説明

測定用光線の反射部材

【課題】変位量と傾角量とを同時に測定する変位及び傾角測定装置の測定用反射治具に好適に用いられる反射部材を提供する。
【解決手段】レンズ駆動装置のレンズホルダーの変位量と傾角量とを、変位及び傾角測定装置を用いて同時に測定する際に、粗面を成す第1の反射面12yを有する板状の第1の反射部材12aの上に、鏡面を成す第2の反射面12zを有する板状の第2の反射部材12bとを積層して成る反射部材12を備えた測定用反射治具を用いることにより、変位測定用光源から照射された収束光の反射光を第1の反射面12yで乱反射させてその一部を変位センサに合焦させるとともに、傾角測定用光源から照射された平行光を第2の反射面12zで正反射させて傾角センサに合焦させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話用のカメラモジュール等に用いられる、電磁駆動式のレンズ駆動装置のレンズホルダー等の可動体の変位量や傾角を光学的に測定する際に用いられる反射部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に搭載されるカメラにおいては、イメージセンサの画素数が増大されて撮影画像の高品質化が進んでいることから、カメラに搭載されるレンズについても、高画素数イメージセンサの分解能に対応する高い分解能が要求されている。
しかしながら、従来の固定焦点型のカメラモジュールでは焦点ボケが生じてしまうため、十分な分解能を得られなかった。そこで、近年は、固定焦点型のカメラモジュールに代えて、可動焦点型のカメラモジュールが採用されるようになってきている。
可動焦点型のカメラモジュールにおけるレンズ駆動方式としては、図5に示すような、ボイスコイルモータ方式のレンズ駆動装置20が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンズ駆動装置20は、軟鉄等の磁性体から成るヨーク21と、このヨーク21の内壁側に取付けられる永久磁石22と、中央部位置にレンズ23を保持するレンズホルダー24と、このレンズホルダー24に装着される駆動用コイル25と、内周側に上記ヨーク21を装着するケース26と、ケース26とレンズホルダー24とを連結する上,下のバネ部材27A,27Bとを備えている。
【0004】
永久磁石22としては、円筒状の磁石、あるいは、複数の円弧状の磁石をヨーク21の内壁側に環状に配列したものが用いられている。
駆動用コイル25は、ヨーク21と永久磁石22とにより印加される、コイル周りに放射状に分布する磁界中に設置されているので、駆動用コイル25に通電すると、駆動用コイル25には、図5の矢印で示す図示しない被写体の方向へ向いたローレンツ力が発生する。これにより、レンズホルダー24を、上記ローレンツ力と上,下のバネ部材27A,27Bの復元力とが釣り合う位置まで移動させることができる。
したがって、駆動用コイル25に通電する電流値を制御することにより、レンズホルダー24の移動量を調整できるので、レンズ23を所定の位置に移動させることができる。
【0005】
ところで、上記レンズ駆動装置20を製造する際には、製造工程内や最終工程において、レンズ駆動装置20の特性、すなわち、駆動用コイル25に通電したときのレンズホルダー24の移動距離である変位量や、そのときのレンズホルダー24のレンズ光軸からの傾き角である傾角量を測定して、上記レンズ駆動装置20の合否判定を行うようにしている。
従来、上記変位量は変位測定装置を用いて測定され、上記傾角量は、傾角測定装置を用いて測定される(例えば、特許文献2,3参照)が、変位量の測定と傾角量の測定とが2つの測定工程に分離されるため、レンズ駆動装置20の設置など、類似の作業が重複して繰り返されることになり、測定時間が長くなってしまうといった問題点があった。
また、レンズ駆動装置20を駆動するための駆動用電源等も測定工程毎に別個に準備する必要があることから、装置がコスト高になってしまっていた。
【0006】
そこで、図6に示すような、変位量の測定と傾角の測定とを同時に行うことができる変位及び傾角測定装置30が提案されている(特願2009−23984号)。
この変位及び傾角測定装置30は、変位・傾角測定部30Aと駆動・演算部30Bとを備え、例えば、レンズ駆動装置20の可動部であるレンズホルダー24のような被測定物の変位量と傾角量とを測定する。
