説明

測定プローブのコンディションを監視及び/又は判定するための方法と装置

本方法は、例えば、pH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブの様な電気化学的測定プローブ(1)のコンディションを監視及び/又は判定するために使用される。測定プローブ(1)は、少なくとも1つの電極(EL)を有しており、プロセス材料(6)のイオン濃度を測定するのに適している。本発明によれば、充電位相(T)中に、電極(EL)に関係付けられている電荷蓄積装置(Q2)は、コントローラーユニット(CU)を介して制御可能な電荷移動によって充電される。次の試験位相(T)中に、結果として生じた電極電圧(U)が少なくとも1回測定され、測定結果は更に処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばイオン感応測定プローブの様な電気化学的測定プローブ、具体的にはpH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブの、コンディションを監視及び/又は判定するための測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業的プロセス、例えば、化学及び製薬産業、繊維産業、食品飲料産業、紙及びセルロースの加工、又は水処理及び廃水処理の分野など、におけるプロセスの監視及び制御は、適した測定プローブによって求められるプロセス変数の測定に基づいている。
【0003】
参考文献である、スイス、ウルドフ、CH−8902、メトラー・トレド社、「処理測定解法カタログ2005/06年」、8−9頁(”Process Measurement Solutions Catalog2005/06”, Mettler-Toledo GmbH, CH-8902 Urdorf, Switzerland, Pages8and9)によれば、一式の測定システムは、ハウジング、測定プローブ、ケーブル、及び測定値変換器(送信器とも呼ぶ)で構成されている。測定プローブは、ハウジングを使って、例えば、プローブをプロセス材料に漬け、そのまま保持して、測定又は監視対象のプロセスに接触させる。測定プローブは、プロセスの特定の特性を測定する働きをする。測定信号は、プロセス制御システムと交信して測定信号を読み取り可能なデータに変換する送信器に、ケーブルを通して送られる。測定プローブは、測定対象のプロセス材料特性に応じて選択される。
【0004】
参考文献である、ウルドフ、CH−8902、メトラー・トレド社、2003年9月に印刷された会社出版物、「醸造業者のためのプロセス解析システム解法」、記事番号52900309("Process Analytical Systems Solutions for the Brewery", Mettler-Toledo GmbH, CH-8902 Urdorf, Article No.52 900 309)には、例えば、醸造所の一連のプロセスの個々の段階(即ち、水処理段階;醸成棟;発酵及び貯蔵室;濾過、炭化、及び充填の各段階、並びに廃水処置段階)で、処理液の導電度、溶存酸素量、pH値、及びCO値を求めるのに、適した測定プローブをどの様に使用するかが記載されている。
【0005】
プロセスを問題無く制御するには、測定プローブのコンディションが絶対的に重要である。誤った測定は、生産上の欠陥と損失の原因になり、対応する財務的結果が随伴することになりかねない。
【0006】
一般に、pH測定プローブ又は酸素測定プローブの様な電気化学的測定プローブは、プローブの機能的原理に付きもので且つ普通は測定プローブの測定特性に連続的な変化を生じさせる荷重依存損耗プロセスに曝される。
【0007】
その様な変化が生じるために、整備作業という形での適切な行動が、多少の差はあれ規則的な間隔で必要になる。その場合、例えば、測定プローブの洗浄、交換、再較正、或いは、測定値の誤差補償、特別な評価、又は補正が必要になるかもしれない。
【0008】
現在の最新技術では、測定プローブの損耗状態を判定する様々な診断的方法が提供されている。例えば、日本国特許JP57199950には、測定プローブを、規定の濃度の液体、いわゆる較正液、に浸すという方法が記載されている。次に、充電済みのコンデンサに電極を繋ぎ、コンデンサの放電速度を求める。電極に作用する電荷は、常に同じ極性を有するので、単極電荷の流入が起こっている。オフライン方法とも呼ばれるこの診断的方法には、測定プローブを校正液に接触させるために、主要な測定機能、即ち、プロセス材料のイオン濃度の判定を、長時間中断しなければならないという欠点がある。
【0009】
独国特許DE10209318によれば、pH測定プローブの場合、測定電極の損耗状態を高い信頼度で判定できる好適なパラメーターは、電極のゼロ点、勾配、及びインピーダンス又は整定時間である。しかしながら、これらのパラメーターに関係付けられている測定方法には、プロセス理の休止中、即ち、通常は、プロセスシステムの較正中にしか行えないという欠点がある。
【0010】
とりわけ、多数の測定プローブが使用されている産業的プロセスシステムでは、これらのオフライン診断方法は、整備作業費用の高騰を招き、とりわけ、整備間隔の計画立案には多大な物流管理努力が伴う。その結果、監視対象のプロセスを中断することなく、測定プローブのコンディションを判定及び/又は監視できるようにする、いわゆるインライン診断方式に対する要求が高まっている。特に、測定プローブをプロセスシステムから取り外す工程と、測定プローブをプロセス材料から取り出す工程は、回避すべきである。
【0011】
既知の最新技術では、抵抗測定の原理に基づく診断法であって、プロセスを中断することなく継続的に監視することによって、測定プローブの損傷及び作動不良を判定できるようにした診断法が提供されている。
【0012】
一例として、米国特許US4,189,367によれば、pH測定に使用されるガラス電極のコンディションは、ガラス膜に傷が付いたら検出できるように、継続的に抵抗を測定することによって監視される。この概念では、制御された開閉装置によって第1試験電流を電極に流して、結果として生じた電圧の変化を測定する。電極電圧の変化が期待値と一致しなければ、それは、欠陥電極であることの表示である。測定後に、第1試験電流とは逆方向であるが強さと持続時間は等しい第2試験電流を電極に流す。この第2試験電流により、電極に対する第1試験電流の影響は基本的に相殺される。従って、双極励起が起こり、それによって測定プローブは、プロセス材料のイオン濃度を測定するための作動コンディションに戻される。
