説明

測定装置

【課題】複数の検出素子を用いることなく、測定範囲を確保することができる測定装置を提供すること。
【解決方法】検出器12と、検出器12の向きを可変可能に支持する支持部材13と、支持部材13を駆動して検出器12の向きを可変させる駆動部材と、を有する測定装置1aであって、駆動部材16は、自らの支承部132によって回動および傾倒可能に支持された支持部材13に当接して支持部材13を回動させる回動部と支持部材13を傾倒させる傾倒部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置に関するものであり、詳しくは、センサや撮像装置による熱画像を用いた輻射温度検出を行うことができる測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種センサや撮像装置などといった検出器の向きを切り替えることができる測定装置が知られている。たとえば、特許文献1には、赤外線アレイセンサが形成された回転部の回転軸とステッピングモータとが機械的に接続され、この回転部が回転軸周りに回転可能に構成されている。このような構成によれば、回転軸を回転させることにより赤外線アレイセンサが形成された回転部が回転するから、回転部の回転方向の広範囲にわたって輻射温度検出を行うことができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、赤外線アレイセンサは回転動作しか許容されておらず、回転方向に直交する方向に移動させることができない。このため、赤外線アレイセンサの回転方向に直交する方向の測定範囲が小さく、充分に測定を行うことができないという問題点を有する。
【0004】
回転方向と直交する方向への測定範囲を確保する構成としては、たとえば特許文献2に開示される構成がある。特許文献2には、複数の焦電型熱検出素子を、回転方向に直角な方向に直列的に配設する構成が開示されている。このような構成によれば、焦電型熱検出素子群を回転させることにより、回転方向に広範囲にわたって測定を行うことができるとともに、焦電型熱検出素子群の配列方向にも測定範囲を拡げることが可能となる。しかしながら特許文献2に記載の構成では、複数の焦電型熱検出素子が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−1954号公報
【特許文献2】特開平6−94535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、複数の検出素子を用いることなく、測定範囲を確保することができる測定装置を提供すること、または、複数の検出素子を用いることなく、回転方向に直交する方向への測定範囲を確保することができる測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、検出器と、該検出器の向きを可変可能に支持する支持部材と、該支持部材を駆動して前記検出器の向きを可変させる駆動部材と、を有する測定装置であって、前記駆動部材は、自らの支承部によって回動および傾倒可能に支持された前記支持部材に当接して該支持部材を回動させる回動部と前記支持部材を傾倒させる傾倒部とを有することを要旨とするものである。なお、駆動部材は、必ずしも一部材によって形成する必要はない。すなわち、回動部が形成された部材と傾倒部が形成された部材との2部材により形成してもよい。
【0008】
前記支持部材は、前記傾倒部としての傾倒カムが当接する傾倒当接部を有していることが好ましい。このように、傾倒部として傾倒カムを採用し、支持部材の傾倒当接部により支持部材を傾倒させることで、支持部材を簡略な構成により傾倒させることができる。
【0009】
前記支持部材は、前記回動部としての前記回動カムが当接する回動当接部を有していることが好ましい。このように、回動部として回動カムを採用し、支持部材の回動当接部により支持部材を回動させることで、支持部材を簡略な構成により回動させることができる。
【0010】
前記支承部は、回動および傾倒が可能な支点であって、前記支承部と前記傾倒当接部が前記傾倒カムに係合する係合部とを通る直線が、径方向にのみ移動可能に前記支持部材をガイドするガイド部を有し、該ガイド部によって前記支持部材が前記傾倒カムの回動に伴って径方向に移動し、前記支持部材が傾倒することが好ましい。このように構成すると、ガイド部によって、支承部と傾倒当接部が傾倒カムに係合する係合部とを通る直線が、径方向にのみ移動可能で、それ以外の方向への移動を阻止することができるので、支持部材が傾倒カムの回動に伴い共回りを防止するとともに径方向にスムーズに移動させることができる。
【0011】
前記ガイド部を有するケース体に、前記支承部を支持する支持部を形成し、前記支持部材を回動および傾倒が可能に支持させたことが好ましい。
【0012】
前記傾倒カムは溝カムであって、該溝カムによって前記傾倒当接部の径方向の位置が規制されることが好ましい。このように、傾倒当接部は溝カムによって径方向の位置が規制されるとともに、ガイド部によって径方向にのみ移動が可能に構成されるので、溝カムとガイド部とによって傾倒当接部の径方向と周方向における位置が規制され、支持部材を確実に傾倒させることができる。
【0013】
前記回動部としての回動カムと前記傾倒部としての傾倒カムとは、共にカム部材の同一平面に形成されていることが好ましい。このように回動カムと傾倒カムとを同一平面に形成することにより、軸方向への短縮化が図れる。
【0014】
前記カム部材は回動可能に構成され、該カム部材の回動中心の内側に傾倒カムを配設するとともに外側に回動カムを配設した構成であることが好ましい。このように構成すると、測定装置として例えば家庭内の居室の温度センサに適用される場合、居室の垂直方向(奥行き方向)と水平方向とでは測定範囲が異なっており、水平方向の方が測定範囲が広いときには、測定範囲が広い方を、支持部材が回動カムにより駆動された側で測定するようにすれば、回動カムは傾倒カムより駆動量が大きいので、位置精度を向上させることができる。
【0015】
前記支持部材を前記支持部に付勢する付勢手段を有していることが好ましい。このように構成すれば、付勢手段により支持部材と支持部とを常に当接させて支持部材を回動または傾倒させることにより、円滑な動作を実現させることができる。しかも、付勢手段により支持部材の意図しない回転を抑制することができる。ここで意図しない回転とは、回転動力源から伝達される回転動力以外による回転をいうものとする。例えば、回転動力源以外の外力による回転や、検出器の支持部材の慣性による回転などが挙げられる。
