説明

温度センサ、計測表示器、及び血糖値計測表示器

【課題】 より正確に計測表示するために、周辺の温度をより正確に検知してより正しく温度補正できる温度センサ、計測表示器、及び血糖値計測表示器を提供することを目的とする。
【解決手段】 血糖値計測表示器12に取り付けたバイオセンサ14による計測値を温度補正するために血糖値計測表示器12の外郭体18内に内蔵されている温度センサ10を、外郭体18内のCPU基盤20の端子22から延びるリード線24と、リード線24の先端に固定され、端子22よりも外郭体18に近接させた位置即ち外側に配置されるセンサ素子26と、から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサによる計測値を温度補正するために計測表示器の外郭体内に内蔵されている温度センサ、及びその温度センサを備えた計測表示器又は血糖値計測表示器に関する。
【0002】
従来から、検体の血糖値等を測定するバイオセンサが使用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。このバイオセンサによれば、血糖値計測表示器に取り付けて検体を取り込み、血糖値計測表示器が血糖値等を計測表示することにより、血糖値等を認識できる。ここで、バイオセンサによる測定値は、その温度依存性により、周囲の温度が低い場合には実際よりも低く検知し、周囲の温度が高い場合には実際よりも高く検知することが知られている。
【0003】
このため、従来より、血糖値計測表示器の外郭体内に温度センサを設け、温度が低い場合には計測値を高く補正し、温度が高い場合には計測値を低く補正する温度補正が行なわれている。図6に、この温度センサ1を示す。この温度センサ1は、血糖値計測表示器2の外郭体3内の基盤4に内蔵されており、周辺の温度を測定することができる。なお、基盤の構成から温度センサ1の端子の位置が中心線5上に定まることから、温度センサ1は中心線5上に位置することとなる。
【0004】
しかし、涼しい部屋に保管していた計測表示器を暑い場所へ持って行って血糖値を測定した場合、暑い部屋の温度を実際よりも低く検知して温度補正するため、正しい血糖値よりも高めに計測表示してしまうこととなっていた。一方、暑い部屋から涼しい部屋へ持って行って血糖値を測定した場合、反対に、正しい血糖値よりも低めに計測表示してしまうこととなっていた。
【0005】
【特許文献1】特公平8−10208号公報
【特許文献2】特開平10−19888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は、このような課題の原因を究明してこのような課題を解決するべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、より正確に計測表示するために、周辺の温度をより正確に検知してより正しく温度補正できる温度センサ、計測表示器、及び血糖値計測表示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の温度センサは、計測表示器に取り付けたバイオセンサによる計測値を温度補正するために該計測表示器の外郭体内に内蔵されている温度センサであり、前記外郭体内の基盤の端子から延びるリード線と、該リード線の先端に固定され、該端子よりも該外郭体に近接させた位置に配置されるセンサ素子と、から構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の温度センサは、前記温度センサにおいて、前記センサ素子が、前記外郭体の内面に密着させられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の温度センサは、前記温度センサにおいて、前記リード線が、前記外郭体内の空間内で延びることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の温度センサは、前記温度センサにおいて、前記リード線が、前記端子から外側に向かって延びた後湾曲して前記バイオセンサの取付部付近に向かうことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の温度センサは、前記温度センサにおいて、前記リード線が弾性を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の温度センサは、前記温度センサにおいて、前記計測表示器が血糖値計測表示器である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載することを特徴とする。
【0014】
本発明の計測表示器は、前記温度センサを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の血糖値計測表示器は、前記温度センサを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の温度センサ、計測表示器、及び血糖値計測表示器によれば、温度センサを外郭体内に内蔵しながらも、センサを外郭体に近接させた位置に配置することができる。このため、外郭体内に溜まった空気の熱又は基盤から生じる熱の影響を最小限にして、周辺の温度を従来よりも正確に検知できる。このため、従来よりも正しく温度補正して従来よりも正確に計測表示することができる。