【0013】
このインライン診断法には、非常に高い絶縁抵抗を持たせる必要がある高価な開閉装置の使用が必要になる、という欠点がある。国際特許出願公開WO92/21962又は米国特許US4,468,608に示されている様に、互いに逆方向の試験電流は、結合コンデンサがもたらす方形電圧パルスによって生成することもできる。参考文献である、U.Tietze、Ch.Schenk による「Halbleiter-schaltungstechnik」(半導体回路設計)2002年、ベルリン、シュプリンガー出版、第12版、1538頁(U.Tietze, Ch.Schenk, "Halbleiter-schaltungstechnik" (Semiconductor Circuit Design)12th edition, published by Springer Verlag, Berlin 2002, page1538)によれば、測定プローブと結合コンデンサは、この場合は、結合RC構成員としての役目を果たしており、これにより、方形波信号が微分される。
【0014】
矩形電圧パルスを微分すると、第1パルス側面は、第1試験電流に変換され、第2パルス側面は、第1試験電流と逆向きに流れる第2試験電流に変換される。従って、電極は、同じ様に双極信号の影響を受ける。
【0015】
最新技術のインライン診断法は、継続的測定に適しており、而して、イオン感応膜の破損、隔膜の汚染、導体リード線の回路中断、又は短絡によって生じる様な、電極の機能障害及び作動不良についての継続的監視と検出に適している。しかしながら、それらは、測定プローブの全般的なコンディション、具体的には現在の損耗状態については、不十分な診断を下すことしかできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】日本国特許JP57199950
【特許文献2】独国特許DE10209318
【特許文献3】米国特許US4,189,367
【特許文献4】国際特許出願公開WO92/21962
【特許文献5】米国特許US4,468,608
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】スイス、ウルドフ、CH−8902、メトラー・トレド社、「処理測定解法カタログ2005/06年」、8−9頁("Process Measurement Solutions Catalog2005/06", Mettler-Toledo GmbH, CH-8902 Urdorf, Switzerland, Pages8and9)
【非特許文献2】ウルドフ、CH−8902、メトラー・トレド社、2003年9月に印刷された会社出版物、「醸造業者のための処理解析システム解法」、記事番号52900309("Process Analytical Systems Solutions for the Brewery", Mettler-Toledo GmbH, CH-8902 Urdorf, Article No.52 900 309)
【非特許文献3】U.Tietze、Ch.Schenk による「Halbleiter-schaltungstechnik」(半導体回路設計)2002年、ベルリン、シュプリンガー出版、第12版、1538頁(U.Tietze, Ch.Schenk, "Halbleiter-schaltungstechnik" (Semiconductor Circuit Design)12th edition, published by Springer Verlag, Berlin 2002, page1538)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、電気化学的測定プローブ、具体的には、pH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブのコンディションを監視及び/又は判定するための改良された方法と改良された装置を提供することであり、測定プローブは、少なくとも1つの電極を有しており、測定プローブの作動中に、プロセス材料のイオン濃度に関連付けられる測定量が求められる。
【0019】
この目的は、独立請求項に記載されている特徴を備えた方法及び装置それぞれによって達成される。本発明の好都合な実施形態は、それ以外の請求項に提示されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に記載されている、電気化学的測定プローブ、具体的には、プロセス材料のイオン濃度を判定できるようにするpH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブの、コンディションを監視及び/又は判定するための方法では、少なくとも1つの検証位相が、作動中(インライン)に起こるように設定されている。この検証位相は、充電位相を含んでおり、その直後に試験位相が続く。充電位相中に、電極に割り当てられている電荷蓄積装置、具体的にはコンデンサは、コントローラーユニットの制御下で電荷移動によって充電されるか、或いは、既に充電された電荷蓄積装置が電極回路に入るように切り替えられ、試験位相の開始時に、電荷蓄積装置は、第1開閉装置によって、電荷供給源から、又は該当する場合は供給電圧から切断され、充電の結果生じた電極電圧は、試験位相中に少なくとも1回測定され、そこで捕捉された1つ又は複数の測定値は、少なくとも1つの基準値と比較される。電荷蓄積装置を電荷供給源から切断することにより電荷供給源を孤立させると、逆方向に流れる第2試験電流は遮断される。そうなると、電極は、必然的に単極信号を受け取る。これにより、測定プローブのコンディションについての重要な追加情報を、例えば、イオンの移動度についての情報を、測定プローブの作動中に、即ち、プロセスを中断することなく、取得できるようになる。
【0021】
電極は、容量の乱れ/又は減衰による測定信号の錯誤を回避するために、できる限り短い信号結線によって、信号処理ユニットに接続されているのが望ましい。結果として、本発明による測定方法は、好都合にも大規模な産業的プロセスプラントで利用することができる。
