説明

温室制御装置

【課題】温室制御装置において、簡単な構成で温室の除湿を制御する。
【解決手段】温室を暖房する暖房手段と、上記温室を換気する換気手段とを制御する温室制御装置において、暖房手段の暖房により上昇する上記温室の温度が、設定された暖房上限温度に達したとき(S5,S7)、上記換気手段により上記温室を換気させ除湿すると共に(S6,S8)、上記暖房手段による暖房が続行している場合にはこの暖房を停止させ(S8)、上記換気手段の換気により下降する上記温室の温度が、設定された換気停止温度に達したとき(S9)、上記換気手段による換気を停止させる(S10)構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス温室、ビニルハウス等の温室の暖房及び除湿を制御する温室制御装置に関し、更に詳しくは、簡単な構成で温室の除湿を制御する温室制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温室において植物を栽培する、いわゆる施設園芸が広く行われている。上記の施設園芸では、栽培する植物に適した温度条件及び湿度条件が必要となる。ここで、温室の湿度は、植物等から発生する水分に起因して、除湿なくしては下げられないのが通常であり、適宜除湿を行う必要が生じる。
【0003】
温室における除湿には、換気除湿、暖房除湿及び送風除湿が主に用いられている。このうち暖房除湿は、温室の温度を上昇させて、温度に対する相対湿度を下げるものである。また、送風除湿は、送風により温室内において湿度を均一化させるものである。そのため、これら暖房除湿及び送風除湿は、直接的に温室内の水分量を下げるものではない。
【0004】
一方、換気除湿は、温室内の空気を入れ換える手法であり、温室の水分量を下げることにより湿度を下げることが可能となるため、有効な除湿方法である。そのため、施設園芸においては、換気除湿又はこれと暖房除湿等の組み合わせを行うことが有効である。
【0005】
ここで、温室の暖房及び除湿を行う温室制御装置として、温室の温度及び湿度を検出し、これら温度及び湿度を基に暖房及び換気除湿を制御する温室制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2906330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1記載の温室制御装置は、温室の温度及び湿度を検出しているため、温度測定器に加え、湿度測定器を温室に配置しなければならない。この湿度測定器は、一般的に高価であるため、設置に多くのコストがかかるという問題が生じる。
【0007】
また、上記特許文献1記載の温室制御装置は、温室の温度及び湿度を基に暖房及び除湿を制御しているため、制御が複雑なものとなって温室制御装置が高価になり、この点からも多くのコストがかかる上に、制御の複雑さに伴い、温室制御装置の操作が複雑になるという問題もある。
【0008】
本発明の課題は、上記従来の問題に鑑み、簡単な構成で温室の除湿を制御する温室制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の温室制御装置は、温室を暖房する暖房手段と、上記温室を換気する換気手段とを制御する温室制御装置において、上記暖房手段の暖房により上昇する上記温室の温度が、設定された暖房上限温度に達したとき、上記換気手段により上記温室を換気させ除湿すると共に、上記暖房手段による暖房が続行している場合にはこの暖房を停止させ、上記換気手段の換気により下降する上記温室の温度が、設定された換気停止温度に達したとき、上記換気手段による換気を停止させる構成とする。
【0010】
また、上記換気手段は、上記温室の壁面の一部を開放させることにより上記温室を換気させ除湿する構成とするとよい。
また、上記温室制御装置は、上記温室の壁面の一部の開放度合い(例えば、0〜100%)を設定可能である構成とするとよい。
【0011】
また、上記温室は、その内部に設けられた仕切部によって、上記暖房手段により暖房される暖房領域と、上記暖房手段により暖房されない非暖房領域とに仕切られ、上記暖房手段の暖房により上昇する上記暖房領域の温度が、上記暖房上限温度に達したとき、上記換気手段により上記仕切部を開放させ(この仕切部の開放は、暖房領域の換気であり、即ち、温室の換気である。)上記暖房領を除湿すると共に、上記暖房手段による暖房が続行している場合にはこの暖房を停止させ、上記仕切部の開放により下降する上記暖房領域の温度が、上記換気停止温度に達したとき、上記仕切部の開放を停止させる構成としてもよい。
【0012】
また、上記温室制御装置は、上記仕切部を開放させる際に上記温室の壁面の一部をも開放させることにより、上記暖房領域を除湿する構成とするとよい。
また、上記温室制御装置は、上記仕切部の開放度合い(例えば、0〜100%)を設定可能である構成とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、暖房手段の暖房により上昇する温室の温度が、設定された暖房上限温度に達したとき、換気手段により温室を換気させ除湿すると共に、暖房手段による暖房が続行している場合には暖房を停止させるよう構成されている。そのため、温室の温度が暖房上限温度に達したときの換気手段の換気除湿により、温室の温度を下げるのに加え、温室の除湿をも行うことができる。したがって、温室の湿度を測定することなく温室の湿度を調整することができ、湿度測定器及びその測定湿度に基づく複雑な制御が不要となると共に、温室制御装置の操作も容易になる。よって、本発明によれば、簡単な構成で温室の除湿を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る温室制御装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る温室制御装置を配置した温室を示す概略図である。