【0016】
前記支持部材は、前記付勢手段とは異なるフリクション機構を介して支持部に支持されていることが好ましい。このように構成すると、付勢手段とは異なるフリクション機構を有しているので、支持部材の意図しない回転を抑制するために必要な負荷を考慮して付勢手段の付勢力を設定する必要がなく、付勢手段の付勢力を最小にすることができる。したがって、支持部材の支持部に対する付勢力を最小にすることにより、摺動ロスを抑制し、摺動部の耐久性、駆動部材を駆動する駆動源の駆動力を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出器を支持する支持部材が、傾倒カムによって回転出力軸に直交する方向へ傾倒することができる。したがって、検出器を支持する支持部材を回転させるだけの構成に比較して、測定範囲を広くすることができる(回転方向に直交する方向にも測定範囲を拡げることができる)。また、単一の検出器を用いる構成であっても、回転方向に直交する方向に測定範囲を拡げることができるから、複数の検出器を備える構成としなくとも、測定範囲を拡げることができる。また、傾倒カムの形状を変えることで、検出器の軌跡を様々に変えることができ、測定範囲を拡げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる測定装置の要部の構成を、模式的に示した分解斜視図である。
【図2】カム部材の構成を模式的に示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観斜視図である。
【図3】ケーシングの構成を模式的に示した外観斜視図である。
【図4】検出器の支持部材の傾倒当接部と、ケーシングの内部に形成されるガイド部と、カム部材の傾倒カム(溝カム)との係合関係を、模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明の第一の実施形態にかかる測定装置の動作を模式的に示した平面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態にかかる測定装置の動作を模式的に示した平面図である。
【図7】本発明の第一の実施形態にかかる測定装置の動作を模式的に示した平面図である。
【図8】検出器の軌跡の変形例を模式的に示した平面図である。
【図9】カム部材の変形例を模式的に示した平面図である。
【図10】本発明の第二の実施形態にかかる測定装置の構成を模式的に示した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる測定装置1aの要部の構成を、模式的に示した分解斜視図である。図1に示すように、本発明の第一の実施形態にかかる測定装置1aは、回転動力源11と、検出器12(熱センサなど)と、検出器12の支持部材13と、ケーシング14と、蓋体15と、駆動部材としてのカム部材16aと、回転防止手段としての締め付けコイルバネ17と、ワッシャ18と、付勢手段としてのコイルバネ19と、回転規制部材20と、支承部支持部材21とを備える。
【0021】
回転動力源11には、従来公知の各種モータが適用できる。たとえば、従来公知の各種ステッピングモータが適用できる。
【0022】
検出器12(熱センサなど)には、従来公知の各種熱センサが適用できる。たとえば、従来公知の焦電型熱検出素子が適用できる。なお、本発明の第一の実施形態にかかる測定装置は、一個(単数)の検出器を備える構成を有する。
【0023】
検出器12の支持部材13は、検出器12(熱センサなど)を支持する部材である。検出器12の支持部材13は、検出器12が配設されて固定される筐体131と、この筐体131から突出する軸状の傾倒当接部133と、同じくこの筐体131から突出する軸状の回動当接部135とを有する。検出器12の支持部材13の筐体131は、略円筒形状に形成されるとともに、この検出器12の支持部材13の筐体131の一端側は、略半球形状に形成される。すなわち、検出器12の支持部材13の筐体131は、円筒と半球が接合された構成を有する。そして、この略半球形状に形成される部分に、検出器12(熱センサなど)が配設されて固定される。また、この筐体131の一端(すなわち、略半球形状に形成される部分の頂点)には、小径の略半球形状の支承部132が形成される。
【0024】
検出器12の支持部材13の筐体131の他端(円筒形状に形成される側の端部)には、軸状に突出する傾倒当接部133と、同じく軸状に突出する回動当接部135とが形成される。傾倒当接部133は、検出器12の支持部材13の筐体131の中心線(軸線)と略一致する中心線(軸線)を有するものであり、断面略円形に形成される。なお、支承部132は、筐体131の中心線(軸線)上に形成されている。傾倒当接部133の先端は、後述する傾倒カム(溝カム)161に係合可能に形成される。たとえば図1に示すように、傾倒当接部133の先端には、略球形状の係合部134が形成される。
【0025】
回動当接部135は、その中心線(軸線)が検出器12の支持部材13の筐体131の中心線(軸線)と略平行であり、検出器12の支持部材13の筐体131の中心線(軸線)から離れた位置に中心線(軸線)を有する。すなわち、回動当接部135は、傾倒当接部133から離れた位置に、傾倒当接部133に略平行に形成される。回動当接部135の断面形状は、特に限定されるものではないが、たとえば図1に示すように、断面略円形に形成される。また、回動当接部135の先端は、後述する回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)に係合(当接)可能に形成される。たとえば、図1に示すように、回動当接部の先端には、略球形状の係合部136が形成される。
【0026】
この検出器12の支持部材13は、後述するケーシング14の内部に配設することができる。そして、ケーシング14の内部に配設された状態で、中心線(軸線)を中心に回転することができる。
【0027】
