説明

温度制御装置および温度制御方法

【課題】過酷な条件下においても、安定した温度制御を継続的に実行する。
【解決手段】温度制御装置は、第1の位置における温度を計測し、第1の温度計測値を生成する第1の温度センサ128と、第1の位置と環境条件を異にする第2の位置の温度を計測し、第2の温度計測値を生成する第2の温度センサ130と、第1の温度計測値と第2の温度計測値の相関関係に基づいて、第2の温度計測値から第1の温度計測値を推定し、推定値を生成する温度計測値推定部132とを備え、制御入力切換部134は、第1の温度センサが異常であると判定した場合、制御入力を、第1の温度計測値から、推定値に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酷な環境条件下で温度制御を行う温度制御装置および温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油に代えて、石炭やバイオマス、タイヤチップ等の固体原料をガス化してガス化ガスを生成する技術が開発されている。このようにして生成されたガス化ガスは、石炭ガス化複合発電(IGCC: Integrated coal Gasification Combined Cycle)といった効率的な発電システムや、水素の製造、合成燃料(合成石油)の製造、化学肥料(尿素)等の化学製品の製造等に利用されている。ガス化ガスの原料となる固体原料のうち、特に石炭は、可採年数が150年程度と、石油の可採年数の3倍以上であり、また、石油と比較して埋蔵地が偏在していないため、長期に亘り安定供給が可能な天然資源として期待されている。
【0003】
このような石炭のガス化プロセスは、酸素や空気を用いて部分酸化することにより行われていたが、2000℃といった高温で部分酸化する必要があるため、ガス化炉のコストが高くなるといった欠点を有していた。この問題を解決するために、水蒸気を利用し、700℃〜900℃程度で石炭をガス化する技術が開発されている。
【0004】
例えば、循環流動層ガス化システムでは、水蒸気の存在下で流動する流動媒体(例えば砂)の熱によりガス化原料をガス化させ、ガス化炉から導出された流動媒体は、燃焼炉で加熱されて燃焼炉とガス化炉とを循環する。ガス化に必要な上述した温度を適切に維持するため、流動媒体は燃焼炉において温度制御が為されている。温度制御を行うべく、燃焼炉内の温度を計測することが必要となるが、燃焼炉内では、流動媒体である砂が燃焼ガスと共に高速で流動しているため、断線等により温度センサが正常に機能しなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、温度センサが正常に機能しなくなったとしても温度制御を継続する技術として、温度センサが断状態になると、断状態となる直前の温度計測値を保持し、断状態においても固定値(直前の温度計測値)に基づいて温度制御を継続する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。また、温度計測の対象となる位置に複数の温度センサを設置し、その複数の温度センサの複数の温度計測値の平均値に基づいて制御を行うことを前提に、複数の温度計測値それぞれが所定の範囲に含まれるか否か判定し、含まれていない温度計測値を異常値として平均値に反映しない技術も開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3440838号
【特許文献2】特開2006−330944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、循環流動層ガス化システムにおいては、プロセスの条件に応じて目標とする温度が変化するので、特許文献1の技術を利用して直前の温度を保持するのみでは、プロセスの条件に適切に対応することができなくなる。また、循環流動層ガス化システムのように固体の流動媒体が高速に飛散する燃焼炉内では、特許文献2の技術のように温度センサが複数あろうとも、同じ過酷な条件下で次々に断線する可能性があり、所望する適切な温度計測値を得ることができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、過酷な条件下においても、安定した温度制御を継続的に実行することが可能な、温度制御装置および温度制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の温度制御装置は、第1の位置における温度を計測し、第1の温度計測値を生成する第1の温度センサと、第1の位置と環境条件を異にする第2の位置の温度を計測し、第2の温度計測値を生成する第2の温度センサと、第1の温度計測値と第2の温度計測値の相関関係に基づいて、第2の温度計測値から第1の温度計測値を推定し、推定値を生成する温度計測値推定部と、第1の温度センサが異常であると判定した場合、制御入力を、第1の温度計測値から、推定値に切り換える制御入力切換部とを備えることを特徴とする。
