説明

温度センサの配置構造、温度校正装置、及び温度校正方法

【課題】温度センサの計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正する際に、より簡便な構成で高精度に補正することができるとともに、製作コスト及び運転コストをも低減できる温度センサの配置構造、温度校正装置、温度校正方法を提供する。
【解決手段】温度センサ3を支持する支持体を備えた温度センサの配置構造であって、支持体として内部に空気Aを通流可能に形成された円筒状の本体円筒部1を備え、棒状に形成された複数の温度センサ3が、本体円筒部1の径方向外側から軸芯X方向に向かって本体円筒部1内に挿入された状態で放射状に配置されるとともに、本体円筒部1の一端1aから他端1bに向けて空気Aを通流させ、放射状に配置された温度センサ3に空気Aを供給するファン5を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサを支持する支持体を備えた温度センサの配置構造、及びこの温度センサの配置構造を備え、温度センサの計測温度を基準温度センサにより計測された基準温度にて補正する温度補正手段を備えた温度校正装置、並びにこの温度校正装置を用いた温度校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような温度センサの温度校正装置においては、複数の温度センサの計測温度と基準温度センサの基準温度との温度差を計測して、この温度差が小さくなるように補正値を算出し、この補正値を用いて計測温度を補正(校正)する際に、以下のような温度センサの配置構造が採用されていた。
【0003】
例えば、棒状に形成された複数の温度センサを平行に密集接近させた状態で束にして配置し、その温度センサの束から少し離間した状態で平行に基準温度センサを配置する温度センサの配置構造が例示できる。
しかしながら、この温度センサの配置構造においては、複数の温度センサを密集接近した状態で束にして配置するため、温度センサの自己加熱によりその温度センサの周囲の空気が加熱される。よって、その温度センサの周囲に位置する温度センサは、温度センサの自己加熱により加熱された空気の温度を計測することになる。その結果、雰囲気中に存在する同一温度の空気を計測しようとしているにもかかわらず、各温度センサで異なる温度の空気を計測することになるという問題がある(いわゆる相互干渉)。
【0004】
この問題を解決するため、自己加熱による影響を受けないように、例えば、棒状に形成された複数の温度センサを平行で相互に距離を離して配置し、その平行に配置された温度センサの一端側に平行に基準温度センサを配置する温度センサの配置構造が例示できるが、複数の温度センサに対して同一温度の空気を通流させることが難しくなる。この場合、各温度センサが離れた状態で配置されるため配置空間が広くなり、一端側に配置された基準温度センサで計測した基準温度と、他端側から配置された複数の温度センサの各計測温度とで、それぞれの計測温度差(温度ムラ)が発生し、正確な補正ができにくいという問題がある。
【0005】
一方、上記温度センサの配置構造及び温度校正装置として、複数の温度センサ及び校正用温度センサ(本願の基準温度センサに相当)を収納可能な恒温ブロック(本願の支持体に相当)と、恒温ブロックを均一に昇温された状態に加熱するヒータと、を備えた温度センサの配置構造及び温度校正装置がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この特許文献1に記載の温度センサの配置構造及び温度校正装置では、恒温ブロックを円筒状に形成し、複数の温度センサのセンシング部を恒温ブロックの軸芯と平行な方向に収納可能な収納孔を、この恒温ブロックの一方の端面に周方向で複数個設け、校正用温度センサのセンシング部を恒温ブロックの軸芯と平行な方向に収容可能な収納孔をこの端面の中心付近に一つ設ける構成とされている。
【0007】
そして、特許文献1に記載の温度センサの配置構造及び温度校正装置では、複数の温度センサ及び校正用温度センサのそれぞれを各収納孔(密閉空間)に配置した状態で、ヒータに通電して恒温ブロックの各収納孔を均一な温度に維持し、複数の温度センサの計測温度及び校正用温度センサの基準温度を計測して、これら計測温度と基準温度とをそれぞれ比較する。これら計測温度が基準温度に対して大きな温度差がある場合にはその温度センサが不良であるとして交換し、温度差がほとんどない場合にはその温度センサをそのまま用いるという温度センサの補正(校正)を行うことにより、複数の温度センサと校正用温度センサとの温度差をできるだけ無くすことができ、これら温度差が少ない複数の温度センサを各検温点に配置することで、各検温点の温度を正確に監視できるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−304627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載の温度センサの配置構造及び温度校正装置では、複数の温度センサ及び校正用温度センサをそれぞれ収納する複数の収納孔を備えた恒温ブロック、そしてこれを加熱するヒータを設ける必要があるが、複数の収納孔を均一な温度に維持可能な恒温ブロックの構成、及びこの恒温ブロックを均一な温度に加熱可能なヒータの構成は比較的複雑なものとなり、装置構成が比較的大きく、製作コストも大きくなりやすいという問題がある。この問題は、特に、温度センサの計測温度と校正用温度センサの基準センサとの温度差ができるだけ小さくなるように高精度に補正を行う場合に、より顕著に現れる。
