説明

温度センサの故障判定方法及びその故障判定装置

【課題】直接抵抗加熱中においても、絶縁被覆の金属管12からなる原料温度センサTEの故障を判別し得るようにする。
【解決手段】直接抵抗加熱装置Aにおいて、温度センサと原料aに挿入されたプラス・マイナスの対の両電極2、2との間に電位差計を設ける。温度センサの絶縁被覆に破損が生じていない場合、温度センサは、図で示す、電源3、一方の電極、原料、他方の電極、電源と電流Iが流れる回路に組み込まれないため(図(a))、温度センサと原料及び電極との間は無限大の抵抗があって、空中の電磁波等の影響で正負電圧がmV単位で一定しない状態で表れる。一方、絶縁被覆が剥がれる等の絶縁の破損が生じて温度センサと原料との短絡が起きると、温度センサが前記電流回路に組み込まれ、その温度センサと電極との間に所定の安定電位差VTEA、VTEBが生じる(図(b))。この状態が一定時間T、例えば、10秒継続すれば、温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった故障と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被加熱体等の被測定物に電気絶縁状態で挿入される温度センサの故障判定方法及びその故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気炉用電極製造プラントにおいて、押出しプレス機により所要形状の電極を成形する前処理工程として原料(カーボン)の混練機による混練工程があり、この混練工程の前段には、その原料をホッパーに収納した静止状態で加熱するプレヒータ工程がある。
このプレヒータ工程は図6(a)に示す直接抵抗加熱装置Aが使用され、この直接抵抗加熱装置Aは、ホッパー1内に原料であるカーボンaを所要量収納するとともに、そのホッパー1の両端(収納原料層aの両端)に電極2、2を設け(挿入し)、その両電極2、2間に交流又は直流の電源3を供給する(電圧を印加する)ことにより、電極2、2間に原料aを介して電流を流し、その電流による原料a自身の抵抗熱(ジュール熱)によって加熱するものであり、実際の温度域は、常温から200℃前後への加熱となる。
【0003】
被加熱物(原料)aがカーボン等の粉体ではなく固体(塊り)の場合は、図6(b)に示すように、その被加熱物aの両端に電極2、2を取付け、その電極2、2間に原料aを介して電流を流し、その電流による原料自身の抵抗熱(ジュール熱)によって加熱する。
【0004】
この粉体と塊りの何れの直接抵抗加熱においても、原料aの温度を検出し、その検出温度に基づき電流を強弱させて、原料aの加熱に必要な所定の時間と温度の制御を行う。その原料温度の測定手段として、挿入型温度計(接触型温度計)と放射型温度計がある。因みに、一般に、上記電気炉用電極製造プラント等の産業界では、その電流値はkA前後の非常に高い大電流となる。
【0005】
その挿入型温度センサTEは、図6(a)、図7(a)に示すように、ホッパー(原料容器)1及び原料aに電気絶縁状態で装着され、端子箱11から延設された金属等の導電性保護管12内に熱電対や測温抵抗体等の測定素子(図示せず)を挿入し、通常、その保護管12の途中の固定フランジ13を介してホッパー1の側壁に固定される。その金属管12のポッパー1内への挿入部分外周面からフランジ13のホッパ接触面にかけてはポリ四弗化エチレン等の耐摩擦・絶縁コーティング14が行われている。また、固定フランジ13は、例えば、図7(b)に示すように、ポリ四弗化エチレン製等のガスケット15を介してホッパー1側のフランジ13aに当てがい、その両フランジ13、13aをベークライト等からなる樹脂製絶縁鍔付きカラー16、ワッシャ16aを介してボルト・ナット17によって締結することによってホッパー1の側壁に固定される。このとき、ワッシャ16aは絶縁材料からなるものが好ましいが、カラー16でもって絶縁性は担保されているため、金属等の導電性のものなどの何れであっても良い。
【0006】
ところで、理論上、原料aの質量m(kg)とその比熱C(kj/(kg×℃))の積で原料aに供給した熱量Q(kj)を割れば、その熱量Qに基づく、原料aの上昇温度Taとなることから(Ta=Q/(m×C))、原料aに供給した電力量Wtを測定し、その電力量に基づき、その平均温度を推測して温度制御する技術がある(特許文献1,2参照)。
