説明

温室の遮光装置

【課題】 本発明は、各植物に対して栽培に適した光量を維持しながら、遮光される太陽光により発電してエネルギーの有効利用を図ることを課題とする。
【解決手段】 太陽光を遮光する遮光部分を格子状に配置し、該遮光部分以外の透光部分を縦横に所定ピッチおきに配置したパネル(92)を設け、前記透光部分の透光を遮ると共に太陽光を受けて発電するための太陽光発電パネル部分を前記透光部分の配列ピッチおきに配置した遮光カーテン(93)を、前記パネル(92)の下側に重複させて設け、遮光カーテン(93)を移動させて透光部分における太陽光発電パネル部分による遮光面積すなわち透光部分での透光面積を変更する遮光カーテン移動装置を設けた温室の遮光装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温室の遮光装置に関し、植物の栽培の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を遮光すると共に太陽光を受けて発電するための太陽光発電パネル部分(遮光部分)を格子状に配置し、該太陽光発電パネル部分以外の透光部分を縦横に所定ピッチおきに配置したパネルがある。このパネルにより、太陽光を部分的に遮って太陽光の光量を抑えることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−235354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記背景技術によると、季節や時刻あるいは天候等による太陽光の光量の変化に拘らず、常に一定の割合で太陽光の光量を遮ることになるので、栽培に必要な光量が十分に得られずに植物の成育が促進されなかったり、逆に必要以上の光量により植物の蒸散が激しくストレスを生じたりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、各植物に対して栽培に適した光量を維持しながら、遮光される太陽光により発電してエネルギーの有効利用を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、太陽光を遮光する遮光部分(94)を格子状に配置し、該遮光部分(94)以外の透光部分(95)を縦横に所定ピッチおきに配置したパネル(92)を設け、前記透光部分(95)の透光を遮ると共に太陽光を受けて発電するための太陽光発電パネル部分(97)を前記透光部分(95)の配列ピッチおきに配置した遮光カーテン(93)を、前記パネル(92)の下側に重複させて設け、遮光カーテン(93)を移動させて透光部分(95)における太陽光発電パネル部分(97)による遮光面積すなわち透光部分(95)での透光面積を変更する遮光カーテン移動装置を設けた温室の遮光装置とした。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記遮光部分(94)の全部又は一部を、太陽光発電パネルで構成した請求項1に記載の温室の遮光装置とした。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記透光部分(95)を遮光部分(94)間に形成される空間により構成し、遮光カーテン(93)を、透光性のあるシート(96)に太陽光パネル部分(97)を貼り付けた構成とした請求項1又は2に記載の温室の遮光装置とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、パネル92の透光部分95を縦横に所定ピッチおきに配置したので、温室全体に均一な太陽光の光量を供給することができ、各植物に対して均一に太陽光を供給することができ、栽培むらを防止できる。また、季節や時刻あるいは天候等の影響で太陽光の光量が多いときには、遮光カーテン移動装置により太陽光発電パネル部分97による遮光面積を大きくし、該太陽光発電パネル部分97で強力な太陽光を利用して効率良く発電することができ、効率良くエネルギーの有効利用が図れると共に、透光部分95での透光面積を小さくし、各植物に対して栽培に適した光量を維持して必要以上の光量により植物の蒸散が激しくストレスを生じたりするのを防止し、良好な栽培が行える。
【0011】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、パネル92の遮光部分94の全部又は一部にも太陽光発電パネルを構成したので、太陽光発電面積を増大できて発電量を増大できると共に、遮光カーテン93の太陽光発電パネル部分97による遮光が零又は殆どないとき(透光部分95全面又は略全面で透光するとき)でも、パネル92の遮光部分94で発電することができ、安定的に温室に電力を供給することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、透光部分95を遮光部分94間に形成される空間により構成したので、太陽光が透光部分95を通って遮光カーテン93の太陽光発電パネル部分97に直接的に供給され、該太陽光発電パネル部分97により発電を効率良く行える。また、遮光カーテン93を、透光性のあるシート96に太陽光パネル部分97を貼り付けた低コストな構成としたので、栽培コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】栽培施設を判り易く示す平面図
【図2】養液供給装置の養液移送系統を判り易く示す図