【0022】
開閉要素を電荷供給源と電荷蓄積装置の間に配置することは、更に、信号結線に直接接続される開閉要素が無いという利点を有している。これにより、開閉要素による干渉を回避することができる。更に、このおかげで、低い漏電流、高い切替速度を特徴とし、且つ損耗し難い、半導体の様な好都合な開閉要素、例えば、MOSFET要素、を使用することができるようになる。
【0023】
本発明は、測定プローブの作動中に、測定プローブのイオン感応境界面の周辺帯域に、不活性水素−酸素基が継続的に形成されることを観察することに基づいている。従って、これらの水素−酸素基は、別の測定で電荷キャリアとして利用することはもはやできなくなる。その結果、自由に利用できる水素−酸素基の数は、作動時間が経過するにつれて少なくなり、同時に、残っている自由水素−酸素基の移動度は、次第に低下する。従って、電荷キャリアの移動度が、電気化学的測定プローブのコンディションを監視及び/判定するための中心的なパラメーターになる。
【0024】
本発明によれば、電極の電荷キャリアの移動度は、電極を通して放電される電荷蓄積装置の放電特性を測定することにより求められる。先に説明した様に、この放電の速度は、自由電荷キャリアの移動度に直接関係している。
【0025】
従って、電極の放電速度を測定することにより、電気化学的測定プローブのコンディション、具体的には損耗状態を高い信頼度で判定することができる。
本発明による方法及び装置では、測定プローブの現在の状態について判断を下せるだけでなく、測定プローブの将来的な性能について更に正確に予測できるようになるため、その結果、例えば、見込み耐用年数をより正確に推定できるようになり、又は整備周期について計画し易くなる。
【0026】
別の利点として、電荷キャリア移動度を判定することにより、測定プローブの動的挙動を捕捉することもできる。而して、測定プローブでは、勾配及び感度のみならず、整定時間又は応答時間も、電荷キャリアの移動度によって決まる。
【0027】
長期の作動期間に亘って使用される測定プローブでは、無休止運転に対する要件が特に厳しいため、本方法は、更に、その様な測定プローブにとりわけ適している。本発明による方法を用いれば、測定プローブのコンディションの判定が改善され、更なる特性測定量を捕捉することができるため、ゆっくり及び/又は感知できないほど僅かしか変化しない測定プローブのプロセスパラメーターを、認知し、制御することが可能になる。
【0028】
電極電圧は、信号線により信号処理ユニットへ送られ、試験位相中に少なくとも1回測定されるのが望ましい。「信号線」という用語は、この場合は、銅線、リード線、回路板上の結線、又は集積回路の様な、電気伝導性結線のあらゆる可能な形態を指す。
【0029】
更に処理するために、測定結果は、例えば、信号処理ユニットへ送られるか、直接処理されるか、中間記憶装置に入れられる。それらは、もっと後の時点、即ち、測定プローブの通常作動中か又は後続の試験位相で、更に処理してもよい。結果の更なる処理及び/又は分析は、後で、例えば、信号評価ユニット、送信器、又はマスターコンピューターで行うことも可能である。最終的に、数個から成る一連の測定プローブの長期的な性能は、信号評価ユニット又はマスターコンピューターの統計学的分析によって判定することができる。
【0030】
本発明による方法では、電荷蓄積装置は、固定結線で電極に接続されているか、又は検証位相の持続期間中だけ電極に接続されるのが望ましい。この切り替え可能な接続を用いれば、電荷蓄積装置を、測定位相と並行して充電することができるので、測定位相の中断を最小限にすることができる。更に、電荷蓄積装置は、一方で、電荷移動を目的として電荷供給源に又は該当する場合は供給電圧に接続され、他方で、検証位相の間は電極に接続されるようになっている。これにより、電荷移動を制御及び/又は時間設定できるようになる。この様にして、例えば、電荷電流が、特に試験位相中に、電荷蓄積装置を通って流れるのを防止することができるようになる。
【0031】
本発明による方法及び装置を更に発展させた可能な或る形態では、プロセス材料のイオン濃度を測定するための少なくとも1つの測定位相が、測定プローブの作動中に起こるように設定されている。この測定位相は、検証位相中は中断される。測定位相と検証位相は、これにより互いに分離されるので、測定位相と検証位相が相互に影響し合うという問題を回避することができる。
【0032】
更なる好適な実施形態では、電荷蓄積装置の、電極とは反対の側のコネクタ端子は、試験位相及び/又は測定位相中は、電気的に絶縁される。電荷蓄積装置、具体的にはコンデンサの、このコネクタ端子は、而して、自由であり、いわば空中で終わっているか、或いは、仮に電荷供給源に接続される場合でも、開閉要素の高い開スイッチ抵抗を通してしか接続されない。これにより、電荷供給源が、試験位相中及び/又は測定位相中に測定に影響を及ぼすことが防止される。
【0033】
試験位相中に、電極電圧を、試験位相中の電極電圧の時間プロファイルの特徴的なパラメーターを求めることができるだけの回数分測定できれば好都合である。この様に測定を繰り返すことにより、更に複雑なパラメーターを計算すること、更には評価結果の精度を高めることができるようになる。
【0034】
本方法を更に発展させた或る形態では、電荷蓄積装置の電荷は、第2開閉装置によって、望ましくは大地接続を通して、除去される。これにより、電荷蓄積装置に残っている恐れのある残留電荷が、測定プローブの次の作動中にイオン濃度の次の測定に影響を及ぼすことが確実に起こらないようになる。更に、検証位相をより早く終了させて、通常の測定位相を直ちに再開させることもできる。この電荷相殺は、検証位相の終了前に終結するのが望ましい。
【0035】
試験位相中に電荷が十分に使い果たされた場合は、残留電荷の積極的な除去は省略してもよい。
本方法の或る好適な形態では、双極パルスの様な追加の測定信号が、望ましくは検証位相中以外の時期に、即ち、一般的には測定位相中に、第3開閉装置によって電荷蓄積装置に送られる。この様にすれば、本発明による方法は、抵抗測定を用いてエラーを検出する先行技術の方法と組み合わせることもできる。本発明による電荷蓄積装置は、連結器要素として、或いは、この目的専用の別の結合コンデンサとしても、使用することができる。
【0036】
