説明

渦流量計及び流量測定方法

【課題】流体が流路を流通している場合を識別することのできる渦流量計及び流量測定方法を提供する。
【解決手段】交番の流れにおける周波数を検出し、流体の温度を検出する周囲温度センサ17と流体を加熱するヒータ14とを有する熱式フローセンサ10と、検出された周波数に基づいて、流体の流量を算出する中央制御部8と、ヒータ14の温度が流体の温度よりも所定の温度高くなるように、ヒータ14に電気エネルギーを供給する駆動回路5と、流体の流量とヒータ14の電力との関係を示す流量電力情報を記憶するメモリ7と、ヒータ14の電力を算出(検出)する中央制御部8とを備え、中央制御部8により算出された流体の流量と流量電力情報とに基づいて、電力のしきい値を設定し、ヒータ14の電力としきい値とに基づいて、流体が流通しているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、渦流量計及び流量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の渦流量計として、ガス等の流体が流通する流路に配置された渦発生体により渦列(カルマン渦)を発生させて流体振動を生成し、この流体振動の周波数に基づいて流体の流量を測定(算出)する渦流量計が提案され、実用化されている。また、現在においては、渦発生体の下流側に、流体の流通方向と直交するバイパス流路を形成し、このバイパス流路内に熱式フローセンサを配置し、この熱式フローセンサにより流体振動の周波数を検出して流体の体積流量を算出する渦流量計が提案され、実用化されている。さらに、この体積流量を質量流量に変換する渦流量計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−93349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、流路が形成された配管には、他の機器が設置されることがある。この場合、他の機器等の影響によって、流体が配管内を往復する流れ(往復流)が発生することがある。この場合、実際には流体が流路を流通していないにもかかわらず、熱式フローセンサがこの流体の往復流を検出し、流量を測定(出力)してしまう場合があった。
【0005】
このため、従来の渦流量計では、熱式フローセンサが検出した信号の振幅が所定のしきい値を超えた場合に、流体が流路内を流通していると判定し、流量を測定(出力)していた。
【0006】
しかしながら、配管内に発生する往復流は大きく(速く)なる場合があり、所定のしきい値を比較的小さな値に設定すると、かかる往復流の影響を受け易くなり、誤って流体が流路内を流通していると判定してしまうおそれがあった。一方、所定のしきい値を比較的大きな値に設定すると、流体の流量が小さい(少ない)場合にセンサ信号の振幅も小さくなるので、実際には流体が流路内を流通していても、流量を測定できないおそれがあった。このように、従来の渦流量計では、流体が流路を流通している場合を識別することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、流体が流路を流通している場合を識別することのできる渦流量計及び流量測定方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る渦流量計は、流路を流通する流体に渦を発生させる渦発生体と、前述の渦により内部に交番の流れが生成されるバイパス流路と、バイパス流路内に設けられ、交番の流れにおける周波数を検出するフローセンサであって、流体の温度を検出する周囲温度センサと流体を加熱するヒータとを有するフローセンサと、フローセンサにより検出された周波数に基づいて、流体の流量を算出する算出部と、ヒータの温度が周囲温度センサにより検出された流体の温度よりも所定の温度高くなるように、ヒータに電気エネルギーを供給する供給部と、流体の流量と前述の電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す流量物理量情報を記憶する記憶部と、前述の所定の物理量を検出する検出部と、算出部により検出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに基づいて、前述の所定の物理量のしきい値を設定する設定部と、検出部により検出された前述の所定の物理量と設定部により設定されたしきい値とに基づいて、流体が流路を流通しているか否かを判定する流通判定部とを備える。
【0009】
かかる構成によれば、算出部により算出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに基づいて、ヒータに供給された電気エネルギーに対応する所定の物理量のしきい値が設定され、検出部により検出された前述の所定の物理量と設定部により設定されたしきい値とに基づいて、流体が流路を流通しているか否かが判定される。ここで、流体が流路を流通している場合、バイパス流路の内部に生成される交番の流れによって、ヒータから発せられた熱が流体に奪われる。この場合、ヒータの温度が周囲温度センサにより検出された流体の温度よりも所定の温度高くなるように、供給部がヒータに電気エネルギーを供給しているので、ヒータに供給される電気エネルギーは、ヒータが消費した熱量(流体に奪われた熱量)に応じて変化する。そのため、ヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量は、流体の流量に対して、依存又は略依存する関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0010】
一方、流体が流路を往復している場合、ヒータ付近の流体はその近傍に留まるので、流体が流路を流通している場合と比較して、ヒータから流体に奪われる熱は少なくなる。そのため、ヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量は、流体の流量に相対的に依存しない(依存度が小さい)関係(傾向)を有することが実験で確認されている。よって、流量物理量情報として、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す情報を記憶し、この流量物理量情報と算出された流体の流量とに基づいて、所定の物理量のしきい値を設定することにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを識別(判別)することが可能となる。
【0011】
好ましくは、流体が流路を往復している旨を報知する報知部と、検出部により検出された前述の所定の物理量と、設定部により設定されたしきい値とに基づいて、報知部による報知を行うか否かを判定する報知判定部と、を更に備える。
【0012】
かかる構成によれば、検出部により検出された前述の所定の物理量と設定部により設定されたしきい値とに基づいて、報知部による報知を行うか否かが判定される。これにより、流体が流路を往復している場合にその旨を報知することができ、他の機器の不適切な設置を発見することができる。
【0013】
好ましくは、流体の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、設定部は、更に圧力センサにより検出された圧力に基づいて、前述のしきい値を設定する。
