説明

減圧式融雪装置

【課題】 化石燃料に依存した高コストで地球温暖化に加担している現行の除排雪作業や融雪作業から化石燃料への依存度を下げ、より低コストで環境に優しい雪対策事業への変換が喫緊の課題である。
【解決手段】 気圧が低下すれば水の沸点が下がり、低温で水が沸騰する低圧沸騰を融雪に応用する。即ち本発明の減圧式融雪装置は融雪槽と加熱部と前記融雪槽内に真空ポンプを備え、前記融雪槽に水と雪や氷を入れて真空ポンプで前記融雪槽内の気圧を減圧し、水の沸点を引き下げて加熱して低圧沸騰の波と湯温で雪や氷を融解する。ちなみに加熱部は蒸気ボイラーで蒸気配管による間接加熱方式である。この間接加熱方式を生かして融雪槽へ投入前の雪や氷を還り蒸気で加熱し、温排水を散布すれば堆積中に軟化が進み、融雪槽に投入時の融解が速いので融雪処理回転数が増えて堆積場の受入能力が向上し、より低コストで環境にやさしい雪対策事業を展開できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の減圧式融雪装置は気圧が低下すれば水の沸点が下がり、水が低温で沸騰する低圧沸騰の原理を応用した融雪装置である。
【背景技術】
【0002】
現行の除排雪作業は、路上などの雪や氷を道路脇に寄せるだけの除雪から、除雪して堆積場へ運ぶ運搬排雪方式が主流になって来たので堆積場が不足し、分散による堆積場の維持管理費の急増や運搬距離が伸びて排雪効率が低下している上に、原油価格の急騰で化石燃料価格が高騰し雪対策コストが上昇している。このため除排雪作業の出動基準の見直しや融雪装置や機械の運転休止等を行っているが、企業努力を超えた世界的な燃料価格の急変動に対応できない状況である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現行の運搬排雪方式や融雪機械、装置などは化石燃料が低価格で推移した時代には有効であったが、投機的な原油高により化石燃料価格が高騰している今は、特に化石燃料への依存度が高い除排雪作業の発注者側には予算上の制約、受注者側には収益の圧迫で双方が燃料高の困難に直面している。今後、仮に投機筋が原油市場から撤退し一定レベルに価格が戻っても、再び価格が乱高下する不安がある。一方で、化石燃料による融雪装置や除雪機械の排煙、排雪運搬車の排気ガスなどが大気を汚染し、温室効果ガスの削減を目指している世界の流れに逆行している環境の課題がある。即ち、市場価格が投機的に急変してコストが不安定な化石燃料に大きく依存している運搬排雪主流の除排雪システムを続け、そのうえ融雪装置や排雪運搬車の排煙や排気ガスで地球温暖化に加担している雪対策事業から、化石燃料への依存度を減らし低コストで環境にやさしい雪対策事業に変える除排雪システムの再構築と融雪装置や機械の開発が喫緊の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題には本願請求項1の減圧式融雪装置で対応する。
【0005】
本願請求項1の減圧式融雪装置は、あらかじめ融雪槽内に指定水位まで貯水し、融雪しようとする雪や氷が投入される融雪槽と、前記融雪槽内を加熱する加熱部と、前記融雪槽内の気圧を減少させる真空ポンプを備え、前記融雪槽内を減圧状態で加熱し、低温で沸騰する低圧沸騰で雪や氷を融解する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の減圧式融雪装置によって、低圧沸騰で融雪槽内の雪や氷の融解時間を短縮して融雪槽の処理回転数を増やし、堆積場の受入能力を高めて分散した堆積場を整理統合し、維持管理費の削減を図るとともに低圧沸騰で燃料消費量と排煙を減らし、燃費の節約と大気中に排出する二酸化炭素などを減らす低コストで環境にやさしい雪対策事業を展開することが出来る。尚、この減圧式融雪装置の融雪槽は内部構造が簡素で、破砕用動力機械や破砕刃回転軸その他熱湯シャワー、給湯管などが無いから融雪槽の製作費が大型槽ほど安価で装置の保守費用が少ない構造である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の減圧式融雪装置10は融雪槽20と加熱部40を備えている。
