説明

測定装置

【課題】バイオセンサから漏れた血液が装置の内部に入り込む可能性を低くすることで、装置の故障を回避できる構造を提供する。
【解決手段】試料導入口41を介して液状の生体試料が内部に導入される空間を有するバイオセンサ11と、バイオセンサ11が開口14を介して挿入されることにより、試料導入口41が外部に露出された状態でバイオセンサ11が装着可能な装置本体12と、挿入されるバイオセンサ11に押されることで装置本体12の内部においてスライドするスイッチ58と、開口14へ一対が突出されており、スイッチ58のスライドに連動して、一対の間にバイオセンサ11が挿入可能な間隙87が形成される第1姿勢、及び一対の各先端が開口14へ挿入されたバイオセンサ11に当接して開口14が液密に閉塞された第2姿勢に姿勢変化可能な一対のドア81,82と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入口を介して液状の生体試料が導入される試料空間を有するバイオセンサが開口を介して装着可能な測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病の患者が各国において増加している。糖尿病の治療としては、例えば、インスリン療法がある。インスリンは血糖値をコントロールする薬物として知られており、、糖尿病の治療薬として糖尿病患者に投与されている。インスリンを投与する必要性は、糖尿病患者の血糖値に基づいて判断される。このため、糖尿病患者にとって、血糖値の把握が重要である。血糖値とは、血液中のグルコース濃度である。糖尿病患者自らが自分の血糖値を簡易に測定できることを目的として、簡易な血糖測定装置が開発されている。
【0003】
前述された血糖測定装置として、バイオセンサが用いられるものが知られている(特許文献1〜4)。バイオセンサは、血糖と反応する酵素が固定された電極を有する。血糖値の測定に用いられる酵素として、グルコースオキシターゼ(以下、「GOD」と略されることがある。)やグルコースデヒドロゲナーゼ(以下、「GDH」と略されることがある。)が知られている。バイオセンサにおいて、酵素が固定された電極が作用極と称され、試料中に電子を供給する電極が対極と称される。
【0004】
試料である血液がバイオセンサに導入され、その血液中のグルコースに作用極のGODが反応すると、グルコースがグルコン酸及び過酸化水素に分解され、その過酸化水素が水及び電子に分解される。このようにして発生した電子が作用極に伝達される。一方、対極からは血液中に電子が供給される。このようにして、GODとグルコースとの反応によって、作用極と対極との間に電流が流れる。そして、流れた電流値に基づいて、血液中のグルコース濃度、つまり血糖値が算出される。また、作用極には、電子を伝達する物質が固定されることがある。この物質は、電子メディエータと称される。電子メディエータとして、例えば、フェリシアン化カリウム、ヘキサアンミンルテニウムやキノン誘導体類等の有機化合物、又は有機−金属錯体などが挙げられる。
【0005】
前述されたバイオセンサにおいては、作用極と対極との間に、試料である血液を導入する空間及び試料導入口が形成されている。また、このような構成のバイオセンサは、血糖値を測定する毎に使い捨てられる所謂ディスポーザブルである。したがって、装置本体に対してバイオセンサが着脱可能に構成されており、使用毎にバイオセンサが付け替えられる。当該着脱は、バイオセンサが血糖測定装置に設けられた開口に挿入及び脱抜されることによって行われる。また、バイオセンサが血糖測定装置に装着された状態で血液を導入可能とするために、バイオセンサの試料導入口は、バイオセンサが血糖測定装置に装着された状態において外部に露出する位置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−97877号公報
【特許文献2】特開2005−43280号公報
【特許文献3】特開2005−37335号公報
【特許文献4】特開2002−107325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記空間に必要以上の血液が導入された場合、余剰の血液が上記空間から漏れるおそれがある。また、上記空間に血液を導入する際に、バイオセンサのユーザが導入操作を誤ることによって、上記空間に導入されるべき血液の一部または全部がバイオセンサの外側を流れ落ちてしまうおそれもある。
【0008】