【0014】
かかる構成によれば、設定部によって、更に圧力センサにより検出された流体の圧力に基づいて、前述のしきい値が設定される。ここで、流体が流路を流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の圧力に応じて変化することが実験で確認されている。よって、算出部により算出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに加え、更に圧力センサにより検出された流体の圧力に基づいて、ヒータにおける所定の物理量のしきい値を設定することにより、流体の圧力が反映されたしきい値を設定することが可能となる。これにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0015】
好ましくは、設定部は、更に周囲温度センサにより検出された温度に基づいて、前述のしきい値を設定する。
【0016】
かかる構成によれば、設定部によって、更に周囲温度センサにより検出された流体の温度に基づいて、前述のしきい値が設定される。ここで、流体が流路を流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の温度に応じて変化することが実験で確認されている。よって、算出部により算出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに加え、更に周囲温度センサにより検出された流体の温度に基づいて、ヒータにおける所定の物理量のしきい値を設定することにより、流体の温度が反映されたしきい値を設定することが可能となる。これにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0017】
好ましくは、設定部は、更に流体の種類に基づいて、前述のしきい値を設定する。
【0018】
かかる構成によれば、設定部によって、更に流体の種類に基づいて、前述のしきい値が設定される。ここで、流体が流路を流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の種類に応じて変化することが実験で確認されている。よって、算出部により算出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに加え、更に流体の種類に基づいて、ヒータにおける所定の物理量のしきい値を設定することにより、流体の種類が反映されたしきい値を設定することが可能となる。これにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0019】
好ましくは、前述の流量物理量情報は、算出部により算出された流体の流量と検出部により検出された前述の所定の物理量との関係に基づくものである。
【0020】
かかる構成によれば、流量物理量情報が、算出部により算出された流体の流量と検出部により検出された前述の所定の物理量との関係に基づくものである。これにより、記憶部に記憶された流量物理量情報には、実装されたフローセンサによる周波数の検出誤差(バラツキ)と実装された検出部による所定の物理量の検出誤差(バラツキ)とが含まれる。これにより、実際に検出された値に基づく所定の物理量のしきい値が設定され、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0021】
好ましくは、前述の所定の物理量は、電力、電流、及び電圧のうちの何れかである。
【0022】
かかる構成によれば、前述の所定の物理量が、電力、電流、及び電圧のうちの何れかである。これにより、ヒータに供給された電気エネルギーに対応する所定の物理量を、容易に検出することができる。
【0023】
本発明に係る流量測定方法は、流路を流通する流体に渦を発生させる渦発生体と、前述の渦により内部に交番の流れが生成されるバイパス流路と、バイパス流路内に設けられ、交番の流れの周波数を検出するフローセンサであって、流体の温度を検出する周囲温度センサと流体を加熱するヒータとを有するフローセンサと、フローセンサにより検出された周波数に基づいて、流体の流量を算出する算出部と、周囲温度センサにより検出された流体の温度よりもヒータの温度が所定の温度高くなるように、ヒータに電気エネルギーを供給する供給部と、流体の流量と前述の電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す流量物理量情報を記憶する記憶部と、前述の所定の物理量を検出する検出部と、設定部と、流通判定部とを備える渦流量計を用いて、流体の流量を測定する方法であって、設定部が、算出部により算出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに基づいて、前述の所定の物理量のしきい値を設定する設定工程と、流通判定部が、検出部により検出された所定の物理量と設定部により設定されたしきい値とに基づいて、流体が流路を流通しているか否かを判定する流通判定工程と、を備える。
【0024】
かかる構成によれば、算出部により算出された流体の流量と記憶部に記憶された流量物理量情報とに基づいて、ヒータに供給された電気エネルギーに対応する所定の物理量のしきい値が設定され、検出部により検出された前述の所定の物理量と設定部により設定されたしきい値とに基づいて、流体が流路を流通しているか否かが判定される。ここで、流体が流路を流通している場合、バイパス流路の内部に生成される交番の流れによって、ヒータから発せられた熱が流体に奪われる。この場合、ヒータの温度が周囲温度センサにより検出された流体の温度よりも所定の温度高くなるように、供給部がヒータに電気エネルギーを供給しているので、ヒータに供給される電気エネルギーは、ヒータが消費した熱量(流体に奪われた熱量)に応じて変化する。そのため、ヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量は、流体の流量に対して、依存又は略依存する関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0025】
一方、流体が流路を往復している場合、ヒータ付近の流体はその近傍に留まるので、流体が流路を流通している場合と比較して、ヒータから流体に奪われる熱は少なくなる。そのため、ヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量は、流体の流量に相対的に依存しない(依存度が小さい)関係(傾向)を有することが実験で確認されている。よって、流量物理量情報として、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す情報を記憶し、この流量物理量情報と算出された流体の流量とに基づいて、所定の物理量のしきい値を設定することにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを識別(判別)することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る渦流量計及び流量測定方法によれば、流量物理量情報として、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す情報を記憶し、この流量物理量情報と算出された流体の流量とに基づいて、所定の物理量のしきい値を設定することにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを識別(判別)することが可能となる。これにより、流体が流路を流通している場合に流量を測定(出力)することができるとともに、流体が流路を流通していない場合に誤って流量を測定(出力)する蓋然性を低減することができ、測定(出力)された流量の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態における渦流量計を説明する正面図である。
