説明

減圧清澄において発生した泡沫を調節する方法

【課題】溶融ガラス等中に捕捉された気泡を除去するために減圧清澄する場合、溶融材料が真空チャンバ中の減圧に遭遇したときに生成される泡沫を効率的に調節する方法を提供する。
【解決手段】溶融ガラスからの気泡の分離が、溶融ガラスが清澄チャンバ24中に流入したときに生じるように垂直に対して上昇管28を傾斜させ、ガラスを、比較的気泡のない状態で清澄チャンバ24に送り込むことができる。さらに、気泡は、上昇管28の頂部100に集まるために、凝集する機会が増え、この増大した気泡サイズは、清澄チャンバ24中での泡沫の破壊を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、溶融材料、例えば、溶融ガラス中に捕捉された気泡を除去するプロセスである減圧清澄に関する。本発明は、より詳しくは、その溶融材料が減圧清澄器内で減圧に遭遇するときに生成した発泡を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製造産業において、不純物に関して予め分析されている、適切なサイズの、洗浄され、処理された材料から得られた様々な原料をブレンダー内で混合することにより、ガラスバッチが製造される。カレットと呼ばれる再利用されるガラスもこれらの原料と混合してもよい。最も一般に製造されるソーダ石灰ガラスについて、これらの原料としては、シリカ(SiO2)、ソーダ(Na2O)、石灰(CaO)、および様々な他の化学化合物が挙げられる。このソーダは、シリカが溶融する温度を低下させる融剤として働き、石灰はシリカの安定剤として作用する。典型的なソーダ石灰ガラスは、約70パーセントのシリカ、約15パーセントのソーダ、および約9パーセントの石灰を、より少量の様々な他の化学化合物と共に含む。そのガラスバッチは、「ドッグハウス」に搬送される。これは、ガラス溶融炉の溶融チャンバの後にあるホッパーである。ガラスバッチは、コンベヤシステムの振動による複数の成分の凝離を妨げるように軽く湿らされても、または粒子間の接触を改善するようにペレットまたはブリケットに加圧成形されてもよい。
【0003】
ガラスバッチは、機械化シャベル、スクリューコンベヤ、またはブランケットフィーダにより溶融チャンバ中に投入される。このガラスバッチを溶融するのに必要とされる熱は、天然ガス、油または電気を用いて生成してもよい。しかしながら、電気溶融は、最もエネルギー効率がよく、クリーンな方法である。なぜならば、電気溶融は、必要とされる場所に熱を与え、熱気送管ガスにより運び去られるバッチ材料の問題をなくすからである。溶融ガラスの組成が全体に亘り均一であることを確実にするために、溶融ガラスは、一般に、機械式ミキサもしくは窒素または空気の気泡生成器が備え付けられた調質チャンバ内で一緒に撹拌される。次いで、溶融ガラスは、前炉と称される一連の狭い通路を通って、成形機まで運ばれる。溶融チャンバ内において、多量のガスが、バッチ中の原料の分解により生成されることがある。これらのガスは、捕捉された空気と一緒になって、溶融ガラス中に気泡を形成する。大きな気泡は表面まで上昇するが、特にガラスがより粘性となるにつれ、小さな気泡は、最終製品の品質をおびやかすほどの数で溶融ガラス中に捕捉される。高品質ガラスを要求する製品、例えば、光学レンズ、テレビ用パネル、および液晶ディスプレイに関して、捕捉された気泡は、溶融ガラスを成形機に供給する前に溶融ガラスから除去される。
【0004】