変位・傾角測定部30Aは、変位測定用光源31と、投光レンズ32と、偏光ビームスプリッタ33と、受光レンズ34と、変位センサ35と、傾角測定用光源36と、ハーフミラー37と、コリメータレンズ38と、傾角センサ39とを備えている。
駆動・演算部30Bは、コンピュータ41と、駆動用電源42と、カウンタ43とを備えている。
【0007】
変位測定用光源31は、直線偏光された光線、例えば、P波の光線を照射する。
投光レンズ32は、変位測定用光源31から照射されたP波を入射し、これを収束光に変換して出射する。
偏光ビームスプリッタ33は、偏光された入射光線を透過もしくは反射させるもので、ここでは、P波を透過させS波を反射するように透過面及び反射面が設定される。透過したP波は進行方向を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ33から出射される。
一方、反射されたS波は、偏光ビームスプリッタ33の反射面で反射される。このとき、S波が、例えば、反射面に対して45°の角度で入射したときには、反射角も45°になるので、S波は入射方向とは90°ずれた方向に出射される。
受光レンズ34は、被測定物であるレンズホルダー24から反射された反射光を透過させて変位センサ35に合焦させる。
変位センサ35は、入射される反射光の位置を検知して入射位置の変化量からレンズホルダー24の変位量を検出する。
なお、受光レンズ34と変位センサ35とは、レンズホルダー24の測定面に対して所定角度傾いて配列される。
【0008】
傾角測定用光源36は、P波と直交する方向に直線偏光されたS波を照射する。
ハーフミラー37は、入射された入射光線の約半分を透過させ、他の半分を反射させるもので、ミラーの角度を45°に設置すると、反射光は進行方向が90°ずれてハーフミラー37から出射される。
コリメータレンズ38は、入射された光線を平行光に変換して出射する。
傾角センサ39は、被測定物であるレンズホルダー24で反射されて当該傾角センサ39に入射する反射光の位置を検知して入射位置の変化量からレンズホルダー24の傾角量を検出する。
【0009】
駆動・演算部30Bのコンピュータ41は、変位測定用光源31と傾角測定用光源36とを発光させるための制御信号と、レンズ駆動装置20を駆動・制御する駆動用電源42を制御するための制御信号とを出力する。また、カウンタ43により計数されたレンズホルダー24の変位量と傾角量のデータとを表示手段41aに表示するとともに、記憶手段41bに記憶して集積する。
駆動用電源42は、レンズ駆動装置20を駆動するための電源で、この駆動用電源42からは、駆動用コイル25に通電するための駆動電流が供給される。
カウンタ43は、変位センサ35から送られてくるレンズホルダー24の変位量の信号と、傾角センサ39から送られてくるレンズホルダー24の傾角量の信号とを計数して、コンピュータ41に出力する。
【0010】
変位及び傾角測定装置30を用いてレンズホルダー24の変位量と傾角量とを同時に測定する際には、まず、コンピュータ41を動作させ、変位測定用光源31と傾角測定用光源36とを発光させて、それぞれP波とS波を照射するとともに、駆動用電源42を制御してレンズホルダー24をP波の照射光軸方向に移動させる。
変位測定用光源31から照射されたP波は、投光レンズ32によって収束され、偏光ビームスプリッタ33を透過して、レンズホルダー24に照射される。
照射されたP波は、レンズホルダー24の表面で反射される。この反射光は、受光レンズ34を透過して変位センサ35に到達し、合焦する。
同時に、傾角測定用光源36から照射されたS波は、ハーフミラー37を透過してコリメータレンズ38に入射する。コリメータレンズ38からはS波の平行光が出射される。
S波は、偏光ビームスプリッタ33の反射面で反射されて、入射方向とは直交する方向に出射され、P波と同じ方向であるレンズホルダー24の表面に照射される。
照射されたS波は、レンズホルダー24の表面で反射される。この反射光は、偏光ビームスプリッタ33で反射されてコリメータレンズ38方向に出射した後、ハーフミラー37で反射されて、傾角センサ39に到達し、合焦する。
【0011】
