説明

減酸素ユニット及び冷蔵庫

【課題】長期間動作による減酸素能力の低下を軽減した減酸素ユニット及び冷蔵庫を提供する。
【解決手段】減酸素ユニットは、アノード2と、カソード3と、アノードとカソードに挟持された電解質膜4と、カソードとアノードに電圧を印加する電圧印加手段9と、アノードに水を供給することが可能な水貯蔵供給タンク12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、減酸素ユニット及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素濃度環境にすることで食品の保存性を高める手段として、固体高分子膜を使った減酸素装置が提案されている。このような減酸素装置は、固体高分子膜にアノードとカソードを設け、アノードでの水の電気分解とカソードでの水の生成を利用し、カソード側空間(例えば、減酸素室)内においてカソード反応を行うことで、保存容器内の酸素を低減する。減酸素装置が目的の反応をするためにはアノードに水が十分量供給されることが必要であり、カソードで生じた水をアノード側に供給することが知られている。
【0003】
また、冷蔵庫室内の大気中は低温のため、空気中の水分量が少なく、減酸素室内の酸素濃度を所定濃度以下にまで反応を行うのに十分な水がアノードで不足しやすい傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−19621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、アノードへの水の供給を制御できる減酸素ユニット及び冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる減酸素ユニットは、実施形態にかかる減酸素ユニットは、アノードと、カソードと、アノードとカソードに挟持された電解質膜と、カソードとアノードに電圧を印加する電圧印加手段と、アノードに水を供給することが可能な水貯蔵供給タンクを有することを特徴とすることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の減酸素ユニットを有する減酸素装置の模式図である。
【図2】実施形態の減酸素装置の開口部を示す模式図である。
【図3】実施形態の水貯蔵供給タンクと導水路を有する減酸素ユニットの一部を示す概念図である。
【図4】実施形態の減酸素ユニットを有する冷蔵庫の概念図である。
【図5】実施例1と比較例1の抵抗の経時的変化を示すグラフである。
【図6】実施例1と比較例1の電圧の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る減酸素装置と減酸素ユニットを有する冷蔵庫を説明する。
【0009】
図1は、実施形態にかかる減酸素装置1の断面図である。減酸素装置に含まれる減酸素ユニットは、アノード2とカソード3とアノード2及びカソード3の間に配置された電解質膜4とで構成される減酸素素子5と、アノード2とカソード3の外側備えられたアノード集電板6とカソード集電板7と、カソード3で生成した水をアノード2に供給する水供給部8と、アノード2とカソード3に電圧を印加する電圧印加手段9と、アノード2とカソード3を保持するアノードガスケット10とカソードガスケット11と、アノード2に水を供給し、水を貯蔵することが可能な水貯蔵供給タンク12とを有する。減酸素ユニットのカソード側は、減酸素庫21と空間を形成するように取り付けられている。減酸素庫21には、開閉可能な開閉扉22が備えられている。減酸素装置1には、扉22の他に開口した導出部13が備えられている。水供給部8は、カソード3で生成した水を受ける水受部81と受けた水をアノード2側へ供給することが可能な多孔体82で構成される。
【0010】
ここで、アノード2は、例えば白金触媒、酸化ルテニウムや、酸化イリジウムを含む材料で構成される。アノード集電体6は、例えば、チタンおよび金等で構成される。アノードガスケット10は、例えばシリコンゴムおよびテフロン(登録商標)等が挙げられる。
【0011】
カソード3は、例えば白金触媒を含む材料で構成される。カソード集電体7は、例えば、アルミニウム等で構成される。カソードガスケット11は、例えばシリコンゴムおよびテフロン(登録商標)等が挙げられる。
【0012】
アノード2、カソード3ともに、前記材料に他の材料を混入させても良く、例えばチタンメッシュを支持体として混入させても良い。
【0013】
電解質膜4は、プロトン導電性を有する高分子電解質膜であり、例えばナフィオン(登録商標)を用いることができる。