溶融ガラスから気泡を除去するプロセスは清澄と呼ばれている。ガラスを清澄するある方法は、ブレンダー内での混合前に、清澄剤として知られている様々な材料をガラスバッチに加える工程を含む。この清澄剤の主な目的は、溶融ガラスが適切な清澄温度にあるときに溶融ガラス中のガスを放出させることにある。次いで、放出されたガスは、溶融ガラス中でガスの気泡に拡散する。気泡が大きくなるにつれ、相対的な浮力が増し、それら気泡を溶融ガラスの表面まで上昇させ、そこで、気泡は放出される。気泡が溶融ガラスを通って移動する速度は、溶融ガラスの粘度を減少させることにより増加させてもよく、溶融ガラスの粘度は、溶融ガラスの温度を上昇させることにより減少させることができる。大気圧でのガラス溶融および清澄プロセスにとって効果的な清澄剤は、溶融ガラスの温度が、その溶融ガラスの粘度が十分に低い温度範囲、すなわち、ソーダ石灰ガラスにとっては1300℃から1500℃までの範囲に上昇されるときに、多量の清澄ガスを放出できるべきである。ソーダ石灰ガラスに使用するのに適した清澄剤の例は、酸化ヒ素(As23)および酸化アンチモン(Sb23)である。しかしながら、これらの清澄剤は、環境にとって有害であり、注意深い取扱いが必要である。
【0005】
ガラスを清澄する別の方法は、溶融ガラスを低圧区域に通して、溶融ガラス中の気泡を膨張させ、ガラスの表面まで急速に上昇させる工程を含む。このプロセスは、一般に、減圧清澄または真空清澄と称される。減圧清澄器には様々な構成がある。タケシタ等の米国特許第5,849,058号には、サイフォン型の減圧清澄器の一般構造が開示されている。図1に示す減圧清澄器は、真空ハウジング2内に配置された真空容器1を含む。真空容器1は、上昇管3に接続された一方の端部および下降管4に接続された別の端部を持つ。上昇管3および下降管4は白金から作製されており、この材料は、溶融ガラスの高温に耐えることができ、容易には腐蝕しない。真空容器1、上昇管3、および下降管4は、電気により加熱される。断熱材5が、真空容器1、上昇管3、および下降管4の周りに設けられている。一般に、断熱材5は、断熱レンガから一般になり、上昇管3および下降管4の構造支持体として二役を果たす。真空容器1に接続されていない上昇管3および下降管4の下方の端部は、真空ハウジング2を通って、それぞれ、貯蔵容器6および7中に延在する。貯蔵容器6は、ガラス溶融炉(図示せず)から溶融ガラスを受け入れるように接続されている。
【0006】
上昇管3、真空容器1、および下降管4を通る溶融ガラスの流れは、サイフォンの原理にしたがう。したがって、真空容器1中の溶融ガラスの液面は、貯蔵容器6中の溶融ガラスの液面より高く、真空容器1中の圧力は貯蔵容器6中の圧力より低い。真空容器1中の圧力は、貯蔵容器6中の溶融ガラスの液面に対する真空容器1中の溶融ガラスの液面の高さに関連する。貯蔵容器6中の溶融ガラスの液面に対する真空容器1中の溶融ガラスの液面の高さは、所望の清澄圧力および溶融ガラスが真空容器1中に流入する速度に基づいて設定される。捕捉された気泡を有する溶融ガラスは、ガラス溶融炉(図示せず)から貯蔵容器6中に移送される。真空容器1中の圧力は貯蔵容器6中の圧力よりも低いので、貯蔵容器6中の溶融ガラスは、上昇管3を通って、真空容器1中に上昇する。真空容器1中の圧力は、大気圧未満の減圧状態、典型的に、大気圧の1/20から1/3にされる。溶融ガラスが真空容器1を通過し、減圧に遭遇するときに、溶融ガラス中の気泡は、膨張し、溶融ガラスの表面まで急速に上昇する。清澄されたガラスは、下降管4を通って、貯蔵容器7中に降下する。
【0007】
溶融ガラスが真空容器1中の減圧に遭遇したときに、ヘッドスペース8内で泡沫が生じる。ヘッドスペース8は、この泡沫を収容するほど十分に大きくなければならないか、泡沫を、装置の充満や他のプロセスの不調や品質の問題を防ぐように調節しなければならない。大規模プロセスにおいて、特にヘッドスペース8は気密に維持しなければならないので、泡沫を収容するほどヘッドスペース8を十分に大きく作製することは通常は実際的ではない。Schwenninger等に発行された米国特許第4,704,153号には、ヘッドスペース中にバーナーを設ける工程を含む、泡立ちを調節する方法が開示されている。米国特許第4,704,153号において、Schwenninger等は、そのバーナーからの熱により、泡沫の粘度が減少し、泡沫の気泡の容積が増加し、それによって、気泡が破裂することを開示している。