説明

温室

【課題】二重構造フィルムを用いて内張カーテンを設置することで温室の断熱効果を高めると共に、当該カーテンの開閉動作をスムーズにでき、カーテン収縮時に結露水が大量に落下するという新たな問題も防止する。
【解決手段】左下、左上、右上及び右下の4枚のカーテン11〜14で構成され、上部空間に張り渡されたワイヤ20によって移動されるパイプ21〜24の動作に伴って4枚が同時に展張・収縮される。各カーテン11〜14は、上面の不織布シートと、下面の全面に小孔が明けられたプラスチックフィルムを貼り合わせた袋体からなり、ブロワーで空気を吹き込んで膨張させると共に、所定負荷での運転を続けることで栽培空間に微風を送り続けることもできる。収縮時には、ブロワーを停止してワイヤドラムを回転させ、パイプ21〜24に押されて自然に空気を排出しつつ押し潰された状態に畳まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温効果を高めた温室に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、温室の保温性向上を目的として、屋根等を二重構造とする提案(例えば、特許文献1,2)、ハウス内に二重構造シートで仕切られた区画を形成する提案(例えば、特許文献3,4)、ハウス内に天井カーテンを設置する提案(特許文献5〜7)、ハウス内に設置したエアカーテンから栽培空間へと送風を行う提案(特許文献8)等がなされている。
【0003】
特許文献1は、壁部材および屋根部材が脹らませることのできる大きなプラスチック2重シートより成っており、これらのプラスチック2重シートの緑ひもを包んでいる少なくとも2つの緑部がC字形に成形された保持部内に保特されているようにすることで、温室の被いの組み立ておよび取り外しを簡単に行なうことができ、温室栽培と露天裁培との切り替えを簡単に行なうことができる温室を提案している(図6(A)参照)。
【0004】
特許文献2は、屋根等をビニールシート袋で構成し、前部妻面のビニール袋シートに送気管を連結し、後部妻面のビニール袋シートに排気管を連結し、袋内に適温の空気を送風することで、四季を通じてハウス内の温度管理を行い、夏期に寒冷紗、遮光シートなどを張設したり、冬期にビニールシートを二重に張設したりする必要をなくすことを提案している(図6(B)参照)。
【0005】
特許文献3は、多数の空気層を備えた保温被覆体の各空気層の基端側を中空巻取ロールの吸排気室と通ずる状態で巻取・展開自在とし、天候や昼夜の別等に応じて温室内に設置した保温用の二重天井の部分を開閉可能な構成とした温室を提案している(図6(C)参照)。
【0006】
特許文献4は、温室内に設置されたガイドレールの頂部で分割されたエアカーテンをワイヤ駆動で昇降させて開閉される栽培室を形成し、エアカーテンは送風機から圧送される空気で断熱層となし、エアカーテン閉鎖時の栽培室を断熱空気層で覆う方法を提案している(図6(D)参照)。
【0007】
特許文献5は、連棟式ビニールハウスの内張りビニールフイルムを谷部に設けた回転シャフトと連動するロープで誘導すると共に、各ハウスの天井下方に滑車付フィルム誘導金具を装架して左右のビニールフイルムを交差状に閉着させて天井部の帯状フィルムを必要としない全自動開閉装置を提案している(図7(A)参照)。
【0008】
特許文献6は、左右のフレームと中央部に設置した複数のガイドローラを利用して循環経路を形成する様に掛け渡したワイヤーの巻き取り動作に追従して、二重構造とした保温カーテンがビニールハウスの両側で同時に開閉されるようにした温室用保温カーテンの昇降装置を提案している(図7(B)参照)。
【0009】
特許文献7は、二層で展張することによって空気層を形成するカーテン部材の先端を先導パイプに連結し、駆動ワイヤの巻き取り・巻き戻し動作に応じて展張と収納とを行う温室用カーテン装置として、片方の屋根を1組のカーテン部材で開閉する場合(図7(C)参照)、片方の屋根を略半分長さの2組のカーテン部材で開閉する場合(図7(D)参照)、谷部または山部をまたいで半分ずつが連動して開閉する場合(図7(E)参照)を提案している。
【0010】
特許文献8は、小型ブロアーで膨らませると共に空気抜き孔からパージもする様に構成された空気膜フィルムをハウス内の内張カーテンとして採用し、巻き上げパイプを回転駆動することで、この空気膜フィルムがカーテンとして張られたり巻き上げ状態となったりする機構を提案している(図8参照)。
【特許文献1】特開昭47−11953号公報(第1〜3図)
【特許文献2】特開昭53−17135号公報(第2図)
【特許文献3】特開昭57−102125号公報(第1,2図)