すなわち、原料aの温度TをT1からT2(℃)に上げるために必要な電力量Wt=Q×(1/860)×(1/4.186)×10となり、この計算式から、原料aの温度T1において、電力量Wtを供給したとすると、上昇温度Ta=Q/(m×C)=(Wt×860×4.186×10−3)/(m×C)となる。
この温度制御においても、その計算値が正しいか否かを確認するために、上記挿入型温度センサTEを原料a内に別に挿入してその温度を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−38483号公報
【特許文献2】特開2004−53348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記挿入型温度センサTEの保護管12は、ステンレス鋼(SUS)等の金属管であり、炭素(カーボン)等の原料aと比べると、電気抵抗率は1桁以上、前者の金属が小さい。一方、直接抵抗加熱装置Aは、上記のように、原料aに電気を通してその自己の電気抵抗でもって加熱するものであり、金属表面が露出した保護管12を原料a中に挿入すると、前記の電気抵抗率の差から、図8の破線で示す、この保護管12を通じた短絡が起き(リークが生じ)、全ての電気が原料aに流れなくなり、所要の加熱が果たせなくなる。すなわち、電気抵抗の小さい保護管12の方に大量の電流が流れ、その保護管12に比べて高抵抗の原料aには小量の電流しか流れず、電力量と原料上昇(加熱)温度の比例関係が成立しなくなる。また、大電流が保護管12に流れるため、温度センサTEそのものが破損する恐れもある。このため、従来から、上記のように、その保護管12の挿入部分に耐絶縁・摩耗性のコーティング14を施している。
【0009】
しかし、そのコーティング14も永久的に耐絶縁性を担保できるものではなく、原料aとの摩擦によってその層厚は減少する。特に、原料aが粉粒体の場合、その粉粒体原料aがホッパー1内を下降移動するため、温度センサTEの保護管1は、常に、粉粒体原料aとの摩擦に晒されることとなる。このとき、粉粒体内には塊状の原料もあって、その塊状原料aに保護管12が当ることによってコーティング14が破損する恐れもある。
【0010】
この破損は、温度センサTE単体の問題であれば、その温度センサTEを交換すれば良いが、直接抵抗加熱装置Aにおいては、その温度センサTEの測定値に基づき、原料aの温度制御等を行っているため、コーティング(樹脂被覆)14が破れたら(電気がリークする状態となれば)、直ちに、何らかの対応を採るべきである。
なお、保護管12に金属製に代えて耐摩耗性の高いセラミック製を使用することも考えられるが、セラミックは耐衝撃性がないため、直接抵抗加熱のような、塊り混じりの粉粒体等の原料aが投入・排出される層へ挿入される環境ではその破損の恐れがある。通常、セラミック製保護管からなる温度センサは、衝撃のない炉内温度等のガス温度測定に使用される。
【0011】
その温度センサTEにおけるコーティング14の破損の検出手段としては、目視によるものが一般的であるが、その信頼性に問題がある。また、ピンホール検査器によることもできるが、前記目視と同様に、直接抵抗加熱装置(設備)Aを停止する必要があり、その装置の稼働率の低下を招くこととなる。また、ピンホール検出器の場合、その被検査物への印加電圧は、数kV〜数10kVにもなり、例えば、一般的な熱電対の絶縁試験電圧DC500V又はAC500V(JISC1602)を大きく上回るため、場合によっては、温度センサTEそのものを破損する恐れがある。
【0012】
上記直接抵抗加熱装置Aは、カーボン等の粉粒体に限らず、液体等においても使用され、その場合においても、その加熱温度を測定するために上記温度センサTEを使用しており、同様に、その故障を検出する必要がある。
また、加熱しない場合においても、例えば、薬品等においては、ある温度以上となると、品質変化や爆発等の恐れがあることから、上記温度センサTEによってその温度を測定しており、同様に、その故障を検出する必要がある。
【0013】
この発明は、以上の実情の下、上記金属管等からなるその絶縁被覆の損傷による温度センサTEの故障を容易に判別し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために、この発明は、上記温度センサと電極又は大地との間に所定の電位差が生じた時、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった(無くなった)としてその温度センサの故障と判断することとしたのである。
