説明

測定管理装置,測定管理方法および測定管理プログラム

【課題】測定機器からの出力を補正するための校正値のばらつきを排除し,測定の精度を向上させることが可能となる技術を提供する。
【解決手段】校正実行制御部22は,校正のための測定機器の出力と基準値との比較により得られた校正値を設定データ記憶部23に記憶する。校正値取得部14は,設定データ記憶部23から校正により得られた測定機器の校正値を取得し,校正値蓄積記憶部15に蓄積して記憶する。校正値算定部16は,所定の算出手法により,校正値蓄積記憶部15に記憶された複数の校正値から測定に用いる測定機器の校正値を算定する。校正値設定部17は,算定された測定に用いる測定機器の校正値を,設定データ記憶部23の該当測定機器の構成値として設定する。測定実行制御部24は,測定時に,設定データ記憶部23に設定された測定に用いる測定機器の校正値を用いて,測定機器からの出力を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
測定機器を有する測定システムにおいて,測定の管理を行う測定管理装置,測定管理方法および測定管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
何らかの測定を行う場合において,測定の信頼性向上のために,測定に使用する機器の校正が,通常に行われている。例えば,音響測定分野においてはマイクロホンなどの測定機器の校正が,振動試験分野においては加速度ピックアップセンサなどの測定機器の校正が行われる。
【0003】
このような測定機器の校正は,例えば,本測定前にその都度行われ,本測定では,得られた校正データによる測定機器の出力値の補正が行われる。また,測定機器の校正がその日の最初の本測定前に1度だけ行われ,その日の本測定ではすべて最初の校正データによる出力値の補正が行われるという場合もある。
【0004】
ところで,多軸力センサ設置したマニピュレータにおいて,多軸力センサの校正を行う技術が知られている。また,計器の過去の校正データとオンラインによる計器のドリフト検出とにより,信頼性を確保した計器の校正周期を提示する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−011168号公報
【特許文献2】特開2005−043121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
測定機器の校正には,人手による校正作業を含む場合も多い。例えば人手による校正作業を含むような場合には,校正により得られた校正値に,作業者の熟練度などに起因するばらつきが発生し,その後の本測定の結果の信頼性が低くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は,上記の問題点の解決を図り,測定機器からの出力を補正するための校正値のばらつきを排除し,本測定の結果の信頼性を向上させることが可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
測定機器を有する測定システムにおける各種情報を管理する測定管理装置は,校正のための測定機器の出力と基準値との比較により得られた第一の校正値を取得する校正値取得部と,第一の校正値を蓄積して記憶する校正値蓄積記憶部と,校正値蓄積記憶部に記憶された複数の第一の校正値から,測定において測定機器からの出力を補正するために用いる第二の校正値を算定する校正値算定部と,第二の校正値を,測定において測定機器からの出力を補正するために用いる校正値として設定する校正値設定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
ばらつきが少ない信頼性の高い校正値による測定機器出力値の補正が可能となり,測定の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】音響測定システムの構成例を示す図である。
【図2】測定器制御部が有する設定データの例を説明する図である。
【図3】マイクロホン校正の流れを説明する図である。
【図4】人手によるマイクロホン校正作業の例を説明する図である。
【図5】マイクロホン校正時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【図6】音響測定の流れを説明する図である。
【図7】測定時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【図8】本実施の形態による測定管理部および測定器制御部の機能構成例を示す図である。
【図9】本実施の形態による校正値蓄積記憶部に記憶されたマイクロホンごとの蓄積校正値テーブルの例を示す図である。
【図10】本実施の形態の校正値取得部による校正値取得/蓄積記憶処理フローチャートである。
【図11】本実施の形態の校正値算定部および校正値設定部による校正値算定/設定処理フローチャートである。
【図12】本実施の形態によるマイクロホン校正の流れを説明する図である。
