説明

温度検知戻り電極パッド

【課題】電気外科用装置、システムおよび方法、さらに特に、温度を検知するように構成された1つ以上の戻り電極パッドを利用する単極の電気外科用システムを提供する。
【解決手段】電気外科用戻り電極6であって、少なくとも1つの温度モニタゾーン45と、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを含む伝導性パッド30と、該伝導性パッド30に結合された温度検知回路40であって、該温度検知回路40が、該少なくとも1つの温度モニタゾーン45内に配置された少なくとも1つのダイオード42を含み、該少なくとも1つのダイオード42が、該少なくとも1つの温度モニタゾーン45の温度を示す所定の順方向電圧降下を有する、温度検知回路40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気外科用装置、システムおよび方法に関する。さらに特に、本開示は、温度を検知するように構成された1つ以上の戻り電極パッドを利用する単極の電気外科用システムに向けられる。
【背景技術】
【0002】
エネルギーベースの組織治療は、当該分野で良く知られている。様々なタイプのエネルギー(例えば、電気的、超音波、マイクロ波、低温、熱、レーザなど)は、所望の外科的結果を達成するために組織に適用され得る。電気外科手術は、典型的に、高い高周波の電流を、組織を、切断、焼灼、凝固または封止する外科部位に印加することを伴う。単極の電気外科手術において、ソース電極または活性電極が、高周波エネルギーを電気外科用発電機から組織まで送り、戻り電極は電流を発電機に戻す。単極の電気外科手術において、ソース電極は、典型的に、ユーザによって保持され、かつ治療される組織に適用される外科用機器の一部である。患者戻り電極は、典型的に、患者に粘着的に接着されるパッドの形態であり、発電機に電流を戻すように、活性電極から離れて配置される。
【0003】
戻り電極は、通常、その部位における加熱を最少にするために大きな患者接触面積を有する。なぜならば、表面積が小さければ小さいほど、電流密度は大きくなり、熱強度も大きくなるからである。すなわち、組織を加熱するのは、電気信号の電流密度であるので、患者に接着される戻り電極の面積は重要である。より大きい接触面積が、局所的な熱強度を減少させるために所望される。戻り電極は、典型的に、特定の電気外科処置およびデューティサイクルの間(すなわち、発電機がオンの時間のパーセンテージ)に利用される最大電流の仮定に基づいて、サイズを合わせられる。
【0004】
最初のタイプの戻り電極は、伝導性ゼリーで覆われた大きな金属板の形態である。後に、接着電極は、伝導性ゼリーまたは伝導性接着剤で覆われた単一の金属ホイルを用いて開発された。しかしながら、これらの接着電極に伴う1つの問題は、一部が患者からはがされた場合に、患者と接触する接触エリアは減少し、これによって、接着される部分における電流密度は増加し、次に、組織に加えられる熱も増加する。このことは、組織が、血液循環が皮膚を冷却するポイントを超えて、加熱された場合に、戻り電極の接着された部分の下のエリアにおいて患者が火傷する危険性がある。
【0005】
この問題を処理するために、包括的に、戻り電極接触品質モニタ(RECQM)と呼ばれる様々な戻り電極およびハードウェア回路が開発された。このようなシステムは、種々の組織および/または電極特性(例えば、電極接着性の度合い、温度)を計算するために、戻り電極でインピーダンスを測定することに頼る。これらのシステムは、戻り電極のパッドのインピーダンスにおける変化の関数として温度を測定するようにのみ構成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、患者接触面を有する伝導性パッドを含む電気外科用戻り電極に関する。伝導性パッドは、電源に結合され、かつ患者接触面から電気的に絶縁された温度回路を含む。温度回路は、1つ以上の抵抗器に直列に結合された1つ以上のダイオードを含む。ダイオードは、所定の温度測定ゾーン内に配置され、対応する温度モニタゾーン内での温度測定を提供する。特に、ダイオードを横切る順方向バイアス電圧は、温度と共に変化する。従って、電圧をモニタすることによって、温度は、その関数としてモニタされ得る。
【0007】
本開示の一局面に従って、電気外科用戻り電極が提供される。戻り電極は、1つ以上の温度モニタゾーンと、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを有する伝導性パッドを含み、かつ該伝導性パッドと動作可能に関連付けられた温度検知回路を含む。温度検知回路は、少なくとも1つの温度モニタゾーン内に配置された少なくとも1つのダイオードを含み、該少なくとも1つのダイオードは、少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する。