温度センサにおいて、被測定物内に電気絶縁状態で挿入されるものにあっては、その温度センサと被測定物又は大地との間は無限大の抵抗があり、その間は物理的に空中のさまざまな電磁波等の影響を受け、その間には正負の極性や微弱であるが、その大きさが一定しない電圧が表れる。
一方、コーティング(絶縁被覆)が剥がれる等の破損が生じると、温度センサと被測定物又は大地との間に所定の安定電位差が生じる。このため、その電位差が生じた時を「温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった時」とすることができる。
【0015】
この故障判定方法の一具体的構成としては、被加熱体に設けたプラス・マイナスの対の両電極に電圧を印加して前記被加熱体をその抵抗熱で加熱するとともに、前記被加熱体内にその被加熱体、前記電極及び直接抵抗加熱装置の容器に対して電気絶縁状態で挿入された温度センサでもってその被加熱体の温度を測定する直接抵抗加熱装置における前記温度センサの故障判定方法において、前記温度センサと電極との間に所定の電位差が生じた時、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することとしたのである。
所定の電位差は、コーティングが破損した状態の同電位差を実験等によって適宜に選定すればよい。また、その電位差は一般的な計器、例えば、電圧トランスデューサで測定し、この信号をPLC(プログラマブルコントローラ)に入力し、良否判定ロジックプログラミング等との組み合わせ程度で容易に実現可能であって安価にシステムを構築できる。
この構成であれば、上記電極に電圧を印加して被加熱体を抵抗加熱している時においても、その温度センサの故障を検出することができる。
【0016】
この構成において、上記所定の電位差が生じ、かつ、両電極間の電位差=温度センサと一方の電極の間の電位差(VTEA)+温度センサと他方の電極の間の電位差(VTEB)・・式1、なお、「=」は、測定誤差を含む。以下、同じ。
0≦VTEA≦VAB(又は0≦VTEB≦VAB)・・式2、
TEA及びVTEB:一定・・式3
が一定時間成立すれば、温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することとし得る。
この各式1〜3が成立することは、上記コーティングが剥がれた温度センサの故障以外の原因による電圧が生じた場合が除かれたこととなるからである。その一定時間Toは、その温度センサの故障以外の原因による電圧が生じた場合が除かれたと考え得る時間を実験等によって適宜に設定すれば良く、例えば、10秒とする。
【0017】
また、上記温度センサと電極との間の電位差が測定しにくい場合は、その温度センサと電極又は大地との間に微弱電圧を印加し、その間に流れる電流を測定し、その一定以上の電流が一定時間流れれば、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断するようにすることもできる。
この構成であると、上記電極に電圧を印加せずに被加熱体を抵抗加熱していない時にも、その温度センサの故障を検出することができる。
この構成においても、上記と同様に、上記所定以上の電位差が一定時間継続して生じた場合に上記温度センサの上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することができる。
【0018】
また、上記直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定方法において、その温度センサと大地との間に所定の電位差が生じた時、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することもできる。
このときも、同様に、温度センサと大地との間の電位差が測定しにくい場合は、その温度センサと大地との間に微弱電圧を印加し、その間に流れる電流を測定し、その一定以上の電流が一定時間流れれば、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断するようにすることもできる。
【0019】