バイオセンサが血糖測定装置に装着された状態において、血液が上記空間から漏れたり流れ落ちたりした場合、当該血液は、血糖測定装置の開口におけるバイオセンサとの間隙を介して血糖測定装置の内部に入り込むおそれがある。ここで、血糖測定装置の内部には、装着されたバイオセンサに複数設けられた電極(センサ側電極)に接続される電極(装置側電極)が複数設けられている。そして、血糖測定装置の内部に入り込んだ血液がこれらのセンサ側電極や装置側電極に付着すると、電極間が短絡してしまい、血糖測定装置が故障するおそれがある。
【0009】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイオセンサから漏れた血液が装置の内部に入り込む可能性を低くすることで、装置の故障を回避できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明に係る測定装置は、導入口を介して液状の生体試料が導入される試料空間を有するバイオセンサと、上記バイオセンサが開口を介して挿入されることにより、上記導入口が外部に露出された状態で上記バイオセンサが装着可能な装置本体と、上記装置本体の内部に設けられており、上記開口に近接している第1位置、及び上記開口から上記バイオセンサの装着向き側に離間している第2位置に移動可能であり、上記開口への上記バイオセンサの挿入に連動して、上記第1位置から上記第2位置に移動するスライド部材と、上記開口へ一対が突出されており、その一対の間に上記バイオセンサが挿入可能な間隙が形成される第1姿勢、及び上記一対の各先端が上記開口へ挿入された上記バイオセンサに当接して上記開口が液密に閉塞された第2姿勢に姿勢変化可能な一対のドアと、上記スライド部材と上記一対のドアとを連結しており、上記スライド部材が上記第1位置のときに上記一対のドアを上記第1姿勢とし、上記スライド部材が上記第2位置のときに上記一対のドアを上記第2姿勢とする連動機構と、を具備している。
【0011】
バイオセンサが測定装置の装置本体に装着されると、スライド部材は、第1位置から第2位置に移動する。スライド部材が第2位置に移動すると、スライド部材と連結されている一対のドアは、連動機構を介して第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化する。これにより、装置本体の開口は液密に閉塞される。
【0012】
バイオセンサが装置本体に装着された状態において、測定装置が、バイオセンサの導入口が装置本体よりも上側となる姿勢である場合、試料空間から生体試料が漏れると、当該生体試料は、バイオセンサに沿って装置本体へ流れ落ちる。しかし、本構成においては、バイオセンサと装置本体とが当接して開口が液密に閉塞されているため、当該生体試料は装置本体の内部に入り込む可能性が低くなる。
【0013】
(2) 上記一対のドアは、上記先端と反対側の端部に設けられた回動軸を中心として、上記バイオセンサの装着方向に沿って回動可能に構成されている。上記回動軸は、上記一対のドアが上記第1姿勢及び上記第2姿勢の間で姿勢変化する過程において、上記間隙を一定とするように移動する。
【0014】
本構成においては、一対のドアが回動軸を中心として回動する。ここで、第2姿勢で開口が液密に閉塞される構成において、当該回動軸が固定である場合、回動過程において間隙が小さくなり、バイオセンサが装置本体に挿入不可能となってしまう。しかし、本構成においては、回動軸は、間隙を一定とするように移動する。これにより、一対のドアが回動するように測定装置が構成されている場合であっても、バイオセンサを装置本体に挿入することができる。
【0015】
(3) 上記一対のドアは、上記装置本体の外部に露出する側の面が円弧状に形成されており、上記円弧を外周の一部とする円の中心位置を軸として、上記円弧に沿った方向に移動してもよい。
【0016】
本構成においても、一対のドアは、第1姿勢においてセンサが挿入可能な間隙を形成し、第2姿勢においてバイオセンサと当接することが可能である。
【0017】
(4) 本発明に係る測定装置は、上記一対のドアの各先端に、上記バイオセンサとの当接によって上記バイオセンサから離間する向きへ弾性変形可能な変形部を更に具備する。
【0018】
本構成においては、バイオセンサが装置本体に装着された状態において、バイオセンサと装置本体とが当接している箇所が圧接された状態となる。そのため、試料空間から漏れた生体試料が装置本体の内部に入り込む可能性を、上記(1)の場合よりも更に低くすることが可能である。
【0019】
(5) 本発明に係る測定装置は、上記一対のドアの各先端と反対側の端部に、上記生体試料を貯留可能な液溜め部を更に具備する。
【0020】
