説明

測定用容器、測定用キット及び測定装置

【課題】安全かつ短時間で容易に測定対象物の抗酸化能の測定を行うことができる測定用容器、測定用キット及び測定装置を提供する。
【解決手段】第1測定容器2は、第1透明容器22に封入された遷移金属としての銅Cu2+を含む製剤である試薬23を具備し、第2測定容器3は、第2透明容器32に封入された銅を含まない製剤33を具備する。遷移金属を含む試薬の添加により測定対象物の色が変化、言い換えればある波長における吸光度が変化することを利用して、第1透明容器22、第2透明容器の吸光を測定することにより、試料の抗酸化能が測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶飲料等の試料の抗酸化能を測定する時に試料を収容する測定用容器、測定用キット及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の持つ重要な機能性の一つである活性酸素やフリーラジカルを消去する機能、すなわち抗酸化能は、栄養学、薬学、農学、医学などの分野できわめて有用な指標となっている。がん、動脈硬化、高血圧症といった生活習慣病や、アルツハイマー型痴呆症といった加齢性疾患の多くは、フリーラジカルや活性酸素種に起因する酸化ストレスと何らかの因果関係があるといわれており、体内にある過剰なフリーラジカル、活性酸素種を消去することは、こうした病気の予防、老化防止につながると考えられている。体内におけるフリーラジカル、活性酵素の消去には、食品中に含まれるカテキン、フラボノイド、アントシアニン、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質が重要とされ、抗酸化能が食品の新たな機能性として認知されつつある。抗酸化能の測定には、例えばORAC法(Oxygen Radical Absorption Capacity)等が用いられる(例えば特許文献1参照)。ORAC法は、試験管内で、検体に蛍光を有する分子プローブを添加し、さらにラジカル活性剤により活性酸素種を発生させたものの蛍光強度の経時変化より抗酸化能を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−504443号公報(段落[0017]〜[0019])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のようなORAC法では、検出に危険有害性のある化学薬品を開放系で使用する必要があり、食品の生産加工、流通の現場における化学薬品を使用した測定操作では、異物混入リスクを伴うことから、現場での測定は実施が困難であった。また、蛍光強度の経時変化から抗酸化能を測定するため、測定に時間を要するといった問題があった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、安全かつ短時間で容易に測定対象物の抗酸化能の測定を行うことができる測定用容器、測定用キット及び測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る測定用容器は、透明容器と、試薬を具備する。上記試薬は上記透明容器に封入され、遷移金属を含む。
【0007】
本発明の他の形態に関わる測定用キットは、第1測定用容器と、第2測定用容器とを具備する。上記第1測定用容器は、第1透明容器に、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入される。上記第2測定用容器は、第2透明容器に、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入される。
【0008】
本発明の更に他の形態に係る測定装置は、第1光源と、第1受光部と、第2光源と、第2受光部と、を具備する。上記第1光源は、第1透明容器に、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第1測定用容器に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射する。上記第1受光部は、上記第1光源から照射され、上記第1測定用容器を透過した光を受光する。上記第2光源は、第2透明容器に、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第2測定用容器に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射する。上記第2受光部は、上記第2光源から照射され、上記第2測定用容器を透過した光を受光する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る一実施形態の測定用キットの断面図である。