【特許文献4】特開平6−30661号公報(図7,図8)
【特許文献5】特開昭57−174030号公報(第1図)
【特許文献6】特開2001−299110号公報(図2)
【特許文献7】特開2008−29314号公報(図1,4,10)
【特許文献8】特開2005−333932号公報(図2〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1,2の方法は、外部に露出する部分を二重構造フィルムとするため、風の強い地方や積雪のある地方に不向きである。この点、特許文献3,4の方法は、ハウス内を二重構造フィルムで区画する点で汎用性は高いが、ハウス内に専用のフレームを設置する等の工事が必要となる欠点がある。
【0012】
特許文献5〜7は、カーテンによる二重構造化であって施工し易い点で特許文献3,4の方法より有利な点もあるが、二重構造フィルムに比べて保温効果が十分でないという問題もある。
【0013】
特許文献8は、二重構造フィルムによる保温効果に加えて、当該フィルムを通じたハウス内へのパージによって栽培環境を制御することもできる点でより優れている。しかし、空気が抜けきらない状態で巻き付き始めるとフィルムの巻き上げ動作に支障が生じるため、開閉性に問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、二重構造フィルムを用いて内張カーテンを設置する構造において、カーテンの開閉動作をスムーズに実行できると共に、カーテン収縮時に結露水が大量に落下することも防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明の温室は、上部空間を仕切って保温効果を高めるための開閉可能な天井カーテンを備える温室であって、以下の構成を備えていることを特徴とする。
(1)前記天井カーテンは、棟の左側を固定端としてから中央に向かって展張される左下カーテンと、棟の中央側を固定端として左に向かって展張される左上カーテンと、棟の右側を固定端として中央に向かって展張される右下カーテンと、棟の中央側を固定端として右に向かって展張される右上カーテンとから構成されていること。
(2)前記天井カーテンの展張・収縮を行うために以下の構成を備えていること。
(2−1)棟の左側に取り付けられた上下の2つの滑車と、棟の右側に取り付けられた上下の2つの滑車と、棟の中央部に上下左右の4つの滑車とを利用して、中央でクロスする様に掛け渡され、駆動用のワイヤドラムに巻き掛けられる様にして一つのループを構成するワイヤを備えていること。
(2−2)前記中央でクロスするループを構成するワイヤには、左下に位置する部分に左下カーテンの自由端を連結する左下パイプが、左上に位置する部分に左上カーテンの自由端を連結する左上パイプが、右下に位置する部分に右下カーテンの自由端を連結する右下パイプが、右上に位置する部分に右上カーテンの自由端を連結する右上パイプが取り付けられていること。
(3)前記各カーテンは、上面が不織布シートで形成され、下面が全面に小孔が明けられたプラスチックフィルムで形成され、内部に吹き込まれた空気が不織布シートの繊維の隙間及びプラスチックフィルムの小孔を介して吹き出され得る構造の袋体によって構成され、固定端側に当該カーテンを構成する袋体の中へ空気を吹き込むブロワーをブロワー接続する接続口を備えていること。
(4)前記各カーテンは、それぞれの自由端が連結されるパイプが取り付けられているワイヤの上に乗る様に、それぞれの対応するパイプに対して取り付けられていること。
(5)前記ワイヤの上方に、上側のカーテンの浮き上がりを防止する押さえ線を設置してあること。
【0016】
本発明の温室によれば、ワイヤを、棟の左側の上下の2つの滑車と、棟の右側の上下の2つの滑車と、棟の中央部の上下左右の4つの滑車とを利用して、中央でクロスする様に掛け渡してあるので、駆動用のワイヤドラムを回転させることにより、左下、左上、右下及び右上の各カーテンを同時に展張または収縮する方向へと移動させることができる。そして、展張させた後または展張させながら、ブロワーを駆動して空気を送り込むことにより、各カーテンを膨張させて空気層による断熱効果を発揮する天井カーテンを敷設することができる。このとき、左下及び右下のカーテンは、それらを移動させるパイプが取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には左上及び右上カーテンを移動させるパイプが取り付けられたワイヤが存在するので、これらワイヤの間に挟まれた状態で膨張していく。また、左上及び右上のカーテンは、それらを移動させるパイプが取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には押さえ線が張られているので、ワイヤと押さえ線の間に挟まれた状態で膨張していく。この結果、全体にスムーズな膨張が可能であり、展張しながらブロワーを駆動しても支障を来さない。よって、迅速に膨張状態にすることができる。