レンズホルダー24がP波の照射光軸方向に移動すると、変位センサ35に合焦したP波の反射光の位置が変化する。変位センサ35はこの変化量を検出することによって、レンズホルダー24の変位量を検出することができる。
また、レンズホルダー24がP波の照射光軸方向への移動に伴って傾斜すると、傾角センサ39に合焦したS波の反射光の位置が変化する。傾角センサ39はこの変化量を検出することによって、レンズホルダー24の傾角量を検出することができる。
変位センサ35で検出したレンズホルダー24の変位量の信号と、傾角センサ39で検出したレンズホルダー24の傾角量の信号とは、カウンタ43に送られ計数されて、変位量と傾角量とが求められる。
この変位量のデータと傾角量のデータとはコンピュータ41に送られ、コンピュータ41の表示手段41aに同時に表示される。また、変位量のデータと傾角量のデータとは記憶手段41bに記憶され集積される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−280031号公報
【特許文献2】特開平11−208471号公報
【特許文献3】特開2001−59716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、レンズホルダー24の変位量や傾角量を測定する際には、レンズ23を保護するとともに、反射光の強度を高めるため、図6に示すように、レンズ23に代えて、レンズホルダー24の入射光側に平板状の反射部材(図示せず)が取付けられた測定用反射治具10Rを装着し、この反射部材により、照射される光線(入射光線)を反射させるようにしていた。
しかしながら、変位量と傾角量とを同時に測定する変位及び傾角測定装置30のように、変位センサ35と傾角センサ39とが異なる方向に設置されている装置では、変位測定用の反射光を変位センサ35方向に、傾角測定用の反射光を傾角センサ39方向に、それぞれ、精度よく反射させる必要があることから、測定用反射治具に好適に用いられる反射部材が求められている。
【0014】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、変位量と傾角量とを同時に測定する変位及び傾角測定装置の測定用反射治具に好適に用いられる反射部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、被測定物に測定用光線を照射するとともに前記被測定物からの反射光を受光して前記被測定物の移動量を測定する際に、前記被測定物に搭載されて前記測定用光線を反射する測定用光線の反射部材であって、前記測定用光線の入射方向に所定の距離を隔てて形成されて前記測定用光線をそれぞれ反射する2つの反射面を有し、一方の反射面が粗面を成し、他方の反射面が鏡面を成すことを特徴とする。
これにより、測定用光線の反射光を複数の異なる方向で受光しても、それぞれの箇所で、十分な反射強度を得ることができるので、複数の移動量を、精度よく、かつ、再現性よく測定することができる。
なお、被測定物の移動量は、例えば、被測定物をレンズ駆動装置の可動部であるレンズホルダーとした場合、レンズホルダーの移動距離である変位量などの並進運動の移動量だけでなく、レンズホルダーのレンズ光軸からの傾き角である傾角の大きさである傾角量などの回転運動の移動量を含むものとする。
【0016】
また、本発明は、前記反射部材が、粗面を成す反射面を有する板状の第1の反射部材と、鏡面を成す反射面を有する板状の第2の反射部材とから成り、前記第1の反射部材と前記第2の反射部材とが前記測定用光線の入射方向に積層されていることを特徴とする。
これにより、測定用光線の入射方向に所定の距離を隔てて形成された、粗面を成す反射面と鏡面を成す反射面とを有する反射部材を容易に作製することができる。
【0017】
また、本発明は、前記反射部材が、粗面を成す第1の板面とこの第1の板面に平行な鏡面を成す第2の板面とを備えた板状の部材であることを特徴とする。
これにより、測定用光線の入射方向に所定の距離を隔てて形成された、粗面を成す反射面と鏡面を成す反射面とを有する反射部材を一体で作製することができる。
【0018】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態1に係る反射部材の構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態1に係る反射部材が取付けられた測定用反射治具を装着したレンズ駆動装置を示す断面図である。