【図2】図1に示す測定用キットを用いた抗酸化能の測定方法を示す図である。
【図3】図1の測定用キットを用いて各種飲料の抗酸化能を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
測定用容器は、透明容器と、試薬を具備する。上記試薬は上記透明容器に封入され、遷移金属を含む。この測定用容器によれば、測定容器内に測定対象物を注入し、遷移金属との反応による測定対象物の色の変化から、測定対象物の抗酸化能を検出することができる。また、試薬が透明容器に封入されているため、測定用容器から試薬がこぼれることがない。従って、測定用容器を安全かつ容易に取り扱うことができる。
【0011】
上記測定用容器は、上記透明容器が開口部を有し、キャップを更に具備する。上記キャップは、上記開口部を閉塞し、針の挿入が可能である。この測定用容器によれば、測定対象物を収容した注射針をキャップに挿入して、透明容器内部に測定対象物を注入することができる。従って、測定対象物が容器外部にこぼれることなく、また異物混入のリスクもない。このように異物混入リスクが低く、また試薬や測定対象物が外部に飛び散ることもないため、食品の生産加工、流通、外食産業、果樹園といった現場等でも安全かつ容易な測定が可能である。
【0012】
上記測定用容器は、前記遷移金属は銅である。このように、遷移金属として銅を用いることができる。
【0013】
上記測定用容器は、上記試薬が、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものである。このように、試薬として、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものを用いることができる。
【0014】
上記測定用容器は、前記遷移金属のモル数は、前記透明容器の内容積1mLあたり0.01mモル〜10mモルの範囲である。このように、遷移金属のモル数を、0.01mモルから10mモルの範囲にすることが望ましい。0.001モルよりも少ないと、還元反応の検出が不十分であり、100mモルよりも多いと吸光度変化の正確な検出が困難となる。
【0015】
測定用キットは、第1測定用容器と、第2測定用容器とを具備する。上記第1測定用容器は、第1透明容器に、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入される。上記第2測定用容器は、第2透明容器に、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入される。
【0016】
この測定用キットによれば、第1測定用容器と第2測定用容器それぞれに測定対象物を注入し、それぞれの測定用容器内の液体の色を比較することにより、測定対象物の抗酸化能を検出することができる。第1測定用容器においては、遷移金属との反応による測定対象物の色が変化し、第2測定用容器においては、測定対象物の色が変化しない。第1測定用容器で検出した光の吸光度と第2測定用容器で検出した光の吸光度との差分から、測定対象物の抗酸化能を測定することにより、測定対象物自体の着色をキャンセルするように補正された測定対象物の抗酸化能を測定することができる。
【0017】
測定装置は、第1光源と、第1受光部と、第2光源と、第2受光部と、を具備する。上記第1光源は、第1透明容器に、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第1測定用容器に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射する。上記第1受光部は、上記第1光源から照射され、上記第1測定用容器を透過した光を受光する。上記第2光源は、第2透明容器に、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第2測定用容器に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射する。上記第2受光部は、上記第2光源から照射され、上記第2測定用容器を透過した光を受光する。
【0018】
この測定装置によれば、第1測定用容器と第2測定用容器それぞれに測定対象物を注入し、それぞれの測定用容器に450nm〜500nmの波長の光を照射し、各測定用容器を透過した光を各受光部で受光することにより、各受光部における光量信号の差分から測定対象物の抗酸化能を測定することができる。第1測定用容器においては、遷移金属との反応による測定対象物の色が変化し、第2測定用容器においては、測定対象物の色が変化しない。従って、第1受光部で検出した光の吸光度と第2受光部で検出した光の吸光度との差分から、測定対象物の抗酸化能を求めることにより、測定対象物自体の着色をキャンセルするように補正された測定対象物の抗酸化能を測定することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0020】
