説明

温度依存性の少ないバラクタ機器

【課題】
【解決手段】本発明は、温度安定性が改善されたバラクタ機器(100)であって、デカップリング回路網(150)に接続された第1バラクタ(160)を備える。機器は、更に電圧安定器(110)を備え、電圧安定器は、コンデンサ(140)及び温度依存性コンデンサ(130)を備え、電圧安定器は、DC供給源(120)に接続する手段を備える。好ましくは、デカップリング回路網(150)は、第1バラクタ(160)に並列に接続され、電圧安定器(110)のコンデンサ(140)は、デカップリング回路網(150)に並列に接続されており、電圧安定器(110)の温度依存性コンデンサ(130)は、電圧安定器(110)のダイオードに直列に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デカップリング回路網に接続された第1バラクタを備える温度安定性が改善されたバラクタ機器を開示する。
【背景技術】
【0002】
集中素子又は分布素子等の強誘電体バラクタに基づくバラクタ、位相シフタ、ディレイライン等の同調可能なマイクロ波部品は、大抵の場合、強誘電材料の固有の温度依存性により、それらのパラメータの大きな温度依存性に悩まされる。
【0003】
通常、各種の設計において、そのような部品を使用するに際し、この温度依存性はとりわけ問題を引き起こすので好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来のものより温度依存性の少ないバラクタ又はバラクタ機器の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この要求は、本発明により取り上げられ、本発明は、改良された温度安定性用のバラクタ機器であって、デカップリング回路に接続された第1バラクタを開示する。機器は、さらに電圧安定器を備え、この電圧安定器は、コンデンサと温度依存性コンデンサを備える。更に、安定器はDC供給源への接続用の手段を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最初に、本発明の機器が解決しようとする課題を図示するために、周囲温度の関数としての典型的なバラクタの容量を示す図1を参照する。異なる曲線が示されているが、各々は、バラクタで使用される異なるバイアス電圧を表す。図の最上部の曲線は、0ボルトのバイアス電圧におけるバラクタの容量を示す。
【0007】
図1から明らかなように、バラクタの容量の温度依存性は非常に高い。本発明の目的は、周囲温度に対してバラクタの温度を安定化することにある。
【0008】
図2は、本発明の背景の原理を図示する機器100のブロック図を示す。図2に示すように、本発明による機器は、機器100を使用して安定な温度特性を与えるようにされている第1バラクタ160を備える。
【0009】
第1バラクタ160及びその出力ポートとは別に、機器100は、付加的にデカップリング回路網150を備える。デカップリング回路網150の理由の1つは、機器100の他の部分を、第1バラクタ160に印加される信号から遮蔽することであり、特に、第1バラクタ160は、通常はマイクロ波周波数である、主に高い周波数で使用されることになるからである。
【0010】
好ましくは、デカップリング回路網150は、第1バラクタ160に並列に結合される。図3は、図2の機器100を示し、また、この場合コイル155の形でのデカップリング回路網の1例を示す。
【0011】
デカップリング回路網150は、特に広帯域動作用には、単に抵抗であってもよい。コンデンサには電流が流れないので、そのような抵抗では電圧降下は生じない。狭帯域用には、デカップリング回路網150は、第1バラクタ160の動作周波数に対応する共振周波数を有する並列LC回路であってもよい。
【0012】
機器100は、また電圧安定器110を備え、その機能は、以下の説明で明らかとなる。電圧安定器110は、DC電圧用の入力手段120、温度依存性コンデンサ130、及びコンデンサ140を備える。
【0013】
図2に示すように、電圧安定器110のコンデンサ140は、デカップリング回路網150に並列に接続され、電圧安定器110の温度依存性コンデンサ130は、コンデンサ140に直列に接続される。
【0014】
機器100の安定化特性を利用するため、DC電圧VDCが安定器のDC入力手段に印加される。この電圧VDCは、コンデンサ140に掛かる電圧Vと温度依存性コンデンサ130に掛かる電圧Vとに分圧されるであろう。コンデンサ140の容量がCで、温度依存性コンデンサ130の容量がCであれば、入力DC電圧VDCは、以下のように分圧されるであろう。
【0015】
【数1】

