説明

温度可変ヒーター

【課題】発熱源に面状発熱体を用いた面ヒーターに実施しても、小さなコネクターで済み、嵩張らずに使い勝手も良好であり、小動物の排尿などで面ヒーターが濡れても、絶縁不良や部品不良などを招いて故障要因となるおそれがないようにする。
【解決手段】発熱部2と、発熱部2へ電力を供給するための電源コード線4と、電源コード線4の中間に介装されるコントローラ5とで構成される。コントローラ5には、温度調整用のつまみ51が外部操作可能に設けられるとともに、位相制御により発熱部2へ供給する電力量を制御して発熱部2の温度を可変設定する温度制御回路が組み込まれている。温度制御回路は、温度調整用の可変抵抗器およびコンデンサよりなる移相回路を含み、可変抵抗器は温度調整用のつまみ51によって抵抗値が変化するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、爬虫類などの小動物を飼育するための飼育容器などを加温したり、観賞魚用水槽内の水を加温したりするなど、種々の用途に用いられるヒーターに関し、特にこの発明は、飼育する動物の種類などに応じて設定温度を自由に変えられる温度可変ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温度可変ヒーターとして、発熱源に面状発熱体を用いたものがあり、図6に示すように、シート状の面ヒーター100に合成樹脂製のコネクター101を介して電源コード線102が電気接続されて成る。電源コード線102の先端には商用電源のコンセントに差し込まれるプラグ103が装着されている。
面ヒーター100は、電気抵抗値が温度上昇に応じて大きくなる特性(一般に「PTC特性」という。)をもつ加温のための面状発熱体104を有する発熱部分100Aと、発熱部分100Aの発熱温度を判別するための第2の面状発熱体(図示せず)を有する検温部分100Bとが、絶縁シート上に領域を分けて設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4036859号公報
【0004】
コネクター101は、図7に示すように、面ヒーター100の検温部分100Bの位置に取り付けられたプリント配線基板106と、前記の第2の面状発熱体の表面に接するように設けられる感温センサ107と、プリント配線基板106および感温センサ107を覆う絶縁性を有するケース108とを含んでいる。プリント配線基板106には、感温センサ107による検出温度に基づいて面状発熱体104の発熱温度が可変抵抗器109により設定された設定温度となるように制御する温度制御回路が実装されている。
【0005】
上記した温度可変ヒーターを使用する場合、面ヒーター100上に飼育容器を置き、プラグ103をコンセントに差し込んで面ヒーター100へ通電し、面状発熱体104を発熱させる。面状発熱体104の発熱温度は可変抵抗器109により設定された設定温度に維持され、飼育容器は飼育する動物に応じた適温に温められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した温度可変ヒーターでは、面ヒーター100に検温部分100Bを設け、その検温部分100Bに装着したコネクター101のケース108の内部に、感温センサ107、可変抵抗器109、およびプリント配線基板106を装填するので、コネクター101が大きくなって面ヒーター100が嵩張り、使い勝手が悪くなるだけでなく、小動物の排尿などで面ヒーター100が濡れると、絶縁不良や部品不良などを招いて故障要因となる。また、サーミスターのような感温センサ107が必要であり、温度制御回路の構成も複雑であり、また、発熱源にPTC特性を有する特定のヒーターしか使用できず、コストの低減をはかるのが容易でない、という問題があった。
【0007】
この発明は、上記問題に着目してなされたもので、発熱源に面状発熱体を用いた面ヒーターに実施しても、小さなコネクターで済み、嵩張らずに使い勝手も良好であり、小動物の排尿などで面ヒーターが濡れても、絶縁不良や部品不良などを招いて故障要因となるおそれがなく、サーミスターのような感温センサが不要かつ温度制御回路の構成も簡易であり、また、発熱源に種々のものが使用可能な安価な温度可変ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による温度可変ヒーターは、発熱部と、発熱部へ電力を供給するための電源コード線と、電源コード線の中間に介装されるコントローラとで構成される。前記コントローラには、温度調整用のつまみが外部操作可能に設けられるとともに、位相制御により発熱部へ供給する電力量を制御して発熱部の温度を可変設定する温度制御回路が組み込まれている。前記温度制御回路は、温度調整用の可変抵抗器およびコンデンサよりなる移相回路を含み、前記可変抵抗器は前記温度調整用のつまみによって抵抗値が変化するように構成されている。
【0009】
