説明

渡りレール装置

【課題】貨物列車の曲線区間走行に制限を与えることなく貨物列車間を鉄道列車が円滑に移動可能とする。
【解決手段】貨物車両110に鉄道車両210が走行する一対の積載レール112が設けられ、二つの貨物車両の一方に回動端部が位置し、他方に基端部が位置すると共にレール状構造部21を有する一対の渡り部材20と、貨物車両の端部で各渡り部材を起立伏臥回動可能に基端部を支持する一対の回動支持部40とを備え、渡り部材の回動端部は、内側面が外側面より長くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されると共に、これに対応して積載レールは、内側面が外側面より短くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されている、という構成を採っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結された複数の鉄道車両を積載して走行する複数の貨物車両の間に設けられる渡りレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、軌間寸法の異なる線路区間において列車を連続的に移動させるための技術が種々提案されている。その一つとして、所定軌道を走行する複数の鉄道車両からなる鉄道列車を積載する、当該鉄道列車よりも広い軌間の軌道を走行可能な貨物列車(連結された複数の貨物車両)を使用して、広い軌間の線路区間は鉄道列車を積載した貨物列車で走行し、狭い軌間の線路区間では積載されていた鉄道列車で走行する技術を挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−262914号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術において、鉄道列車を貨物列車に積載する場合に、鉄道車両を一台ずつ貨物列車に格納する作業を行っていては、煩雑に過ぎ、その積載作業には多大な作業負担と時間が必要となってしまう。そこで、連結された複数の貨物車両の一端側から連結された鉄道車両が乗り入れて他端側まで移動することで積載することが効率的である。
その場合、鉄道列車は各貨物車両の連結部を渡って移動しなければならず、そのための渡り構造が必須となる。
例えば、貨物車両内に鉄道列車が移動するための一対のレールを設け、渡り構造としては、一方の貨物車両および他方の貨物車両のそれぞれに設けられたレールの間に別途用意したレールを架設するなどの方法が考えられるが、確実に鉄道列車を渡らせるため、それら各レール同士の接する部分には隙間が極力ない構造とする必要がある。
しかしながら、車両間にほぼ隙間なくレールを架設すると、貨物列車が曲線の線路区間を走行する際に、曲線における各貨物車両間の内輪側のレール同士が接触するおそれがあるため、貨物列車の走行が直線若しくは非常に緩やかな曲線の線路区間に制限されるという問題があった。
【0004】
本発明は、貨物列車の曲線区間走行に制限を与えることなく連結された貨物車両間を鉄道列車が円滑に移動可能とすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、連結された複数の鉄道車両を積載する連結された複数の貨物車両の相互間を前記各鉄道車両が移動することを可能とする渡りレール装置であって、前記各貨物車両の鉄道車両積載面上には前記鉄道車両が走行するための一対の積載レールが設けられ、連結された二つの貨物車両のいずれか一方に回動端部が位置し、他方に基端部が位置するように掛け渡されると共に上部にレール状構造部を有する一対の渡り部材と、前記各渡り部材の基端部が位置する貨物車両の端部に設けられ、前記各渡り部材の回動端部が起立伏臥回動可能となるように前記基端部を支持する一対の回動支持部と、を備え、前記渡り部材の回動端部は、内側面が外側面より長くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されると共に、これに対応して前記積載レールは、内側面が外側面より短くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
