説明

渦流量計および設置状態検査方法

【課題】測定(算出)する流体の流量を安定させることのできる渦流量計を提供する。
【解決手段】熱式フローセンサ10から出力された検出信号に基づいて流速を算出し、前述の所定の演算値の平均値を算出し、熱式フローセンサから出力された検出信号に基づいて交番の流れの変化が所定範囲のレベルであるか否かを判定し、メモリ7に記憶された平均値に基づいて所定期間において複数の前述の所定の演算値の中から、少なくとも1つを選択する中央制御部8を備え、中央制御部8は、交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、選択された少なくとも1つの前述の所定の演算値に対して、平均値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、渦流量計および設置状態検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の渦流量計として、ガスなどの流体が流通する流路に配置された渦発生体により渦列(カルマン渦)を発生させて流体振動を生成し、この流体振動の周波数に基づいて流体の流量を測定(算出)する渦流量計が提案され、実用化されている。また、現在においては、渦発生体の下流側に、流体の流通方向と直交するバイパス流路を形成し、このバイパス流路内に熱式フローセンサを配置し、この熱式フローセンサにより流体振動の周波数を検出して流体の体積流量を算出する渦流量計が提案され、実用化されている。さらに、この体積流量を質量流量に変換する渦流量計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−93349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような渦流量計では、流路の中心から壁面にかけての速度分布が均一な流れの流体である場合、渦発生体により均一な渦列(カルマン渦)が発生してバイパス流路の内部に交番の流れが生成される。そして、この交番の流れを熱式フローセンサが検出して検出信号を出力し、渦流量計はこの検出信号に基づいて流体の流量を測定(算出)している。
【0005】
しかしながら、流路の中心から壁面にかけての速度分布が均一な流れではない、すなわち、流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)場合、バイパス流路の内部に生成される交番の流れが急激に(大きく)変化(変動)することがあった。この場合、渦流量計は、交番の流れを検出した検出信号に基づいて流体の流量を測定(算出)しているので、交番の流れにおける急激な変化が特異な値の流量として測定(算出)されてしまい、測定(算出)した流体の流量が安定しない(大きくふらつく)という問題があった。
【0006】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、測定(算出)する流体の流量を安定させることのできる渦流量計を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る渦流量計は、流路を流通する流体に渦を発生させる渦発生体と、前述の渦により内部に交番の流れが生成されるバイパス流路と、バイパス流路内に設けられ、交番の流れを検出して該交番の流れに基づく検出信号を出力するフローセンサと、フローセンサから出力された検出信号に基づいて、所定の演算値を算出する演算値算出部と、前述の所定の演算値の平均値を算出する平均値算出部と、平均値算出部により算出された平均値を記憶する記憶部と、フローセンサから出力された検出信号に基づいて、交番の流れの変化が所定範囲のレベルであるか否かを判定する判定部と、記憶部に記憶された前述の平均値に基づいて、所定期間において演算値算出部により算出された複数の前述の所定の演算値の中から、少なくとも1つを選択する選択部と、を備え、平均値算出部は、判定部により交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、選択部により選択された少なくとも1つの前述の所定の演算値に対して、平均値を算出する。
【0008】
かかる構成によれば、記憶部に記憶された前述の所定の演算値の平均値に基づいて、前述の所定期間において演算値算出部により算出された複数の前述の所定の演算値の中から、少なくとも1つが選択される。これにより、過去に算出され、記憶された前述の所定の演算値の平均値を基準として、前述の所定期間における複数の前述の所定の演算値の中から、特異な値の前述の所定の演算値を除外することが可能になる。また、判定部により交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、選択部により選択された少なくとも1つの前述の所定の演算値に対して、平均値が算出される。これにより、流路を流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、特異な値が除外された前述の所定の演算値に対して平均値が算出されるので、この平均値に基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化を小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。
【0009】
一方、例えば、配管との接続部分に段差がある場合や、例えば、渦流量計の前後(上流および下流)の少なくとも一方の直菅の長さが不足している場合など、配管への設置状態が不適切である場合、流体の流れが不均一な流れ(乱流)になり、交番の流れの周期は変化する。この場合、配管への設置状態は時間経過により変化するものではないので、交番の流れの周期は、所定の間隔で継続的に変化が発生する。よって、交番の流れの周期が所定期間において変化した回数を計数(カウント)することにより、一時的に(過渡的に)交番の流れの周期が変化した場合と継続的に交番の流れの周期が変化した場合とを識別(判別)することができるので、フローセンサにより検出された交番の流れの周期が所定期間において変化した回数に基づいて、配管への設置状態に異常がある場合と配管への設置状態に異常がない(正常である)場合とを識別(判別)することが可能となる。
【0010】
好ましくは、前述の所定の演算値は、交番の流れの周波数、流体の速度、および流体の流量のうちのいずれかである。
【0011】
かかる構成によれば、前述の所定の演算値が、交番の流れの周波数、流速(流体の速度)、および流体の流量のうちのいずれかである。これにより、前述の所定の演算値を、フローセンサのセンサ信号に基づいて容易に算出することができるとともに、前述の所定の演算値の平均値から容易に流体の流量を算出することができる。
【0012】
好ましくは、記憶部に記憶された前述の平均値に基づいて、前述の所定期間における前述の複数の所定の演算値をデジタル信号列に変換する変換部をさらに備え、選択部は、デジタル信号列に対して所定のパターン認識処理を施し、該所定のパターン認識処理の結果に基づいて、前述の所定期間における前述の複数の所定の演算値の中から、少なくとも1つの前述の所定の演算値を選択する。
【0013】
かかる構成によれば、記憶部に記憶された前述の平均値に基づいて前述の所定範囲における前述の複数の所定の演算値がデジタル信号列に変換され、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理が施される。ここで、流体の流量(速度)が変化している場合、前述の所定の演算値の時系列の変化は、過去の前述の所定の演算値の平均値を基準にすると、いくつかの特定のパターンに分類することができる。また、流路を流通する流体の流れに突発的な乱れがある場合も、同様に、前述の所定の演算値の時系列の変化は、過去の前述の所定の演算値の平均値を基準にすると、別のいくつかの特定のパターンに分類することができる。一方、前述の所定の演算値の時系列の変化をデジタル信号列に変換することにより、これらの特定のパターンに合致(一致)するか否かの判定が容易になる。よって、記憶部に記憶された前述の平均値に基づいて前述の所定期間における前述の複数の所定の演算値をデジタル信号列に変換し、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理を施すことにより、流体の流量(速度)が変化している場合の前述の所定の演算値をさらに正確に選択することが可能となるとともに、特異な値の前述の所定の演算値をさらに正確に除外することが可能となる。これにより、算出(測定)した流体の流量の精度を高めることができるとともに、流体の流量が特異な値の前述の所定の演算値にひきずられる(影響される)おそれをさらに低減することができ、算出(測定)した流体の流量を安定させることができる。
【0014】
好ましくは、記憶部に記憶された所定数の前述の平均値に対して移動平均値を算出する移動平均値算出部をさらに備える。
【0015】
