説明

温灸器

【課題】一年中快適に使用することができ、また、身体の経絡の施術点である経穴をピンポイントで温熱刺激を与え夏場でも快適に施術できる温灸器を提供することを課題とする。
【解決手段】可撓性を有する断熱マット材、電熱マット材、流動体を封入したシート状袋体を順じ積層して一体化された積層マットを構成し、前記積層マット上面の所定の箇所には、積層マット内に取付けられ通電により発熱するヒータを熱源とする取付け取外し可能な導熱材を、積層マット上面から僅かに突出するように複数配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは保健用医療機器に関するものであり、特に温灸器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温灸器は、艾(もぐさ)やヒータ利用して身体の経絡の施術点である経穴(つぼ)と呼ばれる体の特定部位に対して温熱刺激を与え血行を促進し、病気や肩こり、腰痛などを軽減する器械である。
【0003】
そして一般に市販されている温灸器の多くは、このように艾(もぐさ)やヒータの熱を利用するものである為、夏場の暑い時期には使用頻度が減り、冬場に増えるという傾向がある。
【0004】
そこで、夏場には高温になりにくい艾を用いて、ヒータの温度を低めに設定してながら使用するケースもあるが、特許文献1に開示されているように、ヒータ上部に艾袋(シート)を重ね合わせ使用する温灸器マットの場合においては、熱はマット全体に広がるため暑さを軽減する効果は少ない。
【特許文献1】特開平6−296658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明はこれらの問題点を解決し、一年中快適に使用することができ、また、身体の経絡の施術点である経穴をピンポイントで温熱刺激を与え夏場でも快適に施術できる温灸器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の温灸器は、可撓性を有する断熱マット材、電熱マット材、流動体を封入したシート状袋体を順じ積層して一体化された積層マットを構成し、前記積層マット上面の所定の箇所には、積層マット内に取付けられ通電により発熱するヒータを熱源とする取付け取外し可能な導熱材を、積層マット上面から僅かに突出するように複数配置されている(請求項1)。
【0007】
前記流動体は、ジェル状、ゾル状、あるいは液状であって(請求項2)、前記導熱材は、頭部を略半球状に成形された略ボルト形状からなっている(請求項3)。
【0008】
導熱材は、その軸部を前記積層マット上面から下面方向へ貫通させて取付け、前記導熱材の熱源となるヒータを前記断熱マット材の位置する層にて前記導熱材の軸部の一部に取付けられている(請求項4)。なお、前記ヒータは、PTCサーミスタヒータである(請求項6)。
【0009】
また、前記ヒータを前記導熱材の軸部内部に取付けることも可能である(請求項5)。
【0010】
前記導熱材の内部に磁石又は艾を埋込んだ(請求項7、8)。
【0011】
また、前記導熱材は、その頭部から螺子先に掛けて、その軸体内を筒状に貫通するように中空に成形した(請求項9)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、時期を選ぶことなく一年間を通して熱灸施術をすることが可能であって、特に夏季期間においては、身体の経絡の施術点である経穴をピンポイントで温熱刺激を与えることができるため、快適に施術を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の温灸器1を構成する積層マット2と導熱材3の構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の温灸器1の(a)平面図及び(b)側面図である。
【図3】ヒータ部5(PTCサーミスタ)の(a)正面図及び(b)側面図である。
【図4】導熱材3の中空31内へ挿入される、磁石7a或いは艾カートリッジ7bの挿入関係を示した縦断面図である。
【図5】導熱材3の軸部内部に取付けられたヒータ部5を示す縦断面図。
【図6】本発明の温灸器1の使用形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の温灸器1に関し、図面を参照しつつその構成と使用方法について詳述する。
【実施例】
【0015】
(本発明の構成)
【0016】
(1)積層マット2の構成
本発明の積層マット2は、図1に示すように長方形状からなる可撓性を有する断熱マット材23と電熱マット材22と流動体を封入したシート状袋体21とを順次積層して一体化し構成されている。