なお、ここでいう「渡り部材の内側面」とは、一対の渡り部材における一方の渡り部材にあっては他方の渡り部材側の面を示す。「渡り部材の外側面」とはその逆側の面を示す。同様に、「積載レールの内側面」とは、一対の積載レールにおける一方の積載レールにあっては他方の積載レール側の面を示す。「積載レールの外側面」とはその逆側の面を示す。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、一方の前記回動支持部は前記連結された二つの前記貨物車両の一方に固定され、他方の回動支持部はもう一方の前記貨物車両に固定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、少なくとも前記渡り部材の斜めに切断された形状に形成された部分とこれに対向する前記積載レールの斜めに切断された形状に形成された部分の通過の際に、反対側の車輪のフランジ内側面を当該フランジよりも内側から支えるガイドレールを前記各渡り部材ごとにそれぞれ備えることを特徴とする。
なお、ここでいう「フランジ内側面」とは、車軸両端部に設けられた一対の車輪における一方の車輪のフランジにあっては他方の車輪側の面を示す。
また、「フランジよりも内側から支える」とは、車軸両端部に設けられた一対の車輪における一方の車輪のフランジにあっては他方の車輪側から接して支えることを示す。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、各渡り部材に起立伏臥回動動作を付与する駆動手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、貨物車両が複数連結された貨物列車が水平且つ真っ直ぐなレールの軌道上に配置され、起立伏臥回動可能な一対の渡り部材が伏臥回動により回動端部を対向する積載レール側に延出させた状態で、貨物列車の一端から連結された鉄道車両が内部に積載される。その際、複数の鉄道車両は連結されたまま各貨物車両内を進行する。そして、連結された各貨物車両間を渡りレール装置の一対の渡り部材で渡して連結された鉄道車両の移動が行われる。
このとき、各渡り部材の回動端部は、内側面が外側面より長くなるように先端が斜めに切断された形状に形成され、積載レールは、内側面が外側面より短くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されているので、渡り部材と積載レールの対向端面が同じ方向に傾斜した状態となり、近接対向配置させることが出来る。かかる場合、積載レールの長手方向について渡り部材の回動端部の上面と積載レールの先端部の上面とが重合する区間が形成される。このため、鉄道車両の車輪が渡り部材と積載レールとの境界位置を通過する際には、車輪の踏面が渡り部材の上面か積載レールの上面のいずれかに接触するので、境界位置の通過の際に鉄道車両に対する振動を低減でき、鉄道車両が各貨物車両間を円滑に渡ることが可能となる。
【0011】
一方、連結された鉄道車両の積載後、各渡り部材は、回動端部を対向する積載レール側から離間するように起立回動させた状態として、各貨物車両の走行が行われる。その際、例えば、貨物列車が曲線区間を走行し各貨物車両の左右いずれかの間隔が狭くなった場合でも、渡り部材は、上方に回動して対向する積載レールから離間しているので、対向する貨物車両の積載レールやその周囲との接触等を効果的に回避することが可能となる。
従って、渡りレール装置は、貨物列車の曲線の線路区間走行に制限を与えることなく貨物列車間を鉄道列車が円滑に移動することを可能とする。
また、線路区間の勾配や高低差が生じる場合にあっても、各渡り部材の回動端部が上方に持ち上げられていれば、対向する貨物車両側への接触等を効果的に回避することができるので、貨物列車は渡りレール装置による制限を受けることなく起伏のある区間を円滑に移動することを可能とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、連結された二つの貨物車両の間で、一方の回動支持部を一方の貨物車両に固定し、他方の回動支持部をもう一方の前記貨物車両に固定したので、一対の渡り部材は、それぞれ、一方の貨物車両に回動端部を向けた状態と他方の貨物車両に回動端部を向けた状態となる。
