説明

温水器

【課題】停電時において補助電源を使用することなく、温水を確保する。
【解決手段】湯水を貯える貯湯タンク5には、熱交換器6が収容される。熱交換器6は、給水流路を内部に有し、貯湯タンク5内の湯水の熱を内部の水へ移動させる。平時に貯湯タンク5へ給水する給水切替弁3は、停電時に貯湯タンク5への給水を停止し、熱交換器6への給水を開始する。平時に貯湯タンク5から給湯される給湯切替弁4は、停電時に貯湯タンク5からの給湯を停止し、熱交換器6からの給湯を開始する。これにより、停電時には、熱交換器6に給水された水が、貯湯タンク5に蓄えられた熱を吸収してから給湯される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
温水器として環境負荷が小さい貯湯式電気温水器が近年注目されている。貯湯式電気温水器は、大気中の熱を利用して沸かした湯を貯湯タンクに貯える。したがって貯湯式電気温水器は、ガスの燃焼等による二酸化炭素を発生させずに給湯することができる。
【0003】
貯湯式電気温水器は、貯湯タンクに貯えられた湯を、電力を使用して水と混合することにより適温の湯を供給する。このため、停電時にはこの混合を制御することが困難となる。従来の貯湯式電気温水器は、停電時に熱湯が供給されることを回避するために、給湯を停止したり水のみを給水したりしていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
これに対し、停電時であっても湯を供給する貯湯式電気温水器が提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。特許文献2に開示された貯湯式給湯機は、貯湯タンクに設けられた非常用の取水栓から湯を供給する。また、特許文献3に開示された貯湯式給湯機は、補助電源を使用することにより、停電時であっても給湯することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−258367号公報
【特許文献2】特開2010−190546号公報
【特許文献3】特開2010−038482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された貯湯式給湯機は、貯湯タンクから直接給湯するため、貯湯タンクの設置場所によっては給湯が困難となる場合があった。また、特許文献3に開示された貯湯式給湯機は、補助電源の設置や管理に関するコストが高くなるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、停電時において補助電源を使用することなく、温水を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の温水器は、
給水系統から供給される水を貯える第1貯水手段と、
前記第1貯水手段の内部に設けられ、前記給水系統から供給される水を貯える第2貯水手段と、
前記第1貯水手段に貯えられた水を加熱する加熱手段と、
前記給水系統からの給水先を、電力系統からの電力により、前記第2貯水手段から前記第1貯水手段へ切り替える第1切替弁と、
前記貯水手段からの水を放水する放水系統への給水元を、前記電力系統からの電力により、前記第2貯水手段から前記第1貯水手段へ切り替える第2切替弁と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、停電によって電力系統からの電力の供給が遮断された場合には、給水系統の給水先が第2貯水手段に切り替わり、放水系統の供給元が第2貯水手段に切り替わる。これにより、給水系統から供給された水は、第2貯水手段を経由する間に第1貯水手段に貯水された水と熱交換を行うことによって加熱され、温水として放出される。したがって、停電時に補助電源を用いることなく、温水を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る貯湯式電気温水器の構成を示す図である。
【図2】貯湯タンク及び熱交換器の形状を示す模式図である。
【図3】停電時の水の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本実施形態に係る貯湯式電気温水器1の概略的な構成を示す。貯湯式電気温水器1は、上水道等の給水系統に接続される。貯湯式電気温水器1は、上水管から供給された水を沸かし、カラン等の流水口から給湯する。貯湯式電気温水器1は、ヒートポンプユニット2、給水切替弁3、給湯切替弁4、貯湯タンク5、熱交換器6、及び湯水混合弁7を備える。これらの構成要素は、図1の実線に示されるように、配管によって互いに接続される。なお、図中の矢印は、配管内の湯又は水が流れる方向を示す。また、図中の点線は、電力系統から電力を供給する配電線を示す。
【0012】
ヒートポンプユニット2は、循環ポンプ、膨張弁、熱交換器、及びコンプレッサー等から構成される。ヒートポンプユニット2は、上水管から給水切替弁3を介して供給された水を、大気中の熱を利用して沸かす。ヒートポンプユニット2が沸かす湯の温度は、例えば90℃である。この湯は、ヒートポンプユニット2から給湯切替弁4を介して貯湯タンク5に貯えられる。また、貯湯タンク5の底部からは、給水切替弁3に配管が接続される。このようにヒートポンプユニット2及び貯湯タンク5の間を循環する管路が設けられることにより、貯湯タンク5内の上部には高温の湯が貯えられる。一方、貯湯タンク5内の底部には低温の湯又は水が貯えられる。なお、貯湯タンク5の容量は、例えば500リットルである。
【0013】
熱交換器6は、貯湯タンク5に収容される流水管である。熱交換器6は、例えば、銅やアルミ等の熱伝導率の高い材料又はこの材料を含む合金等から形成される。熱交換器6は、給水切替弁3及び給湯切替弁4に接続される。熱交換器6は、具体的には、例えば図2に示される螺旋状の配管である。なお、熱交換器6は、螺旋状の配管に限られず、貯湯タンク5内の湯水と熱交換器6内の水との熱交換を行うことができる部材であればよい。また、熱交換器6は、貯湯タンク5に収容されず、貯湯タンク5との十分な接触面積を有する部材としてもよい。
【0014】
給水切替弁3及び給湯切替弁4は、所定の流路が開かれた状態を維持する電磁弁である。具体的には、給水切替弁3は、電力系統から電力が供給されている平時には、上水管、貯湯タンク5及びヒートポンプユニット2に通じる流路が開かれ、熱交換器6に通じる流路が閉じた状態を維持する。また、給湯切替弁4は、平時には、ヒートポンプユニット2、貯湯タンク5及び湯水混合弁7に通じる流路が開かれ、熱交換器6に通じる流路が閉じた状態を維持する。
