説明

温水洗浄装置

【課題】 手洗い時に使用者が残水による手洗いで不快を感じることを抑制し、温水によって手洗いができる温水洗浄装置を提供する。
【解決手段】 温水洗浄装置1は、便座2bを有する便器本体2と、給水された水を加熱して温水を生成する給湯装置3と、温水で人体局部の洗浄を行う局部洗浄装置4と、温水を蛇口5aから吐出する手洗い装置5と、手洗い装置5から吐出された温水を排水する排水管6と、給湯装置3の下流側に設けられ、温水の供給を局部洗浄装置4と手洗い装置5側及び排水管6側へつなぐ第1配管8bとを切り替えを行う第1切替弁7aと、第1切替弁7aの下流側に設けられた第2切替弁7bとで構成され、第2切替弁7bが第1配管8bから手洗い装置5側の第2配管8cへとつなぐ手洗い流路と、第1配管8bから排水管6側の第3配管8dへとつなぐ排水流路とを切り替える構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の局部洗浄に使用する温水を流路変更によって手洗い装置へと送水して手洗いを可能とする温水洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温水洗浄装置について、特許文献1に示される構成が開示されている。
【0003】
特許文献1には、温水タンク内の水をヒータによって加熱し、生成された温水を給水ポンプによって温水を人体の局部へ吐出して洗浄を行うノズル及び便器内洗浄用水を貯水する浄水タンクの上面に設けた手洗い装置へ供給させる構成となっており、ノズル及び手洗い装置への温水の供給は、切替弁によって流路を切り替えて行われる。これにより、温水洗浄装置は、人体の局部を洗浄するノズルから温水を吐出させるだけでなく、切替弁の切り替えを行うことによって手洗い装置へも温水を送水することで、使用者が温水で手を洗うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−88642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した温水洗浄装置は、手洗い後に温水タンクと手洗い装置との間の配管内に残った残水を排水する機構を有していないので、使用者が手洗いを行う際、特に冬場等においては、前の使用者の手洗い後の水温が低下した残水が手洗いに使われるおそれがある。さらに、手洗い装置が洗浄タンクの上面ではなく、洗浄タンク以外の離れた場所にある場合には、配管に溜まる残水の量も多くなってしまうため、使用者が水温の低い残水のみで手洗いを行う可能性がある。
【0006】
従って、本発明は、手洗いの際に手洗い装置の蛇口へ通じる配管の残水を排水することで使用者への不快感を抑制し、清潔感のある温水によって手洗いが行える温水洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために講じた手段は、便座を有する便器本体と、給水された水を加熱して温水を生成する給湯装置と、温水で人体局部の洗浄を行う局部洗浄装置と、温水を蛇口から吐出する手洗い装置とを備える温水洗浄装置において、手洗い装置から吐出された温水を排水する排水管と、給湯装置の下流側に設けられ、温水の供給を局部洗浄装置又は手洗い装置への切り替えが行える第1切替弁と、第1切替弁の下流側に設けられ手洗い装置と排水管との間に配設された第2切替弁と、第1切替弁と前記第2切替弁とをつなぐ第1配管と、第2切替弁と手洗い装置とをつなぐ第2配管と、第2切替弁と排水管とをつなぐ第3配管とを備え、第2切替弁を介して第1配管と第2配管とをつなぐ手洗い流路と、第1配管と第3配管とをつなぐ排水流路との切り替えが行える温水洗浄装置である。
【0008】
さらに、便器本体に人体の着座の有無を検知する検知手段を設け、検知手段の信号によって、着座時には、第1切替弁を局部洗浄装置側の流路へ切り替え、非着座時には、第1切替弁及び第2切替弁を手洗い装置側又は排水管側の流路へ切り替えが行える構造としてもよい。
【0009】
また、第2切替弁によって第1配管と第3配管とを繋ぎ、給水された水の水圧で第1配管内の残水を排水管へ排水する構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、この温水洗浄装置は、第2切替弁によって第1切替弁から連通している配管内の残水を排水管へと排水することで、第2切替弁を切り替え後の手洗い装置から吐出される残水を抑制し、使用者は温水で手洗いが可能となり、特に冬場等においては冷えた残水での手洗いによる不快感を抑制できる。さらに、従来技術は、配管内の残水の排水が手洗い装置や下流の手洗い皿に排水していることから清潔感を損ねるおそれがあるが、この温水洗浄装置は、残水を排水管から排水するため使用者が排水動作を見ることがないため清潔感を持たせることができる。また、この温水洗浄装置は、手洗い装置から余分な排水を少なくすることで水跳ねの発生を抑制することも可能である。
