説明

温度サイクル試験装置

【課題】半導体ウェーハのように、温度サイクル試験中に、半導体ウェーハそのものに傷がついたり、試験槽内のゴミが付着するなどの特有の問題が生じる被試験物の試験を可能とする温度試験サイクル試験装置を提供する。
【解決手段】試験槽1と、半導体ウェーハ2(被試験物)の温度を制御するウェーハチャック3(制御部)と、を備え、ウェーハチャック3は、試験槽1内に半導体ウェーハ2を配置する設置領域31と、試験槽1の外部から、半導体ウェーハ2の温度を熱伝導によって変化させる温度を調整する機能と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度サイクル試験装置に関し、特に半導体ウェーハを試験するための温度サイクル試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴い、Via Holeや配線系の初期劣化不良が増加している。そのため、従来から実施されているパッケージング後の温度サイクル試験に加え、ウェーハ状態での温度サイクル試験が検討・実施され始めている。一方、ウェーハ状態で温度サイクル試験を実施する場合、パーティクルの付着、キズの発生など、解決しなくてはならない課題が多い。
【0003】
従来の一般的な温度サイクル試験装置は、試験槽、高温槽およびヒーター、低温槽および冷却機および、ダンパーで構成される。そして、高温槽にあらかじめ高温にした気体(空気あるいはN2等のガス)を貯めておき、低温槽に低温にした気体を貯めておき、それらをダンパーにより試験槽に導入する構成となっている。試験槽に導入された高温または低温の気体により被試験物が高温または低温に曝されるが、気体の入れ替えだけで所望の温度に到達しないため、ヒーター又は冷却機により試験槽内の空気を加熱あるいは冷却する。このような温度サイクル試験装置は、例えば、特許文献1,2、非特許文献1に開示されている。
また、別の構成の温度サイクル試験装置として、高温槽およびヒーター、低温槽および冷却機で構成され被試験物が高温槽と低温槽の間を移動するタイプのものも商品化されている。このような温度サイクル試験装置は、例えば、特許文献3、非特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−267418号公報
【特許文献2】特許2786688号公報
【特許文献3】特開2007−333559号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エスペック株式会社 冷熱衝撃装置 TSAシリーズ (商品カタログ) 2010年10月
【非特許文献2】エスペック株式会社 冷熱衝撃装置 TSD−100 (商品カタログ) 2008年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的な温度サイクル試験装置では、高温または低温の気体を試験槽へ導入して被試験物に温度ストレスを与えている。その際、急激な温度変化を得るために大流量で気体を試験槽へ導入する必要がある。また、ダンパー解放後の追加加熱または冷却時にも試験槽に大流量で気体を導入している。
被試験物が高温槽と低温槽の間を移動するタイプの温度サイクル試験装置においても、被試験物が高温槽および低温槽内で高温または低温の気体の流れの中に曝される。
【0007】
温度サイクル試験装置の被試験物が半導体ウェーハである場合、キャリアに立て替えて処理をする。温度サイクル試験中の半導体ウェーハは、高温または低温の気体の流れにより、キャリア内で揺れたり回転したりする。
その結果、半導体ウェーハとキャリアが接触する部分で半導体ウェーハに傷が発生するという問題点がある。
また、同様の原因により半導体ウェーハがキャリアに接触する接触部が削れ、ゴミとして半導体ウェーハに付着するという問題点がある。
さらに、従来の一般的な温度サイクル試験装置では、高温/低温を切り替えるダンパーから発埃したゴミが、あるいは、被試験物が高温槽と低温槽の間を移動するタイプの温度サイクル試験装置においては被試験物を移動させるためのエレベータ部から発埃したゴミが、半導体ウェーハに付着するという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る温度サイクル試験装置の一態様は、試験槽と、被試験物の温度を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記試験槽内に前記被試験物を配置する設置領域と、前記試験槽の外部から、前記被試験物の温度を熱伝導によって変化させる温度調整部と、を備える。
本発明の温度サイクル試験装置は、試験槽1の外部から被試験物の温度を調整する機能、具体的には熱伝導による温度調整機能を備える。このため、試験槽1内の空気を入れ替える必要がない。あるいは、試験槽内の被試験物を温度の異なる試験槽へ移動させる必要がない。このように、本発明の温度サイクル試験装置は、被試験物の周囲に空気の流れを生じさせることを必要としない。その結果、空気の流れによって生じる被試験物の破損やこれによるゴミの付着を防止することができる。加えて、空気の流れを生じさせる機構に基づくゴミの発生を防止することが可能になる。従って、温度サイクル試験中に、被試験物へ傷がつくこと、あるいは、ゴミが付着することを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試験槽の外部から被試験物の温度を制御する機構を設けることにより、被試験物への傷の付加や、ゴミの付着を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る温度サイクル試験装置の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る温度サイクル試験装置の構成例を示すII−II断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る温度サイクル試験装置の構成例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る温度サイクル試験装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0012】
実施形態1.
