説明

温度測定装置及び放射率測定装置

【課題】放射温度計による正確な温度測定を簡便に行うことが可能な温度測定装置を提供する。
【解決手段】温度測定装置は、被測定物1の温度を測定する放射温度計6と、被測定物1の放射率を測定する放射率測定装置10と、放射温度計6で測定された温度を放射率測定装置10で測定された放射率を用いて補正する補正処理部と、を備えている。放射温度計6は、被測定物1から放射される複数波長の放射光のうち予め定めた単一波長の放射光のみを検出する。放射率測定装置10は、放射率測定用光を被測定物1に照射する光源3と、被測定物1の表面で反射した反射光の全てを集光する集光部2と、反射光を検出する検出器4と、検出された反射光の光量に基づいて放射率を算出する演算処理装置5と、を備えている。光源3は、放射温度計6の検出波長と同波長の単色光を放射率測定用光として出力する。集光部2は、回転楕円面の内側を反射面とする凹面鏡2aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の温度を非接触で測定する温度測定装置に関する。また、本発明は、被測定物の放射率を測定する放射率測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、製鉄プロセス(例えば熱処理プロセス)においては、鋼板の表面温度を測定するに際して、傷付き等の表面性状への悪影響を防ぐことを重視して、非接触測定方式である放射温度計が用いられる。放射温度計によって正確な温度測定を行うためには、被測定物の放射率よって測定結果を補正する必要があるため、予め被測定物の放射率を測定することが必須となる。そのため、従来は、被測定物の全波長放射率又は放射温度計感度範囲の放射率を製鉄プロセスのライン外(オフライン)で測定して、測定結果の補正に用いていた。
【0003】
しかしながら、オフラインでの被測定物の全波長放射率の測定と同一条件で被測定物の温度測定が行われる場合には、正確な温度測定が可能であるが、被測定物の表面性状(例えば表面粗さや酸化度合い)等により放射率は異なるため、実際の被測定物の温度測定では、補正後でも結果に誤差が出るおそれがある。そこで、このような誤差を小さくするため、種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、被測定物の表面に光を照射し、その反射光の量とともに放射光の量を測定し、この反射光量から反射率を求め、キルヒホッフの法則に基づいて被測定物の反射率から放射率を算出して、この放射率と放射光量とから被測定物の温度を求める技術が開示されている。
また、特許文献2には、放射率が一様となる近似黒体塗装面を有するとともに被測定物の表面と類似の表面を有する較正板を備える較正装置により、放射温度計の放射率をオンラインで補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−86621号公報
【特許文献2】特開平8−338764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、被測定物の表面に対しその法線に沿って光を照射し、この法線方向の反射光のみを検出するものであるため、被測定物の表面で拡散光が生じる場合は拡散光を検出することができず、反射率を正確に測定することができないおそれがあった。また、被測定物から放出される放射光と反射光とを同時に検出すると、放射光と反射光とを区別することができないので、放射光と反射光との同時検出と、放射光のみの検出との両方を行って差し引きすることにより、放射光の量と反射光の量とを算出するという操作が必要であった。
【0007】
さらに、物体は温度によって放射エネルギーが異なる(プランクの放射則)。例えば、図3のグラフに示すように、1366Kと1922Kでは放射エネルギーの強度が異なるし、分布も異なる(すなわち、温度依存性を有する)。また、物体の表面性状によっても放射エネルギーは異なる。例えば、図4のグラフに示すように、同じ1922Kであっても、実在物の放射エネルギーは仮想体である黒体や灰色体とは異なり、大きな分光特性を有している。
【0008】
被測定物の全波長放射率を測定して補正に用いると、放射エネルギーの強度の分布の温度依存性等が原因で、補正に誤差が生じる場合がある。すなわち、実際の被測定物においては、放射率は波長λによって異なるものなので、これに起因して下式(1)で求められる全波長放射率εは温度によって変化する。
【0009】
【数1】

【0010】