また、ヒータにより恒温ブロックを加熱する構成であるので、加熱のためのエネルギーが比較的多く必要となり、より運転コストを軽減できることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度センサの計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正する際に、より簡便な構成で高精度に補正することができるとともに、製作コスト及び運転コストをも低減できる温度センサの配置構造、温度校正装置、温度校正方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る温度センサの配置構造は、温度センサを支持する支持体を備えた温度センサの配置構造であって、その特徴構成は、前記支持体として内部に空気を通流可能に形成された円筒状の本体円筒部を備え、棒状に形成された複数の前記温度センサが、前記本体円筒部の径方向外側から軸芯方向に向かって前記本体円筒部内に挿入された状態で放射状に配置されるとともに、
前記本体円筒部の一端から他端に向けて空気を通流させ、前記放射状に配置された前記温度センサに前記空気を供給するファンを備えた点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、内部に空気を通流可能に形成された円筒状の本体円筒部に、棒状に形成された複数の温度センサが、本体円筒部の径方向外側から軸芯方向に向かって本体円筒部内に挿入された状態で放射状に配置され、本体円筒部の一端から他端に向けて空気を通流させるファンを設けるだけの構成であるため、非常に簡便な構成で製作コストを低減した温度センサの配置構造とすることができる。
また、このような簡便な構成でありながら、本体円筒部の内部を通流する空気を、ファンにより当該本体円筒部内に放射状に配置された複数の温度センサにほぼ直交する状態で均一に供給することができるため、複数の温度センサの自己加熱を良好に防止して、複数の温度センサの各計測温度を雰囲気中の空気の温度を正確に反映した温度とすることができる。これにより、複数の温度センサの正確な計測温度を用いて、当該計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正することができ、補正後の温度センサが測定対象箇所に配置された際に雰囲気中の温度から上記自己加熱による温度上昇分だけ上昇した計測温度を示してしまうこと等を防止して、高精度な計測温度の補正を行うことが可能となる。
さらに、ヒータ等の消費電力の大きな機器を用いることなく、比較的低消費電力のファンを駆動する構成であるので、温度センサの計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正する際の運転コストを低減することが可能となる。
【0013】
本発明に係る温度センサの配置構造の更なる特徴構成は、棒状に形成された基準温度センサが、前記本体円筒部の軸芯と平行で前記軸芯上に配置されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、棒状に形成された基準温度センサが本体円筒部の軸芯と平行でこの軸芯上に配置されているので、ファンによる本体円筒部内の空気の通流を妨げることがないとともに、本体円筒部内に放射状に配置された複数の温度センサと基準温度センサとの距離を均一に保つことができる。これにより、本体円筒部内における基準温度センサの基準温度と複数の温度センサの計測温度とを雰囲気中の空気の温度と同一にすることができ、基準温度と計測温度との温度ムラの発生を防止して、計測温度を基準温度にて補正する際に高精度な補正を行うことが可能となる。
【0015】
本発明に係る温度センサの配置構造の更なる特徴構成は、前記ファンが前記本体円筒部の他端側に設けられ、前記ファンによる前記空気の流れ方向の上流側に前記基準温度センサ及び前記温度センサが配置されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、ファンが本体円筒部の他端側に設けられ、ファンによる空気の流れ方向の上流側に基準温度センサ及び温度センサが配置されているので、本体円筒部の内部を一端側から他端側に通流する空気が、基準温度センサ及び温度センサに供給された後、ファンを通過することとなる。これにより、ファンの発熱による影響を受けて、本体円筒部内を通流する空気が温度ムラのある空気となる等の不具合の発生を防止することができる。
【0017】
本発明に係る温度センサの配置構造の更なる特徴構成は、前記本体円筒部の下部に当該本体円筒部を支持する本体台座部を備え、前記ファンにより前記本体円筒部の他端側から排出された空気が、前記本体台座部の上部から導入されて内部を通流し、当該本体台座部の側部から排出されるように構成されている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、ファンにより本体円筒部の他端側から排出された空気が、本体台座部の上部から導入されて内部を通流し、本体台座部の側部から排出されるので、本体円筒部内を通流する空気の流れを阻害することがなく、本体円筒部の他端側から本体台座部の上部及び側部を介して外部に排出することができる。
また、空気の流れを阻害することがないことに加え、本体台座部を温調対象空間等の床部に載置するだけでよく、非常に持ち運び等取り扱いが容易な構成とすることができる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る温度校正装置は、温調対象空間内の温度を計測する温度センサの計測温度を、基準温度センサにより計測された基準温度にて補正する温度補正手段を備えた温度校正装置であって、その特徴構成は、上記いずれか一つの特徴構成の温度センサの配置構造を備え、前記温度センサの配置構造に前記温度センサ及び前記基準温度センサを配置した状態で、
