説明

渡し板

【課題】段差、溝、或いは凹所に渡して車椅子や身体に障害のある人などを通行させるとき、その状態を遠方からでも容易に認識可能でかつ容易に持ち運びできる渡し板を提供することにある。
【解決手段】渡し板10は、平坦な表面及び該表面に繋がる側面を備える厚みのある複数の板部材11〜13を含む。各板部材は、それらの各側面11d,12c,12d,13cを対向させて並べられ、段差、溝、又は凹所に架け渡されて通行路とされる。各板部材の対向する側面どうしは、粘着テープ15,16で連結され、この2つのテープの接合部17をヒンジとして折り畳み可能にされている。渡し板10は、板部材11,13における外側の側面11c,13dに発光装置21が取り付けられ、発光装置21には、板部材11,13に取り付けられたバッテリ26からスイッチ装置28、32,34を介して電力が供給及び遮断され、点灯及び消灯可能にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渡し板に関し、更に詳細には、例えば、車椅子などで段差を通過する際に平坦なスロープを形成し、或いは溝部又は凹所を通過する際に連続した平坦な通行路を形成してスムーズな移動を保障する持ち運び可能な渡し板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共施設などではバリアフリー対策としてエレベータやエスカレータが設置され、また、階段にはその傍らに迂回路としてスロープが作られている場合もあり、車椅子などでの通行が容易に行えるようになっている。さらに、階段だけで昇り降りしなければならない場所では、階段に沿って昇降する車椅子用階段昇降機が壁際に設置されていることもある。このように社会インフラが徐々に整備されてきていることから、例えば、車椅子に乗った身体に障害を持つ人や高齢者が外出する場合などには、これらエレベータ、エスカレータ、迂回路であるスロープ、或いは車椅子用階段昇降機を利用して危険なく通行することができる。
【0003】
しかし、上述したような社会インフラ整備が進んでも、未だ整備されていない段差は数多く存在し、例えば、歩道と車道の段差、バスの乗降口と路面との段差、或いは列車や電車に乗り降りする際の車両とホームとの段差や隙間などが車椅子の通行に支障を来していることも事実である。最近では、車椅子が、列車や電車に乗り降りする際、或いはバスに乗り降りする際には、乗降駅やバスに常備されている渡し板(単に、スロープとも言うことがある)を使用することで車椅子の安全な乗降を図っている。特許文献1には、このような渡し板として利用する「携帯用スロープ」の発明が開示されている。特許文献1に開示された発明は、強化プラスチックからなる2枚の板材の表面に、硬質又は軟質いずれか若しくは両方のチップ材をバインダにて連結することで形成された滑り止め材を取り付け、2枚の板材どうしを織布又は不織布からなるシートで繋いだ構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された携帯用スロープでは、列車や電車に乗り降りする際の車両とホームとの段差や隙間に渡して車椅子の車両への乗り降りに使用する場合、車両に乗り込むホーム上の位置が、車掌からは見通しの悪い場所であったとき或いは夜間の照明効果が多少悪い場所であったときなど、携帯用スロープを使用した車椅子の乗降を遠方にいる車掌や他の駅員が認識し難く、車椅子の乗降中であるにも係わらず車掌による車両のドア閉鎖操作や駅員によるドア閉鎖指示を車掌に連絡してしまう可能性がある、という問題もあった。
【0006】
また、特許文献1に開示された携帯用スロープでは、2枚の板材を繋ぐシートに織布又は不織布を使用し、さらにこれら織布又は不織布を形成している繊維に、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維などのいずれかを使用してその必要強度を確保しており、2枚の板材を繋ぐシートが非常に特殊な構造のものであるため、手軽に入手することができるものではなく、従って、その価格が高く、それが携帯用スロープの価格を高める、という問題があった。車椅子などの通行を確保する道具は可能な限りその通行の安全が得られる必要があり、また同時に安価であることが好ましく、そのような意味からすると特許文献1に開示された発明の携帯用スロープは不適当であった。