故障判定装置の一具体的構成としては、被加熱体に設けたプラス・マイナスの対の両電極に電圧を印加して前記被加熱体をその抵抗熱で加熱するとともに、前記被加熱体内にその被加熱体及び前記電極に対して電気絶縁状態で挿入された温度センサでもってその被加熱体の温度を測定する直接抵抗加熱装置における前記温度センサの故障判定装置において、その温度センサと電極の間に電位差計を設け、その電位差計の出力を判定器に入力し、この判定器は、電極に電圧を印加して被加熱体を抵抗加熱している状態において、その電位差計の出力が所定の電位差となった時、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断する構成を採用することができる。
【0020】
この構成においても、上記所定の電位差が生じ、かつ、上記各式1〜3が一定時間継続すれば、上記温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することとし得る。
また、上記温度センサと電極との間の電位差が測定しにくい場合は、その温度センサと電極との間に微弱電圧を印加し、その間に流れる電流を測定し、その一定以上の電流が一定時間流れれば、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断するようにすることもできる。
【0021】
また、上記直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定装置において、その温度センサと大地との間に所定の電位差が生じた時、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することもできる。
このときも、同様に、温度センサと大地との間の電位差が測定しにくい場合は、その温度センサと大地との間に微弱電圧を印加し、その間に流れる電流を測定し、その一定以上の電流が一定時間流れれば、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断するようにすることもできる。
【0022】
上記は何れも、直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定方法又は装置の場合であったが、容器内に非加熱状態で収納された被収納物に電気絶縁状態で挿入された温度センサでもってその被収納物の温度を測定する温度センサの故障判定する方法又は装置の場合においては、その温度センサと大地との間に微弱電圧を印加し、その温度センサと大地の間に流れる電流を測定し、その電流計に一定以上の電流が一定時間流れれば、その温度センサの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することができる。
その一定時間は、その温度センサの故障以外の原因による電流が流れる場合が除かれたと考え得る時間を実験等によって適宜に設定すれば良く、例えば、10秒とする。
【0023】
以上の各電流検知による具体的な構成としては、上記温度センサと電極又は大地との間に微弱電圧発生装置及びその微弱電圧発生装置の入口側か出口側に電流計を直列に設け、上記電位差が測定しにくい場合、電極に電圧を印加せずに被加熱体を抵抗加熱していない時、又は、加熱しない被収容物の場合、前記電流計の直列回路に流れる電流をその電流計で測定し、その電流計に一定以上の電流が一定時間流れれば、その温度センサの上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断する構成等を採用することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明は、以上のように構成したので、既存の安価な計測器でもって温度センサの故障を判別できる。また、直接抵抗加熱装置の駆動中においてもその判別(オンライン判別)ができるため、その加熱工程の稼働率が低下することもない。
また、直接抵抗加熱装置の駆動中において、温度センサが正常であることを認識できるので、装置の運転状態(温度制御状態)が上記電力量に基づく計算原料温度と整合しているかを正確に比較できる。この比較によって、再現性が取れれば、その計算原料温度値を読むことで、直接抵抗加熱装置を安定的に運転できる。
さらに、この温度センサの故障判定は、直接抵抗加熱装置における加熱電源回路の状況を計測することでもあり、その故障判別用に別の電源装置を使用する必要がないため、原料に与える影響はない。
また、被加熱体は、粉状体のみならず、腐食性液体、薬品の貯留糟における温度検出にも採用できる。このとき、その検出物が被加熱体でない場合においても、その温度センサの故障判別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態の概略図
