説明

減圧吸収機能を有する容器用キャップ

【課題】減圧吸収機能に優れた容器用キャップを提供する。
【解決手段】本発明は、容器口部21の内周面21fを全周に亘って密閉する筒体部4を有し、この筒体部4の内側に、容器外向きに突出するとともに容器内の圧力の低下によって容器内向きに反転する隔壁7が配置された減圧吸収機能を有する容器用キャップ1である。キャップ1は、筒体部4の下端から筒状部5を一体に垂下させ、この筒状部5が口部内周面21fとの間に隙間Cを形成すると、当該筒状部5の下端に隔壁7を反転可能に連結する折り返し部6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の圧力低下に起因して生じる変形を吸収することを目的とした減圧吸収機能を有する容器用キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減圧吸収機能を有する容器用キャップ(以下、「キャップ」)としては、例えば、内容液を高温充填する製品において、常温に戻る際の体積変化によって、容器胴部に変形を生じることがあるため、キャップ本体の内側に載置されるインナーパーツに、容器口部の内周面を全周に亘って密閉するインナーリングを設けるとともに、このインナーリングの内側に、容器内の圧力の低下によって容器内向きに反転する反転部を設け、容器の内圧低下を吸収するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3750372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の反転部は、インナーリングの内周面から突出する円形くびれ部を介して当該インナーリングに連結されているため、インナーリングと円形くびれ部との連結部では変形し難く、特に、減圧度(圧力の低下割合)が小さい場合には顕著である。このため、従来の減圧吸収キャップには依然として、減圧吸収機能に改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、減圧吸収機能に優れた容器用キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器口部の内周面を全周に亘って密閉する筒体部を有し、この筒体部の内側に、容器外向きに突出するとともに容器内の圧力の低下によって容器内向きに反転する隔壁が配置された減圧吸収機能を有する容器用キャップであって、
前記筒体部の下端から一体に垂下するとともに容器口部の内周面との間に隙間を形成する筒状部と、当該筒状部の下端に前記隔壁を反転可能に連結する折り返し部とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に従えば、前記隔壁の頂部に、容器の内側に向かって突出する凹部を設けることができる。
【0008】
また、筒体部には、キャップ軸線に沿って間隔を置いて、容器口部の内周面に接触する2つの環状凸部を設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、容器口部の内周面を密閉する筒体部の下端から、容器口部の内周面との間に隙間を形成する筒状部を一体に垂下させ、当該筒状部の下端に折り返し部を介して、隔壁を反転可能に連結したことで、折り返し部そのものを筒状部の下端を起点として、変形させることができるとともに、折り返し部が筒状部の下端を起点に変形するときには、容器口部の内周面と筒状部との間に形成された隙間が折り返し部の変形代を逃がす逃げ代となる。
【0010】
加えて、隔壁そのものが容器外向きに突出することで、容器内向きに反転させることができる。
【0011】
従って、本発明によれば、減圧吸収機能に優れた容器用キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明である、容器用キャップの一形態である、ボトル容器用のキャップを容器とともに示す要部斜視図である。
【図2】同形態の要部縦断面図である。
【図3】同形態の減圧吸収状態を二点鎖線で示す要部縦断面図である。
【図4】本発明の実施例を減圧強度(kPa)と隔壁頂部の変位量(mm)との関係で、比較例とともに解析した結果を示すグラフ図である。
【図5】同実施例にて用いられる実施例及び比較例の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明である、減圧吸収機能を有する容器用キャップを詳細に説明する。
【0014】
符号1は、本発明の一形態である、ボトル容器用のキャップである。キャップ1は、ポリプロピレン等の合成樹脂からなり、ボトル容器20の口部21の外周面に着脱可能に固定される外筒部2と、この外筒部2の内側に環状の天壁部3を介して一体に垂下するとともに口部21の内周面(以下、「口部内周面」)21fを全周に亘って密閉する内筒部(筒体部)4とを有する。
【0015】
内筒部4の下端からは、口部内周面21fとの間に環状の隙間Cを形成する筒状部5が一体に垂下するとともに、この筒状部5の下端に折り返し部6を介して隔壁部7が一体に設けられている。
【0016】
隔壁部7は、図1に示すように、キャップ軸線Oに向かって容器外向きに突出するドーム形状をし、その縦断面形状が、図2に示すように、キャップ軸線Oに向かって容器外向きに突出する湾曲面を構成する。これにより、隔壁部7は、容器20内の圧力が低下すると、図3に示すように、速やかに折り返し部6を起点として容器内向きに反転することができ、容器20が減圧してボトルが潰れるより前に、隔壁部7が内向きに反転するように設計されている。
【0017】
加えて、折り返し部6は、筒状部5とともに口部内周面21fとの間に環状の隙間Cを形成することで、この隙間C分が径方向外向きの逃げ代として確保されることから、折り返し部6そのものも自由に変形させることができる。
【0018】
本形態では、口部内周面21fを密閉する筒体部4の下端から、口部内周面21fとの間に隙間Cを形成する筒状部5を一体に垂下させ、当該筒状部5の下端に折り返し部6を介して、隔壁部7を反転可能に連結したことで、折り返し部6そのものを筒状部5の下端を起点として、変形させることができるとともに、折り返し部6が筒状部5の下端を起点に変形するときには、口部内周面21fと筒状部5との間に形成された隙間Cが折り返し部6の変形代を逃がす逃げ代となる。