【0017】
また、センサ素子が外郭体の内面に密着させられる本発明によれば、外郭体を介して周辺の温度を従来よりも正確に測定することができる。更に、リード線が弾性を有する本発明の場合には、リード線の弾性力によって容易にセンサ素子を外郭体の内面に密着させることができる。
【0018】
また、リード線が外郭体内の空間内で延びる本発明の場合には、リード線先端のセンサ素子を自由に最適な位置に配置することができる。更に、リード線が、前記端子から外側に向かって延びた後湾曲して前記バイオセンサの取付部付近に向かう本発明の場合には、センサ素子を容易にバイオセンサの取付部付近に配置して、バイオセンサ周辺の温度を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明に係る温度センサ、血糖値計測表示器の形態について、図面に基づいて詳しく説明する。
【0020】
図1及び図2において、符号10は本発明の温度センサであり、符号12は本発明の血糖値計測表示器である。
【0021】
温度センサ10は、血糖値計測表示器(計測表示器)12に取り付けたバイオセンサ14による計測値を温度補正するために血糖値計測表示器12の外郭体18内に内蔵されている温度センサであり、外郭体18内のCPU基盤20の端子22から延びるリード線24と、リード線24の先端に固定され、端子22よりも外郭体18に近接させた位置即ち端子22よりも外側に配置されるセンサ素子26と、から構成されている。なお、端子22の位置は、CPU21の配置やCPU基盤20の構造等によって、中心線22付近に定まっている。
【0022】
また、温度センサ10は、センサ素子16が、外郭体18の内面に密着させられるように構成され、外郭体18内に内蔵されながらも、外郭体18の側壁を介して血糖値計測表示器12の周辺温度を最大限に正確に検知できるように構成されている。センサ素子16の原材料は、外郭体18内に配置できるとともに温度を検知できるものであれば特に限定されない。
【0023】
温度センサ12のリード線24は、外郭体18内の空間内で延びることにより、センサ素子16を最適な位置に自由に配置できるとともに、CPU基盤20の熱の影響が最小限になるように構成されている。このリード線24は、端子22から一旦外へ延びた後湾曲してバイオセンサ14の取付部15付近に向かう形状となっている。また、リード線24は、弾性を有しており、センサ素子16を最適な位置に自由に配置できるとともに、弾性力によってセンサ素子16が外郭体18の内面に密着させられるように構成されている。なお、リード線24は、CPU21が発する熱の影響を最小源にするために、中心線23に対してCPU21と反対側へ延びることが望ましい。このリード線24の材質は、センサ素子16による温度検知が可能であれば特に限定されない。
【0024】
このような温度センサ10、及びこの温度センサ10を備える血糖値計測表示器12の作用について以下に説明する。
【0025】
この温度センサ10は、外郭体18の下蓋を取り外した場合には、図2に示すように、外郭体18の外へ突出することとなる。このため、手で温度センサ10のセンサ素子16付近を保持し、外郭体18内に収まるように外郭体18内へ弾性的に折り曲げて下蓋を閉じる。これにより、図1に示すように、センサ素子16が外郭体18の内面に密着した状態で温度センサ10が外郭体18内に収められる。なお、温度センサ10のリード線24は、端子22から一旦外へ延びた後湾曲してバイオセンサ14の取付部付近に向かう形状となっているため、センサ素子16を容易にバイオセンサ14付近に配置できる。このため、バイオセンサ14付近の温度を検知して、バイオセンサ14の温度依存性を適確に補正することができる。
【0026】
このようにして、温度センサ10が外郭体18内に収められた状態で、バイオセンサ14を取り付け、バイオセンサ14を血液に接触させて血糖値の計測が行なわれる。この時、温度センサ20が周辺の温度を検知し、CPU基盤20は血糖値の温度補正を行なって表示画面26に表示する。すなわち、温度センサ10が一定温度以上の温度を検知した場合には、血糖値を低く補正し、一定温度未満の温度を検知した場合には、血糖値を高く補正する。
【0027】
本発明によれば、温度センサ10のセンサ素子16がCPU基盤20から浮かせられているとともに、外郭体18の内面に密着させられているため、外郭体18内に溜まった空気の熱又はCPU21やCPU基盤20の熱に影響されることなく、周辺の温度を従来よりも正確に検知することができる。このため、従来よりも正しい温度補正を行なって従来よりも正確な血糖値表示を行なうことができる。
【0028】