前記温度補正手段が、前記ファンを駆動させて前記温度センサの計測温度及び前記基準温度センサの基準温度を計測し、前記温度センサの計測温度を前記基準温度センサの基準温度にて補正するように構成されている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、上記温度センサの配置構造に温度センサ及び基準温度センサを配置した状態で、温度補正手段がファンを駆動させて温度センサの計測温度及び基準温度センサの基準温度を計測し、温度センサの計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正するので、温度センサの計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正する際に、より簡便な構成で高精度に補正することができ、製作コスト及び運転コストをも低減できる温度校正装置を構成することができる。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る温度校正方法は、上記特徴構成の温度校正装置を用いて、前記温度センサの計測温度を前記基準温度にて補正する温度校正方法であって、
サンプリング時間内に前記温度センサ及び前記基準温度センサにて温度計測処理を行い、その温度計測処理における前記温度センサの計測温度を補正値にて補正した補正温度と前記温度計測処理における前記基準温度センサの基準温度との温度差を求め、その求めた温度差が許容範囲内であるか否かを判別する判別処理を行い、前記温度差が前記許容範囲外であれば前記温度差が前記許容範囲内となるまで前記温度計測処理及び前記判別処理を繰り返し実行する構成で、
前記許容範囲を第1許容範囲に設定し、前記補正値について、1回目の前記判別処理では補正値をゼロとし、2回目以降の前記判別処理では前回の判別処理における温度差を前回の判別処理における補正値に加算して更新した更新後の補正値を用いる第1補正工程を実行し、
前記温度差が前記第1許容範囲内になると、前記許容範囲を前記第1許容範囲よりも狭い範囲に設定された第2許容範囲に設定し、前記補正値について、1回目の前記判別処理では前記第1補正工程において前記温度差が前記第1許容範囲内となったときの補正値を用い、2回目以降の前記判別処理では前回の判別処理における温度差を前回の判別処理における補正値に加算して更新した更新後の補正値を用いる第2補正工程を実行して、
前記第2補正工程において前記温度差が前記第2許容範囲内であると判別したときの補正値を、前記計測温度を前記基準温度にて補正するときの校正用補正値として求め、前記計測温度に前記校正用補正値を加算して前記計測温度を補正する点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、第1補正工程では、まず、1回目の温度計測処理及び判別処理を行うが、このときの補正値をゼロとし、補正温度と基準温度との温度差が第1許容範囲内であるか否かを判別する。温度差が第1許容範囲内であれば、基準温度に対して計測温度が第1許容範囲内にあると判別できるので、補正値をゼロのままとする。温度差が第1許容範囲外であれば、基準温度に対して計測温度が第1許容範囲内にないと判別できるので、そのときの温度差を加算して補正値を更新し、2回目の温度計測処理及び判別処理を行う。これにより、2回目以降の判別処理では、計測温度を更新後の補正値により補正温度に補正しているので、基準温度に対して補正温度が第1許容範囲内にあるか否かを判別することができる。このようにして、第1補正工程では、基準温度に対して計測温度が第1許容範囲内になるように補正値を求めることができる。
第2補正工程では、第1補正工程と同様に、温度計測処理及び判別処理を行うが、1回目の判別処理では、第1補正工程において温度差が第1許容範囲内になったときの補正値を用いる。これにより、基準温度に対して計測温度が第1許容範囲内となる補正値を前提として、基準温度に対して計測温度が第1許容範囲よりも狭い範囲の第2許容範囲内になるように補正値を求めることができる。
そして、第2補正工程において温度差が第2許容範囲内であると判別したときの補正値を、計測温度を基準温度にて補正するときの校正用補正値として求めるので、より高精度に補正された校正用補正値により、計測温度を基準温度に高精度に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る温度センサの配置構造を備えた温度校正装置の概略構成を示す斜視図
【図2】温度校正装置の概略縦断面図
【図3】図2における矢示III方向の概略横断面図
【図4】図2における矢示IV方向の概略横断面図
【図5】温度校正方法における、基準温度センサの基準温度が安定しているか否かを判定する判定処理、及び第1補正工程を示すフロー図
【図6】温度校正方法における第2補正工程を示すフロー図
【図7】(a)は、本願に係る温度校正装置を用いて、温度センサの計測温度の補正を行った場合の補正温度と経過時間との関係を示すグラフ図、(b)は、温度センサを束にして配置する従来の温度校正装置を用いて、温度センサの計測温度の補正を行った場合の補正温度と経過時間との関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る温度センサの配置構造を備えた温度校正装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る温度センサの配置構造を備えた温度校正装置50(以下、温度校正装置50と略称する)の概略構成を示す斜視図、図2は、温度校正装置50の概略縦断面図、図3は、図2における矢示III方向の概略横断面図、図4は、図2における矢示IV方向の概略横断面図である。
【0025】
まず、温度校正装置50の構成について説明する。
なお、温度校正装置50は、複数の温度センサ3を温調対象空間(図示せず)の各温度測定箇所に配置して、各温度測定箇所における温度を計測する前に、これら複数の温度センサ3が温度を正確に示しているか否かを、基準となる基準温度センサ4の基準温度との対比により判定し、正確に示している場合にはその温度センサ3をそのまま使用し、正確に示していない場合にはその温度センサ3の計測温度を補正(校正)してから使用して、各温度測定箇所における温度を正確に測定することができるようにする装置である。
【0026】