Weltonに発行された米国特許第4,794,860号には、気泡を合体させる、および/または気泡が破裂するように気泡膜の表面張力を妨げる試薬を泡沫に与える工程を含む泡沫調節方法が開示されている。泡沫破壊剤の例としては、水、水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属化合物、アルコール、および燃料油が挙げられる。Schwenninger等に発行された米国特許第4,849,004号には、泡沫の気泡膜を崩壊させるようにヘッドスペース中の圧力を急変させ、それによって、気泡の大部分を破裂させ、泡沫の崩壊を促進させる工程を含む泡沫調節方法が開示されている。その時点で気泡が破裂する、弾性の限界を超えて泡沫の気泡を膨張させるために、急な低圧の施用が用いられる。この圧力の施用は、数分間隔で行われてもよく、圧力施用の期間は、約数秒間であってもよい。
【特許文献1】米国特許第5849058号明細書
【特許文献2】米国特許第4704153号明細書
【特許文献3】米国特許第4794860号明細書
【特許文献4】米国特許第4849004号明細書
【特許文献5】米国特許第4780122号明細書
【特許文献6】米国特許出願第09/606953号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みて、本発明は、従来技術の方法より優れた泡沫を調節する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、溶融材料が真空チャンバ内で減圧に遭遇したときに生成された泡沫を調製する方法である。この方法は、溶融材料が泡沫の気泡の間から流れ出ることができる真空チャンバ内の熟成区域を溶融材料に通過させ、溶融材料の抜き取られた泡沫の気泡を破裂させる各工程を含む。別の態様において、前記方法は、泡沫を、真空チャンバから、この真空チャンバとは別の泡沫チャンバ中に流動させる工程を含む。さらに別の態様において、前記方法は、溶融材料を傾斜した導管を通って真空チャンバ中に流れさせる工程を含み、ここで、溶融材料が傾斜導管を流動するときに、溶融材料中の気泡は、傾斜導管の表面に集まる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】サイフォン型の減圧清澄器の一般構造の断面図
【図2】減圧清澄器の断面図
【図3】泡沫密度が時間と共に変化する様子を示すグラフ
【図4】泡沫の壊れ易さが時間と共に上昇する様子を示すグラフ
【図5A】回転円錐体の概略図
【図5B】回転バーの概略図
【図6】ガラス/泡沫表面に衝突するガスジェットを示す概略図
【図7】泡沫チャンバのある実施の形態を示す断面図
【図8】泡沫チャンバの別の実施の形態を示す断面図
【図9】傾斜した上昇管を備えた減圧清澄器の断面図
【図10】傾斜した上昇管を備えた別の減圧清澄器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示す実施の形態を参照して、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
図2は、溶融ガラスまたは他の溶融材料中に捕捉された気泡を除去するのに適したサイフォン型の減圧清澄器10の概略図である。本発明に使用するのに適した他のタイプの減圧清澄器もある。例えば、サイフォン型ではない減圧清澄器を開示しているSchwenninger等に発行された米国特許第4,780,122号を参照のこと。減圧清澄器10は、入口端14および出口端16を持つ真空ハウジング12を含む。真空ハウジング12は、それぞれ、入口端14および出口端16にシール20,22を設けることにより実質的に気密状態に維持されている。清澄チャンバ24は、真空ハウジング12内に取り付けられている。清澄チャンバ24は、耐火性断熱材25内に入れられている。清澄チャンバ24は、通常、電気により加熱され、少なくとも、溶融ガラスと接触する清澄チャンバ24の底部27は、高融点を有し、耐蝕性である材料、例えば、白金または白金合金が裏打ちされているか、それにより作製されている。
【0013】