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであって、段差、溝、或いは凹所に渡して車椅子や身体に障害のある人などを通行させるとき、その状態を遠方からでも容易に認識可能な渡し板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも平坦な表面及び該表面に繋がる側面を備える厚みのある複数の板部材を含み、前記各板部材が、それらの前記各側面を対向させて並べられ、段差、溝、又は凹所に架け渡されて通行路とされ、前記各板部材の対向する前記側面どうしが、ヒンジで連結されて折り畳み可能にされている渡し板であり、その特徴とするところは、前記通行路となる前記渡し板が、それを構成する最も外側に位置する2枚の前記板部材それぞれの少なくとも外側面に取り付けられた発光装置と、任意の前記板部材に取り付けられ、前記発光装置に電力を供給するバッテリと、該バッテリからの電力を前記発光装置に供給及び遮断するスイッチ装置とから構成されている。
【0009】
本発明に係る渡し板の他の実施態様としては、前記スイッチ装置が、複数の前記板部材のいずれかに取り付けられている。
【0010】
本発明に係る渡し板の他の実施態様としては、前記スイッチ装置が、前記ヒンジで連結されている隣接する前記板部材の少なくとも一対の対向する前記各側面に取り付けられ、折り畳まれた前記渡し板を広げて通行路板とするとき、前記ヒンジで連結された隣接する前記板部材どうしの対向する前記側面の接近により接点が接触可能なリミットスイッチから構成されている。
【0011】
本発明に係る渡し板の他の実施態様としては、前記発光装置が、多数の発光ダイオードで構成されている。
【0012】
本発明に係る渡し板の他の実施態様としては、前記ヒンジが、可撓性を有する合成樹脂製の第1テープ及び第2テープとから構成され、前記第1テープが、隣接する前記板部材どうしの前記各側面を対向させた状態で前記側面間に形成される間隙部を跨いで前記両板部材の前記両表面に接着剤により貼り付けられ、前記第2テープが、前記両板部材の対向する前記両側面に貼り付けられると共に、前記間隙部を横切っている前記第1テープにも接着剤により貼り付けられて形成されている。
【0013】
本発明に係る渡し板の更に他の実施態様としては、前記第2テープが、隣接する前記両板部材の前記各側面から前記表面とは反対側の裏面にまで貼り付けられている。
【0014】
本発明に係る渡し板の更に他の実施態様としては、前記第1テープ及び前記第2テープには、前記間隙部を横断する方向に延びる多数の補強繊維が入れられている。
【0015】
本発明に係る渡し板の更に他の実施態様としては、前記第1テープ及び前記第2テープには、前記間隙部に沿う方向に延びる多数の補強繊維が入れられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、渡し板の使用時に例えば車椅子を押す介助者などによるスイッチ操作によって発光装置を点灯することにより、渡し板が使用中であることを遠方から容易に確認できる。すなわち、複数の板部材をヒンジにより蛇腹状に折り畳んで格納状態にされた渡し板が使用時に広げられ、介助者がスイッチ装置を操作して発光装置に通電させると、発光装置が点灯し、これにより、例えば列車や電車のホームでこの渡し板を利用して車椅子などを乗降させているとき、車椅子が乗降中であることを遠方にいる他の駅員や車掌又は周囲の乗客に容易に視認させることができるので極めて安全な乗降を保障することができる。特に、本発明の渡し板によれば、発光装置が、この渡し板を構成する複数の板部材の最も外側に位置する2枚の板部材それぞれの外側面に取り付けられているので、遠方からの視認が容易となる。
【0017】
また、本発明の渡し板によれば、スイッチ装置が、複数の板部材のいずれかに取り付けられているので、渡し板を広げたときに簡単にスイッチ装置の操作が行えるので点灯の操作忘れなどが起こり難く、渡し板の利用に際して車椅子などを常に安全に通行させることができる。
【0018】
また、本発明の渡し板によれば、スイッチ装置が、ヒンジで連結されている隣接する板部材の少なくとも一対の対向する各側面に取り付けられたリミットスイッチであることから、渡し板を使用するときに広げることでヒンジにより連結された2枚の板部材の各側面が対峙接近し、これによりリミットスイッチが作動して内部接点の接触を起すので、自動的に発光装置を発光させることができ、発光装置の点灯操作忘れを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明の渡し板によれば、発光装置が、多数の発光ダイオードで構成されているので省電力でかつ高い輝度の発光を得ることができ、遠方からの確認を確かなものとすることができる。
【0020】