[測定用キット及び測定用容器の構成]
図1は、一実施形態に係る測定用キットの断面図である。測定用キットは2つの測定用容器を備える。図2は、図1の測定用キットを用いた抗酸化値の測定方法を示す。
【0021】
図1に示すように、測定用キット1は、測定用デバイスである第1測定用容器2と対象用デバイスである第2測定用容器3を備える。
【0022】
第1測定用容器2は、開口部22aを有する第1透明容器22と、該第1透明容器22に封入された遷移金属としての銅Cu2+を含む製剤である試薬23と、開口部22aを閉塞するキャップ21と、を具備する。第2測定用容器3は、開口部32aを有する第2透明容器32と、該第2透明容器32に封入された銅を含まない製剤33と、開口部32aを閉塞するキャップ31と、を具備する。試薬23には、PAO(商品名、日研ザイル(株)日本老化制御研究所製)を用いることができる。PAOにはCu2+と、Cuと第1波長である450nm〜500nmにおいて吸光を示す発色試薬が含まれている。本試薬では、Cu2+が試料の添加により還元反応が生じてCuになって、発色試薬によって色が変化することを利用して、試料の抗酸化能を測定することができる。このように銅の還元反応を利用した試薬の他に、遷移金属としての鉄や亜鉛の還元反応を利用した試薬を用いることもできる。
【0023】
第1透明容器22及び第2透明容器32は、ガラスやプラスッチクなどの透明部材からなり、400〜800nmの範囲の波長の光を透過するものからなる。第1透明容器22は、水平面での断面が円形の円筒状を有しており、高さが50mm、外径が7mm、内径が5mm、厚さ1mmとなっている。いずれの透明容器も内容積が約1mLとなっている。
【0024】
試薬23は、硫酸銅0.03mg、塩化カリウム0.2mg、リン酸水素二カリウム0.2mg、塩化ナトリウム8mg、リン酸水素二ナトリウム1.15mg及び蒸留水50μLを混合してなるコーティング原液aを水分除去したものである。試薬23は、内容積約1mLの第1透明容器22内にコーティング原液aを全量入れ、減圧下にて水分を除去して乾固させて形成される。水分を完全に除去した後、減圧を保ったまま、キャップ21がはめ込まれる。封入される銅のモル数は、容器の内容積あたり0.001モル〜100mモルの範囲が望ましく、より望ましくは、0.01mモルから10mモルの範囲、更に望ましくは0.01mモルから1mモルの範囲である。0.001モルよりも少ないと、還元反応の検出が不十分であり、100mモルよりも多いと吸光度変化の正確な検出が困難となる。
【0025】
製剤33は、塩化カリウム0.2mg、リン酸水素二カリウム0.2mg、塩化ナトリウム8mg、リン酸水素二ナトリウム1.15mg及び蒸留水50μLを混合してなるコーティング原液bを水分除去したものである。製剤33は、内容積約1mLの第2透明容器32内にコーティング原液bを全量入れ、減圧下にて水分を除去して乾固させて形成される。水分を完全に除去した後、減圧を保ったまま、キャップ31がはめ込まれる。
【0026】
キャップ21及びキャップ31は、注射針を刺す事ができ、各透明容器の開口部を密封可能な材質を用いることができ、例えばウレタンフォームを用いることができる。このようにキャップ21及び31を注射針を刺すことのできる材質とすることにより、キャップ21及びキャップ31を取り外すことなく、図2に示すように注射針により測定対象物を第1測定用容器2内及び第2測定容器3内に供給することができる。このため、試薬23、製剤33及び測定対象物が容器外にこぼれることがなく、扱いが容易で利便性が高い。
【0027】
[測定装置及び測定方法]
次に、上述測定用キット1を用いた測定装置における測定方法について説明する。図2は、測定装置の概略図及び図1の測定用キットを用いた抗酸化能の測定方法を示す。図3は、図1の測定用キットを用いて各種飲料の抗酸化能を測定した結果を示す。本実施形態では、測定対象物として、市販のペット飲料の爽健美茶(商品名 日本コカコーラ社製)、市販の緑茶飲料2種類(緑茶飲料1、緑茶飲料2)、赤ワイン、日本酒を用い、それぞれの抗酸化能の評価を行った。
【0028】