一般に鉄道車両の車輪の踏面は外側が小径、内側が大径となるようにテーパが形成されており、車輪の通過時には一対の渡り部材は外側に広がる方向に力が作用する。その場合、渡り部材は基端部側では広がりにくく、回動端部側では広がりやすくなる。しかしながら、上述のように渡り部材の先端の向きが互い違いに配設されることにより、一対の車輪の一方が渡り部材の回動端部に近い位置でも他方の車輪は渡り部材の基端部近い位置を通過している状態となるので、一対の渡り部材の向きをそろえて配設している場合よりも各渡り部材の間隔の広がり幅を低減し、より安定した走行を維持することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、渡り部材の斜め部分(斜めに切断された形状に形成された部分)と対向する積載レールの斜め部分(斜めに切断された形状に形成された部分)の通過の際に渡りレール装置がフランジ内側面を当該フランジよりも内側から支えるガイドレールを有している。
渡り部材の斜め部分や積載レールの斜め部分は徐々にその先端側に向かって上面幅が狭くなる形状であることや渡り部材の傾斜面と積載レールの傾斜面とは隙間を設けている場合があることから、その上を車輪が接して鉄道車両が通過する際には、走行安定性の低下を生じやすくなるが、一方の車輪がそのような事情により外側に進行し得る状態となっても、他方の車輪がガイドレールにより内側への進行を阻止されるので、走行安定性の低下による脱輪等を効果的に抑止することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、各渡り部材に起立伏臥回動動作を付与する駆動手段を備えるので、各渡り部材の起立回動又はその逆方向の伏臥回動の作業負担を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(貨物車両及び鉄道車両)
以下、本発明の実施の形態を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、発明の実施形態である渡りレール装置10を積載した貨物列車100を示す側面図である。
貨物列車100は、図1に示すように、複数の連結された貨物車両110と、これら貨物車両110に接続されて牽引する機関車(図示略)とから構成されている。かかる貨物列車100は、当該貨物列車100が走行する軌道よりも軌間の狭い軌道を走行する鉄道列車200を積載して運行を行う車両である。積載される鉄道列車200も、複数の連結された鉄道車両210から構成され、各鉄道車両210が動力を持っていない場合には必要に応じて機関車が接続されていてもよい。
【0016】
上記各貨物車両110は、上記鉄道列車200を積載するために、鉄道車両積載面としての台枠111の上面に鉄道列車200の軌間幅に合わせた一対の積載レール112が前後方向に沿って設けられている。
そして、鉄道列車200を貨物列車100に積載する際には、連結された貨物車両110の一端部側から鉄道列車200が乗り入れて、連結された貨物車両110の他端部側に移動可能となるように、各貨物車両110の間には、鉄道列車200が渡ることを可能とするための渡りレール装置10が設けられている。
なお、鉄道列車200の積載は、貨物列車100がなるべく直線状の線路区間に停車しているときに行われ、貨物列車100の走行時には鉄道列車200の移動は行われない。
また、貨物車両110の前後長さと鉄道車両210の前後長さとは各連結器間の長さで一致するように設定され、鉄道列車200の積載時には、当該鉄道列車200の各連結器201と貨物列車100の各連結器101とは前後方向について同位置となるように鉄道列車200は停車し保持される。従って、積載時に一両の鉄道車両210が二両の貨物車両110にまたがって積載されることはない。
【0017】
(渡りレール装置の全体構成)
図2は渡りレール装置10の平面図、図3は斜視図、図4は側面図、図5は正面図である。
渡りレール装置10は、連結された二つの貨物車両110,110のいずれか一方に回動端部が位置し、他方に基端部が位置するように掛け渡されると共に上面にレール状構造部21を有する一対の渡り部材20,20と、各渡り部材20の回動端部と基端部のそれぞれの下側に配設された台座30,31と、各渡り部材20,20の基端部が位置する貨物車両110の端部に設けられ、各渡り部材20,20の回動端部が仰角方向に回動可能となるように基端部を支持する一対の回動支持部40,40と、各渡り部材20,20の回動動作を付与する開閉切替機構60,60と、各積載レール112,112に沿って、積載する鉄道車両210の車輪202のフランジ内側面202cを当該フランジよりも内側から支える一対のガイドレール80,80とを備えている。