本構成においては、液溜め部が、一対のドアに沿って流れてきた生体試料を受けて貯留するため、生体試料が一対のドアの各先端と反対側の端部から装置本体の内部に入り込む可能性を低くすることができる。
【0021】
(6) 本発明に係る測定装置は、上記スライド部材の上記第1位置から上記第2位置への移動に連動して、装置の電源をオフからオンに切り換える電源スイッチを更に具備していてもよい。つまり、測定装置は、バイオセンサが装着されることによって、自動的に電源がオンとなるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、バイオセンサと装置本体とが当接して開口が液密に閉塞されるため、バイオセンサから漏れた生体試料が、装置本体の内部に入り込む可能性が低くなる。よって、生体試料の電極への付着による電極の短絡に起因する装置の故障を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る血糖測定装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、バイオセンサ11の分解斜視図である。
【図3】図3は、装置本体12の内部構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、血糖測定装置10の内部構造を示す模式図であり、(A)には縦断面図が示されており、(B)には平面図が示されている。
【図5】図5は、バイオセンサ11が装着される過程の血糖測定装置10の内部構造を示す模式図であり、(A)には縦断面図が示されており、(B)には平面図が示されている。
【図6】図6は、バイオセンサ11が装着された状態の血糖測定装置10の内部構造を示す模式図であり、(A)には縦断面図が示されており、(B)には平面図が示されている。
【図7】図7は、変形例1における血糖測定装置10の内部構造を示す模式図であり、(A)には縦断面図が示されており、(B)には平面図が示されている。
【図8】図8は、変形例1におけるバイオセンサ11が装着される過程の血糖測定装置10の内部構造を示す模式図であり、(A)には縦断面図が示されており、(B)には平面図が示されている。
【図9】図9は、変形例1におけるバイオセンサ11が装着された状態の血糖測定装置10の内部構造を示す模式図であり、(A)には縦断面図が示されており、(B)には平面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、血糖測定装置10がディスプレイ51を上側とした状態(図1の状態)を基準として上下方向(厚さ方向)103を定義し、開口14が設けられている側を手前側(正面)として前後方向(長手方向)101(本発明の装着方向に相当)を定義し、血糖測定装置10を手前側(正面)から見て左右方向(幅方向)102を定義する。
【0025】
[血糖測定装置10]
図1に示されるように、血糖測定装置10は、バイオセンサ11と装置本体12とを有する。バイオセンサ11が装置本体12の表面に設けられた開口14(本発明の開口に相当)を介して、開口14の奥に設けられた内部空間15(図4参照)に挿入される。内部空間15の奥部には接続部13(図3参照)が設けられており、バイオセンサ11が接続部13に差し込まれることによって、バイオセンサ11と装置本体12とが電気的に接続される。バイオセンサ11は、1回の血糖測定毎に取り替えられるものである。血糖測定装置10が、本発明に係る測定装置に相当する。バイオセンサ11が、本発明におけるバイオセンサに相当する。
【0026】
[バイオセンサ11]
図1に示されるように、バイオセンサ11は、細長なシート形状である。バイオセンサ11の前後方向101の一端が、装置本体12の開口14を介して接続部13に差し込まれることによって、バイオセンサ11が装置本体12に装着される。また、バイオセンサ11が前後方向101に引き抜かれることによって、バイオセンサ11が装置本体10から取り外される。
【0027】
バイオセンサ11は、第1面21及び第2面22が表裏面をなすシート形状である。バイオセンサ11の表裏は相対的な関係なので、いずれが表であっても裏であってもよい。本実施形態においては、図1に現れる側(第1面21)が表と称され、図1に現れない側(第2面22)が裏と称される。
【0028】
図2に示されるように、バイオセンサ11は、主として、第1基板23、スペーサ25、第1電極24、第2電極26、第3電極27及び第2基板28を有する。図2における上側、つまり表側から順に、第1基板23、スペーサ25、第1電極24と第2電極26と第3電極27、第2基板28の順に積層されて、シート形状のバイオセンサ11が構成されている。