【図13】本実施の形態によるマイクロホン校正時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【図14】本実施の形態による音響測定の流れを説明する図である。
【図15】本実施の形態による音響測定時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【図16】本実施の形態によるマイクロホン校正値算定時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【図17】加速度ピックアップセンサを使用した振動試験の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,本実施の形態について,図を用いて説明する。
【0012】
本実施の形態では,音響測定を例として,説明を行う。
【0013】
音響測定では,音圧レベルの測定や,音響パワーレベルの測定などが行われる。音圧レベルは,被測定装置から発せられる音の大きさを表すプレッシャーレベルである。音響パワーレベルは,被測定装置全体から発せられる音圧レベルのエネルギー量を表す。
【0014】
図1は,音響測定システムの構成例を示す図である。
【0015】
図1に示す音響測定システムでは,無響音室に,測定機器であるマイクロホン3が10個配置されている。無響音室に配置された各マイクロホン3は,測定室にある測定器2に接続されている。このような無響音室に,測定対象である被測定装置4が配置され,音響測定が実行される。
【0016】
測定器2は,測定を管理/制御するためのコンピュータ1に接続されている。測定器2は,感度の切り替えや,マイクロホン3の取得信号をコンピュータ1に中継する役割を果たす。
【0017】
コンピュータ1は,測定管理部10(または10’),測定器制御部20を備える。測定管理部10(または10’),測定器制御部20は,それぞれ,コンピュータ1が備えるCPU,メモリ等のハードウェアと,ソフトウェアプログラムとにより実現される。
【0018】
測定管理部10(または10’)は,ユーザの指示を受け付け,マイクロホンの校正の実行,本測定の実行等の測定全般を管理する。なお,測定管理部10は,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えており,測定管理部10’は,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えていないものとする。
【0019】
測定器制御部20は,測定器2を制御し,マイクロホンの校正時に測定器2を介して得られるマイクロホン出力値から校正値を算出したり,本測定時に測定器2を介して得られるマイクロホン出力値から音圧レベルや音響パワーレベルなどを算出する。測定器制御部20は,測定器2を介して,各マイクロホン3からの出力値を取得する。
【0020】
図1に示す音響測定システムでは,測定管理部10(または10’)を実現するプログラムが,例えばOLE(Object Linking and Embedding)インタフェース等により,測定器制御部20を実現するプログラムをコントロールする。なお,測定管理部10(または10’)と測定器制御部20とが,1つのアプリケーションプログラムによって実現されてもよい。また,測定器2がコンピュータの機能を備え,測定器制御部20が,測定器2内部のコンピュータで実現されてもよい。
【0021】
図1に示すような音響測定システムにおいて,本測定を実行する前に,各マイクロホン3の校正が行われる。校正により得られた各マイクロホン3の校正値は,測定器制御部20が有する設定データに記録される。
【0022】
図2は,測定器制御部が有する設定データの例を説明する図である。
【0023】
図2(A)は,設定データの例を示す。図2(A)に示す設定データにおいて,“Configuration ”には,測定に使用される#1〜#10のマイクロホン3ごとの設定条件や,マイクロホン3のグループ化(GR(#1),GR(#2),... )の設定などが記録されている。“Measurement ”には,1/3オクターブやFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)などの各測定項目の設定条件などが記録されている。“Display ”には,画面表示の設定条件などが記録されている。
【0024】
図2(B)は,マイクロホン3ごとの設定条件の詳細な例を示す。図2(B)には,特に#1のマイクロホン3についての設定条件の例が示されているが,他の#2〜#10のマイクロホン3についても同様である。図2(B)に示すマイクロホン3の設定条件の詳細において,“Gain Adjust (利得調整)”が,マイクロホン3の校正値を示すパラメータである。すなわち,マイクロホン3の校正により得られた校正値は,設定データの該当マイクロホン3の設定条件における“Gain Adjust ”に記録される。
【0025】
ここで,図1に示す音響測定システムにおいて,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えていない測定管理部10’が用いられた場合を想定した例について説明する。
