説明

温度センサ

【課題】 サーミスタのリード線および外部電線が保持されて位置決めされると共に、小型化およびスリム化が可能な温度センサを提供すること。
【解決手段】 先端が閉塞されていると共に基端側に開口部2aを有したケース2と、サーミスタ素子3と、該サーミスタ素子3に一端が接続された一対のリード線4と、一対のリード線4の他端に一端が接続された一対の外部電線5と、一対のリード線4と一対の外部電線5とを保持していると共に注型樹脂が注入されたケース2内に開口部2aから挿入されているガイド部材6とを備え、該ガイド部材6が、一対のリード線4が嵌め込み可能な一対の第1溝部6aが形成された先端部6Aと、一対の外部電線5が嵌め込み可能な一対の第2溝部6bが形成された後端部6Bと、先端部6Aと後端部6Bとを連結すると共に一対の外部電線5の間に配された中間支持棒部6Cとで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内にサーミスタ素子が収納された温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド車が実用化されているが、これらに搭載されるモータには温度センサが取り付けられて温度計測が行われている。従来、モータ用などの温度センサとしては、樹脂ケースの中にサーミスタのリード線と外部電線とを金属製の端子で接続したものを組み込んで、樹脂ケース内に注型樹脂を充填したものが知られている。
【0003】
この温度センサでは、近年の小型化や薄型化に伴い、図5の(a)に示すように、ケース102の中に、サーミスタ素子3に接続されたリード線4と外部電線5とを金属製の端子7で接続したものを組み込む際、図5の(b)に示すように、リード線4が例えば直径φ=0.17mmと細いため、ケース102に当たってリード線4が曲がってしまうおそれがあり、組み込み作業性が悪いという問題があった。また、近接した金属製の端子7同士が接触し易く、電気的絶縁が確保できないという問題もあった。さらに、2本の外部電線5が互いに固定されていないため、ケース102内への組み込みが難しいと共に、ケース102内におけるサーミスタ素子3の位置がばらつくため、応答性が安定しないという不都合があった。
【0004】
このため、例えば特許文献1では、セラミックス管が一体となって封止された、対をなすリード線を有した小形サーミスタ素子の該リード線に、絶縁保護チューブをガラス封止した根元、或いはセラミックス管の2穴の奥まで挿入したセンサと、外部電線を半田等で接続し、リード線と外部電線とのリード線接続部にリード線間及び金属保護ケースとリード線接続部との接触防止・絶縁保護用樹脂成形ホルダーをはめ込み、かつリード線接続部を直接充填剤で封止することにより、機械的強度を高めたサーミスタ温度センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3028906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載の温度センサでは、樹脂成形ホルダーの溝にリード線とリード線接続部と外部電線とを嵌め込んで固定しているが、リード線とリード線接続部と外部電線とをまとめて固定するための樹脂成形ホルダーが大きく、太くまたは幅広になってしまい、温度センサ自体の小型化やスリム化が困難であるという不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、サーミスタのリード線および外部電線が保持されて位置決めされると共に、小型化およびスリム化が可能な温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明の温度センサは、先端が閉塞されていると共に基端側に開口部を有したケースと、サーミスタ素子と、該サーミスタ素子に一端が接続された一対のリード線と、一対の前記リード線の他端に一端が接続された一対の外部電線と、一対の前記リード線と一対の前記外部電線とを保持していると共に注型樹脂が注入された前記ケース内に前記開口部から挿入されているガイド部材とを備え、該ガイド部材が、一対の前記リード線が嵌め込み可能な一対の第1溝部が形成された先端部と、一対の前記外部電線が嵌め込み可能な一対の第2溝部が形成された後端部と、前記先端部と前記後端部とを連結すると共に一対の前記外部電線の間に配された中間支持棒部とで構成されていることを特徴とする。
【0009】
この温度センサでは、ガイド部材が、リード線が嵌め込み可能な第1溝部が形成された先端部と、外部電線が嵌め込み可能な第2溝部が形成された後端部と、これらを連結すると共に一対の外部電線の間に配された中間支持棒部とで構成されているので、細い中間支持棒部が外部電線間に配されることでケース内に挿入する部分を細くすることができ、全体の小型化およびスリム化が可能になる。
なお、リード線および外部電線は、それぞれガイド部材で保持された状態でケースに挿入されるので、組み込み時におけるリード線の曲がりやリード線と外部電線との接続部同士の接触が防止されると共に、ケース内におけるサーミスタ素子の位置のばらつきが抑制され、応答性が安定する。
【0010】
第2の発明の温度センサは、第1の発明において、前記先端部が、先細の略三角板状に形成され、一対の前記第1溝部が、先端に向けて互いの間隔を漸次狭く形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、前記先端部が、先細の略三角板状に形成され、一対の第1溝部が、先端に向けて互いの間隔を漸次狭く形成されているので、先端部を薄くすることができると共に、一対のリード線の間隔を先端に向けて狭めつつ保持することができる。これにより、ケースの先端部を薄くかつ細くすることが可能になる。
【0011】