【図3】本実施の形態2に係る反射部材の構成を示す断面図である。
【図4】本発明による反射部材の他の構成を示す断面図である。
【図5】従来のレンズ駆動装置の構成を示す断面図である。
【図6】変位及び傾角測定装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る反射部材12の構成を示す断面図で、図2は、反射部材12が取付けられた測定用反射治具10が装着されたレンズ駆動装置20を示す断面図である。
レンズ駆動装置20は、ヨーク21と、永久磁石22と、レンズ23を保持するレンズホルダー24と、駆動用コイル25と、ケース26と、上,下のバネ部材27A,27Bとを備えている。
レンズ駆動装置20の製造工程の最終工程においては、前述した変位及び傾角測定装置30を用いて、駆動用コイル25に駆動電流が通電されたときのレンズホルダー24の変位量と傾角量とを測定して、当該レンズ駆動装置20の特性を評価する。このレンズホルダー24が変位及び傾角測定装置30の被測定物に相当する。
【0022】
測定用反射治具10は、挿入部材11と反射部材12とを備える。
挿入部材11は、レンズホルダー24の内周側の図示しない被写体側(図2の上側で、以下、被写体側を上側、被写体側とは反対側を下側という)に設けられたネジ部24kに螺入されるネジ部11kが形成された柱状の部材で、ネジ部11kが形成されている部分の径がレンズホルダー24の内径に等しく、ネジ部11kが形成されていない部分の径はレンズホルダー24の内径よりも小さく形成されている。
反射部材12は、挿入部材11の上面に保持される。
反射部材12は、図2に示すように、板状の第1の反射部材12aとこの第1の反射部材12aの上に積層される板状の第2の反射部材12bとを備えている。第1の反射部材12aと第2の反射部材12bとは接着剤もしくは粘着剤等により接合されて積層された状態で挿入部材11上に設置され、第1及び第2の反射部材12a,12bの周囲や第1の反射部材12aの底面側において、挿入部材11に接着剤もしくは粘着剤等により接合される。
【0023】
第1の反射部材12aは板状の紙、プラスチック等より成り、第1の反射部材12aの反射面である上側の面、すなわち、第2の反射部材12b側の面(以下、第1の反射面という)12yは粗面を成している。この第1の反射面12yの色は、白、赤、黄色等の測定用光線の反射率の高い色が選択されている。
一方、第2の反射部材12bは板状のガラス、プラスチック等より成り、第2の反射部材12bの反射面である上側の面、すなわち、第1の反射部材12a側の面とは反対側の面(以下、第2の反射面という)12zも、第1の反射部材12a側の面も、ともに、鏡面を成している。
これにより、第2の反射部材12bに入射した光線の一部は第2の反射面12zで反射され、入射した光線の他部は第2の反射部材12bを透過して、第1の反射部材12aに入射する。なお、第2の反射面12zに、必要に応じて、反射量調整用の膜をコーティングして、入射光線の透過量と反射量とを調整してもよい。
【0024】
次に、本発明による反射部材12の作用について、図6に示した変位及び傾角測定装置30を用いて、レンズ駆動装置20のレンズホルダー24の変位量と傾角量とを同時に測定する場合を例にとって説明する。
レンズ駆動装置20には、図6に記載の測定用反射治具10Rに代えて、本発明による反射部材12を備えた測定用反射治具10が装着されているものとする。
変位測定用光源31から照射されたP波の収束光と、傾角測定用光源36から照射されたS波の平行光とは、それぞれ、レンズホルダー24に装着された測定用反射治具10の反射部材12に照射される。
図1の符号Dに示す、照射されたP波の収束光の一部は、第2の反射部材12bを透過して、第1の反射部材12aの第1の反射面12yに到達する。第1の反射面12yは粗面から成り、かつ、反射率の高い色をしているので、第2の反射部材12bを透過したP波の大部分は、第1の反射面12yで乱反射される。その結果、第1の反射面12yからは様々な角度の方向に反射光が反射される。