【図2】図1に示したII線矢視方向側面図である。
【図3】図1に示した渦流量計の部分断面図である。
【図4】図2に示した渦流量計の部分断面図である。
【図5】図3に示した渦発生体の内部構造を説明する断面図である。
【図6】図3に示したVI−VI線矢視方向側面図である。
【図7】図6に示した熱式フローセンサの斜視図である。
【図8】図7に示したVIII−VIII線矢視方向断面図である。
【図9】図1に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示した駆動回路を示す回路図である。
【図11】図7及び図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の時間変化を示すグラフである。
【図12】流体の流量とヒータに供給される電力との関係の一例を示すグラフである。
【図13】図7及び図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の振幅とヒータに供給される電力との関係の一例を示すグラフである。
【図14】図1に示した渦流量計において流量を測定する動作を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の第2実施形態における渦流量計の部分断面図である。
【図16】図15に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図である。
【図17】流体の流量とヒータに供給される電力との関係の他の例を示すグラフである。
【図18】図15に示した渦流量計において流量を測定する動作を説明するフローチャートである。
【図19】流体の流量とヒータに供給される電力との関係の更に他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0029】
[第1実施形態]
図1乃至図14は、本発明の第1実施形態を示すためのものである。図1は、本発明の第1実施形態における渦流量計を説明する正面図であり、図2は図1に示したII線矢視方向側面図である。図1及び図2に示すように、渦流量計1は、例えばガス等の被測定流体(以下、単に流体という)が流通する流路2aを形成する流体管2と、流路2a内に配置された渦発生体3と、渦発生体3の内部に形成されたバイパス流路4と、を備えている。
【0030】
流体管2は、短い円筒状の部材である。流体管2の両端には、図1に破線で示すように、流体を流通させる配管100が接続される。
【0031】
図3は図1に示した渦流量計の部分断面図であり、図4は図2に示した渦流量計の部分断面図であり、図5は図3に示した渦発生体の内部構造を説明する断面図であり、図6は図3に示したVI−VI線矢視方向側面図である。図2乃至図6に示すように、渦発生体3は、流体管2の直径よりも長い柱状部材であり、流体管2の壁部に形成された貫通孔2bから流体管2内にその径方向に横断するように挿入されている。渦発生体3の外周部と流体管2の貫通孔2bとの間には、流体管2の密閉性を保持するO(オー)リング21が配設されている。また、渦発生体3は、固定プレート22によって流体管2に固定されている。このように構成された渦発生体3は、流路2aを流通する流体に渦を発生させる。
【0032】
バイパス流路4は、図1及び図6に矢印Aで示す流体の流通方向に対して、図6に矢印Bで示すように直交する方向に延在するように形成されている。バイパス流路4の両端部は、開口4aとなっている。バイパス流路4の内部には、渦発生体3で発生する渦列(カルマン渦)により交番の流れが生成される。
【0033】
図3及び図5に示すように、渦発生体3の内部には、バイパス流路4の途中から渦発生体3の上方に向けて、流体の流通方向(図6において矢印A方向)及びバイパス流路4の延在方向(図6において矢印B方向)に直交する方向に延在するように、小径孔3aが形成されている。小径孔3aの内部には、小径孔3aの内径よりも小さい外径を有するパイプ23が着脱自在に挿入されている。パイプ23の先端部23aには、図6に示す熱式フローセンサ10が実装されるセンサアセンブリ24が固定されている。図3に示すように、パイプ23の先端部23aが小径孔3aの最深部まで挿入されることにより、熱式フローセンサ10はバイパス流路4に臨む位置に配設されることとなる。
【0034】
小径孔3aの上方には、小径孔3aより大きい内径を有する大径孔3bが形成されている。渦発生体3の小径孔3aに挿入されたパイプ23は、大径孔3bに挿入された固定部材25によって、固定されている。
【0035】
固定部材25の外周面には、熱式フローセンサ10の信号増幅用プリント配線基板(図示省略)が設けられており、熱式フローセンサ10の接続線18は、パイプ23の内部空間を通って、このプリント配線基板に接続されている。このプリント配線基板を囲む空間は、渦発生体3の外側にOリング26を介して取り付けられた円筒状のケース27により保護されている。
【0036】
図1乃至図4に示すように、ケース27の上方には、ハウジング28が取り付けられている。図4に示すように、ハウジング28の内部には、ターミナル29が内蔵されている。ターミナル29には、後述するメモリ7及び中央制御部8等が設けられたプリント配線基板30が配設されている。ハウジング28の開口部28aには、カバー31が螺合されており、開口部28aの反対側には、測定した流体の流量等の各種情報を表示する表示部9が設けられている。
【0037】
図7は図6に示した熱式フローセンサの斜視図であり、図8は図7に示したVIII−VIII線矢視方向断面図である。熱式フローセンサ10は、図2乃至図6に示したバイパス流路4内を流れる流体に接触するように配置され、半導体ダイアフラムを有するフローセンサである。図7及び図8に示すように、熱式フローセンサ10は、キャビティ12が設けられた基板11、基板11上にキャビティ12を覆うように配置された絶縁膜13、絶縁膜13に設けられたヒータ14、ヒータ14の両側に配置された第1の測温抵抗素子15及び第2の測温抵抗素子16、周囲温度センサ17等を有している。
【0038】
絶縁膜13のキャビティ12を覆う部分は、断熱性のダイアフラムを構成している。周囲温度センサ17は、バイパス流路4内を流通する流体の温度を検出し、検出した温度を後述する中央制御部8に出力する。ヒータ14は、例えば抵抗素子であり、キャビティ12を覆う絶縁膜13の中心に配置され、バイパス流路4内を流れる流体を加熱する。
【0039】