その仕組み、構造を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0008】
融雪槽20の仕組みは以下の通りである。
融雪槽20の内部(以下槽内と言う)にはあらかじめ指定水位の水が貯水されている。
この前記融雪槽20は投雪口21を有し、槽内に真空ポンプ30と加熱部のヒーター41および排水ポンプ50を備え、これらに付随する配管、圧力スイッチ、入気用開閉弁、温度調整器、水位スイッチ、真空ポンプタイマー、ヒータータイマーなどで構成している。
尚、融雪槽の規模、形状は設置者が決めれば良い。
【0009】
融雪槽が大型の場合は大量の温排水が出るので、排水管50aを堆積場まで延長して堆積中の雪や氷に温排水を散布すれば堆積中に雪などの軟化が進み、融雪槽20に投入後の融解が速い。尚、融雪槽の規模、形状、設置の形態(地上設置、地中埋設等)は設置者が決めれば良い。使用する排水ポンプ50は土砂も汲み上げるかんがい用排水ポンプが良い。
【0010】
真空ポンプ30の仕組みは以下の通りである。
真空ポンプ30は融雪槽内の水の沸点を引き下げて、より低温で水を沸騰させるために融雪槽内の気圧を減圧する減圧装置である。
真空ポンプ30は融雪槽20の外部にある。真空ポンプ30には槽内に吸気管31があり、融雪槽の外部に排気管32がある。吸気管31は融雪槽20を貫通して槽内に入り、その先端が槽内の空気を吸引する吸気口となる。排気管32は真空ポンプ30を経由した槽内空気を外部に排出する。この空気の流れは図1にて矢印の通り槽内の吸気口から吸気管31を通り真空ポンプ30を経由して排気管32から外部に排出される。尚、減圧装置は真空ポンプ以外でも良い。
【0011】
加熱部40の仕組みは以下の通りである。
加熱部40は一例として蒸気ボイラー(以下ボイラーと言う)で説明する。
加熱方式や熱源は設置者が決めればよい。
加熱部40は蒸気ボイラーなので融雪槽20の槽内に加熱部配管の一部である蒸気加熱用配管のヒーター41がある。ヒーター41の加熱開始、停止、再加熱などは温度調整器による。また融雪槽20と加熱部40は分離して配置し、蒸気往管42と蒸気還り管43で接続したが、融雪槽20と加熱部40が連結一体でもよい。
本発明の加熱方式はボイラー40から蒸気往管を経由して槽内に入った蒸気を吐出ノズルなどから雪や氷などに吹き付ける直接加熱方式ではなく、蒸気がヒーター41の配管を通過の際に配管内部を加熱し、熱せられた配管がヒーター41として槽内の水や雪などを加熱する間接加熱方式である。蒸気の間接加熱の場合はヒーター41で加熱後の蒸気を再利用のため配管を延長して堆積中の雪や氷を加熱してから回収すれば軟化や融解で融雪効率が上がる。
【0012】
排水ポンプ50の仕組みは以下の通りである。
排水ポンプ50を槽内に設置し、ヒータータイマーの停止に連動して排水を開始するが、水位スイッチにより指定水位で自動停止する。排水管50aは排水ポンプ50に接続し槽内から融雪槽20を貫通して槽外に出て、排水ポンプ50から送られた融雪水を排出する。この融雪水の配水管を延長、遠回りさせて堆積中の雪などに散布すれば堆積中の雪などの軟化に利用できる。
【0013】
以下、減圧式融雪装置10の内、融雪槽20の作動について説明する。
【0014】
主電源スイッチON。各スイッチ及び計器類に通電。
蓋開閉スイッチをON。融雪槽20の投雪口の蓋21が開く。指定水位の貯水を確認して投雪開始。
投雪終了で蓋開閉スイッチをOFF。投雪口の蓋21が閉じる。
【0015】
真空ポンプ30の運転時間を真空ポンプタイマー(以下真空タイマーと言う)で設定、融雪槽内の気圧を圧力スイッチで設定する。真空タイマー作動時間はヒータータイマーの作動時間と同時間とする。
【0016】