上昇管28は、真空ハウジング12の入口端14から清澄チャンバ24内の入口ポート30まで上昇し、下降管32は、清澄チャンバ24内の出口ポート34から真空ハウジング12の出口端16まで下降している。一般に、管28,32は、白金または白金合金のような材料から作製されている。清澄チャンバ24と同様に、管28,32も加熱される。管28,32からの熱の損失を最小にし、管28,32に構造的な支持を与えるために、耐火性断熱材33,35が管28,32の周りに設けられている。管28,32を構成するために用いられた材料は、管28,32の周りの耐火性断熱材33,35とは異なる比率で膨張する。したがって、管28,32が真空ハウジング12から出る、入口端14および出口端部16で確実なシールを維持することは難しい。R.W.Palmquistにより2000年6月29日に出願された、「Tubing System for Reduced Pressure Fining」と題する米国特許出願第09/606,953号には、管および管の周りの耐火性断熱材の膨張を収容しながら、真空ハウジングの入口端および出口端をシールする適切な方法が開示されている。
【0014】
一般的なガラス清澄プロセスにおいて、管28,32および清澄チャンバ24は、選択された温度、例えば、1400℃まで加熱される。次いで、ガラス溶融炉36からの溶融ガラスが導管38を通って上昇管28中を流れる。溶融ガラスが上昇管28に移送される速度を調節するために、弁(図示せず)を設けてもよく、したがって、清澄チャンバ24内の圧力を調節することができる。真空ハウジング12の出口端16に接続された撹拌チャンバまたは貯蔵容器42も、選択された温度、例えば、1400℃まで予熱され、カレットとして知られている再利用ガラスが、撹拌チャンバ42中に供給され、撹拌チャンバ42内のガラスのレベルが、下降管32の出口端44に到達するまで溶融される。下降管32の出口端44が一旦溶融ガラス中に浸漬されたら、清澄チャンバ24中の圧力が、溶融ガラスが管28,32を通って清澄チャンバ24中に引き込まれるようにゆっくりと減少される。清澄チャンバ24中の圧力は、清澄チャンバ24から空気を引き出すために、真空ポンプ(図示せず)を用いて減少させてもよい。ガラスが清澄チャンバ24中に引き込まれている間、より多くのカレットを撹拌チャンバ42中で溶融して、下降管32の出口端44が溶融ガラス中に浸漬されたままであることを確実にしてもよい。一旦清澄チャンバ24中の溶融ガラスが所望のレベルに達したら、減圧清澄器10を通る流れが、撹拌チャンバ42からガラスを引き出すことにより開始される。
【0015】
作動中、溶融ガラスは、サイフォンのように、減圧清澄器10を通って流動する。清澄チャンバ24中の圧力は、大気圧未満まで減少されて、溶融ガラス中に捕捉された気泡の膨張を促進させる。清澄チャンバ24内の所望の部分真空を達成するために、清澄チャンバ24中のガラスの表面46は、ガラス溶融炉36中のガラスの表面48の上の所定の高さに上げられる。溶融ガラスが清澄チャンバ24に進入し、清澄チャンバ24中の減少した部分真空に遭遇したときに、溶融ガラス中に捕捉された気泡は、急速に膨張し、ガラスの表面46まで移動する。ガラス中に捕捉された気泡がガラス表面46まで上昇し、破裂するのに適切な滞留時間を許す、清澄チャンバ24の適切な長さを選択することが重要である。膨張した気泡がガラス表面46まで急速に上昇した結果として発生した泡沫45の層を収容するために、ガラス表面46の上にヘッドスペース50を設けることも重要である。清澄プロセス中に発生した泡沫45は、持続性であり、調節されなければ、利用できる空間全てを急速に占めることがある。下降管32から泡沫を離しておくために、清澄チャンバ24の出口ポート34の近くに、バッフルプレート49が配置されている。
【0016】