駆動部材としてのカム部材16aは、回転動力源11からの回転動力によって回転し、検出器12の支持部材13を回転および傾倒(揺動)させる部材である。このカム部材16aは、略円盤形状の部材である。図2は、カム部材16aの構成を模式的に示した図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は外観斜視図である。このカム部材16aの片側表面には(すなわち、同一平面上には)、傾倒部としての傾倒カム(すなわち溝カム)161と、回動部としての回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)とが形成される。
【0028】
図2(a)に示すように、傾倒カム(溝カム)161は、第一の曲率を有する部分162と、第二の曲率を有する部分163と、変位部分164とを有する。第一の曲率を有する部分162と、第二の曲率を有する部分163とは、それぞれ略円弧形状に延伸する溝が形成される部分である。これらの第一の曲率を有する部分162と第二の曲率を有する部分163の曲率の中心は同じ位置にあり、かつ、これらの曲率の中心は、カム部材16aの回転中心(回転動力源11による回転の中心)に一致する。
【0029】
第一の曲率を有する部分162と第二の曲率を有する部分163とは、このカム部材の回転中心(回転動力源11による回転の中心)からの距離が相違する。すなわち、曲率の中心は同じであるが、第一の曲率を有する部分162の曲率半径と、第二の曲率を有する部分の曲率半径163とは、互いに相違する(換言すると、第一の曲率を有する部分162と第二の曲率を有する部分163は、同心円状に形成される)。本発明の第一実施形態においては、第一の曲率を有する部分162は、第二の曲率を有する部分163より、このカム部材16aの回転中心からの距離が大きい構成を有する。すなわち、第一の曲率を有する部分162の曲率半径が、第二の曲率を有する部分163の曲率半径より大きい構成を有する。
【0030】
変位部分164は、第一の曲率を有する部分162と、第二の曲率を有する部分163とを接続する部分である。この変位部分164の形状は特に限定されるものではない。たとえば図2(a)、(b)に示すように直線であっても良く、また所定の形状の曲線であっても良い。要は、第一の曲率を有する部分162と第二の曲率を有する部分163とを接続するものであればよい。
【0031】
回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)は、板状の部分である。具体的には、図2(a)、(b)に示すように、回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)は、傾倒カム(溝カム)161の外側に形成される。すなわち、傾倒カム(溝カム)が略C字状に形成される構成において、回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)は、傾倒カム(溝カム)161に囲まれる領域の外側に形成される。また、図2(a)(b)に示すように、カム部材16aの半径方向に延伸する構成を有する。
【0032】
図3は、ケーシング14の構成を模式的に示した外観斜視図である。このケーシング14は、内部に検出器12の支持部材13を収納することができる。ケーシング14は、内部が略中空の略円筒形状に形成される部材であり、その内部に、検出器12の支持部材13を遊挿することができる。
【0033】
ケーシング14の内部には、ガイド部141が形成される。ガイド部141は、ケーシング14の筐体の内周面から略中心に向かって突出する平板状の部分である。このガイド部141の面方向は、ケーシング14を円筒に見たてた場合における円筒の中心線(軸線)に対して直角な方向に平行な方向である。このガイド部141は、ケーシング14の筐体の半径方向に沿って、細長いスリット142が形成される。本発明の第一の実施形態においては、このスリット142が略U字形状の切り欠き状に形成される構成を有するが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、たとえば、ケーシング14の筐体の半径方向に沿って長い長孔であっても良い。
【0034】
図1に戻って説明する。蓋体15は、ケーシング14の一端の蓋となる部材である。この蓋体15は、略円形の底の浅いトレイ状の形状を有する。そして、トレイの底面に相当する面には、回転動力源11の回転出力軸111を遊挿可能な貫通孔151が形成される。
【0035】
回転規制部材20は、検出器12を支持する支持部材13が、意図しない回転をしないように、支持部材13の回転を規制するフリクション機構である。ここでいう意図しない回転とは、回転動力源11から伝達される回転動力以外による回転をいうものとする。たとえば、回転動力源11以外の外力による回転や、検出器12の支持部材13の慣性による回転などが挙げられる。
【0036】
このフリクション機構としての回転規制部材20は、中空の略円筒形状に形成される円筒部材とコイルバネ17とからなり、検出器12の支持部材13の傾倒当接部133に係合させるようになっている。詳しくは、この回転規制部材20の円筒部材に形成される貫通孔に、検出器12の支持部材13の傾倒当接部133を挿入させ、周方向に二箇所の切り欠き203が形成された締め付け部201にコイルバネ17を係合させるようになっている。したがって、締め付け部201はコイルバネ17によって撓まされるので、回転規制部材20と検出器12の支持部材13(の傾倒当接部133)とが相対的に回転させると両者の間に所定のフリクションを付与させることができる。円筒部材には、締め付け部201(具体的には、回転防止手段としての締め付けコイルバネ17が装着される部分)のほかに、ケーシング14のガイド部141に形成されるスリット142に係合(挿通)する係合部202と鍔部204を有している。なお、係合部202がスリット142に係合することにより、回転規制部材21の回転が阻止されるようになっている。
【0037】