図2に示すように、測定用装置は、第1光源である第1発光ダイオード26と、第1受光部である第1フォトダイオード(PD1)25と、第2光源である第2発光ダイオード36と、第2受光部である第2フォトダイオード(PD2)35と、図示しない制御部とを具備する。第1発光ダイオード26は、第1測定用容器2に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射するものである。第1フォトダイオード25は、第1発光ダイオード26から照射され第1測定用容器2を透過した光を受光するものである。第1発光ダイオード26と第1フォトダイオード25とは、第1測定用容器2を介して対向配置される。第2発光ダイオード36は、第2測定用容器3に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射するものである。第2フォトダイオード35は、第2発光ダイオード36から照射され第2測定用容器3を透過した光を受光するものである。第2発光ダイオード36と第2フォトダイオード35とは、第2測定用容器3を介して対向配置される。
【0029】
測定用キット1を用いた測定では、第1測定用容器2を用いて遷移金属が加えられた測定対象物の吸光度が測定され、第2測定用容器3を用いて遷移金属が加えられていない測定対象物の吸光度が測定される。この測定では、遷移金属を含む試薬の添加により測定対象物の色が変化、言い換えればある波長における吸光度が変化することを利用して、試料の抗酸化能が測定される。
【0030】
まず、測定用キット1の第1測定用容器2及び第2測定用容器3内に、測定対象物を注射針40、41を用いて注入する。測定対象物の種類によって抗酸化能または還元力は大きく異なるため、測定対象物に応じて希釈液を用いて所望の濃度に希釈し、希釈した測定対象物を各測定用容器2及び3に注入する。希釈液としては、塩化カリウム200mg、リン酸水素二カリウム200mg、塩化ナトリウム8000mg、リン酸水素二ナトリウム1150mg、バソクプロイン200mg、蒸留水1Lを混合したものを用いた。本実施形態においては、市販のペット飲料の爽健美茶(商品名 日本コカコーラ社製)及び日本酒は抗酸化能が比較的低いことから、希釈液による希釈率を4倍、すなわちペット飲料又は日本酒と希釈液との混合比率を1:3というように希釈したものを測定対象物として用いた。緑茶飲料や赤ワインはカテキンやポリフェノール等の抗酸化物質を豊富に含むため、希釈液による希釈率を16倍、すなわち緑茶飲料又は赤ワインと希釈液との混合比率を1:15というように希釈したものを測定対象物として用いた。
【0031】
次に、図2に示すように、測定対象物が注入された第1測定用容器2に対して、第1光源である第1発光ダイオード26から光を照射する。第1発光ダイオード26から照射され、第1測定容器2を透過した光は第1受光部である第1フォトダイオード(PD1)25に受光される(S1)。同様に、測定対象物が注入された第2測定用容器3に対して、第2光源である第2発光ダイオード36から光を照射する。第2発光ダイオード36から照射され、第2測定容器3を透過した光は第2受光部である第2フォトダイオード(PD2)35に受光される(S2)。第1発光ダイオード26及び第2発光ダイオード36は、492nmの波長を有する光を照射するものである。第1発光ダイオード26及び第2発光ダイオード36には、試薬の付加による色の変化が検出可能な波長、すなわち試薬の付加により測定される透過率に変化が生じる領域の波長が使用され、450nm〜500nmの波長を使用することができる。本実施形態では492nmの波長を採用した。各発光ダイオードの照射開始及び終了のタイミングは制御部で制御される。
【0032】
次に、受光により第1フォトダイオード(PD1)25から発生される電流から、遷移金属が加えられた測定対象物の吸光度1が制御部にて演算される(S3)。同様に、受光により第2フォトダイオード(PD2)35から発生される電流から、遷移金属が加えられていない測定対象物の吸光度2が制御部にて演算される(S4)。
【0033】
次に、制御部にて、吸光度1と吸光度2の差分を演算し(S5)、更に変換係数6700を乗じる(S6)。更に、必要に応じて、測定装置や測定用容器の個体差を補正するため、校正係数を乗じ(S7)、温度補正係数(S8)を乗じることで、測定対象物の抗酸化値を算出する。このように、遷移金属を含む試薬が加えられた測定対象物の吸光度1から、遷移金属が含まれていない測定対象物の吸光度2を差し引くことにより、測定対象物自体の着色がキャンセルするように補正される。算出された抗酸化能は、図示しない測定装置に測定結果として表示される(S9)。
【0034】