【図3】通風管を示す図
【図4】暖房設備を判り易く示す図
【図5】移動用帯体を示す正面図
【図6】移動用帯体を示す平面図
【図7】栽培室における遮光装置の配置を判り易く示す図
【図8】パネルを示す平面図
【図9】遮光カーテンの一部を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
【0015】
図1は栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、暖房機や加湿機等により温度及び湿度等の室内環境が管理される温室である栽培室1と、該栽培室1に隣接する出荷室2とを備えている。前記栽培室1内の中央には作業者又は作業移動車(作業台車)3あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路4を設けており、このメイン通路4は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路4の両側の側方位置には、栽培条となる栽培ベッド5を多数列配置した作物を栽培するための栽培スペース6を構成している。尚、前記栽培ベッド5はロックウールで形成され、出荷室2内の養液供給装置7から各栽培ベッド5へ養液が供給される構成となっている。また、メイン通路4の両端には開閉扉を備える栽培室1への出入り口8を設け、一方の出入り口8を介して隣接する出荷室2へ行き来できる構成となっている。尚、他方の出入り口8は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、作業移動車をメイン通路4から各栽培条(各栽培ベッド5)の間のサブ通路9に移動させ、該サブ通路9で栽培条(栽培ベッド5)に沿って作業移動車3を移動させながら栽培条に対する各種作業を行うことができる。
【0016】
前記出荷室2内には、前述した養液供給装置7と、収穫されたトマト等の収穫物(果実)を重量や大きさあるいは等級別に選別する選別装置10とを備えている。尚、該選別装置10が、栽培された作物を出荷前に処理する前処理装置となる。選別装置10は、収穫物を搬送して選別する選別コンベア11と、該選別コンベア11の両側の側方に設けられた各階級毎の収穫物収容部12とを備えて構成され、選別コンベア11から各収穫物収容部12へ収穫物を供給して各階級に選別する構成となっている。尚、前記選別コンベア11は、平面視でL字状に屈曲した構成となっている。また、各々の収穫物収容部12には収穫物を収容する収容箱を設けて、この収容箱ごとに収穫物を出荷すればよい。
【0017】
栽培過程において、サブ通路9で葉取り作業(例えば、ミニトマトの場合では、1枝に3枚の葉がある状態が良くて、それ以上に葉がついた場合は取り除く)や芽欠き作業をしたとき、葉や芽の重量が多い場合は、果実が生育する環境ではなくて、葉や茎が生育する環境になっているのが原因であるから、栽培室(温室)1の環境を下記のようにすることが望ましい。
1.温度を上げる。
2.昼と夜の温度差を5度くらいに大きくする。
3.養液温度を上げる。
4.湿度を下げる。
5.養液のEC値を上げる。
6.灌水回数を少なくして栽培ベッド5を乾燥ぎみにする。
【0018】
すると、葉や茎が生育する環境から果実が生育する環境になり、収穫が増える。
【0019】
また、サブ通路9で腐れ果取り作業(生育せずに腐ってしまった果実を取り除く)をしたとき、腐れ果の重量が多い場合は、栽培室1の環境を下記のようにすることが望ましい。
1.天井部に設けた遮光装置により遮光割合を高くすると共に遮光時間を長くする。
2.養液のEC値を下げる。
3.養液の灌水回数を多くする。若しくは、1回の養液供給量を増やす。
4.カルシウムを葉面に散布する。若しくは、養液中のカルシウム濃度を上げる。
5.湿度を上げる。
【0020】
すると、腐れ果の発生が少なくなって、収穫が増える。
【0021】
栽培条(栽培ベッド5)の上側には、該栽培条に沿う誘引ワイヤ80を各栽培条ごとに左右に2本設けている。栽培条に一列に並ぶ栽培植物(栽培株)は、左右の誘引ワイヤ80により交互に振り分けて誘引される構成となっており、誘引ワイヤ80から垂れ下がる誘引紐81により誘引される。各栽培植物(栽培株)が効率良く受光するためには各栽培植物(栽培株)の間隔が栽培室1内全体にわたって略同等となるのが理想であり、そのために、誘引ワイヤ80はサブ通路9の上方に位置しており、栽培植物がサブ通路9上にはみ出るようにしている。ところが、サブ通路9で作業移動車3を移動させながら栽培条に対する各種作業を行うとき、栽培植物がサブ通路9上にはみ出ていると、作業移動車3の移動の邪魔になり、作業が行いにくいおそれがある。そこで、誘引ワイヤ80よりも低位で栽培ベッド5よりも上位で作業移動車3と同じ高さとなる位置には、各栽培条ごとに左右に振り分けられた栽培植物を栽培ベッド5側へ移動させる移動用帯体82を設けている。この移動用帯体82は、栽培植物の側方で該栽培植物に対してサブ通路9側に栽培条に沿って延設され、一端が栽培条の端部に固定され、他端は帯体巻取りモータ83で駆動する帯体巻取り装置84により巻き取りあるいは繰り出しできる構成となっており、帯体巻取りモータ83で巻き取りあるいは繰り出しすることにより、栽培条に沿う帯体の長さを変更できる。これにより、通常栽培時には、帯体巻取り装置84により帯体を繰り出して栽培条に沿う帯体を長くすることにより、栽培植物は移動用帯体82にあまり規制されずにサブ通路9上にはみ出る位置となる。