かかる構成によれば、記憶部に記憶された所定数の前述の平均値に対して移動平均値が算出される。これにより、過去のある時点から現在までに算出され、記憶された前述の平均値に対して移動平均値が算出されるので、この移動平均値に基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。これにより、流体の流量が特異な値の前述の所定の演算値にひきずられる(影響される)おそれをさらに低減することができ、算出(測定)した流体の流量をさらに安定させることができる。
【0016】
好ましくは、前述の所定数は、判定部により交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベル未満であるときより、大きい。
【0017】
かかる構成によれば、判定部により交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベル未満であるときより、前述した所定数が大きい。これにより、流路を流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、流路を流通する流体の流れに乱れがない(流体が均一な流れである)ときより、移動平均値のサンプル数(標本数)が多くなるので、前述の所定の演算値の移動平均値がさらに平滑化される。これにより、この移動平均値に基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となり、算出(測定)した流体の流量をさらに安定させることができる。
【0018】
好ましくは、移動平均値算出部により算出される移動平均値は、加重移動平均値であり、移動平均値算出部は、判定部により交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベル未満であるときと、重みづけを変える。
【0019】
かかる構成によれば、移動平均値算出部により算出される移動平均値は、加重移動平均値であり、移動平均値算出部は、判定部により交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベルであると判定されたときに、交番の流れの変化が前述の所定範囲のレベル未満であるときと、重みづけが変わる。これにより、流路を流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、流路を流通する流体の流れに乱れがない(流体が均一な流れである)ときより、直近(直前)の平均値の重みを小さくして前述の所定の演算値の移動平均値をさらに平滑化することが可能となる。これにより、この移動平均値に基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となり、算出(測定)した流体の流量をさらに安定させることができる。
【0020】
好ましくは、記憶部は、移動平均値算出部により算出された移動平均値をさらに記憶し、変換部は、記憶部に記憶された前述の移動平均値に基づいて、前述の所定期間における前述の複数の所定の演算値をデジタル信号列に変換する。
【0021】
かかる構成によれば、移動平均値算出部により算出された移動平均値がさらに記憶し、記憶部に記憶された前述の移動平均値に基づいて、前述の所定期間における前述の複数の所定の演算値がデジタル信号列に変換される。ここで、流体の流量(速度)が変化している場合、前述の所定の演算値の時系列の変化は、過去の前述の所定の演算値の移動平均値を基準にすると、前述の平均値の場合と同様に、いくつかの特定のパターンに分類することができる。また、流路を流通する流体の流れに突発的な乱れがある場合も、同様に、前述の所定の演算値の時系列の変化は、過去の前述の所定の演算値の移動平均値を基準にすると、前述の平均値の場合と同様に、別のいくつかの特定のパターンに分類することができる。一方、前述の所定の演算値の時系列の変化をデジタル信号列に変換することにより、これらの特定のパターンに合致(一致)するか否かの判定が容易になる。よって、記憶部に記憶された前述の移動平均値に基づいて前述の所定期間における前述の複数の所定の演算値をデジタル信号列に変換し、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理を施すことにより、流体の流量(速度)が変化している場合の前述の所定の演算値をさらに正確に選択することが可能となるとともに、特異な値の前述の所定の演算値をさらに正確に除外することが可能となる。これにより、算出(測定)した流体の流量の精度を高めることができるとともに、流体の流量が特異な値の前述の所定の演算値にひきずられる(影響される)おそれをさらに低減することができ、算出(測定)した流体の流量を安定させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る渦流量計によれば、流路を流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、特異な値が除外された前述の所定の演算値に対して平均値が算出されるので、この平均値に基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化を小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。これにより、流体の流量が特異な値の前述の所定の演算値にひきずられる(影響される)おそれを低減することができ、算出(測定)した流体の流量を安定させることができるとともに、例えば、算出(測定)された流体の流量に基づいて制御を行う制御系に悪影響を及ぼすおそれを低減することができ、算出(測定)した流体の流量の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態における渦流量計を説明する正面図である。
【図2】図1に示したII線矢視方向側面図である。
【図3】図1に示した渦流量計の部分断面図である。
【図4】図2に示した渦流量計の部分断面図である。
【図5】図3に示した渦発生体の内部構造を説明する断面図である。
【図6】図3に示したVI−VI線矢視方向側面図である。
【図7】図6に示した熱式フローセンサの斜視図である。
【図8】図7に示したVIII−VIII線矢視方向断面図である。
【図9】図1に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示した駆動回路を示す回路図である。
【図11】図9に示した中央制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【図12】図7および図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の例を説明するグラフである。
【図13】図7および図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の例を説明するグラフである。
【図14】図7および図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の例を説明するグラフである。
【図15】図7および図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の例を説明するグラフである。
【図16】図7および図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の例を説明するグラフである。
【図17】図1に示した渦流量計が流体の流量を測定する動作を説明するフローチャートである。
【図18】図11に示したデジタル変換部が変換するデジタル信号列を説明するためのグラフである。
【図19】本発明の第2実施形態における渦流量計を説明する正面図である。
【図20】図19に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図である。
【図21】図20に示した中央制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【図22】図19に示した渦流量計が流体の流量を測定する動作を説明するフローチャートである。
【図23】図21に示したデジタル変換部が変換するデジタル信号列を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0025】
[第1実施形態]
図1ないし図18は、本発明の第1実施形態を示すためのものである。図1は、本発明の第1実施形態における渦流量計を説明する正面図であり、図2は図1に示したII線矢視方向側面図である。図1および図2に示すように、渦流量計1は、例えばガスなどの被測定流体(以下、単に流体という)が流通する流路2aを形成する流体管2と、流路2a内に配置された渦発生体3と、渦発生体3の内部に形成されたバイパス流路4と、を備えている。
【0026】
流体管2は、短い円筒状の部材である。流体管2の両端には、図1に破線で示すように、流体を流通させる配管100が接続される。これにより、渦流量計1は、図1に矢印Aで示す方向に流体が流れる配管100に設置される。
【0027】