ここで、図1、図2に示すように、複数の温度センサ3及び基準温度センサ4は、温度を電気信号に変換できる公知の温度センサであり、例えば、測温抵抗体、熱電対、半導体温度計などを用いることができる。そして、これら複数の温度センサ3及び基準温度センサ4は、棒状に形成され、一端が温度検知部3a,4aとされ他端が拡径された挿入規制部3b,4bとされている。なお、挿入規制部3b,4b側はそれぞれ、計測した温度情報等を後述する制御手段C内の温度補正手段10に入出力可能に接続されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、温度校正装置50は、内部に空気Aを通流可能に形成された円筒状の本体円筒部1(温度センサ3を支持する支持体の一例)と、本体円筒部1の下部に当該本体円筒部1を支持する本体台座部2と、本体円筒部1の一端1aから他端1bに向けて空気Aを通流させるファン5と、温度校正装置50の運転等を制御する制御手段Cとを備える。
【0028】
本体円筒部1は、内部に空気Aを通流可能な状態で、複数の長方形状の平板の長手方向の辺を密着して接触固定することにより(例えば、図1では、12枚の平板を用いることにより)、円筒状に形成されている。なお、この円筒状に形成するための平板の数は適宜変更することができ、また、平板を用いることなく円弧状の円弧板を用いることもできる。更に、平板及び円弧板を用いることなく、形成時から断面円形状の円筒状に形成したものを用いることもできる。
【0029】
本体円筒部1の一端1a側には、基準温度センサ4を配置可能な基準温度センサ配置部7としての、基準温度センサ挿入部7aを備えた基準温度センサ配置ステー7bが本体円筒部1の径方向に固定配置されている。基準温度センサ挿入部7aは、基準温度センサ4の挿入規制部4bを受入可能な円筒状の挿入孔として形成され、その底部に基準温度センサ4の温度検知部4aを受入可能な挿入孔よりも小径の貫通孔を備えるように構成されている。したがって、この基準温度センサ挿入部7aに基準温度センサ4を温度検知部4a側から挿入することで、挿入規制部4bの下端部を基準温度センサ挿入部7aの上端部に当接させ、温度検知部4aを基準温度センサ挿入部7aの下端部から複数の温度センサ3側に突出させた状態で、基準温度センサ4を本体円筒部1の軸芯Xと平行で当該軸芯X上に配置することができるように構成されている。
【0030】
本体円筒部1の他端1b側にはファン5が設けられ、このファン5により外部空間から本体円筒部1内に空気Aを吸引し、本体円筒部1の一端1a側から他端1b側にこの空気Aを通流させるとともに、後述する本体台座部2の上部2a及び側部2b(空気排出孔8)を介して外部空間に空気Aを排出可能に構成されている。なお、このファン5は公知の軸流ファンやシロッコファン等を用いることができ、本実施形態では、図2及び図4に示すように、軸流ファンが用いられている。
【0031】
そして、本体円筒部1の一端1aと他端1bとの間には、温度センサ3を放射状に配置可能な円筒状の温度センサ挿入部6(温度センサ配置部の一例)が、本体円筒部1を径方向に貫通し当該本体円筒部1内に突出する形態で、周方向に複数設けられている。この温度センサ挿入部6は、図1では、例えば、周方向に均等の角度(例えば、30度)を置いて12箇所設けられている。温度センサ挿入部6は、温度センサ3の挿入規制部3bを受入可能な円筒状の挿入孔として形成され、その一端部に温度センサ3の温度検知部3aを受入可能な挿入孔よりも小径の貫通孔を備えるように構成されている。したがって、この温度センサ挿入部6に温度センサ3を温度検知部3a側から挿入することで、挿入規制部3bを温度センサ挿入部6の一端部に当接させ、温度検知部3aを温度センサ挿入部6の一端部から本体円筒部1の軸芯X側(基準温度センサ4の温度検知部4a側)に突出させた状態で、複数の温度センサ3を本体円筒部1の軸芯Xと略直交する状態で放射状に配置することができるように構成されている。
【0032】
したがって、本体円筒部1内において、複数の温度センサ3の隣接する温度検知部3a同士を、互いに均等な位置に配置することができるとともに、これら複数の温度検知部3aと基準温度センサ4の温度検知部4aとの距離も均一に保つことができるため、温度センサ3同士の相互加熱による影響や温度ムラによる影響を排除することができるように、複数の温度センサ3及び基準温度センサ4を配置することが可能となっている。
【0033】
本体台座部2は、概略箱状に形成され、その上部2aに本体円筒部1を配置して支持することが可能に構成されている。本体台座部2の上部2a(本体円筒部1の他端1b側に相当)には、本体円筒部1の他端1bと連通する開口部が形成され、この開口部にファン5が当該本体台座部2内に突出する状態で固定配置されている。本体台座部2の側部2bには、外部空間と連通する複数の空気排出孔8が形成されている。この空気排出孔8は、図1及び図2では、例えば、本体台座部2の4つの側部2b全てに形成されている。
【0034】
制御手段Cは、中央演算処理装置(CPU)、メモリ、記憶部等からなり、当該CPUにより所定のプログラムを実行して情報を処理することができる公知の情報処理手段で構成される。図2に示すように、制御手段Cは、温度補正手段10としての温度計測判別処理部10aと、校正用補正値演算部10bと、記憶部11とを備えて構成されている。
【0035】
温度計測判別処理部10aは、サンプリング時間内に温度センサ3及び基準温度センサ4にて温度計測処理を行い、その温度計測処理における温度センサ3の計測温度を補正値にて補正した補正温度と温度計測処理における基準温度センサ4の基準温度との温度差を求め、その求めた温度差が許容範囲内であるか否かを判別する判別処理を行い、温度差が許容範囲外であれば温度差が許容範囲内となるまで温度計測処理及び判別処理を繰り返し行うように構成されている。この温度計測処理及び判別処理の詳細については、後述するが、温度計測判別処理部10aは、許容範囲を第1許容範囲に設定し、補正値について、1回目の判別処理では補正値をゼロとし、2回目以降の判別処理では前回の判別処理における温度差を前回の判別処理における補正値に加算して更新した更新後の補正値を用いる第1補正工程を行い、温度差が第1許容範囲内になると、許容範囲を第1許容範囲よりも狭い範囲に設定された第2許容範囲に設定し、補正値について、1回目の判別処理では第1補正工程において温度差が第1許容範囲内となったときの補正値を用い、2回目以降の判別処理では前回の判別処理における温度差を前回の判別処理における補正値に加算して更新した更新後の補正値を用いる第2補正工程を行う構成とされている。