【0010】
水蒸気の存在下で流動媒体の熱によりガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成すると共に、流動媒体と未反応のチャーを導出するガス化炉と、流動媒体の存在下で未反応のチャーを燃焼して流動媒体を加熱し、加熱された流動媒体と燃焼ガスとを導出する燃焼炉と、燃焼炉において燃焼を補助する補助燃料の供給量を制御する燃料供給部と、流動媒体と燃焼ガスとを分離し、流動媒体をガス化炉に導入する媒体分離器とを備える循環流動層ガス化システムに用いられ、第1の位置は、燃焼炉内であり、第2の位置は、媒体分離器における燃焼ガスの出口近傍であり、制御入力切換部は、第1の温度センサが異常であると判定した場合、燃料供給部における制御入力を、第1の温度計測値から、推定値に切り換えてもよい。
【0011】
推定値は、燃焼炉へ導入した空気の流量と第2の温度計測値とに基づいて求められる温度差を第2の温度計測値に加算するか、または、燃焼炉へ導入した空気の流量と第2の温度計測値とに基づいて求められる係数を第2の温度計測値に乗算して導出されてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、第1の位置における温度を計測し、第1の温度計測値を生成する第1の温度センサと、第1の位置と環境条件を異にする第2の位置の温度を計測し、第2の温度計測値を生成する第2の温度センサとを備える温度制御装置を用いて温度を制御する、本発明の温度制御方法は、第1の温度計測値と第2の温度計測値の相関関係に基づいて、第2の温度計測値から第1の温度計測値を推定し、推定値を生成し、第1の温度センサが異常であると判定した場合、制御入力を、第1の温度計測値から、推定値に切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、過酷な条件下においても、安定した温度制御を継続的に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】循環流動層ガス化システムを説明するための機能ブロック図である。
【図2】燃料供給部の制御系を説明するための制御ブロック図である。
【図3】第1の温度計測値と第2の温度測定値との相関関係の一例を示した説明図である。
【図4】MAPの一例を示した説明図である。
【図5】燃料供給部の制御系を説明するための制御ブロック図である。
【図6】温度制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
本実施形態では、温度制御装置の温度制御の対象として、循環流動層ガス化システム100、特に、二塔式の流動層ガス化炉とも称される循環流動層ガス化システム100を挙げる。循環流動層ガス化システム100では、ガス化炉と燃焼炉との間を流動媒体(例えば、硅砂(珪砂)等の砂)が熱媒体として循環する。温度制御装置は、循環流動層ガス化システム100において、ガス化および循環によって熱が奪われた流動媒体を所定の温度に加熱および維持する役割を担う。
【0017】
(循環流動層ガス化システム100)
図1は、本実施形態にかかる循環流動層ガス化システム100を説明するための機能ブロック図である。循環流動層ガス化システム100は、ガス化原料供給部108と、ガス化炉110と、改質炉112と、燃焼炉114と、媒体分離器116と、燃焼炉空気導入部118と、空気流量測定部120と、燃料供給部122と、制御弁124と、燃料流量測定部126と、第1の温度センサ128と、第2の温度センサ130と、温度計測値推定部132と、制御入力切換部134と、相関性導出部136と、蒸気供給装置138とを含んで構成される。また、図1において、実線矢印は物質の流れを、破線矢印は制御信号の流れを示している。ここで、第1の温度センサ128と、第2の温度センサ130と、温度計測値推定部132と、制御入力切換部134とは、温度制御装置として機能する。
【0018】
ガス化原料供給部108は、褐炭等の石炭、石油コークス(ペトロコークス)、バイオマス、タイヤチップ等の固体原料や、黒液等液体原料といったガス化原料をガス化炉110に供給する。
