説明

温度検出回路

【課題】温度検出回路の出力電圧が電源電圧に比例するレシオメトリック動作であり、コモンモード電位変動があっても検出温度に誤差を生じない差動信号出力であり、且つ温度検出回路の出力電圧は温度に対して線形に変化する温度検出回路を提供すること。
【解決手段】抵抗値の逆数が温度に対して線形に変化する抵抗体と、抵抗値が温度に対して線形に変化する抵抗体と、全差動型誤差増幅器を用いて温度検出回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温素子として抵抗を用いた温度検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
感温素子として抵抗を用いた温度検出回路として、例えば特許文献1に記載されているような温度検出回路(温度検出器)が知られている。この特許文献1記載の温度検出回路は、電源電圧を分圧するための、第1の抵抗体と第2の抵抗体とが直列接続された第1の電圧分圧回路と、前記電源電圧を分圧するための、第3の抵抗体と感温抵抗素子とが直列接続された第2の電圧分圧回路と、前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体との接続点の第1の電位及び前記第3の抵抗体と前記感温抵抗素子との接続点の第2の電位をアナログ/デジタルコンバータで読み取り、前記第1の電位と前記第2の電位との電位比を算出し、あらかじめ用意された所定の電位比−温度特性とから、前記算出された電位比に対応する温度を検出温度として取得することで温度検出を行っている。
【0003】
従来の温度検出回路の温度検出技術は、電源電圧を分圧し基準電圧として用いることで、電源電圧変動による検出温度の誤差を低減する。すなわち、温度検出回路のレシオメトリックを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−272282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の温度検出回路の温度検出技術では、信号が差動信号になっていないので、動作時の消費電流等によりグランド電位のコモンモード電位変動があった場合、検出温度に誤差を生じる問題がある。さらに、感温抵抗素子の電圧比は温度に対して非線形に変化する。従って電位比−温度変換テーブルが必要となる問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、温度検出回路の出力電圧が電源電圧に比例するレシオメトリック動作であり、コモンモード電位変動があっても検出温度に誤差を生じない差動信号出力であり、且つ温度検出回路の出力電圧は温度に対して線形に変化する温度検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温度検出回路は、第一の抵抗と第二の抵抗で構成される第一の分圧回路と、第三の抵抗と第四の抵抗で構成される第二の分圧回路と、第一の分圧回路の出力端子が負極入力を入力され、第二の分圧回路の出力端子が正極入力に接続された全差動型誤差増幅器と、全差動型誤差増幅器の正極出力端子と第一の分圧回路の出力端子の間に接続された第五の抵抗と、全差動型誤差増幅器の負極出力端子と第二の分圧回路の出力端子の間に接続された第六の抵抗とを備え、第一の抵抗と前記第四の抵抗は第一の抵抗種で構成され、第二の抵抗と第三の抵抗と第五の抵抗と第六の抵抗は第二の抵抗種で構成され、全差動型誤差増幅器の負極出力端子と正極出力端子の電位差を出力とする構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば抵抗値の逆数が温度に対して線形に変化する抵抗体と抵抗値が温度に対して線形に変化する抵抗体と全差動型誤差増幅器を用いて、温度検出回路の出力電圧が電源電圧に比例するレシオメトリック動作であり、コモンモード電位変動があっても検出温度に誤差を生じない差動信号出力であり、且つ温度検出回路の出力電圧は温度に対して線形に変化する温度検出回路を構成することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の温度検出回路を示す回路図である。
【図2】本発明のディジタル出力の温度検出回路の回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の温度検出回路を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の温度検出回路の回路図である。電源電圧Vddグランド電圧間を抵抗101と抵抗102で構成される分圧回路151と、電源電圧Vddグランド電圧間を抵抗103と抵抗104で構成される分圧回路150と、分圧回路151の出力端子110が負極入力を入力され、分圧回路150の出力端子111が正極入力に接続された全差動型誤差増幅器107と、全差動型誤差増幅器107の正極出力112と出力端子110の間に接続された抵抗105と、全差動型誤差増幅器107の負極出力113と出力端子111の間に接続された抵抗106で構成される。
【0012】
ここで、抵抗101および抵抗104は、感温抵抗体で温度係数の大きい高抵抗ポリシリコンで構成される。便宜的にその抵抗値をR1で表すとする。また、抵抗102および抵抗103は温度係数の小さい低抵抗ポリシリコンで構成される。便宜的にその抵抗値をR3で表すとする。また、抵抗105および抵抗106は温度係数の小さい低抵抗ポリシリコンで構成される。便宜的にその抵抗値をR2で表すとする。
【0013】
感温抵抗体である高抵抗ポリシリコンは、単位面積当たり抵抗値の逆数の温度特性が温度に対して線形に変化する。低抵抗ポリシリコンは、単位面積当たり抵抗値の温度特性が温度に対して線形に変化する。
【0014】
図1の温度検出回路は、出力電圧が全差動型誤差増幅器107の正極出力112を基準とした負極出力113との電位差となる。便宜的にその電位差をVOUTとする。
【0015】
便宜的に接続点110、111、112、113の電位をそれぞれV(110)、V(111)、V(112)、V(113)と表すとすると、接続点110についてミルマンの定理を適用すれば、式(1)が得られる。
【0016】
【数1】