フリクション機構について詳述する。回転規制部材20の円筒部材に形成された締め付け部材201は、上述の通り、その軸線方向に切り欠き203が形成されており、その半径方向にサイズが縮小可能に構成される。このような構成であれば、この締め付け部201の外周に、回転防止手段としての締め付けコイルバネ17が装着されると、切り欠き203によって締め付け部201の半径方向寸法が縮小し、回転規制部材20に挿入される検出器12の支持部材13の傾倒当接部133を締め付けることができる。また、フリクション機構として、図4に示すように、円筒部材の係合部202が係合することにより回転規制部材20の回転が阻止されるスリットが形成されたガイド部14がケーシング14の内壁部に形成されている。フリクション機構によって、検出器12の支持部材13が回転規制部材20に対して相対的回転可能となり、さらに、締め付け部201による締め付け力が、支持部材13の回転の負荷となる。したがって、支持部材13の意図しない回転(回転規制部材20に対する回転)を、防止することができる。
【0038】
回転規制部材20の係合部202は、その外周の形状が断面略小判型に形成される。すなわち、回転規制部材20の係合部202の外周には、互いに平行な二本の直線の辺が形成される。そして、これらの互いに平行な二本の直線の辺が、ケーシング14のガイド部141に形成されるスリット142に係合できる。
【0039】
図4は、傾倒当接部133に回転規制部材20が係合されている状態を示した斜視図である。図4に示すように、傾倒当接部133の係合部134近傍は、回転規制部材20の係合部202(略小判型に形成される部分)を介して、ケーシング14の内部に形成されるガイド部141のスリット142(略U字形状の切り欠き)に係合する。このため、傾倒当接部133は、ガイド部141のスリット142の形成方向(径方向)には往復動(揺動)できるが、それ以外の方向には変位できなくなる。また、傾倒当接部133の先端に形成される係合部134は、傾倒カム(溝カム)161に係合する。したがって、支承部支持部材21の支持部としての係合凹部211に対する傾倒角度が規制される。このように、検出器12の支持部材13の傾倒当接部133は、ケーシング14の内部に形成されるガイド部141のスリット142およびカム部材16aの傾倒カム161によって姿勢が規制されることになる。したがって、傾倒当接部133の往復動(ケーシング14の内部に形成されるガイド部141のスリット142に沿った変位)は、傾倒カム(溝カム)161により制御されることになる。
【0040】
支承部支持部材21は、検出器12の支持部材13の支承部132(小径の略半球状に形成される部分)を揺動可能かつ回転可能に支持する部材である。この支承部支持部材21には、検出器12の支持部材13の支承部132と係合可能な支持部としての係合凹部211が形成される。そして、検出器12の支持部材13の支承部132と支承部支持部材21の係合凹部211とが係合した状態で、支承部支持部材21がケーシング14に装着され固定され、ケース体を構成する。このように、検出器12の支持部材13の支承部132と支承部支持部材21の係合凹部211とが係合することにより、検出器12の支持部材13は、支承部支持部材21に対して(すなわちケーシング14に対して)、支承部132と係合凹部211の係合箇所を中心として、揺動可能および回転可能となる。
【0041】
このような部材を備える測定装置1a(本発明の第一の実施形態にかかる測定装置1a)の組み付け構造は、次のとおりである。
【0042】
回転動力源としてのモータ11が、ケーシング14の蓋体15の外側に装着される。この際に、モータ11の回転出力軸111が、この蓋体15に形成される貫通孔151に遊挿され、蓋体15の内部に突出する。そして、蓋体15の内部に突出する回転出力軸111の先端に、カム部材16aが装着され固定される。これにより、カム部材16aは、回転動力源としてのモータ11の回転動力により回転することができる。そして、モータ11が装着された蓋体15が、ケーシング14の一端に装着されて固定される。
【0043】
検出器12の支持部材13の傾倒当接部133の外周に、回転規制部材20が装着される(換言すると、検出器12の支持部材13の傾倒当接部133が、回転規制部材20の貫通孔に挿通される)。そして回転規制部材20の締め付け部201の外周に、締め付けコイルバネ17が装着される。さらに、係合部202の外周には、付勢部材としてのコイルバネ19およびワッシャ18が配設される。なお、図4に示すようにワッシャ18は、ガイド部141に当接しており、コイルバネ19は、ワッシャ18と鍔部204との間に配設される。
【0044】
そして、検出器12の支持部材13が、ケーシング14の他端(蓋体15が装着される側とは反対側の端部)から、ケーシング14の内部に挿入される。この際、傾倒当接部133の先端が、ケーシング14の内部に形成されるガイド部141のスリット142(略U字形状の切り欠きの内側)を通り、傾倒当接部133の先端の係合部134が、カム部材16aの傾倒カム(溝カム)161に係合するようにする。このとき係合部202がスリット142に係合される(図4参照)。
【0045】
第一の回動カム165および第二の回動カム166は、カム部材16aが回転することにより、検出器12の支持部材13の回動当接部135の先端の係合部136に当接可能となる。そして、第一の回動カム165および第二の回動カム166が回転することによって、検出器12の支持部材13の回動当接部135の先端の係合部136を押圧し、検出器12の支持部材13を回転させる。
【0046】
このため、回転規制部材20の締め付け部202は、検出器12の支持部材13が回転規制部材20に対して回転する際に(すなわち、ケーシング14に対して回転する際に)、検出器12の支持部材13の傾倒当接部133に摩擦力を与えることになり、検出器12の支持部材13の回転の負荷となる。このように、検出器12の支持部材13の(ケーシング14に対する)回転は、この摩擦力によって規制されることになる。なお、この摩擦力は、検出器12の支持部材13が回転動力源11からの回転動力以外の外力や慣性などによって回転せず、回転動力源11から回転動力が伝達された場合には回転できる程度の強さ力(負荷)である。すなわち、締め付けコイルバネ17による傾倒当接部133の締め付けは、検出器12の支持部材13の意図しない回転(回転動力源11以外からの外力や慣性による回転など)を防止するためのものであり、回転そのものができなくなるようにするものではない。
【0047】
図1に戻って説明する。ケーシング14の内部に検出器12の支持部材13が配設された状態で、ケーシング14の他端(蓋体15が装着される側とは反対側の端部)に、支承部支持部材21が装着される。この際に、支承部支持部材21に形成される係合凹部211に、検出器12の支持部材13の支承部132が係合するようにする。これにより、検出器12の支持部材13は、その支承部132が支承部支持部材21により支持される。前記のように、支承部支持部材21の係合凹部は、検出器12の支持部材13の支承部132を、回転可能かつ揺動可能に支持する。
【0048】
次に、本発明の第一の実施形態にかかる測定装置1aの動作について説明する。本発明の第一の実施形態にかかる測定装置1aは、検出器12の支持部材13が、その支承部132を中心として、ケーシング14の内部に形成されるガイド部141のスリット142の形成方向(径方向)に往復するように揺動できる。また、検出器12の支持部材13は、傾倒当接部133の中心軸を回転中心として回転運動を行うことができる。このように、検出器12の支持部材13は、その軸線方向に対して略直角の方向に揺動する動作と、軸線中心に回転する動作とが組み合わされた動作を行うことができる。このような動作は、カム部材16aによって制御される。
【0049】
図5から図7は、本発明の第一の実施形態にかかる測定装置1aの動作を模式的に示した平面図であり、カム部材16aに形成される傾倒カム(溝カム)161および第一の回動カム165および第二の回動カム166と、ケーシング14の内部に形成されるガイド部141と、検出器12の支持部材13に形成される傾倒当接部133および回動当接部135との位置関係を模式的に示した平面図である。
【0050】
まず図5(a)に示すように、回転動力源11から伝達される回転動力によって、カム部材16aが矢印a向きに回転する。図5(a)に示す状態においては、傾倒当接部133の先端の係合部134(図1参照)は、傾倒カム(溝カム)161の第一の曲率を有する部分162に係合している。この状態においては、カム部材16aの回転中心と傾倒カム(溝カム)161の第一の曲率を有する部分162の曲率の中心は一致しているから、カム部材16aが矢印aの向きに回転したとしても、カム部材16aの回転中心から傾倒カム(溝カム)161の傾倒当接部133の係合部134と係合している位置までの距離は不変である。したがって、傾倒当接部133の先端の係合部134は変位せず、検出器12の支持部材13は揺動しない。また、回動当接部135と第一の回動カム165、第二の回動カム166は当接していないから、検出器12の支持部材13には、回転させるような力も加わらない。
【0051】
図5(b)に示すように、カム部材16aが回転すると、傾倒カム(溝カム)161と傾倒当接部133の先端の係合部134との位置関係が変化し、傾倒当接部133の先端の係合部134は、傾倒カム(溝カム)161の変位部分164に到達する。傾倒カム(溝カム)161の変位部分164は、第一の曲率を有する部分162と第二の曲率を有する部分163とを接続する部分であり、カム部材16aの回転中心から溝カム161と傾倒当接部133の先端の係合部134が係合する位置までの距離は、変位部分164における位置に応じて変化する(すなわち、カム部材16aの回転角度に応じて変化する)。
【0052】
このため、傾倒当接部133の先端の係合部134が傾倒カム(溝カム)161の変位部分164に係合している状態で、カム部材16aが矢印aの向きに回転すると、図5(c)、図5(d)に示すように、傾倒当接部133の先端の係合部134が、傾倒カム(溝カム)161の位置に応じて(カム部材16aの回転角度に応じて)、矢印cの向きに変位する。したがって、全体として検出器12の支持部材13は、矢印cの向きに(すなわち回転出力軸に直交する向きであってケーシング14の径方向に)揺動する。
【0053】
図5(d)に示すように、カム部材16aが矢印aの向きに回転すると、傾倒当接部133の先端の係合部134が、傾倒カム(溝カム)161の変位部分164と第二の曲率を有する部分163の境界に到達する。そうすると、カム部材16aに形成される第一の回動カム165が、検出器12の支持部材13の回動当接部135の先端の係合部136に当接し、回動当接部135を押圧する。
【0054】
カム部材16aに形成される第一の回動カム165が、検出器12の支持部材13の回動当接部135の先端の係合部136に当接し押圧を開始すると、図6(a)に示すように、検出器12の支持部材13は、傾倒当接部133の中心線(軸線)を中心として回転を開始する。回動当接部135の先端の係合部136が第一の回動カム165に押圧されている間は、傾倒当接部133の先端の係合部134は、傾倒カム(溝カム)161の第二の曲率を有する部分163に係合している状態にある。傾倒カム(溝カム)161の第二の曲率を有する部分163の曲率の中心と、カム部材16aの回転中心とは一致しているから、カム部材16aが回転しても、傾倒当接部133の先端の係合部134は変位しない。したがって、この状態においては、検出器12の支持部材13は、傾倒当接部133の中心線(軸線)を中心とする回転運動のみを行うことになり、揺動はしない。そして、図6(b)に示すように、回動当接部135の先端の係合部136が傾倒カム(溝カム)161の端部に到達するまで、カム部材16aを矢印aの向きに回転させ、第一の回動カム165によって回動当接部135の先端の係合部136を押圧し、検出器12の支持部材13を回転させる。
【0055】
図6(b)に示すように回動当接部135の先端の係合部136が傾倒カム(溝カム)161の端部に達した場合には、回転動力源11は逆回転を開始する。そうすると、図6(c)に示すように、カム部材16aは矢印bの向きに回転を開始する。そして、図6(c)に示すように、傾倒当接部133の先端の係合部134が、傾倒カム(溝カム)161の第二の曲率を有する部分163に係合した状態のまま、第一の回動カム165が回動当接部135の先端の係合部136から離れ遠ざかる。ここで、回動当接部135の先端の係合部136は、第一の回動カム165および第二の回動カム166のいずれにも当接しないから、検出器12の支持部材13は回転しない。また、傾倒当接部133の先端の係合部134は、傾倒カム(溝カム)161の第二の曲率を有する部分163に係合した状態にあるから、カム部材16aが回転しても、検出器12の支持部材13は揺動しない。
【0056】
図6(d)に示すように、カム部材16aが矢印bの向きに回転し、傾倒当接部133の先端の係合部134が、傾倒カム(溝カム)161の第二の曲率を有する部分163から変位部分164に移動すると、傾倒当接部133の先端の係合部134は、カム部材16aの回転角度に応じて、矢印dの向きに変位を開始する。したがって、全体として検出器12の支持部材13は、矢印dの向きに(すなわち回転出力軸に直交する向きであってケーシング14の径方向に)揺動を開始する。
【0057】
図7(a)に示すように、カム部材16aの矢印bの向きへの回転が進行して、傾倒当接部133の先端の係合部134が、傾倒カム(溝カム)161の変位部分164から第一の曲率を有する部分162に到達すると、傾倒当接部133の先端の係合部134の変位(矢印dの向きへの変位、すなわち検出器12の支持部材13の矢印dの向きへの揺動)は終了する。そして図7(a)に示すように、第二の回動カム166が回動当接部135の先端の係合部136に当接して押圧を開始する。したがって、検出器12の支持部材13は、矢印bの向きへの回転を開始する。図7(a)に示すように、傾倒当接部133の先端の係合部134は、傾倒カム(溝カム)161の第一の曲率を有する部分162に係合しているから、カム部材16aが回転しても、傾倒当接部133の先端の係合部134は変位しない。したがって、検出器12の支持部材13は、矢印bの向きの回転運動のみを行うことになる。
【0058】
そして、図7(b)に示すように、回動当接部135の先端の係合部136が所定の位置に到達するまでの間、第二の回動カム166が回動当接部135の先端の係合部136を押圧して変位させ、検出器12の支持部材13を矢印bの向きに回転させる。その後、図5(a)に示す状態および動作に戻り、以降、このような動作を繰り返す。
【0059】
このような構成によれば、検出器12の支持部材13は、(1)回転出力軸を中心とする矢印aの向きへの回転、(2)回転出力軸と直交する向きへの揺動、(3)回転出力軸を中心とする矢印bの向きへの回転、(4)回転出力軸と直交する向きへの揺動、という動作を繰り返すことができ、検出器12は、略方形の軌跡を描いて測定を行うことができる。このように、検出器12の支持部材13を、回転させるのみならず、回転出力軸と直角の方向へ揺動させることができる。したがって、検出器12の支持部材13を回転させるのみの構成に比較して、検出器12による測定範囲を広くすることができる。
【0060】
なお、本発明の第一の実施形態においては、検出器が略方形の軌跡を描く構成を示したが、検出器の軌跡は略方形に限定されるものではない。図8は、検出器の軌跡の変形例を模式的に示した平面図である。検出器の軌跡は、図8(a)に示すようにくびれた長円形(瓢箪型)であってもよく、図8(b)に示すように、楕円であっても良い。また、図8(c)に示すように、検出器が蛇行するような軌跡を描いても良い(換言するとつづら折り状の軌跡であっても良い)。検出器の軌跡は、傾倒カム(溝カム)の形状を変更することにより、種々に変更することができる。
【0061】
本発明の第一の実施形態においては、回転防止手段としての締め付けコイルバネ17と、付勢手段としてのコイルバネ19とが、それぞれ別部材からなる構成を示したが、付勢手段としてのコイルバネ19により支持部材13の回転を規制することが可能であれば、コイルバネ19のみで、回転防止手段および付勢手段を兼用する構成であっても良い。すなわち、単一の圧縮コイルバネが、ケーシング14の形成されるガイド部141(実際にはガイド部141に当接したワッシャ18)と支持部材13の間に架設させる構成のみであっても良い。ただし、第一実施形態のように、回転防止手段と付勢手段とをそれぞれ別のコイルバネからなる構成によれば、付勢力と締め付け力のそれぞれを、最適な値に設定しやすくなる。一方、回転防止手段と付勢手段とを単一のコイルバネ(コイルバネ19)に兼用させる構成によれば、部品点数の削減を図ることができる。
【0062】
また、前記第一の実施形態においては、回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)は、傾倒カム(溝カム)161に囲まれる領域の外側に形成される構成を示したが、内側に形成される構成であっても良い。図9は、カム部材の変形例を模式的に示した平面図である。図9に示すようにこのカム部材16bは、傾倒カム161(第一の曲率を有する部分162、第二の曲率を有する部分163、変位部分164を備える。これらの構成は、前記実施形態にかかるカム部材16aと同じ構成である。)が形成されている。また、回動カム161が形成する円弧の内側に、第一の回動カム165および第二の回動カム166が形成される。このような構成であっても、前記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0063】
また、検出器を支持する支持部材を、傾倒カムによって回転出力軸に直交する方向へ傾倒させることができる。したがって、検出器を支持する支持部材を回転させるだけの構成に比較して、測定範囲を広くすることができる(回転方向に直交する方向にも測定範囲を拡げることができる)。また、単一の検出器を用いる構成であっても、回転方向に直交する方向に測定範囲を拡げることができるから、複数の検出器を備える構成としなくとも、測定範囲を拡げることができる。
【0064】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、傾倒部としての傾倒カムが面カムにより形成される構成を有する。図10は、本発明の第二の実施形態にかかる測定装置の構成を模式的に示した外観斜視図である。図10に示すように、本発明の第二実施形態にかかる測定装置5は、回転動力源51と、検出器52と、検出器52を支持する支持部材53と、駆動部材としてのカム部材54および回転出力軸511と、押圧部材55と、付勢手段としてのコイルバネ56とを備える。回転動力源51および検出器52は、第一の実施形態にかかる回転動力源11と検出器12と同じものが適用できる。なお、回転動力源51の回転出力軸511は、断面が略方形に形成され、回動部としての二辺5111,5112を有する。
【0065】
支持部材53は、基端部側(回転動力源11の側)が、略円柱状の形状を有し、先端部側は先細り形状(たとえば円錐形状や半球形状)に形成される。そして、本実施形態の場合、略円柱状の形状に形成される基端部側と先細り形状に形成される先端部側との境界に検出器52を搭載することができる検出器搭載部531が形成される。支持部材53の基端部には、傾倒当接部532が形成される。この傾倒当接部532は、カム部材54側に向かって突出する略棒状の部位である。また、検出器52の支持部材53の内部には、半径方向に延伸する長孔状のスリット531が形成される(A−A線断面図参照)。
【0066】
駆動部材としてのカム部材54は略円柱状または円盤状の部材であり、その端面が傾倒部としてのカム面541となっている。このカム面541は図10に示すように段差が設けられており、回転出力軸511の方向に高さが高くなっている部分と高さが低くなっている部分とを有している。また、このカム部材54には、押圧部材55を摺動可能に支持する係合腕542が形成されており、その先端に押圧部材55を係合可能に開口した略円筒状に形成された部分を有している。そしてこの円筒状に形成された部分には、コイルバネ56が収納可能されており、コイルバネ56の一端が係合腕542の底部に固定され、コイルバネ56の他端が押圧部材55に係止されて、押圧部材55を支持部材53の方向に付勢するようになっている。
【0067】
このような部材を有する測定装置5の組み付け構造は、次のとおりである。回転動力源51の回転出力軸511が突出する側にカム部材54が固定される。回転動力源51の回転出力軸511は、カム部材54の中心に形成される開口部を貫通して突出する。そして、突出する回転出力軸511が検出器52の支持部材53に形成されたスリット531に挿入される。また、押圧部材55が、検出器52の支持部材53およびカム部材54の係合腕542に取り付けられる。具体的には、押圧部材55の一端に形成される支持部としての係合部551と検出器52の支持部材53の支承部としての頂部533とを係合させるとともに、押圧部材55の他端をカム部材54の係合腕542に挿入する。なお、押圧部材55の他端をカム部材54の係合腕542に挿入する前に、カム部材54の係合腕542と押圧部材55の他端との間に、付勢部材としてのコイルバネ56を架設しておく。
【0068】
この付勢手段としてのコイルバネ56は、押圧部材55を矢印Bの向きに付勢する。したがって、検出器52の支持部材53は、押圧部材55によってカム部材54の側に付勢される。そして傾倒当接部532の先端が、面カムとしてカム部材54に形成されたカム面541に当接する。
【0069】
このような構成を有する測定装置5の動作は次のとおりである。回転動力源51の回転出力軸511が回転すると、検出器52の支持部材53が、回転出力軸511と一体に回転する。すなわち、支持部材53に形成されたスリット531の長尺方向の二辺5311,5312に、回転出力軸511の断面が略方形に形成された回動部としての二辺5111,5112がそれぞれ当接して、回転出力軸511が回転すると、回転出力軸511とともに支持部材53が一体に回転する。
【0070】
そして、傾倒当接部532の先端が、カム部材54のカム面541の高さが高い位置に達すると、傾倒当接部532がカム面541により押圧される。この結果、検出器52の支持部材53は、押圧部材55の支持部551に当接する部分(すなわち頂点)を支点として傾く。すなわち、図10に示すように、支持部材53に形成されたスリット531の長尺方向の二辺5311,5312に、回転出力軸511の断面が略方形に形成された二辺5111,5112がそれぞれ当接する。このため、支持部材53は、支持部材53のスリット531の形成方向(径方向)には往復動(揺動)できるが、周方向には変位できなくなる。
【0071】
回転出力軸511がさらに回転して、傾倒当接部532の先端が、カム部材54の高さが高い位置から離れると、付勢部材としてのコイルバネ56の付勢力により、検出器52の支持部材53は元の姿勢に戻る。このように、面カムを用いる構成であっても、検出器52の支持部材53を回転出力軸511に直交する方向へ傾倒させることができる。
【0072】
(実施の形態の主な効果)
検出器12を支持する支持部材13が、傾倒カム161によって回転出力軸に直交する方向へ傾倒することができる。したがって、検出器12を支持する支持部材13を回転させるだけの構成に比較して、測定範囲を広くすることができる。また、回転方向に直交する方向に測定範囲を拡げることができるから、複数の検出器を備える構成としなくとも、測定範囲を拡げることができる。また、傾倒カム161の形状を変えることで、検出器12の軌跡を様々に変えることができ、測定範囲を拡げることができる。
【0073】
傾倒部として傾倒カム161を採用し、支持部材13の傾倒当接部133により支持部材13を傾倒させることで、支持部材13を簡略な構成により傾倒させることができる。また、回動部として回動カム165,166を採用し、支持部材13の回動当接部135により支持部材13を回動させることで、支持部材13を簡略な構成により回動させることができる。
【0074】
検出器12の支持部材13は、回動および傾倒が可能な支承部132を有する。また、ケーシング14のガイド部141によって、支承部132と傾倒当接部133が傾倒カム161に係合する係合部とを通る直線が、径方向にのみ移動可能に構成される。そしてガイド部141によって、支持部材13の傾倒当接部133が傾倒カム161の回動に伴って径方向に移動し、支持部材13が傾倒する。このような構成によれば、傾倒カム161の回転によって支持部材13が回転することを防止できる。
【0075】
傾倒カム161として溝カムが適用され、溝カムによって傾倒当接部133の径方向の位置が規制される。このように、溝カムによって傾倒当接部133の位置が規制される構成であれば、傾倒当接部133は溝カムの形状に追従できるから、傾倒当接部133をカムに追従させるための付勢部材などが必要にならない。
【0076】
回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)と傾倒カム161とが同一平面に形成されている構成であれば、測定装置の軸線方向長さの短縮を図ることができる。
【0077】
支持部材13の回動中心の内側に傾倒カム161が配設されるとともに、外側に回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)が配設される構成によれば、回動カム(第一の回動カム165および第二の回動カム166)の可動距離を長くすることができ、支持部材の回転誤差に対する許容量を大きくすることができる。
【0078】
支持部材13を支承部132に付勢する付勢手段としてのコイルバネ19を有している構成によれば、支持部材13の軸線方向のがたつきを防止することができるので、支持部材13の傾倒角度の安定化を図ることができる。すなわち、傾倒カム161として溝カムが適用される構成においては、傾倒カム161と支持部材13に形成される傾倒当接部との軸方向クリアランスが、径方向の位置に応じて変化する。具体的には、径方向の内側より外側の方がクリアランスが大きくなる。クリアランスが大きくなると、支持部材13の傾倒角度が変化するおそれがある。本実施形態によれば、このような傾倒角度の変化を防止して傾倒角度を安定させることができる。
【0079】
支持部材13の回動を防止する回転防止手段としての締め付けコイルバネ17を有している構成によれば、支持部材13の回転方向のがたつきを防止して支持部材13の回転位置の安定化を図ることができる。すなわち、回動カム161を用いる構成によれば、測定装置の姿勢変化、振動、衝撃等により回動カム161と回答当接部135との間にクリアランスが生じるおそれがある。その結果、支持部材13の回転角度が変化するおそれがある。本発明の実施形態によれば、このような回転角どの変化を防止して、回転角度を安定させることができる。
【0080】
前記付勢手段と前記回転防止手段とを別部材に形成する構成によれば、付勢手段による付勢力と回転防止手段による回転防止力を、それぞれ最適な値に設定しやすくなる。
【0081】
前記付勢手段と前記回転防止手段とを同一部材で形成する構成によれば、部品点数の削減を図ることができる。
【0082】
本発明の第二実施形態によれば、検出器52を支持する支持部材53が、傾倒カムとしてのカム部材54のカム面541によって、回転出力軸511に直交する方向へ傾倒することができる。したがって、検出器52を支持する支持部材53を回転させるだけの構成に比較して、測定範囲を広くすることができる。また、回転方向に直交する方向に測定範囲を拡げることができるから、複数の検出器を備える構成としなくとも、測定範囲を拡げることができる。また、カム部材54のカム面541の形状を変えることで、検出器52の軌跡を様々に変えることができ、測定範囲を拡げることができる。
【0083】
傾倒部としてカム部材54のカム面541を採用し、支持部材53の傾倒当接部133により支持部材13を傾倒させることで、支持部材53を簡略な構成により傾倒させることができる。
【0084】
支持部材53を支承部としての頂部533に付勢する付勢手段としてのコイルバネ56を有している構成によれば、支持部材53の軸線方向のがたつきを防止することができるので、支持部材13の傾倒角度の安定化を図ることができる。
【0085】
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1a 測定装置
11 回転動力源
111 回転出力軸
12 検出器
13 支持部材
131 筐体
132 支承部
133 傾倒当接部
134 傾倒当接部の係合部
135 回動当接部
136 回動当接部の係合部
14 ケーシング
141 ガイド部
142 スリット
15 蓋体
151 貫通孔
16a カム部材
161 傾倒カム(溝カム)
162 第一の曲率を有する部分
163 第二の曲率を有する部分
164 変位部分
165 第一の回動カム
166 第二の回動カム
17 締め付けコイルバネ
18 ワッシャ
19 コイルバネ
20 回転規制部材
201 締め付け部
202 係合部
21 支承部支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器と、該検出器の向きを可変可能に支持する支持部材と、該支持部材を駆動して前記検出器の向きを可変させる駆動部材と、を有する測定装置であって、
前記駆動部材は、自らの支承部によって回動および傾倒可能に支持された前記支持部材に当接して該支持部材を回動させる回動部と前記支持部材を傾倒させる傾倒部とを有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記傾倒部としての傾倒カムが当接する傾倒当接部を有していることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記回動部としての前記回動カムが当接する回動当接部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記支承部は、回動および傾倒が可能な支点であって、前記支承部と前記傾倒当接部が前記傾倒カムに係合する係合部とを通る直線が、径方向にのみ移動可能に前記支持部材をガイドするガイド部を有し、該ガイド部によって前記支持部材が前記傾倒カムの回動に伴って径方向に移動し、前記支持部材が傾倒することを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記ガイド部を有するケース体に、前記支承部を支持する支持部を形成し、前記支持部材を回動および傾倒が可能に支持させたことを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記傾倒カムは溝カムであって、該溝カムによって前記傾倒当接部の径方向の位置が規制されることを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項7】
前記回動部としての回動カムと前記傾倒部としての傾倒カムとは、共にカム部材の同一平面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項8】
前記カム部材は回動可能に構成され、該カム部材の回動中心の内側に傾倒カムを配設するとともに外側に回動カムを配設したことを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記支持部材を前記支持部に付勢する付勢手段を有していることを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項10】
前記支持部材は、前記付勢手段とは異なるフリクション機構を介して支持部に支持されていることを特徴とする請求項9に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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