第1の測温抵抗素子15は、ヒータ14の一方側(図7及び8において左側)の温度を検出するために用いられ、第2の測温抵抗素子16は、ヒータ14の他方側(図7及び8において右側)の温度を検出するために用いられ、いずれも温度センサとして機能する。第1及び第2の測温抵抗素子15、16は、ヒータ14の加熱によって生ずる温度差に対応するセンサ信号を検出する。このセンサ信号は、信号増幅、矩形波変換、エッジ検出等の信号処理が施され、後述する中央制御部8に出力される。これにより、中央制御部8は、バイパス流路4内に生成される交番の流れにおける振幅及び周波数に関する情報を得ることが可能となる。
【0040】
なお、基板11の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜13の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ12は、異方性エッチング等により形成される。ヒータ14、第1の測温抵抗素子15、第2の測温抵抗素子16及び周囲温度センサ17の各材料には、白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
【0041】
図9は図1に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図であり、図10は図9に示した駆動回路を示す回路図である。図9に示すように、駆動回路5は、前述の熱式フローセンサ10の信号増幅用プリント配線基板(図示省略)に設けられている。図10に示すように、駆動回路5は、1つのオペアンプOP1と3つの固定抵抗R1,R2,R3とを含んでおり、ヒータ14(図10においてRhと表記)と周囲温度センサ17(図10においてRrと表記)とを用いてブリッジ回路を構成している。この駆動回路5では、ヒータ14と周囲温度センサ17との抵抗比が所定の値(一定値)となるように、オペアンプOP1に印加する電圧を制御(フィードバック制御)している。このように、駆動回路5は、周囲温度センサ17により検出された流体の温度よりもヒータ14の温度が所定の温度高くなるように、ヒータ14に電気エネルギーを供給する。
【0042】
なお、図10に示す固定抵抗R2の両端の電圧Va,Vbは、図9に示す中央制御部8のA/D変換器(図示省略)に出力されている。
【0043】
メモリ7は、流量の測定前に予め登録された情報や、流量の測定中に得られた情報等を記憶するためのものである。メモリ7に記憶される情報は、中央制御部8によって書き込まれ、又は読み出される。本実施形態では、後述する流量電力情報がメモリ7に記憶されている。
【0044】
中央制御部8は、例えばCPU等によって構成され、各種の演算を行い、渦式流量計1の動作を制御する。具体的には、中央制御部8は、駆動回路5からA/D変換器(図示省略)を解して入力される固定抵抗R2の両端の電圧Va,Vbと、熱式フローセンサ10の温度センサ15,16から入力される検出信号と、メモリ7に記憶された情報とに基づいて、流体の流量を算出して当該流量を示す数字(文字)を表示部9に出力し、又は所定のメッセージを表示部9に出力する。
【0045】
図11は、図7及び図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の時間変化を示すグラフである。バイパス流路4内に生成される交番の流れは、熱式フローセンサ10の第1及び第2の測温抵抗素子15、16によって、図10に示すような波形のセンサ信号(電圧)として検出される。従来の渦流量計では、センサ信号の振幅aに対して所定のしきい値を設定し、センサ信号の振幅aが設定された所定のしきい値を超えた場合に、流体が流路内を流通していると判定して流量を算出していた。
【0046】
一方、流体が流路2a内を往復している場合も、バイパス流路4内に流体の流れが生じる。このため、第1及び第2の測温抵抗素子15、16は、バイパス流路4内に交番の流れが生成される場合と同様に、図11に示すような波形のセンサ信号を検出する。よって、従来の渦流量計のように、熱式フローセンサにおけるセンサ信号の振幅aに基づいて、流体が流路内を往復している場合を識別するのは困難である。
【0047】
図12は、流体の流量とヒータに供給される電力との関係の一例を示すグラフである。ここで、流体が流路2a内を流通している場合、バイパス流路4の内部に生成される交番の流れによって、ヒータ14から発せられた熱が流体に奪われる。この場合、ヒータ14の温度が周囲温度センサ17により検出された流体の温度よりも所定の温度高くなるように、駆動回路5がヒータ14に電気エネルギーを供給しているので、ヒータ14に供給される電気エネルギーは、ヒータ14が消費した熱量(流体に奪われた熱量)に応じて変化する。そのため、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量、例えば電力は、図12に実線で示すグラフL1のように、流体の流量に対して、依存又は略依存する関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0048】
一方、流体が流路2a内を往復している場合、ヒータ14付近の流体はその近傍に留まるので、流体が流路2a内を流通している場合と比較して、ヒータ14から流体に奪われる熱は少なくなる。そのため、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量、例えば電力は、図12に破線で示すグラフL2のように、流体の流量に依存しない(依存度が小さい)関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0049】
なお、図12では、流体の流量の一例として、流体の体積流量を示したが、これに限定されず、流体の質量流量であっても同様の関係(傾向)を有することが実験で角にされている。
【0050】
図13は、図7及び図8に示した熱式フローセンサにおけるセンサ信号の振幅とヒータに供給される電力との関係の一例を示すグラフである。また、流体が流路2a内を流通している場合、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量、例えば電力は、図13に実線で示すグラフL11のように、熱式フローセンサ10の第1及び第2の測温抵抗素子15、16によるセンサ信号の振幅、すなわち、バイパス流路4の内部に生成される交番の流れにおける振幅に対して、依存又は略依存する関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0051】
一方、流体が流路2a内を往復している場合、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量、例えば電力は、図13に破線で示すグラフL12のように、センサ信号の振幅、すなわち、バイパス流路4の内部に生成される交番の流れの振幅に依存しない(依存度が小さい)関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0052】
本実施形態では、流体の流量と、ヒータ14に供給される電気エネルギーの電力との関係を示す流量電力情報として、図12に示すグラフL1の情報をメモリ7に記憶するものとする。
【0053】
なお、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量としては、電力である場合に限定されず、例えば、電流又は電圧であってもよい。
【0054】