【0029】
[第1基板23]
図2に示されるように、第1基板23は、平面視がバイオセンサ11と概ね同じ形状であって、前後方向101において第2基板28より若干短いシートである。第1基板23は、電気絶縁性の材料からなる。この電気絶縁性の材料として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のポリエステルや、フッ素樹脂及びポリカーボネイト、ガラスなどが挙げられる。第1基板23の一方の面は、第1面(表面)21を構成する。
【0030】
[第2基板28]
図2に示されるように、第2基板28は、平面視がバイオセンサ11と概ね同じ形状のシートである。第2基板28は、電気絶縁性の材料からなる。この電気絶縁性の材料として、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のポリエステルや、フッ素樹脂及びポリカーボネイト、ガラスなどが挙げられる。
【0031】
第2基板28の一方の面は、第2面(裏面)22を構成する。後述されるように、第2面22と反対側の面34には第1電極24、第2電極26及び第3電極27が設けられている。第2基板28において、装置本体12の接続部13に差し込まれる前後方向101の一端側は、第1基板23とは対向されていない。
【0032】
[第1電極24]
図2に示されるように、第1電極24は、第2基板28における第2面22と反対側の面34に設けられている。第1電極24は、第2基板28の面34において、前後方向101へ延出されており、左右方向102において第2基板28の1/3程度の幅を有する。面34において、第1電極24は、後述される第2電極26及び第3電極27と電気的に非接続に配置されている。第1電極24の素材としては、例えば、銀/塩化銀、金、パラジウム、白金などが挙げられる。第1電極24は、第1基板23に対して、スクリーン印刷法、インクジェット法、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタビーム蒸着又はPLDなどの手法によって面34に積層されている。第1電極24において、装置本体12の接続部13側に対応する端部は、第1基板23と対向せずに露出されている。この端部が装置本体12と電気的に接続される接続端子33である。
【0033】
[第2電極26]
図2に示されるように、第2電極26は、第2基板28における第2面22と反対側の面34に設けられている。第2電極26は、第2基板28の面34において、前後方向101へ延出されており、左右方向102において第2基板28の1/3程度の幅を有する。面24において、第2電極26は、第1電極24及び後述される第3電極27と電気的に非接続に配置されている。第2電極26の素材としては、例えば、カーボンが挙げられる。第2電極26にカーボンが用いられることによって、銀/塩化銀、金、パラジウム、白金などが採用される第1電極23の抵抗値が、カーボン製の第2電極26の抵抗値より低くなるので、後述するように空間40に導入された血液に電子が供給されやすくなる。もちろん、第2電極26が、第1電極24と同様に、銀/塩化銀、金、パラジウム、白金などの素材で構成されてもよい。第2電極26において、装置本体12の接続部13側に対応する端部は、第1基板23と対向せずに露出されている。この端部が装置本体12と電気的に接続される接続端子37である。
【0034】
[第3電極27]
図2に示されるように、第3電極27は、第2基板28における第2面22と反対側の面34に設けられている。第3電極27は、第2基板28の面34において、前後方向101へ延出されており、左右方向102において第2基板28の1/3程度の幅を有する。面24において、第3電極27は、第1電極24及び第2電極26と電気的に非接続に配置されている。第3電極27の素材としては、例えば、銀/塩化銀、金、パラジウム、白金などが挙げられる。第3電極27は、空間40へ血液が導入されたか否かを検出するための電極である。第3電極27において、装置本体12の接続部13側に対応する端部は、第1基板23と対向せずに露出されている。この端部が装置本体12と電気的に接続される接続端子39である。
【0035】
[スペーサ25]
図2に示されるように、スペーサ25は、平面視がバイオセンサ11と概ね同じ形状のシートである。スペーサ25としては、電気絶縁性を有する両面テープが好適に用いられる。スペーサ25は、前方の端部近傍の位置に、左右方向102へ延びる空間40を有する。空間40によって、領域38と領域42との間に、スペーサ25の厚み分の試料空間が形成される。つまり、空間40が本発明における試料空間に相当する。空間40には、第1電極24の一部、第2電極26の一部及び第3電極27の一部がそれぞれ露出されている。