【0008】
電気外科手術を行う方法もまた、本開示によって考えられる。該方法は、1つ以上の温度モニタゾーンと、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを有する伝導性パッドを含み、かつ該伝導性パッドと動作可能に関連付けられた温度検知回路を含む電気外科用戻り電極を提供するステップを含む。該温度検知回路は、少なくとも1つの温度モニタゾーン内に配置された少なくとも1つのダイオードを含み、該少なくとも1つのダイオードは、少なくとも1つのモニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する。該方法はまた、該電気外科用戻り電極を患者に接触させて配置するステップと、電気外科用発電機を経由して電気外科用エネルギーを生成するステップと、該電気外科用エネルギーを活性電極を経由して患者に供給するステップと、所定の順方向電圧降下をモニタすることにより、該少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を測定するステップとを含む。
【0009】
本開示の別の局面に従って、電気外科手術を行う電気外科用システムが開示される。該電気外科用システムは、電気外科用エネルギーを提供するように構成された電気外科用発電機と、電気外科用戻り電極とを含む。戻り電極は、1つ以上の温度モニタゾーンと、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを有する伝導性パッドを含み、かつ該伝導性パッドに動作可能に関連付けられた温度検知回路を含む。温度検知回路は、少なくとも1つの温度モニタゾーン内に配置された少なくとも1つのダイオードを含み、該少なくとも1つのダイオードは、少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する。該システムも、電気外科用エネルギーを患者に供給するための活性電極を含む。
【0010】
本発明はさらに以下の手段を提供する。
・(項目1)
電気外科用戻り電極であって、
少なくとも1つの温度モニタゾーンと、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを含む伝導性パッドと、
該伝導性パッドに結合された温度検知回路であって、該温度検知回路が、該少なくとも1つの温度モニタゾーン内に配置された少なくとも1つのダイオードを含み、該少なくとも1つのダイオードが、該少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する、温度検知回路と
を備えた、電気外科用戻り電極。
・(項目2)
上記少なくとも1つのダイオードは順方向バイアスされている、項目1に記載の電気外科用戻り電極。
・(項目3)
上記温度検知回路を収納する保持基板をさらに備え、該保持基板は、該温度検知回路を、上記患者接触面から電気的に絶縁するように構成されている、項目1または項目2に記載の電気外科用戻り電極。
・(項目4)
上記温度検知回路は、上記少なくとも1つのダイオードと直列に結合された少なくとも1つの抵抗器を含む、項目1〜項目3のいずれか1項に記載の電気外科用戻り電極。
・(項目5)
上記温度検知回路は、上記少なくとも1つのダイオードに電流を供給するように構成された少なくとも1つの電源に結合されている、項目1〜項目4のいずれか1項に記載の電気外科用戻り電極。
・(項目6)
上記少なくとも1つの抵抗器は、上記少なくとも1つのダイオードを流れる上記電流を、所定のレベルに制限するように構成されている、項目4に記載の電気外科用戻り電極。・(項目7)
上記伝導性パッドは、上記患者接触面上に配置された接着剤材料を含む、項目1〜項目6のいずれか1項に記載の電気外科用戻り電極。
・(項目8)
上記伝導性パッドは、正の温度係数(PCT)材料で少なくとも部分的に覆われている、項目1〜項目7のいずれか1項に記載の電気外科用戻り電極。
・(項目9)
電気外科手術を行う電気外科用システムであって、該電気外科用システムは、
電気外科用エネルギーを提供するように構成された電気外科用発電機と、
