説明

温度センサおよび温度センサの製造方法

【課題】被験者の皮膚に装着した状態で、被験者の体温を連続的にモニタできる温度センサを提供する。
【解決手段】温度センサ100は、温度の変化に応じて電気的な物理量が変化する測温素子15と、絶縁性の被覆材11によって覆われ、測温素子15に接続されたリード線16とを含む熱電対50と、被覆材11と同一材料からなり、被覆材11の端部から延びて測温素子15の全体を覆っている封止材14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサおよび温度センサの製造方法に関する。特に、本発明は、被験者の体温測定に適した温度センサおよび温度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体温計は、水銀体温計の時代から略棒状の形態を有する。そして、人体の体温測定は、体温計の先端を腋の下あるいは舌下に挟み、一定時間を経て体温計の先端部の温度を人体の体温とほぼ一致させることで行われている。
【0003】
このような体温計の使用方法は、一般的に定着しており、サーミスタ温度計を用いた電子体温計に、体温計の技術が進化しても、体温計の使用方法自体は、変わらない。従来の電子体温計の使用方法を記載する文献として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−214800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
体温計は、被験者が疾病等により体温が上昇したとき、被験者の病状の把握の一つとして使用されることが一般的である。よって、被験者が病気のとき、病状の進行あるいは回復を常時モニタする必要性が高いので、日に幾度も被験者の体温の測定をする場合がある。しかし、この場合、体温計を腋の下等に挟んで測定するので、被験者の体温測定のたびに体温計を腋の下から出し入れすることが面倒なこと、および、体温測定時の姿勢の維持が、被験者である病人にとっては苦痛であること等、従来の体温計の使用には様々な不都合を内包する。特に、被験者が幼児の場合、体温計を腋の下に挟むこと自体、困難な場合も多い。
【0006】
ところで、本件発明者は、長年、被測定物の温度を連続的にモニタできる工業用の超小径の被覆熱電対等の開発に取り組んでいる。そして、かかる経験から、このような超小径の被覆熱電対を被験者の体温測定に適用すると、従来の体温計の使用方法における不都合を一挙に解決できることに気がついた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、被験者の皮膚に装着した状態で、被験者の体温を連続的にモニタできる温度センサを提供することを目的とする。また、本発明は、このような温度センサの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、温度の変化に応じて電気的な物理量が変化する測温素子と、絶縁性の被覆材によって覆われ、前記測温素子に接続されたリード線とを含む熱電対と、
前記被覆材と同一材料からなり、前記被覆材の端部から延びて測温素子の全体を覆っている封止材と、
を備える温度センサを提供する。
【0009】
かかる構成により、本発明の温度センサは、本温度センサを被験者の体温測定に用いる場合、被験者の皮膚に装着した状態で、被験者の体温を連続的にモニタできる。このため、本発明の温度センサを用いることにより、従来の体温計の使用に内包された様々な不都合を解消できる。特に、被験者が幼児の場合、体温計を腋の下に挟むこと自体、困難な場合も多いので、本発明の温度センサは、幼児の体温測定において極めて有益である。
【0010】
また、本発明の温度センサでは、前記被覆材および封止材の材料は、フッ素樹脂であってもよい。
【0011】
かかる構成により、本発明の温度センサは、熱電対の先端の細い金属部分が直接、被験者の肌に触れないよう、これらの金属部分をフッ素樹脂からなる封止材で覆うように構成できる。また、本温度センサは、温度センサの封止材が、測温素子の保温部材としての機能を果たすようにも構成でき、その結果、温度センサが被験者の体内温度を適切に測定できる。
【0012】
また、本発明の温度センサは、前記封止材の外形よりも大きい絆創膏を更に備えてもよい。そして、前記絆創膏を用いて、前記封止材の全体を覆い、かつ前記封止材が被験者の皮膚に密着するように前記温度センサを前記被験者に固定してもよい。
【0013】
かかる構成により、安価かつ入手容易な絆創膏を用いて被験者の腋の下の皮膚に温度センサを装着できる。
【0014】
また、本発明は、温度の変化に応じて電気的な物理量が変化する測温素子と、絶縁性の被覆材によって覆われ、前記測温素子に接続されたリード線とを含む熱電対と、
前記被覆材と同一材料からなる封止材が充填されている凹部を備えるヒータブロックと、を用い、
前記測温素子を、前記ヒータブロックの凹部に挿入し、その後、
前記ヒータブロックの加熱により、前記被覆材と前記封止材とを熱溶着し、
前記熱溶着が行われた前記測温素子を前記凹部から引き抜く、温度センサの製造方法を提供する。
【0015】
以上のヒータブロックの加熱により、被覆材と封止材とが、同一材料で構成されているので、外被覆材と封止材とを容易に熱溶着することができ、ひいては、温度センサを簡易に製造できる。
【0016】
また、本発明の温度センサの製造方法では、前記被覆材および封止材の材料は、フッ素樹脂であってもよい。
【0017】
よって、フッ素樹脂を適温に加熱することにより、被覆材と封止材とを熱溶着できるので都合がよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被験者の皮膚に装着した状態で、被験者の体温を連続的にモニタできる温度センサが得られる。また、このような温度センサの製造方法も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態による温度センサの構成例を示した模式図である。