作業移動車3による作業時には、作業移動車3がサブ通路9に進入してきたことを移動用帯体82に設けた進入検出センサ85により検出すると、帯体巻取り装置84により帯体を巻き取って栽培条に沿う帯体を短くすることにより、栽培植物は移動用帯体82により栽培ベッド5側に寄せられ、作業移動車3の移動スペースを確保する。これにより、作業移動車3がサブ通路9に進入するのに連動して移動用帯体82が自動的に作動し、栽培植物が作業移動車3の移動の邪魔になるのを防止するため、作業移動車3の移動スペースの確保に作業者の手を煩わせることを抑え、作業性が向上する。尚、移動用帯体82は、内部に進入検出センサ85の検出子となるワイヤを備えている。尚、進入検出センサ85は防除作業車がサブ通路9に進入してきた場合も同様に検出でき、移動用帯体82は、作業移動車3だけでなく、防除作業車がサブ通路9に進入するのに連動して作動する。
【0022】
サブ通路9上において、作業移動車3は作業者が作業の進捗状況に応じて走行操作を行って適宜移動させる構成であるが、防除作業車は自動走行しながら自動的に防除する構成である。防除作業車は、サブ通路9を往復走行することになるが、防除する栽培条の防除の必要量に応じて、往復走行における片道走行時にのみ防除作業を行う片道防除状態と、往復走行で防除作業を行う往復防除状態と、同じサブ通路9を2回往復走行させてその2回の往復走行で防除作業を行う2往復防除状態とに切替できる構成となっている。これにより、必要以上の防除による栽培植物への悪影響を防止すると共に、病害虫の発生度合の高い栽培条において防除効果の向上を図ることができる。
【0023】
ところで、養液供給装置7は、図2に示すように、養液を貯留する第一タンク41並びに第二タンク42、硝酸を貯留する酸タンク43及び原水を貯留する原水タンク44を備え、これらのタンク41,42,43,44内に貯留する液が各主開閉バルブ45,46,47,48を介して混合装置49に供給され、該混合装置49で混合される構成となっている。尚、前記第一タンク41と第二タンク42とは、互いに肥料成分の異なる養液を貯留している。第一タンク41、第二タンク42並びに酸タンク43から混合装置49への供給経路(供給パイプ50,51,52)において、前記各主開閉バルブ45,46,47の供給上手側には、各々混合前のフィルター53,54,55を設けている。更に、該混合前フィルター53,54,55の供給上手側には、各々副開閉バルブ56,57,58を設けている。混合装置49で混合された養液は、養液ポンプ59及び混合後のフィルター60を介して給液パイプ61により栽培室1内の各栽培ベッド5へ供給される。
【0024】
そして、酸タンク43からの供給経路(供給パイプ52)において、副開閉バルブ58及び混合前フィルター55より供給下手側で主開閉バルブ47より供給上手側には、分岐パイプ62(分岐経路)を接続している。この分岐パイプ62(分岐経路)は、第一タンク41及び第二タンク42からの供給経路(供給パイプ50,51)における副開閉バルブ56,57及び混合前フィルター53,54より供給下手側で主開閉バルブ45,46より供給上手側の各々の位置に接続され、酸タンク43内の硝酸を第一タンク41及び第二タンク42からの供給経路(供給パイプ50,51)へ供給可能に構成している。尚、前記分岐パイプ62の中途部には、電磁式の分岐用の開閉バルブ63を設けている。第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51において、分岐パイプ62の接続部より供給下手側で主開閉バルブ45,46より供給上手側には、供給パイプ50,51内の流量を検出する流量センサ64,65を各々設けている。また、養液ポンプ59及び混合後のフィルター60より供給下手側には栽培室1内の各栽培ベッド5すなわち給液パイプ61へ液を供給せずに排出するための排出パイプ66を接続しており、該排出パイプ66に設けた電磁式の排出用の開閉バルブ67により、養液ポンプ59から吐出する液を給液パイプ61へ供給する給液状態と排出パイプ66を介して外部に排出する排出状態とに切替可能に構成している。
【0025】
従って、栽培室1内の各栽培ベッド5へ養液を供給する通常状態では、分岐用開閉バルブ63及び排出用開閉バルブ67を閉じ、混合装置49で混合された養液を給液パイプ61へ供給する。この養液供給時に、各々の流量センサ64,65により第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51内の流量を逐次検出する。そして、養液供給時の供給パイプ50,51内の流量が所定値以下になった場合は、栽培室1内の各栽培ベッド5への養液供給を停止しているときに、制御装置により自動的に分岐用開閉バルブ63及び排出用開閉バルブ67を開いて養液ポンプ59を駆動し、酸タンク43内の硝酸を分岐パイプ62を介して第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51へ供給し、該硝酸を排出パイプ66を介して外部に排出する。このとき、第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51において各々の副開閉バルブ56,57を自動的に閉じ、前記供給パイプ50,51に供給される硝酸が該供給パイプ50,51を逆流して第一タンク41及び第二タンク42へ供給されないようにしている。よって、第一タンク41及び第二タンク42からの供給パイプ50,51において、養液中の不溶解物や不純物が詰まるおそれがあるが、流量センサ64,65により供給パイプ50,51内の詰まりを検出すると自動的に該供給パイプ50,51内へ洗浄液となる硝酸を注入して該供給パイプ50,51を自動洗浄することができ、従来のように供給パイプを分解して該パイプ内を洗浄するようなメンテナンスの手間が省けて作業能率が向上する。また、洗浄液(硝酸)は、排出パイプ66を介して外部に排出され、栽培ベッド5に直接供給されないので、上記の洗浄により植物の成育を阻害することがない。