また、本発明の渡し板によれば、平坦な側面が間隔をあけて対面するように並べた少なくとも2枚の板材を連結する可撓性の合成樹脂製の第1テープと第2テープとが、それぞれ両板材の対峙した各側面間の間隙部を跨いで貼り付けられることから、間隙部では両テープが相互に貼り合わされた接合部が連結部兼ヒンジ部として形成される。この連結部兼ヒンジ部は、第1テープと第2テープとの貼り合わせていることから非常に強靱で耐久性が高く、その結果、2つの板材を接続する第1テープと第2テープに市販の粘着テープを用いても十分に使用に耐える連結部兼ヒンジ部を形成することができ、発光装置を取り付けた渡し板を非常に軽量に作ることができ、その持ち運びが容易となる。
【0021】
さらに、本発明の渡し板によれば、第2テープが両板材の各側面から裏面にまで及んで貼り付けられているので、両板材を第2テープにより接続する際、より大きな接続強度を得ることができる。しかも、隣接する板材を接続する第1テープ及び第2テープには間隙部を横断する方向に延びる多数の補強繊維が入れられていることから、各テープ自体の強度が大きくなり、これにより2枚の板材の接続強度を高めることができる。さらにまた、(請求項8に対応)隣接する板材を接続する第1テープ及び第2テープには前述した補強繊維に加えて、間隙部に沿う方向に延びる多数の補強繊維が入れられているので、両板材に貼り付けられた第1粘着テープ及び第2テープにおける板材の長さ方向及びこの方向に直交する方向へ強度が高く、その結果、両板材の接続強度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る渡し板を示す平面図。
【図2】図1に示される渡し板を2−2線で切断して示す断面図。
【図3】図2に示される渡し板の断面部分におけるA部を拡大して示す拡大断面図。
【図4】第1,第2粘着テープで連結された2枚の板材を表面どうしが重なるように折り畳んだ状態を示す図3と同様な部分的な拡大断面図。
【図5】図5(a)は、図1に示される渡し板の最外側に位置する板部材を5−5線で切断して示す外側面付近の断面図であり、図5(b)は、最外側に位置する板部材の外側面を部分的にその正面から見た側面図。
【図6】本発明の渡し板を用いて段差を車椅子が通行する状態を示す使用説明図。
【図7】本発明に係る他の実施形態の渡し板について発光装置が取り付けられた板部材とこれに隣接する板部材との接続部を部分的に拡大して示す図3と同様な断面図。
【図8】本発明に係る更に別の実施形態の渡し板について発光装置が取り付けられた板部材とこれに隣接する板部材との接続部を部分的に拡大して示す図3と同様な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の渡し板を添付の図に示された好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る渡し板10を示す平面図、図2は、図1の渡し板10を2−2線で切断してその切断面を見た断面図、図3は、図2のA部を拡大して示す部分的な拡大断面図である。この渡し板10は、繊維強化プラスチック(FRP)から形成された3枚の板部材11,12、13を備えている。これら3枚の板部材11〜13は、これらの長さ方向軸線が並行になるように並べて段差や溝部などに架け渡し、例えば、身体に障害のある人が乗った車椅子や歩行に多少難のある高齢者が、並べられた3枚の板部材11〜13を通行路として安全に通過できるように、また、その際、破損は勿論のこと大きな撓みも起こらない強度を備える厚さや大きさとされている。
【0024】
図1及び図2から明らかなように、この実施形態に係る渡し板10を構成する各板部材11〜13のそれぞれは、表面11a,12a,13a及び裏面11b,12b,13b、対向する側面11c,11d,12c,12d、13c,13d及び対向する端面11e,11f,12e,12f,13e,13fの六面を備える所定厚さの直方体である。この実施形態では、これらの板部材11〜13は、ほぼ同じ形状及び大きさで形成されており、少なくともそれぞれの表面11a,12a,13aと裏面11b,12b,13bとは平坦(平滑)に形成され、また、少なくとも隣接する板部材11〜13において相互に対向する側面11d,12c及び側面12d,13cも平坦(平滑)に形成されている。
【0025】