図3は図1に示した渦流量計の部分断面図であり、図4は図2に示した渦流量計の部分断面図であり、図5は図3に示した渦発生体の内部構造を説明する断面図であり、図6は図3に示したVI−VI線矢視方向側面図である。図2ないし図6に示すように、渦発生体3は、流体管2の直径よりも長い柱状部材であり、流体管2の壁部に形成された貫通孔2bから流体管2内にその径方向に横断するように挿入されている。渦発生体3の外周部と流体管2の貫通孔2bとの間には、流体管2の密閉性を保持するO(オー)リング21が配設されている。また、渦発生体3は、固定プレート22によって流体管2に固定されている。このように構成された渦発生体3は、流路2aを流通する流体に渦を発生させる。
【0028】
バイパス流路4は、図1および図6に矢印Aで示す流体の流通方向に対して、図6に矢印Bで示すように直交する方向に延在するように形成されている。バイパス流路4の両端部は、開口4aとなっている。バイパス流路4の内部には、渦発生体3で発生する渦列(カルマン渦)により交番の流れが生成される。
【0029】
図3および図5に示すように、渦発生体3の内部には、バイパス流路4の途中から渦発生体3の上方に向けて、流体の流通方向(図6において矢印A方向)およびバイパス流路4の延在方向(図6において矢印B方向)に直交する方向に延在するように、小径孔3aが形成されている。小径孔3aの内部には、小径孔3aの内径よりも小さい外径を有するパイプ23が着脱自在に挿入されている。パイプ23の先端部23aには、図6に示す熱式フローセンサ10が実装されるセンサアセンブリ24が固定されている。図3に示すように、パイプ23の先端部23aが小径孔3aの最深部まで挿入されることにより、熱式フローセンサ10はバイパス流路4に臨む位置に配設されることとなる。
【0030】
小径孔3aの上方には、小径孔3aより大きい内径を有する大径孔3bが形成されている。渦発生体3の小径孔3aに挿入されたパイプ23は、大径孔3bに挿入された固定部材25によって、固定されている。
【0031】
図3に示すように、固定部材25の外周面には、熱式フローセンサ10の信号増幅用プリント配線基板(図示省略)が設けられており、熱式フローセンサ10の接続線18は、パイプ23の内部空間を通って、このプリント配線基板に接続されている。このプリント配線基板や圧力センサ39を囲む空間は、渦発生体3の外側にO(オー)リング26を介して取り付けられた円筒状のケース27により保護されている。
【0032】
図1ないし図4に示すように、ケース27の上方には、ハウジング28が取り付けられている。図4に示すように、ハウジング28の内部には、ターミナル29が内蔵されている。ターミナル29には、後述するメモリ7および中央制御部8などが設けられたプリント配線基板30が配設されている。ハウジング28の開口部28aには、カバー31が螺合されており、開口部28aの反対側には、測定した流体の流量などの各種情報を表示する表示部9が設けられている。
【0033】
図7は図6に示した熱式フローセンサの斜視図であり、図8は図7に示したVIII−VIII線矢視方向断面図である。熱式フローセンサ10は、図2ないし図6に示したバイパス流路4内を流れる流体に接触するように配置され、半導体ダイアフラムを有するフローセンサである。図7および図8に示すように、熱式フローセンサ10は、キャビティ12が設けられた基板11、基板11上にキャビティ12を覆うように配置された絶縁膜13、絶縁膜13に設けられたヒータ14、ヒータ14の両側に配置された第1の測温抵抗素子15および第2の測温抵抗素子16、周囲温度センサ17などを有している。
【0034】
絶縁膜13のキャビティ12を覆う部分は、断熱性のダイアフラムを構成している。周囲温度センサ17は、バイパス流路4内を流通する流体の温度を検出し、検出した温度を後述する中央制御部8に出力する。ヒータ14は、例えば抵抗素子であり、キャビティ12を覆う絶縁膜13の中心に配置され、バイパス流路4内を流れる流体を加熱する。
【0035】
第1の測温抵抗素子15は、ヒータ14の一方側(図7および図8において左側)の温度を検出するために用いられ、第2の測温抵抗素子16は、ヒータ14の他方側(図7および図8において右側)の温度を検出するために用いられ、いずれも温度センサとして機能する。第1の測温抵抗素子15および第2の測温抵抗素子16は、ヒータ14の加熱によって生ずる温度差に対応するセンサ信号を検出する。このセンサ信号は、後述する中央制御部8に出力され、信号増幅、矩形波変換、エッジ検出などの信号処理が施される。これにより、中央制御部8は、バイパス流路4内に生成される交番の流れにおける振幅、周波数、および周期に関する情報を得ることが可能となる。なお、本実施形態のセンサ信号は、本発明における「検出信号」の一例に相当する。
【0036】
なお、基板11の材料としては、シリコン(Si)などが使用可能である。絶縁膜13の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)などが使用可能である。キャビティ12は、異方性エッチングなどにより形成される。ヒータ14、第1の測温抵抗素子15、第2の測温抵抗素子16、および周囲温度センサ17の各材料には、白金(Pt)などが使用可能であり、リソグラフィ法などにより形成可能である。
【0037】
図9は図1に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図であり、図10は図9に示した駆動回路を示す回路図である。図9に示すように、渦流量計1は、駆動回路5と、メモリ7と、中央制御部8と、アナログ出力部50と、デジタル通信部60と、をさらに備える。
【0038】
駆動回路5は、前述の熱式フローセンサ10の信号増幅用プリント配線基板(図示省略)に設けられている。図10に示すように、駆動回路5は、1つのオペアンプOP1と3つの固定抵抗R1,R2,R3とを含んでおり、ヒータ14(図10においてRhと表記)と周囲温度センサ17(図10においてRrと表記)とを用いてブリッジ回路を構成している。この駆動回路5では、ヒータ14と周囲温度センサ17との抵抗比が所定の値(一定値)となるように、オペアンプOP1に印加する電圧を制御(フィードバック制御)している。このように、駆動回路5は、周囲温度センサ17により検出された流体の温度よりもヒータ14の温度が所定の温度高くなるように、ヒータ14に電力(電流)を供給する。
【0039】
メモリ7は、例えば、不揮発性の記憶手段であり、流量の測定前にあらかじめ登録された情報や、流量の測定中に得られた情報などを記憶するためのものである。メモリ7に記憶される情報は、中央制御部8によって書き込まれ、または読み出される。
【0040】
中央制御部8は、例えば、CPUなどによって構成され、各種の演算を行い、渦式流量計1の動作を制御する。
【0041】
アナログ出力部50は、中央制御部8から入力される制御信号、データを電圧信号または電流信号に変換して渦流量計1の外部に出力するためのものである。アナログ出力部50は、出力端子を含み、当該出力端子に接続された外部機器、例えば、コントローラにアナログ信号を出力する。
【0042】
デジタル通信部60は、中央制御部8から入力される制御信号、データを渦流量計1の外部に送信し、渦流量計1の外部から制御信号、データを受信するためのものである。デジタル通信部160は、出力端子を含み、当該出力端子に接続された外部機器、例えば、中央監視装置とデジタル信号を通信する。なお、デジタル通信部60は、単にオン/オフを出力する接点(ピン)を含む出力端子であってもよい。
【0043】
図11は図9に示した中央制御部8の機能的構成を示すブロック図である。図11に示すように、中央制御部8は、交番周波数算出部81と、流速算出部82と、出力制御部83と、交番流れ判定部84と、デジタル信号変換部85と、演算値選択部86と、平均値算出部87と、報知制御部88と、流量算出部89と、を備える。
【0044】
交番周波数算出部81は、熱式フローセンサ10から入力されたセンサ信号に基づいて、交番の流れにおける周波数(交番周波数)を算出(検出)する。
【0045】
流速算出部82は、交番周波数算出部81により算出(検出)された交番周波数に基づいて、流速(流体の速度)FVを算出する。なお、なお、本実施形態の流速算出部82は本発明における「演算値算出部」の一例に相当し、本実施形態の流速(流体の速度)FVは本発明における「所定の演算値」の一例に相当する。
【0046】
本実施形態では、所定の演算値が流速(流体の速度)FVである例を示したが、これに限定されない。所定の演算値は、交番周波数(交番の流れの周波数)または流体の流量であってもよい。このように、所定の演算値が、交番の流れの周波数、流速(流体の速度)FV、および流体の流量のうちのいずれかであることにより、所定の演算値を、熱式フローセンサ10のセンサ信号に基づいて容易に算出することができるとともに、所定の演算値の平均値から容易に流体の流量を算出することができる。
【0047】
出力制御部83は、更新周期UTごとに、後述する流量算出部89により算出された流体の流量を、表示部9に出力して表示部9に表示させる(S115)。
【0048】
交番流れ判定部84は、熱式フローセンサ10から入力されたセンサ信号に基づいて、交番の流れが変化したか否かを判定する。また、交番流れ判定部84は、交番の流れの変化が所定範囲のレベルであるか否かを判定する。
【0049】
デジタル信号変換部85は、後述する平均値算出部87により算出され、メモリ7に記憶された流速FVの平均値AVに基づいて、複数の流速FVをデジタル信号列に変換する。