【0011】
さらに、検知手段の信号で第1切替弁または第2切替弁を切り替えることで残水の排水動作を円滑にし、温水を排水する量を削減でき、使用者の手洗い動作への移行も不快感を抑制できる。
【0012】
また、この温水洗浄装置は、給水された水の水圧によって第1配管の残水を排水管へ排水することができるため、ポンプ等の圧源を設ける必要がなく、装置の簡素化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例における温水洗浄装置の構成図。
【図2】本発明の実施例における温水洗浄装置の給水回路の説明図。
【図3】本発明の実施例における手洗い動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について以下に説明する。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例に係わる温水洗浄装置1の全体の構成について、図1を用いて説明する。図1は温水洗浄装置1の構成図を示している。
【0016】
図1より、本実施例に係わる温水洗浄装置1は、便器本体2と、便器本体2の内部に設けられた給湯装置3及び局部洗浄装置4と、便器本体2から離れた場所にある手洗い装置5と、手洗い後の温水を排水する排水管6と、流路を切り替える切替弁7と、それぞれを結ぶ配管8とで構成されている。
【0017】
便器本体2は、便器2aと使用者が着座する便座2bと便器洗浄用の洗浄タンク2cを備えている。また、給湯装置3は、給水管8aから給水された水を加熱し、温水を生成する。この給湯装置3の下流には第1切替弁7aが設けられており、この第1切替弁7aは局部を洗浄する局部洗浄装置4への流路と手洗い装置5(排水管6)への流路の切り替えを行うことができる。また、この第1切替弁7aは、局部洗浄装置4との間に第4配管8e及び第5配管8fが設けられ、同様に手洗い装置5との間には、第1配管8bが設けられている。さらに、第1配管8bには、手洗い装置5と排水管6への流路を切り替える第2切替弁7bが設けられている。第2切替弁7bから手洗い装置5及び排水管6への流路は、それぞれ第2配管8c及び第3配管8dによって繋がれている。また、便器本体2の側部2dには、局部洗浄装置4を第1切替弁7aによっておしり用ノズル4aとビデ用ノズル4bに切り替えるための局部洗浄スイッチ11aを有する操作部11が設けられている。この温水洗浄装置1の給湯装置3及び切替弁等の制御は、便器本体2内部に設けられた制御装置10と各場所に設置された検知手段9によって行われる。この検知手段9は、着座センサ9aと検知センサ9bと温度センサ9cが用いられ、使用者の着座の有無を検知する着座センサ9aは便座2bに設けられ、使用者が蛇口5a付近に手を近づけると使用者の手を検知する検知センサ9bが手洗い装置5に設けられている。さらに、には、温度センサ9cが第2切替弁7bに近接した第1配管8b上に設けられている。
【0018】
次に本発明の実施例に係わる温水洗浄装置1の給水回路について、図2を用いて説明する。図2は温水洗浄装置1の給水回路の説明図を示している。
【0019】
この温水洗浄装置1の制御装置10は、検知手段9(着座センサ9a、検知センサ9b、温度センサ9c)又は局部洗浄スイッチ11aからの信号を受ける。この信号をもとに制御装置10は、切替弁7(第1切替弁7a、第2切替弁7b、給水弁7c)とヒータ3aを作動させる構造となっている。
【0020】
この温水洗浄装置1の給水管8aから給水された水は、給水弁7cを介して給湯装置3又は洗浄タンク2cへと送られる。給水弁7cは、制御装置10からの信号で給湯装置3への流路又は洗浄タンク2cへの流路の切り替えを行うことができる。さらに、温水洗浄装置1は、給湯装置3内に設けられたヒータ3aによって給水された水を加熱して温水を生成する。この給湯装置3で生成した温水は、制御装置10によって切り替えられた切替弁7(第1切替弁7a、2切替弁7b)と配管8(第1配管8b、第2配管8c、第3配管8d、第4配管8e、第5配管8f)を介して、局部洗浄装置4(おしり用ノズル4a、デ用ノズル4b)又は排水管6、若しくは手洗い装置5へと送水される。そして、温水洗浄装置1は、配管8内に残った温度の低下した残水を温水の送水と同時に排水する。
