説明

渦流量計及びその製造方法

【課題】種々のメリットを有するいわゆる標準1型構造の渦流量計を容易にかつ安価に得る。
【解決手段】被測定流体が流通する流管100に接続される円筒状の本体部2と、本体部2に形成された円筒状の流路2aの軸方向に対して直角な方向に延在するように流路2a内に配置される渦発生体部3と、を備え、流路2a内における渦発生体部3と本体部2との接続部に間隙Gが形成される渦流量計1である。本体部2及び渦発生体部3を精密鋳造により別々に成形した上で溶接接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流量計及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスが流通する所定の流路が形成された流管に配置した渦発生体により渦列を発生させ、この周波数に基づいて被測定ガスの流量を測定(算出)する渦流量計が提案され、実用化されている。現在においては、流管に接続される円筒状の本体部と、渦発生体部と、を精密鋳造で一体成形して渦流量計を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3195521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、渦流量計については、校正(実際に流量を流して調整すること)を行うことなく精度を確保するために、各構成部品の寸法値がJIS規格で定められている。例えば、渦流量計の構造として「標準1型」及び「標準2型」の2種類の構造が規定されている(JISZ8766)。
【0005】
これら2種類の構造のうち標準1型構造は、円筒状の本体部と渦発生体部との間に微小な間隙(溝)を形成することを特徴としている。このような標準1型構造を採用すると、渦流量計上流に配置される整流用直管の長さを短くすることができ、また、この整流用直管の必要長さを確保することができれば整流器を別途設置する必要がない、等の使用者にとっての種々のメリットがある。
【0006】
ところが、前記した特許文献1に記載されたような従来の一体的な精密鋳造による渦流量計製造方法を採用すると、標準1型構造の特徴である間隙を形成することが困難である。このため、標準1型構造の種々のメリットを享受しつつ渦流量計を安価に製造する技術が待望されていた。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、種々のメリットを有するいわゆる標準1型構造の渦流量計を容易にかつ安価に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る渦流量計は、被測定流体が流通する流管に接続される円筒状の本体部と、この本体部に形成された円筒状の流路の軸方向に対して直角な方向に延在するように流路内に配置される渦発生体部と、を備え、流路内における渦発生体部と本体部との接続部に間隙が形成される渦流量計であって、本体部及び渦発生体部は、精密鋳造により別々に成形された上で溶接接合されてなるものである。
【0009】
また、本発明に係る製造方法は、被測定流体が流通する流管に接続される円筒状の本体部と、この本体部に形成された円筒状の流路の軸方向に対して直角な方向に延在するように流路内に配置される渦発生体部と、を備え、流路内における渦発生体部と本体部との接続部に間隙が形成される渦流量計を製造する方法であって、本体部及び渦発生体部を精密鋳造により別々に成形する部品成形工程と、部品成形工程で成形した本体部と渦発生体部とを溶接接合する溶接接合工程と、を備えるものである。
【0010】
かかる構成及び方法を採用すると、精密鋳造により別々に成形した本体部及び渦発生体部を溶接接合することにより、いわゆる標準1型構造(本体部の流路内における渦発生体部と本体部との接続部に間隙が形成される構造)の渦流量計を容易にかつ安価に得ることができる。
【0011】
本発明に係る製造方法において、部品成形工程で本体部の側壁に貫通孔を形成することができる。かかる場合には、溶接接合工程において、本体部の貫通孔から流路内を流路径方向に沿って横断するように渦発生体部を挿入し、本体部の貫通孔と渦発生体部との接続部を本体部の側壁外部において溶接することにより、本体部と渦発生体部とを接続することができる。
【0012】
また、本発明に係る製造方法において、部品成形工程で本体部及び渦発生体部をロストワックス法により別々に成形することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、種々のメリットを有するいわゆる標準1型構造の渦流量計を容易にかつ安価に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る渦流量計の正面図である。
【図2】図1に示す渦流量計を図1に示す矢印II方向から見た側面図である。
【図3】図1に示す渦流量計の本体部及び渦発生体部の拡大正面図である。
【図4】図2に示す渦流量計の本体部及び渦発生体部の拡大側面図である。
【図5】(A)は、図4に示す本体部及び渦発生体部のVA-VA線に沿った断面図であり、(B)及び(C)は、(A)の本体部と渦発生体部との間に形成される間隙の拡大図である。
【図6】図5(A)に示すVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る渦流量計に搭載される熱式流れセンサの斜視図である。