【0050】
演算値選択部86は、メモリ7に記憶された流速FVの平均値AVに基づいて、更新周期UTにおいて流速算出部82により算出された複数の流速FVの中から、少なくとも1つを選択する。これにより、過去に算出され、記憶された流速FVの平均値AVを基準として、更新周期UTにおける複数の流速FVの中から、特異な値の流速FVを除外することが可能になる。
【0051】
平均値算出部87は、流速FVの平均値AVを算出し、算出した平均値AVをメモリ7に書き込む。
【0052】
報知制御部88は、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、その旨を表示部9に表示(報知)させる。
【0053】
流量算出部89は、平均値算出部87により算出された流速FVの平均値AVに基づいて、流体の流量Qを算出する。
【0054】
図12ないし図16は、図7および図8に示した熱式フローセンサ10におけるセンサ信号の例を説明するグラフである。なお、図11ないし図15において、横軸は時間t、縦軸は電圧Vである。バイパス流路4内に生成される交番の流れは、熱式フローセンサ10の温度センサ(第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子)15,16によって、電圧が経時的に変化するセンサ信号として検出される。流路2aを流通する流体が、流路2aの中心から壁面にかけての速度分布が均一または略均一な流れ(以下、単に均一な流れという)である場合、バイパス流路4内に生成される交番の流れは、例えば、図12に示すような波形のセンサ信号として検出され、理想的には正弦波のような周期的な信号となる。このセンサ信号では、振幅aの中心値c(上限値から下限値を減算した値)に対して上下対称であり、正の半波(上に凸の波)の周期と負の半波の周期とが等しくなっている。流路2aを流通する流体の速度(流速)、すなわち、流体の流量が所定の値(一定値)から変化すると、所定時間経過後に、センサ信号は変化した流体の流量に応じた振幅a1および周期T1の信号に変化する。
【0055】
一方、流路2aを流通する流体が均一な流れではない、すなわち、流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)場合、熱式フローセンサ10のセンサ信号は、例えば、図13に示すように、正の半波(上に凸の波)の周期T2/2と負の半波の周期T2’/2とが非対称な波形になり(T2/2≠T2’/2)、短い時間で突然に、周期が急激に(大きく)変化する信号になることがある。また、例えば、図14に示すように、熱式フローセンサ10のセンサ信号は、1番目の正の半波(上に凸の波)の周期T3/2に対して2番目の正の半波の周期T3’/2が2倍の波形になり(T3=T3’/2)、短い時間で突然に、周期が急激に(大きく)変化し、半周期欠けたような信号になることがある。また、例えば、図15に示すように、熱式フローセンサ10のセンサ信号は、1番目の周期的信号の振幅a4から3番の周期的信号の振幅a4’に(a4>a4’)、短い時間で突然に、振幅が急激に(大きく)変化する信号になることがある。さらに、例えば、図16に示すように、熱式フローセンサ10のセンサ信号は、1番目の周期的信号の中心値c5から3番の周期的信号の中心値c5’に(c5≠c5’)、短い時間で突然に、中心値が急激に(大きく)変化する信号になることがある。
【0056】
図13ないし図16に示したようなセンサ信号の波形は、流路2aを流通する流体の流量(速度)が変化する場合に、一時的に現れることがある。また、渦流量計1が図1に示した配管100に不適切な状態で設置された場合、例えば、図1に示した流体管2と配管100との接続部分に段差がある場合や、渦流量計1の流体管2に接続する配管100が所定の設置要件(設置条件)を満たしていない場合、例えば、渦流量計1の前後(上流および下流)の少なくとも一方の直菅の長さが不足している場合にも現れることがある。
【0057】
次に、図1に示した渦流量計1が流体の流量を測定(算出)する動作について説明する。
【0058】
図17は、図1に示した渦流量計1が流体の流量を測定(算出)する動作を説明するフローチャートである。渦流量計1は、流路2aを流通する流体の流量を測定するときに、流量測定処理S100を実行する。すなわち、最初に、中央制御部8は、初期処理を行う(S101)。
【0059】
初期処理S101では、中央制御部8は、メモリ7にあらかじめ記憶されたデータを読み出して、後述するステップで使用する、更新周期UTや所定範囲(幅)Δなどの各種の値を設定する。また、中央制御部8は、後述するステップで使用する、検出周期dtごとにインクリメントされる添字m(mは正の整数)、更新周期UTごとにインクリメントされる添字n(nは正の整数)などに、初期値を設定する。さらに、中央制御部8は、例えば、内蔵された水晶振動子などのクロック信号に基づいて、時間の計測を開始する。
【0060】
次に、周囲温度センサ17は、バイパス流路4内を流れる流体の温度を検出する(S102)。駆動回路5は、周囲温度センサ17により検出された温度よりもヒータ14の温度が所定の温度高くなるように、ヒータ14に電力(電流)を供給する(S103)。
【0061】
一方、温度センサ(第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子)15,16によって、バイパス流路4内に生成される交番の流れが検出され、交番周波数算出部81は、温度センサ(第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子)15,16から入力されたセンサ信号に基づいて、交番の流れの周波数(交番周波数)を算出(検出)する(S104)。
【0062】
流速算出部82は、S103において交番周波数算出部81により算出(検出)された交番周波数と、渦発生体3の幅、ストローハル数に基づいて決定される係数などの所定の係数とを用いて、流体の速度(流速)FVを算出するとともに(S105)、算出した流速FVをメモリ7に書き込む。メモリ7は、S105のステップが行われるごとに流速FVを追加記憶し、中央制御部8は、添字mを用いて、過去に書き込んだ任意の流速FVm(FV1,FV2,…,FVm-1,FVm)をメモリ7から読み出すことができる。
【0063】
次に、出力制御部83は、計測を開始してから経過した時間が、更新周期UT未満であるか否かを判定する(S106)。
【0064】
S106の判定の結果、経過した時間が更新周期UT未満である場合、渦流量計1は、再度、S102以降のステップを行う。なお、S102からS104の各ステップは検出周期dtで行われ、検出周期dtは更新周期UTよりも短い時間である(dt<UT)。これにより、更新周期UTの間に流速FVが複数回算出され、記憶される。
【0065】
一方、S106の判定の結果、経過した時間が更新周期UT未満でない、すなわち、経過した時間が更新周期UT以上である場合に、交番流れ判定部84は、温度センサ(第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子)15,16から入力されたセンサ信号に基づいて、交番の流れが変化したか否かを判定する(S107)。
【0066】
具体的には、例えば、S106の判定の前に、中央制御部8は、検出時間tの間に、温度センサ(第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子)15,16から入力されたセンサ信号に基づいて、交番の流れの周期を検出してメモリ7に書き込んでおく。そして、S106の判定の後でS107の判定の前に、中央制御部8は、更新周期UTにおいて検出した複数の交番の流れの周期に基づいて、今回の更新周期UTnにおける交番の流れの周期(またはその平均値)を算出しておく。その上で、S107において、交番流れ判定部84は、前回の更新周期UTn-1における交番の流れの周期(またはその平均値)と、今回の更新周期UTnにおける交番の流れの周期(またはその平均値)とを比較して、差がある場合、あるいは、差が所定値以上である場合に、交番の流れが変化したと判定する。一方、前回の更新周期UTn-1における交番の流れの周期(またはその平均値)と、今回の更新周期UTnにおける交番の流れの周期(またはその平均値)とを比較して、差がない場合、あるいは、差が所定値未満である場合に、交番流れ判定部84は、交番の流れが変化していないと判定する。
【0067】
なお、S107の判定における判定基準の対象は、交番の流れの周期に限定されず、例えば、更新周期UTにおいて、図14に示すセンサ信号の周期欠けが発生している比率であってもよいし、図15に示すセンサ信号の振幅の変動幅であってもよい。
【0068】
S107の判定の結果、交番の流れが変化した場合、交番流れ判定部84は、温度センサ(第1の測温抵抗素子および第2の測温抵抗素子)15,16から入力されたセンサ信号に基づいて、交番の流れの変化が所定範囲のレベルであるか否かを判定する(S108)。前述した例の場合、交番流れ判定部84は、前回の更新周期UTn-1における交番の流れの周期(またはその平均値)と、今回の更新周期UTnにおける交番の流れの周期(またはその平均値)との差が、所定範囲以内である場合に変化が所定範囲のレベルであると判定し、所定範囲外である(所定範囲を超える)場合に変化が所定範囲のレベルでないと判定する。