少なくとも1つの温度モニタゾーンと電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを含む伝導性パッドと、該伝導性パッドと動作可能に関連付けられた温度検知回路とを含む、電気外科用戻り電極であって、該温度検知回路は、該少なくとも1つの温度モニタゾーン内に配置された少なくとも1つのダイオードと、該少なくとも1つのダイオードと直列に結合された少なくとも1つの抵抗器とを含み、該少なくとも1つのダイオードは、該少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する、電気外科用戻り電極と、
患者に電気外科用エネルギーを供給するための活性電極と
を備えた、電気外科用システム。
・(項目10)
上記少なくとも1つのダイオードは順方向バイアスされている、項目9に記載の電気外科用システム。
・(項目11)
上記温度検知回路を収納する保持基板をさらに備え、該保持基板は、該温度検知回路を、該患者接触面から電気的に絶縁するように構成されている、項目9および項目10のうちのいずれか1項に記載の電気外科用システム。
・(項目12)
上記温度検知回路は、上記少なくとも1つのダイオードに電流を供給するように構成された少なくとも1つの電源に結合されている、項目9、項目10および項目11のうちのいずれか1項に記載の電気外科用システム。
・(項目13)
上記温度検知回路は、上記少なくとも1つのダイオードに直列に結合された少なくとも1つの抵抗器を含む、項目9、項目10、項目11および項目12のうちのいずれか1項に記載の電気外科用システム。
・(項目14)
上記少なくとも1つの抵抗器は、上記少なくとも1つのダイオードを流れる電流を、所定のレベルに制限するように構成されている、項目13に記載の電気外科用システム。
・(項目15)
電気外科手術を行う方法であって、該方法は、
電気外科用戻り電極を提供するステップであって、該電気外科用戻り電極は、伝導性パッド、および該伝導性パッドと結合された温度検知回路を含み、該伝導性パッドは、少なくとも1つの温度モニタゾーンと、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを有し、該温度検知回路は、該少なくとも1つの温度モニタゾーン内に配置された少なくとも1つのダイオードを含み、該少なくとも1つのダイオードは、該少なくとも1つのモニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する、ステップと、
該電気外科用戻り電極を患者に接触させて配置するステップと、
電気外科用エネルギー源から電気外科用エネルギーを発生させるステップと、
該電気外科用エネルギーを活性電極を経由して該患者に供給するステップと、
該所定の順方向電圧降下をモニタすることにより、該少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を測定するステップと
を含む、方法。
・(項目16)
上記少なくとも1つのダイオードが、順方向バイアスされている、項目15に記載の方法。
・(項目17)
上記外科用戻り電極が、上記温度検知回路を収納するための保持基板をさらに備え、該保持基板は、上記患者接触面から該温度検知回路を絶縁するように構成されている、項目15に記載の方法。
・(項目18)
上記温度検知回路が、上記少なくとも1つのダイオードと直列に結合された少なくとも1つの抵抗器を備える、項目15に記載の方法。
・(項目19)
上記少なくとも1つのダイオードに電流を供給するステップをさらに包含する、項目18に記載の方法。
・(項目20)
上記少なくとも1つのダイオードを通って流れる電流を所定のレベルに制限するステップをさらに包含する、項目19に記載の方法。
【0011】
(摘要)
電気外科用戻り電極が開示されている。戻り電極は、1つ以上の温度モニタゾーンと、電気外科用エネルギーを伝導するように構成された患者接触面とを有する伝導性パッドを含み、かつ該伝導性パッドと結合された温度検知回路を含む。温度検知回路は、該少なくとも1つの温度モニタゾーンの範囲内に配置された少なくとも1つのダイオードを含み、該少なくとも1つのダイオードは、少なくとも1つの温度モニタゾーンの温度を示す所定の順方向電圧降下を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本開示に従う電気外科用システムの概略的なブロック図である。
【図2】図2は、本開示の一実施形態に従う発電機の概略的なブロック図である。
【図3】図3は、図1の単極の電気外科用システムの電気外科用戻り電極の上面図である。
【図4】図4は、正の温度係数(PTC)材料および接着剤材料レイヤを有する電気外科用戻り電極の断面側面図である。
【図5A】図5A〜図5Bは、本開示に従う温度検知回路を有する電気外科用戻り電極の一実施形態を図示する。
【図5B】図5A〜図5Bは、本開示に従う温度検知回路を有する電気外科用戻り電極の一実施形態を図示する。