【0017】
ここで断熱マット材23には、発砲ウレタン、ロックウール、グラスウール、アルミシート、ポリエチレン等を素材にしたものが使用される。
【0018】
電熱マット材22のヒータ22aについては、コードヒータ、リボンヒータ、遠赤外線ヒータなどが使用される。
【0019】
流動体を封入したシート状袋体21には、まず流動体として、ジェル状、ゲル状、ゾル状、あるいは液状のものが挙げられ、これら流動体を樹脂コーティングあるいはポリエステルからなるシートあるいはマットに封入されている。
【0020】
(2)灸材にあたる導熱材3の構成
図1に示すように導熱材3の形状はボルト状をなし、頭部は略半球状に成形されている。
【0021】
ここで、図5に示すように導熱材3の頭部略半球部に水平な切込み3aを入れ、表面積を増やすことで放熱効果を高め、温度調節器などにより指定された温度変更に対し迅速な対応が可能となる。
【0022】
導熱材3の材質として、熱伝導率の高い金属やセラミックス、熱硬化性樹脂等を用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0023】
また、導熱材3の全長は、積層マット2の厚みによって適宜選択することができる。
【0024】
更に、図1に示すように、導熱材3の頭部から螺子先に掛けて、その軸体内を筒状に貫通するように中空31に成形されている。
【0025】
このように中空31成形することで、灸施術中の通気性が良くし、施術中の身体のムレやカブレを防止することができる効果がある。
【0026】
また、筒状に成形された中空31内には、中空31内の形状と同様に成形された磁石7aや、艾に硬化剤等などを混ぜて成形された艾カートリッジ7bを挿入し埋め込むことで、磁器治療器や艾を使った温灸器としても使用できる。
【0027】
ここで筒状に成形された磁石7aや艾カートリッジ7bについても、その中心部を貫通するように中空構造にすることで通気を確保できる。
【0028】
なお、導熱材3の中空31内の軸体中央付近に段差32が設けられているが、この段差32は図4に示すように、磁石7aや艾カートリッジ7bを、この中空31内に挿入した際に、下方へ抜け落ちないために段差32を成形したものである。
【0029】
(3)積層マット2と導熱材3の構成
図3に示されるように、積層マット2上面の所定の箇所には、積層マット2上面側から下面側へ向けて導熱材3の軸部を貫通させる成形孔(図示せず)が設けられている。
【0030】
この孔には、導熱材3の軸部を通して積層マット2下面側に貫通させ、積層マット2下面より突出した軸部にナット4を通し螺子止めし、導熱材3と積層マット2と固定する。
【0031】
いずれにせよ導熱材3と積層マット2はナットにより固定されているため、これらは取付け取外が容易に可能となる。
【0032】
例えば、より熱伝導効率の高い導熱材3を選択する場合、または熱伝導効率の低い導熱材3を選択する場合は、導熱材3のみ積層マット2から取外し交換すれば足り作業が容易である。
【0033】
ところで、図2の(a)(b)に示されるように、積層マット2面上には導熱材3と並ぶようにしてホック6が取付けられているが、これは積層マット2を構成する、断熱マット材23と電熱マット材22と流動体を封入したシート状袋体21を一体的に固定するため両面方向から前記のような成形孔を積層マット2面上に設けホック6を孔へ差込み固定されている。
【0034】
なお、図2の(a)(b)にて示される積層マット2に取付けられる導熱材3及びホック6の個数または配置構成は、これに限定されるものではない。
【0035】
(4)灸の効力を有する導熱材3の熱源(ヒータ部5)の構成
図1に示すように通電により発熱するヒータを熱源とする導熱材3のヒータ部5は、積層マット2の一部を構成する断熱マット材23の層の内部に、前記導熱材3の軸部の一部に取付けられる。
【0036】
具体的には、図4に示すようにヒータ部5は導熱材3の軸部が貫通可能なようにリング状に成形されており、そのリングの中を導熱材3の軸部を挿入し、前記ヒータ部5は断熱マット材23の内部にて固定され保持されている。
【0037】
また、図5に示すように、ヒータ部5を前記導熱材3の軸部内部に取付け一体化することで、積層マット2への導熱材3の取付けが簡便となるとともに、ヒータ5を交換する際は導熱材3を積層マット2から取外だけで足りるので交換作業も複雑とはならない。
【0038】
なお、前記ヒータ部5には、PTCサーミスタを使用したヒータを用いるのがよい。
【0039】