また、本実施形態では、柱状の渦発生体3を流体管2の貫通孔2bから挿入して配置した例を示したが、流体管2に直接柱状の渦発生体3を組み込むような構成を採用することもできる。
【0055】
次に、図1に示した渦流量計が流量を測定(算出)する動作について説明する。
【0056】
図14は、図1に示した渦流量計において流量を測定する動作を説明するフローチャートである。図14に示すように、流量計1は、処理S100を実行する。すなわち、まず、周囲温度センサ17は、バイパス流路4内を流れる流体の温度を検出する(S101)。駆動回路5は、周囲温度センサ17により検出された温度よりもヒータ14の温度が所定の温度高くなるように、ヒータ14に電気エネルギーを供給する(S102)。中央制御部8は、駆動回路5から入力される固定抵抗R2の両端の電圧Va,Vbに基づいて、ヒータ14に供給された電気エネルギーに対応する電力を算出(検出)する(S103)。
【0057】
なお、ヒータ14に供給された電気エネルギーに対応する電力Whの具体的な算出方法は、中央制御部8が、例えば、固定抵抗R2の両端の電圧Va,Vbと、固定抵抗R2の既知の抵抗値r2とを用いて、以下の式(1)からヒータ電流Ihを算出した上で、ヒータ電流Ihを用いて式(2)から算出する。
Ih=(Vb−Va)/r2 …(1)
Wh=Va×Ih …(2)
【0058】
一方、熱式フローセンサ10は、温度センサ15,16を用いてバイパス流路4内に生成される交番の流れの周波数を検出する(S104)。中央制御部8は、S104において検出された交番の流れの周波数に、渦発生体3の幅、ストローハル数、流路断面積に基づいて決定される係数等の所定の係数を乗じて流体の体積流量を算出し(S105)。
【0059】
次に、中央制御部8は、S105において算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶された流量電力情報とに基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定する(S106)。例えば、S105において算出された流体の体積流量が「Q1」である場合に、中央制御部8は、メモリ7に記憶された図12のグラフL1の情報を用いて、ヒータ14における電力のしきい値として、「W1」を設定する。このように、流量電力情報として、流体の体積流量とヒータに供給される電気エネルギーに対応する電力との関係を示すグラフL1の情報をメモリ7に記憶し、このグラフL1の情報と中央制御部8により算出された流体の体積流量とに基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体が流路2aを流通している場合と流体が流路2aを往復している場合とを識別(判別)することが可能となる。
【0060】
本実施形態では、図12に示したグラフL1の情報を流量電力情報としてメモリ7に記憶しておき、この流量電力情報と中央制御部8により算出された流体の体積流量とに基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定するようにしたが、これに限定されない。例えば、図13に示したグラフL11の情報を振幅電力情報としてメモリ7に記憶しておく。そして、S104において、温度センサ15,16を用いてバイパス流路4内に生成される交番の流れの振幅を検出し、S106において、中央制御部8は、S104において検出されたセンサ信号の振幅とメモリ7に記憶された振幅電力情報とに基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定するようにしてもよい。例えば、温度センサ15,16で検出されたセンサ信号の振幅が「V1」である場合に、中央制御部8は、メモリ7に記憶された図13のグラフL11の情報を用いて、ヒータ14における電力のしきい値として、「W11」を設定する。
【0061】
次に、中央制御部8は、S103において算出(検出)されたヒータ14の電力が、S106において設定された電力のしきい値を超えるか否か、を判定する(S107)。
【0062】
S107の判定の結果、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値を超える場合、図12に示したグラフL1のような流体の流量とヒータ14の電力との関係が認められるので、流体が流路2aを流通しているものと考えられる。よって、中央制御部8は、S105において算出された流体の体積流量は流体が流路2aを流通している場合のものであるとして、S105において算出された流体の体積流量を表示部9に出力し、表示部9に表示させる(S108)。このように、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力と中央制御部8により設定されたヒータ14における電力のしきい値とに基づいて、流体が流路2aを流通しているか否かが判定される。
【0063】
本実施形態では、S107の判定の結果、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値を超える場合に、流体が流路2aを流通していると判定したが、これに限定されない。例えば、S107において、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値を超えない場合であっても、近似する場合に、流体が流路2aを流通していると判定してもよい。また、例えば、図12のグラフL2の情報もメモリ7に記憶しておき、S106において、ヒータ14における電力のしきい値として「W1」及び「W2」の2つを設定する。そして、S106の判定の結果、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力と、ヒータ14における電力のしきい値W1及びW2に基づいて、例えば、ヒータ14の電力がしきい値W2よりもしきい値W1に近い場合に、流体が流路2aを流通していると判定してもよい。
【0064】
なお、渦流量計1は、流体の圧力を検出する圧力センサを更に備えるようにしてもよい。この場合、中央制御部8は、この圧力センサにより検出された流体の圧力と、S101において検出された流体の温度と、S105において算出された流体の体積流量とに基づいて、流体の質量流量を算出することが可能となる。また、流量電力情報として、流体の体積流量とヒータの電力との関係を示すグラフの情報をメモリ7に記憶しておき、この流量電力情報と算出された流体の質量流量とに基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することが可能となる。
【0065】
一方、S107の判定の結果、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値を超えない場合、流体が流路2aを往復しているものと考えられる。よって、中央制御部8は、流体が流路2aを往復している旨を表示部9に表示(報知)させ(S109)、処理S100を終了する。このように、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力と中央制御部8により設定されたヒータ14における電力のしきい値とに基づいて、表示部9による報知を行うか否かが判定される。
【0066】