【0036】
空間40は、バイオセンサ11の第1面21に開口されており、この開口が試料導入口41となる。試料導入口41を介して、血液が空間40に流れ込まれる。試料導入口41が本発明における導入口に相当する。血液は本発明における生体試料の一例である。
【0037】
[装置本体12]
図1に示されるように、装置本体12(本発明における装置本体に相当)は、筐体50に電子部品が収容された電子装置である。筐体50の表には、液晶ディスプレイ51及び操作キー52,53,54が配置されている。操作キー52,53,54は、ユーザの操作に基づいて対応するコマンドを発生させるためのものである。液晶ディスプレイ51は、装置本体12の状態や測定結果、エラー表示などを行う。
【0038】
図3に示されるように、装置本体12の接続部13には、3つの接続端子61〜63が設けられている。各接続端子61〜63は、第1電極24の接続端子33、第2電極26の接続端子37、第3電極27の接続端子39に対応しており、接続部13にバイオセンサ11が装着されることによって、それぞれが電気的に接続される。接続部13と接続端子61〜63とが接続されることによって、バイオセンサ11は、装置本体12に装着された状態に固定される。固定されたバイオセンサ11は、後述する排出レバー74がスライドされることによって、装置本体12から抜き出すことが可能である。
【0039】
装置本体12には、制御部55が設けられている。制御部55は、CPU,ROM,RAMなどから構成される演算装置であり、ROMに格納されたプログラムに基づいて、血糖測定装置10を後述するように動作させる。これにより、血糖測定が実行される。制御部55は、液晶ディスプレイ51及び操作キー52,53,54と電気信号を送受信可能に接続されており、液晶ディスプレイ51に測定結果やエラー表示を行わせたり、操作キー52,53,54からの電気信号に基づいて所定のコマンドを発生させたりする。
【0040】
装置本体12は、電源56を有する。電源56は、例えば一次電池や二次電池である。電源56と接続部13の各端子61,62,63との間にはリレー回路57が設けられている。制御部55は、リレー回路57を制御することによって、電源56から各端子61,62,63に選択的に電力を供給させる。
【0041】
[スイッチ58]
図3及び図4に示されるように、装置本体12の内部空間15には、機械式のスイッチ58が設けられている。スイッチ58は、後述するように内部空間15を前後方向101にスライド可能に構成されている。詳細には、開口14に近接する位置(図4(A)に示される第1位置、本発明における第1位置に相当)と、開口からバイオセンサ11の装着向き側に離間する位置(図6(A)に示される第2位置、本発明における第2位置に相当)との間でスライド可能に構成されている。スイッチ58が本発明におけるスライド部材に相当する。
【0042】
図3に示されるように、スイッチ58は、血糖測定装置10の電源スイッチ59と連動されている。詳細には、スイッチ58が第1位置から第2位置にスライドすると、電源スイッチ59がオンとなる。換言すると、電源56と制御部55の間の配線が開放から短絡へと状態変化される。これにより、電源56から制御部55に電力が供給され、血糖測定装置10は、血糖測定などの処理を実行可能な状態となる。なお、電源スイッチ59は、機械式のスイッチであっても電気式のスイッチであってもよい。電源スイッチ59が本発明における電源スイッチに相当する。
【0043】
図4に示されるように、スイッチ58は、開口14の奥に設けられた内部空間15において左右方向102及び上下方向103に拡がる奥板71と、奥板71の左右方向102の両端部から前向きに突設された突板72,73とで構成されている。
【0044】
図4(B)に示されるように、奥板71及び突板73は、その左面を排出レバー74に固定されている。排出レバー74は、装置本体12の前後方向101及び上下方向103に拡がる側面16に設けられた長孔75に貫通されている。また、排出レバー74は、左右方向102における一方の端部が装置本体12の外側に露出しており、他方の端部が内部空間15においてスイッチ58に固定されている。これにより、ユーザが、排出レバー74の外部に露出する部分を摘み、排出レバー74を長孔75に沿ってスライドさせると、排出レバー74に固定されたスイッチ58は前後方向101にスライドされる。また、奥板71の上下左右の側面は、内部空間15の内面76と当接している。以上より、スイッチ58は、排出レバー74及び内部空間の内面によって、前後方向101にスライド可能に支持されている。