本発明による方法では、検証位相は、選択的に事前に設定された時間間隔、具体的には、分毎、時間毎、又は日毎の間隔で繰り返すことができる。而して、測定位相は、ごく稀にしか、検証位相による影響を受けることはなく、追加の電荷による電極への負荷は、比較的小さく保たれる。
【0037】
本発明の或る実施形態では、電荷蓄積装置は、測定プローブに組み込むか、又は外部電荷蓄積装置として配置することができる。どちらの配置であっても、電荷蓄積装置は、信号供給源及び電極の内部抵抗と並行に配置される。
【0038】
本発明の別の実施形態では、電荷蓄積装置は、開閉要素によって、検証位相中だけ回路に入るよう切り替えることができる。この配置では、電荷流電流は、抵抗器によって制限されるのが望ましい。この概念では、電荷蓄積装置は、測定プローブの作動中又は測定位相中は、完全に切断することができる。
【0039】
この構成では、特に費用効果が高い解決法として、電荷供給源が、電荷蓄積装置の機能を兼ねることもできる。更に、第1と第3の開閉要素の様な異なる開閉要素を、適した切換えスイッチの形態で組み合わせることもできる。
【0040】
或る好適な解決法として、測定された電圧は、更に加工するために、信号処理ユニットの信号線を通して送ることもできる。この加工は、信号を伝送する段階から成るか、又はインピーダンス変換、増幅、及び/又は記憶の様な多くの処理段階を伴っていてもよい。更に、信号処理ユニットには、更なる信号処理要素、例えば、比較器要素、マルチプレクサユニット、プロセッサユニット、又は計算器ユニットなどが組み込まれていてもよい。
【0041】
測定信号の処理加工は、アナログ/デジタル変換を行う要素によって行われるのが好都合である。この要素は、測定プローブの信号処理ユニット又は評価装置に組み込んでもよい。測定値をデジタル化することにより、信号を、比較的複雑な演算を行えるようにし、且つデータを測定プローブの信号処理ユニットに、評価装置に、又は外部メモリに、記憶する単純な方法を提供するデジタル処理加工に、掛けることができるようになる。
【0042】
本方法を発展させた或る形態では、測定結果は、例えば、測定プローブの信号処理ユニット又は信号評価装置で、電極電圧の期待値と比較することができる。
電極電圧の期待値は、実験的及び/又は数学的方法を通して求めることができる。この目的には、無傷の測定電極に対する、即ち、他の電極又は補助電極に対する比較測定値を使用することもできる。更なる可能性として、電極電圧の期待値は、国内又は国際的な規範標準の様な法規文献に見られる最大値、閾値、及び限界値に基づいていてもよい。また、期待値は、測定プローブ又は電極の製造者が設定してもよい。
【0043】
電極電圧の測定値と期待値の比較は、比較器回路又は計算ユニットの様な比較器装置によって行なうことができる。これに関連して「計算ユニット」という用語は、アナログ回路、デジタル回路、集積回路、プロセッサー、コンピューター、及び同種の物の様なあらゆる種類の信号処理要素を含むものとする。この比較器装置は、好適には、信号処理ユニットを使用して、又は評価ユニット内の信号評価ユニットに、実現させることができる。
【0044】
評価ユニット又は送信器は、通信ユニット、信号評価ユニット及び/又は記憶ユニットの様な各種構成要素を含んでいてもよい。これらのユニットは、直接結線を通して双方向に交信し、命令及びプログラム、並びに測定値及び結果をやり取りすることができるのが望ましい。
【0045】
本発明の或る好適な実施形態では、測定プローブと評価装置の全ての活動は、通信ユニットによって調整される。また、通信ユニットは、マスターコンピューターと双方向に交信し、命令、プログラム、演算データ、測定値、及び/又は評価結果を送信することができる。
【0046】
或る好適な実施形態では、更に、電極電圧の期待値、閾値、制御パラメーター、特徴的な数、及び送信器TRの記憶ユニットの不揮発性メモリのプログラムの様な、演算データを記憶する性能が提供されている。これらのデータは、例えば、マスターコンピューターから通信ユニットへ送られ、記憶ユニットに書き込まれる。必要に応じて、データは、その後、信号評価ユニットによって読み取ることができる。
【0047】
最後に、測定プローブは、信号評価ユニット、記憶ユニット、及び/又は通信ユニットの様なユニット、並びに上記の機能的性能を備えた評価装置又は送信器を、1つ1つの測定プローブに組み込むやり方で、構成することもできる。
【0048】
電気化学的測定プローブ、具体的には、少なくとも1つの電極と信号処理ユニットを備えたpH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブ、のコンディションを監視及び/又は判定する働きをする装置であって、測定プローブの作動中に、プロセス材料のイオン濃度に関連付けられるプロセス量を求めることができる、本発明による装置は、際立った特徴、即ち、測定プローブは、電極と関係付けられていて、制御可能な電荷移動によって充電することのできる電荷蓄積装置を含んでいるという特徴と、測定プローブは、更に、充電位相とその後に続く試験位相を含む検証位相を生成する働きをするコントローラーユニットを含んでいるという特徴と、測定プローブは、試験位相中に少なくとも1回測定される電極電圧値を信号処理ユニットに送信する働きをする信号線も含んでいるという特徴とを有している。
【0049】
本発明による方法は、測定プローブをシステムから取り出すことなく、最新技術のCIP又はSIPプロセス(その場で洗浄、その場で滅菌)を使用して時々に洗浄されるプロセスシステムに組み込まれた測定プローブのコンディションを判定するのにも適している。その様な洗浄プロセス中に判定された測定値を、測定プローブのコンディションの総合的な査定で考慮に入れることができれば、好都合である。
【0050】
本発明による方法及び本発明による装置の詳細は、図面に概略的及び簡略的に表示されている実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】溶液6中のイオン濃度を、電気化学的測定プローブ1a、1b、1cによって測定するためのシステムの基本的な構造を示している。
【図2】プロセス材料6に浸され、評価装置3に接続されている電気化学的測定プローブ1を概略的に示している。