なお、以下の説明おいて、図2における上側が貨物列車100の前方とする。また、図2における左右の渡り部材20,20と回動支持部40,40と位置保持機構60,60はいずれも同一構造のものであるが、前後の向きが互いに逆に配置されている。つまり、右側の渡り部材20は回動端部が前方を向いて配置され、左側の渡り部材20は回動端部が後方を向いて配置されている。以下の説明では、右側の構成について主に説明し、左側の構成については同一であるため説明を省略する。
【0018】
(積載レール)
前述したように、各積載レール112は、台枠111の上面に前後方向に沿って設けられている。かかる積載レール112は、その上面、内側面および上面から内側面にわたる曲面部分に鉄道車両210の車輪202が接して走行が行われるため、積載レール112の上面から内側面にかけては通常のレールとほぼ等しい断面形状となっている。
また、各積載レール112は、その一端部が渡り部材20の回動端部と対向する構造を有し、他端部は回動支持部40を介して渡り部材20と連結される構造となっている。即ち、各積載レール112の一端部は、その外側面が内側面よりも長くなるようにその先端部が斜めに切断された形状に形成されている。このため、積載レール112はその先端部に鉛直方向に沿った傾斜面112aを有すると共に、尖鋭な形状となっている。また、対向する貨物車両110側の積載レール112の端部は、貨物車両110の台枠111のほぼ端縁位置まで延出されており、後述する回動支持部40が設けられている。
【0019】
(台座)
貨物車両110の台枠111の前後それぞれの端部は、図4に示すように、他の部位よりも一段低くなった段部111aが形成され、当該段部111aの上面であって、各積載レール112,112の端部の下側には台座30,31が固定状態で設置されている。
これらの台座30,31は、図2に示すように、いずれも長方形状のプレートであり、その上面部は、渡り部材20の回動端部と基端部とがそれぞれ載置される載置面となっている。そして、一方の台座30は、渡り部材20の回動端部と積載レール112の傾斜面112aが形成された端部とを載置し、もう一方の台座31は、渡り部材20の基端部と積載レール112の回動支持部40が設けられた端部とを載置している。
【0020】
(渡り部材)
各渡り部材20は、図2〜5に示すように、棒状に形成されており、連結された二つの貨物車両110,110の間に架設することが可能な長さに設定されている。そして、二つの貨物車両110,110の互いに離間した積載レール112,112の端部と端部を連接することで鉄道車両210の車輪202の走行を可能となるようにしている。
従って、各渡り部材20は、その上部にレール状構造部21を備えている。このレール状構造部21は、レールとして機能する構造、即ち、車輪202(図5参照)の踏面202aが接触する上面部21aと車輪202のフランジ外側面202bに対向する内側面21bとを備えており、上述の積載レール112と同様に、上面部21aから内側面21bにかけては通常のレールとほぼ等しい断面形状となっている。なお、レール状構造部21は、上面部21aから内側面21bにかけての通常のレールとほぼ等しい断面形状を有する構造であれば、特にレール状でなくとも良い。
【0021】
かかる渡り部材20の基端部は、前述した、積載レール112における貨物車両110の台枠111のほぼ端縁位置まで延出された端部に回動支持部40を介して連結されている。
また、渡り部材20の回動端部は、いわゆる自由端となっており、その先端には傾斜面22が形成されて尖鋭な形状となっている。かかる傾斜面22は、渡り部材20を真っ直ぐに延ばした状態(水平であって基端部側の積載レール112の延長線に沿った状態)において、鉛直方向に沿った状態となり、且つ、渡り部材20の内側面を外側面よりも長くする(前方まで延出させる)方向に傾斜している。また、この傾斜面22は、二つの貨物車両110,110がいずれも直線の線路区間に乗っている状態で渡り部材20を真っ直ぐに延ばした場合に、対向する積載レール112の傾斜面112aと互いに平行となるように傾斜角度が設定されている。傾斜面22は、上述の方向に傾斜しているため、図2に示すように、積載レール112との境界位置において、尖鋭となる積載レール112の先端部の方が外側となり、渡り部材20の尖鋭な先端部は内側となる。一般に、鉄道車両210の車輪202の踏面202aにはテーパが形成されているため、鉄道車両210の通過時には積載レール112や渡り部材20は外側に押圧されることとなる。そのような場合、自由端となる渡り部材20の回動端部は、場合によっては車輪202から押圧されて外側に撓むおそれがあるが、より外側に積載レール112の先端部が位置しているので、渡り部材20の回動端部の撓みが抑えられる。