【0036】
校正用補正値演算部10bは、温度計測判別処理部10aが第2補正工程において温度差が第2許容範囲内であると判別したときの補正値を、計測温度を基準温度にて補正するときの校正用補正値として求める構成とされている。なお、同様に、校正用補正値演算部10bは、段階的な補正工程である第3補正工程以降において第3許容範囲内等であると判別したときの補正値を、校正用補正値として求めることも可能に構成されている。
【0037】
記憶部11は、温度計測判別処理部10aにて計測された温度センサ3の計測温度、基準温度センサ4の基準温度、第1補正工程や第2補正工程で用いられる補正値等を記憶することができるように構成されている。
【0038】
表示部12は、公知のLEDやLCD等の表示機構により構成され、温度計測判別処理部10aにて計測された温度センサ3の計測温度、基準温度センサ4の基準温度、第1補正工程や第2補正工程で用いられる補正値等を表示することが可能に構成されている。
【0039】
入力部13は、公知のキーボード等のインターフェースにより構成され、第1補正工程に用いられる第1回目の判別処理における補正値等を制御手段Cの温度補正手段10に入力可能に構成されている。
【0040】
以上が、本発明に係る温度校正装置50の構成であるが、この温度校正装置50を用いて複数の温度センサ3の計測温度を補正(校正)する温度校正方法について、図5及び図6を用いて以下に説明する。
図5は、温度校正方法における、基準温度センサの基準温度が安定しているか否かを判定する判定処理、及び第1補正工程を示すフロー図であり、図6は、温度校正方法における第2補正工程を示すフロー図である。
【0041】
図5に示すように、温度校正装置50の運転が開始されると、温度補正手段10(制御手段C)は、所定の回転速度でファン5を回転駆動させて、本体円筒部1の一端1a側から他端1b側に一定風速で一定流量の空気Aを通流させ、本体台座部2の上部2a及びファン5を介して本体台座部2の側部2bから外部空間に当該空気Aを排出させる。そして、入力部13から第1補正工程において1回目の判別処理に用いられる補正値BAを、0とする指令が入力されると(ステップ♯1)、温度センサ3の計測温度PVに補正値BAを加算して補正した補正温度と基準温度センサ4の基準温度SPとの温度差BAが許容範囲内となるように、温度センサ3の計測温度PVを補正する補正値BAを求める自動補正がスタートする(ステップ♯2)。
【0042】
そして、温度補正手段10の温度計測判定処理部10aは、基準温度センサ4により計測された基準温度SPが安定しているか否かを判定する判定処理を行う(ステップ♯3〜ステップ♯6)。この判定処理は第1補正工程及び第2補正工程が実行される前に行われ、基準温度SPの信頼性を向上させることができる。
具体的には、この判定処理においては、X秒毎(例えば、0.02秒毎)のサンプリング周期で基準温度SPをNz回のサンプリング回数取得し、この基準温度SPの平均値SPaを算出するとともに(ステップ♯3)、X秒毎にこの取得した基準温度SPの最大値SPmax及び最小値SPminを取得する(ステップ♯4)。そして、最大値SPmax及び最小値SPminが、基準温度SPの平均値SPa±Tz以内か否かを判定し(ステップ♯5)、平均値SPa±Tz以内でなければ(ステップ♯5:No)、表示部12にアラームを表示して(ステップ♯6)ステップ♯3に戻り、平均値SPaの算出、最大値SPmax及び最小値SPminの取得、上記判定を繰り返す(ステップ♯3〜ステップ♯6)。一方、平均値SPa±Tz以内であれば(ステップ♯5:Yes)、基準温度SPが安定していると判別して、第1補正工程を実行する。よって、基準温度センサ4の基準温度SPが安定した状態としたうえで、第1補正工程及び第2補正工程において、この安定した基準温度SPと温度センサ3の計測温度PVを補正値BAにて補正した補正温度との温度差BAxを、より高精度に求めることができる。
【0043】
次に、温度計測判定処理部10aは、第1補正工程を実行する(ステップ♯7〜ステップ♯18)。第1補正工程では、基準温度SPの平均値SPaを初期化し、計測温度PVの最大値PVmax、最小値PVmin、平均値PVaがある場合にはこれら値も初期化する(ステップ♯7)。そして、サンプリング時間内において温度センサ3及び基準温度センサ4にて温度計測処理を行う(ステップ♯8〜ステップ♯10)。ここで、サンプリング時間は、サンプリング周期(X秒毎)とサンプリング回数(Na)との積である。
温度計測処理では、X秒毎(例えば、0.02秒毎)のサンプリング周期で温度センサ3の計測温度PVをNa回(例えば、100回)のサンプリング回数取得し、取得した計測温度PVに補正値BAを加算して補正温度の平均値PVaを算出するとともに(ステップ♯8)、X秒毎のサンプリング周期で温度センサ3の計測温度PVをNa回(例えば、100回)のサンプリング回数取得し、取得した計測温度PVに補正値BAを加算して最大値PVmax及び最小値PVminを取得する(ステップ♯9)。ここで、計測温度PVに加算される補正値BAは、ステップ♯1において入力部13から入力された値である0とされている。さらに、X秒毎(例えば、0.02秒毎)のサンプリング周期で基準温度センサ4の基準温度SPをNa回(例えば、100回)のサンプリング回数取得し、取得した基準温度SPの平均値SPaを算出する(ステップ♯10)。