溶融ガラスGが清澄チャンバ24中の減圧に遭遇したときに新たに生成された泡沫45は、弾性があり、密集している。この新たに生成された泡沫45は、50%にもなるほど多くのガラスを含有しているかもしれない。しかしながら、図3および4に示したように、泡沫45のレジリエンスおよび密度は、泡沫45が清澄チャンバ24に沿って移動するときに時間と共に減少し、ガラスが泡沫からその下にある溶融ガラスGに戻って流れる。時間の経過した泡沫45は、5-10%ほどしかガラスを含有しないかもしれない。泡沫45がよりもろくなるにつれ、泡沫を破裂させるのが容易になる。例えば、図4に示したように、泡沫45が10分間熟成されたときに、約2.5分間に亘り泡沫45に泡沫破壊手段を作用させて、泡沫の高さを約0.25インチ(約6.25mm)だけ減少させることができる。しかしながら、泡沫が30分間熟成されたときに、同じ期間に亘り泡沫45に泡沫破壊手段を作用させると、泡沫の高さを約2インチ(約50mm)だけ減少させることができる。これは、同じ2.5分間の泡沫破壊作用に関して、泡沫の高さが7倍減少したことになる。本発明は、泡沫を破裂させる前に、ある臨界時間に亘り泡沫45を「熟成」または流れ出させる、清澄チャンバ24中の泡沫熟成区域52を提供する工程を含む。次いで、泡沫熟成区域52の終わりで泡沫破壊手段54を作用させ、泡沫45を壊す。泡沫破壊手段54は、清澄チャンバ24中のポート55を通して挿入される。
【0017】
ある実施の形態において、泡沫破壊手段54は、機械式回転体、例えば、回転円錐体56(図5Aに示す)および回転バー58(図5Bに示す)である。これらの回転体は、泡沫を広げ、破裂させる。回転円錐体56(図5Aに示す)は、ロッド60の端部に取り付けられた逆円錐体59を含む。この円錐体の角度αは、ガラスを外側にはじき出すのを最小にするために、急、例えば、70°である。このはじき出しにより、ガラスが清澄チャンバ24の側壁に当たり、溶融ガラスGと再度一緒になるときに、再び気泡が形成されるであろう。回転体の影響は、主に、回転体と同じ直径の面積に限定されるので、より大きいまたは非円形区域の泡沫を処理するためには、多数の回転体または回転体の移動が必要である。回転体の数および配置は、ガラスの清澄および発泡挙動並びに泡沫を破壊するのに必要とされる剪断の量により決定される。もちろん、ガラスの清澄および発泡挙動に基づいて、熟成区域52の長さを、回転体が熟成区域52の終わりの地点で泡沫45に作用されられたときに、泡沫45が所望のように急速に破壊されるように選択すべきである。
【0018】
泡沫破壊手段54は、ガスジェットを発生するノズルであっても差し支えない。図6は、2つの同心管62,64を含むノズル63の例を示している。内側管62は1つのガス供給源(図示せず)に接続されており、外側管64は別のガス供給源(図示せず)に接続されている。それらのガスは、ジェット65の形態でノズル63を出て、次いで、泡沫45に衝突する。ガスジェット65の泡沫45に当たるときの衝撃力が、泡沫45を破壊する。ある実施の形態において、内側管62を流動するガスは水素であり、外側管64を流動するガスは酸素である。水素および酸素のガスの流量は、水素対酸素の比が安定な火炎が形成される範囲の外側にあるように適切に選択される。最適条件下で、ジェット65は、泡沫温度を低下させたり、泡沫を加熱したりせずに、泡沫45を機械的に破壊する。泡沫45を加熱すると、泡沫を熱により再沸騰させ、新たな気泡および泡沫を発生させてしまうであろう。しかしながら、図6に示したノズル63は、ガスジェットを発生させるのに使用してもよいノズルのほんの一例であることが明らかである。他の適切なノズル形状を、ジェット65が貫通する所望の深さおよび面積に基づいて選択してもよい。また、ガスジェット65を発生させるのに使用するガスは、可燃性である必要はない。好ましくは、ガスジェット65を発生させるのに使用するガスは、後に、冷却され、大気圧に戻される。
【0019】