【0015】
同図において、温室制御装置1は、温室2に配置された暖房手段としてのバーナ3、及び、換気手段としての天窓駆動部4を、温度測定器5による測定温度に基づき制御している。
【0016】
詳しくは後述するが、天窓駆動部4は、温室制御装置1の制御によって、温室2の壁面の一部としての天窓2a,2bを開閉可能となっており、天窓2a,2bの開放度合いは、例えば0〜100%の間で設定可能となっている。なお、開放度合いを0%に設定した場合には、天窓駆動部4による天窓2a,2bの開放は行われず、開閉度合いを100%に設定した場合には、天窓2a,2bは全開に開放される。温度測定器5は、同図では1つのみ示しているが、複数配置して温室2の平均温度を求めるようにしてもよい。
【0017】
以下、図2及び図3を参照しながら、温室制御装置1の制御について説明する。
図2は、上記温室制御装置の制御を示す概略フローチャートである。
図3は、上記温室の温度及び湿度並びにこれらの制御の一例を示すグラフである。
【0018】
図2に示すように、始動した温室制御装置1は(START)、設定された暖房開始条件になると(S1)、バーナ3の暖房を開始させる(S2)。この暖房開始条件は、本実施の形態では、サイクル時間及び暖房開始温度の2つで設定されている。
【0019】
上記のサイクル時間は、バーナ3の暖房を間欠的に開始させる時間間隔であり、ここでは50分に設定され、図3に示すように、17時00分(T1)、17時50分(T6)、18時40分(T12)において、バーナ3の暖房を開始させている。また、上記の暖房開始温度は、ここでは20℃に設定され、温室2の温度が20℃となった時刻T4、T10及びT16においてもバーナ3の暖房を開始させている。なお、暖房が開始されると、温室2の温度が上昇するため、図3に示すように、水分量に変化がなくても相対湿度を下げることができる。
【0020】
そして、暖房開始により温室2の温度が1℃上昇すると(S3)、図3に示す時刻T5、T7、T11、T13及びT17のように、バーナ3による暖房を停止させる(S4)。その後、暖房の余熱(暖房停止後の一定時間の運転或いはバーナ3自体からの放熱)により上昇した温室2の温度が暖房上限温度の22℃に達すると(S5)、図3に示す時刻T8及びT14のように、天窓駆動部4により天窓2a,2bを開放させて換気除湿を開始させる(S6)。この際の天窓2a,2bは、温室制御装置1に設定された上述の開放度合いに基づいて開放される。
【0021】
そして、天窓2a,2bを開放させることにより(T8及びT14)、温室2内の水分量が下がり、相対湿度も低下する。なお、温室2の温度が暖房上限温度の22℃に達しない場合には、天窓2a,2bの開放による換気を行わない。
【0022】
一方、サイクル時間により暖房開始となった際に、温室2の温度が1℃上昇する前に(S3)、温室2の温度が暖房上限温度の22℃に達した場合(S7)、図3に示す時刻T2のように、バーナ3による暖房を停止させると共に、上述の開放度合いに基づき天窓駆動部4により天窓2a,2bを開放させて換気除湿を開始させる(S8)。
【0023】
天窓駆動部4により天窓2a,2bを開放させて換気を行った場合(S6,S8)、温室2の温度が、ここでは21℃に設定された換気停止温度になると(S9)、図3に示す時刻T3、T9及びT15のように、天窓駆動部4により天窓2a,2bの開放を停止させる(S10)。
【0024】
以上説明した本実施の形態では、バーナ3の暖房により上昇する温室2の温度が、暖房上限温度として設定された22℃に達したとき(S5,S7)、天窓駆動部4により天窓2a,2bを開放させて温室2を換気除湿させると共に(S6,S8)、バーナ3による暖房が続行している場合(T2)にはバーナ3による暖房を停止させている。そのため、温室2の温度が暖房上限温度の22℃に達したときの温室2の換気除湿により、温室2の温度を下げるのに加え、温室2の除湿をも行うことができる。したがって、温室2の湿度を測定することなく温室2の湿度を調整することができ、湿度測定器及びその測定湿度に基づく複雑な制御が不要となると共に、温室制御装置1の操作も容易となる。よって、本実施の形態によれば、簡単な構成で温室2の暖房及び除湿を制御することができる。
【0025】
また、本実施の形態では、温室2の壁面の一部としての天窓2a,2bを開放させることにより温室2の換気を行っているため、外気を取り入れて有効に温室2の温度及び湿度を調整することができる。
更に、本実施の形態では、天窓2a,2b(壁面の一部)の開放度合いが設定可能となっているため、温室制御装置1が配置される温室2毎に、所望の条件で除湿をすることができる。
【0026】
なお、以上説明した温室2の温度及び換気除湿の制御は、あくまで一例であり、暖房サイクル(50分)、暖房開始温度(20℃)、暖房上限温度(22℃)、暖房停止条件(1℃上昇)、換気停止温度(21℃)等の値は、適宜設定されればよい。
【0027】
また、本実施の形態では、高湿度となりやすい夕方の時間帯(16時50分〜19時10分)を例にとり説明を行ったが、その他の時間帯に上述の温室制御装置1による除湿を行うことも有効であり、また、2以上の時間帯(即ち、互いに連続しない時間帯)において上述の除湿を行わせてもよい。
【0028】
図4は、本発明の他の実施の形態に係る温室制御装置を配置した配置した温室を示す概略図である。
【0029】