【0014】
アノード集電板6は、アノード2と、電圧印加手段9と電気的に導通している。アノード集電体6一部は開口しており、開口している領域には水供給部の一部である多孔体が設けられている。
【0015】
カソード集電板7は、カソード3と電圧印加手段9と電気的に導通している。アノード集電板7の一部は重力方向にスリット状に開口した開口部70が形成されていることが好ましい。開口部70には、多孔体15が配置されることが好ましい。
【0016】
水供給部8は、カソード3で生成され、開口部70を流れ落ちた水を受ける水受部81と、水受部81とアノード2を連結する多孔体82より構成される。図2に水給水部8を含む部位の概念図を示す。水供給部8は、水受部81と多孔体82が一体となっていてもよい。多孔体82は、その一方が水受部81と気体と液体が移動可能な状態で接続され、他方が導出部13を経て減酸素庫21内から外へと導出され、アノード集電板6の開口を通してアノード2と接続される。よって、カソード3で生成された液体の水は、水受部81、多孔体82を通してカソード3からアノード2へと供給される。
なお、水供給部8と開口部70は水貯蔵供給タンク12によるアノード2への水供給が十分な場合などにおいて、これらを省略することができる。
水受部81や多孔体82は、例えば、親水性のスポンジ状の多孔体である。
【0017】
電圧印加手段9は、前記アノード集電板6、カソード集電板7を通してアノード2、カソード3に予め定められた電圧を与える。電圧は例えば1.0V以上3.5V以下である。
【0018】
アノード2に水を供給し、水を貯蔵することが可能な水貯蔵供給タンク12は、液体の水と気体の水の両方をアノード2に供給することができる構成である。水貯蔵供給タンク12のいくつかの例を図3に模式断面図に示す。図3には、水貯蔵供給タンク12の他に、減酸素ユニットの一部の構成が記載されている。水貯蔵供給タンク12への水の補充は、冷蔵庫室内を循環する水を回収したり、減酸素装置1や減酸素装置1を有する冷蔵庫31を操作するものがタンクに水を入れたりすることによって行うものであり、特に限定されない。貯水量は、視覚的または聴覚的な手段によって通知可能な図示しない構成をさらに有することが好ましい。図3の概念図においては水供給部8の多孔体82が記載されているが、水供給部8のない減酸素ユニットの場合は、多孔体82は他の多孔体で代用してもよく、特に限定されるものではない。水貯蔵供給タンク12に水道水などの水を補充する場合は、水貯蔵供給タンク12にイオン吸着剤を備えておくことが好ましい。水貯蔵供給タンク12からアノード2への水の供給は、図示しない制御部によって制御される場合がある。制御部は、例としてマイコンやFPGA(Field−Programmable Gate Array)などのICを用いたソフトフェアあるいはハードウェアによる制御が挙げられる。制御部はユーザーによって操作可能な形態でもよく実施形態の減酸素ユニットや冷蔵庫において限定されるものではない。
【0019】
図3(A)の水貯蔵供給タンク12Aは、タンク121と、制御弁122とで構成され、導水路123とタンク121と導水路123の間には制御弁122が備えられており、アノード2への給水量が制御される。制御弁122と多孔体82は導水路123と接続し、導水路123を経て、アノード2に水を供給することができる。タンク121は水を貯めて、貯めた水を排出できる構成でればよい。タンク121に貯められた水は、制御弁122が開口すると、導水路123を通り、多孔体82を介してアノード2に水を供給する。図3(A)の導水路123は多孔体であって、親水性または疎水性である。図示していないが、気液分離膜を備えても良い。水貯蔵供給タンク12Aがアノードに液体の水を供給する場合は、重力によって水が移動する。一方、水貯蔵供給タンク12Aがアノード2に気体の水を供給する場合は、タンク121に圧を加えるなどして、アノード2に水を供給することが好ましい。なお、液体の水を供給する場合は、導水路123は、親水性の多孔体であると、毛管現象を利用できるという利点があることが好ましい。気体の水を供給する場合は、導水路123は、疎水性の多孔体であると、液体が詰まらないという利点があることが好ましい。
【0020】