これら3枚の板部材11〜13は、それぞれの側面11c,12c,12d,13cが対面するように対峙させられ、それら各側面11c,12c,12d,13c間に僅かな間隙部14が形成されるように接近して並べられた状態で可撓性を有する合成樹脂製の第1テープ15及び第2テープ16により接続されている。これら第1テープ15及び第2テープ16を用いた板部材11〜13どうしの接続構造を、2枚の板部材11,12を接続する場合について詳細に説明すると、第1テープ15は、図3の拡大図から明らかなように板部材11の側面11dと板部材12の側面12cを近接対峙させた時に形成される間隙部14を跨いで両板材11,12の各表面11a,12aに接着剤又は粘着剤で貼り付けられる。
【0026】
また、第2テープ16は、間隙部14で対面している両板部材11,12の各側面11d,12cに接着剤又は粘着剤で貼り付けられ、更にその第2テープ16の幅方向側方部16a,16bが各板部材11,12の裏面11b,12bにも及んで接着剤又は粘着剤で貼り付けられている。そして、間隙部14では第1テープ15と第2テープ16とが、相互に貼り合わされている。図3及び図4では、第1テープ15と第2テープ16とが間隙部14で相互に接合している部分を符号17で示す。
【0027】
可撓性を有する合成樹脂製の第1テープ15と第2テープ16で2つの板部材11,12を連結する際のこれらテープ15,16の貼り付け方について説明すると、図1〜図3に示されるように隣接する板部材11,12を、それぞれの一側面11d,12cが対面するように対峙させ、それら各側面11d,12c間に僅かな間隙部14が形成されるように接近して並べる。そして、第1テープ15が、側面11d,12c間の間隙部14を跨ぐように、かつこの間隙部14に沿って両板部材11,12の長さ方向に亘ってその表面11a,12aに接着剤又は粘着剤により貼り付けられる。次いで、図4に示されるように第1テープ15で仮接続された両板部材11,12が、第1テープ15の間隙横断部分をヒンジ部として図3に矢印18で示されるように旋回させられ、2つの板部材11,12の表面11a,12aどうしが対面するように折り畳まれる。
【0028】
このように第1テープ15により仮接続された2つの板部材11,12が、それらの表面11a,12aどうしを対面させるように折り畳まれると、図4に示されるように対面していた側面11d,12cが同じ平面上に位置することになる。そこで、第2テープ16が、両側面11d,12cに、対面している表面11a,12a間の間隙部を跨ぐように側面11d,12cの長さ方向に亘って接着剤又は粘着剤により貼り付けられる。これにより、第2テープ16は、2つの板部材11,12の両側面11d,12cに貼り付けられると共に、間隙部14を横断する部分では、間隙部14を跨いで表面11a,12aに貼り付けられた第1テープ15の間隙横断部と貼り合わされ、その結果、間隙部14には2つのテープ14,15どうしの接合部17が形成される。
【0029】
この接合部17は、2枚の板部材11,12を連結するだけではなく、図1及び図2に示されるように各表面11a,12aがほぼ連続する平面になるように広げ、また図4に示されるように各表面11a,12aを重ね合わせるべく折り畳むときの各板部材11,12の旋回中心、即ちヒンジ部としても機能する。このヒンジ部を兼ねた連結部は、第1テープ15と第2テープ16とが相互に接合されている結果、非常に強靱である。
【0030】
ところで、第2テープ16は、渡し板10が、図4に示されるように各板部材11,12の表面11a,12aどうしを対面させるように折り畳まれたとき、表面11a,12a間の間隙部を挟んでその両側に位置する両側面11d,12cの全幅寸法Wより大きい幅寸法を有している。従って、表面11a,12a間の間隙部を跨いで側面11d,12cに、その長さ方向に亘り接着剤又は粘着剤によって貼り付けられた第2テープ16の幅方向側方部は各板部材11,12の各側面11d,12cからはみ出す。このはみ出した幅方向側方部即ちテープ部分16a,16bは各板部材11,12の裏面側に折り返されて裏面11b,12bに貼り付けられる。
【0031】
2つの板部材11,12を連結する第1テープ15及び第2テープ16には、間隙部14を横断する方向、即ちテープの幅方向に延びる多数の補強繊維(糸)19が入っている(図1参照)。このように各テープ15,16にその幅方向に延びる多数の補強繊維19を入れると、各テープ15,16における幅方向への引っ張り力に対する強度が高くなるため間隙部14での2つのテープ15,16の接合部17の強度が更に高まり、2つの板部材11,12の連結作用及びヒンジ作用の耐久性をより向上させることができる。さらに、第1テープ15及び第2テープ16に、間隙部14に沿って延びる方向、即ちテープ15,16の長さ方向に延びる多数の補強繊維(糸)20を入れると(図1参照)、テープ自体の引っ張り強度がより大きくなることから、間隙部14に形成される接合部17の強度はより一層高くなる。