さらに、上述の状態において、渡り部材20の傾斜面22は対向する積載レール112の傾斜面112aに所定の隙間が設けられている。その隙間距離は、連結器101が有する緩衝ゴムの伸縮や連結器101のガタ等を考慮して、具体的には前後方向に60[mm]に設定されているが、後述する各傾斜面22,112aの効果を考慮すると、より狭く設定しても良い。
なお、二つの渡り部材20の一方の基端部を支持する回動支持部40は連結された二つの貨物車両110の一方に固定され、もう一方の渡り部材20の基端部を支持する回動支持部40はもう一方の貨物車両110に固定されている。つまり、各渡り部材20は、互いに回動端部を逆方向に向けて支持されている。
【0022】
(回動支持部)
回動支持部40は、図3に示すように、積載レール112の傾斜面112aを備えない方の端部に一定的に設けられた軸受け部41と、軸受け部41と回転可能に支持された水平ピン42とを備えている。
軸受け部41は、積載レール112の端部から当該積載レール112の延長線上を避けるようにクランク状に屈曲形成されている。そして、軸受け部41は、水平ピン42を水平方向に向けて支持すると共に、当該水平ピン42を介して渡り部材20の基端部が軸受け部41に隣接するように軸支している。つまり、軸受け部41は、積載レール112の延長線上を避ける形状を採ることで、軸支する渡り部材20を積載レール112の延長線上に配置させている。
水平ピン42は、軸受け部41の両側面を貫通した状態で支持され、一端部が渡り部材20の基端部に固定連結され、他端部が後述する開閉切替機構60と連結されている。
回動支持部40は、かかる構成により渡り部材20の回動端部が上下方向に起立伏臥回動可能に支持している。
【0023】
(開閉切替機構)
開閉切替機構60は、図2〜5に示すように、渡り部材20に起立伏臥回動動作を付与する駆動手段としてのエアシリンダ61と、回動支持部40の水平ピン42の端部に固定連結された回動アーム62とを備えている。
エアシリンダ61は、空気圧により前後に進退移動を行うプランジャ部61aを備え、当該プランジャ部61aは回動アーム62の回動端部に連結されている。回動アーム62は水平ピン42を中心に回動可能であり、エアシリンダ61により回動を付与されると、水平ピン42を介して渡り部材20を同時に回動させる。エアシリンダ61のプランジャ部61aが後退方向に作動すると回動アーム62を介して渡り部材20は回動端部が上方に持ち上げられた状態となり、プランジャ部61aが前進方向に作動すると回動アーム62を介して渡り部材20は下ろされた状態(各積載レール112,112間を渡らせる状態)となる。
【0024】
(ガイドレール)
ガイドレール80は、図2,5に示すように、渡り部材20の回動端部側においてこれに対向する積載レール112と平行に設けられた車輪202の内側面に対向するレール状部材である。このガイドレール80は、図5に示すように、外側方向に突出した状態で積載レール112よりも内側となる配置で台座30の上面に固定装備されている。さらに、ガイドレール80の車輪202との対向面にはその両端部にテーパが形成され、車輪202が接した場合に、円滑にガイドすることを可能としている。
また、ガイドレール80と積載レール112(又は正規位置の渡り部材20)との間には、ガイドレール80の脇を通過する車輪202のフランジ幅よりも広く、車輪幅よりも狭い範囲での隙間を設けている。
また、このガイドレール80は、少なくとも、逆側の積載レール112(ガイドレール80が左に位置するならば右側の積載レール112、又は、ガイドレール80が右なら左側の積載レール112)の傾斜面112aと渡り部材20の回動端部の傾斜面22とを通過する際に車輪202をガイド可能な範囲に設けられている。