【0026】
また、養液ポンプ59の供給下手側で混合後のフィルター60の供給上手側には、養液ポンプ59から吐出される養液を分岐して養液ポンプ59の供給上手側で混合装置49の供給下手側に戻す循環経路(循環パイプ68)を接続している。この循環経路(循環パイプ68)には電磁式の戻り用の開閉バルブ69を設けており、混合後フィルター60の供給下手側に設けた圧力センサ70により給液パイプ61への養液供給における圧力変動が大きいことを検出すると、制御装置により自動的に前記戻り用の開閉バルブ69を開いて養液を循環経路(循環パイプ68)を介して循環させ、給液パイプ61内の圧力を安定させる構成となっている。これにより、養液ポンプ59起動時やエアがみ等によるウォーターハンマー現象を防止すると共に、養液ポンプ59供給下手側の配管(給液パイプ61)の破損を防止できる。また、前記循環経路(循環パイプ68)には循環される養液の温度を検出する温度センサ71を設けており、該温度センサ71により養液の温度が所定値以上に上昇したことを検出すると、制御装置により強制的に養液ポンプ59を停止させて循環パイプ68で養液を循環させないようにして養液の温度低下を促すように構成している。これにより、養液の熱で配管内のバルブやパッキン等の構造物が溶解して破損するようなことを防止できる。従来、給液パイプ内の養液の圧力調整のために、栽培室内の各栽培ベッドへ養液を供給する給液パイプを介する長い循環経路を設けて該循環経路の養液の戻り経路部分に圧力調整バルブを設けたものがあるが、循環により養液の温度が上昇すると、養液の熱で配管内のバルブやパッキン等の構造物が溶解して破損したり養液の熱で栽培作物に悪影響を与えたりするおそれがある。
【0027】
また、栽培ベッド5からの排液は、原水タンク44に回収され、栽培ベッド5への給液に再利用される。栽培室1内には原水タンク44を通る通風管27を設け、ファン28の駆動により通風管27内に通風する。これにより、栽培室1内の空気が積極的に温度の低い原水タンク44に当たって結露し、栽培室1内の空気を簡易的に除湿できると共に、後述する暖房設備により暖房された栽培室1内の空気で原水タンク44内の原水及び養液を昇温させることができる。尚、結露した水は、通風管27に設けた排水口29を介して栽培室1外へ排出される。よって、後述する天窓制御における天窓30が開く頻度又は天窓30の開度を低く抑えることができるので、栽培室1内の室温低下を抑えることができ、暖房設備の暖房の負荷を抑えて省エネルギー化が図れる。
【0028】
原水タンク44には、養液の肥料濃度を検出するECセンサ86と、養液のペーハー値を検出するPHセンサ87とを備えている。このECセンサ86及びPHセンサ87の検出値に基づき、混合装置49で混合される養液が所望の肥料濃度及びペーハー値となるよう、制御装置のメインの養液供給コントローラ88により各主開閉バルブ45,46,47,48を制御する構成となっている。しかしながら、メインの養液供給コントローラ88が故障すると、各主開閉バルブ45,46,47,48を作動させることができなくなり、養液を各栽培ベッド5へ供給できなくなり、栽培に悪影響を与えることになってしまう。そこで、制御装置には予備制御盤89を設けており、メインの養液供給コントローラ88が故障したときには、各主開閉バルブ45,46,47,48の制御を前記予備制御盤89により行える構成とし、該予備制御盤89の制御に切り替えると、各主開閉バルブ45,46,47,48を予め設定した時間のみ開いて養液を作成し、養液を各栽培ベッド5へ簡易的に供給できる。これにより、供給する養液の肥料濃度やペーハー値の制御精度は低下するが、栽培ベッド5へ養液が供給できなくなるのを一時的に回避でき、植物が枯れるような大きな被害を回避することができる。予備制御盤89により養液供給制御を行っている間にメインの養液供給コントローラ88を修理し、メインの養液供給コントローラ88が正常に復帰すれば、メインの養液供給コントローラ88による養液供給制御に切り替えればよい。尚、予備制御盤89により養液供給制御において、予め設定される各主開閉バルブ45,46,47,48の開時間のパターンを複数備え、ECセンサ及びPHセンサの検出値に応じて前記パターンを切り替える構成としてもよい。
【0029】