【0016】
【数2】

【0017】
電圧分圧器110に含まれる温度依存性コンデンサ130は、第1バラクタ160と同様な、好ましくは同じ強誘電材料から作られ、したがって、たとえば第1バラクタ160と同様に、図1に示す温度依存性容量を有する。
【0018】
次に、周囲温度が原因で、第1バラクタ160及び温度依存性コンデンサ130の両方において容量が増加した場合にどうなるかを検討する。
【0019】
そのような容量の変化により、電圧分圧器110で電圧の再配分が起こり、温度依存性コンデンサ130に掛かる電圧は、容量が増加すると減少する。
【0020】
上記の式(1)及び(2)から、コンデンサ140に掛かる電圧Vは、
=VDC−Vとなる。図2に示されるような損失のないデカップリング回路網用には、第1バラクタ160に掛かる電圧Vは、コンデンサ140に掛かる電圧Vと同じで、V=Vであり、したがって、V=VDC−Vとなる。
【0021】
第1バラクタ160の温度依存性による容量の減少は、電圧依存性コンデンサ130における同様な容量の減少の原因となるだろう。この温度依存性コンデンサの容量の減少は、安定化電圧VDCの再配分の原因となり、より小さな電圧が電圧依存性コンデンサ130に掛かることになるであろう。電圧依存性コンデンサ130は、デカップリング回路網150にも、第1バラクタ160にも並列に接続されているので、このことは、安定器120から第1バラクタ160に印加される電圧が降下することを意味する。
【0022】
安定器(120)から第1バラクタ(160)への電圧Vの降下の結果、温度による第1バラクタの容量の減少は、減少した電圧Vによって補償され、したがって、Vの減少が第1バラクタの容量の増加になる。
【0023】
同様な方法で、第1バラクタ160のいかなる温度による容量の増加も、第1バラクタに掛かる電圧Vの対応する変化となる、増加する電圧Vによって補償されるだろう。
【0024】
望ましい効果、すなわち、第1バラクタ160とダイオード130の容量の対応する変化を達成するため、温度依存性コンデンサ130は、好ましくは第バラクタ160と同じ、または同様な強誘電材料から作られ、図3に示すような特性に類似した温度依存特性を備える。
【0025】
図4は、その容量が増加するとき、例えば周囲の温度の変化によって、いかにダイオード130に掛かる電圧が減少するかを示す。
【0026】
図5は、それが本発明の機器100に使用されたときの第1バラクタ160の温度依存性を示す。ここで見られるように、温度依存性は、本発明によって飛躍的に減少する。
【0027】
本発明は、上記で示した実施例の例に限定されるものではなく、請求項の範囲内において自由に変形され得る。たとえば、もし、温度依存性コンデンサ130が’正’の温度依存、すなわち、バラクタ160の容量が上昇すると、温度依存性コンデンサ130の容量が下降するようであれば、温度依存性コンデンサ130及びコンデンサ140は、図2及び図3に示された関係と入れ替えてもよい。
【0028】
通常は、ここに示した実施例においては、コンデンサ140は温度に依存しないのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は、添付された図面を参照して、詳細な説明においてより詳しく説明される。
【図1】強誘電体バラクタの温度依存性を表す図である。
【図2】本発明による機器のブロック図である。
【図3】本発明の、1つの実施例の具体的な1例のブロック図である。
【図4】コンデンサCにおける温度依存の電圧降下を表す図である。
【図5】本発明のバラクタ機器の温度依存性を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度安定性が改善されたバラクタ機器(100)であって、
デカップリング回路網(150)に接続された第1バラクタ(160)を備え、
前記バラクタ機器は、更に電圧安定器(110)を備え、
前記電圧安定器は、コンデンサ(140)及び温度依存性コンデンサ(130)を備え、
前記電圧安定器は、DC供給源(120)に接続する手段を備える、ことを特徴とするバラクタ機器(100)。
【請求項2】
前記デカップリング回路網(150)は、前記第1バラクタ(160)に並列に接続され、
前記電圧安定器(110)のコンデンサ(140)は、前記デカップリング回路網(150)に並列に接続されており、
前記電圧安定器(110)の温度依存性コンデンサ(130)は、電圧安定器(110)のダイオードに直列に接続される請求項1に記載のバラクタ機器(100)。
【請求項3】
前記第1バラクタ(160)及び温度依存性コンデンサ(130)は、それらの1つ以上の電気的パラメータに関して基本的に同じ温度依存性を有する請求項1又は2に記載のバラクタ機器(100)。
【請求項4】
前記デカップリング回路網(150)は、コイル(155)を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバラクタ機器(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−516444(P2008−516444A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535627(P2007−535627)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001443
【国際公開番号】WO2006/041336
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)