つまり、積載レール112の傾斜面112aと渡り部材20の傾斜面22とには隙間が形成されていること、及び傾斜面112a,22の形成箇所のレール幅は狭くなっているので、車輪202の通過時には段差を通過するのとほぼ同じような振動を生じたり動作が不安定になりがちであることに加えて、傾斜面112a,22の間に隙間があるので、渡り部材20の回動端部が車輪202の通過の際に踏面202aのテーパにより外側へ広がるように力が加わるが、反対側の車輪202の内側への移動を防止するので、ガイドレール80側の車輪の乗り上げ等を効果的に抑止することができる。
【0025】
(渡りレール装置の作用及び効果)
図6は渡り部材20の傾斜面22と積載レール112の傾斜面112aとを突き合わせて近接配置した場合に通過する車輪202の踏面202aが積載レール112及び渡り部材20の上面に接触する領域Aを示す説明図、図7は渡り部材20の回動端部を起立回動させた状態を示す動作説明図である。図6,7を踏まえて貨物列車100に対する鉄道列車200の積載作業及び積載後の貨物列車100の走行時における渡りレール装置10の作用について説明する。
【0026】
貨物列車100に鉄道列車200を積載する際には、開閉切替機構60のエアシリンダ61が前進方向に作動して各渡り部材20を下ろされた状態に保持する。
そして、貨物列車100の一端部側から鉄道列車200を乗り入れて、貨物列車100内を鉄道列車200を移動させることにより積載が行われる。そして、当該積載は、原則として、起伏のない直線の線路区間に貨物列車100を置いて行われる。
貨物列車100内を鉄道列車200が進行する際には、各貨物車両110間を渡りレール装置10の渡り部材20,20が渡して移動を可能とする。
【0027】
このとき、図6に示すように、各渡り部材20と各積載レール112とを斜めに切断され互いに向い合う形状としたので、積載レールの長手方向について渡り部材20の回動端部の上面と積載レール112の先端部の上面とが重合する区間が形成される。このため、図6に示す領域Aのように、鉄道車両210の車輪202が渡り部材20と積載レール112との境界位置を通過する際には、車輪202の踏面202aが渡り部材20の上面か積載レール112の上面の少なくともいずれか一方に接触し、渡り部材20と積載レール112が車輪202から受ける荷重を徐々に移行する。その結果、境界位置の通過の際に鉄道車両210に対する振動を低減でき、鉄道車両210が各貨物車両110間を円滑に渡ることが可能となる。
【0028】
そして、貨物列車100の走行時には、図7に示すように、エアシリンダ61が後退方向に作動して各渡り部材20を起立回動させ、その回動端部は上方に向けられる。これにより、走行時に貨物列車100の線路区間が左右いずれに曲がったとしても、各渡り部材20の回動端部が対向する貨物車両110の積載レール112やその周囲に接触することを効果的に回避することが可能となる。
さらに、各貨物車両110の間にある連結器101が有する緩衝ゴムの伸縮により、二つの貨物車両110,110の左右いずれか又は左右両方の間隔が縮小する場合もあるが、その場合も同様に、各渡り部材20の回動端部は上方に向けられているので、各渡り部材20の回動端部が対向する貨物車両110の積載レール112やその周囲に接触することを効果的に回避することが可能となる。
したがって、渡りレール装置10は、各貨物車両110間で鉄道列車200の積載移動を可能としつつも、貨物列車100の走行時には曲線区間の走行の妨げとはならず、貨物列車100の円滑な走行を実現することが可能となる。
なお、線路区間の勾配や高低差が生じる場合にあっても、各渡り部材20の回動端部が上方に向けられているので、対向する貨物車両側への接触等を効果的に回避することができる。従って、貨物列車100は渡りレール装置10による制限を受けることなく起伏のある区間を円滑に走行することができる。
【0029】
また、渡りレール装置10では、各渡り部材20の起立伏臥回動動作をエアシリンダ61により実行するので、手動作業に比べて作業負担を軽減することが可能となる。また、エアシリンダ61を使用するので各種の制御と組み合わせた自動化にも容易に対応することが可能となる。
【0030】
(その他)
なお、前述の台座30,31は一対の渡り部材20,20に対してそれぞれ左右両端側に用意されているが、左右二枚の台座を一体的に形成しても良い。
また、各台座30,31は、独立した一部材ではなく貨物車両110の台枠111の一部となるように形成されていても良い。