PTCサーミスタを用いることで、ヒータの温度を一定又は温度調節器により指定された温度調節管理をすることができるので、より一層効果的に灸施術を行うことができる。
【0040】
(本発明の使用方法)
【0041】
次に、本発明の使用方法について述べる。
【0042】
なお、図5には本発明である温灸器1の使用の実施例が示されているが、使用形態はこれに限定されるものではない。
【0043】
(1)夏季期間
夏季は電熱マット材22のヒータの電源をオフとすることで、電熱マット材22上部に積層された流動体を封入したシート状袋体21には、電熱マット材22のヒータの熱によって温められることはないので、流動体を封入したシート状袋体21は冷却マットとしての効果を奏し、導熱材3のみを加熱させることで身体の経絡の施術点である経穴のみをピンポイントで温熱刺激を与え、夏場の暑い時期にも快適に施術できる。
【0044】
なお、導熱材3を加熱しなければ、本発明の温灸器1は単に冷却マットとしても使用できる。
【0045】
(2)冬季期間
冬季は電熱マット材22のヒータは通電をオンとすることで、電熱マット材22上部に積層された流動体を封入したシート状袋体21には、電熱マット材22のヒータの熱が伝わり、流動体を封入したシート状袋体21は温熱マットとしての効果を奏し、導熱材3も加熱させることで身体の経絡の施術点である経穴のみをピンポイントで温熱刺激を与え、冬場の寒い時期にも快適に施術できる。
【0046】
なお、導熱材3を加熱しなければ、本発明の温灸器1は単に温熱マットとしても使用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 温灸器本体
2 積層マット
21 流動体を封入したシート状袋体
22 電熱マット材
22a ヒータ
23 断熱マット材
3 導熱材
3a 切込み
31 中空
32 段差
4 ナット
5 ヒータ部
5a 止め具
6 ホック
7a 磁石
7b 艾カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する断熱マット材、電熱マット材、流動体を封入したシート状袋体を順じ積層して一体化された積層マットを構成し、前記積層マット上面の所定の箇所には、積層マット内で通電して発熱するヒータを熱源とする取付け取外し可能な導熱材を、積層マット上面から僅かに突出するように複数配置してなることを特徴とする温灸器。
【請求項2】
前記流動体は、ジェル状、ゾル状、あるいは液状であることを特徴とする請求項1に記載の温灸器。
【請求項3】
前記導熱材は、頭部を略半球状に成形された略ボルト形状からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の温灸器。
【請求項4】
前記導熱材は、その軸部を前記積層マット上面から下面方向へ貫通させて取付け固定し、導熱材の熱源となる前記ヒータを前記断熱マット材の位置する層にて前記導熱材の軸部の一部に取付けたことを特徴とする請求項1又は3に記載の温灸器。
【請求項5】
前記導熱材は、その軸部を前記積層マット上面から下面方向へ貫通させて取付け固定し、前記導熱材の熱源となる前記ヒータを前記軸部内部に取付けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の温灸器。
【請求項6】
前記ヒータは、PTCサーミスタヒータであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の温灸器。
【請求項7】
前記導熱材の内部に、磁石を埋込んだことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の温灸器。
【請求項8】
前記導熱材の内部に、艾を埋込んだことを特徴とする請求項1から4若しくは6のいずれか1つに記載の温灸器。
【請求項9】
前記導熱材は、その頭部から螺子先に掛けて、その軸体内を筒状に貫通するように中空に成形したことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の温灸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212374(P2011−212374A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85290(P2010−85290)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(391020609)株式会社三幸ポライト (1)
【Fターム(参考)】