【0017】
このスムーズな動作には、天井カーテンが、上面が不織布シート、下面が全面に小孔が明けられたプラスチックフィルムで形成された袋体によって構成されているので、内部に吹き込まれた空気が不織布シートの繊維の隙間及びプラスチックフィルムの小孔を介して吹き出す機能も寄与している。また、展張並びに膨張が完了した後も、ブロワーを所定の負荷で運転し続けることにより、膨張状態を維持しつつ、下方の栽培空間に微風を送り続けることができる。この微風により、下方の栽培空間の環境を制御することも可能である。
【0018】
一方、カーテンを収縮させる際には、ブロワーによる送風を停止し、ワイヤドラムを展張時とは逆方向へ回転させることにより、各カーテンはそれぞれが連結されているパイプに押される様にして固定端側へと押し潰されながら移動する。この押し潰し動作により、袋体の内部に残存している空気は、不織布シートの繊維の隙間及びプラスチックフィルムの小孔を介して排出される。こうして、収縮動作を行うと、自然に袋体全体から空気が排出される。このとき、左下及び右下のカーテンは、それらを移動させるパイプが取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には左上及び右上カーテンを移動させるパイプが取り付けられたワイヤが存在するので、これらワイヤの間に挟まれた状態で押し潰されていく。また、左上及び右上のカーテンは、それらを移動させるパイプが取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には押さえ線が張られているので、ワイヤと押さえ線の間に挟まれた状態で押し潰されていく。この結果、全体に徐々に空気を排出することができ、強制排気をするための機器を別途設置する必要がなく、ブロワー停止後速やかに収縮させることができる。
【0019】
また、各カーテンの上面を不織布シートとしたので、屋根裏の結露水がカーテン上に滴下したときにこれが不織布シートで吸収され、水滴や水溜まりとして上面に残らない。従って、収縮動作の際に栽培空間へと結露水が大量に落下するといった不具合も発生しない。
【0020】
なお、本発明の温室におけるワイヤの張り方は、以下の様に構成することができる。
(6)前記ワイヤは、左側の上の滑車の下側に掛けられて斜め右上方に伸ばされ、中央の左上の滑車の上側に掛けられた後に斜め右下方に伸びて中央の右下の滑車の下側に掛けられ、さらに、斜め右下方に伸ばされて右側の下の滑車の下側に掛けられ、その後上方に伸ばされて右側の上の滑車の上側に掛けられた後に左斜め上方に伸ばされて中央の右上の滑車の上側に掛けられ、左斜め下方に伸びて中央の左下の滑車の下側に掛けられ、さらに左斜め下方に伸ばされて左側の下の滑車の下側に掛けられる様にして中央でクロスするループ状に張られていること。
【0021】
また、本発明の温室において、さらに以下の構成を備えることができる。
(7)前記左下カーテンと左上カーテンは展張し終えた時に左上カーテンを上にして先端部分が上下に重なり合う位置まで移動され、前記右下カーテンと右上カーテンは展張し終えた時に右上カーテンを上にして先端部分が上下に重なり合う位置まで移動される様に前記ワイヤに対して各パイプが取り付けられていること。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、二重構造フィルムを用いて内張カーテンを設置することで温室の断熱効果を高めると共に、当該カーテンの開閉動作をスムーズに実行することができ、さらに、カーテン収縮時に結露水が大量に落下するという新たな問題も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の温室で天井カーテンを展張した状態の正面図である。
【図2】実施例1の温室で天井カーテンを展張状態と収縮状態の中間に移動させている状態の正面図である。
【図3】実施例1の温室で天井カーテンを収縮させた状態の正面図である。
【図4】実施例1の天井カーテンを構成する袋体を示し、(A)は平面図、(B)は内部構造を示す断面図である。
【図5】実施例1の天井カーテンを構成する袋体の主要部の拡大断面図である。
【図6】従来技術の説明図である。
【図7】従来技術の説明図である。