上記した構成の温度可変ヒーターにおいて、温度調整用のつまみを外部から操作して可変抵抗器の抵抗値を変化させると、温度制御回路により発熱部へ供給する電力量が抵抗値に応じて制御され、発熱部の温度が供給電力量に応じた値に設定される。このように温度制御を感温センサを用いない電力制御によることにしたので、感温センサが不要でありかつ温度制御回路の構成も簡易となる。また、発熱源にPTC特性を有するもののみならず、カーボン、ニクロム線などを用いたものなど、種々のものが使用可能である。
また、可変抵抗器や温度制御回路が実装されるプリント配線基板は、電源コード線の中間に介装されるコントローラに組み込まれているので、電源コード線を発熱部に接続するためのコネクターが小さくて済み、発熱部が嵩張ることがない。また、コネクターにプリント配線基板が組み込まれていないので、小動物の排尿などで濡れても、故障を招くおそれがない。
【0010】
この発明の好ましい実施態様においては、前記発熱部は絶縁シート上に面状発熱体が設けられた面ヒーターにより構成されているが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、発熱源に面状発熱体を用いた面ヒーターに実施しても、小さなコネクターで済み、嵩張らずに使い勝手も良好である。また、小動物の排尿などで面ヒーターが濡れても、絶縁不良や部品不良などを招いて故障要因となるおそれがない。さらに、サーミスターのような感温センサが不要でありかつ温度制御回路の構成も簡易であり、また、発熱源に種々のものが使用可能であるので、コストの低減をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施例である温度可変ヒーターの外観を示す平面図である。
【図2】図1の実施例における温度制御回路の構成を示す電気回路図である。
【図3】図2の温度制御回路のタイミングチャートである。
【図4】この発明の他の実施例の外観を示す平面図である。
【図5】この発明の他の実施例である観賞魚用ヒーターを示す説明図である。
【図6】従来例の平面図である。
【図7】図6の従来例のコネクターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、この発明の一実施例である動物飼育用の温度可変ヒーター1の外観を示しているが、図示の温度可変ヒーター1は、動物飼育用に限らず、他の用途(例えば、血液の保温、細胞の培養、植物の育成など)にも用いることができる。
【0014】
この実施例の温度可変ヒーター1は、シート状の面ヒーターより成る発熱部2に合成樹脂製のコネクター3によって電源コード線4が電気接続されるとともに、電源コード線4の中間に合成樹脂製のコントローラ5が介装されたものである。電源コード線4は発熱部2とコントローラ5との間を結ぶ中間コード41と、先端に商用電源のコンセントに差し込まれるプラグ43を有する接続コード42とで構成されている。
なお、コントローラ5と発熱部2とが分離可能なように、図4に示すように、中間コード41を第1,第2の各部分41a,41bに分けてプラグ44とソケット45とにより着脱するよう構成してもよい。
【0015】
発熱部2は、全体が矩形状をなす絶縁シート20のほぼ全域にわたって形成されたものである。絶縁シート20は、上下に重ねられた耐熱性を有する合成樹脂製の絶縁フィルムにより構成され、絶縁フィルム間に加温のための矩形状の面状発熱体22が設けられている。面状発熱体22は、一方の絶縁フィルムの表面に導電性のカーボン粒子を主成分とするインキを用いて印刷することにより形成されている。絶縁フィルムの表面にはさらに、面状発熱体22の両側に沿った2本の直線電極24a,24bより成る第1の電極部23と、面状発熱体22を等分する位置に前記直線電極24a,24bと平行に配置される1本の直線電極26より成る第2の電極部25とが、それぞれ導電性インキを用いて印刷することにより形成されている。
面状発熱体22および第1、第2の各電極部23,25の上面には他方の絶縁フィルムが被せられて2枚の絶縁フィルムが一体化されている。
【0016】
コネクター3は、発熱部2の第1,第2の各電極部23,25と電源コード線4とを接続するもので、絶縁シート20の一端縁にかしめ付けられている。コネクター3の内部には、図2に示す温度制御回路6に配された温度フューズfが組み込まれているが、それ以外の部品や基板は一切組み込まれていない。
【0017】
コントローラ5は、合成樹脂製のケース50の表面に温度調整用のつまみ51と通電状態を示すランプ52とが設けられたものである。図示例のつまみ51は、スライドタイプのつまみであるが、これに限らず、回動タイプのつまみであってもよい。ケース50の表面のつまみ51のスライド位置には、温度を示す目盛り板(図示せず)が付設されるが、この目盛り板の目盛りはつまみ51のスライド位置と発熱部2の発熱温度との関係を予め求めることで容易に定めることができる。
コントローラ5のケース50の内部には、図2に示す温度制御回路6の回路パターンが印刷されかつその回路構成部品が実装されたプリント配線基板(図示せず)が組み込まれている。
【0018】
図2において、61,62は100ボルトの交流電圧Vが入力される入力端子、fは温度フューズ、BRはノイズ除去用のバリスター、Dは前記ランプ52を構成する発光ダイオードである。