同図において、温室制御装置11は、温室12に配置された暖房手段としてのバーナ13、及び、換気手段としてのカーテン駆動部17を、温度測定器15による測定温度等に基づき制御している。
【0030】
具体的には、温室12は、その内部に設けられた仕切部としてのカーテン16によって、バーナ13により暖房される暖房領域18と、暖房されない非暖房領域19とに仕切られている。カーテン駆動部17は、温室制御装置11の制御によって、仕切部としてのカーテン16を開閉可能となっており、カーテン16の開放度合いは、例えば0〜100%の間で設定可能となっている。なお、開放度合いを0%に設定した場合には、カーテン駆動部17によるカーテン16の開放は行われず、開放度合いを100%に設定した場合は開閉可能面(例えば、上面のみ若しくは側面のみ、又は、これらを含んだ全面)全てにおいて開放が行われる。温度測定器15は、暖房領域18に配置されている。温室制御装置11の制御は、上記実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0031】
本実施の形態によっても、暖房領域18の温度が暖房上限温度に達したときのカーテン駆動部17によるカーテン16の開放により、暖房領域18と非暖房領域19との間の換気除湿(即ち、温室12の換気除湿)が行われて、暖房領域18の温度を下げるのに加え、暖房領域18の除湿をも行うことができる。したがって、暖房領域18の湿度を測定することなく暖房領域18の湿度を調整することができ、湿度測定器及びその測定湿度に基づく複雑な制御が不要となると共に、温室制御装置11の操作も容易となる。よって、本実施の形態によれば、簡単な構成で暖房領域18(温室12)の暖房及び除湿を制御することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、カーテン16(仕切部)の開放度合いが設定可能となっているため、温室制御装置11が配置される温室12毎に、所望の条件で除湿をすることができる。
【0033】
なお、図5に示す変形例のように、図1に示すのと同様の天窓22a,22b及び天窓駆動部24を配置し、カーテン26の開放と共に天窓22a,22bを開放させて暖房領域28の換気を行うようにしてもよい。
【0034】
図5に示す温室制御装置21によれば、温室22に外気を取り入れることができ、図4に示す温室制御装置11よりも有効に暖房領域18の換気除湿を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る温室制御装置を配置した温室を示す概略図である。
【図2】上記温室制御装置の制御を示す概略フローチャートである。
【図3】上記温室の温度及び湿度並びにこれらの制御の一例を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る温室制御装置を配置した温室を示す概略図である。
【図5】上記他の実施の形態の変形例に係る温室制御装置を配置した温室を示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 温室制御装置
2 温室
2a,2b 天窓
3 バーナ
4 天窓駆動部
5 温度測定器
11 温室制御装置
12 温室
13 バーナ
15 温度測定器
16 カーテン
17 カーテン駆動部
18 暖房領域
19 非暖房領域
21 温室制御装置
22 温室
22a,22b 天窓
23 バーナ
24 天窓駆動部
25 温度測定器
26 カーテン
27 カーテン駆動部
28 暖房領域
29 非暖房領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室を暖房する暖房手段と、前記温室を換気する換気手段とを制御する温室制御装置において、
前記暖房手段の暖房により上昇する前記温室の温度が、設定された暖房上限温度に達したとき、前記換気手段により前記温室を換気させ除湿すると共に、前記暖房手段による暖房が続行している場合には該暖房を停止させ、
前記換気手段の換気により下降する前記温室の温度が、設定された換気停止温度に達したとき、前記換気手段による換気を停止させることを特徴とする温室制御装置。
【請求項2】
前記換気手段は、前記温室の壁面の一部を開放させることにより前記温室を換気させ除湿することを特徴とする請求項1記載の温室制御装置。
【請求項3】
前記温室制御装置は、前記温室の壁面の一部の開放度合いを設定可能であることを特徴とする請求項2記載の温室制御装置。
【請求項4】
前記温室は、その内部に設けられた仕切部によって、前記暖房手段により暖房される暖房領域と、前記暖房手段により暖房されない非暖房領域とに仕切られ、
前記暖房手段の暖房により上昇する前記暖房領域の温度が、前記暖房上限温度に達したとき、前記換気手段により前記仕切部を開放させ前記暖房領を除湿すると共に、前記暖房手段による暖房が続行している場合には該暖房を停止させ、
前記仕切部の開放により下降する前記暖房領域の温度が、前記換気停止温度に達したとき、前記仕切部の開放を停止させることを特徴とする請求項1記載の温室制御装置。
【請求項5】
前記温室制御装置は、前記仕切部を開放させる際に前記温室の壁面の一部をも開放させることにより、前記暖房領域を除湿することを特徴とする請求項4記載の温室制御装置。
【請求項6】
前記温室制御装置は、前記仕切部の開放度合いを設定可能であることを特徴とする請求項5記載の温室制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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