【0021】
次に局部洗浄時の動作について説明する。
【0022】
使用者が、操作部11に設けられた局部洗浄スイッチ11aを操作することで局部洗浄装置4のおしり用ノズル4aまたはビデ用ノズル4bを選択することができる。この局部洗浄スイッチからの信号を受け制御装置10は、給水弁7cを給湯装置3側に開動作して給水管8aからの給水を開始し、給湯装置3へ給水させる。給湯装置3によって生成された温水は、制御装置10の信号を受けて第1切替弁7aがおしり用ノズル4aへと繋がる第4配管8e、又はビデ用ノズル4bへと繋がる第5配管8fへ切り替えられて送水され、使用者の局部洗浄を行う。
【0023】
次に残水の排水を含む手洗い時の動作ついて図3を用いて説明する。図3は温水洗浄装置1における手洗い動作のフローチャートを示している。本フローチャートは、図3に示されているものに限定されるのではなく、あくまでも一例である。
【0024】
本実施例の温水洗浄装置1の制御装置10は、局部洗浄後に着座センサ9aの信号を読み込む(ステップS101)。この信号によって使用者が便座2bに着座しているか否かを判断する(ステップS102)。使用者が便座2bから離れるまではステップS103以降は実行されない。使用者が便座2bから離れたと判断した場合に、制御装置10により給水弁7cは給湯装置3側に開動作して、水が給水管8aから給湯装置3へ送水される(ステップS103)。この給水された水は、給湯装置3のヒータ3aが作動することによって手洗いに適した温度に加熱される(ステップS104)。この給湯装置3で生成された温水は、第1切替弁7aが制御装置10により第1配管8b側に開動作することで第1配管8bに送られる(ステップS105)。ステップS105とほぼ同時に第1配管8bに残っている残水を排水するため、温水は一時的に第2切替弁7bを第3配管8d側に開動作して、供給される水圧により排水管6へと送られる(ステップS106)。第1配管8bには第2切替弁7bに温度センサ9cが近設されており、制御装置10が第1配管8bに温水が送られている間に温度センサ9cの信号を読み込む(ステップS107)。第2切替弁7bが第1配管8b内の温度が温度センサ9cによって手洗いに適した温度(例えば、40℃)を検知する排水管6側へ開動作する。そして、温度センサ9cの信号によって制御装置10が第1配管8b内の適した温度であるか否かを判断する(ステップS108)。そして、制御装置10により第1配管8b内の適した温度が手洗いに適している判断されると、第2切替弁7bは、排水管6側へ閉動作する(ステップS109)。この後、制御装置10は、手洗い装置5に取り付けられた使用者の手を検知する検知センサ9bの信号を読み込む(ステップS110)。この信号から、制御装置10は使用者の手が手洗い装置5に近づいているか否かを判断する(ステップS111)。そして、使用者の手が手洗い装置5に近づいていると判断されたとき、制御装置10により第2切替弁7bが手洗い装置5側である第2配管8cへ開動作し、温水が手洗い装置5へ送水されて蛇口5aから手洗い皿5bへと吐出される(ステップS112)。使用者が手洗いをしている間に、制御装置10は、検知センサ9bの信号を読み込む(ステップS113)。この信号から、使用者の手が手洗い装置5から離れているか否かを判断する(ステップS114)。そして、使用者の手が手洗い装置5から離れていると判断されたとき、給水弁7c、第1切替弁7a、第2切替弁7bは閉動作し、給湯装置3のヒータ3aは停止することで手洗い動作は終了する。(ステップS115)。これにより、温水洗浄装置1は、第2配管8c内の残水のみであるため、手洗い装置5の蛇口5aから吐出される残水の吐出量が抑制される。
【0025】
以上、実施例の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示す態様に変更してもよい。
【0026】
・第1配管8bの第2切替弁7bに近設されている温度センサ9cは設けていなくても良い。
【0027】
温度センサ9cが設けられていない場合であっても、第2切替弁7bを排水管6側へ適した温度の温水が送水されるまで所定時間を設定して開動作を行うことで、第1配管8b内を適した温度の温水で満たすことができるため、使用者は温水での手洗いが可能となる。
【0028】
・排水動作として、温度センサ9cが第1配管8b内の適した温度に温まったことを検出して、第2切替弁7bが排水管6側へ閉動作した後、使用者が手洗い装置5に取り付けた検知センサ9bに検知される前に、第2配管8cに残っている残水を蛇口5aから排水しても良い。