【0026】
図3は,マイクロホン校正の流れを説明する図である。
【0027】
ここでは,図1に示す音響測定システムにおいて,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えていない測定管理部10’が用いられた場合の,マイクロホン校正の流れを説明する。
【0028】
図1に示す音響測定システムにおいて,測定管理部10’は,ユーザからマイクロホン校正の指示を受けると,マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS100)。マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)において,ユーザからマイクロホン3の校正開始の指示を受けると,測定管理部10’は,測定器制御部20に対してマイクロホン3の校正開始の指示を送る(ステップS101)。
【0029】
測定器制御部20は,測定管理部10’からマイクロホン3の校正開始の指示を受けると,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS102)。
【0030】
以下,各マイクロホン3の校正が実行される(ステップS103)。
【0031】
具体的には,ユーザが,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)の校正手順の指示に従って,マイクロホン校正器を用いた校正作業を行う(ステップS104)。
【0032】
図4は,人手によるマイクロホン校正作業の例を説明する図である。
【0033】
図4に示すように,ユーザは,マイクロホン校正器5を手で持ち,傾斜して取り付けられたマイクロホン3に差し込む。このとき,ユーザは,15秒間の校正時間の間,マイクロホン3の面とマイクロホン校正器5の低面とが面接触した状態を,安定に保つようにする。マイクロホン校正器5からは,1[kHz],94[dB]の基準音源が出力されている。
【0034】
図3において,測定器制御部20は,校正のためのマイクロホン3の出力と基準値との比較により,校正値を算出する(ステップS105)。測定器制御部20は,例えば,マイクロホン3の出力が93.5[dB]であれば,基準値94[dB]との差分−0.5[dB]を修正するように,校正値を決定する。
【0035】
測定器制御部20は,算出された校正値を,設定データに記憶する(ステップS106)。測定器制御部20は,マイクロホン3の校正完了を通知する(ステップS107)。ここでは,1つのマイクロホン3の校正が終了するごとに,校正完了の通知が行われるものとする。
【0036】
ステップS104からステップS107に示す手順が,校正を行うすべてのマイクロホン3について実行される。
【0037】
測定管理部10’は,校正を行うすべてのマイクロホン3についての校正完了の通知を受けた後に,ユーザからマイクロホン3の校正終了の指示を受けると,測定器制御部20に対してマイクロホン3の校正終了の指示を送る(ステップS108)。
【0038】
測定器制御部20は,測定管理部10’からマイクロホン3の校正終了の指示を受けると,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)を閉じる(ステップS109)。
【0039】
また,測定管理部10’は,マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)を閉じる(ステップS110)。
【0040】
図5は,マイクロホン校正時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【0041】
図5に示すように,コンピュータ1の表示画面には,マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)と,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)とが表示されている。
【0042】
本測定時には,設定データに記録された校正値は,マイクロホン出力電圧の感度係数として使用され,測定値の結果に大きな影響を及ぼす。
【0043】
図6は,音響測定の流れを説明する図である。
【0044】
ここでは,図1に示す音響測定システムにおいて,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えていない測定管理部10’が用いられた場合の,音響測定の流れを説明する。
【0045】
図1に示す音響測定システムにおいて,測定管理部10’は,ユーザから測定の指示を受けると,測定画面(測定管理画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS120)。測定画面(測定管理画面)において,ユーザから測定項目の指定および測定開始の指示を受けると,測定管理部10’は,測定器制御部20に対して,測定開始の指示を送る(ステップS121)。
【0046】