【図6】図6は、本開示に従う温度検知回路を有する電気外科用戻り電極の別の実施形態の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の種々の実施形態は、本明細書中で、図面を参照して記載される。
【0014】
本開示の特定の実施形態は、以後、添付の図面を参照して記載される。以下の記載において、不必要な詳細において本開示を不明瞭にすることを避けるために、周知の機能または構成は、詳細には記載されない。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に従う電気外科用システムの概略図である。該システムは、患者Pの組織を治療する1つ以上の電極を有する電気外科用機器2を含む。機器2は、1つ以上の活性電極(例えば、電気外科用切断プローブ、焼灼電極など)を含む単極の機器である。電気外科RF(高周波)エネルギーは、発電機20によって、電気外科用ケーブル4を経由して、機器2に供給され、これは活性出力端子に接続され、機器2が組織を凝固し、封止し、焼灼しかつ/または他の場合には治療することを可能にする。エネルギーは、戻り電極6を介して、戻りケーブル8を経由して発電機20に戻される。システムは、患者Pとの全体の接触面積を最大にすることによって、組織損傷の機会を最小にするように構成された複数の戻り電極6を含み得る。さらに、発電機20および戻り電極6は、いわゆる「組織対患者」接触をモニタすることにより、組織損傷の機会をさらに最小にするために十分な接触がその間に存在することを保証するように構成され得る。
【0016】
発電機20は、発電機20を制御する入力制御(例えば、ボタン、アクチベータ、スイッチ、タッチスクリーンなど)を含む。さらに、発電機20は、ユーザに種々の出力情報(例えば、強度設定、治療完了インジケータなど)を提供する1つ以上のディスプレイスクリーンを含み得る。制御は、ユーザが、RFエネルギーの電力、波形、および特定のタスクに対して適切な所望の波形を達成するための他のパラメータ(例えば、凝固、組織封止、強度設定など)を調節することを可能にする。機器2はまた、発電機20の特定の入力制御を有して冗長であり得る複数の出力制御を含み得る。入力制御を機器2に配置することは、外科的処置の間に、発電機20との相互作用を必要とすることなしに、RFエネルギーの簡単かつ素早い変更を可能にする。
【0017】
図2は、制御装置24と、高電圧のDC電源27(「HVPS」)と、RF出力ステージ28とを有する発電機20の概略的なブロック図を示す。HVPS27は、高電圧のDC電力をRF出力ステージ28に提供し、RF出力ステージ28は、次いで、高電圧のDC電力をRFエネルギーに変換し、該RFエネルギーを活性電極に送る。特に、RF出力ステージ28は、高いRFエネルギーの正弦波形を生成する。RF出力ステージ28は、様々なデューティサイクル、ピーク電圧、波高率および他の適切なパラメータを有する複数の波形を生成するように構成される。特定のタイプの波形は、特別な電気外科モードに対して適切である。例えば、RF出力ステージ28は、100%のデューティサイクルの正弦波形を切断モードにおいて生成し、切断モードは、組織を焼灼し、融解し、解剖するために最も適しており、1〜25%のデューティサイクルの波形を凝固モードにおいて生成し、凝固モードは、出血を止めるために、組織を焼灼するためにもっとも使用される。
【0018】
制御装置24は、メモリ26と動作可能に接続されたマイクロプロセッサ25を含み、メモリ26は、揮発性メモリ(例えば、RAM)および/または不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメディア、ディスクメディアなど)であり得る。マイクロプロセッサ25は、出力ポートを含み、出力ポートは、マイクロプロセッサ25が、開ループ制御スキームおよび/または閉ループ制御スキームのいずれかに従って、発電機20の出力を制御することを可能にするHVPS27および/またはRF出力ステージ28と動作可能に接続される。当業者は、マイクロプロセッサ25が、本明細書において議論された計算を行うように構成された任意の論理プロセッサ(例えば、制御回路)によって置き替えられ得ることを認識する。
【0019】
閉ループ制御スキームは、フィードバック制御ループであって、種々の組織特性およびエネルギー特性(例えば、組織インピーダンス、組織温度、出力電流および/または電圧など)を測定する複数のセンサを含み得るセンサ回路22は、制御装置24にフィードバックを提供する。このようなセンサは、当業者の理解の範囲内である。制御装置24は、次いでHVPS27および/またはRF出力ステージ28に信号を送り、次いで、これらはそれぞれDCおよび/またはRF電源を調節する。制御装置24はまた、発電機20または機器2の入力制御から入力信号を受信する。制御装置24は、発電機20によって出力された電力を調節するために入力信号を利用し、かつ/またはその上で他の制御機能を行う。