* 実施形態1の構成
図1は実施形態1の構成例を示す断面図であり、図2は、図1に示すII−IIラインに沿った断面図である。図1は、図2に示すI−Iラインに沿った断面図に対応している。温度サイクル試験装置101は、試験槽1と、ウェーハチャック(制御部)3とを備え、半導体ウェーハ(被試験物)2がウェーハチャック3の設置領域31に設置されている状態を示している。ウェーハチャック3は、試験槽1の中に配置される面を、設置領域31とし、ウェーハチャック3全体で、被試験物の温度を調整する機能(温度調整部の機能)を果たす。ウェーハチャック3は、試験槽1の下部に配置され、半導体ウェーハ2を載せるための熱伝導率の高い金属等(例えば、銅)で形成される。ウェーハチャック3の内部にはウェーハチャック3を加熱又は冷却するための液体または気体等を導入する導入路4が形成されている。導入路4は、液体または気体等を注入するための注入口41および、導入路4から液体または気体等を排出するための排出口42を有する。図2では、点線を用いて、導入路4、注入口41、及び排出口42を透視した状態を示している。
【0013】
* 実施形態1の動作又は製造方法等
次に、本発明の実施形態1の動作を図面を参照しながら説明する。被試験物である半導体ウェーハ2はウェーハチャック3に載せられる。ウェーハチャック3の内部にはウェーハチャック3を加熱又は冷却するための液体または気体等を導入する導入路4が設けられている。半導体ウェーハ2を加熱する場合は、注入口41から導入路4に高温の水蒸気等を導入し、ウェーハチャック3を加熱する。ウェーハチャック3を加熱した水蒸気等は導入路4を介して排出口42から排出される。半導体ウェーハ2はウェーハチャック3からの熱伝導により加熱される。半導体ウェーハ2を冷却する場合は、注入口41から導入路4に低温の液体窒素等を導入し、ウェーハチャック3を冷却する。ウェーハチャック3を冷却した液体窒素等は導入路4を介して排出口42から排出される。半導体ウェーハ2はウェーハチャック3からの熱伝導により冷却される。
【0014】
ウェーハチャック3の過熱/冷却を繰り返すことで、温度サイクル試験を実施する。なお、本実施形態の図面では説明を簡略化するため、導入路、注入口、排出口は一組のみとしているが、ウェーハチャック3の温度の均一化ため、及び、加熱/冷却レートを高めるために、複数の導入路、注入口、排出口を設ける事もある。さらに、加熱する際には熱線等による手段によっても同様の効果を得る事ができる。
加えて、図1では説明を容易にするため導入路4が断面に沿った形状である場合を示しているが、これに限定されるものではなく、半導体ウェーハ2の形状に応じた、同心円状の導入路やその他の形状であってもよい。また、図2では、ウェーハチャック3が半導体ウェーハ2と同様の形状である場合を示しているがこれに限られるわけではなく、矩形やその他の形状であってもよい。図2に示すように、ウェーハチャック3が半導体ウェーハの外形より大きな、同様の形状である場合、半導体ウェーハ2の熱伝導の均一性が良好となるため、好ましい。
【0015】
* 実施形態1のメカニズムおよび効果
本発明の温度サイクル試験装置は、ウェーハチャック3を試験槽1の外部から加熱/冷却し、ウェーハチャック3上の半導体ウェーハ2を熱伝導により加熱/冷却するため、従来の温度サイクル試験装置のように、試験槽1内への気体等の導入をしない構造となっている。試験槽1内への気体等の導入をしないため、半導体ウェーハ2が回転したり、揺れたりする現象が起こらない。よって、半導体ウェーハ2への傷、及びゴミが発生しないという効果を有する。また、試験槽1の内部にはダンパーやエレベータ等の装置が存在しないため、これらの装置からの発埃もない。
【0016】
実施形態2
実施形態2では、実施形態1に比べ、加熱/冷却時の温度変化を鋭くする一態様を説明する。
* 実施形態2の構成
図3は実施形態2に係る温度サイクル試験装置の構成例を示す断面図である。温度サイクル試験装置102は、試験槽1と、ウェーハチャック(制御部)7とを備える。本実施形態のウェーハチャック7は、設置領域71と、被試験物の温度を調整する複数の温度調整部とから構成される。図3では、複数の温度調整部の一例として、高温チャック72、低温チャック73とを示している。設置領域71と複数の温度調整部とは分離可能であり、設置領域71に対して、高温チャック72と低温チャック73とを差し替えて構成することが可能となっている。
設置領域71及び高温チャック72、低温チャック73とは、熱伝導率の高い金属等で形成される。
設置領域71は、試験槽1の下部に配置され、半導体ウェーハ2を載せる。設置領域71は、実施形態1の設置領域31と同様に熱電等率の高い金属等で形成される。
高温チャック72はウェーハチャック7を加熱する時にウェーハチャック7の設置領域71の下部に設置され、低温チャック73はウェーハチャック7を冷却する時にウェーハチャック7の設置領域71の下部に設置される。
高温チャック72内部には高温チャック72を加熱するための液体または気体等を導入する導入路5、導入路5に液体または気体等を注入するための注入口51および、導入路5から液体または気体等を排出するための排出口52を有する。低温チャック73内部には低温チャック73を冷却するための液体または気体等を導入する導入路6、導入路6に液体または気体等を注入するための注入口61および、導入路6から液体または気体等を排出するための排出口62を有する。
【0017】