そして、最大値PVmax及び最小値PVminが、平均値PVa±Tx以内か否かを判定し(ステップ♯11)、平均値PVa±Tx以内でなければ(ステップ♯11:No)、平均値PVa±Tx以内でないことが5回カウントされていないときはステップ♯7に戻り(ステップ♯12:No)、5回カウントされているときには(ステップ♯12:Yes)表示部12にアラームを表示する(ステップ♯13)。これにより、平均値PVaの信頼性を向上することができ、平均値PVaの信頼性が低い場合には、アラームを表示してオペレータ等に報知することができる。
ステップ♯11において最大値PVmax及び最小値PVminが平均値PVa±Tx以内である場合には(ステップ♯11:Yes)、1回目の判別処理として基準温度SPの平均値SPaと計測温度PV(補正温度)の平均値PVaとの温度差BAxを算出し(ステップ♯14)、そして、温度差BAxが第1許容範囲±Ta以内か否かを判別する(ステップ♯15)。温度差BAxが第1許容範囲±Ta以内でない場合には(ステップ♯15:No)、補正値BA(1回目の判別処理では、BA=0)に温度差BAxを加算して、当該補正値BAを更新後の補正値BAに更新し(ステップ♯16)、ステップ♯7に戻る。そして、この更新後の補正値BAにより、2回目以降の判別処理では、温度差BAxが第1許容範囲±Ta以内に入るまで繰り返し補正値BAの更新が行われる(ステップ♯7〜ステップ♯16)。これにより、第1補正工程では、基準温度SPに対して計測温度PVが第1許容範囲±Ta内になるように更新後の補正値BAを求めることができる。なお、ステップ♯16における補正値BAの更新と同時に、温度差BAxが第1許容範囲±Ta以外であることが3回カウントされていないときは(ステップ♯17:No)ステップ♯16に戻り、3回カウントされているときには(ステップ♯17:Yes)表示部12にアラームを表示する(ステップ♯18)。これにより、温度差BAxの値が第1許容範囲±Taの範囲に収まらない場合には、アラームを表示して報知することができ、基準温度SPの平均値SPa、計測温度PVやこれに補正値BAを加算した補正温度、当該補正値BA(本例ではBA=0)等が、適正でない可能性があると推定することが可能となる。
一方、温度差BAxが第1許容範囲±Ta以内である場合には(ステップ♯15:Yes)、第2補正工程に移行する。
【0044】
次に、図6に示すように、温度計測判定処理部10aは、第2補正工程を実行する(ステップ♯21〜ステップ♯33)。この第2補正工程では、第1補正工程と同様の補正を行うが、温度計測処理における計測温度PV及び基準温度SPのサンプリング周期(X秒毎)はそのままでサンプリング回数をNa回(例えば、100回)からNb回(例えば、250回)に増加させる形態で、第1補正工程におけるサンプリング時間よりも第2補正工程におけるサンプリング時間を長くするように構成されている点で異なる。また、第2補正工程において、サンプリング時間内に取得した計測温度PVを補正する際の補正値BAを、第1補正工程において温度差BAxが第1許容範囲±Taに入った際の補正値BAを用いている点でも、第1補正工程とは異なる。さらに、第1補正工程で用いられる第1許容範囲±Taよりも狭い範囲の第2許容範囲±Tbを、第2補正工程において用いる点においても異なる。これにより、第2補正工程においては、基準温度SPに対して計測温度PVが第1許容範囲±Ta内となる補正値BAを前提として、基準温度SPに対して計測温度PVが第1許容範囲±Taよりも狭い範囲の第2許容範囲±Tbになるように高精度に補正値BAを求めることができる。以下、第2補正工程について説明する。
【0045】
第2補正工程では、基準温度SPの平均値SPa、計測温度PVの最大値PVmax、最小値PVmin、平均値PVaを初期化する(ステップ♯21)。そして、サンプリング時間内において温度センサ3及び基準温度センサ4にて温度計測処理を行う(ステップ♯22〜ステップ♯24)。ここで、サンプリング時間は、サンプリング周期(X秒毎)とサンプリング回数(Nb)との積である。
温度計測処理では、X秒毎(例えば、0.02秒毎)のサンプリング周期で温度センサ3の計測温度PVをNb回(例えば、250回)のサンプリング回数取得し、取得した計測温度PVに補正値BA(第1補正工程で温度差BAxが第1許容範囲±Ta内となった際の補正値BA)を加算して平均値PVaを算出するとともに(ステップ♯22)、X秒毎のサンプリング周期で温度センサ3の計測温度PVをNb回のサンプリング回数取得し、取得した計測温度PVに補正値BA(第1補正工程で温度差BAxが第1許容範囲±Ta内となった際の補正値BA)を加算して最大値PVmax及び最小値PVminを取得する(ステップ♯23)。さらに、X秒毎(例えば、0.02秒毎)のサンプリング周期で基準温度センサ4の基準温度SPをNb回(例えば、250回)のサンプリング回数取得し、取得した基準温度SPの平均値SPaを算出する(ステップ♯24)。
そして、最大値PVmax及び最小値PVminが、平均値PVa±Tx以内か否かを判定し(ステップ♯25)、平均値PVa±Tx以内でなければ(ステップ♯25:No)、平均値PVa±Tx以内でないことが5回カウントされていないときはステップ♯21に戻り(ステップ♯26:No)、5回カウントされているときには(ステップ♯26:Yes)表示部12にアラームを表示する(ステップ♯27)。これにより、平均値PVaの信頼性を向上することができ、平均値PVaの信頼性が低い場合には、アラームを表示してオペレータ等に報知することができる。