第3の発明の温度センサは、第1または第2の発明において、前記開口部が、前記後端部に対応した形状とされ、前記後端部が、前記開口部を閉塞して前記ケースの後端と面一とされていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、ケースの開口部が前記後端部に対応した形状とされ、前記後端部が、開口部を閉塞してケースの後端と面一とされているので、前記後端部がケースの開口部の蓋として機能すると共に、前記後端部が開口部から突出せず、外観上も好ましい。
【0012】
第4の発明の温度センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記ケースの内部に、一対の前記外部電線をガイドする一対の電線用溝が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、ケースの内部に、一対の外部電線をガイドする一対の電線用溝が形成されているので、ケース内の電線用溝においても外部電線が位置決めされるため、外部電線を精度良く組み込むことができ、さらに安定してケース内に収納することができる。
【0013】
第5の発明の温度センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記ケースが、長孔状の前記開口部を有して扁平形状とされ、前記後端部が、前記開口部の両端部の内周面に沿って挿入方向に突出して形成された一対のガイド突起を両端部に有していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、後端部が、開口部の両端部の内周面に沿って挿入方向に突出して形成された一対のガイド突起を両端部に有しているので、挿入時に一対のガイド突起により後端部が位置決めされ、ガイド部材を精度良く組み込むことができ、安定してケース内に収納することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明の温度センサによれば、ガイド部材が、リード線が嵌め込み可能な第1溝部が形成された先端部と、外部電線が嵌め込み可能な第2溝部が形成された後端部と、これらを連結すると共に一対の外部電線の間に配された中間支持棒部とで構成されているので、全体の小型化およびスリム化が可能になる。したがって、リード線および外部電線の電気的絶縁を確保しつつケース内のサーミスタ素子の位置ばらつきを抑制し、ケース内への組み込み作業性を向上させることができると共に、小型化やスリム化により狭い箇所にも設置可能になることから、特に、電気自動車やハイブリッド車等のモータ温度を測定する温度センサとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る温度センサの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態において、温度センサのケース組み込み前の状態を示す斜視図および平面図である。
【図3】本実施形態において、ガイド部材を示す斜視図および平面図である。
【図4】本実施形態において、ケースを示す斜視図および断面図である。
【図5】本発明に係る温度センサの従来例において、温度センサのケース組み込み前の状態を示す斜視図およびリード線が曲がってしまった状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態における温度センサ1は、図1および図2に示すように、先端が閉塞されていると共に基端側に開口部2aを有したケース2と、サーミスタ素子3と、該サーミスタ素子3に一端が接続された一対のリード線4と、一対のリード線4の他端に一端が接続された一対の外部電線5と、一対のリード線4と一対の外部電線5とを保持していると共に注型樹脂(図示略)が注入されたケース2内に開口部2aから挿入されているガイド部材6とを備えている。
【0018】
上記ガイド部材6は、図2および図3に示すように、一対のリード線4が嵌め込み可能な一対の第1溝部6aが形成された先端部6Aと、一対の外部電線5が嵌め込み可能な一対の第2溝部6bが形成された後端部6Bと、先端部6Aと後端部6Bとを連結すると共に一対の外部電線5の間に配された中間支持棒部6Cとで構成されている。
このガイド部材6は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などのエンジニアリングプラスチックにより射出成型で作製されている。
【0019】
上記ケース2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などのエンジニアリングプラスチックにより射出成型で作製され、長孔状の開口部2aを有して扁平形状とされた樹脂ケースである。また、ケース2は、先端部が、後端側よりも細く成型されている。なお、ケース2として、樹脂製以外でも、サーミスタ素子3、リード線4および端子7等との絶縁性を確保できれば、金属製でも構わない。
このケース2の内部には、一対の外部電線5をガイドする一対の電線用溝2bが形成されている。
【0020】
また、ケース2の開口部2aは、後端部6Bに対応した形状とされ、後端部6Bは、開口部2aを閉塞してケース2の後端と面一とされている。すなわち、開口部2aの上部が後端部6Bの形状に対応して切り欠かれて、段差状に形成されている。
さらに、後端部6Bは、開口部2aの両端部の内周面に沿って挿入方向に突出して形成された一対のガイド突起6cを両端部に有している。
また、上記先端部6Aは、先細の略三角板状に形成され、一対の第1溝部6aが、先端に向けて互いの間隔を漸次狭く形成されている。
【0021】
上記サーミスタ素子3は、同方向にリード線4が延在して接続されているラジアルリード型サーミスタであり、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタ素子3は、例えばMn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
上記リード線4と外部電線5とは、金属製の端子7で接続されている。この端子7は、銅やニッケルなどの金属で形成され、順送型などの板金プレス成型により作製されている。