【0069】
S108の判定の結果、交番の流れの変化が所定範囲のレベルである場合、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(不均一な流れである)が、この交番の流れに基づいて流体の流量を算出しても要求される測定精度の許容範囲を保つこと(維持すること)ができるものと考えられる。そこで、デジタル信号変換部85は、メモリ7から流速FVと後述する平均値AVとを読み出し、平均値AVに基づいて、今回の更新周期UTnに含まれる複数の流速FVをデジタル信号列に変換する(S109)。
【0070】
図18は、図11に示したデジタル変換部85が変換するデジタル信号列を説明するためのグラフである。図18に示すように、流速FVは検出周期dtで算出され、更新周期UTの間に、複数の、例えば、図18において18個の流速FVが含まれる。後述するS111のステップまたはS113のステップにおいて、前回の更新周期UTn-1における流速FVの平均値AVn-1が算出され、メモリ7に記憶されている。また、平均値AVには、初期処理S101において所定範囲(幅)Δ、例えば±5[%]、が設定されている。よって、例えば、平均値AVn-1が100[m/s]である場合に、平均値AVn-1の所定範囲(幅)Δは、95[m/s]以上105[m/s]未満となる。この状態で、デジタル信号変換部85は、前回の平均値AVn-1の所定範囲(幅)Δと今回の更新周期UTnに含まれる各流速FVとを比較し、流速FVが前回の平均値AVn-1の所定範囲(幅)Δ以内であれば「0」に、流速FVが前回の平均値AVn-1の所定範囲(幅)Δ外であれば「1」に、それぞれ変換する。例えば、図18に示す例の場合には、図18において網掛けになっている、5番目、6番目、および12番目の流速FVが前回の平均値AVn-1の所定範囲(幅)Δの範囲外である。この場合、今回の更新周期UTnに含まれる複数の流速FVは、「000011000001000000」のデジタル信号列に変換される。
【0071】
S109のステップの後、演算値選択部86は、S109のステップで変換されたデジタル信号列に対して、パターン認識処理を行う(S110)。パターン認識処理S110では、演算値選択部86は、デジタル信号列が所定のパターンに該当するか否かを判定し、判定結果に基づいてデジタル信号列の中から少なくとも1つの流速FVを選択する。
【0072】
ここで、流体の流量(速度)が変化している場合、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの平均値AVを基準にすると、いくつかの特定のパターンに分類することができる。また、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある場合も、同様に、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの平均値AVを基準にすると、別のいくつかの特定のパターンに分類することができる。一方、流速FVの時系列の変化をデジタル信号列に変換することにより、これらの特定のパターンに合致(一致)するか否かの判定が容易になる。よって、メモリ7に記憶された平均値AVに基づいて更新周期UTにおける複数の流速FVをデジタル信号列に変換し、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理S110を行うことにより、流体の流量(速度)が変化している場合の流速FVをさらに正確に選択することが可能となるとともに、特異な値の流速FVをさらに正確に除外することが可能となる。
【0073】
具体的には、例えば、デジタル信号列において、「…000111…」のように、「1」が所定数、例えば3つ以上連続する場合、今回の更新周期UTnにおいて、実際の流速が平均値AVの所定範囲(幅)Δを超えて変化しているものと考えられる。また、「1」が連続していな場合でも、例えば「…1011011…」のように、間に「01」を挟んで「1」が所定数、例えば3つ以上連続する場合、今回の更新周期UTnにおいて、実際の流速が平均値AVの所定範囲(幅)Δの付近で変化しているものと考えられる。さらに、デジタル信号列において、「1」が所定割合、例えば50[%]以上含まれる場合も、実際の流速が平均値AVの所定範囲(幅)Δを超えて変化しているものと考えられる。よって、デジタル信号列がこれらのパターンである場合、実際の流体の流量(速度)が変化したことにより、流速FVが平均値AVの所定範囲(幅)Δを超えたものであるから、演算値選択部86は、デジタル信号列に対応する全ての流速FVを選択する。
【0074】
一方、例えば、デジタル信号列において、「…01000110…」のように、「1」が所定数、例えば3つ以上連続していない、すなわち、2つまでしか連続していない場合や、「1」が所定割合、例えば20[%]以下しか含まれない場合には、今回の更新周期UTnにおいて、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある(流体が突発的に不均一な流れになる)ものと考えられる。よって、デジタル信号列がこれらのパターンである場合、演算値選択部86は、デジタル信号列において、「0」に対応する流速FVを選択し、「1」に対応する流速FVを除外する。図18に示す例の場合、デジタル信号列が「000011000001000000」であって、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある(流体が突発的に不均一な流れになる)ものと考えられるから、演算値選択部86は、5番目、6番目、および12番目の流速FVを除外して、その他の流速FVを選択する。
【0075】
S110のステップの後、平均値算出部87は、選択された流速FVに対して平均値を算出するとともに(S111)、算出した平均値AVをメモリ7に書き込む。メモリ7は、S111のステップまたは後述するS113のステップが行われるごとに、平均値AVを時系列で追加記憶し、中央制御部8は、添字nを用いて、過去に書き込んだ任意の平均値AVn(AV1,AV2,…,AVn-1,AVn)をメモリ7から読み出すことができる。このように、交番流れ判定部84により交番の流れの変化が所定範囲のレベルであると判定されたときに、演算値選択部86により選択された少なくとも1つの流速FVに対して、平均値AVが算出される。これにより、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、特異な値が除外された流速FVに対して平均値AVが算出されるので、この平均値AVに基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化を小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。
【0076】
一方、S108の判定の結果、交番の流れの変化が所定範囲のレベルでない、すなわち、変化が所定範囲のレベルを越えている場合、流路2aを流通する流体の流れに継続的に、または、大きな乱れがあり、この交番の流れに基づいて流体の流量を算出不能である、または、算出しても要求される測定精度の許容範囲を満たすことができないものと考えられる。そして、この場合、前述したように、渦流量計1が図1に示した配管100に不適切な状態で設置された場合や、渦流量計1の流体管2に接続する配管100が所定の設置要件(設置条件)を満たしていない場合など、が想定される。よって、報知制御部88は、流体の流れに乱れがある旨を表示部9に表示(報知)させる(S112)。これにより、流体の流れの乱れを自ら発見することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0077】
なお、S112において、中央制御部8は、さらに当該流体の流れの乱れに関する情報、例えば、発生日時などをメモリ7に書き込んで記憶させることが好ましい。これにより、流体の流れに乱れがあるときの履歴を残すことが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、S112において、報知制御部88が流体の流れに乱れがある旨を表示部9が表示(報知)させる例を示したが、これに限定されない。例えば、渦流量計1が、表示部9に代えて、または、表示部9とともに、スピーカなどの音声出力手段や警報ランプなどの発光手段を備え、音声出力手段および発光手段のうちの少なくとも一方によって、配管100への設置状態に異常がある旨を報知するようにしてもよいし、あるいは、表示部9、発光手段、および音声出力手段のうちの少なくとも二つを組み合わせて、流体の流れに乱れがある旨を報知するようにしてもよい。
【0079】
また、報知制御部88は、アナログ出力部50およびデジタル通信部60のうちの少なくとも一方に、流体の流れに乱れがある旨の情報を出力するようにしてもよい。これにより、渦流量計1に接続する外部機器に流体の流れの乱れを報知することが可能となる。さらに、この場合、報知制御部88は、流体の流量として表示部9に特定の値、例えば「0」(ゼロ)や「999」などを表示させてもよい。