一方、図1の符号Tに示す、照射されたS波の平行光は、第2の反射部材12bの第2の反射面12zに到達してその一部が正反射される。この正反射されたS波の反射光は、入射されたP波の収束光の光軸に沿って反射される。
【0025】
第1の反射面12yで乱反射された反射光の、受光レンズ34と変位センサ35とが配列された角度方向に一致する光軸を有する成分は、変位センサ35に到達し、合焦する。
また、第2の反射面12zで反射されたS波の正反射光は、偏光ビームスプリッタ33で反射されてコリメータレンズ38方向に出射した後、ハーフミラー37で反射されて、傾角センサ39に到達し、合焦する。
レンズホルダー24がP波の照射光軸方向に移動すると、変位センサ35に合焦したP波の反射光の位置が変化する。変位センサ35はこの変化量を検出することによって、レンズホルダー24の変位量を検出することができる。
また、レンズホルダー24がP波の照射光軸方向への移動に伴って傾斜すると、傾角センサ39に合焦したS波の反射光の位置が変化する。傾角センサ39はこの変化量を検出することによって、レンズホルダー24の傾角量を検出することができる。
変位センサ35で検出したレンズホルダー24の変位量の信号と、傾角センサ39で検出したレンズホルダー24の傾角量の信号とは、カウンタ43に送られ計数されて、変位量と傾角量とが求められる。
【0026】
このように、本実施の形態1によれば、レンズ駆動装置20のレンズホルダー24の変位量と傾角量とを、変位及び傾角測定装置30を用いて同時に測定する際に、レンズ23に代えてレンズホルダー24に装着される測定用反射治具10として、粗面を成す第1の反射面12yを有する板状の第1の反射部材12aの上に、鏡面を成す第2の反射面12zを有する板状の第2の反射部材12bとを積層して成る反射部材12を備えた測定用反射治具10を用いることにより、変位測定用光源31から照射されたP波の収束光の一部を第1の反射部材12aの第1の反射面12yで乱反射させるとともに、傾角測定用光源36から照射されたS波の平行光を第2の反射部材12bの第2の反射面12zで正反射させ、前記乱反射された反射光の一部を変位センサ35に合焦させ、前記正反射光を傾角センサ39に合焦させるようにしたので、レンズホルダー24の変位量と傾角量とを、精度よく、かつ、再現性よく測定することができる。
【0027】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係る反射部材13の構成を示す断面図である。
反射部材13は板状のガラス、プラスチック等より成り、照射光が入射される側とは反対側の板面である下側の板面(以下、第1の反射面という)13yは粗面を成している。一方、照射光が入射される側の板面である上側の板面(以下、第2の反射面という)13zは鏡面を成している。
本例の反射部材13も、反射部材12と同様に、挿入部材11の上面に接着剤もしくは粘着剤等により接合されて、測定用反射治具の反射部材として使用される。
第1の反射面13yは、擦りガラス等のように、ガラス、プラスチック等の表面を、例えば、サンドブラスト等により面荒れを生じさせて形成される。
なお、第2の反射面13zに、必要に応じて、反射量調整用の膜をコーティングして、入射光線の透過量と反射量とを調整してもよい。
【0028】
次に、本発明による反射部材13の作用について、図3及び図6を参照して説明する。
なお、レンズ駆動装置20には、図6に記載の測定用反射治具10Rに代えて、本発明による反射部材13を備えた測定用反射治具が装着されているものとする。
変位測定用光源31から照射されたP波の収束光と、傾角測定用光源36から照射されたS波の平行光とは、それぞれ、レンズホルダー24に装着された測定用反射治具の反射部材13に照射される。
図3の符号Dに示す、照射されたP波の収束光の一部は、反射部材13を透過して、第1の反射面13yに到達し乱反射される。その結果、第1の反射面13yからは様々な角度の方向に反射光が反射される。
一方、図3の符号Tに示す、照射されたS波の平行光は、反射部材13の第2の反射面13zに到達してその一部が正反射される。この正反射されたS波の反射光は、入射されたP波の収束光の光軸に沿って反射される。
【0029】
第1の反射面13yで乱反射された反射光の、受光レンズ34と変位センサ35とが配列された角度方向に一致する光軸を有する成分は、変位センサ35に到達し、合焦する。