図示例の温度制御回路6は、トリガーダイオードTDとトライアックTRとを用いた位相制御回路により構成されており、位相制御により発熱部2へ供給する電力量を制御して発熱部2の温度を可変設定する。
【0019】
図示の位相制御回路は、温度調整用の可変抵抗器VR、ダミー抵抗R1、およびコンデンサC1より成る移相回路を含むもので、可変抵抗器VRは温度調整用のつまみ51のスライド操作によって抵抗値が変化するように構成されている。なお、図中、トライアックTRの両端に接続された抵抗R2とコンデンサC2との直列回路はサージ吸収回路であり、サージ電圧によるトライアックTRの破壊などを防止する。
【0020】
前記の移相回路は、コンデンサC1の両端の電圧V1がトリガーダイオードTDのブレークオーバ電圧に到達すると、トリガーダイオードTDがスイッチオンし、コンデンサC1が放電し、トライアックTRのゲートにゲート信号igが与えられてトライアックTRがトリガされる。なお、図2の回路において、発熱部2での感電を防止するために、出力側に整流、平滑回路63を設けて交流出力を直流出力に変換することもできる。
【0021】
図3は、上記した温度制御回路6のタイミングチャートであり、図3(1)は入力端子61,62に与えられる電源電圧Vの波形を、図3(2)はトライアックTRのゲートに与えられるゲート信号igを、それぞれ示している。また、図3(3)はトライアックTRの両端の電圧Vtの波形を、図3(4)は発熱部2の両端の電圧Vhの波形を、それぞれ示している。
【0022】
いま、つまみ51をスライドさせて可変抵抗器VRの抵抗値を小さくすると、移相回路のコンデンサC1の充電速度が速くなり、ゲート信号igの位相が図3(2)において矢印で示す方向へ移行する。同時に、図3(3)に示すように、トライアックTRの導通角αが大きくなってα′(>α)となり、発熱部2の両端の電圧Vhが増加し、発熱部2へ供給する電力量が増大して発熱温度が高められる(図3(4)参照)。
【0023】
なお、上記の実施例は、発熱源に面状発熱体を用いた温度可変ヒーター1の実施例であるが、図5に示すように、発熱源にニクロム線を用いた温度可変ヒーター1にも実施することが可能である。同図のヒーター1は、観賞魚用水槽9内の水を加温するためのもので、発熱部2に電源コード線4が電気接続されるとともに、電源コード線4の中間に合成樹脂製のコントローラ5が介装されている。コントローラ5のケース50の表面には、温度調整用のつまみ51と通電状態を示すランプ52とが設けられている。
【0024】
上記した各実施例の温度可変ヒーター1において、温度調整用のつまみ51を外部から操作して可変抵抗器VRの抵抗値を変化させると、位相制御回路によって発熱部2へ供給する電力量が抵抗値に応じて制御され、発熱部2の温度が供給電力量に応じた値に設定される。このように温度制御を感温センサを用いない電力制御によることにしたので、感温センサが不要かつ温度制御回路6の構成も簡易となる。また、発熱源にPTC特性を有するもののみならず、カーボン、ニクロム線などを用いたものなど、種々のものが使用可能である。
【0025】
さらに、可変抵抗器VRや温度制御回路6が実装されるプリント配線基板は、電源コード線4の中間に介装されるコントローラ5に組み込まれているので、電源コード線4を発熱部2に接続するためのコネクター3が小さくて済み、発熱部2が嵩張ることがない。また、コネクター3にプリント配線基板などが組み込まれていないので、小動物の排尿などで濡れても、故障を招くおそれがない。
【符号の説明】
【0026】
1 温度可変ヒーター
2 発熱部
3 コネクター
4 電源コード線
5 コントローラ
6 温度制御回路
51 温度調整用のつまみ
VR 可変抵抗器
C1 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部と、発熱部へ電力を供給するための電源コード線と、電源コード線の中間に介装されるコントローラとで構成され、前記コントローラには、温度調整用のつまみが外部操作可能に設けられるとともに、位相制御により発熱部へ供給する電力量を制御して発熱部の温度を可変設定する温度制御回路が組み込まれており、前記温度制御回路は、温度調整用の可変抵抗器およびコンデンサよりなる移相回路を含み、前記可変抵抗器は前記温度調整用のつまみによって抵抗値が変化するように構成されて成る温度可変ヒーター。
【請求項2】
前記発熱部は、絶縁シート上に面状発熱体が設けられたシート状の面ヒーターにより構成されている請求項1に記載された温度可変ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−43577(P2012−43577A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182309(P2010−182309)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(504401695)有限会社グレース電子制御 (5)
【Fターム(参考)】