【図2】図2は、図1の温度センサの適所の断面図である。図2(a)には、図1の温度センサのA−A部分の断面が示され、図2(b)は、図1の温度センサのB−B部分の断面が示されている。
【図3】図3は、本発明の実施形態による温度センサの製造方法の一例を示した図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による温度センサの使用方法の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
なお、全ての図面を通じて、同一ないし相当する構成要素には同じ参照番号を付し、以下の具体的な説明では、このような構成要素の重複的説明を省略する場合がある。
【0022】
また、以下の具体的な説明は、本発明の「温度センサ」および「温度センサの製造方法」の特徴を例示しているに過ぎない。よって、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
(実施形態)
[温度センサの構成]
まず、温度センサ100の構成例について図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態による温度センサの構成例を示した模式図である。また、図2は、図1の温度センサの適所の断面図である。図2(a)には、図1の温度センサ100のA−A部分の断面が示され、図2(b)は、図1の温度センサ100のB−B部分の断面が示されている。
【0024】
なお、図1では、温度センサ100の構成を理解し易くするために、封止材14によって覆われた温度センサ100の構成を便宜上、実線により図示している。
【0025】
図1に示すように、温度センサ100は、被覆熱電対50を備える。
【0026】
また、図2(a)に示すように、被覆熱電対50の導線12A、13Aはそれぞれ、フッ素樹脂からなる絶縁被覆材12B、13Bによって被覆され、これにより、超小径(例えば、直径が0.1〜0.2mm程度)の一対の熱電対線12、13が形成されている。
【0027】
そして、これらの熱電対線12、13は、絶縁被覆材12B、13Bと同一材料(フッ素樹脂)からなる外被覆材11によって更に被覆されている。これにより、超小径(例えば、短径が0.4mm程度、長径が0.5〜0.6mm程度)のリード線16が形成されている。
【0028】
リード線16の先端は、図1に示すように、外被覆材11が剥ぎ取られ、熱電対線12、13が露出している。また、熱電対線12、13の先端もそれぞれ、絶縁被覆材12B、13Bが剥ぎ取られ、一対の導線12A、13Aが露出している。そして、絶縁被覆材12B、13Bが剥ぎ取られた導体12A、13Aの電気的な接合部分が、被覆熱電対50の測温接点15Aとなっている。
【0029】
以上により、被覆熱電対50の測温素子15が形成されている。
【0030】
ここで、被覆熱電対50としてK型の熱電対が用いられる場合、導線12Aとしては、ニッケル及びクロムを主とした合金(クロメル)が用いられる。また、導線13Aとしては、ニッケルを主とした合金(アルメル)が用いられる。この場合、測温接点15Aは、アルメルとクロメルとが溶接されてなる。
【0031】
また、温度センサ100の使用時には、測温素子15は、被測定物に配置され、被覆熱電対50のリード線16の基端側は、適宜の制御器(図示せず)に接続される。測温素子15は、種類が異なる一対の導線12A、13Aによって、温度の変化に応じて電気的な物理量(熱起電力)が変化するので、この熱起電力を制御器により計測することにより、被測定物の温度を知ることができる。
【0032】
なお、本実施形態では、温度センサ100を体温計として用いることを意図しており、この具体的な使用方法の詳細は後述する。
【0033】
また、図1および図2(b)に示すように、温度センサ100は、外被覆材11および絶縁封止材12B、13Bと同一材料(フッ素樹脂)からなる封止材14を備える。封止材14は、外被覆材11が剥ぎ取られていないリード線16の周囲に熱溶着されている(熱溶着の詳細は後述)。また、封止材14は、外被覆材11の端部から延びて測温素子15の全体を覆っている。つまり、封止材14は、リード線16の外被覆材11および絶縁被覆材12B、13Bが剥ぎ取られた部分の全体を封止し、これにより、測温素子15の全体を覆うように構成されている。
【0034】
なお、上記フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を用いることができる。ここで、市販されている入手容易なポリテトラフルオロエチレンとしては、テフロン(R)PTFEがある。また、市販されている入手容易なテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体としては、テフロン(R)PFAがある。更に、市販されている入手容易なテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体としては、テフロン(R)FEPがある。これらのフッ素樹脂は、化学的、熱的、機械的、電気的に優れた特性を有する。
[温度センサの製造方法]
次に、温度センサ100の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0035】
図3は、本発明の実施形態による温度センサの製造方法の一例を示した図である。
【0036】