本実施形態では、S107の判定の結果、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値を超えない場合に、流体が流路2aを往復していると判定したが、これに限定されない。例えば、図12のグラフL2の情報もメモリ7に記憶しておき、S106において、ヒータ14における電力のしきい値として「W1」及び「W2」の2つを設定する。そして、S107の判定の結果、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値W1を超えない場合、中央制御部8は、S103において算出(検出)されたヒータ14の電力が、S106において設定されたしきい値W2を超えるか否かを判定する。中央制御部8は、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力がヒータ14における電力のしきい値W2を超えない場合に、流体が流路2aを往復しているものとして、流体が流路2aを往復している旨を表示部9に表示(報知)させるようにしてもよい。
【0067】
なお、図12に示したグラフL1,L2の情報は、実験により得られたものであるよりは、中央制御部8により算出された流体の流量と中央制御部8により算出(検出)された電力との関係に基づくものであることが好ましい。これにより、メモリ7に記憶されたグラフL1,L2の情報には、実装された熱式フローセンサ10による周波数の検出誤差(バラツキ)と実装された中央制御部8による電力の検出誤差(バラツキ)とが含まれる。
【0068】
また、本実施形態では、S109において、流体が流路2aを往復している旨を表示部9に表示(報知)するようにしたが、これに限定されない。例えば、渦流量計1が、スピーカ等の音声出力手段や警報ランプ等の発光手段を備え、音声出力手段及び発光手段のうちの少なくとも一方によって、流体が流路2aを往復している旨を報知するようにしてもよい。
【0069】
さらに、処理S100は、熱式フローセンサ10によるセンサ信号の振幅が所定の値を超えた場合に、実行されるようにしてもよい。これにより、流路2a内に発生する流体のゆらぎやセンサ信号における電気ノイズ等の影響を低減することができる。
【0070】
このように、本実施形態における渦流量計1及び流量測定方法によれば、中央制御部8により算出された流体の流量とメモリ7に記憶された振幅電力情報とに基づいて、ヒータ14に供給された電気エネルギーに対応する電力のしきい値が設定され、中央制御部8により算出(検出)された電力と中央制御部8により設定されたしきい値とに基づいて、流体が流路2aを流通しているか否かが判定される。ここで、流体が流路2a内を流通している場合、バイパス流路4の内部に生成される交番の流れによって、ヒータ14から発せられた熱が流体に奪われる。この場合、ヒータ14の温度が周囲温度センサ17により検出された流体の温度よりも所定の温度高くなるように、駆動回路5がヒータ14に電気エネルギーを供給しているので、ヒータ14に供給される電気エネルギーは、ヒータ14が消費した熱量(流体に奪われた熱量)に応じて変化する。そのため、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量、例えば電力は、図12に実線で示すグラフL1のように、流体の流量に対して、依存又は略依存する関係(傾向)を有することが実験で確認されている。
【0071】
一方、流体が流路2a内を往復している場合、ヒータ14付近の流体はその近傍に留まるので、流体が流路2a内を流通している場合と比較して、ヒータ14から流体に奪われる熱は少なくなる。そのため、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する所定の物理量、例えば電力は、図12に破線で示すグラフL2のように、流体の流量に相対的に依存しない(依存度が小さい)関係(傾向)を有することが実験で確認されている。よって、流量電力情報として、流体の流量とヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する電力との関係を示すグラフL1の情報をメモリ7に記憶し、このグラフL1の情報と中央制御部8により算出された流体の流量とに基づいて、電力のしきい値を設定することにより、流体が流路を流通している場合と流体が流路を往復している場合とを識別(判別)することが可能となる。これにより、流体が流路2aを流通している場合に流量を測定(出力)することができるとともに、流体が流路2aを往復している場合に誤って流量を測定(出力)する蓋然性を低減することができ、測定(出力)された流量の信頼性を高めることができる。
【0072】
また、本実施形態における渦流量計1によれば、中央制御部8により算出(検出)されたヒータ14の電力と中央制御部8により設定されたしきい値とに基づいて、表示部9による報知を行うか否かが判定される。これにより、流体が流路2aを往復している場合にその旨を報知することができ、他の機器の不適切な設置を発見することができる。
【0073】
また、本実施形態における渦流量計1によれば、流量電力情報が、中央制御部8により算出された流体の流量と中央制御部8により算出(検出)された電力との関係に基づくものである。これにより、メモリ7に記憶されたグラフL1,L2の情報には、実装された熱式フローセンサ10による周波数の検出誤差(バラツキ)と実装された中央制御部8による電力の検出誤差(バラツキ)とが含まれる。これにより、実際に検出された値に基づく電力のしきい値が設定され、流体が流路2aを流通している場合と流体が流路2aを往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0074】
また、本実施形態における渦流量計1によれば、ヒータ17に供給された電気エネルギーに対応する所定の物理量が、電力、電流、及び電圧のうちの何れかである。これにより、ヒータ14に供給された電気エネルギーに対応する所定の物理量を、容易に検出することができる。
【0075】
[第2実施形態]
図15乃至図19は、本発明の第2実施形態を示すためのものである。なお、特に記載がない限り、前述した実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、図示しない構成部分は、前述した実施形態と同様とする。
【0076】
図15は本発明の第2実施形態における渦流量計の部分断面図であり、図16は図15に示した渦流量計の機能的構成を示すブロック図である。図15に示すように、本実施形態の渦流量計1Aは、円筒状のケース27の内部に配設されている圧力センサ39を備える。圧力センサ39は流体の圧力を検出するためのものであり、図16に示すように、圧力センサ39で検出された流体の圧力は、中央制御部8Aに入力される。
【0077】
図17は、流体の流量とヒータに供給される電力との関係の他の例を示すグラフである。ここで、流体が流路2a内を流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の圧力に応じて変化することが実験で確認されている。すなわち、流体の圧力が通常の圧力、例えば大気圧と同程度である場合、流体の体積流量と、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する電力とは、図17に実線で示すグラフL1のような関係を有する。また、流体の圧力が通常の圧力より高い場合、例えば大気圧の3倍程度である場合、流体の体積流量と、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する電力とは、図17に太一点鎖線で示すグラフL3のような関係を有する。さらに、流体の圧力が通常の圧力より低い場合、例えば大気圧以下である場合、流体の体積流量と、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する電力とは、図15に一点鎖線で示すグラフL4のような関係を有する。