【0022】
上記外部電線5は、金属線である芯線5aの周囲が絶縁性被覆5bで覆われているものであり、リード線4と接続される端子かしめ部の絶縁性被覆5bが除去されている。
上記注型樹脂は、エポキシ樹脂等が採用される。
【0023】
次に、本実施形態の温度センサ1の組み立て方法について説明する。
まず、ガイド部材6の一対の第2溝部6bに、それぞれ外部電線5を嵌め込み、さらに一対の第1溝部6aに、それぞれリード線4を嵌め込む。このとき、一対の外部電線5は後端部6Bに保持されると共に、一対のリード線4は、先端部6Aに保持される。また、一対のリード線4は、一対の第1溝部6aにガイドされて先端に向けて互いの間隔が漸次狭くなり、さらに先端部6Aから互いに平行に突出して保持される。
【0024】
次に、ケース2の中に適量の注型樹脂を注入し、この後、サーミスタ素子3側からガイド部材6をケース2の中に挿入する。そして、一対の爪状部であるガイド突起6cが開口部2aの両端部に沿って完全に挿入されるまでガイド部材6を押し込む。このとき、後端部6Bの後端面とケース2の後端面とは面一となると共に、後端部6Bの外周面とケース2の外周面とも面一となる。このようにして、本実施形態の温度センサ1が作製される。
【0025】
上述したように本実施形態の温度センサ1では、ガイド部材6が、リード線4が嵌め込み可能な第1溝部6aが形成された先端部6Aと、外部電線5が嵌め込み可能な第2溝部6bが形成された後端部6Bと、これらを連結すると共に一対の外部電線5の間に配された中間支持棒部6Cとで構成されているので、細い棒状の中間支持棒部6Cが外部電線5間に配されることでケース2内に挿入する部分を細くすることができ、全体の小型化およびスリム化が可能になる。
【0026】
なお、リード線4および外部電線5は、それぞれガイド部材6で保持された状態でケース2に挿入されるので、組み込み時におけるリード線4の曲がりやリード線4と外部電線5との接続部(端子7)同士の接触が防止されると共に、ケース2内におけるサーミスタ素子3の位置のばらつきが抑制され、応答性が安定する。
【0027】
また、先端部6Aが、先細の略三角板状に形成され、一対の第1溝部6aが、先端に向けて互いの間隔を漸次狭く形成されているので、先端部6Aを薄くすることができると共に、一対のリード線4の間隔を先端に向けて狭めつつ保持することができる。これにより、ケース2の先端部6Aを薄くかつ細くすることが可能になる。
また、ケース2の開口部2aが後端部6Bに対応した形状とされ、後端部6Bが、開口部2aを閉塞してケース2の後端と面一とされているので、後端部6Bがケースの開口部2aの蓋として機能すると共に、後端部6Bが開口部2aから突出せず、外観上も好ましい。
【0028】
また、ケース2の内部に、一対の外部電線5をガイドする一対の電線用溝2bが形成されているので、ケース2内の電線用溝2bにおいても外部電線5が位置決めされるため、外部電線5を精度良く組み込むことができ、さらに安定してケース2内に収納することができる。
さらに、後端部6Bが、開口部2aの両端部の内周面に沿って挿入方向に突出して形成された一対のガイド突起6cを両端部に有しているので、挿入時に一対のガイド突起6cにより後端部6Bが位置決めされ、ガイド部材6を精度良く組み込むことができ、安定してケース2内に収納することができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…温度センサ、2…ケース、2a…ケースの開口部、2b…電線用溝、3…サーミスタ素子、4…リード線、5…外部電線、6…ガイド部材、6A…ガイド部材の先端部、6B…ガイド部材の後端部、6C…中間支持棒部、6a…第1溝部、6b…第2溝部、6c…ガイド突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉塞されていると共に基端側に開口部を有したケースと、
サーミスタ素子と、
該サーミスタ素子に一端が接続された一対のリード線と、
一対の前記リード線の他端に一端が接続された一対の外部電線と、
一対の前記リード線と一対の前記外部電線とを保持していると共に注型樹脂が注入された前記ケース内に前記開口部から挿入されているガイド部材とを備え、
該ガイド部材が、一対の前記リード線が嵌め込み可能な一対の第1溝部が形成された先端部と、
一対の前記外部電線が嵌め込み可能な一対の第2溝部が形成された後端部と、
前記先端部と前記後端部とを連結すると共に一対の前記外部電線の間に配された中間支持棒部とで構成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記先端部が、先細の略三角板状に形成され、
一対の前記第1溝部が、先端に向けて互いの間隔を漸次狭く形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温度センサにおいて、
前記開口部が、前記後端部に対応した形状とされ、
前記後端部が、前記開口部を閉塞して前記ケースの後端と面一とされていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記ケースの内部に、一対の前記外部電線をガイドする一対の電線用溝が形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記ケースが、長孔状の前記開口部を有して扁平形状とされ、
前記後端部が、前記開口部の両端部の内周面に沿って挿入方向に突出して形成された一対のガイド突起を両端部に有していることを特徴とする温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211792(P2012−211792A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76901(P2011−76901)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】