以上のような測定方法によって測定した各測定対象物の抗酸化能を図3に示す。図3に示すように、抗酸化物質を多く含む緑茶飲料や赤ワインほど、高い抗酸化能を示した。なお、図3の縦軸は、対象物に含まれる抗酸化物質の割合を示す。このように、本実施形態においては、測定対象物のもつ抗酸化力、遷移金属に対する還元力を利用して測定が行われる。抗酸化能の原因物質であるカテキンやビタミンC、ポリフェノールといった抗酸化物質は、それぞれの物質の構造に応じて1個〜数個の電子を放出することで、自らが酸化されるとともに相手分子を還元する性質を持つことから、還元力、つまり測定対象物から放出される電子の数によって抗酸化能の指標とすることができる。銅や鉄、亜鉛といった遷移金属は、複数の安定な酸化還元状態をとることができ、これらの抗酸化物質と接触することで容易に還元される。すなわち、遷移金属に対する還元力を指標として測定対象物中の抗酸化能又は還元力を測定することができる。
【0035】
以上のように、本発明における測定キットを用いた測定方法では、従来のように蛍光強度の経時変化を見る必要がないため、短時間で容易に測定を行うことができる。また、従来のように化学発光や蛍光を用いる方法に比べ、測定装置の光学系等を簡素化することができるので、測定装置を小型化でき、安価に測定を行うことができる。また、測定キットは、既に試薬が透明容器に収容されており、更に注射針による挿入が可能な材質で透明容器の開口部がキャップにより閉塞されている、すなわち密閉されている。このため、キャップをしたまま透明容器中に測定対象物を注入することができ、また注入時及び測定時に測定対象物がこぼれることがなく、また異物混入のリスクもない。このように異物混入リスクが低く、また試薬が外部に飛び散ることもないため、食品の生産加工、流通、外食産業、果樹園といった現場等でも安全かつ容易な測定が可能であり、測定場所が限定されることがない。
【符号の説明】
【0036】
1…測定用キット
2…第1測定用容器
3…第2測定用容器
22・・・第1透明容器
22a、32a…開口部
23・・・試薬
25…第1フォトダイオード
26…第1発光ダイオード
32・・・第2透明容器
33・・・製剤
35…第2フォトダイオード
36…第2発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器と、
前記透明容器に封入された遷移金属を含む試薬と、
を具備する測定用容器。
【請求項2】
請求項1記載の測定用容器であって、
前記透明容器は開口部を有し、
前記開口部を閉塞する針の挿入が可能なキャップを
更に具備する測定用容器。
【請求項3】
請求項2記載の測定用容器であって、
前記遷移金属は銅である
測定用容器。
【請求項4】
請求項3記載の測定容器であって、
前記試薬は、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものである
測定用容器。
【請求項5】
請求項4記載の測定容器であって、
前記遷移金属のモル数は、前記透明容器の内容積1mLあたり0.01mモル〜10mモルの範囲である
測定用容器。
【請求項6】
第1透明容器に、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第1測定用容器と、
第2透明容器に、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第2測定用容器と、
を具備する測定用キット。
【請求項7】
第1透明容器に、硫酸銅、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第1測定用容器に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射する第1光源と、
前記第1光源から照射され、前記第1測定用容器を透過した光を受光する第1受光部と、
第2透明容器に、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び蒸留水を混合したものを水分除去したものが封入された第2測定用容器に対し、450nm〜500nmの波長の光を照射する第2光源と、
前記第2光源から照射され、前記第2測定用容器を透過した光を受光する第2受光部と、
と、
を具備する測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−17663(P2011−17663A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163643(P2009−163643)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(503332134)日研ザイル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】