また、各積載レール112は、台座30,31に載置される部位のみを別部材としても良い。その場合、別部材となる積載レール先端部を台座30,31の上面に固定装備しても良いし、台座30,31と一体的に形成しても良い。
【0031】
また、渡り部材20の起立伏臥回動動作を付与するエアシリンダ61に対して、貨物列車100の走行時に各渡りレール装置10のエアシリンダ61を自動的に作動させて渡り部材20を上方に待避させる等の自動化制御を行う制御手段を設けても良い。
また、渡り部材20の起立伏臥回動動作を付与する駆動手段はエアシリンダ61に限らず、動力を出力するいずれのアクチュエータを使用しても良い。また、動力を使用しないで手動で渡り部材20を上げ下ろしする構造を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】発明の実施形態である渡りレール装置を搭載した貨物列車を示す側面図である。
【図2】渡りレール装置の平面図である。
【図3】渡りレール装置の斜視図である。
【図4】渡りレール装置の側面図である。
【図5】渡りレール装置の正面図である。
【図6】渡り部材の傾斜面と積載レールの傾斜面とを突き合わせて近接配置した場合に通過する車輪の踏面が積載レール及び渡り部材の上面に接触する領域を示す説明図である。
【図7】渡り部材の回動端部を起立回動させた状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 渡りレール装置
20 渡り部材
21 レール状構造部
22 傾斜面
40 回動支持部
60 開閉切替機構
61 エアシリンダ(駆動手段)
80 ガイドレール
100 貨物列車
110 貨物車両
111 台枠(鉄道車両積載面)
112 積載レール
112a 傾斜面
200 鉄道列車
202 車輪
202c フランジ内側面
210 鉄道車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の鉄道車両を積載する連結された複数の貨物車両の相互間を前記各鉄道車両が移動することを可能とする渡りレール装置であって、
前記各貨物車両の鉄道車両積載面上には前記鉄道車両が走行するための一対の積載レールが設けられ、
連結された二つの貨物車両のいずれか一方に回動端部が位置し、他方に基端部が位置するように掛け渡されると共に上部にレール状構造部を有する一対の渡り部材と、
前記各渡り部材の基端部が位置する貨物車両の端部に設けられ、前記各渡り部材の回動端部が起立伏臥回動可能となるように前記基端部を支持する一対の回動支持部と、
を備え、
前記渡り部材の回動端部は、内側面が外側面より長くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されると共に、これに対応して前記積載レールは、内側面が外側面より短くなるよう、先端が斜めに切断された形状に形成されていることを特徴とする渡りレール装置。
【請求項2】
一方の前記回動支持部は前記連結された二つの前記貨物車両の一方に固定され、他方の回動支持部はもう一方の前記貨物車両に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の渡りレール装置。
【請求項3】
少なくとも前記渡り部材の斜めに切断された形状に形成された部分とこれに対向する前記積載レールの斜めに切断された形状に形成された部分の通過の際に、反対側の車輪のフランジ内側面を当該フランジよりも内側から支えるガイドレールを前記各渡り部材ごとにそれぞれ備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の渡りレール装置。
【請求項4】
前記各渡り部材に起立伏臥回動動作を付与する駆動手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の渡りレール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−307931(P2008−307931A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155205(P2007−155205)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)