ステップ♯25において最大値PVmax及び最小値PVminが平均値PVa±Tx以内である場合には(ステップ♯25:Yes)、1回目の判別処理として基準温度SPの平均値SPaと計測温度PV(補正温度)の平均値PVaとの温度差BAxを算出し(ステップ♯28)、そして、温度差BAxが第2許容範囲±Tb以内か否かを判別する(ステップ♯29)。なお、第2許容範囲±Tbは第1許容範囲±Taよりも狭い範囲に設定されている。温度差BAxが第2許容範囲±Tb以内でない場合には(ステップ♯29:No)、補正値BA(1回目の判別処理では、補正値BAは第1補正工程において温度差BAxが第1許容範囲±Ta内に入った場合における補正値BA)に温度差BAxを加算して、当該補正値BAを更新後の補正値BAに更新し(ステップ♯30)、ステップ♯21に戻る。この更新後の補正値BAにより、2回目以降の判別処理では、温度差BAxが第2許容範囲±Tb以内に入るまで繰り返し補正値BAの更新が行われる(ステップ♯21〜ステップ♯30)。これにより、第2補正工程では、基準温度SPに対して計測温度PVが第2許容範囲±Tb内になるように更新後の補正値BAをより高精度に求めることができる。なお、補正値BAの更新と同時に、温度差BAxが第2許容範囲±Tb以外であることが3回カウントされていないときは(ステップ♯31:No)ステップ♯30に戻り、3回カウントされているときには(ステップ♯31:Yes)表示部12にアラームを表示する(ステップ♯32)。これにより、温度差BAxの値が第2許容範囲±Tbの範囲に収まらない場合には、アラームを表示して報知することができ、基準温度SPの平均値SPa、計測温度PVやこれに補正値BAを加算した補正温度、当該補正値BA等が、適正でない可能性があると推定することが可能となる。
一方、温度差BAxが第2許容範囲±Tb以内である場合には(ステップ♯29:Yes)、基準温度SPの平均値SPa、計測温度PVの最大値PVmax、最小値PVmin、平均値PVaを初期化し(ステップ♯33)、ファン5を停止して、自動補正を終了する。
【0046】
そして、校正用補正値演算部10bは、温度計測判別処理部10aが温度差BAxが第2許容範囲±Tb以内であると判別したときの補正値BAを、計測温度PVを基準温度SPにて補正するときの校正用補正値として求める。このようにして得られた校正用補正値を、温度センサ3の計測温度PVに加算して補正することにより、温度センサ3の計測温度PVを基準温度センサ4の基準温度SPに対して第2許容範囲±Tb内とすることができ、高精度の補正を実現することができる。例えば、第1許容範囲±Taを±0.050℃、第2許容温度±Tbを±0.025℃、或いは第1許容範囲±Taを±0.025℃、第2許容温度±Tbを±0.010℃とすることにより、第1補正工程から第2補正工程に進むにつれて、より高精度に補正を行うことができる。
【0047】
[実施例]
ここで、本願の温度校正装置50を用いて複数の温度センサ3の計測温度PVの補正を行った。その結果を、計測温度PVの最大値を有する温度センサ3と最小値を有する温度センサ3とについて代表して、図7(a)に示す。なお、図7(a)は、本願に係る温度校正装置50を用いて、温度センサの計測温度の補正を行った場合の補正温度と経過時間との関係を示すグラフ図である。
この図7(a)から判明するように、複数の温度センサ3の計測温度PVは、最小値が22.95℃程度であり、最大値が23.05℃程度であるので、その最大幅は0.1℃程度となっている。
【0048】
[比較例]
一方、背景技術の欄で説明した、棒状に形成された温度センサの複数を平行に密集接近させた状態で束にして配置し、その温度センサの束から少し離間した状態で平行に基準温度センサを配置する温度センサの配置構造を採用した温度校正装置を用いて複数の温度センサの計測温度PVの補正を行った。その結果を、計測温度PVの最大値を有する温度センサと最小値を有する温度センサ3とについて代表して、図7(b)に示す。なお、図7(b)は、温度センサを束にして配置する従来の温度校正装置を用いて、温度センサの計測温度の補正を行った場合の補正温度と経過時間との関係を示すグラフ図である。
この図7(b)から判明するように、複数の温度センサの計測温度PVは、最小値が、22.90℃程度であり、最大値が23.08℃程度であるので、その最大幅は0.18℃程度となっている。
【0049】
よって、本願の温度校正装置50を用いた最大幅(0.1℃程度)は、従来の温度校正装置を用いた最大幅(0.18℃程度)に対して、0.08℃程度(45%程度)改善している。両者は分布測定の対象空間と装置構成が異なるため、上記最大幅の改善のすべてが温度校正装置が異なることによるものと考えることは困難であるが、温度校正装置が異なることが、仮に改善の50%に寄与していると推定しても、本願に係る温度校正装置50を用いると従来の温度校正装置を用いた場合と比較して、23%程度の改善を期待することができる。
【0050】
<別実施形態>
(1)上記実施形態では、温度校正装置50を用いて温度センサ3の計測温度PVを基準温度SPにて補正するにあたり、上記温度計測処理及び判別処理を繰り返し行って温度センサ3の計測温度PVに補正値BAを加算した補正温度と基準温度センサ4の基準温度SPとの温度差BAxが、所定の許容範囲内に入るように補正値BAを更新したが、ある程度の精度を確保できる温度センサ3の温度校正方法であれば、特に制限なく採用することができる。例えば、温度校正装置50を用いて公知の温度センサの温度校正方法により温度センサの計測温度の補正を行うこともできる。
【0051】
(2)上記実施形態では、温度校正装置50を用いて、第1補正工程、第2補正工程を実行する温度校正方法としたが、温度センサに要求される精度に応じて、第1補正工程のみ、第1補正工程及び第2補正工程及び第3補正工程、或いは、第3補正工程に加えて、段階的に補正工程を追加して実行する構成としてもよい。
例えば、第1補正工程及び第2補正工程及び第3補正工程を行う場合には、上記第1補正工程及び第2補正工程に加え、温度計測判定処理部10aが、第3補正工程を実行する。この第3補正工程では、第2補正工程と同様の補正を行うが、温度計測処理における計測温度PV及び基準温度PVのサンプリング周期(X秒毎)はそのままでサンプリング回数をNb回(例えば、250回)からNc回(例えば、500回)に増加させる形態で、第2補正工程におけるサンプリング時間よりも第3補正工程におけるサンプリング時間を長くするように構成されている点で異なる。また、第3補正工程において、サンプリング時間内に取得した計測温度PVを補正する際の補正値BAを、第2補正工程において温度差BAxが第2許容範囲±Tbに入った際の補正値BAを用いている点でも、第2補正工程とは異なる。さらに、第2補正工程で用いられる第2許容範囲よりも狭い範囲の第3許容範囲を第3補正工程において用いる点においても異なる。これにより、第3補正工程においては、基準温度SPに対して計測温度PVが第2許容範囲±Tb内となる補正値BAを前提として、基準温度SPに対して計測温度PVが第2許容範囲±Tbよりも狭い範囲の第3許容範囲±Tcになるように高精度に補正値BAを求めることができる。