【0080】
一方、S107の判定の結果、直前の交番の流れから変化した場合、平均値算出部87は、今回の更新周期UTnに含まれる全ての流速FVに対して、平均値AVを算出するとともに(S113)、算出した平均値AVをメモリ7に書き込む。
【0081】
S111のステップの後、または、S113のステップの後、流量算出部89は、S109またはS111において平均値算出部87により算出された今回の更新周期UTnにおける平均値AVnと、流路断面積に基づいて決定される係数などの所定の係数とを用いて、流体の体積流量Qを算出するとともに(S114)、算出した体積流量Qをメモリ7に書き込む。メモリ7は、S114のステップが行われるごとに時系列で体積流量Qを追加記憶し、中央制御部8は、添字nを用いて、過去に書き込んだ任意の流速Qn(Q1,Q2,…,Qn-1,Qn)をメモリ7から読み出すことができる。
【0082】
なお、流量算出部89は、さらに、流体の流量の測定(算出)を開始してから現時点までにメモリ7に記憶された体積流量Qnを全て読み出し、当該体積流量Qnを積算して積算流量Tを算出するようにしてもよい。
【0083】
本実施形態では、流量算出部89が流体の体積流量Qを算出する例を示したが、これに限定されない。例えば、渦流量計1が流体の圧力を検出する圧力センサを備え、流量算出部89は、算出した流体の体積流量Qと、圧力センサにより検出された流体の圧力と、周囲温度センサ17により検出された流体の温度とに基づいて、
流体の質量流量を算出するようにしてもよい。
【0084】
S114のステップの後、出力制御部83は、S114のステップにおいて流量算出部89により算出された流体の体積流量Qを、表示部9に出力して表示部9に表示させる(S115)。なお、流量算出部89が流体の積算流量Tも算出する場合、流体の体積流量Qおよび流体の積算流量Tのうちの少なくとも一方を表示するようにしてもよい。
【0085】
本実施形態では、S115のステップにおいて、出力制御部83が流体の体積流量Qを表示部9に出力する例を示したが、これに限定されない。出力制御部83は、表示部9に代えて、または、表示部9とともに、アナログ出力部50およびデジタル通信部60のうちの少なくとも一方に、流体の体積流量Qおよび流体の積算流量Tのうちの少なくとも一方を出力するようにしてもよい。これにより、渦流量計1に接続する外部機器に流体の体積流量Qおよび流体の積算流量Tのうちの少なくとも一方を出力することが可能となる。
【0086】
S112のステップの後、または、S115のステップの後、中央制御部8は、リセット処理S116を行う。
【0087】
リセット処理S116では、中央制御部8は、初期処理S101で計測を開始した時間をリセットして、再度、時間の計測を開始する。
【0088】
リセット処理S115の後、渦流量計1は、例えば、電源スイッチが切断されて停止するか、あるいはリセット信号が入力されるまで、再度、S102以降のステップを行う。これにより、更新周期UTで流体の流量が算出され、表示(出力)される。
【0089】
このように、本実施形態における渦流量計1によれば、メモリ7に記憶された流速FVの平均値AVに基づいて、更新周期UTにおいて流速算出部82により算出された複数の流速FVの中から、少なくとも1つが選択される。これにより、過去に算出され、記憶された流速FVの平均値AVを基準として、更新周期UTにおける複数の流速FVの中から、特異な値の流速FVを除外することが可能になる。また、交番流れ判定部84により交番の流れの変化が所定範囲のレベルであると判定されたときに、演算値選択部86により選択された少なくとも1つの流速FVに対して、平均値AVが算出される。これにより、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、特異な値が除外された流速FVに対して平均値AVが算出されるので、この平均値AVに基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化を小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。これにより、流体の流量が特異な値の流速FVにひきずられる(影響される)おそれを低減することができ、算出(測定)した流体の流量を安定させることができるとともに、例えば、算出(測定)された流体の流量に基づいて制御を行う制御系に悪影響を及ぼすおそれを低減することができ、算出(測定)した流体の流量の信頼性を高めることができる。
【0090】
また、本実施形態における渦流量計1によれば、所定の演算値が、交番の流れの周波数、流速(流体の速度)V、および流体の流量のうちのいずれかである。これにより、所定の演算値を、熱式フローセンサ10のセンサ信号に基づいて容易に算出することができるとともに、所定の演算値の平均値から容易に流体の流量を算出することができる。
【0091】
また、本実施形態における渦流量計1によれば、メモリ7に記憶された平均値AVに基づいて更新周期UTにおける複数の流速FVがデジタル信号列に変換され、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理S110が行われる。ここで、流体の流量(速度)が変化している場合、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの平均値AVを基準にすると、いくつかの特定のパターンに分類することができる。また、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある場合も、同様に、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの平均値AVを基準にすると、別のいくつかの特定のパターンに分類することができる。一方、流速FVの時系列の変化をデジタル信号列に変換することにより、これらの特定のパターンに合致(一致)するか否かの判定が容易になる。よって、メモリ7に記憶された平均値AVに基づいて更新周期UTにおける複数の流速FVをデジタル信号列に変換し、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理S110を行うことにより、流体の流量(速度)が変化している場合の流速FVをさらに正確に選択することが可能となるとともに、特異な値の流速FVをさらに正確に除外することが可能となる。これにより、算出(測定)した流体の流量の精度を高めることができるとともに、流体の流量が特異な値の流速FVにひきずられる(影響される)おそれをさらに低減することができ、算出(測定)した流体の流量を安定させることができる。
【0092】
[第2実施形態]
図19ないし図23は、本発明の第2実施形態を示すためのものである。なお、特に記載がない限り、前述した実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、図示しない構成部分は、前述した実施形態と同様とする。
【0093】
図19は本発明の第2実施形態における渦流量計1Aの部分断面図であり、図20は図19に示した渦流量計1Aの機能的構成を示すブロック図である。図19に示すように、本実施形態の渦流量計1Aは、円筒状のケース27の内部に配設されている圧力センサ39を備える。圧力センサ39は流体の圧力を検出するためのものであり、図20に示すように、圧力センサ39で検出された流体の圧力は、中央制御部8Aに入力される。
【0094】
図21は図20に示した中央制御部8Aの機能的構成を示すブロック図である。図21に示すように、中央制御部8Aは、交番周波数算出部81と、流速算出部82と、出力制御部83と、交番流れ判定部84と、デジタル信号変換部85Aと、演算値選択部86と、平均値算出部87と、移動平均値算出部90と、報知制御部88と、流量算出部89と、を備える。
【0095】
デジタル信号変換部85Aは、後述する移動平均値算出部90により算出され、メモリ7に記憶された流速FVの移動平均値MAVに基づいて、複数の流速FVをデジタル信号列に変換する。
【0096】
演算値選択部86Aは、メモリ7に記憶された流速FVの移動平均値MAVに基づいて、更新周期UTにおいて流速算出部82により算出された複数の流速FVの中から、少なくとも1つを選択する。
【0097】
移動平均値算出部90は、メモリ7に記憶された所定数の流速FVの平均値AVに対して移動平均値MAVを算出し、算出した平均値MAVをメモリ7に書き込む。
【0098】
流量算出部89Aは、移動平均値算出部90により算出された流速FVの移動平均値MAVに基づいて、流体の流量を算出する。
【0099】
次に、図19に示した流量計1Aが流体の流量を測定(算出)する動作について説明する。
【0100】
図22は、図19に示した渦流量計1Aが流体の流量を測定(算出)する動作を説明するフローチャートである。渦流量計1Aは、流路2aを流通する流体の流量を測定するときに、流量測定処理S200を実行する。すなわち、最初に、中央制御部8は、図17に示す第1実施形態の流量測定処理S100と同様に、初期処理S101を行う。