この栽培室1の暖房設備について説明すると、化石燃料である重油又は灯油等の石油を燃焼させた熱を利用して温水を加温する石油ボイラーである第一加温装置31と、化石燃料以外の燃料である植物の残渣やおがくず等の製材副産物を圧縮成形した木質ペレット等を燃焼させた熱を利用して温水を加温する木質ペレットボイラーである第二加温装置32と、第一加温装置31及び第二加温装置32に温水を供給する加温管33と、加温管33により加温された温水をポンプ34へ供給するための第一供給管35と、ポンプ34からの温水を温室内の暖房用管37へ供給するための第二供給管36と、暖房用管37から加温管33へ温水を戻すための戻り管38を設け、加温管33、第一供給管35、第二供給管36、暖房用管37及び戻り管38を経由する温水の循環経路を構成している。尚、第一加温装置31、第二加温装置32及び加温管33は栽培室1外の管理室25内に配置され、第一加温装置31及び第二加温装置32が加温管33に沿って直列状に配置され、暖房用管37は栽培室1内の各サブ通路9に沿って配置されている。また、第一供給管35と戻り管38を繋ぐバイパス管72を設け、加温管33を経由せずにバイパス管72、第一供給管35、第二供給管36、暖房用管37及び戻り管38を経由する温水の循環経路を構成し、バイパス管72と第一供給管35の接続部には、加温管33側から合流する流量の割合とバイパス管72側から合流する流量の割合を調節する流量割合調節可能な切替弁(三方弁)73を設けている。尚、第二供給管36には、該第二供給管36を流れる温水の温度を検出する温水温度センサ75を設けている。栽培室1には、栽培室1内の室温を検出する室温センサ74と、栽培室1内の湿度を検出する湿度センサ76を設けている。
【0030】
栽培室1の環境を制御する制御部(コントローラ)26は、栽培室1外の管理室25内に配置され、温水温度センサ75、室温センサ74及び湿度センサ76の検出値を入力し、第一加温装置31、第二加温装置32、ポンプ34、切替弁73及び栽培室1の天窓30を開閉する天窓開閉モータ77へ作動信号を出力する。また、例えば昼間は高めに夜間は低めにというように一日の時間帯に応じて目標室温を演算して設定すると共に、設定される目標温度に対応して目標温度が高いほど低くなるように目標湿度を演算して設定する。尚、目標温度及び目標湿度は、上述の一日の時間帯に基づく設定方法以外に、作物の栽培過程や季節等に基づいて設定値を変更したり、作業者が一定の設定値に設定したりしてもよい。そして、目標湿度よりも湿度センサ76で検出される検出湿度が高くなると、天窓開閉モータ77を作動させ、天窓30を開く(天窓制御)。尚、目標湿度と検出湿度の差が大きくなるにつれて天窓30の開度が比例して大きくなるよう、天窓開閉モータ77が作動する。
【0031】
尚、降雨の有無及び降雨の強さを検出する降雨センサ90を設けており、降雨センサ90により降雨を検出すると、天窓制御における天窓30の最大開度を規制する構成となっている。降雨の強さが強いほど前記最大開度が小さく設定され、降雨が所定以上の強さであれば前記最大開度が零となり、天窓30が開かない。尚、降雨センサ90は、単位時間当たりの降雨量を検出する構成としたり、あるいは降雨の衝撃を検出する構成とすることにより、降雨の強さを検出することとができる。これにより、天窓制御により栽培室1内の環境を良好に制御する構成としながら、天窓30から入る降雨により栽培室1内の温度や湿度等の環境が大きく変化するのを適確に防止できる。尚、前記最大開度を風下側の天窓30と風上側の天窓30とで異ならせ、風下側の天窓30の最大開度が風上側の天窓30の最大開度よりも大きく設定してもよい。
【0032】
また、目標室温よりも室温センサ74で検出される検出室温が低いとき、目標室温に基づいて第二供給管36を流れる温水の目標温度を演算する。尚、目標室温が高くなるにつれて一次関数的に(目標室温に拘らず目標室温の一定の変化量に対する前記目標温度の変化割合が同一となる演算式に基づいて)前記目標温度が高く設定される。更に、温水温度センサ75により検出される温水の検出温度が目標温度よりも低いと、検出温度と目標温度の差が大きくなるにつれて一次関数的に(前記差に比例して)加温管33側から合流する流量の割合が多くなるように加温管33側からの設定流量割合が演算されて設定される。従って、目標室温よりも室温センサ74で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低いとき、検出温度と目標温度の差が大きいほど、加温管33側から合流する流量の割合が多くなるように設定される加温管33側からの設定流量割合に基づいて切替弁73が作動する。また、前記加温管33側からの設定流量割合が予め設定される第一の所定の割合(0%)以下のとき、第一加温装置31及び第二加温装置32の燃焼運転を共に停止させる。目標室温よりも室温センサ74で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低いとき、加温管33側からの設定流量割合が予め設定される第一の所定の割合(0%)を超過し予め設定される第二の所定の割合(100%)未満のとき、第二加温装置32のみを燃焼運転して第一加温装置31の燃焼運転を停止させる。目標室温よりも室温センサ74で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低いとき、加温管33側からの設定流量割合が予め設定される第二の所定の割合(100%)以上のとき、第一加温装置31及び第二加温装置32を共に燃焼運転する。尚、前述した割合とは、第二供給管36を流れる合流した合流量に対する加温管33側からの流量の割合である。尚、室温センサ74で検出される検出室温や温水温度センサ75により検出される温水の検出温度に関係なく、常にポンプ34を作動させる。
【0033】