同様にして、接続点111についてミルマンの定理を適用すれば式(2)が得られる。
【0017】
【数2】

全差動型誤差増幅器107の電圧利得は1よりも十分大きく、V(110)=V(111)と近似できるとすると式(1)、式(2)より式(3)を得る。
【0018】
【数3】

式(3)より本発案の温度検出回路の出力電圧は電源電圧Vddに比例し、レシオメトリック出力となる。R1は感温抵抗体である高抵抗ポリシリコンで構成され、抵抗値の逆数は温度に対して線形に変化するのに対して、R2、R3は低抵抗ポリシリコンで構成され、抵抗値は温度に対して線形に変化する。
【0019】
従って、式(3)の第一項であるR2/R1は温度に対して線形に大きく変化する項になり、第二項であるR2/R3は同じ低抵抗ポリシリコンで構成されているので温度が変化しても値の変化しない項になる。
【0020】
よって、第一項であるR2/R1を適切に選ぶことで本発案の温度検出回路の温度感度が決まり、第二項であるR2/R3を適切に選ぶことで本発案の温度検出回路のオフセット電圧を決めることができる。
【0021】
このようにして温度検出回路の出力電圧が電源電圧に比例するレシオメトリック動作であり、コモンモード電位変動があっても検出温度に誤差を生じない差動信号出力であり、且つ温度検出回路の出力電圧は温度に対して線形に変化する温度検出回路を構成することができる。
【0022】
図2は、本発明のディジタル出力の温度検出回路の回路図である。
【0023】
ディジタル出力の温度検出回路は、以下のような構成となっている。温度検出回路201の差動出力がアナログ/デジタルコンバータ(ADC)202のVIN入力に接続される。抵抗120、抵抗121、抵抗122で構成された基準電圧回路203の出力である接続点114、接続点115が該アナログ/デジタルコンバータ(ADC)202のVREF入力に接続される。
【0024】
便宜的に抵抗120、抵抗121、抵抗122の抵抗値をそれぞれR4、R5、R6とし、接続点114、接続点115の電位をそれぞれV(114)、V(115)とすると、基準電圧回路203の出力電圧VREFはV(114)―V(115)で表され、式(4)のようになる。
【0025】
【数4】

アナログ/デジタルコンバータ(ADC)202の出力コードはVOUT/VREFに比例するので式(5)に比例する。
【0026】
【数5】

式(5)の値はVddの項が消去されるので電源電圧に影響されない。よって、電源電圧が変動しても検出温度が変化しないディジタル出力の温度検出回路を構成することができる。
【符号の説明】
【0027】
101、104 高抵抗ポリシリコン抵抗
102、103、105、106 低抵抗ポリシリコン抵抗
107 全差動型誤差増幅器
201 温度検出回路
202 アナログ/デジタルコンバータ(ADC)
203 基準電圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の抵抗と第二の抵抗で構成される第一の分圧回路と、
第三の抵抗と第四の抵抗で構成される第二の分圧回路と、
前記第一の分圧回路の出力端子が負極入力を入力され、前記第二の分圧回路の出力端子が正極入力に接続された全差動型誤差増幅器と、
前記全差動型誤差増幅器の正極出力端子と前記第一の分圧回路の出力端子の間に接続された第五の抵抗と、
前記全差動型誤差増幅器の負極出力端子と前記第二の分圧回路の出力端子の間に接続された第六の抵抗と、を備え、
前記第一の抵抗と前記第四の抵抗は第一の抵抗種で構成され、前記第二の抵抗と前記第三の抵抗と前記第五の抵抗と前記第六の抵抗は第二の抵抗種で構成され、
前記全差動型誤差増幅器の負極出力端子と正極出力端子の電位差を出力とすることを特徴とする温度検出回路。
【請求項2】
前記第一の抵抗種は、抵抗値の逆数が温度に対して線形に変化する高抵抗ポリシリコンであり、
前記第二の抵抗種は、抵抗値が温度に対して線形に変化する低抵抗ポリシリコンであることを特徴とする請求項1記載の温度検出回路。
【請求項3】
前記全差動型誤差増幅器の出力端子が入力端子に接続されたアナログ/デジタルコンバータと、
直列に接続された第七の抵抗、第八の抵抗及び第九の抵抗で構成され、前記第七の抵抗と前記第八の抵抗の接続点と前記第八の抵抗と前記第九の抵抗の接続点がアナログ/デジタルコンバータの基準電圧入力端子に接続された電源電圧分圧回路と、を備えたことを特徴とする請求項2記載の温度検出回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−64507(P2011−64507A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213596(P2009−213596)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】