そのため、特許文献1,2に開示の技術では、放射温度計で温度測定される被測定物の温度と同程度の温度において被測定物の放射率の測定を行っているが、例えば焼鈍炉内で被測定物の温度測定を行う場合には、放射率の測定装置及び放射温度計を冷却する必要が生じるため、温度測定に係る設備全体が大型化・複雑化するおそれがあった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、放射温度計による正確な温度測定を簡便に行うことが可能な温度測定装置を提供することを課題とする。また、正確な放射率の測定が可能な放射率測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の態様は次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係る温度測定装置は、被測定物から放射される複数波長の放射光のうち、予め定めた単一波長の放射光のみを検出して、前記被測定物の温度を測定する放射温度計と、前記放射温度計の検出波長と同波長の単色光を放射率測定用光として前記被測定物に照射し、その反射光の全てを検出して反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する放射率測定装置と、前記放射温度計で測定された温度を前記放射率測定装置で測定された放射率を用いて補正する補正処理部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このような温度測定装置においては、前記放射率測定装置は、前記反射光の全てを集光する集光部を備えることが好ましい。また、前記放射率測定装置は、回転楕円面の内側を反射面とする凹面鏡を有し前記反射光の全てを集光する集光部と、前記凹面鏡の2つの焦点のうち前記凹面鏡の底部から遠い方の第二焦点に向けて前記放射率測定用光を照射する光源と、前記集光部の凹面鏡によって前記凹面鏡の底部に近い方の第一焦点に集光された前記反射光を検出する検出器と、前記検出器で検出された前記反射光の光量に基づいて反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する演算部と、を備えることがより好ましい。
【0013】
さらに、前記放射温度計の検出波長及び前記放射率測定用光の波長を赤外領域の波長としてもよい。
さらに、上記温度測定装置は、製鉄プロセスにおいて鋼材の熱処理を行う熱処理炉で使用してもよく、この場合は、前記放射率測定装置が前記熱処理炉外に配置され、熱処理前の前記鋼材の放射率を測定するようになっており、前記放射温度計が前記熱処理炉内に配置され、前記熱処理炉内の前記鋼材の温度を測定するようになっていることが特に好ましい。
【0014】
また、本発明に係る放射率測定装置は、被測定物に単一波長の放射率測定用光を照射し、その反射光の全てを検出して反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する放射率測定装置であって、回転楕円面の内側を反射面とする凹面鏡を有し前記反射光の全てを集光する集光部と、前記凹面鏡の2つの焦点のうち前記凹面鏡の底部から遠い方の第二焦点に向けて前記放射率測定用光を照射する光源と、前記集光部の凹面鏡によって前記凹面鏡の底部に近い方の第一焦点に集光された前記反射光を検出する検出器と、前記検出器で検出された前記反射光の光量に基づいて反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このような放射率測定装置は、放射温度計によって測定された温度の補正に用いる放射率の測定に使用してもよく、前記放射温度計は、前記被測定物から放射される複数波長の放射光のうち、予め定めた単一波長の放射光のみを検出して、前記被測定物の温度を測定するものであり、前記放射率測定用光は、前記放射温度計の検出波長と同波長の単色光であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る温度測定装置は、放射温度計の検出波長と放射率測定用光の波長を同一の単一波長とし、且つ、被測定物に照射した放射率測定用光の反射光の全てを検出して放射率を算出するので、放射温度計による正確な温度測定を簡便に行うことが可能である。また、本発明に係る放射率測定装置は、被測定物に照射した放射率測定用光の反射光の全てを検出して放射率を算出するので、正確な放射率の測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る温度測定装置の一実施形態を説明する模式図である。
【図2】集光部による効果を示すグラフである。
【図3】温度による放射エネルギーの強度及び分布の違いを示す図である。
【図4】表面性状による放射エネルギーの強度及び分布の違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る温度測定装置及び放射率測定装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である温度測定装置の構成を説明する模式図である。
図1の温度測定装置は、被測定物1の温度を測定する放射温度計6と、被測定物1の放射率を測定する放射率測定装置10と、放射温度計6で測定された温度を放射率測定装置10で測定された放射率を用いて補正する補正処理部(図示せず)と、を備えている。