【図8】図7に示すVIII-VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る渦流量計1について説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態に限定するものではない。
【0016】
本実施形態に係る渦流量計1は、図1、図2、図6等に示すように、被測定ガスが流通する流路2aを形成する円筒状の本体部2、流路2a内に配置された渦発生体部3、渦発生体部3の内部に形成されたバイパス流路4、バイパス流路4内に配置された熱式流れセンサ10、熱式流れセンサ10のヒータ14に電流を与えて発熱させる駆動回路、各種情報や制御プログラムを記録するメモリ、各種物理量の演算や駆動回路の制御等を行う中央制御部、各種情報を表示する表示部9等を備えている。なお、駆動回路、メモリ及び中央制御部については、図示を省略している。
【0017】
本体部2は、図1〜図5に示すように、短い円筒状の部材であり、その内部に円筒状の流路2aが形成されている。本体部2の両端には、図1に破線で示すように、被測定ガスを流通させる配管100が接続される。本体部2の側壁には、渦発生体部3を挿入させるための貫通孔2bが形成されている。また、本体部2の内壁の貫通孔2bに対向する位置には、渦発生体3の端部3aを嵌め込ませるための凹部2cが形成されている。本体部2は、後述するように精密鋳造により成形された上で、渦発生体部3に溶接接合される。
【0018】
渦発生体部3は、図1〜図5に示すように、本体部2の直径よりも長い柱状部材であり、本体部2の貫通孔2bから本体部2の径方向に横断するように本体部2内に挿入され、流路2aの軸方向に対して直角な方向に延在するように流路2a内に配置される。渦発生体部3の端部3aは、図5(A)に示すように、本体部2の凹部2cに嵌め込まれる。渦発生体部3の端部3aから所定寸法(本体部2の直径より若干長い寸法)離隔した位置には段部3bが形成されており、渦発生体部3の端部3aが本体部2の凹部2cに嵌め込まれたときに渦発生体部3の段部3bが本体部2の側壁の貫通孔2b外周部分に当接するようになっている。渦発生体部3は、後述するように精密鋳造により成形された上で、本体部2に溶接接合される。
【0019】
図5(A)に示すように本体部2に渦発生体部3が溶接接合されると、本体部2の流路2a内における渦発生体部3と本体部2との接続部に間隙Gが形成されるようになっている。具体的に説明すると、図5(B)に示すように、渦発生体部3の周壁には、本体部2の貫通孔2bの内壁と対向する部分(流路2aに露出する部分)に僅かな段部3cが形成されており、このような段部3cにより、本体部2の貫通孔2bの内壁と、渦発生体部3の周壁と、の間に微小な間隙Gが形成される。また、図5(C)に示すように、本体部2の凹部2cの開口部内壁には、渦発生体部3の周壁と対向する部分(流路2aに露出する部分)に僅かな段部2dが形成されており、このような段部2dにより、渦発生体部3の周壁と、本体部2の凹部2cの内壁と、の間に微小な間隙Gが形成される。このような間隙Gは、いわゆる標準1型構造の特徴である。
【0020】
バイパス流路4は、被測定ガスの流通方向(図1及び図6における矢印Aの方向)に対して直交する方向(図6における矢印Bの方向)に延在するように渦発生体部3の内部に形成されており、その両端部は開口4aとなっている。バイパス流路4の内部には、渦発生体部3で発生する渦列(カルマン渦)により交番の流れが生成される。図5(A)に示すように、渦発生体部3の内部には、バイパス流路4の途中から渦発生体部3の上方に向けて、被測定ガスの流通方向(矢印A方向)及びバイパス流路4の延在方向(矢印B方向)に直交する方向に延在するように挿通孔3dが形成されている。この挿通孔3dの内部には、挿通孔3dの内径よりも小さい外径を有するパイプ6が着脱自在に挿入されており、このパイプ6の先端部6aには、熱式流れセンサ10が実装されるセンサアセンブリ7が固定されている。
【0021】
熱式流れセンサ10は、バイパス流路4内を流通する被測定ガスに接触するように配置された半導体ダイヤフラムを有する流れセンサである。熱式流れセンサ10は、図7及び図8に示すように、キャビティ12が設けられた基板11、基板11上にキャビティ12を覆うように配置された絶縁膜13、絶縁膜13に設けられたヒータ14、ヒータ14の両側に配置された第1の測温抵抗素子15及び第2の測温抵抗素子16、周囲温度センサ17等を有している。
【0022】
絶縁膜13のキャビティ12を覆う部分は、断熱性のダイヤフラムを構成している。周囲温度センサ17は、バイパス流路4内を流通する被測定ガスの温度を検出する。ヒータ14は、キャビティ12を覆う絶縁膜13の中心に配置されており、駆動回路から与えられる電流により発熱する。第1の測温抵抗素子15は、ヒータ14の一方側の温度を検出するために用いられ、第2の測温抵抗素子16は、ヒータ14の他方側の温度を検出するために用いられる。これら第1及び第2の測温抵抗素子15、16によりヒータ14の両側の温度差に対応するセンサ信号を検出して、バイパス流路4内に生成される交番の流れの振幅や周波数に係る情報を得ることが可能となる。このような周波数に係る情報は、中央制御部に入力され、被測定ガスの流量の算出等に使用される。
【0023】
なお、図7及び図8に示した基板11の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜13の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ12は、異方性エッチング等により形成される。ヒータ14、第1の測温抵抗素子15、第2の測温抵抗素子16及び周囲温度センサ17の各材料には、白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0024】