また、第2の反射面13zで反射されたS波の正反射光は、偏光ビームスプリッタ33で反射されてコリメータレンズ38方向に出射した後、ハーフミラー37で反射されて、傾角センサ39に到達し、合焦する。
このように、本実施の形態2に係る反射部材13は、変位測定用光源31から照射されたP波の反射光と傾角測定用光源36から照射されたS波の反射光とを、それぞれ適切に、変位センサ35及び傾角センサ39に入射させることができるので、レンズホルダー24の変位量と傾角量とを、精度よく、かつ、再現性よく測定することができる。
【0030】
なお、前記本実施の形態2では、粗面を成す第1の反射面13yと鏡面を成す第2の反射面13zとを備えた反射部材13について説明したが、図4に示すように、反射部材13の下面側に、白、赤、黄色等の測定用光線の反射率の高い色の塗料を塗装した塗膜層14を設けるようにすれば、第1の反射面13yで乱反射される反射光の強度をより強くすることができるので、変位量の測定精度を更に向上させることができる。
なお、この場合には、塗膜層14の反射部材13側の面14yと反射部材13の下側の面13yとが第1の反射面15yを構成する。
【0031】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、変位量と傾角量とを同時に測定する変位及び傾角測定装置の測定用反射治具に好適に用いられる反射部材を得ることができるので、これを、例えば、レンズ駆動装置のレンズホルダーに装着される測定用反射治具などに適用すれば、レンズ駆動装置の特性測定の精度を向上させることができるとともに、測定時間を短縮できるので、製造効率も向上する。
【符号の説明】
【0033】
10 測定用反射治具、11 挿入部材、11k ネジ部、
12 反射部材、12a 第1の反射部材、12b 第2の反射部材、
12y 第1の反射面、12z 第2の反射面、
20 レンズ駆動装置、21 ヨーク、22 永久磁石、23 レンズ、
24 レンズホルダー、25 駆動用コイル、26 ケース、
27A,27B バネ部材、
30 変位及び傾角測定装置、31 変位測定用光源、32 投光レンズ、
33 偏光ビームスプリッタ、34 受光レンズ、35 変位センサ、
36 傾角測定用光源、37 ハーフミラー、38 コリメータレンズ、
39 傾角センサ、41 コンピュータ、42 駆動用電源、43 カウンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に測定用光線を照射するとともに前記被測定物からの反射光を受光して前記被測定物の移動量を測定する際に、前記被測定物に搭載されて前記測定用光線を反射する測定用光線の反射部材であって、
前記測定用光線の入射方向に所定の距離を隔てて形成されて前記測定用光線をそれぞれ反射する2つの反射面を有し、
一方の反射面が粗面を成し、他方の反射面が鏡面を成すことを特徴とする測定用光線の反射部材。
【請求項2】
前記反射部材は、
粗面を成す反射面を有する板状の第1の反射部材と、
鏡面を成す反射面を有する板状の第2の反射部材とを備え、
前記第1の反射部材と前記第2の反射部材とが前記測定用光線の入射方向に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の測定用光線の反射部材。
【請求項3】
前記反射部材は、粗面を成す第1の板面とこの第1の板面に平行な鏡面を成す第2の板面とを備えた板状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の測定用光線の反射部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−39263(P2011−39263A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186265(P2009−186265)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(507186609)マイクロウインテック株式会社 (26)
【出願人】(502426061)大立光電股▲ふん▼有限公司 (34)
【出願人】(509226842)
【Fターム(参考)】