【0045】
なお、上記説明では、奥板71の上下左右の側面が内面76と当接している構成について説明したが、スイッチ58が前後方向101にスライド可能であるならば当該構成に限らない。例えば、内面76に、前後方向101に沿ったガイドレール(不図示)が延出されるとともに、スイッチ58の側面に前後方向101に沿った凸部(不図示)が設けられており、当該凸部と当該ガイドレールとが係合されることで、スイッチ58が当該ガイドレールに沿って移動するように構成されていてもよい。
【0046】
突板72の左面における突端近傍には、左向きに突設された凸部77が設けられている。また、突板73の右面における突端近傍には、右向きに突設された凸部78が設けられている。凸部77,78は、バイオセンサ11が開口14を介して内部空間15に挿入される際に、図5(B)に示されるように、バイオセンサ11の挿入側の先端における左右方向102の両端部と当接する。これにより、スイッチ58は、バイオセンサ11に押され内部空間15の奥側(後側)にスライドされる。
【0047】
奥板71には、その前面から後面を貫通する開口(不図示)が設けられている。開口は、挿入されたバイオセンサ11の第1電極24、第2電極26及び第3電極27と対向する位置に設けられている。また、スイッチ58が、内部空間15においてスライド可能な最奥(最も後側)、つまり第2位置にスライドされた際、装置本体12の3つの接続端子61〜63は、開口を介して、奥板71の前面よりも前方の位置となる。これにより、スイッチ58が第2位置にスライドされた際、接続端子61〜63と接続部13とが接続される。
【0048】
[一対のドア81,82]
図4に示されるように、装置本体12の内部空間15におけるスイッチ58よりも前方には、一対のドア81,82が設けられている。一対のドア81,82は本発明における一対のドアに相当する。
【0049】
ドア81は、左右方向102及び上下方向103の長さが前後方向101の長さよりも長い概ね薄型直方体の板状の部材である。ドア81の上端には、左右方向102に沿って軸83が取り付けられている。ドア82は、ドア81と同様、概ね薄型直方体の板状であり、その下端には、左右方向102に沿って軸84が取り付けられている。軸83,84の左右方向102の長さは、ドア81,82の左右方向102の長さより長く、軸83,84は、ドア81,82の左右端から突出されるように取り付けられている。軸83,84の各々は、以下で説明する第1ガイド溝85及び第2ガイド溝86に係入されている。
【0050】
第1ガイド溝85は、内部空間15の天面に、前後方向101に沿って延設されている。また、第1ガイド溝85は、その前端部及び後端部が中央部よりも下側となるように湾曲している。第1ガイド溝85の左右の側面における内部空間15の天面に近接する部分からは、支持板(不図示)が左右方向102に突設されている。軸83におけるドア81の左右端から突出された部分は、当該支持板によって支持される。
【0051】
第2ガイド溝86は、内部空間15の底面に、前後方向101に沿って延設されている。また、第2ガイド溝86は、その前端部及び後端部が中央部よりも上側となるように湾曲している。第2ガイド溝86の左右の側面における内部空間15の底面に近接する部分からは、支持板(不図示)が左右方向102に突設されている。軸84におけるドア82の左右端から突出された部分は、当該支持板によって支持される。
【0052】
以上より、ドア81は、軸83が第1ガイド溝85に係入され、第1ガイド溝85から下方に延びている。また、ドア82は、軸84が第2ガイド溝86に係入され、第2ガイド溝86から上方に延びている。また、一対のドア81,82の上下方向の長さの合計は、第1ガイド溝85及び第2ガイド溝86の間隔よりも小さい。つまり、第1ガイド溝85から下方に延びたドア81の先端と、第2ガイド溝86から上方に延びたドア82の先端との間には、間隙87(本発明における間隙に相当、図4(A)参照)が存在する。
【0053】
また、一対のドア81,82は、ガイド溝85,86に沿ってスライド可能である。更に、一対のドア81,82は、軸83,84を中心として前後方向101に回動可能である。軸83,84は、本発明における回動軸に相当する。
【0054】
[連動機構90]
連動機構90は、スイッチ58とドア81を連結する第1連動部91と、スイッチ58とドア82を連結する第2連動部92とで構成されている。連動機構90は本発明における連動機構に相当する。