図3(B)の水貯蔵供給タンク12Bは、第1のタンク124と、第2のタンク125と、制御弁122と気液分離膜127とで構成され、導水路126が備えられている。制御弁122は、第1のタンク124と第2のタンク125から導水路126への給水量を制御する。第1のタンク124からは液体の水が、第2のタンク125からは、気体の水がアノード2に供給可能な形態となっている。タンク124、125は水を貯めて、貯めた水を排出できる構成でればよい。導水路126は気体と液体の水を通すため、多孔体であることが好ましい。また、疎水性であることが好ましい。例えば、アノード2の温度に応じて、供給する水が液体か気体のいずれかまたは両方をとなるように制御弁122を制御してもよい。アノード2へ供給する水が気体であると水の電気分解反応が行われやすい。しかし、低温条件下では水が気化しにくいため、気体の水を水貯蔵供給タンク12Bが供給する形態が好ましい。切り替えの温度は、減酸素ユニットの性能、減酸素庫21の大きさや設定する酸素濃度に応じて適宜設定すればよい。温度を条件に制御弁122を制御する場合は、図示しない温度センサを温度測定部位に設ければよい。温度以外の条件で、制御弁122を制御してもよい。第2のタンク125には、気液分離膜127が備えられていると、タンク125内が減圧になりにくくなり、気体の水を供給しやすくなることが好ましい。
【0021】
図3(C)の水貯蔵供給タンク12Cは、タンク121と、気液分離膜127とで構成され、第1の導水路128と第2の導水路129が備えられている。制御弁122は、タンク121から第1の導水路128と第2の導水路129への給水量を制御する。第1の導水路128は、親水性の多孔体であって、アノード2へ液体の水を供給可能な形態となっている。タンク121は水を貯めて、貯めた水を排出できる構成でればよい。第2の導水路129は、疎水性の多孔体であって、アノード2へ液体の水を供給可能な形態となっている。制御弁121は、水貯蔵供給タンク12Bの制御弁122と同様に温度条件等によって制御すればよい。また、タンク121内が減圧にならないように、気液分離膜127が備えられていることが好ましい。
【0022】
上記の説明において、液体の水と気体の水を分けて記載している箇所があるが、導水路を通る水には、気体と液体の両方の水が通る場合を否定するのもではない。
【0023】
アノードと接する範囲内に導出部13を有する。導出部13の一部には多孔体15が配置されている。導出部13の開口断面積は、多孔体82の透過断面積よりも広い構成となっていると、導出部13によって減酸素庫の内圧が減酸素反応によって低下しすぎないように調節できることが好ましい。なお、減酸素庫内の圧の調節には、開閉可能なシャッターが備えられていることが好ましい。導出部13から水などの液体や、酸素などの気体が取り込まれる。
【0024】
減酸素庫21には食品などが収められ、容器内は酸素濃度を低く保持することができる。減酸素庫21には、減酸素庫21内に収められた食品などを出し入れすることができる開閉扉22が取り付けられていてもよい。
【0025】
次に、減酸素にかかる反応について説明する。
アノード2に水、カソード3に空気(酸素と水素)を供給して、電圧印加手段9によってこれらの電極に電圧を印加することによって、アノード2では式(1)のように、水が電気分解され酸素とプロトン(H)および電子(e)とが生成する。このとき発生するプロトン(H)は高分子電解質膜を通り、電子(e)は外部回路を通ってカソード3に達する。カソード3では式(2)の反応により空気中の酸素が水になることでカソード3のある領域内の酸素濃度が減少する。
【0026】
【化1】

式(1)
【0027】
【化2】

式(2)
【0028】
よって、減酸素庫内の酸素が消費され、減酸素環境が生成される。
上式にあるように、アノード2では水を反応に必要とし、カソード3では水が生成される。よって、式(2)の反応によってカソード3で生成した水をアノード2に戻すことで、アノード2での式(1)の反応に必要な水が不足することなく長時間継続して減酸素運転が可能となる。
【0029】
一方、減酸素運転中は、式(2)の反応よって減酸素庫内の酸素が消費されるにつれ、減酸素庫内の圧力は低下する。例えば減酸素庫を常圧(0.1MPa)酸素濃度が21%の状態から5%にまで密閉条件下で減酸素した場合、圧力は0.084MPaにまで減少する。庫内の圧力の減少は、庫内に収納した食品、食品容器の変形を招くため、好ましくない。実施形態の減酸素装置において、導出部13の開口断面積は、多孔体82の透過断面積よりもその面積が広い特徴を持つ。よって、導出部13の開口と多孔体15の間にできる空間で減酸素庫内と外の圧力が連通し、庫内の圧力減少を抑制することができる。
【0030】