【図8】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す具体的な実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例1の温室1は、図1〜図3に示す様に、温室内の上部空間を仕切って保温効果を高めるための天井カーテン10を備えている。この天井カーテン10は、左下カーテン11、左上カーテン12、右上カーテン13及び右下カーテン14の4枚に分かれており、温室1の上部空間に張り渡されたワイヤ20によって移動されるパイプ21〜24の動作に伴って4枚が同時に展張・収縮される様に構成されている。
【0026】
図1は、パイプ21〜24が展張位置へ移動した状態を示している。図示の様に、左下カーテン11及び左上カーテン12は、展張状態において、先端部分が上下に重なり合う位置まで移動される。同じく、右上カーテン13及び右下カーテン14は、展張状態において、先端部分が上下に重なり合う位置まで移動される。
【0027】
図3は、パイプ21〜24が収縮位置へ移動した状態を示している。図示の様に、左下カーテン11は左端に、左上カーテン12及び右上カーテン13は中央に、右下カーテン14は右端に、寄せられた状態に畳まれる。
【0028】
なお、図2は、パイプ21〜24が展張位置と収縮位置の中間に移動している途中の状態を示している。
【0029】
ワイヤ20は、左側支柱2の上部に取り付けられた2つの滑車31,32と、右側支柱3の上部に取り付けられた2つの滑車33,34と、屋根の頂部の真下に設置された4つの滑車35〜38とを利用して、中央でクロスする様に掛け渡され、左側の屋根4の下面下部に設置されたワイヤドラム39に巻き掛けられる様にして一つのループを構成する様に設置されている。
【0030】
以下、左側支柱2の上側の滑車31を「左上滑車31」と、同下側の滑車32を「左下滑車32」と、右側支柱3の上側の滑車33を「右上滑車33」と、同下側の滑車34を「右下滑車34」と、中央の4つの滑車の内の左上に位置する滑車35を「中央左上滑車35」と、同左下に位置する滑車36を「中央左下滑車36」と、同右上に位置する滑車37を「中央右上滑車37」と、同右下に位置する滑車38を「中央右下滑車38」とよび、ワイヤ20の掛け渡し方についてより詳しく説明する。
【0031】
ワイヤドラム39の上側から伸びるワイヤ20は、左上滑車31の下側に掛けられて斜め右上方に伸ばされ、中央左上滑車35の上側に掛けられた後に斜め右下方に伸びて中央右下滑車38の下側に掛けられ、さらに、斜め右下方に伸ばされて右下滑車の下側に掛けられ、その後上方に伸ばされて右上滑車33の上側に掛けられた後に左斜め上方に伸ばされて中央右上滑車37の上側に掛けられ、左斜め下方に伸びて中央左下滑車36の下側に掛けられ、さらに左斜め下方に伸ばされて左下滑車32の下側に掛けられる様にして再びワイヤドラム39に下側から掛けられて、中央でクロスするループ状に張られている。
【0032】
中央の4つの滑車35〜38は、屋根4,5の頂部に設置された垂直部材41の下端から下方に垂下された吊り下げ部材43の高さ方向中程に、上下左右に分かれて設置されている。また、垂直部材41の下端は屋根4,5間に取り付けられた水平部材42と共に小屋組を構成し、屋根4,5を補強する役割も果たしている。そして、吊り下げ部材43の下端は、支柱2,3間に設置された引き締め部材44の中央に支持された状態に取り付けられている。吊り下げ部材43及び引き締め部材44は、いずれも鉄筋で形成されている。そして、引き締め部材44には張り具合を調整するためのターンバックル45が取り付けられている。
【0033】
本実施例においては、支柱2,3、屋根4,5を構成する合掌梁、小屋組を構成する部材41,42、吊り下げ部材43及び引き締め部材44は、いずれも棟の長手方向に3m間隔で設置されている。そして、これらの設置間隔に合わせて、滑車31〜38及びワイヤ20も棟の長手方向に3m間隔で設置されている。
【0034】
また、本実施例の温室1には、左右の支柱2,3に一端を固定され、多端を中央の吊り下げ部材33に固定されたフィルム押さえ線25,26が張られている。このフィルム押さえ線25,26は、天井カーテン10よりも上方に位置する様に、棟の長手方向に3m間隔で支柱ごとに設置されている。
【0035】