【0052】
(3)上記実施形態では、ファン5を本体円筒部1の他端1b側に設けたが、ファン5による発熱の影響が少ない場合には、ファン5を本体円筒部1の一端側1aに設けることもできる。また、ファン5を本体台座部2内の側部2bに設ける構成とすることもできる。
【0053】
(4)上記実施形態では、基準温度センサ4を基準温度センサ配置ステー7bの基準温度センサ挿入部7aに挿入して、基準温度センサ4の全体を本体円筒部1内に挿入した状態で配置する構成としたが、基準温度センサ4の温度検知部4aが本体円筒部1内に挿入されていれば、基準温度センサ4の全体が本体円筒部1内に配置されている構成でなくてもよい。例えば、基準温度センサ配置ステーを本体円筒部1の上部に設け、基準温度センサ配置ステーの基準温度センサ挿入部に基準温度センサを挿入して、基準温度センサの温度検知部が本体円筒部内に配置されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、温度センサの計測温度を基準温度センサの基準温度にて補正する際に、より簡便な構成で高精度に補正することができるとともに、製作コスト及び運転コストをも低減できる技術として有用に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 本体円筒部(支持体)
1a 本体円筒部の一端
1b 本体円筒部の他端
2 本体台座部
2a 本体台座部の上部
2b 本体台座部の側部
3 温度センサ
4 基準温度センサ
5 ファン
50 温度校正装置
A 空気
X 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサを支持する支持体を備えた温度センサの配置構造であって、
前記支持体として内部に空気を通流可能に形成された円筒状の本体円筒部を備え、棒状に形成された複数の前記温度センサが、前記本体円筒部の径方向外側から軸芯方向に向かって前記本体円筒部内に挿入された状態で放射状に配置されるとともに、
前記本体円筒部の一端から他端に向けて空気を通流させ、前記放射状に配置された前記温度センサに前記空気を供給するファンを備えた温度センサの配置構造。
【請求項2】
棒状に形成された基準温度センサが、前記本体円筒部の軸芯と平行で前記軸芯上に配置されている請求項1に記載の温度センサの配置構造。
【請求項3】
前記ファンが前記本体円筒部の他端側に設けられ、前記ファンによる前記空気の流れ方向の上流側に前記基準温度センサ及び前記温度センサが配置されている請求項2に記載の温度センサの配置構造。
【請求項4】
前記本体円筒部の下部に当該本体円筒部を支持する本体台座部を備え、前記ファンにより前記本体円筒部の他端側から排出された空気が、前記本体台座部の上部から導入されて内部を通流し、当該本体台座部の側部から排出されるように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の温度センサの配置構造。
【請求項5】
温調対象空間内の温度を計測する温度センサの計測温度を、基準温度センサにより計測された基準温度にて補正する温度補正手段を備えた温度校正装置であって、
請求項1から4の何れか一項に記載の温度センサの配置構造を備え、前記温度センサの配置構造に前記温度センサ及び前記基準温度センサを配置した状態で、
前記温度補正手段が、前記ファンを駆動させて前記温度センサの計測温度及び前記基準温度センサの基準温度を計測し、前記温度センサの計測温度を前記基準温度センサの基準温度にて補正するように構成されている温度校正装置。
【請求項6】
請求項5に記載の温度校正装置を用いて、前記温度センサの計測温度を前記基準温度にて補正する温度校正方法であって、
サンプリング時間内に前記温度センサ及び前記基準温度センサにて温度計測処理を行い、その温度計測処理における前記温度センサの計測温度を補正値にて補正した補正温度と前記温度計測処理における前記基準温度センサの基準温度との温度差を求め、その求めた温度差が許容範囲内であるか否かを判別する判別処理を行い、前記温度差が前記許容範囲外であれば前記温度差が前記許容範囲内となるまで前記温度計測処理及び前記判別処理を繰り返し実行する構成で、
前記許容範囲を第1許容範囲に設定し、前記補正値について、1回目の前記判別処理では補正値をゼロとし、2回目以降の前記判別処理では前回の判別処理における温度差を前回の判別処理における補正値に加算して更新した更新後の補正値を用いる第1補正工程を実行し、
前記温度差が前記第1許容範囲内になると、前記許容範囲を前記第1許容範囲よりも狭い範囲に設定された第2許容範囲に設定し、前記補正値について、1回目の前記判別処理では前記第1補正工程において前記温度差が前記第1許容範囲内となったときの補正値を用い、2回目以降の前記判別処理では前回の判別処理における温度差を前回の判別処理における補正値に加算して更新した更新後の補正値を用いる第2補正工程を実行して、
前記第2補正工程において前記温度差が前記第2許容範囲内であると判別したときの補正値を、前記計測温度を前記基準温度にて補正するときの校正用補正値として求め、前記計測温度に前記校正用補正値を加算して前記計測温度を補正する温度校正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−175344(P2010−175344A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17218(P2009−17218)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】