また、減酸素運転中は式(2)の反応によって水が生成されることで、庫内の湿度が上昇し、庫内の結露を招く。結露は食品、食品容器に液水を付着させることになり、好ましくない。運転中は減酸素素子5の発熱によって減酸素素子5およびその近傍の温度が上昇する。よって減酸素庫内の減酸素素子近傍の空気は加熱され、近傍の空気中に含まれる水蒸気量は、前記減酸素素子から離れた領域よりも増加する。そこで、本実施の形態では導出部13が、減酸素ユニットの内部もしくは隣接する領域に設けられている。
【0031】
図4は、実施形態の減酸素ユニットを備えた野菜室31を有する冷蔵庫の模式図である。実施形態の減酸素ユニットは冷蔵庫などの保存容器などに用いることが好ましい。
【0032】
(実施例1)
図1の減酸素装置を用いて、水貯蔵供給タンク121からアノード2へ水の供給をする形態で、減酸素ユニットを動作させ、減酸素庫21内で減酸素反応を行い、アノード2とカソード3間の抵抗と電圧をそれぞれ測定した。
【0033】
(比較例1)
図1の減酸素装置から水貯蔵供給タンク121を省いた形態で、減酸素ユニットを動作させ、減酸素庫21内で減酸素反応を行い、アノード2とカソード3間の抵抗と電圧をそれぞれ測定した。
【0034】
実施例1と比較例1の抵抗測定の結果を図4のグラフに、電圧測定の結果を図5のグラフにそれぞれ示す。なお、グラフの縦軸の数値は、減酸素ユニットを動作させた時(hr=0、min=0)の実施例1の測定値を1とし、これ以外の数値は、実施例1の減酸素ユニットを動作させた時の値を基準に相対的な数値で表している。図4のグラフから、実施例1では、減酸素反応開始後から3、4時間経過までの間わずかに抵抗が減少し、その後一定となっていることから、アノード2やカソード3での反応は安定していることがわかる。一方、比較例1では、減酸素反応後から、概ね一定の割合で抵抗が上昇している。また、図5のグラフから、実施例1では、減酸素反応開始後、電圧は概ね一定である。一方、比較例1では、減酸素反応開始後から、電圧が上昇していることが確認できる。実施例1と比較例1の装置の構成の差は、アノード2への水を供給する水貯蔵供給タンク121であることから、これらの違いは、アノード2での、反応が水の不足によって反応が阻害されていることが原因であると推察される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1…減酸素ユニット
2…アノード
3…カソード
4…電解質膜
5…減酸素素子
6…アノード集電体
7…カソード集電体
8…水供給部
9…電圧印加手段
10…アノードガスケット
11…カソードガスケット
12…水貯蔵供給タンク
13…導出部
21…減酸素庫
22…開閉扉
30…冷蔵庫
31…野菜室
81…水受部
82…多孔体
121…タンク
122…制御弁
123…導水路
124…第1のタンク
125…第2のタンク
126…導水路
127…気液分離膜
128…第1の導水路
129…第2の導水路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードに挟持された電解質膜と、
前記カソードと前記アノードに電圧を印加する電圧印加手段と、
前記アノードに水を供給することが可能な水貯蔵供給タンクを有することを特徴とする減酸素ユニット。
【請求項2】
前記アノードへ前記水貯蔵供給タンクから水を供給するための導水路を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項1に記載の減酸素ユニット。
【請求項3】
前記水貯蔵供給タンクからのアノードに供給する水を制御するための開口弁を有し、
前記導水路は多孔体であることを特徴とする請求項1または2に記載の減酸素ユニット。
【請求項4】
前記水貯蔵供給タンクはイオン吸着材を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の減酸素ユニット。
【請求項5】
前記水貯蔵供給タンクは、気液分離膜を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の減酸素ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の減酸素ユニットを有することを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67851(P2013−67851A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209321(P2011−209321)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】