熱式流れセンサ10は、図5(A)に示すように、パイプ6の先端部6aが渦発生体部3の挿通孔3dの最深部まで挿入されることにより、バイパス流路4に臨む位置に配設されることとなる。熱式流れセンサ10の接続線18は、図5(A)に示すように、パイプ6の内部空間を通って、図示していないプリント配線基板に接続される。プリント配線基板は、図1及び図2に示すような円筒状のケース8により保護されている。ケース8の上方に取り付けられたハウジング8aには、被測定ガスの流量等の各種情報を表示する表示部9が設けられている。
【0025】
次に、本実施形態に係る渦流量計1の製造方法について説明する。
【0026】
まず、本体部2及び渦発生体部3を、精密鋳造により別々に成形する(部品成形工程)。本実施形態においては、精密鋳造としてロストワックス法を採用している。ロストワックス法の手順としては、まず、蜜蝋や松脂等からなる熱可塑性物質により渦流量計の模型を作り、これを、ケイ砂や石灰粉末等からなる耐火材料で被覆する。この後、加熱して熱可塑性の模型を溶出し、空洞となった模型部に、例えばステンレス鋼の鋳造金属を注入して固化させた後に耐火材料を取り除く。このように鋳造した本体部2及び渦発生体部3の表面を、サンドブラスト等により平滑面となるように表面処理することが好ましい。本実施形態における部品成形工程では、本体部2の側壁に、渦発生体部3を挿入させるための貫通孔2bを形成する。
【0027】
次いで、部品成形工程で成形した本体部2と渦発生体部3とを溶接接合する(溶接接合工程)。本実施形態においては、図5(A)に示すように、本体部2の貫通孔2bから流路2a内を流路径方向に沿って横断するように渦発生体部3を挿入し、本体部2の側壁の貫通孔2bの外周部分5(貫通孔2bと渦発生体部3との接続部)に溶接を施すことにより、本体部2と渦発生体部3とを接合している。溶接の種類は特に限定されるものではなく、アーク溶接やスポット溶接等を採用することができる。
【0028】
この後、センサアセンブリ7を先端部6aに装着したパイプ6を、渦発生体部3の挿通孔3dに挿入して、熱式流れセンサ10をバイパス流路4に臨む位置に配設し、渦発生体部3に円筒状のケース8等を取り付けて渦流量計1を組み立てる(組立工程)。以上の工程群を経て渦流量計1を製造することができる。
【0029】
以上説明した実施形態に係る渦流量体1の製造方法においては、精密鋳造により別々に成形した本体部2及び渦発生体部3を溶接接合することにより、いわゆる標準1型構造(本体部2の流路2a内における渦発生体部3と本体部2との接続部に間隙Gが形成される構造)の渦流量計1を容易にかつ安価に得ることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、流体管2及び渦発生体3を精密鋳造で成形した例を示したが、必要精度によっては、精密鋳造で成形した部品の一部を仕上げ加工することもできる。また、切削加工等の工程を経て流体管2及び渦発生体3を製作してもよい。その他、本発明を、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…渦流量計
2…本体部
2a…流路
3…渦発生体部
100…流管
G…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流通する流管に接続される円筒状の本体部と、前記本体部に形成された円筒状の流路の軸方向に対して直角な方向に延在するように前記流路内に配置される渦発生体部と、を備え、前記流路内における前記渦発生体部と前記本体部との接続部に間隙が形成される渦流量計であって、
前記本体部及び前記渦発生体部は、精密鋳造により別々に成形された上で溶接接合されてなる、
渦流量計。
【請求項2】
被測定流体が流通する流管に接続される円筒状の本体部と、前記本体部に形成された円筒状の流路の軸方向に対して直角な方向に延在するように前記流路内に配置される渦発生体部と、を備え、前記流路内における前記渦発生体部と前記本体部との接続部に間隙が形成される渦流量計を製造する方法であって、
前記本体部及び前記渦発生体部を精密鋳造により別々に成形する部品成形工程と、
前記部品成形工程で成形した前記本体部と前記渦発生体部とを溶接接合する溶接接合工程と、を備える、
渦流量計の製造方法。
【請求項3】
前記部品成形工程では、前記本体部の側壁に貫通孔を形成し、
前記溶接接合工程では、前記本体部の前記貫通孔から前記流路内を流路径方向に沿って横断するように前記渦発生体部を挿入し、前記本体部の前記貫通孔と前記渦発生体部との接続部を前記本体部の側壁外部において溶接することにより、前記本体部と前記渦発生体部とを接続する、
請求項2に記載の渦流量計の製造方法。
【請求項4】
前記部品成形工程では、前記本体部及び前記渦発生体部をロストワックス法により別々に成形する、
請求項2又は3に記載の渦流量計の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−163474(P2012−163474A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24878(P2011−24878)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)