【0032】
ところで、長さ方向及びこれに直交する幅方向に補強用の縦糸横糸を入れたテープとしては、例えば、一面に予め粘着剤が塗布されて巻き取られている布粘着テープと称されるものをはじめとして市販されている種々のテープを使用することができる。上述した実施形態に係る渡し板10では、例えば、ポリエステル不織布を補強材に使用したポリエステルフィルムに粘着剤を塗布したストロングテープ(日東電工CSシステム株式会社製)を第1テープ15及び第2テープ16として使用することができる。勿論、市販されている他の布粘着テープなどを使用することもできる。
【0033】
この実施形態に係る渡し板10は、前述したように3枚の板部材11〜13を第1テープ15及び第2テープ16で接続すると共に両テープ15,16の接合部17をヒンジとして折り畳み可能に構成されている。その際の折り畳みは、持ち運びの容易さ、或いは不使用時の格納などのために蛇腹状、言い換えればアコーデオン状であることが好ましい。このような蛇腹状に折り畳めるようにするには、図1で見て中間と右側とにそれぞれ位置する板部材12,13を接続する第1テープ15及び第2テープ16の配置構造が、図2及び図3で示したように左側と中間とにそれぞれ位置する板部材11,12を接続する第1テープ15及び第2テープ16の貼り付け方と異にしている。
【0034】
すなわち、3枚の板部材11〜13を接続して形成された渡し板10が、各板部材11〜13の各接合部17をヒンジとして蛇腹状に折り畳めるようにするためには、例えば、この実施形態のように図1で見て左側と中間にそれぞれ位置する板部材11,12の表面11a,12aどうしが重ね合わされ、また、中間と右側にそれぞれ位置する板部材12,13の裏面12b,13bどうしが重ね合わされるように折り畳まれる必要がある。そのためには、中間と右側とにそれぞれ位置する板部材12,13を接続する第1テープ15及び第2テープ16の貼り付け方を、左側と中間にそれぞれ位置する板部材11,12を接続するときの貼り付け方と正反対にしなければならない。
【0035】
具体的には、図1から明らかなように、中間と右側とにそれぞれ位置する板部材12,13を第1テープ15及び第2テープ16で接続する場合、第1テープ15は、板部材12の側面12dと板部材13の側面13cを対峙させた時に形成される間隙部14を跨いで両板部材12,13の各裏面12b,13bに接着剤又は粘着剤で貼り付けられる。また、第2テープ16は、間隙部14で対面している両板部材12,13の各側面12d,13cに接着剤又は粘着剤で貼り付けられ、更にその第2テープ16の幅方向側方部であるテープ部分16a,16bが各板部材12,13の表面12a,13aに及んで接着剤又は粘着剤で貼り付けられている。そして、間隙部14では第1テープ15と第2テープ16とが相互に貼り合わされている。このように各テープ15,16で接続される箇所が複数となる場合、第1テープ15は、隣接する接続箇所について表面側と裏面側とに交互に貼り付けられることになる。
【0036】
更に、この渡し板10には、発光装置21が取り付けられている。具体的には、発光装置21は、上述したように蛇腹状に折り畳めるように第1テープ15及び第2テープ16により相互に接続された3枚の板部材11〜13のうち、図1に示されるように最外側に位置する板部材11と板部材13とにおける外側面11c,13dに設けられている。これら最外側に位置する2つの板部材11,13におけるそれぞれの外側面11c,13dに取り付けられる発光装置21及びその取り付け構造は、まったく同じであるので、板部材11についてのみ説明し、板部材13の外側面13dに取り付けられる発光装置21及びその取り付け構造については省略する。図2に示されるB部を拡大して示す図5から明らかなように板部材11の外側面11cには、板部材11の長さ方向(通行路方向)大部分に、断面コ字状に切り欠いた凹部22が形成されている。
【0037】
発光装置21は、多数の発光ダイオード23が取り付けられた基板24を備えている。この基板24は、凹部22に収納可能な大きさの細長い形状をしている。多数の発光ダイオード(LED)は、図5(b)に示されるように基板24の長さ方向全体にほぼ等間隔で一列に配列されている。この基板24の裏面には、各発光ダイオード23に通電するためのプリント配線(図示せず)が形成されている。このような基板24は、凹部22の内部における底面に適当な手段により固定されている。
【0038】