ヒーター41の運転時間を真空タイマーの作動時間に合わせて、ヒータータイマーで設定、湯温を温度調整器で設定する。
【0017】
融雪槽内を減圧して加熱するために、真空ポンプ30の運転スイッチとヒーター41の加熱スイッチをON。真空ポンプ30の減圧とヒーター41の加熱が同時にスタート。
【0018】
真空ポンプ30は入気用開閉弁を閉じて排気を開始し、槽内の気圧が下降して設定気圧に達すると圧力スイッチが作動して真空ポンプ30が停止する。この最初の運転停止に連動して真空タイマーが始動する。真空タイマーの進行中に槽内の気圧が変動すれば圧力スイッチが作動して真空ポンプ30で設定気圧を真空タイマー時間終了まで保持する。
【0019】
ヒーター41が真空ポンプ30の排気開始と同時スタートで加熱を開始している。湯温が設定温度に達すると温度調整器が作動して加熱を停止する。ヒーター41の最初の停止に連動してヒータータイマーが始動する。ヒータータイマーの進行中に湯温が低下すれば温度調整器が作動してヒーター41がヒータータイマーの時間終了まで設定湯温を保持する。
【0020】
真空タイマーの設定時間終了で真空ポンプが停止し、真空ポンプ入気用開閉弁が開き融雪槽内に空気が入る。
【0021】
ヒータータイマーの設定時間終了でヒーター41が停止する。
【0022】
ヒータータイマーの設定時間終了に連動して排水ポンプ50が排水を開始する。槽内の水位が指定水位まで下がると水位スイッチが作動して排水ポンプ50が自動停止し作業工程終了のブザーが鳴る。
【0023】
作業を継続する場合は操作手順を繰り返し、作業終了の場合は、主電源スイッチをOFFする。
【産業上の利用可能性】
【0024】
融雪槽内の気圧を人為的に大幅に減圧し、槽内の水の沸点を引き下げて低温で沸騰させる低圧沸騰だから低燃費の融雪である。しかも蒸気の間接加熱方式はヒーター通過後の還り蒸気を再利用できる。即ち、還り蒸気管43を延長して堆積中の雪などを加熱してから回収すれば、融雪槽20に投入前に軟化するので、融雪時間の短縮で燃料消費量の節約と堆積場の受け入れ能力が向上する。そのうえ大型融雪槽の場合は大量の温排水が出るので、この温排水を堆積中の雪や氷に散布すれば、還り蒸気の再利用と同様の軟化効果がある。更に槽内の残留温水の熱で融解が進み燃料費の節約になる。即ち温排水の散布、残留温水熱の利用、還り蒸気の再利用で融解促進の相乗効果が大きい。
運搬経路と排水条件の良い堆積場に大型融雪槽を設置し、非効率堆積場を統廃合すれば雪対策事業費の節減と排煙、排気ガスを抑制する融雪事業を展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】減圧式融雪装置10を示した側面図である。
【図2】減圧式融雪装置10を示した平面図である。
【符号の説明】
【0026】
10減圧式融雪装置
20融雪槽
21投雪口の蓋
21aダンパー
30真空ポンプ
31吸気管
32排気管
40加熱部
41ヒーター
42蒸気往管
43蒸気還り管
50排水ポンプ
50a排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ指定水位まで貯水し、融雪しようとする雪や氷が投入される融雪槽と、前記融雪槽内を加熱する加熱部と、前記融雪槽内の気圧を減少させる真空ポンプとを備え、前記融雪槽内の気圧を前記真空ポンプによって低下させることによって前記融雪槽内の水の沸点を引き下げ、より低温で沸騰させて融雪するように構成されていることを特徴とする減圧式融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−228415(P2009−228415A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336035(P2008−336035)
【出願日】平成20年12月13日(2008.12.13)
【出願人】(508093702)
【Fターム(参考)】