ガスジェット65は、ジェットを発生させ、そのジェットの貫通する区域を広げるのに必要なガスの量を減少させるために、パルスで泡沫45に施してもよい。すなわち、燃料および酸素をノズル63に連続的に供給する代わりに、燃料および酸素を、所定の間隔でノズル63に供給することができる。これらの所定の間隔は、泡沫が生成される速度およびジェットの貫通する区域での泡沫の脆さに依存して様々な長さを有していてもよい。あるいは、破壊力を分布させるために、泡沫表面の幅と長さに亘り、多数のノズルを配置しても差し支えない。これら多数のノズルがパルス型ジェットを発生させてもよい。それらパルスは、泡沫を破壊し、泡沫に1つのジェット区域を迂回させないパターンで異なる時間で発生されることができる。ノズルは、回転させたり、泡沫を横切って移動させたりしてもよい。あるいは、泡沫破壊手段54は、モリブデン、シリカ、またはカレット粒子のような材料の粒子が中に分散されているガススプレーであってもよい。ガススプレー中の液体/固体粒子が質量があるほど、粒子を含まないガスジェットよりも、泡沫を破壊する衝撃力がより多く与えられるであろう。ガススプレー中に分散される材料は、気泡または他の欠陥を発生させずに、ガラス中に容易に含まれるように選択される。
【0020】
図7は、ヘッドスペース50内の泡沫45の容積を調節する別の方法を示している。方法は、ヘッドスペース50内の泡沫を、真空ハウジング70内に配置され、清澄チャンバ24と同じ圧力に維持されている別の泡沫チャンバ68中に流れ込ませる工程を含む。泡沫チャンバ68中の泡沫72の気泡の間にあるガラスは、泡沫チャンバ68内の出口ポート74を通って流れ出る。泡沫が適切に「熟成した」またはガラスを流れ出させた後に、泡沫72を破壊するために、泡沫チャンバ68の出口端76に泡沫破壊装置を用いてもよい。前述した泡沫破壊手段54(図5A、5B、および6に示した)のいずれを用いてもよい。泡沫チャンバ68中のガラス表面78は、清澄チャンバ24中のガラス表面46とほぼ同じである。出口ポート74を通って流れ出るガラスは、上昇管28に直接戻しても、または貯蔵容器(図示せず)に向け、その後、カレットとしてガラス溶融炉(図示せず)に循環させてもよい。多大な資本支出を避けるために、泡沫チャンバ68は、白金のような貴金属の代わりに、アルミナのような耐熱耐火性物から製造されるであろう。
【0021】
泡沫72の気泡の間のガラスを出口ポート74から流れ出させる代わりに、ガラスを冷却し、粉砕しても差し支えない。粉砕されたガラスは、ガラス溶融炉(図示せず)に循環させても、またはカレットを必要とするどのような用途に使用しても差し支えない。図8は、ガラスを冷却し、粉砕するのに使用できる泡沫チャンバ80を示している。泡沫チャンバ80は、清澄チャンバ24から泡沫を受け取るための入口ポート82を有する。一組の冷却ローラ84が、泡沫チャンバ80の上側部分86に取り付けられている。冷却ローラ84は、入口ポート82で受け取られる泡沫72を冷却し、粉砕するために設けられている。冷却ローラ84により生成された微粒子カレット88、すなわち、粉砕ガラスは、泡沫チャンバ80の底部にたまる。カレット88は、泡沫チャンバ80の底部にあるゲート90を開くことにより、周期的に回収してもよい。ゲート90を開く前に、ゲート90の上にある別のゲート92を閉じて、冷却ローラ84により生成されているカレットが泡沫チャンバ80の底部に落下しないようにする。カレット88を回収した後に、ゲート92は再度開かれ、ゲート90は閉じられる。泡沫72の泡沫チャンバ80中への移動を補助するために、清澄チャンバ24を泡沫チャンバ80に接続している導管96中にパージガス94を吹き込んでもよい。パージガス94が泡沫チャンバ80を出るのに通ってもよい出口ポート98が、泡沫チャンバ80内に設けられている。
【0022】