前述した基板24は、板部材11の外側面11cに形成された凹部22のほぼ大部分に配置されているが、その長さ方向一端側に残る凹部22内スペースには、図5(b)に示されるように各発光ダイオード23に電力を供給するためのバッテリ25が収納され且つ凹所22底面に着脱可能に固定されている。このバッテリ25は、発光ダイオード23の消費電力が非常に少ないことから市販されているボタン電池や充電可能な小型のリチューム電池等を使用することができる。なお,発光ダイオード23を取り付けた基板24が、板部材11の外側面11cに形成された凹部22内に取り付けられ、且つバッテリ25が凹所22内の所定位置に取り付けられた後には、この凹部22をアクリル樹脂などで形成された透明なカバー(図示せず)により塞ぐことも好ましい。すなわち、このカバーは、板部材11の外側面11cと同一面になるように凹部22を塞ぐように着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0039】
バッテリ25の近傍における板部材11には、スイッチ装置26が取り付けられている。このスイッチ装置26は、バッテリ25と基板24の裏面に形成されたプリント配線とを結ぶ給電回路を開閉するように該給電回路を形成する電線27に接続されている。このスイッチ装置26は、既に知られている押しボタンスイッチやスライドスイッチ、或いは同様な種々のタイプのスイッチを使用することができる。また、給電回路を形成する電線27は、繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている板部材11の表面や側面から細い孔を開け、この孔に電線27を挿通することにより板部材11の内部に配線することができる。
【0040】
次に、上述した実施形態の渡し板10の使用方法について説明する。この渡し板10は、3つの板材11〜13が接合部17をヒンジ部として蛇腹状に折り畳まれて適当な保管場所に格納されている。このような渡し板10が、例えば、車椅子をホームから電車に乗り込ませるとき、或いはその逆に電車からホームに降ろすときに使用される場合、駅員が、折り畳まれたこの渡し板10を保管場所からホームの所定位置まで運び、図1に示されるような状態に広げ、ホームに停車している電車のドアが開いている所定乗車口とホームとの間に架け渡す。その際、駅員は、渡し板10に取り付けられているスイッチ装置26をオンにしてバッテリ25から電力を発光装置21の発光ダイオード23に給電し、これらダイオード23を点灯させる。その後、図6に示されるように駅員が車椅子32を押し、この渡し板10を通行路としてホームから電車に乗り込ませ、或いは電車からホームに降ろす。
【0041】
車椅子32が渡し板10を通行するとき、車椅子32の荷重は、特に車椅子32の車輪が乗る板部材11,13に対して表面11a,13aから裏面11b,13bの方向に作用するので、接合部17が引き破られる程の力がこの接合部17に作用することはない。したがって、車椅子32の通行で接合部17が破損するようなことはない。この渡し板10では、上述したように複数の板部材11〜13のうち、外側に位置する板部材11,13の外側面11c,13dにおいて発光装置21の発光ダイオード23が点灯しているので、夜間はもちろんのこと昼間でも、電車の車掌が遠方から発光ダイオード23の光を容易に視認でき、その結果、渡し板10を使用していることが容易に確認できる。
【0042】
特に、板部材11,13の外側面11c,13dに取り付けられた発光装置21では、これを構成する多数の発光ダイオード23が、板部材11の側面11c側に形成された凹所22内から外側方に向かって光を照射するように取り付けられているので、渡し板10を遠方から見たときには、板部材11の側面11c又は側面13dから照射している光が確実に目に入り、その結果、渡り板10の存在を確実に確認することができる。
【0043】
この渡し板10を使用して車椅子32の電車への乗降が終わった後は、駅員がスイッチ装置26をオフにして発光装置21への通電を遮断し、発光ダイオード23を消灯する。その後、駅員は、各板部材11〜13を接続している接合部17をヒンジ部として各板部材11〜13を重ね合わせるように折り畳み、再び格納場所に戻して保管する。
【0044】
図1〜図6に示される実施形態の渡し板10では、外側の板部材11,13の外側面11c,13dに設置した発光装置21の発光ダイオード23を点灯及び消灯するスイッチ装置26が渡し板10を使用する者の操作で行う所謂、手動式であったが、このような手動式のスイッチ装置26を使用するとその操作を忘れてしまうことがある。これを防止するため、手動式のスイッチ装置26に代えて、リミットスイッチ28を図7に示されるように板部材11の側面11dに埋め込んでおくことも好ましい。すなわち、ここで使用するリミットスイッチ28は、プランジャ(アクチュエータ)28aを備え、このプランジャ28aを押し込むと、プランジャ28aの動きが、内蔵されたマイクロスイッチ(図示せず)に伝達されて給電回路を閉成するものであり、このようなスイッチ自体は公知のものである。