測定器制御部20は,測定管理部10’から測定開始の指示を受けると,測定画面(測定器制御画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS122)。
【0047】
図7は,測定時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【0048】
図7に示すように,コンピュータ1の表示画面には,測定画面(測定管理画面)と,測定画面(測定器制御画面)とが表示されている。測定画面(測定管理画面)では,ユーザは,測定項目などを指定することができる。
【0049】
図6において,測定器制御部20は,測定を実行する(ステップS123)。このとき,測定器制御部20は,マイクロホン出力値に対して設定データに記録された校正値を用いた補正を行い,測定値を得る。
【0050】
例えば,音圧レベルの測定では,1つのマイクロホンを用いて,被測定装置4から発せられる音の大きさを表すプレッシャーレベルの測定を行う。測定により得られる音圧レベル測定値Lpは,例えば以下の式(1)により,マイクロホン出力値から算出される。
【0051】
Lp=10*Log((P1 /P0 2 ) [dB] ・・・式(1)
式(1)において,P1 =マイクロホン出力値*校正値K[Pa]である。また,音圧測定の基準値P0 =20[μPa]である。
【0052】
音響パワーレベルの測定では,音響測定の国際規格であるISO7779の規定により,複数ポイントでの測定が行われる。ここでは,10個のマイクロホン3による測定が行われるものとする。音響パワーレベルの測定では,個々の測定ポイントの測定値から,測定対象の被測定装置4から出される音響パワーの指定空間全体のエネルギー量が,規定の計算式で算出される。音響パワーレベル測定値LPは,例えば以下の式(2)により,n個の各マイクロホン出力値から得られた音圧レベル測定値Lp(i)から算出される。なお,ここでは,n=10である。
【0053】
【数1】

図6において,測定器制御部20は,測定が終了すると,測定管理部10’に測定終了を通知する(ステップS124)。
【0054】
測定管理部10’は,測定器制御部20から測定終了の通知を受けると,測定器制御部20から,測定結果を取得する(ステップS125)。測定管理部10’は,取得した測定結果の画面表示や印刷などを行う(ステップS126)。
【0055】
ここまで,図1に示す音響測定システムにおいて,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えていない測定管理部10’が用いられた場合を想定した例について説明した。
【0056】
しかし,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えていない測定管理部10’を用いた場合には,測定時に使用する校正値の信頼性に問題があるため,測定結果の信頼性が低くなってしまうという問題がある。
【0057】
図4で説明したマイクロホン校正作業において,マイクロホン3は取り付け位置ごとに取り付け角度が異なるため,ユーザがマイクロホン3の傾斜に合わせて安定した状態にマイクロホン校正器5を保つことは,非常に困難である。校正実行中にマイクロホン校正器5が安定しないために,面接触が離れてしまうことも多々あり,校正結果にバラツキが生じてしまう。このように,作業者の熟練度や測定器2のヒートラン時間により校正値が一定値に定まらないことが多い。
【0058】
このような状況で,校正と測定とを繰り返すと,測定結果に差異が発生する。多数のマイクロホン3を同時に使用する音響パワーレベルの測定では,校正誤差が助長されるため,測定結果は更なる影響を受け,正確な測定が実施できなくなってしまう。
【0059】
そのため,高精度の測定を行うためには,安定した信頼性の高い校正値による補正精度の向上が重要となる。
【0060】
以下,図1に示す音響測定システムにおいて,安定した信頼性の高い校正値を得るために,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えた測定管理部10を用いた場合の例を説明する。
【0061】
図8は,本実施の形態による測定管理部および測定器制御部の機能構成例を示す図である。
【0062】
本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えた測定管理部10は,入力受付部11,表示処理部12,校正実行管理部13,校正値取得部14,校正値蓄積記憶部15,校正値算定部16,校正値設定部17,測定実行管理部18を備える。また,測定器制御部20は,表示処理部21,校正実行制御部22,設定データ記憶部23,測定実行制御部24を備える。
【0063】
測定管理部10において,入力受付部11は,ユーザによる指示,指定などの入力を受け付ける。
【0064】
表示処理部12は,ユーザへの情報提供画面や,ユーザによる指示,指定などの入力画面などを,コンピュータ1の表示画面上に表示する。
【0065】
校正実行管理部13は,測定器制御部20に対してマイクロホン3の校正開始を指示するなど,マイクロホン3の校正の全般を管理する。