【0029】
・使用者を検知する検知センサ9bは設けていなくとも良い。
【0030】
この温水洗浄装置1は、温度センサ9cによって配管内の水が適した温度に温まったことを検出して、第2切替弁7bが排水管6側へ閉動作して、第2配管8cに残っている残水を蛇口5aから排水した後、温水を所定時間吐出し続けることで、手洗いを行うことが可能となる。
【0031】
・第2切替弁7bは、手洗い装置5と排水管6を繋ぐ流路に切り替える構造としてもよい。
【0032】
第2切替弁7bが、手洗い装置5の第2配管8cと排水管6の第3配管8dとが連通するように切り替える構造であれば、この温水洗浄装置1は、温度センサ9cによって第1配管8b内の水が適した温度に温まったことを検出して、第2切替弁7bが排水管6側へ閉動作した後、第2配管8c及び第3配管8dとを繋ぐような開動作を行うことで第2配管8cの残水を排水することが可能となる。これにより、使用者が手を洗う際は、蛇口5aから残水が吐出されることがないため、清潔感のある温水で手洗いができる。
【0033】
・この温水洗浄装置1には、温度センサ9cが配管8内に溜まっている温水が適温であるかを知らせるための温水ランプなどを設けてもよい。
【0034】
温水ランプを設けることで、使用者は、温水洗浄装置1内の配管8の残水が排水されたことを確認してから手洗いを行うことが可能になる。
【0035】
・洗浄タンク2cの水を利用して行われる便器2aの洗浄がステップS102とステップS103の間で行われた際に、洗浄タンク2cへの給水弁7cを介した水の供給は、便器2aの洗浄時(ステップS102とステップS103の間)又は手洗い動作の終了時であっても良い。しかし、便器2aの洗浄及び洗浄タンク2cへの水の供給はこれらに限定されるものではない。ただし、次回の洗浄までには、洗浄タンク2cへ水を供給する必要がある。
【0036】
・排水管6に排水された水(残水又は温水)は、図1に示すように便器2a内へ排水することに限定される必要はない。
【符号の説明】
【0037】
1 温水洗浄装置
2 便器本体
2a 便器
2b 便座
3 給湯装置
4 局部洗浄装置
5 手洗い装置
5a 蛇口
6 排水管
7 切替弁(7a 第1切替弁、7b 第2切替弁、7c 給水弁)
8 配管(8a 給水管、8b 第1配管、8c 第2配管、8d 第3配管、8e 第4配管、8f 第5配管)
9 検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を有する便器本体と、
給水された水を加熱して温水を生成する給湯装置と、
前記温水で人体局部の洗浄を行う局部洗浄装置と、
前記温水を蛇口から吐出する手洗い装置と、
を備える温水洗浄装置において、
前記手洗い装置から吐出された温水を排水する排水管と、
前記給湯装置の下流側に設けられ、温水の供給を前記局部洗浄装置又は前記手洗い装置への切り替えが行える第1切替弁と、
前記第1切替弁の下流側に設けられ、前記手洗い装置と前記排水管との間に配設された第2切替弁と、
前記第1切替弁と前記第2切替弁とを繋ぐ第1配管と、
前記第2切替弁と前記手洗い装置とを繋ぐ第2配管と、
前記第2切替弁と前記排水管とを繋ぐ第3配管とを備え、
前記第2切替弁を介して前記第1配管と前記第2配管とを繋ぐ手洗い流路と、前記第1配管と前記第3配管とを繋ぐ排水流路との切り替えが行えることを特徴とする温水洗浄装置。
【請求項2】
前記便座への人体の着座の有無を検知する検知手段を設け、前記検知手段の信号によって着座時には、前記第1切替弁を前記局部洗浄装置側の流路へ切り替え、非着座時には、前記第1切替弁及び前記第2切替弁を前記手洗い装置側又は前記排水管側の流路へ切り替えが行えることを特徴とする請求項1に記載の前記温水洗浄装置。
【請求項3】
前記第2切替弁によって前記第1配管と前記第3配管とを繋ぎ、給水された水の水圧で配管内の残水を前記排水管へ排水することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の前記温水洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231499(P2011−231499A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101688(P2010−101688)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】