【0078】
本実施形態では、流体の流量と、ヒータ14に供給された電気エネルギーの電力との関係を示す流量電力情報として、図17に示すグラフL1,L3,L4の各情報をメモリ7に記憶するものとする。
【0079】
次に、図15に示した渦流量計が流量を測定(算出)する動作について説明する。
【0080】
図18は、図15に示した渦流量計において流量を測定する動作を説明するフローチャートである。図18に示すように、流量計1Aは、処理S200を実行する。すなわち、まず、圧力センサ39は、流体の圧力を検出し(S201)、図12に示した第1実施形態と同様に、S101〜S105の各ステップを行う。
【0081】
S105の後、中央制御部8は、S105において算出された流体の体積流量と、メモリ7に記憶された流量電力情報とに加え、S201において検出された流体の圧力とに基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定する(S206)。例えば、圧力センサ39で検出された流体の圧力が大気圧より高い3気圧であり、中央制御部8により算出された流体の体積流量が「Q1」である場合に、中央制御部8は、メモリ7に記憶された図17のグラフL1,L3,L4の各情報のうち、グラフL3の情報を用いて、ヒータ14における電力のしきい値として、「W3」を設定する。また、例えば、圧力センサ39で検出された流体の圧力が大気圧より低く、中央制御部8により算出された流体の体積流量が「Q1」である場合に、中央制御部8は、メモリ7に記憶された図17のグラフL1,L3,L4の各情報のうち、グラフL4の情報を用いて、ヒータ14における電力のしきい値として、「W4」を設定する。このように、中央制御部8により算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶されたグラフL1,L3,L4の情報とに加え、更に圧力センサ39により検出された流体の圧力に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体の圧力が反映されたしきい値を設定することが可能となる。
【0082】
S206の後、中央制御部8は、図14に示した第1実施形態と同様に、S107〜S109の各ステップを行う。
【0083】
本実施形態では、流量電力情報として、図17に示した3つのグラフL1,L2,L3の各情報をメモリ7に記憶しておき、S206において、中央制御部8は、圧力センサ39により検出された流体の圧力に基づいて、用いるグラフを変更するようにしたが、これに限定されない。例えば、流量電力情報としてグラフL1の情報のみをメモリ7に記憶しておき、S206において、中央制御部8は、グラフL1の情報を用いて定めたしきい値に、圧力センサ39により検出された流体の圧力をパラメータとする所定の演算(計算)を行ってしきい値を算出し、設定するようにしてもよい。
【0084】
また、流体が流路2aを流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の温度に応じて変化することが実験で確認されている。よって、S206において、中央制御部8は、グラフL1,L2,L3の各情報のうちの何れかを用いて定めたしきい値に、S101において検出された流体の温度をパラメータとする所定の演算(計算)を行ってしきい値を算出し、設定するのが好ましい。このように、中央制御部8により算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶されたグラフL1,L3,L4の各情報と圧力センサ39により検出された流体の圧力とに加え、更に周囲温度センサ17により検出された流体の温度に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体の温度が反映されたしきい値を設定することが可能となる。
【0085】
図19は、流体の流量とヒータに供給される電力との関係の更に他の例を示すグラフである。さらに、流体が流路2aを流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の種類に応じて変化することが実験で確認されている。すなわち、流体が一の種類である場合、流体の流量と、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する電力とは、図19に実線で示すグラフL1のような関係を有する。また、流体が一の種類とは異なる他の種類である場合、流体の流量と、ヒータ14に供給される電気エネルギーに対応する電力とは、図19に二点鎖線で示すグラフL5のような関係を有する。
【0086】
よって、流量電力情報として、図17に示したグラフL1,L3,L4の各情報に代えて、図19に示すグラフL1,L5の各情報をメモリ7に記憶してもよい。この場合、図18に示したS206において、例えば、流体が他の種類である場合に、中央制御部8は、メモリ7に記憶された図19のグラフL1,L5の各情報うち、グラフL5の情報を用いて、ヒータ14における電力のしきい値として、「W5」を設定する。このように、中央制御部8により算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶されたグラフL1,L5の各情報とに加え、流体の種類に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体の種類が反映されたしきい値を設定することが可能となる。
【0087】
なお、流量電力情報として、流体の圧力、流体の温度、流体の種類のうちの少なくとも2つを組み合わせたグラフの情報をメモリ7に記憶するようにしてもよい。あるいは、流体の圧力、流体の温度、流体の種類のうちの少なくとも2つをパラメータとする所定の演算(計算)を行ってしきい値を算出し、設定するようにしてもよい。
【0088】
このように、本実施形態における渦流量計1Aによれば、中央制御部8によって、更に圧力センサ39により検出された流体の圧力に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値が設定される。ここで、流体が流路2aを流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の圧力に応じて変化することが実験で確認されている。よって、中央制御部8により算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶された図17のグラフL1,L3,L4の各情報とに加え、更に圧力センサ39により検出された流体の圧力に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体の圧力が反映されたしきい値を設定することが可能となる。これにより、流体が流路2aを流通している場合と流体が流路2aを往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0089】