【0066】
校正値取得部14は,マイクロホン3の校正により得られた校正値を取得する。例えば,校正値取得部14は,マイクロホン3の校正後に,測定器制御部20の設定データ記憶部23に記憶されたマイクロホン3の校正値を取得する。校正値取得部14は,取得された校正値を,マイクロホン3ごとに,校正値蓄積記憶部15に蓄積して記憶する。
【0067】
校正値蓄積記憶部15は,校正値取得部14により取得されたマイクロホン3の校正値を,マイクロホン3ごとに,蓄積して記憶する記憶装置である。
【0068】
図9は,本実施の形態による校正値蓄積記憶部に記憶されたマイクロホンごとの蓄積校正値テーブルの例を示す図である。
【0069】
図9に示すように,校正値蓄積記憶部15では,過去のマイクロホン3の校正により得られた校正値が,校正が行われた日時の情報が付加されて,マイクロホン3ごとに,蓄積されて記憶されている。
【0070】
図10は,本実施の形態の校正値取得部による校正値取得/蓄積記憶処理フローチャートである。
【0071】
校正値取得部14は,あるマイクロホン3についての校正の終了が確認されると,測定器制御部20の設定データ記憶部23に記憶された設定データから,該当マイクロホン3の校正値を取得する(ステップS10)。また,校正値取得部14は,コンピュータ1の時計機能から日付/時間を取得する(ステップS11)。
【0072】
校正値取得部14は,取得された校正値に,取得された日付/時刻を校正日時として付加したレコードを,該当マイクロホン3の蓄積校正値テーブルに追加して記憶する(ステップS12)。
【0073】
校正値取得部14は,図10に示すような処理を,校正が行われたマイクロホン3ごとに実行する。
【0074】
図8において,校正値算定部16は,所定の算定手法またはユーザにより指示された算定手法により,校正値蓄積記憶部15に記憶された過去の複数の校正値から,測定に用いる校正値を算定する。測定に用いる校正値の算定手法としては,例えば,所定期間内の校正値の平均値や,所定回数の校正値の重み付け平均値などの統計的手法がある。
【0075】
校正値設定部17は,校正値算定部16により算定された校正値を,測定器制御部20の設定データ記憶部23に記憶された設定データの該当マイクロホン3の校正値として設定する。測定器制御部20では,設定データ記憶部23に記憶された設定データの該当マイクロホン3の校正値が,測定管理部10の校正値算定部16により算定された校正値で上書きされたかたちとなる。
【0076】
図11は,本実施の形態の校正値算定部および校正値設定部による校正値算定/設定処理フローチャートである。
【0077】
校正値算定部16は,音圧レベル,音響パワーレベルなどの測定項目や,ユーザの指定などから,測定に使用するマイクロホン3を特定する(ステップS20)。例えば,図2に示す設定データでは,“Measurement ”に測定項目ごとの設定条件として,測定に使用するマイクロホン3のグループ(GR(#1),GR(#2),... )が設定されている。校正値算定部16は,測定器制御部20の設定データ記憶部23に記憶された設定データから,該当測定項目の測定に使用するマイクロホン3を特定することができる。
【0078】
校正値算定部16は,校正値蓄積記憶部15に記憶された,特定されたマイクロホン3の蓄積校正値テーブルから,所定の複数の校正値を取得する(ステップS21)。所定のの複数の校正値とは,例えば所定期間内,所定回数分等の校正値や,ユーザに指定された期間,回数等の校正値などである。
【0079】
校正値算定部16は,取得された複数の校正値から,所定の算定手法またはユーザにより指示された算定手法により,測定に用いる校正値を算定する(ステップS22)。
【0080】
校正値設定部17は,算定された測定値を,測定器制御部20の設定データ記憶部23に,該当マイクロホン3の校正値として設定する(ステップS23)。
【0081】
校正値算定部16および校正値設定部17は,図11に示すような処理を,測定に使用するすべてのマイクロホン3ごとに実行する。
【0082】
なお,測定に使用する校正値の算定や,算定された校正値の設定の実行タイミングは,マイクロホン3の校正直後に,マイクロホン3の校正後から測定までの間に,測定を行うたびになど,任意である。
【0083】
図8において,測定実行管理部18は,測定器制御部20に対して測定の開始を指示するなど,音響測定の全般を管理する。
【0084】
測定器制御部20において,表示処理部21は,ユーザへの情報提供画面などを,コンピュータ1の表示画面上に表示する。
【0085】
校正実行制御部22は,測定管理部10からのマイクロホン3の校正実行の指示を受けると,測定器2を制御し,マイクロホン3の校正を行う。校正実行制御部22は,測定器2から得られた校正のためのマイクロホン3の出力と基準値との比較により,そのマイクロホン3の校正値を算出する。校正実行制御部22は,算出された校正値を,設定データ記憶部23に記憶された設定データの該当マイクロホン3の校正値として設定する。
【0086】
設定データ記憶部23は,例えば図2に示すような設定データを記憶する記憶装置である。