【0015】
湯水混合弁7は、湯と水との混合比を調節する電動の混合弁である。平時における湯水混合弁7は、弁の開き角度を調整することにより、給湯切替弁4から供給された湯と上水管から供給される水とを所定の混合比で混合し、所定の水温の湯又は水をカラン等へ吐水する。所定の水温は、例えば貯湯式電気温水器1の使用者により設定される温度である。
【0016】
次に、電力系統による電力の供給が停止した停電時の貯湯式電気温水器1について説明する。給水切替弁3及び給湯切替弁4は、給電が停止した場合、流路を自動的に切り替える。具体的には、給水切替弁3及び給湯切替弁4のそれぞれは、ヒートポンプユニット2及び貯湯タンク5に通じる流路を閉じるとともに、熱交換器6に通じる流路を開く。給水切替弁3及び給湯切替弁4による流路の切り替えは、例えばバネ等のテンションを利用する機構により実現される。
【0017】
また、湯水混合弁7は、給電が停止した場合、上水管に通じる流路を自動的に閉じる。これにより、停電時における湯水混合弁7は、給湯切替弁4から供給される湯のみをカラン等へ吐水する。湯水混合弁7が自動的に流路を閉じる動作は、例えばバネ等のテンションを利用する機構により実現される。
【0018】
図3は、停電時における水の流れを示す図である。図3の矢印に示されるように、停電時において、給水切替弁3から熱交換器6に供給された水は、熱交換器6の内部を流れる間に貯湯タンク5の湯から熱を吸収して温水となる。この温水は、給湯切替弁4及び湯水混合弁7を介してカラン等へ供給される。
【0019】
以上説明したように、本実施形態に係る貯湯式電気温水器1は、平時には貯湯タンク5の湯と水とを混合することにより適温の湯を供給する。一方、貯湯式電気温水器1は、停電時には貯湯タンク5に貯えられた湯を熱源として利用することにより、平時と同様にカラン等から湯を供給する。
【0020】
このため、貯湯式電気温水器1は、停電時において、補助電源を使用することなく、平時と同様にカラン等から給湯することができる。また、停電時に供給される湯の量は貯湯タンク5の容量に限らない。すなわち、貯湯式電気温水器1は、貯湯タンク5の容量よりも大きな容量の温水を確保することができる。さらに、貯湯タンク5内の湯温が上水管から供給される水温以下になるまでの長時間にわたって、貯湯式電気温水器1は湯を確保することができる。
【0021】
また、湯水混合弁7は、給電が停止した場合、自動的に上水管へ通じる流路を閉じる。これにより、貯湯式電気温水器1は、停電時であっても熱交換器6から供給される温水を確実にカラン等から供給することができる。
【0022】
また、平時における給水切替弁3及び給湯切替弁4は、熱交換器6に通じる流路が閉じた状態を維持する。したがって、貯湯式電気温水器1は、ヒートポンプユニット2が沸かす湯の量を、貯湯タンク5のみの容量とすることができる。
【0023】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。
【0024】
例えば、上記実施形態では、平時における給水切替弁3及び給湯切替弁4は、熱交換器6との流路が閉じた状態を維持したが、この流路が開かれた状態を維持してもよい。この場合、平時における熱交換器6の内部に湯水が流れることにより、熱交換器6内の湯水が古くなることを防ぐことができる。
【0025】
例えば、上記実施形態では、停電時における湯水混合弁7は、上水管に通じる流路を閉じたが、これには限らない。例えば、給電が停止した場合に、湯水混合弁7は、給湯切替弁4から供給される湯と上水管から供給される水とを所定の混合比で吐水する機構を有してもよい。この場合、貯湯タンク5内の湯水から熱交換器6に奪われる熱量が少なくなるので、停電時における貯湯式電気温水器1は、さらに長時間にわたり湯を確保することができる。
【0026】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の温水器は、水を沸かして給湯する温水器に適している。
【符号の説明】
【0028】
1 貯湯式電気温水器
2 ヒートポンプユニット
3 給水切替弁
4 給湯切替弁
5 貯湯タンク
6 熱交換器
7 湯水混合弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水系統から供給される水を貯える第1貯水手段と、
前記第1貯水手段の内部に設けられ、前記給水系統から供給される水を貯える第2貯水手段と、
前記第1貯水手段に貯えられた水を加熱する加熱手段と、
前記給水系統からの給水先を、電力系統からの電力により、前記第2貯水手段から前記第1貯水手段へ切り替える第1切替弁と、
前記貯水手段からの水を放水する放水系統への給水元を、前記電力系統からの電力により、前記第2貯水手段から前記第1貯水手段へ切り替える第2切替弁と、
を備える温水器。
【請求項2】
前記第2貯水手段は、前記第1貯水手段の内部に設けられた管路である請求項1に記載の温水器。
【請求項3】
前記第1切替弁は、前記電力系統からの電力が遮断された場合に、前記給水系統からの給水先を、前記第2貯水手段へ切り替え、
前記第2切替弁は、前記電力系統からの電力が遮断された場合に、前記放水系統への給水元を、前記第2貯水手段へ切り替える請求項1又は2に記載の温水器。
【請求項4】
前記放水系統からの水に、前記給水系統からの水を混合して吐水する混合弁を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の温水器。
【請求項5】
前記混合弁は、前記電力系統からの電力が遮断された場合に、前記放水系統からの水を吐水する請求項4に記載の温水器。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記電力系統から供給される電力によって、前記第1貯水手段に貯えられた水を加熱する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の温水器。
【請求項7】
前記給水系統は、上水管を含む請求項1乃至6のいずれか一項に記載の温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233618(P2012−233618A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101283(P2011−101283)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】