従って、第二供給管36を流れる温水の温度が高くなって、該温水の検出温度と温水の目標温度の差が小さくなると、切替弁73が作動して加温管33側から合流する流量の割合が少なくなると共にバイパス管72側から合流する流量の割合が多くなり、第一加温装置31又は第二加温装置32で加温される温水が第二供給管36ひいては暖房用管37に供給される量を抑え、熱量を無駄に消費しないようにし、省エネルギー化が図れる。第二供給管36を流れる温水の温度が低くなって、該温水の検出温度と温水の目標温度の差が大きくなると、切替弁73が作動して加温管33側から合流する流量の割合が多くなると共にバイパス管72側から合流する流量の割合が少なくなり、第一加温装置31又は第二加温装置32で加温される温水が第二供給管36ひいては暖房用管37に多量に供給されるようにし、栽培室(温室)1を能率良く暖房できる。また、加温管33側からの設定流量割合が第二の所定の割合よりも小さく設定されるときは第二加温装置32のみを燃焼運転して第一加温装置31の燃焼運転を停止させ、限りある資源である化石燃料の消費を抑え、省エネルギー化が図れる。そして、加温管33側からの設定流量割合が所定の割合よりも大きく設定されるときは第一加温装置31及び第二加温装置32を共に燃焼運転し、温水の加温量を増大させて栽培室(温室)1を能率良く暖房できる。尚、目標湿度よりも湿度センサ76で検出される検出湿度が高くなって天窓30を開けば、栽培室1内の室温が低下するが、それにより目標室温よりも室温センサ74で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低くなれば、前述と同様に暖房制御する。
【0034】
よって、化石燃料以外の燃料(廃棄物や副産物等)を燃焼させた熱を利用して加温する加温装置を利用して温室を効率良く暖房できると共に、省エネルギー化が図れる。
【0035】
異なる暖房設備として、温泉水利用型(地熱利用型)の暖房設備を利用することもできる。この暖房装置は、前述の第一加温装置31、第二加温装置32及び加温管33の代わりに、湧き出る温泉水(水温:摂氏約70度〜80度)を貯留する温泉水タンクを設け、該温泉水タンク内の温泉水をポンプ34及び第二供給管36を介して暖房用管37に供給して暖房する構成となる。前述と同様に、温水温度センサ75の温水の温度検出に基づいて切替弁73を制御する。尚、検出室温が目標室温よりも所定以上低いときのみポンプ34を駆動する構成とし、温泉水の熱を無駄に消費しないようにする。
【0036】
また、温水流路におけるポンプ34の直ぐ下手側に温水流で駆動する水力発電機を設け、その発電した電力を前記ポンプ34を始め栽培施設に利用する構成とすることもできる。これにより、エネルギーの有効利用が図れる。また、温泉水には硫黄分が含まれているため、温水配管が腐食し易くなるが、温水流路(望ましくはポンプ34の直ぐ上手側)に硫黄除去装置を設けて温泉水から硫黄を除去した温水を供給する構成とすれば、温水配管の腐食を抑えることができる。尚、硫黄除去装置により取り出される硫黄は、化学薬品メーカー等に売却したり、養液供給装置7へ供給する肥料として使用したりすることができ、コストパフォーマンスが向上する。
【0037】
また、栽培室1内には、霧を噴霧させて細霧冷房を行う細霧冷房装置を設けている。この細霧冷房装置は、細霧の噴霧とこの噴霧の休止とを交互に行って冷房するものであり、検出室温が目標室温よりも高いとき作動する構成となっている。検出室温と目標室温との差が大きいほど、噴霧する噴霧時間及び噴霧を休止する休止時間が長く設定される。例えば、目標室温が20度のとき、検出室温が25度未満であれば細霧冷房装置は作動しないが、検出室温が25度以上30度未満であれば噴霧時間を50秒、休止時間を250秒に設定し、検出室温が30度以上35度未満であれば噴霧時間を60秒、休止時間を300秒に設定し、検出室温が35度以上であれば噴霧時間を80秒、休止時間を350秒に設定して、細霧冷房を行う。これにより、栽培室1内が高温で細霧冷房の必要度が高いときには、噴霧時間を長くして室温の低下を図りつつ、休止時間を長くして栽培室1内の湿度過多も抑え、湿度過多による植物の同化作用の低下や病害の発生を防止できる。
【0038】
尚、湿度センサ76による検出湿度に応じて、検出湿度が高いほど噴霧時間が短くなるように該噴霧時間を補正する構成としてもよい。例えば、検出湿度が所定値(70%)以上であれば検出室温に拘らず細霧冷房を行わず、検出湿度が40%未満であれば噴霧時間の最大値を90秒に設定し、検出湿度が40%以上50%未満であれば噴霧時間の最大値を80秒に設定し、検出湿度が50%以上60%未満であれば噴霧時間の最大値を70秒に設定し、検出湿度が60%以上70%未満であれば噴霧時間の最大値を60秒に設定して、細霧冷房を行うことができる。これにより、栽培室1内の湿度過多も抑えることができる。
【0039】
異なる冷房装置として、栽培室1内に冷却水を流水する冷却配管を設け、冬場に降雪し貯留した雪を利用し、この雪解け水を前記冷却配管に流して栽培室1内を冷房する構成とすることもできる。尚、雪の貯留所からの雪解け水が栽培施設近くの水路を流れる構成とし、前記水路から前記冷却配管へポンプ等を介して雪解け水を供給する構成とすればよい。このとき、水路の流水で駆動する水力発電機を設け、その発電した電力を栽培施設に利用する構成とすることで、エネルギーの有効利用が図れる。
【0040】