【0020】
図3および図4は、単極の電気外科用手術における使用のための戻り電極6の様々な実施形態を図示する。戻り電極6は、トップ表面と、単極の電気外科手術の間に電流を受けるように構成された患者接触面32とを有する伝導性パッド30を含む。患者接触面32は、金属製ホイルのような適切な伝導性材料からなる。図3は、戻り電極6を、一般的な長方形形状で描いているが、戻り電極6が、全ての適切な規則的な形状または不規則な形状を有することは、本開示の範囲内である。
【0021】
図4を参照すると、戻り電極6の別の実施形態が示され、伝導性パッド30は、その上に堆積された正の温度係数(PTC)材料レイヤ38を含む。PTC材料38は、特に、ポリマ/カーボンベース材料、サーメットベースの材料、ポリマ材料、セラミック材料、誘電性材料またはこれらの任意の組み合わせからなり得る。PTC材料レイヤ38は、電気外科用戻り電極6の表面上の電流によって生成された温度を配布するように作用し、このことが、患者の火傷の危険性を最小にする。戻り電極6は、患者接触面32上の接着剤材料レイヤ39をさらに含む。接着剤材料は、例えば、コロラド州BoulderのValleylabによって製造されたPOLYHESIVETM接着剤のような、polyhesive接着剤、Z軸接着剤、水不溶性接着剤、親水性接着剤またはこれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定はされない。接着剤材料レイヤ39は、電気外科用戻り電極6と患者「P」との間の最適な接触表面積を保証し、これは患者の火傷の可能性を制限する。PTC材料レイヤ38が利用されない実施形態において、接着剤材料レイヤ39は、患者接触面32上に直接堆積され得る。
【0022】
図5Aおよび図5Bは、その中に配置される温度検知回路40を含む戻り電極6を示す。温度検知回路40は、少なくとも1つの温度センサを有する1つ以上の温度センサアレイ41および43を含む。予定の温度センサは、サーモカップル、サーミスタ、半導体(例えば、シリコン)ダイオード、フェライト材料およびホール効果デバイスを含む。温度検知回路40は、ポリイミドフィルムのような、適切な基板から製造された屈曲回路(例えば、可撓性の保持基板48)上に配置される。商標MYLARTMおよびKAPTONTMなどで販売されるフィルムが例である。
【0023】
ダイオード42は、1つ以上の電流制限抵抗器と直列に接続され、温度センサとして利用される。抵抗器44は、ダイオード42と直列に結合され、ダイオードを介して流れる電流を所定のレベルに設定および制限するように選択された抵抗を有する。ダイオード42への電流フローは、相互通信ワイヤ46を経由してダイオード42および抵抗器44と直列に接続された低電圧DC電源(例えば、バッテリ、AC/DC変換器など)の電源50によって提供される。電源50は、発電機20に組み込まれ得、HVPS27(例えば、ACアウトレット)と同一の供給源から電力を引き出され得る。一実施形態において、ダイオード42と抵抗器44との相互接続は、保持基板48上への金属のトレースの堆積、および保持基板48へのダイオード42および抵抗器44の直接的なハンダ付けによって、達成される。保持基板48はまた、温度検知回路40を、患者接触面32から電気的に絶縁することにより、発電機20に戻されるRFエネルギーが、回路コンポーネントと干渉することを防ぎ得る。
【0024】
ダイオード42は、順方向バイアスされることにより、電流は最初に抵抗器44を流れ、ダイオードのアノードからダイオードのカソードまで流れる。順方向バイアスされたダイオード42において、順方向電圧降下(Vf)が生成され、これはダイオード(例えば、発光ダイオード)のタイプに依存して、約0.5Vから約5Vの範囲である。順方向電圧は、温度に直接的に依存する。特に、温度が増加すると、ダイオード42内の半導体材料は、それらの価と伝導帯における変化を受け、結果としてVfが減少する。従って、ダイオード42を流れる電流を、抵抗器44を経由して一定に保つことによって、順方向バイアス電圧を測定することがダイオード42の温度の決定を可能にする。
【0025】
Vf信号は相互接続ワイヤ46を介して、発電機20に送信され、センサ回路22はVfを解析して、対応する温度の値を決定する。当業者が認識するように、相互接続46の各々は、隔離バリヤをわたる電気信号(例えば、Vf)を翻訳するために、対応する隔離回路(例えば、光学カプラ)を含み得、これによって温度検知回路40をRF電源から隔離する。