【図3】電極EL、電荷供給源Q1、電荷蓄積装置Q2、及びコントローラーユニットCU、並びに開閉要素S1、S2、及びS3を備えた測定プローブ1のブロック図を表している。
【図4】電荷蓄積装置Q2が測定プローブ1に組み込まれた、本発明の別の可能な実施形態のブロック図を表している。
【図5】電荷蓄積装置Q2が切換えスイッチS4を通して測定プローブの回路に入るように切り替えられるようになっている、本発明の別の可能な実施形態のブロック図を表している。
【図6】電荷蓄積装置の電荷流電流の時間プロファイルと、これに対応する、結果として生じた電極電圧の2つの可能な時間プロファイルと、測定のタイミングについて可能な選定を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、プロセス材料6で満たされた保持容器81で構成されているコンテナ8を備えたプロセスシステムを示しており、コンテナは、接続パイプ82によって、後続のプロセス段階のシステムユニットに接続されている。プロセス材料6の特性は、信号送信装置2を通して評価装置3a又は3bに接続されている測定プローブ1a、1b、1cで測定される。他にも機能はあるが、中でも測定値変換器として働く評価装置3a、3bは、セグメント連結器30を介してマスターコンピューター300に接続されている。
【0053】
例えばpH測定プローブの様な電気化学的測定プローブの基本的な設計構造を概略的に図2に示しており、その様なプローブは、単一ロッド測定チェーンの構成では、ガラス電極16、基準電極15、及び補助電極18を含んでいる。測定プローブ1では、導体リード線要素16を備えたガラス電極と、基準リード線要素15を備えた基準電極は、構造的に1つのユニットに組み合わされている。内管11と同管に隣接している薄壁状のガラス半球体又はガラス膜111内の第1チャンバの内部では、導体リード線要素16が、決められたpH値を有する溶液、具体的には内緩衝液14に浸され、ガラス膜111の内側と導体リード線要素16の間に電気伝導性接続が確立されている。外管12の内側では、基準リード線要素15が、電解液、具体的には、多孔性分離壁又は隔膜121で測定材料6と電荷をやり取りできるようになっている外緩衝液13に浸されている。
【0054】
測定中に、導体リード線要素16、基準リード線要素15、及び/又は補助電極18に生じる、信号供給源(図3参照、信号供給源SQ1)の電位が測定され、その後、信号処理ユニットOP、望ましくは演算増幅器、で更に処理される。内緩衝液空間には、温度測定センサー17が配置されており、温度効果を自動的に補償し、温度サイクルを記録することができるようになっている。下で更に詳しく説明するが、信号処理ユニットOPは、測定プローブ1のヘッドに組み込まれており、信号リード線2によって評価装置3に接続されている。
【0055】
図3は、図2の測定装置の実施形態で、少なくとも1つの電極EL、例えば、ガラス電極と基準電極、を含む測定プローブ1を備えた或る好都合な実施形態を示している。電極ELでは、測定プローブ1がプロセス材料6に浸されると直ちに電圧Uが確立される。プロセス材料6と電極ELは、共同で電圧供給源SQ1を形成し、その内部抵抗は、図中に電極抵抗Rとして表示されている。例えば、ガラス電極のガラス膜は、非常に高い抵抗を示すのに対して、基準電極の境界抵抗は、比較的低い抵抗値になる。
【0056】
電圧Uは、処理するために、信号線19を通して信号処理ユニットOPへ送られる。次に、まだ処理されていないか、部分的に処理されたか、又は完全に処理された信号が、接続リード線2bを通して信号評価ユニットPROCへ送信される。信号評価ユニットPROCは、評価装置3又は送信器3に組み込まれており、内部結線を通してメモリユニットMEM及び通信ユニットCOMと交信することができる。処理され及び/又は評価された測定値は、その後、伝送され、例えば、プロセスシステムの制御及び監視に使用されることになる。
【0057】
評価ユニット3又は送信器TRは、通信ユニットCOM、信号評価ユニットPROC、及び/又はメモリユニットMEMの様な各種構成要素を含んでおり、それらは、互いの間で双方向に接続されているので、データ、命令、又はプログラムをやり取りすることができる。
【0058】
通信ユニットCOMは、測定プローブ1と評価装置3のあらゆる活動を調整し、マスターコンピューター300への通信を確立する。命令は、結線2aを通して通信ユニットCOMから測定プローブ1内のコントローラーユニットCUへ送られる。通信ユニットCOMは、信号評価ユニットPROCへ命令を出し、信号評価ユニットPROCからデータを受信することもでき、又は、データとプログラムをメモリユニットMEMに記憶することもできる。
【0059】
コントローラーユニットCUは、信号処理ユニットOPに組み込むこともできるものであり、制御出力端子CL1、CL2、及びCL3を通して制御信号を送り、これによりそれぞれの開閉要素の応答を引き起こすやり方で、開閉要素S1、S2、及びS3のコントローラー要素として機能する。開閉要素は、機械的又は電子的な要素として、或いは、トランジスタの様な半導体要素として構成してもよい。但し、開閉動作は、コントローラーユニットCUを使って直接的に行うこともできる。
【0060】
プロセス量が測定される測定位相の持続期間中は、開閉要素S1とS2は共に開状態にある。これらの開閉要素と電荷蓄積装置は、従って、測定位相中は、作動状態及び電極の測定に影響を及ぼさない。
【0061】
開閉要素S3を使用して、測定位相中並びに検証位相中も、双極パルスの様な更なる測定信号を送り出すことができる。これらの信号は、信号供給源SQ2によって生成され、電荷蓄積装置Q2を通し、又は別のコンデンサも通して、回路に結合される。従って、開閉要素S3が閉じられた後は、機能不全の検出には、先行技術により既知である抵抗測定法が利用可能になる。
【0062】
検証位相の開始時には、開閉要素S1は閉じられ、開閉要素S2は開位置に保持されているので、電荷供給源Q1は電荷蓄積装置Q2に接続されている。引き続き、電荷蓄積装置Q2は、電荷流電流Iによる電荷移動によって充電される。
【0063】
電荷移動は、充電位相の終了時に開閉要素S1を開くことによって中断させることができる。続いて、電荷蓄積装置Q2は、電極ELに直接接続され、その間は、電荷供給源Q1の影響から切り離される。
【0064】