図9は、ヘッドスペース50内の泡沫45の容積を調節する別の方法を示している。この方法は、溶融ガラスからの気泡の分離が、溶融ガラスが清澄チャンバ24中に流入したときに生じるように垂直に対して上昇管28を傾斜させる工程を含む。これにより、ガラスを、比較的気泡のない状態で清澄チャンバ24に送り込むことができる。さらに、気泡は、上昇管28の頂部100に集まるために、凝集する機会が増えている。この増大した気泡サイズは、清澄チャンバ24中での泡沫45の破壊を促進する。図10に示したように、上昇管28の頂部100にある気泡を溶融ガラスから完全に除去するために、直立管102を上昇管28に加えても差し支えない。直立管102は、清澄チャンバ24中のガラス境界線46よりも上に出るように配置される。直立管102の上の環境は、清澄チャンバ24と同じ圧力にある。あるいは、直立管102は、より低い高度に、すなわち、上昇管28の入口端に近い位置に配置しても差し支えない。この場合、直立管102中のガラス境界線は、清澄チャンバ24中のガラス境界線46よりも低いであろう。これには、清澄チャンバ24中のガラス境界線を維持するために、直立管102の上の雰囲気がある程度高い圧力に調節される必要がある。直立管を使用する利点の1つは、多数の地点で気泡が溶融ガラスから除去され、より多くの分離を達成できることである。別の利点は、直立管102中に集積された泡沫に、清澄チャンバ24中で行えるものよりも、ずっと厳しい泡沫破壊処置を施せることである。上述した方法を用いて、清澄チャンバ24中の泡沫を調節してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 真空容器
2、12 真空ハウジング
3、28 上昇管
4、32 下降管
5、25、33、35 断熱材
6、7 貯蔵容器
8、50 ヘッドスペース
10 減圧清澄器
14 入口端
16、44 出口端
20、22 シール
24 清澄チャンバ
36 ガラス溶融炉
45、72 泡沫
52 泡沫熟成区域
54 泡沫破壊手段
63 ノズル
68、80 泡沫チャンバ
88 カレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融材料が真空チャンバ中の減圧に遭遇したときに生成される泡沫を調節する方法であって、
前記溶融材料を、傾斜した導管を通して、前記真空チャンバ中に流入させる工程を含み、ここで、該溶融材料中の気泡が該導管の表面に集積されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記導管の表面に集積された気泡を、該導管上にある直立管を通して除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
減圧清澄器において、
大気圧より低い圧力を有する清澄チャンバ、
該清澄チャンバに溶融材料を導くための第1の導管であって、該第1の導管は垂直に対して傾斜しており、前記溶融材料中の気泡が、該溶融材料が該第1の導管を通って流動するときに該第1の導管の表面に集積される第1の導管、および
前記清澄チャンバから前記溶融材料を除去するための第2の導管、
を備えてなる減圧清澄器。
【請求項4】
前記第1の導管に水圧式に接続され、該第1の導管の表面に集積された気泡がそれを通って除去される直立管をさらに含むことを特徴とする請求項3記載の減圧清澄器。
【請求項5】
前記直立管が、該直立管中の溶融材料の境界線が前記清澄チャンバ中の溶融材料の境界線よりも上にあるように位置していることを特徴とする請求項4記載の減圧清澄器。
【請求項6】
前記直立管が、該直立管中の溶融材料の境界線が前記清澄チャンバ中の溶融材料の境界線よりも下にあるように位置していることを特徴とする請求項4記載の減圧清澄器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144429(P2012−144429A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41135(P2012−41135)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【分割の表示】特願2008−204171(P2008−204171)の分割
【原出願日】平成14年7月8日(2002.7.8)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)