図3に示すように、本実施形態の温度センサ100の製造には、上記被覆熱電対50と、被覆熱電対50の外被覆材11および絶縁被覆材12B、13Bと同一材料(フッ素樹脂)からなる封止材14Aが充填されている凹部21を備える金属製(アルミ製)のヒータブロック20と、ヒータブロック20の周囲に配されたバンドヒータ22と、が用いられる。
【0037】
まず、図3(a)および図3(b)に示すように、被覆熱電対50の測温素子15の全体がヒータブロック20の凹部21に入るように、この測温素子15をこの凹部21に挿入する。このとき、図3(b)に示すように、被覆熱電対50の外被覆材11の端部も、凹部21内に入れる必要がある。
【0038】
次いで、この状態で、バンドヒータ22を用いて、ヒータブロック20を約300℃に加熱する。すると、外被覆材11と封止材14Aとが、同一材料で構成されているので、ヒータブロック20の加熱により、外被覆材11と封止材14Aとを容易に熱溶着することができる。
【0039】
その後、図3(c)に示すように、上記熱溶着が行われた被覆熱電対50の測温素子15を凹部21から引き抜くことにより、温度センサ100が得られ、これにより、温度センサ100を簡易に製造できる。
[温度センサの使用方法]
次に、温度センサ100の使用方法について図面を参照しながら説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施形態による温度センサの使用方法の一例を示した図である。
【0041】
図4に示すように、温度センサ100を被験者(例えば、幼児35)用の体温計として用いる場合、温度センサ100は、温度センサ100の封止材14の外形よりも大きい絆創膏30を更に備えるとよい。
【0042】
すると、図4に示すように、絆創膏30を用いて、温度センサ100の封止材14の全体を絆創膏30のガーゼにより完全に覆い、かつ封止材14が幼児35の脇の下の皮膚に密着するように温度センサ100を幼児35に固定できる。
【0043】
このとき、温度センサ100は、図1に示した被覆熱電対50の先端の細い金属部分(導線12A、13Aや測温接点15A)が直接、幼児35の肌に触れないよう、これらの金属部分をフッ素樹脂からなる封止材14で覆うように構成されている。また、温度センサ100は、温度センサ100の封止材14が、測温素子15の保温部材としての機能を果たすようにも構成され、その結果、温度センサ14が、測温素子15を用いて幼児35の体内温度を適切に測定できる。更に、温度センサ100の直径は、1mm以下の超小径なので、本温度センサ100は、安価かつ入手容易な絆創膏30を用いて幼児の腋の下の皮膚に装着できる。
【0044】
以上により、本実施形態の温度センサ100は、被験者(特に、幼児35)の体温測定に適したセンサとなっている。
【0045】
このように、本実施形態の温度センサ100は、温度センサ100を被験者の皮膚に装着した状態で、被験者の体温を連続的に適切にモニタできる。よって、本実施形態の温度センサ100を用いることにより、従来の体温計の使用に内包された様々な不都合を解消できる。特に、被験者が幼児の場合、体温計を腋の下に挟むこと自体、困難な場合も多いので、本実施形態の温度センサ100は、幼児の体温測定において極めて有益である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、被験者の皮膚に装着した状態で、被験者の体温を連続的にモニタできる温度センサが得られる。よって、本発明は、例えば、被験者の体温を連続的にモニタできる体温計として利用できる。
【符号の説明】
【0047】
11 外被覆材
12、13 熱電対線
12A、13A 導線
12B、13B 絶縁被覆材
14 封止材
15 測温素子
15A 測温接点
16 リード線
20 ヒータブロック
21 凹部
22 バンドヒータ
30 絆創膏
35 被験者(幼児)
50 被覆熱電対
100 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度の変化に応じて電気的な物理量が変化する測温素子と、絶縁性の被覆材によって覆われ、前記測温素子に接続されたリード線とを含む熱電対と、
前記被覆材と同一材料からなり、前記被覆材の端部から延びて測温素子の全体を覆っている封止材と、
を備える温度センサ。
【請求項2】
前記被覆材および封止材の材料は、フッ素樹脂である請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記封止材の外形よりも大きい絆創膏を更に備え、
前記絆創膏を用いて、前記封止材の全体を覆い、かつ前記封止材が被験者の皮膚に密着するよう、前記被験者に固定されている請求項1または2に記載の温度センサ。
【請求項4】
温度の変化に応じて電気的な物理量が変化する測温素子と、絶縁性の被覆材によって覆われ、前記測温素子に接続されたリード線とを含む熱電対と、
前記被覆材と同一材料からなる封止材が充填されている凹部を備えるヒータブロックと、を用い、
前記測温素子を、前記ヒータブロックの凹部に挿入し、その後、
前記ヒータブロックの加熱により、前記被覆材と前記封止材とを熱溶着し、
前記熱溶着が行われた前記測温素子を前記凹部から引き抜く、温度センサの製造方法。
【請求項5】
前記被覆材および封止材の材料は、フッ素樹脂である請求項4に記載の温度センサの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−127859(P2012−127859A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280717(P2010−280717)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508072567)日本電測株式会社 (2)
【Fターム(参考)】