試験位相直後、電荷蓄積装置Q2の残留電荷は、開閉要素S2を適した時間の間だけ閉じることによって相殺することができる。これにより電荷蓄積装置Q2の電荷が排出されて、大地電位になるのが望ましい。
【0065】
印加された電荷が電極ELに与える影響、及びその結果確立された電極電圧Uは、好適には上記の信号処理ユニットOPで、測定され、処理され、伝送されるのが望ましい。しかしながら、特に本発明による方法に特別に合わせて提供されている別の信号処理ユニット(図示せず)に切り替えることもできるる。
【0066】
電荷供給源Q1のための、そして場合によっては別の回路構成要素のための供給電圧は、作動電圧Uから取ってもよいし、寄生的に接続リード線2から引き出して適当に調節してもよい。
【0067】
図4は、本発明による装置の別の実施形態を示しており、この事例では、電荷蓄積装置Q2が、電極EL内側の内部要素として又は電極外側の外部要素として配置され、信号供給源SQ1及び電極の内部抵抗Rと並列に配線されていることを除き、図3の実施形態と同様である。更に、抵抗器Rは、電荷蓄積装置Q1と電極ELの間の結線内に、電荷流電流Iを制限する手段として設置されている。但し、抵抗器は、ゼロの値を有することもできる。
【0068】
電荷流電流Iは、ここで、充電位相中は、抵抗器Rを通って電極ELへ、及び電荷蓄積装置Q2へ流れ、一方、電極電圧Uは、信号線19でなお測定することができる。電荷蓄積装置Q2は、物理的に別体のユニットの形態か、又は電極ELの内部キャパシタンス、例えば、導体リード線要素16又は基準リード線要素15のキャパシタンスとして、構成することができる。
【0069】
図5は、本発明による装置の別の実施形態を表しており、この場合は、電荷蓄積装置Q2が電極回路に入るように切り替えできるようになっていることを除いて、図3の実施形態と同様である。図4と同様に、ゼロの値を有することもできる抵抗器Rが、電荷蓄積装置Q2と電極ELの間の結線内に、電荷流電流Iを制限するための手段として含まれている。
【0070】
この実施形態では、開閉は、コントローラーユニットCUの制御出力端子C14を通して制御される切換えスイッチS4によって実現される。従って、スイッチS4は、電荷電圧、信号供給源SQ2の測定信号、又は大地への接続のための選択的経路を提供する。しかしながら、この機能的性能は、個々の開閉要素によって実現することもでき、例えば、検証位相中に、信号供給源SQ2の測定信号に接続できるようになる。この例では、電荷蓄積装置Q2は、作動電圧Uによって直接充電されている。
【0071】
図6は、代表的な検証位相T中の、信号の時間プロファイルを示している。上のグラフI(t)は、充電位相T、試験位相T、及び放電中の電荷流電流Iの時間プロフィアルを示している。下のグラフU(t)は、結果として生じた電極電圧Uの時間プロファイルを示している。
【0072】
測定プローブ1の作動中又は測定位相中に存在する電極電位、即ち、抵抗Rを跨ぐ信号供給源SQ1の電位は、印加次第で、負の値、正の値、又はゼロの値を取り得る。状況を分かり易くするために、図6は、電位がゼロの電極ELの電極電圧Uを示している。
【0073】
検証位相Tの前、即ち、通常は測定プローブ1の作動中に、普通は目下存在している電極電圧Uが測定される。
開閉要素S1を閉じることによって、電荷供給源Q1は、電荷蓄積装置Q2に接続され、それにより検証位相T及び充電位相Tの開始が設定される。電荷は、この接続によって移動状態になり、電荷蓄積装置Q2の電荷量が上昇し、電荷流電流Iが低下し、対応して電極電圧Uが上昇する。信号のプロファイルは、基本的には、一般に知られている指数関数形状に一致している。
【0074】
充電位相Tが終ると、開閉要素S1を開くことによって電荷移動が中断される。
充電位相に続き、即ち、試験位相TT 中に、電極電圧Uの1回又はそれ以上の測定が、時間t、t、更には最大でtを含めtまで行われることになる。
【0075】
電極電圧Uの時間プロファイルは、測定プローブ1の2通りの可能なコンディションについて例示されている。例として示されている様に、ゆっくり下がっているグラフ(実線)は、使い古された測定プローブ1の結果であり、急激に下がっているグラフ(破線)は、新らしい測定プローブ1の結果である。
【0076】
更に、個別の測定値に対応して、可能な閾値を、横棒の形で示している。これらの値に基づけば、この例の測定プローブ1の損耗状態を判断するのは容易である。
本発明の或る可能な実施形態では、試験位相TT は、第2開閉要素S2を閉じることによって終了させることができる。この電荷の相殺は、好適に、検証位相Tの終了前に終結する。対応する放電電流I及び電極電圧Uの各プロフィアルは、検証位相Tの最終部分に見られる。
【0077】
検証位相Tの終了後、望ましくは、双極パルスの様な別の測定信号を測定プローブ1の機能を監視する手段として加えることによって、測定プローブ1の通常の作動、即ち測定プローブの測定位相を再開させることができる。
【0078】
測定位相の持続時間は、通常、1時間であり、一方、検証位相には約5秒かかるはずである。検証位相中に、測定位相の先の測定の最後の測定値がインジケーターと共に伝送されるか、又はインジケーターに表示される。
【0079】
双極パルスの直後に、恐らくは僅かな時間ずれて、単極パルスが起こってもよい。第1信号パルスと、既知の双極パルスに似せて第2の逆の信号パルスの始まりを形成し、第2信号パルスの終わりを、単極パルスによって終わらせることも考えられる。
【0080】
本発明による方法は、ここで、測定プローブのコンディションを正確に判定するための様々な可能性を提供する。検証位相中に判定される測定値は、電荷蓄積装置の時間プロファイルの一部又は全部で構成されるものであり、評価装置で、少なくとも1つの閾値又は特徴的なプロファイルのグラフと比較される。図に示されている様に、評価ユニットは、送信器3に置かれた信号評価ユニットPROC、又は測定プローブに置かれた信号プロセッサで構成されている。
【0081】
評価ユニットに基準データとして記憶される閾値又は放電プロファイルは、測定プローブの可能なコンディション、例えば、電荷キャリア移動度低下の定量的尺度、応答時間の値、勾配の値、ガラスの破砕の様なガラス膜の欠陥状態、或いは測定プローブ1の汚染を表すことができる。
【0082】
測定された放電曲線を比較するか、又は後者の1つ又は複数の点を比較することにより、プローブのコンディションを特徴付ける1つ又は複数の特性又は特性の組み合わせを判定することができる。