【0045】
このプランジャ形リミットスイッチ28は、そのプランジャ28aが板部材11の側面11dから突出するように板部材11の内部に埋め込まれている。すなわち、このリミットスイッチ28は、板部材11,12どうしを接続する第2テープ16を側面11d,12cに貼り付ける前に、プランジャ28aが側面11dから突出するように埋め込まれ、次いで第2テープ16の所定位置に穴を開け、その穴からプランジャ28aが外側に露出するように貼り付けられる。このリミットスイッチ28のマイクロスイッチは、バッテリ25から発光装置21における基板24の裏面に形成されたプリント配線に給電する給電回路に電線27により接続されている。板部材11の側面11dに対向する板部材12の側面12cには、渡し板10が図1に示されるように広げられたときにプランジャ28aが当接する位置に薄い金属板又は樹脂板などからなる比較的に硬質な当接板29が取り付けられ、渡し板10が広げられたときに板部材12の対向する側面12cがプランジャ28aに対してこれを確実に押し込む力を与えるようにされている。
【0046】
このようなリミットスイッチ28を使用することにより、渡し板10を使用するときにこれを広げるだけで自動的に発光装置21のスイッチが入り、使用後に渡し板10を折り畳むと自動的にスイッチが切れるので、点灯忘れや消灯忘れが起こらず、発光装置21の点灯や消灯を確実に行うことができる。
【0047】
図8は、プランジャ形のリミットスイッチ28に代えてマグネット形のリミットスイッチ30を板部材11の側面11dに埋め込んだ渡し板10の一部を示している。マグネット形のリミットスイッチ30は、その端面に例えばN極の可動なマグネット(アクチュエータ)30aを備え、このマグネット30aの動きを内蔵したマイクロスイッチに伝達して接点をオンオフするものである。このマグネット形のリミットスイッチ30を用いる場合、対向する板部材12の側面12cには、S極又はN極の別のマグネット31が埋め込まれている。これにより、渡し板10が、その使用の際に図1に示されるように広げられると、板部材12の側面12cが板部材11の側面11dに接近し、該側面12cに埋め込まれたマグネット31がリミットスイッチ30のマグネット30aに吸引され又は反発して動き、この動きによりマイクロスイッチが作動する。このようなマグネット形のリミットスイッチ30も既に公知であるのでその構造の詳細は省略する。
【0048】
このようなマグネット形のリミットスイッチ30を使用する利点は、内蔵されているマイクロスイッチを動作させるアクチュエータが磁力で動くマグネット30aであり、しかもこのマグネット30aを可動させるのもマグネット31であるので、リミットスイッチ30が埋め込まれた板部材11の側面11d、及びマグネット31が埋め込まれた板部材12の側面12cを第2テープ16で完全に覆うことができるので、第2テープ16の板部材11及び板部材12に対する接着強度即ち取り付け強度を低下させることがない。
【0049】
前述した各実施形態に係る渡し板10では、図1から明らかなように各板部材11〜13の平面形状が長方形であったが、本発明ではこのような形状に限定されるものではなく、外側に位置する板部材11,13の外側縁部を僅かに湾曲する形状に形成してもよい。また、各板部材11〜13の表面11a〜13aには、車椅子32が通行する際の滑り止め手段(図示せず)を設けることも好ましい。このような滑り止め手段は、例えば、ゴム製のシートなどからなる薄い滑り止め材を各板部材11〜13の表面11a〜13aのほぼ全面に貼り付けるか、或いはゴム製の帯材を板部材11〜13の表面11a〜13aにその長手方向に等間隔に並べて接着するなどして構成することができる。また、板部材11〜13が繊維強化プラスチックで形成されるとき、その表面に無数の微少突起を直接成形することで滑り止め手段とすることもできる。
【0050】
また、前述した各実施形態に係る渡し板10は、図1から明らかなように3枚の板部材11〜13が、それらの対向する側面11d,12cどうし及び対向する側面12d,13cどうしを第1テープ15及び第2テープ16で接続したものであったが、本発明の渡し板は、これらの実施形態に限定されるものではなく、板材が4枚以上であってもよい。