【0055】
第1連動部91は、第1プーリ110、第2プーリ111、第1ワイヤ112及び第2ワイヤ113を備えている。図4(B)に示されるように、第1連動部91は、内部空間15の左右両端に設けられている。
【0056】
第1プーリ110は、スイッチ58よりも後側において、内部空間15の内面76(本実施形態では右側面及び左側面)に回転可能に支持されている。第2プーリ111は、ドア81よりも前側において、内部空間15の内面76(本実施形態では右側面及び左側面)に回転可能に支持されている。
【0057】
第1ワイヤ112は、一端を奥板71の後面における上下方向103の中央付近に固定され、他端をドア81の軸83に固定されている。詳細には、スイッチ58の奥板71の後面から延設された第1ワイヤ112は、第1プーリ110の周面に巻回され、次に第2プーリ111の周面に巻回されて、最後にドア81の軸83に固定される。なお、第1ワイヤ112は、延設されたいずれかの位置において、テンショナーに架けられている。これにより、第1ワイヤ112には、所定の張力が与えられる。
【0058】
第2ワイヤ113は、前後方向101に沿って延設されており、一端を軸83に固定され、他端を奥板71の後面における上端近傍に固定されている。ここで、第2ワイヤ113の一端は、軸83におけるドア81との接合面とは反対側の周面に固定されている。なお、第2ワイヤ113は、延設されたいずれかの位置において、テンショナーに架けられている。これにより、第2ワイヤ113には、所定の張力が与えられる。
【0059】
第2連動部92は、第3プーリ120、第4プーリ121、第3ワイヤ122及び第4ワイヤ123を備えている。第2連動部92は、第1連動部91と上下対称に設けられている。
【0060】
第3プーリ120は、スイッチ58よりも後側において、内部空間15の内面76(本実施形態では右側面及び左側面)に回転可能に支持されている。第4プーリ121は、ドア82よりも前側において、内部空間15の内面76(本実施形態では右側面及び左側面)に回転可能に支持されている。
【0061】
第3ワイヤ122は、一端を奥板71の後面における上下方向103の中央付近に固定され、他端をドア82の軸84に固定されている。詳細には、スイッチ58の奥板71の後面から延設された第3ワイヤ122は、第3プーリ120の周面に巻回され、次に第4プーリ121の周面に巻回されて、最後にドア82の軸84に固定される。なお、第3ワイヤ122は、延設されたいずれかの位置において、テンショナーに架けられている。これにより、第3ワイヤ122には、所定の張力が与えられる。
【0062】
第4ワイヤ123は、前後方向101に沿って延設されており、一端を軸84に固定され、他端を奥板71の後面における下端近傍に固定されている。ここで、第4ワイヤ123の一端は、軸84におけるドア82との接合面とは反対側の周面に固定されている。なお、第4ワイヤ123は、延設されたいずれかの位置において、テンショナーに架けられている。これにより、第4ワイヤ123には、所定の張力が与えられる。
【0063】
[血糖測定装置10の動作]
以下、図4乃至図6が参照されつつ血糖測定装置10の動作が説明される。本発明の特徴とするところは、バイオセンサ10が装置本体12に装着される過程にある。したがって、以下には、バイオセンサ10が装置本体12に装着される動作が詳細に説明され、その後に血糖値が測定される動作については簡易に説明される。
【0064】
図4に示されるように、バイオセンサ11が装置本体12に装着されていない状態においては、スイッチ58は、スライド可能な位置のうちの最も前方の位置、つまり開口14に近接している第1位置に位置している。また、一対のドア81,82の軸83,84は、ガイド溝85,86の前端部に位置している。また、一対のドア81,82は、図4(A)に示されるように、連動機構90と連結されることによって、その先端(換言すると軸83,84と反対側の端部)が軸83,84側の端部よりも後方となる状態で傾斜するように配置されている。また、一対のドア81,82の間には、間隙87が存在する。このような一対のドア81,82の姿勢(図4(A)に示される姿勢)は、本発明における第1姿勢に相当する。
【0065】
バイオセンサ11が、ユーザによって、開口14から装置本体12に挿入されると、バイオセンサ11の挿入先端がスイッチ58の凸部77,78と当接する。これにより、図5に示されるように、スイッチ58は、バイオセンサ11に押され、後方へスライドする。
【0066】