【0083】
これらのデータを解析することにより、残存作動寿命に対応する値を確立するか、又は整備作業の必要性を信号送信することもできる。
本方法の好適な形態では、少なくとも第1及び第2検証位相で判明したコンディションが記録され、評価される。例えば、応答時間、ゼロ点、及び勾配の様な代表的な較正パラメーターは、2回以上の検証位相に亘って判定され、記録される。電極の抵抗の様な測定プローブの更なる特性を記録することもできる。その結果、測定プローブの特性の時間プロファイルの記録が得られ、更に、それには高度な情報内容が含まれている。例えば、これらのプロファイルの勾配が、求められ、評価される。例えば、全ての検証位相で測定プローブの特性がなお受容可能な範囲内にあることもあり得る。従って、プローブの挙動の急激な変化に基づいて、望ましくは外挿法を行うことによって、作動不良又はそれ以上許容できない測定性能が何時出現すると予想されるかを突き止めることができる。
【0084】
測定プローブの特性の記録された時間プロファイルを評価する時は、変化が、プロセスに関係付けられた要因に依るものか、又は測定プローブ1内部の不測の変化又は問題に依るものかを判定することができるように、温度及びpH値の様な測定プローブの影響因子を考慮に入れるのが望ましい。
【0085】
測定位相中に測定信号の処理に用いられる補正係数又は遅延係数を調節するのに、測定試験の結果を使用するのは特に好都合である。勾配が、それまでに使っていた値より小さいことが分かれば、変化を補償するために、例えば、プロセス材料のpH値を表している測定信号に加重係数>1を乗算すればよい。
【0086】
而して、本発明による方法では、測定プローブのコンディションを試験できるようになるのみならず、測定プローブ1を取り外す必要無しに、プロセスシステム全体を自動的に較正することができるようになる。
【0087】
これにより、一方では、結果的にプロセスの中断が少なくなり、他方では、プロセスを更に精密に制御できるようになることでシステムの性能が最適化される。
更に、本発明は、最小のコストで実現することができる。測定信号用の、具体的には、測定プローブ1により測定されるpH値用の信号経路と、試験信号用の信号経路とは、好適にも同じである。
【0088】
電荷蓄積装置は、例えば、測定プローブが本来持っているキャパシタンスを用いて、又は少なくとも1つの追加のコンデンサを、電極ELと固定結線で配線するか又は試験を行なう都度回路に入るように切り替えるかの何れかのやり方で用いることによって、実現することができる。
【0089】
本発明の或る好都合な実施形態では、電荷蓄積装置は充電してから、測定プローブ1の検証位相に合わせて回路に入るように切り替えられる。例えば、図4の電荷蓄積装置Q2は、測定位相中に充電し、検証位相開始時には既に、充電状態で電極へと切り換えられるようにすることができる。検証位相内の充電位相は、この場合は、長さがゼロになる。これは、検証位相の開始が、この場合、供給電圧Ubからこの期間の間は切断されている電荷蓄積装置Q2の放電の開始と一致することを意味する。換言すると、供給電圧Ubと電極の間で切換えが起きているわけである。
【符号の説明】
【0090】
1、1a、1b、1c 測定プローブ
1、2a、2b、2c 信号送信結線
3、3a、3b 評価装置(送信器)
30 セグメント連結器
300 マスターコンピューター
6 プロセス材料
8 コンテナ
11 内管
111 ガラス膜
12 外管
13 外緩衝液
14 内緩衝液
15 基準リード線要素
16 導体リード線要素
17 温度測定センサー
18 補助電極
19 信号線
81 保持容器
82 接続パイプ
COM 通信ユニット
C11、C12、C13、C14 制御出力端子
CU コントローラーユニット
EL 電極
電荷流電流
MEM メモリユニット
OP 信号処理ユニット
PROC 信号評価ユニット
Q1 電荷供給源
Q2 電荷蓄積装置
電極抵抗
S1、S2、S3 開閉要素
S4 切換えスイッチ
SQ1、SQ2 信号供給源
検証位相
充電位相
試験位相
TR 送信器
作動電圧
電極電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極(EL)を備えた電気化学的測定プローブ(1)、具体的には、プロセス材料(6)のイオン濃度を判定できるようにするpH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブ(1)の、コンディションを監視及び/又は判定するための方法において、少なくとも1つの検証位相(T)が前記測定プローブ(1)の作動中に起こるように設定されており、前記検証位相は、充電位相(T)と、その直後に続く試験位相(T)と、を備えており、前記充電位相(T)中に、前記電極(EL)に割り当てられている電荷蓄積装置(Q2)、具体的にはコンデンサが、コントローラーユニット(CU)によって制御される電荷移動により充電されるか、或いは、既に充電された電荷蓄積装置(Q2)が、前記電極(EL)の回路に入るように切り替えられ、前記試験位相(T)の開始時に、前記電荷蓄積装置(Q2)は、具体的には第1開閉装置(S1)によって、電荷供給源(Q1)から、又は該当する場合は供給電圧から切断され、前記試験位相(T)中は、前記電極(EL)に存在する電極電圧(U)が、少なくとも1回測定され、前記少なくとも1つの測定値は、少なくとも1つの基準値と比較されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電荷蓄積装置(Q2)は、固定結線で前記電極(EL)に配線されているか、又は前記検証位相(T)の持続期間中だけ接続されること、及び/又は、前記電荷蓄積装置(Q2)は、一方で、電荷移動を目的として前記電荷供給源(Q1)又は供給電圧に接続され、他方で、前記検証位相(T)の間は前記電極(EL)に接続されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定プローブ(1)の作動中に、前記プロセス材料(6)のイオン濃度を測定するために、少なくとも1つの測定位相が起こるように設定されており、この測定位相は、前記検証位相(T)中は中断されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