【0101】
初期処理S101の後、圧力センサ39は、流体の圧力を検出し(S201)、渦流量計1Aは、図17に示す第1実施形態の流量測定処理S100と同様に、S102〜S108の各ステップを行う。
【0102】
S108の判定の結果、交番の流れの変化が所定範囲のレベルである場合、デジタル信号変換部85Aは、メモリ7から流速FVと後述する移動平均値MAVとを読み出し、移動平均値MAVに基づいて、今回の更新周期UTnに含まれる複数の流速FVをデジタル信号列に変換する(S202)。
【0103】
図23は、図21に示したデジタル変換部85Aが変換するデジタル信号列を説明するためのグラフである。図23に示すように、図18に示す第1実施形態の例と同様に、流速FVは検出周期dtで算出され、更新周期UTの間に、複数の、例えば、図23において18個の流速FVが含まれる。後述するS204のステップまたはS205のステップにおいて、前回の更新周期UTn-1における流速FVの移動平均値MAVn-1が算出され、メモリ7に記憶されている。また、移動平均値MAVには、初期処理S101において所定範囲(幅)Δ、例えば±5[%]、が設定されている。よって、例えば、移動平均値MAVn-1が100[m/s]である場合に、移動平均値MAVn-1の所定範囲(幅)Δは、95[m/s]以上105[m/s]以下となる。この状態で、デジタル信号変換部85Aは、移動平均値MAVn-1の所定範囲(幅)Δと今回の更新周期UTnに含まれる各流速FVとを比較し、流速FVが移動平均値MAVn-1の所定範囲(幅)Δ以内であれば「0」に、流速FVが移動平均値MAVn-1の所定範囲(幅)Δ外であれば「1」に、それぞれ変換する。例えば、図23に示す例の場合には、図23において網掛けになっている、5番目、6番目、および12番目の流速FVが移動平均値MAVn-1の所定範囲(幅)Δの範囲外である。この場合、今回の更新周期UTnに含まれる複数の流速FVは、「000011000001000000」のデジタル信号列に変換される。
【0104】
S202のステップの後、演算値選択部86Aは、S202のステップで変換されたデジタル信号列に対して、パターン認識処理を行う(S203)。パターン認識処理S203では、演算値選択部86Aは、デジタル信号列が所定のパターンに該当するか否かを判定し、判定結果に基づいてデジタル信号列の中から少なくとも1つの流速FVを選択する。
【0105】
ここで、流体の流量(速度)が変化している場合、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの移動平均値MAVを基準にすると、平均値AVの場合と同様に、いくつかの特定のパターンに分類することができる。また、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある場合も、同様に、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの移動平均値MAVを基準にすると、平均値AVの場合と同様に、別のいくつかの特定のパターンに分類することができる。一方、流速FVの時系列の変化をデジタル信号列に変換することにより、これらの特定のパターンに合致(一致)するか否かの判定が容易になる。よって、メモリ7に記憶された移動平均値MAVに基づいて更新周期UTにおける複数の流速FVをデジタル信号列に変換し、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理S203を行うことにより、流体の流量(速度)が変化している場合の流速FVをさらに正確に選択することが可能となるとともに、特異な値の流速FVをさらに正確に除外することが可能となる。
【0106】
具体的には、例えば、デジタル信号列において、「…000111…」のように、「1」が所定数、例えば3つ以上連続する場合、今回の更新周期UTnにおいて、実際の流速が移動平均値MAVの所定範囲(幅)Δを超えて変化しているものと考えられる。また、「1」が連続していな場合でも、例えば「…1011011…」のように、間に「01」を挟んで「1」が所定数、例えば3つ以上連続する場合、今回の更新周期UTnにおいて、実際の流速が移動平均値MAVの所定範囲(幅)Δの付近で変化しているものと考えられる。さらに、デジタル信号列において、「1」が所定割合、例えば50[%]以上含まれる場合も、実際の流速が移動平均値MAVの所定範囲(幅)Δを超えて変化しているものと考えられる。よって、デジタル信号列がこれらのパターンである場合、実際の流体の流量(速度)が変化したことにより、流速が移動平均値MAVの所定範囲(幅)Δを超えたものであるから、演算値選択部86Aは、デジタル信号列に対応する全ての流速FVを選択する。
【0107】
一方、例えば、デジタル信号列において、「…01000110…」のように、「1」が所定数、例えば3つ以上連続していない、すなわち、2つまでしか連続していない場合や、「1」が所定割合、例えば20[%]以下しか含まれない場合には、今回の更新周期UTnにおいて、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある(流体が突発的な不均一な流れになる)ものと考えられる。よって、デジタル信号列がこれらのパターンである場合、演算値選択部86は、デジタル信号列において、「0」に対応する流速FVを選択し、「1」に対応する流速FVを除外する。図23に示す例の場合、デジタル信号列が「000011000001000000」であって、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある(流体が突発的に不均一な流れになる)ものと考えられるから、演算値選択部86Aは、5番目、6番目、および12番目の流速FVを除外して、その他の流速FVを選択する。
【0108】
S203のステップの後、渦流量計1Aは、図17に示す第1実施形態の流量測定処理S100と同様に、S111のステップを行う。
【0109】
S111のステップの後、移動平均値算出部90は、メモリ7から平均値AVを読み出して、直近のi回(iは正の整数)の平均値AVに対して移動平均値MAVを算出するとともに(S204)、算出した移動平均値MAVをメモリ7に書き込む。メモリ7は、S204のステップまたは後述するS205のステップが行われるごとに、移動平均値MAVを時系列で追加記憶し、中央制御部8Aは、添字nを用いて、過去に書き込んだ任意の平均値MAVn(MAV1,MAV2,…,MAVn-1,MAVn)をメモリ7から読み出すことができる。これにより、過去のある時点から現在までに算出され、記憶された流速FVの平均値AVに対して移動平均値MAVが算出されるので、この移動平均値MAVに基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。
【0110】
一方、S108の判定の結果、交番の流れの変化が所定範囲のレベルでない、すなわち、変化が所定範囲のレベルを越えている場合、渦流量計1Aは、図17に示す第1実施形態の流量測定処理S100と同様に、S112のステップを行う。
【0111】
一方、S107の判定の結果、直前の交番の流れから変化した場合、渦流量計1Aは、図17に示す第1実施形態の流量測定処理S100と同様に、S113のステップを行う。
【0112】
S113のステップの後、移動平均値算出部90は、メモリ7から平均値AVを読み出して、直近のj回(jは正の整数)の平均値AVに対して移動平均値MAVを算出するとともに(S205)、算出した移動平均値MAVをメモリ7に書き込む。
【0113】
なお、S204のステップにおける直近の平均値AVの数であるi回は、S205のステップにおける直近の平均値AVの数であるj回より、大きいことが好ましい(i>j)。これにより、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、流路2aを流通する流体の流れに乱れがない(流体が均一な流れである)ときより、移動平均値MAVのサンプル数(標本数)が多くなるので、流速FVの移動平均値MAVが平滑化される。
【0114】
なお、移動平均値算出部90により算出される移動平均値MAVは、単純移動平均値である場合に限定されず、例えば、加重移動平均値であってもよい。この場合、
S204のステップにおける加重移動平均値の算出は、S205のステップにおける加重移動平均値の算出と、重み付けを変えることが好ましい。これにより、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、流路2aを流通する流体の流れに乱れがない(流体が均一な流れである)ときより、直近(直前)の平均値AVの重みを小さくして流速FVの移動平均値MAVをさらに平滑化することが可能となる。
【0115】
S204のステップの後、または、S205のステップの後、流量算出部89Aは、S203のステップまたはS204のステップにおいて移動平均値算出部90により算出された今回の更新周期UTnにおける移動平均値MAVnと、流路断面積に基づいて決定される係数などの所定の係数とを用いて、流体の体積流量Qを算出するとともに(S206)、算出した体積流量Qをメモリ7に書き込む。メモリ7は、S206のステップが行われるごとに時系列で体積流量Qを追加記憶し、中央制御部8は、添字nを用いて、過去に書き込んだ任意の流速Qn(Q1,Q2,…,Qn-1,Qn)をメモリ7から読み出すことができる。