【0019】
被測定物1から放射される放射光には複数の波長の光が含まれているが、放射温度計6は、そのうち測定者が予め定めた単一波長(以下「特定単一波長」と記すこともある)の放射光のみを検出して、被測定物1の温度を測定するものである。放射温度計6の検出部を、特定単一波長の単色光のみを透過するフィルター9で覆えば、被測定物1から放射される複数波長の放射光のうち特定単一波長の光のみがフィルター9を透過して検出部に至り検出され、その光量が測定される。
【0020】
特定単一波長(放射温度計6の検出波長)は特に限定されるものではなく、被測定物1の温度、材質、表面性状等に応じて適宜選択すればよいが、例えば製鉄プロセスの焼鈍炉内で熱処理されている高温(例えば700℃以上1200℃以下)の鋼材の温度を測定する場合であれば、特定単一波長として赤外領域の波長(例えば0.5μm以上3.0μm以下)を選択することが好ましい。
なお、放射温度計6にフィルター9を用いる代わりに、特定単一波長の単色光のみを検出する放射温度計を用いてもよい。
【0021】
また、放射率測定装置10は、放射温度計6によって測定された温度の補正に用いる放射率の測定に使用されるものであり、放射率測定用光を被測定物1に照射する光源3と、被測定物1の表面で種々の方向に拡散して反射した反射光の全て(全方向の反射光)を集光する集光部2と、反射光を検出する検出素子等を有する検出器4と、検出器4で検出された反射光の光量に基づいて反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する演算処理装置5(本発明の構成要件である演算部に相当する)と、を備えている。光源3は、放射温度計6の検出波長(特定単一波長)と同波長の単色光を放射率測定用光として出力するものであり、例えばレーザーが好ましい。また、集光部2は、回転楕円面の内側を反射面とする凹面鏡2aを有する部材である。
【0022】
次に、この温度測定装置を用いて被測定物1の温度を測定する方法について説明する。まず、放射率測定装置10を用いて被測定物1の放射率を測定する。回転楕円面状の凹面鏡2aは2つの焦点(第一焦点8及び第二焦点7)を有しているが、このうち凹面鏡2aの底部から遠い方の第二焦点7の位置に被測定物1の表面を位置合わせして、光源3から第二焦点7(被測定物1の表面)に向けて放射率測定用光を照射する。
【0023】
すると、放射率測定用光は被測定物1の表面で種々の方向に拡散して反射する(図1に示した矢印は、放射率測定用光及び反射光である)。全ての反射光は集光部2に捕捉され凹面鏡2aで反射し、回転楕円面の性質から、凹面鏡2aの底部に近い方の第一焦点8に集光される。第一焦点8の位置には検出器4が配されているので、集光された反射光が検出器4に検出され、その光量が測定される。
【0024】
放射率測定装置10の演算処理装置5は、照射した放射率測定用光の光量と測定された反射光の光量とから反射率を算出する。続いて、得られた反射率から、キルヒホッフの法則に基づいて放射率を算出する。そして、算出した放射率のデータを、放射温度計6内に組み込まれた前記補正処理部(図示せず)に送る。
【0025】
次に、放射温度計6で被測定物1の温度を測定する。被測定物1からは、その温度に応じた強度の放射光が放射されている。また、この放射光は、複数の波長の光を含んでいる。被測定物1から放射された放射光は放射温度計6に至り(図1に示した破線状の矢印が放射光である)、複数波長の放射光のうち特定単一波長の光のみがフィルター9を透過して検出部に検出され、その光量が測定される。
【0026】
放射温度計6内に組み込まれた前記補正処理部(図示せず)において、検出された放射光の光量に基づいて被測定物1の温度が算出され、その際には放射率を用いて補正が行われるが、この放射率として、放射率測定装置10の演算処理装置5で算出され前記補正処理部に送られてきた放射率が用いられる。よって、補正して得られた被測定物1の測定温度は、誤差が小さく正確である。以下に、このように正確な測定結果が得られる理由を詳細に説明する。
【0027】
第一に、従来の放射率測定装置では、被測定物の表面で種々の方向に拡散して反射した反射光のうち一部しか検出されないので、反射率を正確に測定することができないおそれがあり、その結果、放射率の測定結果が不正確となるおそれがあった。これに対して、本実施形態の放射率測定装置10は、被測定物1の表面で種々の方向に拡散して反射した放射率測定用光の反射光の全てを集光する集光部2を備えているので、反射率を正確に測定することができ、その結果、放射率の測定結果が正確である。よって、放射温度計6で測定された温度に対して、誤差の小さい正確な補正が行われるため、得られた被測定物1の測定温度は正確である。
【0028】