【0019】
ガス化炉110では、流動媒体としての砂が、ガス化炉110の上方から導入される。また、ガス化炉110では、蒸気供給装置138が、ガス化炉110の下方から水蒸気を導入することで流動層(バブリング流動層)が形成される。そして、ガス化原料供給部108から流動層の上流側にガス化原料が供給されると、そのガス化原料が、水蒸気の存在下、700℃〜900℃で還元反応によりガス化され(水蒸気ガス化)、ガス化ガスが生成される。ガス化原料が石炭である場合、ガス化ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンを主成分とし、タール、窒素や窒素化合物、硫黄や硫黄化合物を少量含んでいる。
【0020】
なお、ここでは、循環流動層方式のガス化炉110を例に挙げて説明するが、ガス化原料をガス化するガス化炉であれば、単なる流動層方式のガス化炉や、砂が自重で鉛直下方向に流下することで移動層を形成する移動層方式のガス化炉であってもよい。
【0021】
また、ガス化炉110内で流動層を形成し、ガス化反応を終えた流動媒体は、未反応のガス化原料であるチャー(石炭に限らずバイオマス等ガス化原料の残渣)と共に燃焼炉114に導入される。
【0022】
改質炉112は、ガス化炉110で生成されたガス化ガスを900℃〜1500℃に加熱し酸素や空気を加え、ガス化ガスに含まれるタールを改質(酸化改質)する。改質炉112で改質されたガス化ガスは、後段の処理部において、さらに、粉塵、硫黄、アンモニア、塩素が除去され(精製され)、精製ガス化ガスとなる。
【0023】
燃焼炉114は、鉛直方向に延びる筒形状で形成され、導入された流動媒体を、同じく導入されたチャーおよび補助燃料の燃焼によって加熱し、さらに空気が供給されて燃焼炉114上方に高速に流動化させる。
【0024】
媒体分離器(サイクロン)116は、燃焼炉114で1000℃程度に加熱された、流動媒体と燃焼ガスとを分離し、流動媒体を降下させてガス化炉110に導入する。また、媒体分離器116で分離された燃焼ガスは、ボイラ等で熱回収される。
【0025】
こうして、流動媒体は、ガス化炉110、燃焼炉114、媒体分離器116を循環する。このとき、流動媒体は、ガス化原料の流動量(ガス化ガスの生成量)を調整すべく、燃焼炉114において、その流速が調整されると共に、ガス化炉110におけるガス化に必要な700℃〜900℃の温度を適切に維持するため、燃焼炉114において温度制御が為されている。
【0026】
燃焼炉空気導入部118は、燃焼炉114内に導入されたチャーを燃焼させるべく、また、燃焼炉114内に導入された流動媒体を上方に流動化させるべく、燃焼炉114内に下方から空気を供給する。燃焼炉空気導入部118は、空気の流量を調整することで、例えば、燃焼炉114内およびガス化炉110内の流動媒体の流動量を制御することができる。
【0027】
空気流量測定部120は、燃焼炉空気導入部118から燃焼炉114に供給される空気の流量を測定する。燃焼炉空気導入部118は、かかる空気流量測定部120で測定された空気の流量を帰還(フィードバック)させて、空気の流量を制御する。
【0028】
燃料供給部122は、流動媒体の温度を所定の値に加熱すべく、燃焼炉114内に制御弁124を通じて補助燃料を供給する。上述したように燃焼炉114内にはチャーが導入され、チャーの燃焼により流動媒体を加熱する。しかし、ガス化の過程に応じてチャーの量が変化するため、燃料供給部122は、チャーの不足を補い、補助燃料を加えて燃焼炉114内の温度を制御する。ここで補助燃料は、ガス化炉110同様、石炭やバイオマス等が用いられる。
【0029】
燃料流量測定部126は、燃料供給部122から燃焼炉114に供給される補助燃料の流量を測定する。燃料供給部122は、かかる燃料流量測定部126で測定された補助燃料の流量を帰還させて、補助燃料の流量を制御する。
【0030】
第1の温度センサ128は、熱電対やサーミスタで構成され、燃焼炉114内の所定の位置(第1の位置)における温度を計測し、第1の温度計測値を生成する。上述したように、燃焼炉114内では、燃焼炉空気導入部118から供給された空気量に応じ、流動媒体(砂)が飛散しながら高速で流動する。したがって、第1の温度センサ128が設置される第1の位置は環境条件として非常に過酷な条件であると言える。
【0031】
燃料供給部122は、上述した燃料流量測定部126で測定された流量と第1の温度センサ128で測定された第1の温度測定値とに基づいて補助燃料の流量を制御する。
【0032】