【図2】同他の実施形態の判定説明図であり、(a)は絶縁の破損が生じていない状態、(b)は絶縁の破損が生じている状態
【図3】(a)、(b)共に同他の実施形態の概略図
【図4】同他の実施形態の概略図
【図5】同他の実施形態の概略図
【図6】(a)(b)は直接抵抗加熱装置の各例の概略図
【図7】(a)は同直接抵抗加熱装置の温度センサの正面図、(b)は同直接抵抗加熱装置と温度センサの締結部の部分拡大図
【図8】同直接抵抗加熱装置における短絡作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1、図2にこの発明の一実施形態を示し、この実施形態の直接抵抗加熱装置Aは、図6(a)に示した同直接抵抗加熱装置Aにおいて、温度センサTE(金属製導電性保護管12の表面にコーティング14を施したもの)と電極2、2との間に電位差計(図示せず)を設け、この電位差計の出力を判別器(図示せず)に入力する。
この電位差計の計測値が、所定の電位差VTEA、VTEBとなって、それらの電位差が一定の関係を満たした場合、判別器は、上記温度センサTEの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサTEの故障と判断し、警告を文字表示したり、音声表示したりする。
【0027】
すなわち、コーティング14に絶縁の破損が生じず、短絡が起っていない場合、図2(a)に示すように、温度センサTEは、図1で示す、電源3、一方の電極2、原料a,他方の電極2、電源3と電流Iが流れる回路に組み込まれていない。このため、温度センサTEと原料a及び電極2、2との間は無限大の抵抗があり、その間は物理的に空中のさまざまな電磁波等の影響を受け、その間には正負の極性や微弱であるがその大きさが一定しない電圧が表れる。
【0028】
一方、コーティングが剥がれる等の絶縁の破損が生じて上記の短絡が起きると、図2(b)に示すように、温度センサTEが上記電流Iの回路に組み込まれ、その温度センサTEと電極2、2との間に所定の安定電位差VTEA、VTEBが生じる。このとき、下記式1〜式3が成立し、この各式1〜3が一定(所要)時間T、例えば、10秒継続すれば、温度センサTEの電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサTEの故障と判断する。

・両電極間の電位差:VAB=温度センサTEと一方の電極2の間の電位差:VTEA+温度センサTEと他方の電極2の間の電位差VTEB・・(式1)
・0≦VTEA≦VAB(0≦VTEB≦VAB)・・(式2)
・VTEA及びVTEB:一定・・(式3)
【0029】
原料aが薬品等の液体の場合、温度センサTEと大地Eの間(図2(a)(b)参照)、又は温度センサTEと原料(液体)aに浸された電極2、2との間の電位差VTEE又はVTEA、VTEBを測定して判別器に入力し、短絡が起きていなければ、上記と同様に、その電位差VTEE、VTEA、VTEBは正負の極性や大きさが一定しない状態で表れ、短絡が起きておれば、その電位差VTEE、VTEA、VTEBは一定値を示し、その一定値が一定時間T、例えば、10秒継続すれば、コーティング14の絶縁の破損が生じていると、判別器でもって判別して警報を発する。
このとき、電圧(電位差VTEE、VTEA、VTEB)が測定できない場合は、図3(a)(b)に示すように、温度センサTEと電極2、2との間(同図(a))、又は温度センサTEと大地Eの間(同図(b))に微弱電圧を印加し、短絡が起きた異常時には、同様な閉回路となって電流が流れるため、その電流を測定して判別器に入力し、その一定以上の電流が上記一定時間T成立すれば(流れれば)、コーティング14の絶縁の破損が生じていると、判別器でもって判別して警報を発する。図中、5は電池からなる微弱電圧発生装置であるが、直流に限らず交流電源であっても良い。6は電流計、rは原料aと容器1の間の抵抗である。
これらの判別は原料aが粉状体や塊りにおいても採用できる。
【0030】
上記直接抵抗加熱装置において、その被加熱体aを収容するホッパー(直接抵抗加熱装置の容器)1を一つの筒状の電極とみなし、その中にさらに多重に筒状の電極を設けた場合はプラス電極2及びマイナス電極2をその各筒に適宜に振り分けて、ホッパー1内の被加熱体a全体に均一に電圧がかかるようにする。例えば、図4に示す、内筒1a、中間筒1b及び外筒1cからなる3重筒の場合は、中間筒1bにプラス電極2、内筒1a及び外筒1cにマイナス電極2を設ける。
【0031】