図2は、集光部2の効果を示すグラフである。このグラフの横軸は、種々の方向に拡散して反射した反射光のうち放射率測定装置が検出可能な反射光の範囲を視野角(単位はステラジアン)で表したものであり、視野角が2πステラジアンであれば、全方向の反射光を検出することができることを意味する。また、このグラフの縦軸は、測定結果の反射率Rmを真の反射率Rで除した値Rm/Rである。
【0029】
被測定物の表面での放射率測定用光の拡散率が小さい場合は、放射率測定装置の視野角の大小にかかわらず全ての反射光が検出されるので、真の反射率を測定することができ、Rm/Rの値は1となる。これに対して、被測定物の表面での放射率測定用光の拡散率が大きい場合は、放射率測定装置の視野角が小さくなるに従って、種々の方向に拡散して反射した反射光のうち検出される反射光の割合が少なくなるので、Rm/Rの値は小さくなっていく。
【0030】
図2から分かるように、本実施形態の放射率測定装置10は、視野角が2πステラジアンであるので、真の反射率を測定することができる。一方、特許文献1等に開示の従来の放射率測定装置は、視野角がπステラジアン以下であるため、種々の方向に拡散して反射した反射光のうち70%程度の反射光しか検出することができず、正確な反射率を測定することは困難である。その結果、正確な放射率が測定困難であるため、放射温度計による測定結果も不正確となる。
【0031】
第二に、従来の放射率測定装置は、被測定物の全波長放射率を測定して温度の補正に用いているので、放射エネルギーの強度の分布の温度依存性により、得られる全波長放射率が被測定物の温度によって変化する場合があった。よって、放射率の測定を行う際の被測定物の温度は、放射温度計で温度測定される被測定物の温度と同程度の温度とする必要があった。
【0032】
これに対して、本実施形態の放射率測定装置10は、放射温度計6の検出波長を単一波長とした上、放射温度計6の検出波長と同波長の単色光を放射率測定用光として用いた(すなわち、放射温度計6の検出波長と放射率測定用光の波長を同一の単一波長とした)。単色光の放射率は温度依存性がないので、放射率測定用光として単色光を用いれば、被測定物1の温度に関係なく一定の放射率が得られる。よって、放射率の測定を行う際の被測定物1の温度は、放射温度計6で温度測定される被測定物1の温度と同程度の温度とする必要はなく、全く異なる温度で放射率を測定しても差し支えないので、任意の温度で放射率を測定することが可能である。
【0033】
よって、例えば焼鈍炉内の高温の被測定物1の温度を測定する場合であっても、放射率の測定は、焼鈍炉外の室温の被測定物1に対して行うことができるから、放射率測定装置10を冷却する必要はない。よって、放射率測定装置10のメンテナンスが容易である。また、温度測定に係る設備全体を小型化・簡易化することができ、被測定物1の温度測定を簡便に行うことができる。
【0034】
次に、本実施形態の温度測定装置を製鉄プロセスに適用した例について説明する。この例は、製鉄プロセスの圧延工程において、製造ライン上を送られる鋼板の熱処理を行う熱処理炉(例えば焼鈍炉)に本実施形態の温度測定装置を設置し、熱処理炉内で熱処理されている鋼板の表面の温度を製造ライン上(オンライン)で測定するというものである。
【0035】
製鉄プロセスの図示しない熱処理炉の外部には、本実施形態の温度測定装置の放射率測定装置10が配置されており、この放射率測定装置10が、製造ライン上を送られてきた略室温(例えば10℃以上50℃以下)の鋼板(被測定物1)の放射率を、例えば熱処理炉の入口手前で測定するようになっている。一方、熱処理炉の内部には、本実施形態の温度測定装置の放射温度計6が配置されており、この放射温度計6が、熱処理炉内の高温(例えば700℃以上1200℃以下)に加熱された鋼板の温度を測定するようになっている。
【0036】
すなわち、製造ライン上を送られてきた略室温の鋼板の放射率を、熱処理炉の外部において放射率測定装置10で測定し、放射率の測定が終了したら、その鋼板を熱処理炉の内部に入れて熱処理を施す。そして、この放射率が測定された鋼板の熱処理中の温度を、放射温度計6で測定する。鋼板が送られるライン速度を考慮すれば、鋼板の同一部位についての温度測定結果と放射率測定結果が分かるから、放射温度計6で測定された鋼板の所定部位の温度を、予め測定した該部位の放射率を用いて補正して、正確な温度を算出し、該結果を出力する。
【0037】
このように高温の被測定物の温度測定を行う場合には、放射温度計6の検出波長、すなわち特定単一波長として赤外領域の波長を採用することが好ましい。よって、放射率測定用光の波長も、放射温度計6の検出波長と同一の赤外領域の波長となるが、上記のように放射率の測定を室温で行うので、室温の鋼板から放射される赤外領域の波長の放射光(赤外線)の強度は弱い。
【0038】