【0087】
測定実行制御部24は,測定管理部10からの測定実行の指示を受けると,測定器2を制御し,目的とする音響測定を行う。測定実行制御部24は,測定器2から得られたマイクロホン3の出力値から,目的とする音響測定の測定値を算出する。このとき,測定実行制御部24は,マイクロホン3の出力値に対して,設定データ記憶部23に記憶された設定データに設定された校正値を用いた補正を行う。
【0088】
図12は,本実施の形態によるマイクロホン校正の流れを説明する図である。
【0089】
ここでは,図1に示す音響測定システムにおいて,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えた測定管理部10が用いられた場合の,マイクロホン校正の流れを説明する。
【0090】
測定管理部10において,入力受付部11がユーザからマイクロホン校正の指示を受けると,表示処理部12は,マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS30)。マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)において,ユーザからマイクロホン3の校正開始の指示を受けると,校正実行管理部13は,測定器制御部20に対してマイクロホン3の校正開始の指示を送る(ステップS31)。
【0091】
測定器制御部20において,校正実行制御部22が測定管理部10からマイクロホン3の校正開始の指示を受けると,表示処理部21は,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS32)。
【0092】
以下,各マイクロホン3の校正が実行される(ステップS33)。
【0093】
具体的には,ユーザが,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)の校正手順の指示に従って,マイクロホン校正器5を用いた校正作業を行う(ステップS34)。
【0094】
測定器制御部20において,校正実行制御部22は,校正のためのマイクロホン3の出力と基準値との比較により,校正値を算出する(ステップS35)。
【0095】
校正実行制御部22は,算出された校正値を,設定データ記憶部23の設定データに記憶する(ステップS36)。校正実行制御部22は,マイクロホン3の校正完了を通知する(ステップS37)。ここでは,1つのマイクロホン3の校正が終了するごとに,校正完了の通知が行われるものとする。
【0096】
測定管理部10において,校正実行管理部13が測定器制御部20からマイクロホン3の校正完了の通知を受けると,校正値取得部14は,設定データ記憶部23の設定データから,該当マイクロホン3の校正値を取得する(ステップS38)。
【0097】
校正値取得部14は,取得された校正値を,校正値蓄積記憶部15の該当マイクロホン3の蓄積校正値テーブルに,蓄積して記憶する(ステップS39)。
【0098】
ステップS34からステップS39に示す手順が,校正を行うすべてのマイクロホン3について実行される。
【0099】
測定管理部10において,校正を行うすべてのマイクロホン3についての校正完了の通知を受けた後に,入力受付部11がユーザからマイクロホン3の校正終了の指示を受けると,校正実行管理部13は,測定器制御部20に対してマイクロホン3の校正終了の指示を送る(ステップS40)。
【0100】
測定器制御部20において,校正実行制御部22が測定管理部10からマイクロホン3の校正終了の指示を受けると,表示処理部21はマイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)を閉じる(ステップS41)。
【0101】
また,測定管理部10において,表示処理部12は,マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)を閉じる(ステップS42)。
【0102】
なお,本実施の形態では,同じマイクロホン3の端子は,毎回,測定器2の同じ差込口に差し込まれることを前提としている。マイクロホン3の端子の差込口を変えなければ,特にマイクロホン3と測定器の差込口との対応を設定しなくても,同じマイクロホン3の校正値は,常に同じ蓄積校正値テーブルに記録される。マイクロホン3の端子の差込口を変える場合には,同じマイクロホン3の校正値が同じ蓄積校正値テーブルに記録されるようにするために,例えばユーザがその対応を測定管理部10で設定する必要がある。
【0103】
図13は,本実施の形態によるマイクロホン校正時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【0104】
図13に示すように,コンピュータ1の表示画面には,マイクロホン3の校正画面(測定管理画面)と,マイクロホン3の校正画面(測定器制御画面)とが表示されている。図5に示すコンピュータ1の表示画面と比較すると,図13に示すマイクロホン3の校正画面(測定管理画面)に校正データ格納ボタンがあるのがわかる。図12に示す処理の流れでは,測定管理部10は,マイクロホン3の校正が行われるごとに自動的に校正値の蓄積記憶を行っている。図13に示すマイクロホン3の校正画面(測定管理画面)において,ユーザにより校正データ格納ボタンが押下されたときに,測定管理部10が校正値の蓄積記憶を行うようにしてもよい。