また、本実施形態における渦流量計1Aによれば、中央制御部8によって、更に周囲温度センサ17により検出された流体の温度に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値が設定される。ここで、流体が流路2a内を流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の温度に応じて変化することが実験で確認されている。よって、中央制御部8により算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶された図17のグラフL1,L3,L4の各情報とに加え、更に周囲温度センサ17により検出された流体の温度に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体の温度が反映されたしきい値を設定することが可能となる。これにより、流体が流路2aを流通している場合と流体が流路2aを往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0090】
また、本実施形態における渦流量計1Aによれば、中央制御部8によって、更に流体の種類に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値が設定される。ここで、流体が流路を流通している場合に、流体の流量とヒータに供給される電気エネルギーとの関係は、流体の種類に応じて変化することが実験で確認されている。よって、中央制御部8により算出された流体の体積流量とメモリ7に記憶された図19のグラフL1,L5の各情報とに加え、更に流体の種類に基づいて、ヒータ14における電力のしきい値を設定することにより、流体の種類が反映されたしきい値を設定することが可能となる。これにより、流体が流路2aを流通している場合と流体が流路2aを往復している場合とを、より正確に識別(判別)することができる。
【0091】
なお、前述の各実施形態の構成は、組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,1A…渦流量計
2a…流路
3…渦発生体
4…バイパス流路
5…駆動回路
7…メモリ
8,8A…中央制御部
9…表示部
10…熱式フローセンサ
14…ヒータ
17…周囲温度センサ
39…圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流通する流体に渦を発生させる渦発生体と、
前記渦により内部に交番の流れが生成されるバイパス流路と、
前記バイパス流路内に設けられ、前記交番の流れにおける周波数を検出するフローセンサであって、前記流体の温度を検出する周囲温度センサと前記流体を加熱するヒータとを有するフローセンサと、
前記フローセンサにより検出された前記周波数に基づいて、前記流体の流量を算出する算出部と、
前記ヒータの温度が前記周囲温度センサにより検出された前記流体の温度よりも所定の温度高くなるように、前記ヒータに電気エネルギーを供給する供給部と、
前記流体の流量と前記電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す流量物理量情報を記憶する記憶部と、
前記所定の物理量を検出する検出部と、
前記算出部により算出された前記流体の流量と前記記憶部に記憶された流量物理量情報とに基づいて、前記所定の物理量のしきい値を設定する設定部と、
前記検出部により検出された所定の物理量と前記設定部により設定されたしきい値とに基づいて、前記流体が前記流路を流通しているか否かを判定する流通判定部と、を備える
ことを特徴とする渦流量計。
【請求項2】
前記流体が前記流路を往復している旨を報知する報知部と、
前記検出部により検出された所定の物理量と前記設定部により設定されたしきい値とに基づいて、前記報知部による報知を行うか否かを判定する報知判定部と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の渦流量計。
【請求項3】
前記流体の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記設定部は、更に前記圧力センサにより検出された圧力に基づいて、前記しきい値を設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の渦流量計。
【請求項4】
前記設定部は、更に前記周囲温度センサにより検出された前記温度に基づいて、前記しきい値を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の渦流量計。
【請求項5】
前記設定部は、更に前記流体の種類に基づいて、前記しきい値を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の渦流量計。
【請求項6】
前記流量物理量情報は、前記算出部により算出された前記流体の流量と前記検出部により検出された前記所定の物理量との関係に基づくものである
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の渦流量計。
【請求項7】
前記所定の物理量は、電力、電流、及び電圧のうちの何れかである
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の渦流量計。
【請求項8】
流路を流通する流体に渦を発生させる渦発生体と、前記渦により内部に交番の流れが生成されるバイパス流路と、前記バイパス流路内に設けられ、前記交番の流れの周波数を検出するフローセンサであって、前記流体の温度を検出する周囲温度センサと前記流体を加熱するヒータとを有するフローセンサと、前記フローセンサにより検出された前記周波数に基づいて、前記流体の流量を算出する算出部と、前記周囲温度センサにより検出された前記流体の温度よりも前記ヒータの温度が所定の温度高くなるように、前記ヒータに電気エネルギーを供給する供給部と、前記流体の流量と前記電気エネルギーに対応する所定の物理量との関係を示す流量物理量情報を記憶する記憶部と、前記所定の物理量を検出する検出部と、設定部と、流通判定部とを備える渦流量計を用いて、前記流体の流量を測定する方法であって、
前記設定部が、前記算出部により算出された前記流体の流量と前記記憶部に記憶された流量物理量情報とに基づいて、前記所定の物理量のしきい値を設定する設定工程と、
前記流通判定部が、前記検出部により検出された所定の物理量と前記設定部により設定されたしきい値とに基づいて、前記流体が前記流路を流通しているか否かを判定する流通判定工程と、を備える
ことを特徴とする流量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−141268(P2012−141268A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1227(P2011−1227)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)