また、原料aが薬品等の液体bの場合であって、その被収容物bを直接加熱しない場合、すなわち被収容物bを収納するだけの場合は、電極2、2がないため、図5に示すように、温度センサTEと大地Eの間に前記微弱電圧発生装置5と電流計6を設け、その電流計6の出力を判別器に入力する。その電流計6等の直列回路に微弱電圧を印加し、短絡が起きた異常時には、ホッパー(容器)1は接地されて、そのホッパー1、被収容物bを介した上記と同様な閉回路となって電流が流れるため、その電流を前記電流計6で検出し、その一定以上の電流が一定時間成立すれば(流れれば)、コーティング14の絶縁の破損が生じていると、判別器でもって温度センサTEの故障と判別して警報を発する。
【0032】
因みに、ホッパー1は接地されるため、上記大地Eはそのホッパー1と同電位であり、上記「温度センサTEと大地Eの間」は「温度センサTEとホッパー1の間」と同一の内容となることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 ポッパー(容器)
1a ホッパーの内筒
1b ホッパーの中間筒
1c ホッパーの外筒
、2 電極
3 電源
5 微弱電圧発生装置
6 電流計
11 温度センサの端子箱
12 同金属製保護管
13 同フランジ
14 同絶縁コーティング
A 直接抵抗加熱装置
TE 温度センサ
AB 電極間電圧
TEA 温度センサと一方の電極間の電位差
TEB 温度センサと他方の電極間の電位差
TEE 温度センサと大地の電位差
一定時間
E 大地
a 原料(被加熱体)
b 原料(被収納物)
R 原料の抵抗
r 原料と大地(容器)の抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体(a)に設けたプラス・マイナスの対の両電極(2、2)に電圧を印加して前記被加熱体(a)をその抵抗熱で加熱するとともに、前記被加熱体(a)内にその被加熱体(a)、前記電極(2、2)及び直接抵抗加熱装置(A)の容器(1)に対して電気絶縁状態で挿入された温度センサ(TE)でもってその被加熱体(a)の温度を測定する前記直接抵抗加熱装置(A)における前記温度センサ(TE)の故障判定方法であって、
上記電極(2、2)に電圧を印加して被加熱体(a)を抵抗加熱している時に、上記温度センサ(TE)と電極(2、2)との間に所定の電位差(VTEA、VTEB)が生じた時、その温度センサ(TE)の上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサ(TE)の故障と判断する直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定方法。
【請求項2】
上記所定の電位差(VTEA、VTEB)が生じ、かつ、下記式1〜3が一定時間(T)成立すれば、上記温度センサ(TE)の電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することを特徴とする請求項1に記載の直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定方法。

両電極(2、2)間の電位差(VAB)=温度センサ(TE)と一方の電極(2)の間の電位差(VTEA)+温度センサ(TE)と他方の電極(2)の間の電位差(VTEB)・・・式1、
0≦VTEA≦VAB又は0≦VTEB≦VAB・・・式2、
TEA及びVTEB:一定・・・式3
【請求項3】
被加熱体(a)に設けたプラス・マイナスの対の両電極(2、2)に電圧を印加して前記被加熱体(a)をその抵抗熱で加熱するとともに、前記被加熱体(a)内にその被加熱体(a)、前記電極(2、2)及び直接抵抗加熱装置(A)の容器(1)に対して電気絶縁状態で挿入された温度センサ(TE)でもってその被加熱体(a)の温度を測定する前記直接抵抗加熱装置(A)における前記温度センサ(TE)の故障判定方法であって、
上記電極(2、2)に電圧を印加せずに被加熱体(a)を抵抗加熱していない時、上記温度センサ(TE)と電極(2、2)又は大地(E)との間に微弱電圧を印加し、その間に流れる電流を測定し、その一定以上の電流が一定時間(T)流れれば、その
温度センサ(TE)の上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサ(TE)の故障と判断する直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定方法。