【0105】
図14は,本実施の形態による音響測定の流れを説明する図である。
【0106】
ここでは,図1に示す音響測定システムにおいて,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定機能を備えた測定管理部10が用いられた場合の音響測定の流れを説明する。
【0107】
測定管理部10において,入力受付部11がユーザから測定の指示を受けると,表示処理部12は,測定画面(測定管理画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS50)。
【0108】
図15は,本実施の形態による音響測定時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【0109】
図15に示すように,コンピュータ1の表示画面には,測定画面(測定管理画面)と,測定画面(測定器制御画面)とが表示されている。測定画面(測定管理画面)では,ユーザは,マイクロホン校正値算定画面表示のボタン押下や,測定項目などの指定を行うことができる。
【0110】
図14において,入力受付部11がユーザからマイクロホン校正値算定画面表示の指示を受けると,表示処理部12は,マイクロホン校正値算定画面(測定管理画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS51)。
【0111】
図16は,本実施の形態によるマイクロホン校正値算定時のコンピュータ表示画面の例を示す図である。
【0112】
図16に示すように,コンピュータ1の表示画面には,マイクロホン校正値算定画面(測定管理画面)が表示されている。図16に示すマイクロホン校正値算定画面(測定管理画面)では,ユーザは,測定に使用する校正値の算出のために用いる過去の校正値の期間の指定や,算定手法の指定などを行うことができる。
【0113】
図16に示すマイクロホン校正値算定画面(測定管理画面)では,ユーザは,期間や算定手法の指定後に,測定に使用する校正値の計算を実行することができる。ユーザは,測定に使用する校正値の算出結果を参照し,そのまま測定に使用するか否かを判断することができる。
【0114】
このように,ユーザが測定に使用する校正値の算定手法を指示できるようにすることにより,ユーザが算定された校正値が妥当か否かを判断し,ユーザが妥当と判断できる校正値を使用した測定を行うことができるようになる。
【0115】
図14において,入力受付部11は,ユーザによる測定に使用する校正値の算定のための指定の入力を受け付ける(ステップS52)。
【0116】
校正値算定部16は,ユーザの指定に従って,校正値蓄積記憶部15から該当期間の校正値を取得する(ステップS53)。校正値算定部16は,取得された複数の校正値から,ユーザに指定された算出方法を用いて,測定で使用する校正値を算定する(ステップS54)。例えば,ユーザにより過去3ヶ月間のマイクロホン3の校正により得られた校正値の平均値の算定が指定された場合に,校正値算定部16は,校正値蓄積記憶部15から過去3ヶ月間の校正値を取得し,それらの平均値を算出して,測定で使用する校正値とする。
【0117】
校正値設定部17は,測定で使用する校正値を,設定データ記憶部23に記憶された設定データに設定する(ステップS55)。測定器制御部20では,設定データ記憶部23に記憶された設定データの該当マイクロホン3の校正値が更新される(ステップS56)。
【0118】
ステップS53からステップS56に示す手順が,測定で使用するすべてのマイクロホン3について実行される。
【0119】
入力受付部11がユーザから測定項目の指定および測定開始の指示を受けると,測定実行管理部18は,測定器制御部20に対して,測定開始の指示を送る(ステップS57)。
【0120】
測定器制御部20において,測定実行制御部24が測定管理部10から測定開始の指示を受けると,表示処理部21は,測定画面(測定器制御画面)をコンピュータ1の表示画面に表示する(ステップS58)。
【0121】
測定実行制御部24は,目的とする測定を実行する(ステップS59)。このとき,測定実行制御部24は,マイクロホン出力値に対して,設定データ記憶部23に記憶された設定データに設定された校正値を用いた補正を行い,測定値を得る。
【0122】
測定実行制御部24は,測定が終了すると,測定管理部10に測定終了を通知する(ステップS60)。
【0123】
測定管理部10において,測定実行管理部18は,測定器制御部20から測定終了の通知を受けると,測定器制御部20から測定結果を取得する(ステップS61)。測定実行管理部18は,取得した測定結果の画面表示や印刷などを行う(ステップS62)。
【0124】