天井カーテン10を構成する各カーテン11〜14は、図4,図5に示す様に、不織布シート51とプラスチックフィルム52の縁同士を貼り合わせて構成された袋体50からなる。また、この袋体50は、その内部が所定広さで互いに連通された多数の小区画53,53,…となる様に、不織布シート51とプラスチックフィルム52がマス目状にも貼り合わされたものとなっている。さらに、この袋体50の左右一方の端には、パイプ21〜24を通すための帯状のループ55,55,…が所定間隔で取り付けられ、逆の端には長手方向に連通するダクトスペース56が形成されている。このダクトスペース56には、ブロワー接続口57が形成されており、当該ブロワー接続口57から吹き込まれる空気を各小区画55,55,…に対して吹き込む様に、小区画53,53,…の位置する側に吹き込み口58,58,…が形成されている。なお、プラスチックフィルム52には、図5に示す様に、小孔52a,52aが全面に明けられている。
【0036】
本実施例の温室1では、各カーテン11〜14ごとに1台のブロワー61〜64が設置されている。各カーテン11〜14は、不織布シート51側が上になる状態にて、ダクトスペース56のある方の端を支柱2,3または吊り下げ部材43に固定すると共に、帯状ループ55のある方の端をワイヤ20の途中に固定されているパイプ21〜24が旗竿となる様に取り付けられる。そして、各カーテン11〜14を構成する袋体50のブロワー接続口57に、4台のブロワー61〜64がそれぞれ接続される。
【0037】
ワイヤドラム39は、棟の長手方向に伸びる様に設置され、図示省略した駆動モータによって正逆回転される。図3は、天井カーテン10を収縮した状態を示している。この図3の状態において、ワイヤドラム39を時計周りに回転させると、ワイヤ20が各パイプ21〜24を矢印Aの方向に移動させる様に繰り出され、各カーテン11〜14を展張状態(図1の状態)にする方向へと移動させる。逆に、図1の展張状態からワイヤドラム39を反時計周りに回転させると、ワイヤ20が各パイプ21〜24を矢印Bの方向に移動させる様に繰り出され、各カーテン11〜14を収縮状態(図3の状態)にする方向へと移動させる。
【0038】
各カーテン11〜14は、展張された状態でブロワー61〜64を駆動することにより、ブロワー接続口57からダクトスペース56に流入した空気が各小区画53,53,…へと流入して膨張する。各袋体50は、完全に膨張した状態において、厚さが約10cmとなる様に設計されている。このため、滑車31と32、滑車33と34、滑車35と36、滑車37と38は、それぞれ高さ方向に約12cm離して設置され、フィルム押さえ線25,26は、各上方の滑車31,33,35,37よりも高さ方向に約12cm高い位置に端部が位置する様に設置されている。
【0039】
これにより、左下カーテン11は、左側の支柱2の上側の滑車31と中央左上の滑車35とに掛け渡されたワイヤと、左側の支柱2の下側の滑車32と中央左下の滑車36とに掛け渡されたワイヤとの間のスペースで十分に膨張することができる。また、膨張した状態の左下カーテン11は、その上方に位置するワイヤによって浮き上がりを防止された状態となる。
【0040】
同じく、右下カーテン14は、右側の支柱3の上側の滑車33と中央右上の滑車37とに掛け渡されたワイヤと、右側の支柱3の下側の滑車34と中央右下の滑車38とに掛け渡されたワイヤとの間のスペースで十分に膨張することができる。また、膨張した状態の右下カーテン14は、その上方に位置するワイヤによって浮き上がりを防止された状態となる。
【0041】
また、左上カーテン12は、左側のフィルム押さえ線25と、左側の支柱2の上側の滑車31と中央左上の滑車35とに掛け渡されたワイヤとの間のスペースで十分に膨張することができる。また、膨張した状態の左上カーテン12は、その上方に位置するフィルム押さえ線25によって浮き上がりを防止された状態となる。
【0042】
そして、右上カーテン13は、右側のフィルム押さえ線26と、右側の支柱3の上側の滑車33と中央右上の滑車37とに掛け渡されたワイヤとの間のスペースで十分に膨張することができる。また、膨張した状態の右上カーテン13は、その上方に位置するフィルム押さえ線26によって浮き上がりを防止された状態となる。
【0043】
また、各カーテン11〜14は、膨張する際にブロワー61〜64によって送り込まれてくる空気を、下側のプラスチックフィルム52の小孔52a,52a,…から下方の栽培空間6へと吹き出すと共に、上側の不織布シート51の繊維の隙間から上方空間7へも吹き出す。これにより、徐々に、かつ、スムーズな膨張が実現される。また、膨張後もブロワー61〜64を適度な負荷で運転し続けることにより、栽培空間6に対して微風を送り続けることができる。
【0044】
各カーテン11〜14を収縮状態にするときは、ブロワー61〜64を停止して袋体50内への空気の供給を止めてから、ワイヤドラム39を反時計周りに回転させる。すると、パイプ21〜24が矢印B方向に移動し始め、このパイプ21〜24の移動に伴って袋体50が押し潰されながら収縮していく。この押し潰し動作により、袋体50の中の空気は、不織布シート51の繊維の隙間及びプラスチックフィルム52の小孔52a,52a,…を介して放出され、各小区画53,53,…を空気の抜けた状態にしていく。