【0051】
以上説明したように、本発明の渡し板によれば、少なくとも平坦な表面及び該表面に繋がる側面を備える厚みのある複数の板部材を、それらの各側面を対向させるように並べた状態で接続され、少なくとも最外側に位置する板部材の外側面に発光装置を取り付け、使用中にこの発光装置を点灯するようにしたことにより、遠方からでも渡し板を用いて車椅子を通行させていることが容易に確認できるので非常に安全である。
【0052】
また、本発明の渡し板によれば、これを構成する板部材を第1テープ及び第2テープで接続して、使用時及び不使用時に折り畳む際のヒンジとしたことにより渡し板を極めて軽量に製作できるので発光装置などを取り付けても従来の渡し板とその重さが格別重くなることはなく、持ち運びに支障を来すこともない。
【符号の説明】
【0053】
10 渡し板
11,12,13 板部材
11a,12a,13a 板材の表面
11b,12b,13b 板材の裏面
11c,12c,13c 板材の一側面
11d,12d,13d 板材の他側面
11e,12e,13e 板材の一端面
11f,12f,13f 板材の他端面
14 間隙部
15 第1テープ
16 第2テープ
17 両テープどうしの接合部
21 発光装置
22 凹部
23 発光ダイオード
24 基板
25 バッテリ
26 スイッチ装置
28,30 リミットスイッチ
32 車椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも平坦な表面及び該表面に繋がる側面を備える厚みのある複数の板部材を含み、前記各板部材が、それらの前記各側面を対向させて並べられ、段差、溝、又は凹所に架け渡されて通行路とされ、前記各板部材の対向する前記側面どうしが、ヒンジで連結されて折り畳み可能にされている渡し板において、
前記通行路となる前記渡し板が、それを構成する最も外側に位置する2枚の前記板部材それぞれの少なくとも外側面に取り付けられた発光装置と、任意の前記板部材に取り付けられ、前記発光装置に電力を供給するバッテリと、該バッテリからの電力を前記発光装置に供給及び遮断するスイッチ装置とを備えることを特徴とする渡し板。
【請求項2】
前記スイッチ装置が、複数の前記板部材のいずれかに取り付けられている請求項1に記載の渡し板。
【請求項3】
前記スイッチ装置が、前記ヒンジで連結されている隣接する前記板部材の少なくとも一対の対向する前記各側面に取り付けられ、折り畳まれた前記渡し板を広げて一枚の通行路板とするとき、前記ヒンジで連結された隣接する前記板部材どうしの対向する前記側面の接近により接点が接触可能なリミットスイッチから構成されている請求項1又は2に記載の渡し板。
【請求項4】
前記発光装置が、多数の発光ダイオードで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の渡し板。
【請求項5】
前記ヒンジが、可撓性を有する合成樹脂製の第1テープ及び第2テープとから構成され、前記第1テープが、隣接する前記板部材どうしの前記各側面を対向させた状態で前記側面間に形成される間隙部を跨いで前記両板部材の前記両表面に接着剤により貼り付けられ、前記第2テープが、前記両板部材の対向する前記両側面に貼り付けられると共に、前記間隙部を横切っている前記第1テープにも接着剤により貼り付けられて形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の渡し板。
【請求項6】
前記第2テープが、隣接する前記両板部材の前記各側面から前記表面とは反対側の裏面にまで貼り付けられている請求項5に記載の渡し板。
【請求項7】
前記第1テープ及び前記第2テープには、前記間隙部を横断する方向に延びる多数の補強繊維が入れられている請求項5又は6に記載の渡し板。
【請求項8】
前記第1テープ及び前記第2テープには、前記間隙部に沿う方向に延びる多数の補強繊維が入れられている請求項7に記載の渡し板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−216179(P2010−216179A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65748(P2009−65748)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(504447992)株式会社 ジーエーピー (5)
【出願人】(502063176)ケアメディックス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】