遮光装置91について説明すると、栽培室1の天井部に、上側のパネル92と下側の遮光カーテン93とを備えている。このパネル92及び遮光カーテン93は、略水平で互いに近接して設けられている。パネル92は、太陽光を遮光する遮光部分94を格子状に構成した樹脂性のパネルであり、遮光部分94間に形成される空間により遮光部分以外となる透光部分95を構成し、該透光部分95を縦横に所定ピッチおきに配置している。このパネルは、栽培室1の天井部に移動しないように固定されている。尚、上記透光部分95は、空間により構成したが、ガラス板や樹脂板等の透明素材にて構成することもできる。
【0041】
遮光カーテン93は、透光性のあるシートとなる透明又は半透明のフィルム96の上に、複数の帯状の太陽光発電パネル部分97を貼り付けた構成となっている。太陽光発電パネル部分97は、太陽光を受光して発電する構成であり、パネル92の透光部分95の透光を遮るべく、前記透光部分95の幅と同じか又は若干広い幅に構成され、該透光部分95の配列ピッチに合わせて配置される。前記の幅とは、複数の帯状の太陽光発電パネル部分97が配列される方向の幅である。尚、前記した太陽光発電パネル部分97の幅は、透光部分95の幅より小さくし、太陽光発電パネル部分97による遮光を最大にしても透光部分95の透光を完全に遮らない構成としてもよい。
【0042】
遮光カーテン93の一端は、スプリング98を介して横移動可能に取り付けられている。遮光カーテン93の他端には、移動用のシリンダ(アクチュエータ)99を取り付けている。従って、前記スプリング98に抗して前記シリンダ99を作動させることにより、遮光カーテン93を移動させ、透光部分95における太陽光発電パネル部分97による遮光面積すなわち透光部分95での透光面積を変更する構成となっており、これらのスプリング98及びシリンダ99により遮光カーテン移動装置を構成している。尚、遮光カーテン93は、シリンダ99により複数の帯状の太陽光発電パネル部分97が配列される方向に移動する構成であり、その移動ストロークは太陽光発電パネル部分97の幅と同等すなわち透光部分95の透光を完全に遮ることができるストロークに設定している。 尚、前記移動ストロークは、透光部分95の透光を完全に遮らない程度の小さいストロークに設定してもよい。
【0043】
そして、栽培室1内に設けた日射量センサ100の検出に基づき、実測の日射量と予め設定した目標日射量との差に応じて、実測の日射量が目標日射量よりも上回るときは、制御部(コントローラ)26により、遮光装置91による遮光割合(太陽光発電パネル部分97による遮光面積)が大きくなるようにシリンダ99に出力して遮光カーテン93を移動させる。尚、この遮光カーテン93の移動制御は、日中の所定時刻内において実行される。目標日射量は、制御する時刻内において一定値に設定してもよいが、例えば朝夕は低く昼は高くなるように時刻に応じて変更される構成としてもよい。また、日射量センサ100は、日射量の検出精度を高めるために、栽培室1内に複数設けた構成としてもよい。また、遮光装置91は、室温センサ74で検出される検出室温に基づき、検出室温が目標温度よりも高いときに遮光割合(太陽光発電パネル部分97による遮光面積)が大きくなるように遮光カーテン93を移動させる構成としてもよい。尚、腐れ果の発生等の栽培状況に応じて、作業者が必要に応じて手動調整装置を操作することにより、手動で遮光装置91の遮光割合を変更できる構成ともしている。
【0044】
太陽光発電パネル部分97による遮光面積が増大すると、該太陽光発電パネル部分97による発電量が増大する。発電された電力は、栽培施設内において、栽培室1の制御部(コントローラ)26、該制御部(コントローラ)26で制御される第一加温装置31、第二加温装置32、ポンプ34、切替弁73及び天窓開閉モータ77等の各種装置、作業移動車3、養液供給装置7並びに選別装置10等に供給される。
【0045】
以上により、この遮光装置91は、太陽光を遮光する遮光部分94を格子状に配置し、該遮光部分94以外の透光部分95を縦横に所定ピッチおきに配置したパネル92を設け、前記透光部分95の透光を遮ると共に太陽光を受けて発電するための太陽光発電パネル部分97を前記透光部分95の配列ピッチおきに配置した遮光カーテン93を、前記パネル92の下側に重複させて設け、遮光カーテン93を移動させて透光部分95における太陽光発電パネル部分97による遮光面積すなわち透光部分95での透光面積を変更する遮光カーテン移動装置を設けた構成となっている。
【0046】
よって、パネル92の透光部分を縦横に所定ピッチおきに配置したので、温室全体に均一な太陽光の光量を供給することができ、各植物に対して均一に太陽光を供給することができ、栽培むらを防止できる。また、季節や時刻あるいは天候等の影響で太陽光の光量が多いときには、遮光カーテン移動装置により太陽光発電パネル部分97による遮光面積を大きくし、該太陽光発電パネル部分97で強力な太陽光を利用して効率良く発電することができ、効率良くエネルギーの有効利用が図れると共に、透光部分95での透光面積を小さくし、各植物に対して栽培に適した光量を維持して必要以上の光量により植物の蒸散が激しくストレスを生じたりするのを防止し、良好な栽培が行える。
【0047】
また、パネル92の透光部分95を遮光部分94間に形成される空間により構成し、遮光カーテン93を、透光性のあるシートに太陽光パネル部分97を貼り付けた構成としている。
【0048】