図2は、燃料供給部122の制御系を説明するための制御ブロック図である。図2のアウターループでは、減算器150が目標値として設定された温度設定値から第1の温度センサ128で測定された第1の温度測定値を減算し、PID機能部152においてPID係数が付加されて補助燃料の目標値が決定される。そして、図2のインナーループでは、減算器154が、補助燃料の目標値から燃料流量測定部126で測定された流量を減算し、PID機能部156においてPID係数が付加されて補助燃料の流量が決定され、制御弁124に伝達される。
【0033】
こうして、燃焼炉114内に導入されるチャーの量に拘わらず、燃焼炉114内の温度に応じて補助燃料の流量を適切に制御することができ、燃焼炉114内の温度を目標値として設定された温度設定値を維持することが可能となる。
【0034】
ただし、燃焼炉114内では、流動媒体である砂が燃焼ガスと共に高速で流動しているため、断線等により第1の温度センサ128が正常に機能しなくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、第1の温度センサ128と独立して第2の温度センサ130を設けている。
【0035】
第2の温度センサ130は、熱電対やサーミスタで構成され、第1の位置と環境条件を異にする位置、例えば、第1の位置が環境条件として過酷(砂が飛散しながら高速で流動する等)な場合、その第1の位置と環境条件が異なる安静な、媒体分離器116における燃焼ガスの出口(第2の位置)に設置され、その第2の位置の温度を計測し、第2の温度計測値を生成する。本実施形態では、第1の温度センサ128や第2の温度センサ130といった複数の温度センサを環境条件が異なる位置にそれぞれ配すことを特徴としている。ただし、第1の位置と第2の位置は、所定の位置関係にあり、第1の温度計測値と第2の温度計測値とが相関性を有することを要す。例えば、本実施形態において、第1の位置と第2の位置は、燃焼炉114と媒体分離器116といったように、互いに連通し、流動媒体の循環経路となっている点で共通し、第1の温度計測値と第2の温度計測値とは相関性を有していると言える。
【0036】
温度計測値推定部132は、第1の温度計測値と第2の温度計測値の相関関係に基づいて、第2の温度計測値から第1の温度計測値を推定し、推定値を生成する。上述したように、第1の温度センサ128と第2の温度センサ130とは、相関性を有するように設置されるので、その相関性を用いて一方から他方を推測することができる。特に本実施形態では、第2の温度センサ130による第2の温度測定値から第1の温度測定値を推測する場合を説明する。
【0037】
図3は、第1の温度計測値と第2の温度測定値との相関関係の一例を示した説明図である。第2の温度センサ130は第1の温度センサ128より下流に位置しているため、その途中で加熱されない限り、第2の温度計測値は第1の温度計測値から降下する。また、第2の温度センサ130と第1の温度センサ128との位置関係は固定されているが、その温度計測値の降下量は、第1の温度センサ128の位置から第2の温度センサ130の位置まで流動媒体および燃焼ガスがどの程度の時間で移動するかに依存するので、燃焼炉114の空気の流量、即ち、空気流量測定部120で測定された流量が大きく影響することとなる。
【0038】
したがって、図3(a)では、燃焼炉114へ導入した空気の流量としての空気流量測定部120で測定された流量と、第2の温度計測値とに基づいて、例えば、図3(a)に示すMAP(テーブル)から求められる、第1の温度計測値と第2の温度計測値との温度差を第2の温度計測値に加算するといった相関関係により、第1の温度計測値と理論的に等しい推定値を導出することができる。また、図3(b)のように、空気流量測定部120で測定された流量と、第2の温度計測値とに基づいて、例えば図3(b)に示すMAPから求められる係数を第2の温度計測値に乗算して推定値を導出することもできる。
【0039】
また、図3に示すMAPは、当該循環流動層ガス化システム100を実際に運転したときの実測データから求めることができる。ここでは、空気流量測定部120で測定された流量と、第2の温度計測値とのそれぞれ複数点を対象として相関性をMAP化する。温度計測値推定部132は、その複数点の間における推定値を線形補間等の補間処理によって導出する。
【0040】