定位相及び/又は前記検証位相中に、前記電極(EL)に存在する電圧は、増幅器(OP)によって、前記測定プローブに或いは前記測定プローブ(1)に接続されている測定値変換器又は送信器に配置されている、評価ユニットに送り出されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検証位相中に、又は、該当する場合は前記電荷蓄積装置(Q2)の放電の部分的又は全体的な時間プロファイルの間に、判定されている測定値は、前記評価ユニット内で、少なくとも1つの閾値か、又は前記測定プローブの可能なコンディション、例えば、電荷キャリア移動度低下の定量的尺度、応答時間の値、勾配の値、ガラス膜の欠陥状態、或いは前記測定プローブ1の汚染、を表している特徴的な時間プロファイル曲線と、比較されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
判定された前記測定プローブ(1)のコンディション、残存作動寿命に対応する値、又は整備作業の必要性は、信号を通して連絡されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1及び第2の検証位相中に判定された前記測定プローブ(1)のそれぞれのコンディションは、前記測定プローブ(1)の作動寿命を判定するために、場合のよっては前記処理の時間プロファイルも考慮しながら、互いに比較され、該当する場合には外挿されること、及び/又は、第1及び第2の検証位相中に判定された前記測定プローブ(1)のそれぞれのコンディションは、作動不良を示している前記測定プローブ(1)の変化を見つけ出すために、互いに比較されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
判定された前記測定プローブ(1)のコンディション、具体的には前記勾配及び前記応答時間は、前記測定位相中に前記測定信号の処理のために使用される補正係数又は遅延係数を調節するのに使用されることを特徴とする、請求項5、6、又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記電極電圧(U)は、前記試験位相(T)中に、前記電極電圧(U)の時間プロファイルの特徴的なパラメーターを判定するために十分な回数分測定されることを特徴とする、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
前記試験位相(T)の直後に、前記電荷蓄積装置(Q2)の電荷は、第2開閉装置(S)によって、具体的には大地接続を通して相殺されることを特徴とする、請求項1から9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
前記測定位相中に、前記電極(EL)で追加の抵抗測定を行うために、双極パルスの様な更なる測定信号が、第3開閉装置(S3)によって前記電極(EL)に送られることを特徴とする、請求項1から10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
前記検証位相(T)は、具体的には分毎、時間毎、又は日毎の時間間隔で変えることができる所定の時間間隔で繰り返されることを特徴とする、請求項1から11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
電気化学的測定プローブ(1)、具体的には、pH測定プローブ、酸素測定プローブ、又はCO測定プローブ、のコンディションを監視及び/又は判定するための装置であって、少なくとも1つの電極(EL)と信号処理ユニット(OP)を有する測定プローブ(1)を備えており、前記測定プローブ(1)の作動中に、プロセス材料(6)のイオン濃度に関係付けられる測定量を判定できるようになっている、装置において、前記測定プローブ(1)は、前記電極(EL)に属していて、制御可能な電荷移動により充電できるようになっている電荷蓄積装置(Q2)を備えていることと、前記測定プローブ(1)は、充電位相(T)とその直後に続く試験位相(T)とを含む検証位相(T)を生成する働きをするコントローラーユニット(CU)を更に備えていることと、前記測定プローブ(1)は、前記試験位相(T)の開始時に、前記電荷蓄積装置(Q2)を電荷供給源(Q1)から、又は該当する場合は供給電圧から、切断するための切断装置、具体的には第1開閉装置(S1)を更に備えており、更に、前記試験位相(T)中に少なくとも1回測定される電極電圧値(U)を前記信号処理ユニット(OP)に送信する働きをする信号線(19)も備えていることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記電荷蓄積装置は、前記電荷供給源(Q1)に、好適には第1開閉装置(S1)によって、接続されるようになっていることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記電荷蓄積装置(Q2)では、前記第2開閉装置(S2)を通して、好適には大地接続により、電荷が排出されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記電極(EL)の抵抗測定を行うために、好適には前記測定位相中に、双極パルスの様な更なる測定信号が、第3開閉装置(S3)によって前記電極(EL)へ送られるようになっていることを特徴とする、請求項13から15の何れかに記載の装置。
【請求項17】
前記試験位相(T)中及び/又は前記測定位相中は、前記電荷蓄積装置(Q2)の、前記電極(EL)とは反対の側のコネクタ端子は、電気的に絶縁されていることを特徴とする、請求項13から16の何れかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−513892(P2010−513892A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542039(P2009−542039)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064170
【国際公開番号】WO2008/077851
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland