説明

測定装置および測定方法

【課題】高価な光学測定器と用いることなく、環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、高い精度で測定が行えるようにする。
【解決手段】R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本101、RGB値が(n,n,0)の第2色標本102、およびRGB値が(n,n,n)の第3色標本103と、測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子104と、所定の光源のもとで第1色標本101,第2色標本102,第3色標本103,およびセンサ素子104とを同時に撮像してカラー画像データを得る撮像部105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子を撮像したカラー画像データを用いて物質の測定を行う測定装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスセンサの分野では,色の変化を利用して対象のガスを検知する方法が広く研究されている。一般に広く行われているガスの測定方法としては、ガス検知管を用いるものがある(非特許文献1参照)。この方法では、雰囲気や測定対象気体中のガス濃度を、ガス検知管の色の変化として検出するものであり、簡易な測定を可能としている。このガス検知管による方法は、目視による読み取りが簡単に行えるという利点があるが、色の変化領域と未変化領域の境界が明確でないため、読み取る人による読み取り誤差がかなりの濃度範囲で生じてしまうという欠点がある。
【0003】
また、検知紙によりガス濃度を測定する方法も知られている。例えば、シックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドについては、「ビル管理法」や「学校環境衛生の基準」において測定が義務づけられており、簡易測定法が用いられている。用いられている簡易測定法には、検知紙を用いるものが多くあり、検知紙の色変化から濃度に変換を行っている。検知紙としては、例えば、簡易ホルムアルデヒド測定器(理研計器株式会社製)がある(非特許文献2参照)。
【0004】
検知紙を用いた測定においても、簡易であるという利点があるが、前述したガス検知管の場合と同様に、使用者による読み取り誤差が存在する。このため、検知紙を用いて誤差を防いで正確な測定を行う場合、測定箇所で検知紙における光の反射率を測定するなど、光学測定器を併用した装置が必要になる。また、このような光学測定器は一般に高価であり、測定を行う装置も高価になる。このため、検知紙を用いる正確な測定では、測定が容易に行えず、また、コストの上昇を招く。
【0005】
一方、基準となるカラーチャートとの比較により、目視の判断でも読み取り誤差を低減するようにした技術がある。例えば、光化学オキシダントの原因物質であり環境基準が定められている二酸化窒素の測定が行える「空気の汚れはかるくん」がある(非特許文献3参照)。しかしながら、この技術においても、やはり目視に頼っているため、光学測定器を用いるような精度は望めない。また、場合によっては、検知紙の色変化の範囲にカラーチャートが対応せず、比較が困難な場合もある。
【0006】
上述したようなセンサ素子の色変化を利用した簡便な測定において、発明者らは、高価な光学測定器を用いることなく、より安価なカラー撮像装置を用いた測定の技術を提案している(特許文献1,2参照)。これらの技術では、発明者らが開発したオゾン,二酸化窒素,およびホルムアルデヒドなどと反応することで色が変化する高感度なセンサ素子を用い、色標本とセンサ素子とを同時に撮像することで、センサ素子の色(色変化)を数値化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−116234号公報
【特許文献2】特開2009−133634号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】http://www.gastec.co.jp/products/frame.php?place=seihin/c1.htm
【非特許文献2】http://www.rikenkeiki.co.jp/products/densitometer/FP-30.html
【非特許文献3】http://www.kenis.co.jp/onlineshop/2008/06/1165215.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したカラー撮像による測定では、センサ素子の色変化に対応させた色標本を用いるようにしている。例えば、対象物質との接触により青から白に色変化するセンサ素子を用いる場合、白および水色などの濃度が異なる複数の青からなる色標本を用いている。
【0010】
このため、まず、センサ素子に対応して各々異なる色標本を用意する必要があり、汎用性に劣るという問題がある。また、上述した技術では、光源の状態により撮像の結果が変化するため、異なる光源下で測定した結果が異なるなど、光学測定器を用いる場合と比較して高い精度が得られないという問題がある。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、高価な光学測定器と用いることなく、環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、高い精度で測定が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る測定装置は、R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本、RGB値が(n,n,0)の第2色標本、およびRGB値が(n,n,n)の第3色標本(n=自然数)と、測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子と、所定の光源のもとで第1色標本,第2色標本,第3色標本,およびセンサ素子とを同時に撮像してカラー画像データを得る撮像手段と、撮像手段が撮像して得られた第1色標本,第2色標本,および第3色標本のカラー画像データより、光源によるRGB色空間のベクトルとして与えられる各々のRGB値を各々第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値として求める第1画像処理手段と、撮像手段が撮像して得られたセンサ素子のカラー画像データよりRGB値をセンサRGB値として求める第2画像処理手段と、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、基準RGB色空間に対する光源によるRGB色空間の差からなる補正値を求める解析手段と、補正値を用いてセンサRGB値より補正センサRGB値を算出する補正手段と、設定されている換算式を用いて補正センサRGB値よりセンサ素子が物質との接触による色変化に対応する物質の濃度値を算出する濃度算出手段とを備える。
【0013】
上記測定装置において、解析手段は、第1基準RGB値のR値を1行1列の値とし、第1基準RGB値のG値を2行1列の値とし、第1基準RGB値のB値を3行1列の値とし、第2基準RGB値のR値より第1基準RGB値のR値を減じた値を1行2列の値とし、第2基準RGB値のG値より第1基準RGB値のG値を減じた値を2行2列の値とし、第2基準RGB値のB値より第1基準RGB値のB値を減じた値を3行2列の値とし、第3基準RGB値のR値より第2基準RGB値のR値を減じた値を1行3列の値とし、第3基準RGB値のG値より第2基準RGB値のG値を減じた値を2行3列の値とし、第3基準RGB値のB値より第2基準RGB値のB値を減じた値を3行3列の値とした3行3列の行列の逆行列を補正値として算出し、補正手段は、逆行列を用いてセンサRGB値より補正センサRGB値を算出すればよい。
【0014】
上記測定装置において、nの最大値は255であり、第1色標本は、RGB値が(255,0,0)であり、第2色標本は、RGB値が(255,255,0)であり、第3色標本はRGB値が(255,255,255)であればよい。
【0015】
また、本発明に係る測定方法は、R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本、RGB値が(n,n,0)の第2色標本、RGB値が(n,n,n)の第3色標本(n=自然数)、および測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子を所定の光源のもとで同時に撮像してカラー画像データを得る第1ステップと、第1色標本,第2色標本,および第3色標本のカラー画像データより、光源によるRGB色空間のベクトルとして与えられる各々のRGB値を各々第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値として求める第2ステップと、センサ素子のカラー画像データよりRGB値をセンサRGB値として求める第3ステップと、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、基準RGB色空間に対する光源によるRGB色空間の差からなる補正値を求める第4ステップと、補正値を用いてセンサRGB値より補正センサRGB値を算出する第5ステップと、設定されている換算式を用いて補正センサRGB値よりセンサ素子が測定対象とする物質との接触による色変化に対応する物質の濃度値を算出する第6ステップとを備える。
【0016】
上記測定方法において、第1基準RGB値のR値を1行1列の値とし、第1基準RGB値のG値を2行1列の値とし、第1基準RGB値のB値を3行1列の値とし、第2基準RGB値のR値より第1基準RGB値のR値を減じた値を1行2列の値とし、第2基準RGB値のG値より第1基準RGB値のG値を減じた値を2行2列の値とし、第2基準RGB値のB値より第1基準RGB値のB値を減じた値を3行2列の値とし、第3基準RGB値のR値より第2基準RGB値のR値を減じた値を1行3列の値とし、第3基準RGB値のG値より第2基準RGB値のG値を減じた値を2行3列の値とし、第3基準RGB値のB値より第2基準RGB値のB値を減じた値を3行3列の値とした3行3列の行列の逆行列を補正値として算出し、行列の逆行列を用いてセンサRGB値より補正センサRGB値を算出するようにすればよい。
【0017】
上記測定方法において、nの最大値は255であり、第1色標本は、RGB値が(255,0,0)であり、第2色標本は、RGB値が(255,255,0)であり、第3色標本はRGB値が(255,255,255)であればよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明によれば、高価な光学測定器と用いることなく、環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、高い精度で測定が行えるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における測定装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における測定装置の動作(測定方法)について説明するフローチャートである。
【図3】図3は、センサRGB値による測定濃度と実際の濃度との相関を示す相関図である。
【図4】図4は、補正センサRGB値による測定濃度と実際の濃度との相関を示す相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における測定装置の構成を示す構成図である。この測定装置は、R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本101、RGB値が(n,n,0)の第2色標本102、およびRGB値が(n,n,n)の第3色標本103とを備える。ここで、nは自然数である。また、基準RGB空間は、例えば、正方RGB色空間である。
【0021】
また、この装置は、測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子104と、所定の光源(不図示)のもとで第1色標本101,第2色標本102,第3色標本103,およびセンサ素子104とを同時に撮像してカラー画像データを得る撮像部105とを備える。
【0022】
また、この装置は、撮像部105が撮像して得られた第1色標本101,第2色標本102,および第3色標本103のカラー画像データより、光源によるRGB色空間のベクトルとして与えられる各々のRGB値を各々第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値として求める第1画像処理部106と、撮像部105が撮像して得られたセンサ素子104のカラー画像データよりRGB値をセンサRGB値として求める第2画像処理部107とを備える。
【0023】
また、この装置は、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、基準RGB色空間に対する光源によるRGB色空間の差からなる補正値を求める解析部108と、補正値を用いてセンサRGB値より補正センサRGB値を算出する補正部109と、設定されている換算式を用いて補正センサRGB値よりセンサ素子104が物質との接触による色変化に対応する物質の濃度値を算出する濃度算出部110とを備える。
【0024】
ここで、センサ素子104は、例えば、ろ紙などの繊維より構成された担体に、オゾンガスと反応して色が変化する色素を含んだ検知成分および保湿剤が担持されたオゾン検知素子(NTTアドバンステクノロジ株式会社製オゾン検知紙「オゾン見太郎」)である。この場合、センサ素子104は、環境の状態としてオゾンにより色が変化し、オゾンの濃度により異なる色の変化を示す。
【0025】
また、nの最大値が255であり、第1色標本101は、RGB値が(255,0,0)であり、第2色標本102は、RGB値が(255,255,0)であり、第3色標本103は、RGB値が(255,255,255)であればよい。この場合、第1色標本101は、典型的な赤色となる。また、第2色標本102は、B値が0であり、典型的な黄色となる。また、第3色標本103は、白となる。
【0026】
例えば、コンピュータによる画像処理において、一般にRGBの各色は8ビットで表現され(sRGBなど)、各色の輝度範囲は、0〜255の256(=28)段階で表現されている。上述の例では、第1色標本101は、R値が最大(255)であり、第2色標本102は、R値およびG値が最大(255)であり、第3色標本103は、R値,G値,およびB値が最大(255)である。これらのRGB値は、例えば、色温度5000Kの光源を用いて測定されるRGB値が、上述した値となっている第1色標本101,第2色標本102,および第3色標本103を用いればよい。なお、「RGB値が(255,0,0)の赤」は、国際照明委員会(CIE)のXYZで記述すれば、(39.33,21.23,1.82)の赤である。また、「RGB値が(255,255,0)の黄色」は、CIEのXYZで記述すれば、(75.84,91.33,12.99)の黄色である。
【0027】
撮像部105は、例えば、多色光学フィルターによりカラー化を実現した固体撮像素子を備え、撮像によりカラー画像データを生成するデジタルスチルカメラである。撮像部105は、対象物を撮像することにより、対象物のカラー画像データを生成して出力する。例えば、撮像部105は、いわゆる携帯電話が備えるカメラ機能部であってもよい。
【0028】
以下、本実施の形態における測定装置の動作(測定方法)について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
まず、ステップS201で、撮像部105が、第1色標本101,第2色標本102,第3色標本103、およびセンサ素子104を所定の光源のもとで同時に撮像してカラー画像データを得る。例えば、撮像部105の撮像可能領域内に、第1色標本101,第2色標本102,第3色標本103、およびセンサ素子104を配置しておけばよい。また、センサ素子104は、対象の環境(空気)に、設定されている時間放置(曝露)した後のものである。従って、環境に測定対象の物質(ガス)が含まれていれば、変色してることになる。
【0030】
次に、ステップS202で、第1画像処理部106が、撮像部105が撮像したカラー画像データを処理し、この画像データのなかの第1色標本101,第2色標本102,および第3色標本103の部分より、色標本画像状態を算出する。例えば、第1画像処理部106は、各部分より所定の画素数(例えば6000画素)分の領域を取り出し、取り出した各領域の各々の画素の値の平均値を求める。画素の値は、赤成分(Rチャンネル),緑成分(Gチャンネル),および青成分(Bチャンネル)毎の輝度値であり、第1画像処理部106は、取り出した各領域において、複数の画素のR成分,G成分,およびB成分毎に、輝度値の平均値を算出し、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値とする。なお、平均値に限らず、最頻値を用いてもよい。また、取り出す領域は、例えば使用者の指示操作により設定すればよい。
【0031】
次に、ステップS203で、第2画像処理部107が、撮像部105が撮像したカラー画像データを処理し、この画像データのなかのセンサ素子104の部分より、所定の画素数(例えば6000画素)分の領域を取り出し、上述同様にすることで、センサRGB値を求める。なお、この場合においても、取り出す領域は、例えば使用者の指示操作により設定すればよい。
【0032】
次に、ステップS204で、解析部108が、上述したようにすることで第1画像処理部106が求めた第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、この撮像時の光源によるRGB色空間が、基準RGB色空間よりどの程度ずれている(ゆがんでいる)かを求め(解析し)、補正値を求める。
【0033】
第1色標本101,第2色標本102,および第3色標本103の各RGB値は、基準RGB色空間のベクトルとして与えられている。また、撮像時(測定時)の光源によるRGB色空間の状態は、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値に現れていることになる。従って、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値により決定されるRGB色空間を、基準RGB色空間に変換できる(戻せる)ような補正値を求めればよい。
【0034】
このように、R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本、RGB値が(n,n,0)の第2色標本、およびRGB値が(n,n,n)の第3色標本(n=自然数)を所定の光源のもとで撮像装置により同時に撮像してカラー画像データを取得し、第1色標本,第2色標本,および第3色標本のカラー画像データより、光源によるRGB色空間のベクトルとして与えられる各々のRGB値を各々第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値として求める第1ステップと、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、基準RGB色空間に対する光源によるRGB色空間の差からなる補正値を求める第2ステップと、補正値を用いて撮像装置が撮像した画像を補正する第3ステップとで色空間の補正をすることが、本発明の要点となる。
【0035】
例えば、第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値により決定されるRGB色空間は、以下の数(1)で示される第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値による行列Tで表すことができる。なお、第1基準RGB値=(R1,G1,B1)、第2基準RGB値=(R2,G2,B2)、第3基準RGB値=(R3,G3,B3)とする
【0036】
【数1】

【0037】
また、基準RGB色空間は、3行3列の単位行列とすることができるので、補正行列として行列Tの逆行列T’を求めればよい。
【0038】
次に、ステップS205で、補正部109が、上述したように求めた逆行列T’と、センサRGB値(Rs,Gs,Bs)を1行3列とした行列との積に、255(=n)をかけることで、補正センサRGB値(Rs’,Gs’,Bs’)を求める。
【0039】
この後、ステップS206で、濃度算出部110が、補正部109により求められた補正線センサRGB値を設定されている換算式に代入し、濃度値を求める。
【0040】
以下、実際に測定した結果を用いて説明する。まず、解析部108が求めた補正値による補正部109の補正を行わず、センサRGB値(Rs,Gs,Bs)を設定されている換算式に代入して濃度値を求めた場合について説明する。このようにして求めた複数の測定サンプルによる測定濃度と、実際の測定サンプルにおける濃度とを比較すると、図3に示すように、両者の間に高い相関は得られていない。
【0041】
上述した補正なしの結果に対し、補正値により求めた補正センサRGB値(Rs’,Gs’,Bs’)を設定されている換算式に代入して濃度値を求めると、図4に示すように、測定濃度値を実際の濃度値との間には、高い相関が得られるようになる。この場合の相関値は、0.9以上となっている。
【0042】
また、以上の測定では、光源として、白色蛍光灯を用い、撮像は、携帯電話機のカメラを用いている。携帯電話機のカメラで撮像(撮影)して得られた画像データを、メモリーカードを利用し、第1画像処理部106,第2画像処理部107,解析部108,補正部109,および濃度算出部110が実現されているコンピュータに取り込んで処理している。このコンピュータは、CPUと主記憶装置と外部記憶装置とネットワーク接続装置となどを備え機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作することで、上述した各機能が実現される。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させるようにしてもよい。
【0043】
以上に説明した本実施の形態によれば、高価な光学測定器と用いることなく、環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、高い精度で測定が行える。上述したように、本実施の形態によれば、安価で様々な場面で用いることができるいわゆるデジタルカメラを使用し、測定により色を変えるセンサ素子の状態を数値化することができる。また、数値化の際に問題となる撮影毎に異なる照明の状態や、撮像基材の違いによる画像の色の違いが、補正値により補正されるようになるので、より正確な測定が行える。
【0044】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上述では、オゾン検知紙,UVラベルを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、ホルムアルデヒドを検出して色が変化する試験紙,排ガスの粉じんを測定可能とした「空気の汚れチェッカー」,およびpH(水素イオン濃度)試験紙など、環境により色が変化する他のセンサ素子を用いる場合も同様に本発明は適用可能である。また、温度,湿度,オゾンに限らず窒素酸化物や硫黄酸化物などの大気汚染物質の存在(濃度)などの環境により、色が変化する他のセンサ素子を用いる場合も同様である。
【0045】
また、例えばGPS機能を備えたカメラ付き携帯電話機を用いることで、容易に環境マップ図が作成可能であり、これに加えて自動画像撮影機能を併用すれば、環境マップの時系列図の作成が容易に可能である。また、特別な改造を必要とせずに、市販されているカメラ付き携帯電話機を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
101…第1色標本、102…第2色標本、103…第3色標本、104…センサ素子、105…撮像部、106…第1画像処理部、107…第2画像処理部、108…解析部、109…補正部、110…濃度算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本、RGB値が(n,n,0)の第2色標本、およびRGB値が(n,n,n)の第3色標本(n=自然数)と、
測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子と、
所定の光源のもとで前記第1色標本,前記第2色標本,前記第3色標本,および前記センサ素子とを同時に撮像してカラー画像データを得る撮像手段と、
前記撮像手段が撮像して得られた前記第1色標本,前記第2色標本,および前記第3色標本のカラー画像データより、前記光源によるRGB色空間のベクトルとして与えられる各々のRGB値を各々第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値として求める第1画像処理手段と、
前記撮像手段が撮像して得られた前記センサ素子のカラー画像データよりRGB値をセンサRGB値として求める第2画像処理手段と、
第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、前記基準RGB色空間に対する前記光源による前記RGB色空間の差からなる補正値を求める解析手段と、
前記補正値を用いて前記センサRGB値より補正センサRGB値を算出する補正手段と、
設定されている換算式を用いて前記補正センサRGB値より前記センサ素子が前記物質との接触による色変化に対応する前記物質の濃度値を算出する濃度算出手段と
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、
前記解析手段は、
前記第1基準RGB値のR値を1行1列の値とし、
前記第1基準RGB値のG値を2行1列の値とし、
前記第1基準RGB値のB値を3行1列の値とし、
前記第2基準RGB値のR値より第1基準RGB値のR値を減じた値を1行2列の値とし、
前記第2基準RGB値のG値より第1基準RGB値のG値を減じた値を2行2列の値とし、
前記第2基準RGB値のB値より第1基準RGB値のB値を減じた値を3行2列の値とし、
前記第3基準RGB値のR値より第2基準RGB値のR値を減じた値を1行3列の値とし、
前記第3基準RGB値のG値より第2基準RGB値のG値を減じた値を2行3列の値とし、
前記第3基準RGB値のB値より第2基準RGB値のB値を減じた値を3行3列の値とし
た3行3列の行列の逆行列を前記補正値として算出し、
前記補正手段は、前記逆行列を用いて前記センサRGB値より前記補正センサRGB値を算出する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の測定装置において、
前記nの最大値は255であり、前記第1色標本は、RGB値が(255,0,0)であり、前記第2色標本は、RGB値が(255,255,0)であり、前記第3色標本はRGB値が(255,255,255)であることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
R値,G値,B値の座標からなる基準RGB色空間のベクトルとして与えられるRGB値が(n,0,0)の第1色標本、RGB値が(n,n,0)の第2色標本、RGB値が(n,n,n)の第3色標本(n=自然数)、および測定対象の物質との接触により色が変化するセンサ素子を所定の光源のもとで同時に撮像してカラー画像データを得る第1ステップと、
前記第1色標本,前記第2色標本,および前記第3色標本のカラー画像データより、前記光源によるRGB色空間のベクトルとして与えられる各々のRGB値を各々第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値として求める第2ステップと、
前記センサ素子のカラー画像データよりRGB値をセンサRGB値として求める第3ステップと、
第1基準RGB値,第2基準RGB値,および第3基準RGB値より、前記基準RGB色空間に対する前記光源による前記RGB色空間の差からなる補正値を求める第4ステップと、
前記補正値を用いて前記センサRGB値より補正センサRGB値を算出する第5ステップと、
設定されている換算式を用いて前記補正センサRGB値より前記センサ素子が測定対象とする物質との接触による色変化に対応する前記物質の濃度値を算出する第6ステップと
を備えることを特徴とする測定方法。
【請求項5】
請求項4記載の測定方法において、
前記第1基準RGB値のR値を1行1列の値とし、
前記第1基準RGB値のG値を2行1列の値とし、
前記第1基準RGB値のB値を3行1列の値とし、
前記第2基準RGB値のR値より第1基準RGB値のR値を減じた値を1行2列の値とし、
前記第2基準RGB値のG値より第1基準RGB値のG値を減じた値を2行2列の値とし、
前記第2基準RGB値のB値より第1基準RGB値のB値を減じた値を3行2列の値とし、
前記第3基準RGB値のR値より第2基準RGB値のR値を減じた値を1行3列の値とし、
前記第3基準RGB値のG値より第2基準RGB値のG値を減じた値を2行3列の値とし、
前記第3基準RGB値のB値より第2基準RGB値のB値を減じた値を3行3列の値とし
た3行3列の行列の逆行列を前記補正値として算出し、
前記行列の逆行列を用いて前記センサRGB値より前記補正センサRGB値を算出する
ことを特徴とする測定方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の測定方法において、
前記nの最大値は255であり、前記第1色標本は、RGB値が(255,0,0)であり、前記第2色標本は、RGB値が(255,255,0)であり、前記第3色標本はRGB値が(255,255,255)であることを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−93277(P2012−93277A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241876(P2010−241876)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】