【0026】
解析プロセスは、Vf信号をアナログ−デジタル変換器に通すことと、次にデジタル化されたVf信号に所定の係数をかけて、対応する温度の値に達することとを含み得る。係数は、ダイオード42、抵抗器44の電気特性、ならびにそれらの中を通る電流の電気特性を経験的に考慮に入れると導かれる。温度信号は、次いで適切な行動を決定するために、該信号がさらに解析される制御装置24に送信される。例えば、温度測定値を所定の温度閾値と比較することと、温度測定値が所定の閾値よりも大きい場合にRF電源を調節または停止することとである。
【0027】
患者接触面32を横切る温度は、電流密度に影響する多くの係数(例えば、含水率、粘着性など)に起因して変わり得る。それゆえ、伝導性パッド30の様々な点で温度を測定することが所望され得る。様々な点で温度を測定することは、いわゆる「ホットスポット」の位置、つまり電流密度が周囲のエリアの電流密度を超え、パッド火傷を生じる患者接触面32の区域を正確に示すことを可能にする。各ダイオード42に対するVfの測定値は、ダイオード42の位置において、対応する温度の決定を提供するので、ダイオード42を伝導性パッド30内に戦略的に配置することは、それらの位置において温度をモニタすることを可能にする。
【0028】
図5Aを参照すると、抵抗器44とダイオード42の各組は、伝導性パッド30内に配置されることにより、ダイオード42が、対応する温度モニタゾーン45に対する温度示度を提供する。モニタゾーン45のサイズは、ダイオード42の間の距離に依存する。伝導性パッド30は、様々なサイズの任意の数のモニタゾーン45を含み得る。各ダイオード42は、センサ回路22によって、特定のモニタゾーン45と関連すると識別され、これにより、Vf信号が送信され、続いて温度示度に変換されるときに、発電機20はモニタゾーン45の各々に対して温度モニタを提供する。このデータは、ユーザに伝導性パッド30のどの特定の部分がホットスポットを含むかを指示するために利用され、これにより、必要な場合には、予防行動が取られ得る。予防行動は、自動的なRF電源の停止および/またはRF電源の調節もしくは手動停止を含み得、その結果伝導性パッド30が、識別されたホットスポットにて、患者に適切に接着されることを確実にする。
【0029】
図6に示されるように、温度センサアレイ41および43は、それぞれの温度モニタゾーン45内に配置された複数のダイオード42と直列に接続された単一の抵抗器44を含む。ダイオード42が1つの抵抗器44に直列に接続されているので、ダイオード42に供給される電流は同一である。結果として、ダイオード42を横切るVfを測定することは、それぞれの温度モニタゾーン45全体に対する温度を提供する。この回路構成は、伝導性パッド30のより大きな区域(例えば、全体のエリア)にわたる平均温度測定値を提供する。当業者は、抵抗器44とダイオード42との様々な構成が、伝導性パッド30の様々な区域の温度がモニタされることを保証するために意図されていることを認識する。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態が、図面に示されかつ/または本明細書で議論されてきたが、本開示はそれらに限定されることを意図せず、本開示は、当該技術が許す限りに範囲において広いものであり、本明細書はそのように読まれることが意図されている。従って、上の記載は、限定として解釈されるべきではなく、特定の実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付されている特許請求の範囲の範囲および精神の範囲で他の修正を予想するものである。
【符号の説明】
【0031】
2 電気外科用機器
4 電気外科用ケーブル
6 戻り電極
8 戻りケーブル
20 電気外科用発電機
P 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−9975(P2013−9975A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187537(P2012−187537)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2007−252904(P2007−252904)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(507364377)コヴィディエン・アクチェンゲゼルシャフト (62)
【Fターム(参考)】