【0045】
本実施例の温室によれば、各カーテン11〜14を展張させ、膨張させることにより、空気層による断熱効果を発揮する天井カーテンを敷設することができる。このとき、左下及び右下のカーテン11,14は、それらを移動させるパイプ21,24が取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には左上及び右上カーテン12,13を移動させるパイプ22,23が取り付けられたワイヤが存在するので、これらワイヤの間に挟まれた状態で膨張していく。また、左上及び右上のカーテン12,13は、それらを移動させるパイプ22,23が取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には押さえ線25,26が張られているので、ワイヤと押さえ線の間に挟まれた状態で膨張していく。この結果、全体にスムーズな膨張が可能であり、展張しながらブロワー61〜64を駆動しても支障を来さない。よって、迅速に膨張状態にすることができる。
【0046】
このスムーズな動作には、天井カーテン10が、上面が不織布シート51、下面が全面に小孔52aが明けられたプラスチックフィルム52で形成された袋体50によって構成されているので、内部に吹き込まれた空気が不織布シート51の繊維の隙間及びプラスチックフィルム52の小孔52aを介して吹き出す機能も寄与している。また、展張並びに膨張が完了した後も、ブロワー61〜64を所定の負荷で運転し続けることにより、膨張状態を維持しつつ、下方の栽培空間6に微風を送り続け、栽培空間6の環境を制御することも可能である。
【0047】
一方、天井カーテン10を収縮させる際には、ブロワー61〜64による送風を停止し、ワイヤドラム39を展張時とは逆方向へ回転させることにより、各カーテン11〜14はそれぞれが連結されているパイプ21〜24に押される様にして固定端側へと押し潰されながら移動する。この押し潰し動作により、各袋体50の内部に残存している空気は、不織布シート51の繊維の隙間及びプラスチックフィルム52の小孔52aを介して排出される。こうして、収縮動作を行うと、自然に袋体全体から空気が排出される。このとき、左下及び右下のカーテン11,14は、それらを移動させるパイプ21,24が取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には左上及び右上カーテン12,13を移動させるパイプ22,23が取り付けられたワイヤが存在するので、これらワイヤの間に挟まれた状態で押し潰されていく。また、左上及び右上のカーテン12,13は、それらを移動させるパイプ22,23が取り付けられたワイヤの上に乗り、上方には押さえ線25,26が張られているので、ワイヤと押さえ線の間に挟まれた状態で押し潰されていく。この結果、全体に徐々に空気を排出することができ、強制排気をするための機器を別途設置する必要がなく、ブロワー停止後速やかに収縮させることができる。
【0048】
また、各カーテン11〜14の上面を不織布シート51としたので、屋根裏の結露水がカーテン上に滴下したときにこれが不織布シート51で吸収され、水滴や水溜まりとして上面に残らない。従って、収縮動作の際に栽培空間へと結露水が大量に落下するといった不具合も発生しない。
【0049】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内においてさらに種々の形態を採用することができることはもちろんである。
【0050】
例えば、カーテンを構成する袋体は、小区画に区分けされず、一つの大きな空気室によって構成されたものであっても構わない。また、カーテンの両端の上下貼り合わせ部分にループではなく鳩目孔を形成しておき、紐・針金等でパイプ等に固定する構成であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
断熱効果を高めるための二重構造フィルムを用いて内張カーテンを設置する温室に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・温室
2・・・左側支柱
3・・・右側支柱
4・・・左側の屋根
5・・・右側の屋根
6・・・栽培空間
7・・・上方空間
10・・・天井カーテン
11・・・左下カーテン
12・・・左上カーテン
13・・・右上カーテン
14・・・右下カーテン
20・・・ワイヤ