【請求項4】
被加熱体(a)に設けたプラス・マイナスの対の両電極(2、2)に電圧を印加して前記被加熱体(a)をその抵抗熱で加熱するとともに、前記被加熱体(a)内にその被加熱体(a)、前記電極(2、2)及び直接抵抗加熱装置(A)の容器(1)に対して電気絶縁状態で挿入された温度センサ(TE)でもってその被加熱体(a)の温度を測定する前記直接抵抗加熱装置(A)における前記温度センサ(TE)の故障判定装置であって、
上記温度センサ(TE)と上記電極(2、2)の間に電位差計を設け、その電位差
計の出力を判定器に入力し、この判定器は、上記電極(2、2)に電圧を印加して被加熱体(a)を抵抗加熱している状態において、その電位差計の出力が所定の電位差(VTEA、VTEB)となった時、その温度センサ(TE)の上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサ(TE)の故障と判断する温度センサの故障判定装置。
【請求項5】
上記電位差計の出力が所定の電位差(VTEA、VTEB)となり、かつ、下記式1〜3が一定時間(T)成立すれば、上記温度センサ(TE)の電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサの故障と判断することを特徴とする請求項5に記載の直接抵抗加熱装置における温度センサの故障判定装置。

両電極(2、2)間の電位差(VAB)=温度センサ(TE)と一方の電極(2)の間の電位差(VTEA)+温度センサ(TE)と他方の電極(2)の間の電位差(VTEB)・・・式1、
0≦VTEA≦VAB又は0≦VTEB≦VAB・・・式2、
TEA及びVTEB:一定・・・式3
【請求項6】
被加熱体(a)に設けたプラス・マイナスの対の両電極(2、2)に電圧を印加して前記被加熱体(a)をその抵抗熱で加熱するとともに、前記被加熱体(a)内にその被加熱体(a)、前記電極(2、2)及び直接抵抗加熱装置(A)の容器(1)に対して電気絶縁状態で挿入された温度センサ(TE)でもってその被加熱体(a)の温度を測定する前記直接抵抗加熱装置(A)における前記温度センサ(TE)の故障判定装置であって、
上記温度センサ(TE)と電極(2、2)又は大地(E)との間に微弱電圧発生装置(5)及びその微弱電圧発生装置(5)の入口側か出口側に電流計(6)を直列に設け、前記電極(2、2)に電圧を印加せずに被加熱体(a)を抵抗加熱していない時、前記電流計(6)の直列回路に流れる電流をその電流計(6)で測定し、その電流計(6)に一定以上の電流が一定時間(T)流れれば、その温度センサ(TE)の上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサ(TE)の故障と判断する温度センサの故障判定装置。
【請求項7】
容器(1)内に収納された被収納物(b)に電気絶縁状態で挿入された温度センサ(TE)でもってその被収納物(b)の温度を測定する前記温度センサ(TE)の故障判定方法であって、
上記温度センサ(TE)と大地(E)との間に微弱電圧を印加し、その温度センサ(TE)と大地(E)の間に流れる電流を測定し、その一定以上の電流が一定時間(T)流れれば、その温度センサ(TE)の上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサ(TE)の故障と判断する温度センサの故障判定方法。
【請求項8】
容器(1)内に収納された被収納物(b)に電気絶縁状態で挿入された温度センサ(TE)でもってその被収納物(b)の温度を測定する前記温度センサ(TE)の故障判定装置であって、
上記温度センサ(TE)と大地(E)の間に微弱電圧発生装置(5)及びその微弱電圧発生装置(5)の入口側か出口側に電流計(6)を直列に設け、その電流計(6)の直列回路に流れる電流を前記電流計(6)によって測定し、その電流計(5)に一定以上の電流が一定時間(T)流れれば、その温度センサ(TE)の上記電気絶縁状態が保てなくなった状態とし、その温度センサ(TE)の故障と判断する温度センサの故障判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58966(P2011−58966A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209242(P2009−209242)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】