【0116】
なお、流量算出部89Aは、さらに、算出した流体の体積流量Qと、S201において圧力センサ39により検出された流体の圧力と、S101において周囲温度センサ17により検出された流体の温度と、に基づいて、流体の質量流量を算出するようにしてもよい。また、流量算出部89Aは、さらに、流体の流量の測定(算出)を開始してから現時点までにメモリ7に記憶された体積流量Qnを全て読み出し、当該体積流量Qnを積算して積算流量Tを算出するようにしてもよい。
【0117】
S206のステップの後、渦流量計1Aは、図17に示す第1実施形態の流量測定処理S100と同様に、S115およびS116の各ステップを行う。
【0118】
このように、本実施形態における渦流量計1Aによれば、メモリ7に記憶された所定数の平均値AVに対して移動平均値MVAが算出される。これにより、過去のある時点から現在までに算出され、記憶された流速FVの平均値AVに対して移動平均値MAVが算出されるので、この移動平均値MAVに基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となる。これにより、流体の流量が特異な値の流速FVにひきずられる(影響される)おそれをさらに低減することができ、算出(測定)した流体の流量をさらに安定させることができる。
【0119】
また、本実施形態における渦流量計1Aによれば、交番流れ判定部84により交番の流れの変化が所定範囲のレベルであると判定されたときに、交番の流れの変化が所定範囲のレベル未満であるときより、前述した所定数が大きい。これにより、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、流路2aを流通する流体の流れに乱れがない(流体が均一な流れである)ときより、移動平均値MAVのサンプル数(標本数)が多くなるので、流速FVの移動平均値MAVがさらに平滑化される。これにより、この移動平均値MAVに基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となり、算出(測定)した流体の流量をさらに安定させることができる。
【0120】
また、本実施形態における渦流量計1Aによれば、移動平均値算出部90により算出される移動平均MAVが加重移動平均であり、交番流れ判定部84により交番の流れの変化が所定範囲のレベルであると判定されたときに、交番の流れの変化が所定範囲のレベル未満であるときと、重みづけが変わる。これにより、流路2aを流通する流体の流れに乱れがある(流体が不均一な流れである)ときに、流路2aを流通する流体の流れに乱れがない(流体が均一な流れである)ときより、直近(直前)の平均値AVの重みを小さくして流速FVの移動平均値MAVをさらに平滑化することが可能となる。これにより、この移動平均値MAVに基づいて流体の流量を算出(測定)することにより、実際の流量よりも変化をさらに小さく(ゆるやかに、なだらかに)することが可能となり、算出(測定)した流体の流量をさらに安定させることができる。
【0121】
また、本実施形態における渦流量計1Aによれば、移動平均値算出部90により算出された移動平均値MAVがさらに記憶され、メモリ7に記憶された移動平均値MAVに基づいて、更新周期UTにおける複数の流速FVがデジタル信号列に変換される。ここで、流体の流量(速度)が変化している場合、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの移動平均値MAVを基準にすると、平均値AVの場合と同様に、いくつかの特定のパターンに分類することができる。また、流路2aを流通する流体の流れに突発的な乱れがある場合も、同様に、流速FVの時系列の変化は、過去の流速FVの移動平均値MAVを基準にすると、平均値AVの場合と同様に、別のいくつかの特定のパターンに分類することができる。一方、流速FVの時系列の変化をデジタル信号列に変換することにより、これらの特定のパターンに合致(一致)するか否かの判定が容易になる。よって、メモリ7に記憶された移動平均値MAVに基づいて更新周期UTにおける複数の流速FVをデジタル信号列に変換し、当該デジタル信号列に対してパターン認識処理S203を行うことにより、流体の流量(速度)が変化している場合の流速FVをさらに正確に選択することが可能となるとともに、特異な値の流速FVをさらに正確に除外することが可能となる。これにより、算出(測定)した流体の流量の精度を高めることができるとともに、流体の流量が特異な値の流速FVにひきずられる(影響される)おそれをさらに低減することができ、算出(測定)した流体の流量を安定させることができる。
【0122】
なお、前述の各実施形態の構成は、組み合わせたりあるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1,1a…渦流量計
2a…流路
3…渦発生体
4…バイパス流路
7…メモリ
8,8A…中央制御部
81…交番周波数算出部
82…流速算出部
83…出力制御部
84…交番流れ判定部
85,85A…デジタル信号変換部
86,86A…演算値選択部
87…平均値算出部
90…移動平均値算出部
9…表示部
10…熱式フローセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流通する流体に渦を発生させる渦発生体と、
前記渦により内部に交番の流れが生成されるバイパス流路と、
前記バイパス流路内に設けられ、前記交番の流れを検出して該交番の流れに基づく検出信号を出力するフローセンサと、
前記フローセンサから出力された検出信号に基づいて、所定の演算値を算出する演算値算出部と、
前記所定の演算値の平均値を算出する平均値算出部と、
前記平均値算出部により算出された前記平均値を記憶する記憶部と、
前記フローセンサから出力された検出信号に基づいて、前記交番の流れの変化が所定範囲のレベルであるか否かを判定する判定部と、
前記記憶部に記憶された前記平均値に基づいて、所定期間において前記演算値算出部により算出された複数の前記所定の演算値の中から、少なくとも1つを選択する選択部と、を備え、
前記平均値算出部は、前記判定部により前記交番の流れの変化が前記所定範囲のレベルであると判定されたときに、前記選択部により選択された少なくとも1つの前記所定の演算値に対して、平均値を算出する
ことを特徴とする渦流量計。
【請求項2】
前記所定の演算値は、前記交番の流れの周波数、前記流体の速度、および前記流体の流量のうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の渦流量計。
【請求項3】
前記記憶部に記憶された前記平均値に基づいて、前記所定期間における前記複数の所定の演算値をデジタル信号列に変換する変換部をさらに備え、
前記選択部は、前記デジタル信号列に対して所定のパターン認識処理を施し、該所定のパターン認識処理の結果に基づいて、前記所定期間における前記複数の所定の演算値の中から、少なくとも1つの前記所定の演算値を選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の渦流量計。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された所定数の前記平均値に対して移動平均値を算出する移動平均値算出部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の渦流量計。
【請求項5】
前記所定数は、前記判定部により前記交番の流れの変化が前記所定範囲のレベルであると判定されたときに、前記交番の流れの変化が前記所定範囲のレベル未満であるときより、大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の渦流量計。
【請求項6】
前記移動平均値算出部により算出される移動平均値は、加重移動平均値であり、
前記移動平均値算出部は、前記判定部により前記交番の流れの変化が前記所定範囲のレベルであると判定されたときに、前記交番の流れの変化が前記所定範囲のレベル未満であるときと、重みづけを変える
ことを特徴とする請求項4または5に記載の渦流量計。
【請求項7】
前記記憶部は、移動平均値算出部により算出された移動平均値をさらに記憶し、
前記変換部は、前記記憶部に記憶された前記移動平均値に基づいて、前記所定期間における前記複数の所定の演算値をデジタル信号列に変換する
ことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の渦流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−194123(P2012−194123A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59752(P2011−59752)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)