このように,本実施の形態の測定システムでは,過去の測定機器の校正により得られた複数の第一の校正値から,統計的手法を用いて第二の校正値を算定し,統計的手法を用いて算定された第二の校正値を用いて測定を行う。そのため,作業者の熟練度や測定器2のヒートラン時間に起因する校正結果のばらつきが排除され,安定した信頼性の高い校正値による測定機器出力値の補正が可能となり,測定の精度が向上する。
【0125】
以上説明した測定管理部10および測定器制御部20による処理は,コンピュータが備えるCPU,メモリ等のハードウェアとソフトウェアプログラムとにより実現することができ,そのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することも,ネットワークを通して提供することも可能である。
【0126】
以上,本実施の形態について説明したが,本発明はその主旨の範囲において種々の変形が可能であることは当然である。
【0127】
例えば,本実施の形態では,音響測定分野における測定の例を示したが,他の分野における測定であってもよい。音響測定分野以外の測定分野としては,例えば加速度ピックアップセンサを使用した振動試験分野などがある。
【0128】
図17は,加速度ピックアップセンサを使用した振動試験の例を示す図である。
【0129】
図17に示す測定システムでは,振動試験開始前に測定機器である加速度ピックアップセンサ202の校正が行われ,校正により得られた校正値を用いた被試験装置204の振動試験が行われる。
【0130】
加速度ピックアップセンサ202は,加振台201の加振レベルの検出を行い,検出レベルを測定管理/制御システム200に伝える。測定管理/制御システム200は,検出レベルより加振台201が規定加振レベルとなるよう,出力レベル調整を行う。
【符号の説明】
【0131】
1 コンピュータ
2 測定器
3 マイクロホン
4 被測定装置
5 マイクロホン校正器
10 測定管理部
11 入力受付部
12 表示処理部
13 校正実行管理部
14 校正値取得部
15 校正値蓄積記憶部
16 校正値算定部
17 校正値設定部
18 測定実行管理部
20 測定器制御部
21 表示処理部
22 校正実行制御部
23 設定データ記憶部
24 測定実行制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定機器を有する測定システムにおける各種情報を管理する測定管理装置であって,
校正のための測定機器の出力と基準値との比較により得られた第一の校正値を取得する校正値取得部と,
前記第一の校正値を蓄積して記憶する校正値蓄積記憶部と,
前記校正値蓄積記憶部に記憶された複数の第一の校正値から,測定において前記測定機器からの出力を補正するために用いる第二の校正値を算定する校正値算定部と,
前記第二の校正値を,測定において前記測定機器からの出力を補正するために用いる校正値として設定する校正値設定部とを備える
ことを特徴とする測定管理装置。
【請求項2】
前記校正値蓄積記憶部に記憶された複数の第一の校正値から前記第二の校正値を算定するための算定手法の,ユーザによる指示入力を受け付ける入力受付部を備え,
前記校正値算定部は,前記ユーザにより指示された算定手法を用いて,前記校正値蓄積記憶部に記憶された複数の第一の校正値から前記第二の校正値を算定する
ことを特徴とする請求項1に記載された測定管理装置。
【請求項3】
測定機器を有する測定システムにおける各種情報を管理する測定管理装置のコンピュータによる測定管理方法であって,
前記コンピュータが,
校正のための測定機器の出力と基準値との比較により得られた第一の校正値を取得する過程と,
前記第一の校正値を,前記コンピュータがアクセス可能な記憶装置に蓄積して記憶する過程と,
前記記憶装置に記憶された複数の第一の校正値から,測定において前記測定機器からの出力を補正するために用いる第二の校正値を算定する過程と,
前記第二の校正値を,測定において前記測定機器からの出力を補正するために用いる校正値として設定する過程とを実行する
ことを特徴とする測定管理方法。
【請求項4】
測定機器を有する測定システムにおける各種情報を管理する測定管理装置のコンピュータが実行するプログラムであって,
前記コンピュータに,
校正のための測定機器の出力と基準値との比較により得られた第一の校正値を取得する手順と,
前記第一の校正値を,前記コンピュータがアクセス可能な記憶装置に蓄積して記憶する手順と,
前記記憶装置に記憶された複数の第一の校正値から,測定において前記測定機器からの出力を補正するために用いる第二の校正値を算定する手順と,
前記第二の校正値を,測定において前記測定機器からの出力を補正するために用いる校正値として設定する手順とを
実行させるための測定管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−216949(P2010−216949A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63091(P2009−63091)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】