21〜24・・・パイプ
31・・・左上滑車
32・・・左下滑車
33・・・右上滑車
34・・・右下滑車
35・・・中央左上滑車
36・・・中央左下滑車
37・・・中央右上滑車
38・・・中央右下滑車
39・・・ワイヤドラム
41・・・垂直部材
43・・・吊り下げ部材
42・・・水平部材
44・・・引き締め部材
45・・・ターンバックル
25,26・・・フィルム押さえ線
51・・・不織布シート
52・・・プラスチックフィルム
50・・・袋体
53・・・小区画
55・・・帯状のループ
56・・・ダクトスペース
57・・・ブロワー接続口
58・・・吹き込み口
52a・・・小孔
61〜64・・・ブロワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部空間を仕切って保温効果を高めるための開閉可能な天井カーテンを備える温室であって、以下の構成を備えていることを特徴とする温室。
(1)前記天井カーテンは、棟の左側を固定端としてから中央に向かって展張される左下カーテンと、棟の中央側を固定端として左に向かって展張される左上カーテンと、棟の右側を固定端として中央に向かって展張される右下カーテンと、棟の中央側を固定端として右に向かって展張される右上カーテンとから構成されていること。
(2)前記天井カーテンの展張・収縮を行うために以下の構成を備えていること。
(2−1)棟の左側に取り付けられた上下の2つの滑車と、棟の右側に取り付けられた上下の2つの滑車と、棟の中央部に上下左右の4つの滑車とを利用して、中央でクロスする様に掛け渡され、駆動用のワイヤドラムに巻き掛けられる様にして一つのループを構成するワイヤを備えていること。
(2−2)前記中央でクロスするループを構成するワイヤには、左下に位置する部分に左下カーテンの自由端を連結する左下パイプが、左上に位置する部分に左上カーテンの自由端を連結する左上パイプが、右下に位置する部分に右下カーテンの自由端を連結する右下パイプが、右上に位置する部分に右上カーテンの自由端を連結する右上パイプが取り付けられていること。
(3)前記各カーテンは、上面が不織布シートで形成され、下面が全面に小孔が明けられたプラスチックフィルムで形成され、内部に吹き込まれた空気が不織布シートの繊維の隙間及びプラスチックフィルムの小孔を介して吹き出され得る構造の袋体によって構成され、固定端側に当該カーテンを構成する袋体の中へ空気を吹き込むブロワーをブロワー接続する接続口を備えていること。
(4)前記各カーテンは、それぞれの自由端が連結されるパイプが取り付けられているワイヤの上に乗る様に、それぞれの対応するパイプに対して取り付けられていること。
(5)前記ワイヤの上方に、上側のカーテンの浮き上がりを防止する押さえ線を設置してあること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1記載の温室。
(6)前記ワイヤは、左側の上の滑車の下側に掛けられて斜め右上方に伸ばされ、中央の左上の滑車の上側に掛けられた後に斜め右下方に伸びて中央の右下の滑車の下側に掛けられ、さらに、斜め右下方に伸ばされて右側の下の滑車の下側に掛けられ、その後上方に伸ばされて右側の上の滑車の上側に掛けられた後に左斜め上方に伸ばされて中央の右上の滑車の上側に掛けられ、左斜め下方に伸びて中央の左下の滑車の下側に掛けられ、さらに左斜め下方に伸ばされて左側の下の滑車の下側に掛けられる様にして中央でクロスするループ状に張られていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の温室。
(7)前記左下カーテンと左上カーテンは展張し終えた時に左上カーテンを上にして先端部分が上下に重なり合う位置まで移動され、前記右下カーテンと右上カーテンは展張し終えた時に右上カーテンを上にして先端部分が上下に重なり合う位置まで移動される様に前記ワイヤに対して各パイプが取り付けられていること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−268734(P2010−268734A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123721(P2009−123721)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【特許番号】特許第4402738号(P4402738)
【特許公報発行日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(592160618)イシグロ農材株式会社 (5)
【Fターム(参考)】