よって、透光部分95を遮光部分94間に形成される空間により構成したので、太陽光が透光部分95を通って遮光カーテン93の太陽光発電パネル部分97に直接的に供給され、該太陽光発電パネル部分97により発電を効率良く行える。また、遮光カーテン93を、透光性のあるシートに太陽光パネル部分97を貼り付けた低コストな構成としたので、栽培コストを低減できる。
【0049】
また、パネル92の遮光部分94の全部又は一部を、太陽光発電パネルで構成することもできる。これにより、太陽光発電面積を増大できて発電量を増大できると共に、遮光カーテン93の太陽光発電パネル部分97による遮光が零又は殆どないとき(透光部分全面又は略全面で透光するとき)でも、パネル92の遮光部分94で発電することができ、安定的に栽培施設に電力を供給することができる。
【0050】
また、前述のような太陽光発電パネルに代えて、太陽光を受けて水を温める太陽熱パネルを使用することができる。太陽光のエネルギーを栽培室1内の暖房に使用する場合は、太陽熱パネルを使用した方がエネルギー効率が良くなる。尚、前述のパネル92又は遮光カーテン93において、太陽光発電パネルと太陽熱パネルとの2種を設け、両者を切替可能にし、遮光が必要な昼時は、概ね栽培室1内の暖房は不要であるので太陽光発電パネルを使用し、気温が低い朝夕時は、暖房を必要とすることが多いので太陽熱パネルを使用すればよい。この太陽光発電パネルと太陽熱パネルとの切替は、時刻に応じて自動的に制御される構成とすればなおよい。また、時刻に応じて太陽の向きが異なるため、太陽光発電パネル又は太陽熱パネルが太陽光を効率良く受光するよう、時刻に合わせてパネル92の向きを自動的に変更して制御する構成としてもよい。このとき、遮光カーテン93もパネル92に合わせて向きを変更する構成とすればよい。
【0051】
前述のような栽培に使用する野菜等の苗は、一般的にポット等により苗株毎に育苗されるのであるが、水稲用の苗の育苗は、苗箱に床土を供給し播種し覆土してマット状に苗を育苗する。そして、このマット状苗を移植機(田植機)にて圃場に移植するのであるが、マット状苗がむらなく均一に育苗されていないと、移植において欠株を生じるおそれがある。そこで、苗箱に床土を供給した後、凹凸の付いた吸水性のある板紙を床土上面に敷設し、この板紙上から播種することにより、種子が板紙の凹部に供給されて条播状に播種され、移植における欠株を防止することができる。尚、板紙上への播種後は、鎮圧ローラにより鎮圧して播種した種子を板紙の凹部に落ち着かせ、灌水し、覆土する。通常は播種機の溝付けローラで床土上面に溝を付け、この溝に播種されるようにするが、特に床土が粘土質で前記溝付けローラに床土が付着してうまく溝付けが行えない場合に、前記板紙を使用すると有効である。尚、板紙の凹凸は、三角形状に尖った形状でも四角形状でもよい。板紙の凹部には、灌水した水が透水可能な孔を備え、過湿による成育障害を防止している。また、板紙の凹凸の高さを覆土の厚みに設定しておけば、播種後の覆土量を板紙の上端まで行えばよく、覆土量の目安となる。一般的に、覆土の厚みは10mm以下程度であるから、板紙の凹凸の高さ(板紙の厚み)を鎮圧ローラによる鎮圧を考慮して覆土の厚みより若干大きい15mm以下程度にすればよい。板紙は、育苗と共に灌水等の水分により自然分解される。この板紙を使用する播種を播種機にて行う場合、播種機において苗箱を搬送するコンベア上に配置される床土供給装置と播種装置との間のスペースを広くとり、このスペース間で作業者が板紙を敷設できるようにすればよい。また、播種装置の下方でコンベア上の苗箱に振動を与える振動装置を設け、播種した種子が板紙の凹部に確実に供給される構成としてもよい。
【0052】
尚、上述の板紙は凹凸を設けた構成としたが、平面状の板紙上面に複数の筋状に接着剤を貼り付け又は塗布し、種子が接着剤で接着されることにより板紙に条播状に播種される構成としてもよい。この場合も、前記振動装置を設ければ、種子を接着剤へ確実に接着させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1:栽培室(温室)、91:遮光装置、92:パネル、93:遮光カーテン、94:遮光部分、95:透光部分、96:シート、97:太陽光発電パネル部分、98:スプリング、99:シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を遮光する遮光部分(94)を格子状に配置し、該遮光部分(94)以外の透光部分(95)を縦横に所定ピッチおきに配置したパネル(92)を設け、前記透光部分(95)の透光を遮ると共に太陽光を受けて発電するための太陽光発電パネル部分(97)を前記透光部分(95)の配列ピッチおきに配置した遮光カーテン(93)を、前記パネル(92)の下側に重複させて設け、遮光カーテン(93)を移動させて透光部分(95)における太陽光発電パネル部分(97)による遮光面積すなわち透光部分(95)での透光面積を変更する遮光カーテン移動装置を設けた温室の遮光装置。
【請求項2】
前記遮光部分(94)の全部又は一部を、太陽光発電パネルで構成した請求項1に記載の温室の遮光装置。
【請求項3】
前記透光部分(95)を遮光部分(94)間に形成される空間により構成し、遮光カーテン(93)を、透光性のあるシート(96)に太陽光パネル部分(97)を貼り付けた構成とした請求項1又は2に記載の温室の遮光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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