この温度センサ10を備えた血糖値計測表示器12を用いて本発明者が実際に試験を行なった結果を図3及び図4に示す。例えば血糖値計測表示器12を20℃の室内から30℃の室内へ移動させて10分経過した場合、図3に示すように、従来は約3.2℃の温度測定誤差があることにより、約10mg/dLの血糖値表示誤差があったのに対して、本発明の温度センサ10を備えた場合には、約1.2℃の温度誤差及び約4mg/dLの血糖値表示誤差に改善された。また、例えば30℃の室内から20℃の室内へ移動させて10分経過した場合、図4に示すように、従来は約3.7℃の温度測定誤差があることにより、約15mg/dLの血糖値表示誤差があったのに対して、本発明の温度センサ10を備えた場合には、約1.8℃の温度誤差及び約7mg/dLの血糖値表示誤差に改善された。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されない。例えば、本発明の血糖値計測表示器12において、図5に示すように、センサ素子16の収納空間30を積極的に設けても良い。この場合、センサ素子16を外郭体18内に容易に収納できる。この場合、リード線が弾性力を有しなくとも、センサ素子を外郭体の内面に密着させて固定できる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、本発明は図示したものには限定されない。例えば、本発明の用途は、血糖値の検査に限定されず、広く、医学的、生物学的、化学的な検査又は試験等であっても良い。また、血糖値以外の血液検査であっても良い。また、センサ素子や外郭体の形状は、本発明の作用効果が生じれば特に限定されない。
【0031】
その他、本発明の技術的範囲には、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様も含まれる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、いずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の温度センサ、計測表示器、及び血糖値計測表示器は、周辺の温度を従来よりも正確に検知し、従来よりも正しく温度補正して従来よりも正確に計測表示することができる。このため、バイオセンサによる計測のために広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の温度センサ及び血糖値計測表示器を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)はA−A線切断部断面図である。
【図2】図1の血糖値計測表示器の底面図である。
【図3】図1の温度センサ及び血糖値計測表示器について周辺の温度が上昇した場合の試験結果を示す図であり、同図(a)は温度測定誤差を従来と比較したグラフであり、同図(b)は表示誤差を従来と比較したグラフである。
【図4】図1の温度センサ及び血糖値計測表示器について周辺の温度が下降した場合の試験結果を示す図であり、同図(a)は温度測定誤差を従来と比較したグラフであり、同図(b)は表示誤差を従来と比較したグラフである。
【図5】本発明の温度センサ及び血糖値計測表示器の他の実施形態を示す平面図である。
【図6】従来の温度センサ及び血糖値計測表示器を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10:温度センサ
12:血糖値計測表示器(計測表示器)
14:バイオセンサ
16:センサ素子
18:外郭体
20:CPU基盤(基盤)
21:CPU
22:端子
24:リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測表示器に取り付けたバイオセンサによる計測値を温度補正するために該計測表示器の外郭体内に内蔵されている温度センサであり、
前記外郭体内の基盤の端子から延びるリード線と、
該リード線の先端に固定され、該端子よりも該外郭体に近接させた位置に配置されるセンサ素子と、
から構成された温度センサ。
【請求項2】
前記センサ素子が、前記外郭体の内面に密着させられる請求項1に記載する温度センサ。
【請求項3】
前記リード線が、前記外郭体内の空間内で延びる請求項1又は請求項2のいずれかに記載する温度センサ。
【請求項4】
前記リード線が、前記端子から外側に向かって延びた後湾曲して前記バイオセンサの取付部付近に向かう請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する温度センサ。
【請求項5】
前記リード線が弾性を有する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する温度センサ。
【請求項6】
前記計測表示器が血糖値計測表示器である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載する温度センサ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載する温度センサを備えた計測表示器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載する温度センサを備えた血糖値計測表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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