また、図3(a)、(b)においては、空気流量測定部120で測定された流量と、第2の温度計測値とに基づいて、一旦、それぞれ温度差や係数を求め、その値を加算したり乗算したりしているが、空気流量測定部120で測定された流量と、第2の温度計測値とに基づいて図4の如く、推定値を直接導出するMAPを設けることもできる。ただし、図3や図4に示した数値はあくまで例示であり、実際の値がかかる数値と異なり得ることは言うまでもない。
【0041】
制御入力切換部134は、常に、第1の温度センサ128が正常に機能しているか否か監視し、第1の温度センサ128が異常である(正常ではない)と判定した場合、燃料供給部122における制御入力を、第1の温度センサ128から得られる第1の温度計測値から、温度計測値推定部132で推定された推定値に切り換える。
【0042】
図5は、燃料供給部122の制御系を説明するための制御ブロック図である。ここでは、図2で説明した制御系に、制御入力切換部134による制御入力の切り換え制御が追加されている。上述したように、第1の温度センサ128は、第2の温度センサ130より環境条件が過酷な位置に設置されているので、第1の温度センサが正常に機能しなくなるおそれがある。本実施形態では、温度計測値推定部132が第1の温度計測値の推定値を生成しているので、第1の温度センサ128が異常を示すと、第1の温度計測値に代えて、推定値を用いることで、燃料供給部122の温度制御を継続することが可能となる。
【0043】
相関性導出部136は、第1の温度センサ128が正常に機能している間、第1の温度センサ128から得られる第1の温度計測値と、温度計測値推定部132から得られる推定値とを比較し、第1の温度計測値と推定値との差分値を相関関係に反映する。第1の温度センサ128が正常に機能している間は、推定値を要さないので、ここでは、正常に機能している間の推定値を利用して相関関係を校正している。
【0044】
温度計測値推定部132は、予め定められた相関関係に基づいて、例えば、図3に示したMAPに基づいて推定値を生成する。しかし、経年や設計変更等に応じてその相関関係が変化する場合も生じ得る。ここでは、相関性導出部136が、例えば、第1の温度計測値と推定値との差分値に低域通過フィルタ(LPF)等を施した値をMAPに反映することで、リアルタイムに適切な相関関係を構築することができ、それに伴って、温度計測値推定部132は、より高精度に第1の温度計測値の推定値を導出することが可能となる。
【0045】
以上、説明した循環流動層ガス化システム100では、過酷な条件下において、たとえ第1の温度センサ128が異常となったとしても、第1の温度センサ128より安静な条件下にある第2の温度センサ130に切り換えることで、追従制御ができるので、温度制御装置は、安定した温度制御を継続的に実行することが可能となり、燃焼炉114内において、効率よくガス化を行うための必要かつ適切な燃焼を遂行することができる。こうして、運転員は、第1の温度センサ128が正常に動作しているか否かを意識せずとも、安定した温度制御を継続することが可能となる。
【0046】
(温度制御方法)
図6は、本実施形態にかかる循環流動層ガス化システム100を用いた温度制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
図6に示すように、燃焼炉空気導入部118は、ガス化炉110内の流動媒体の目標とする流動量に応じて、燃焼炉114に供給する空気の目標流量を決定し、その目標流量と空気流量測定部120で測定された流量とに基づいて空気の流量を制御する(S200)。
【0048】
続いて、温度計測値推定部132は、第1の温度計測値と第2の温度計測値の相関関係に基づいて、第2の温度計測値から第1の温度計測値を推定し、推定値を生成する(S202)。制御入力切換部134は、第1の温度センサ128が正常に機能しているか否か監視し(S204)、第1の温度センサ128が正常に機能している間(S204におけるYES)、燃料供給部122の制御入力として第1の温度測定値を選択し(S206)、第1の温度センサ128が正常に機能していないと(S204におけるNO)、燃料供給部122の制御入力として、温度計測値推定部132が推測した推定値を選択する(S208)。
【0049】
燃料供給部122は、図5で説明したように、選択された制御入力と、燃料流量測定部126で測定された流量とに基づいて補助燃料の流量を決定し、その流量を制御弁124に伝達し(S210)、制御弁124は、燃料供給部122から伝達された流量の補助燃料を燃焼炉114に供給する(S212)。
【0050】