* 実施形態2の動作又は製造方法等
次に、本発明の実施形態2の動作を図面を参照しながら説明する。被試験物である半導体ウェーハ2はウェーハチャック7に載せられる。高温チャック72は常時高温に保持されている。高温チャック72を加熱する動作は実施形態1の高温時のウェーハチャック3の動作と同じである。低温チャック73は常時低温に保持されている。低温チャック73を冷却する動作は実施形態1の低温時のウェーハチャック3の動作と同じである。
【0018】
次に半導体ウェーハ2を加熱/冷却する時の動作を説明する。半導体ウェーハ2を加熱する時は、高温チャック72を設置領域71の下部に接触させる。高温チャック72はあらかじめ高温に保持されているため、高温チャック72からの熱伝導により設置領域71が加熱され、さらに半導体ウェーハ2も熱伝導により加熱される。半導体ウェーハ2を冷却する時は、高温チャック72を設置領域71の下部から移動し、代わりに低温チャック73を設置領域71の下部に接触させる。低温チャック73はあらかじめ低温に保持されているため、低温チャック73からの熱伝導により設置領域71が冷却され、さらに半導体ウェーハ2も熱伝導により冷却される。これらの動作を繰り返すことで、温度サイクル試験を実施する。なお、本実施形態では説明を簡略化するため、高温チャック72及び、低温チャック73を移動させる手段については説明していないが、任意の機械的な機構を用いチャックを入れ替える事ができる。
なお、図3では、高温チャック72、低温チャック73の二つの温度調整部を用いて説明したが、これに限られるわけではない。温度調整部は、ウェーハチャック7を異なる温度に調整する2以上の温度調整部が用意されていればよい。
【0019】
* 実施形態2のメカニズムおよび効果
実施形態2では、温度サイクル試験装置102のウェーハチャック7の加熱/冷却機構(温度調整部)を設置領域71と分離し、高温専用の高温チャック72、低温専用の低温チャック73を追加する事で、実施形態1の温度サイクル装置101に比べ、加熱/冷却時の温度変化を鋭くする事ができる。
【0020】
実施形態3
実施形態3では、試験槽1に関して、真空にする場合を説明する。図4は、実施形態3に係る温度サイクル試験装置の構成例を示す断面図であり、温度サイクル試験装置103は、実施形態1の構成例へ試験槽1を真空にする真空処理部8を追加した構成例を示している。真空処理部8は、例えば真空ポンプによって実現することができる。
上記各実施形態で説明した通り、本願発明は、半導体ウェーハ2の温度をウェーハチャック3,7からの熱伝導によって調整する。そのため、先行技術文献の温度サイクル試験装置のように、空気の温度を調整する必要がない。加えて、半導体ウェーハ2は、空気中の酸素に反応して品質が劣化する可能性を有するため、酸素の含有量が少ない状態、例えば、真空、あるいは窒素ガス雰囲気で試験することが好ましい。従って、試験槽1内を真空状態にすることによって、試験槽1内の空気の温度を調整する必要を回避することができるとともに、加熱/冷却時の温度変化を鋭くする事が期待できる。
なお、図3に示す実施形態2の温度サイクル試験装置102へ真空処理部を追加しても、実施の形態2の効果をさらに向上させることができる。
【0021】
以上説明したように、上記各実施形態の温度サイクル試験装置によれば、試験槽の中に熱伝導率の高い金属等で構成されたウェーハチャック(制御部)を設け、そのウェーハチャックを試験槽の外部から加熱/冷却しウェーハチャック上の半導体ウェーハを熱伝導により過熱/冷却するため、傷及びゴミが発生しない。本発明の温度サイクル試験装置は、被試験物が半導体ウェーハ特有の課題を解決し、適応できる装置である。
【0022】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 試験槽
2 半導体ウェーハ
3、7 ウェーハチャック
4、5、6 導入路
8 真空処理部
31、71設置領域
41、51、61 注入口
42、52、62 排出口
72 高温チャック
73 低温チャック
101、102、103温度サイクル試験装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽と、
被試験物の温度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記試験槽内に前記被試験物を配置する設置領域と、
前記試験槽の外部から、前記被試験物の温度を熱伝導によって変化させる温度調整部と、を備える温度サイクル試験装置。
【請求項2】
前記温度調整部は、当該制御部の温度を熱伝導によって変化させる物体を導入する導入路を備えることを特徴とする請求項1記載の温度サイクル試験装置。
【請求項3】
前記温度調整部は、前記設置領域と分離できる構造であり、異なる温度に調整される複数の温度調整部から構成され、前記複数の温度調整部を差し替えることによって、前記被試験物の温度を制御することを特徴とする請求項1または2記載の温度サイクル試験装置。
【請求項4】
前記試験槽内を真空させる真空処理部を、さらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温度サイクル試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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