 棘状の先端
5 通風方向
6 粉塵
7 極板A
8 極板B
9 粉塵分離部
10 垂直方向
11 通電端子A
12 通電端子B
13 高圧電源
14 清浄空気用送風手段
15 非清浄空気用送風手段
16 清浄空気製造装置
17 スリットB
18 清浄空気
19 非清浄空気
20 空間A
21 空間B
22 スリットA
23 室外
24 室内
25 圧損体
26 オゾン分解フィルタ
27 丸型ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板Aと極板Bとを対向して設けてそれぞれに異なる電圧を印加し、2つの極板の間を通過する粉塵を極板Aから極板Bに向かって移動させ、極板Aの近傍に作り出された清浄空気を取り出すことを特徴とする清浄空気製造装置。
【請求項2】
間隔を開けて極板Bを積層し、極板Aに近づくにつれて極板Bの通風方向の寸法を上流側から遠ざかるように小さくすることを特徴とする請求項1記載の清浄空気製造装置。
【請求項3】
極板Bの通風方向の寸法を小さくする割合を極板Aに近づくほど小さくすることを特徴とする請求項2記載の清浄空気製造装置。
【請求項4】
間隔を開けて極板Aを積層し、極板Bに近づくにつれて極板Aの通風方向の寸法を上流側から遠ざかるように小さくすることを特徴とする請求項1記載の清浄空気製造装置。
【請求項5】
極板Aの通風方向の寸法を小さくする割合を極板Bに近づくほど小さくすることを特徴とする請求項4記載の清浄空気製造装置。
【請求項6】
間隔を開けて極板Aを積層し、また、間隔を開けて極板Bを積層し、極板Bに近づくにつれて極板Aの通風方向の寸法を上流側から遠ざかるように小さくし、また、極板Aに近づくにつれて極板Bの通風方向の寸法を下流側から遠ざかるように小さくすることを特徴とする請求項1記載の清浄空気製造装置。
【請求項7】
極板Aもしくは極板A群が中央に位置するように2個の粉塵分離部を並列に設けることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の清浄空気製造装置。
【請求項8】
極板Aと極板Bとで構成される部分を粉塵分離部とし、粉塵分離部の上流側に粉塵を帯電させる帯電部を設けることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の清浄空気製造装置。
【請求項9】
極板Aと極板Bとで構成される部分を粉塵分離部とし、粉塵分離部の上流側もしくは下流側の少なくともどちらか一方に送風手段を設けることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の清浄空気製造装置。
【請求項10】
上流側に圧損体を設けることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の清浄空気製造装置。
【請求項11】
帯電部の下流側にオゾン分解手段を設けることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載の清浄空気製造装置。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれかに記載の清浄空気製造装置を室外と室内を接続する換気風路内に設け、室外から取り入れた空気から清浄空気を作り出して室内へ供給することを特徴とする換気機能付清浄空気製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−224470(P2011−224470A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96798(P2010−96798)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】