このようにして温度制御された燃焼炉114において加熱された流動媒体と燃焼ガスは、媒体分離器116によって、流動媒体と燃焼ガスとが分離され、分離された流動媒体がガス化炉110に導入される(S214)。ガス化炉110では、導入された流動媒体にガス化原料を供給し、水蒸気の存在下で流動媒体の熱によりガス化原料をガス化させる(S216)。そして、役目を終えた流動媒体と未反応のチャーは再び燃焼炉114に導入され、加熱される(S218)。こうして、ガス化炉110において流動媒体が所定の温度になるように温度制御されつつ、流動媒体が循環することとなる。
【0051】
以上説明した、温度制御方法においても、過酷な条件下においても、安定した温度制御を継続的に実行することが可能となる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
なお、本明細書の温度制御方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、過酷な環境条件下で温度制御を行う温度制御装置および温度制御方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 …循環流動層ガス化システム
110 …ガス化炉
114 …燃焼炉
116 …媒体分離器
118 …燃焼炉空気導入部
120 …空気流量測定部
122 …燃料供給部
124 …制御弁
126 …燃料流量測定部
128 …第1の温度センサ
130 …第2の温度センサ
132 …温度計測値推定部
134 …制御入力切換部
136 …相関性導出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の位置における温度を計測し、第1の温度計測値を生成する第1の温度センサと、
前記第1の位置と環境条件を異にする第2の位置の温度を計測し、第2の温度計測値を生成する第2の温度センサと、
前記第1の温度計測値と前記第2の温度計測値の相関関係に基づいて、前記第2の温度計測値から前記第1の温度計測値を推定し、推定値を生成する温度計測値推定部と、
前記第1の温度センサが異常であると判定した場合、制御入力を、前記第1の温度計測値から、前記推定値に切り換える制御入力切換部と、
を備えることを特徴とする温度制御装置。
【請求項2】
水蒸気の存在下で流動媒体の熱によりガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成すると共に、該流動媒体と未反応のチャーを導出するガス化炉と、
前記流動媒体の存在下で未反応のチャーを燃焼して該流動媒体を加熱し、加熱された該流動媒体と燃焼ガスとを導出する燃焼炉と、
前記燃焼炉において燃焼を補助する補助燃料の供給量を制御する燃料供給部と、
前記流動媒体と前記燃焼ガスとを分離し、該流動媒体を前記ガス化炉に導入する媒体分離器と、
を備える循環流動層ガス化システムに用いられ、
前記第1の位置は、前記燃焼炉内であり、
前記第2の位置は、前記媒体分離器における燃焼ガスの出口近傍であり、
前記制御入力切換部は、前記第1の温度センサが異常であると判定した場合、前記燃料供給部における制御入力を、前記第1の温度計測値から、前記推定値に切り換えることを特徴とする温度制御装置。
【請求項3】
前記推定値は、前記燃焼炉へ導入した空気の流量と前記第2の温度計測値とに基づいて求められる温度差を前記第2の温度計測値に加算するか、または、前記燃焼炉へ導入した空気の流量と前記第2の温度計測値とに基づいて求められる係数を前記第2の温度計測値に乗算して導出されることを特徴とする請求項2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
第1の位置における温度を計測し、第1の温度計測値を生成する第1の温度センサと、該第1の位置と環境条件を異にする第2の位置の温度を計測し、第2の温度計測値を生成する第2の温度センサとを備える温度制御装置を用いて温度を制御する温度制御方法であって、
前記第1の温度計測値と前記第2の温度計測値の相関関係に基づいて、前記第2の温度計測値から前記第1の温度計測値を推定し、推定値を生成し、
前記第1の温度センサが異常であると判定した場合、制御入力を、前記第1の温度計測値から、前記推定値に切り換えることを特徴とする温度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158700(P2012−158700A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20208(P2011−20208)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】