高温の鋼板について放射率の測定を行うと、高温の鋼板から強い赤外線が放射光として放射されるので、放射率測定用光の反射光である赤外線との区別が難しく、両赤外線が合わせて検出され、正確な反射率の測定が妨げられるおそれがある。しかしながら、室温の鋼板について放射率の測定を行えば、室温の鋼板から放射される赤外線は無視できるほど弱いので、赤外領域の波長の単色光を放射率測定用光として用いて室温で放射率の測定を行うことにより、高精度で放射率の測定を行うことができる。
【0039】
なお、赤外領域の波長の単色光(赤外線)を出力する光源は特に限定されるものではないが、レーザーが好適である。レーザーの種類は特に限定されるものではないが、例としてはYLFレーザー(yttrium lithium fluoride laser)、ファイバーレーザー、色中心レーザー、金属(Ca、Ba、Mn等)蒸気レーザー、化学レーザー等があげられる。
【符号の説明】
【0040】
1 被測定物
2 集光部
2a 凹面鏡
3 光源
4 検出器
5 演算処理装置
6 放射温度計
7 第二焦点
8 第一焦点
9 フィルター
10 放射率測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物から放射される複数波長の放射光のうち、予め定めた単一波長の放射光のみを検出して、前記被測定物の温度を測定する放射温度計と、
前記放射温度計の検出波長と同波長の単色光を放射率測定用光として前記被測定物に照射し、その反射光の全てを検出して反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する放射率測定装置と、
前記放射温度計で測定された温度を前記放射率測定装置で測定された放射率を用いて補正する補正処理部と、を備えることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記放射率測定装置は、前記反射光の全てを集光する集光部を備えることを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記放射率測定装置は、回転楕円面の内側を反射面とする凹面鏡を有し前記反射光の全てを集光する集光部と、前記凹面鏡の2つの焦点のうち前記凹面鏡の底部から遠い方の第二焦点に向けて前記放射率測定用光を照射する光源と、前記集光部の凹面鏡によって前記凹面鏡の底部に近い方の第一焦点に集光された前記反射光を検出する検出器と、前記検出器で検出された前記反射光の光量に基づいて反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する演算部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記放射温度計の検出波長及び前記放射率測定用光の波長が赤外領域の波長であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
製鉄プロセスにおいて鋼材の熱処理を行う熱処理炉で使用される温度測定装置であって、前記放射率測定装置が前記熱処理炉外に配置され、熱処理前の前記鋼材の放射率を測定するようになっており、前記放射温度計が前記熱処理炉内に配置され、前記熱処理炉内の前記鋼材の温度を測定するようになっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度測定装置。
【請求項6】
被測定物に単一波長の放射率測定用光を照射し、その反射光の全てを検出して反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する放射率測定装置であって、
回転楕円面の内側を反射面とする凹面鏡を有し前記反射光の全てを集光する集光部と、前記凹面鏡の2つの焦点のうち前記凹面鏡の底部から遠い方の第二焦点に向けて前記放射率測定用光を照射する光源と、前記集光部の凹面鏡によって前記凹面鏡の底部に近い方の第一焦点に集光された前記反射光を検出する検出器と、前記検出器で検出された前記反射光の光量に基づいて反射率を算出し、得られた反射率から放射率を算出する演算部と、を備えることを特徴とする放射率測定装置。
【請求項7】
放射温度計によって測定された温度の補正に用いる放射率の測定に使用される放射率測定装置であって、
前記放射温度計は、前記被測定物から放射される複数波長の放射光のうち、予め定めた単一波長の放射光のみを検出して、前記被測定物の温度を測定するものであり、
前記放射率測定用光は、前記放射温度計の検出波長と同波長の単色光であることを特徴とする請求項6に記載の放射率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92502(P2013−92502A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236078(P2011−236078)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】