【0019】
加えて、隔壁部7そのものが容器外向きに突出することで、容器内向きに反転させることができる。
【0020】
従って、本形態によれば、減圧吸収機能に優れた容器用キャップを提供することができる。
【0021】
ところで、本発明に従えば、隔壁部7は、凹凸の無い、滑らかなドーム状に構成することは勿論、本形態のように、隔壁部7の頂部に、容器20の内側に向かって突出する凹部8を設けることができる。隔壁部7に凹部8を設けたことで、隔壁部7には、環状の落ち込み稜線9が形成される。また、凹部8は、図2に示すように、軸線Oに沿って容器内側に向かうに従って縮径し、環状の底部稜線10を介して底壁部11が一体に繋がる。更に、底壁部11には、容器内向きに突出する突出部12が設けられている。突出部12は、ドーム状に形作られることで、底壁部11には、環状の突出部稜線13が形成される。
【0022】
本形態のように、隔壁部7の頂部に凹部8を設けても、隔壁部7を容易に反転させることができる。
【0023】
なお、本形態では、内筒部4の内側(外筒部2側)に、口部内周面21fに接触する、2つの環状凸部4pがキャップ軸線Oに沿って間隔を置いて設けられている。この場合、キャップ1の締めトルクが大きくなりすぎることを防止することができる。
【実施例1】
【0024】
図4は、本発明の実施例を減圧強度(kPa)と隔壁部7の変位量(mm)との関係で、比較例1及び2とともに解析した結果を示す。なお、以下、実施例を実線で示し、比較例1及び2についてはそれぞれ、二点鎖線及び破線で示す。
【0025】
本解析では、実施例及び比較例1,2は共に、同一の材料(ポリプロプレン)で構成される。また、本解析では、同一の容器を用い、容器の圧力を減少させる条件も同一とした。
【0026】
また、本解析では、図3に示すように、実施例及び比較例をそれぞれ、隔壁部7の直径Dに対する当該隔壁部7の外形高さHの比r(=H/D)で規定した。
【0027】
なお、比較例1では、図5の二点鎖線に示すように、また、比較例2では、図5の破線に示すように、従来技術と同様に、容器口部内周面に沿って密着するように、キャップの筒状部を垂下させる一方、この筒状部から折り返し部を径方向内側に延在させることで、その中心に隔壁部を一体に設けている。
【0028】
実施例;r1=6.4×10-2(D=40.4mm,H=2.6mm)
比較例1;r3=7.5×10-2(D=34.45mm,H=2.6mm)
比較例2;r4=8.4×10-2(D=36.5mm,H=3.05mm)
【0029】
本発明によれば、実施例では、図4の実線で示すように、容器の圧力が20(kPa)を超えたとき、隔壁部7の変位量ΔXが急上昇する。即ち、本発明によれば、隔壁部7の直径D及び外形高さHを調整することで、容器の圧力が所望する圧力になるとき、隔壁部7の変位量ΔXを大きく確保することができる。
【0030】
また、実施例は、図4に示すように、変位量ΔXを全体として大きく確保できている。特に、実施例では、上述のとおり、低い減圧強度(kPa)でも変位量ΔXを大きく確保できている。
【0031】
これに対し、比較例1及び2はいずれも、その変位量ΔXが、図4の二点鎖線及び破線で示すように、実施例と比較して小さい。従って、本解析からも明らかなように、本発明によれば、キャップの減圧吸収機能を向上させることができる。
【0032】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、本形態では、外筒部2の内側に、口部21に設けたねじ部21sに螺合するねじ部2sを設けることで、容器20に対して着脱可能に構成しているが、本発明に従えば、開栓のみを想定し、再度の装着を要しないキャップにも適用することができる。なお、符号22は、口部21に設けられたネックリングである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、高温充填製品に用いられるキャップのみではなく、内圧の減少が想定される容器用のキャップであれば、様々なキャップに採用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 キャップ
2 外筒部
3 天壁部
4 内筒部(筒体部)
5 筒状部
6 折り返し部
7 隔壁部
8 凹部
9 落ち込み稜線
10 底壁部稜線
11 底壁部
12 突出部
13 突出部稜線
20 ボトル容器
21 口部
21f 口部内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の内周面を全周に亘って密閉する筒体部を有し、この筒体部の内側に、容器外向きに突出するとともに容器内の圧力の低下によって容器内向きに反転する隔壁が配置された減圧吸収機能を有する容器用キャップであって、
前記筒体部の下端から一体に垂下するとともに容器口部の内周面との間に隙間を形成する筒状部と、当該筒状部の下端に前記隔壁を反転可能に連結する折り返し部とを備えることを特徴とする減圧吸収機能を有する容器用キャップ。
【請求項2】
請求項1において、前記隔壁の頂部に、容器の内側に向かって突出する凹部を備えることを特徴とする減圧吸収機能を有する容器用キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2において、筒体部に、キャップ軸線に沿って間隔を置いて、容器口部の内周面に接触する2つの環状凸部を備えることを特徴とする減圧吸収機能を有する容器用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14345(P2013−14345A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146636(P2011−146636)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】