すると、軸83,84は、第2ワイヤ113を介して、スイッチ58に引っ張られる。これにより、軸83,84は、ガイド溝85,86に沿って、ガイド溝85,86の後端部に向かってスライドする。また、上述したように、第2ワイヤ113は、軸83におけるドア81との接合面とは反対側の周面に固定されており、第4ワイヤ123は、軸84におけるドア82との接合面とは反対側の周面に固定されている。よって、軸83,84は、スイッチ58に引っ張られると、図4(A)の紙面上において時計回りに回転する。これにより、一対のドア81,82は、軸83,84を中心として回動する。つまり、一対のドア81,82は、スイッチ58に引っ張られることによって、スライドしながら回動し、図4に示される状態から図5に示される状態に移行する。
【0067】
バイオセンサ11が、装置本体12に更に挿入されると、図6に示されるように、スイッチ58は、スライド可能な位置のうちの最も後方の位置、つまり開口14から離間している第2位置に位置される。スイッチ58が第2位置に位置されることにより、装置本体12の3つの接続端子61〜63と、バイオセンサ11の3つの電極24,26,27とが電気的に接続される。
【0068】
このとき、図6(A)に示されるように、一対のドア81,82の軸83,84は、その先端(換言すると軸83,84と反対側の端部)が軸83,84側の端部よりも前方となるように傾斜している。つまり、図4(A)の場合とは、前後方向に対称となる向きに傾斜している。このような一対のドア81,82の姿勢(図6(A)に示される姿勢)は、本発明における第2姿勢に相当する。
【0069】
ここで、図4(A)、図5(A)及び図6(A)に示されるように、軸83,84は、一対のドア81,82が第1姿勢及び第2姿勢の間で姿勢変化する過程において、間隙87を一定とするように移動する。また、間隙87の大きさは、バイオセンサ11の上下方向の長さと同一である。このような軸83,84の間隙87を一定とする移動と間隙87の大きさとを実現するために、一対のドア81,82の大きさ、ガイド溝85,86の形状(例えば湾曲の角度)、及びガイド溝85,86の間隔などが、決定される。なお、間隙87は、血液などの生体試料が通過しない(例えば通過する間に固まる。)のであれば、バイオセンサ11の上下方向の長さよりも若干大きくてもよい。なお、一対のドア81,82におけるバイオセンサ11と当接する先端部分は、曲面に構成されていることが好ましい。一対のドア81,82が、バイオセンサ11と当接しながらであっても、第1姿勢と第2姿勢の間でスムーズに姿勢変化可能となるからである。
【0070】
間隙87の大きさがバイオセンサ11の上下方向の長さと同一であるため、一対のドア81,82が第2姿勢をとった状態においては、一対のドア81,82は、バイオセンサ11の上面及び下面と当接する。これにより、液状の血液が、開口14から装置本体12の内部に流れても、一対のドア81,82とバイオセンサ11との当接部分に遮られて、接続部13には付着しない。つまり、一対のドア81,82が第2姿勢をとった状態においては、内部空間15のうちの接続部13周辺には血液が流れ込まない。即ち、一対のドア81,82が第2姿勢をとっているとき、開口14は液密に閉塞されている。
【0071】
前述されたようにしてバイオセンサ11が装置本体12に挿入されて、スイッチ58が第1位置から第2位置にスライドすると、電源スイッチ58がオンとなる。その後に、空間40に血液が導入されて、その血液が第1電極24及び第3電極27に接触すると、第1電極24と第3電極27との間の導電状態が変化する。制御部55は、この導電状態の変化によって、空間40に血液が導入されたと判断する。空間40においては、第2電極26に固定されたGODによって、血液中のグルコースがグルコン酸と過酸化水素に分解され、その後、過酸化水素が水と電子に分解される。その電子が、電子メディエータを介して第2電極26に伝達される。第1電極24からは血液中に電子が供給される。このようにして第1電極24及び第2電極26間に流れた電流に基づいて、制御部55はグルコース濃度を演算し、その結果を液晶ディスプレイ51に表示させる。
【0072】
[実施形態の作用効果]
本実施形態においては、バイオセンサ11が装置本体12に装着されると、スイッチ58が第1位置から第2位置に移動する。これにより、連動機構90を介してスイッチ58と連結されている一対のドア81,82は、第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化する。これにより、装置本体12の開口14は液密に閉塞される。バイオセンサ11が装置本体12に装着された状態において、血糖測定装置10の姿勢が、バイオセンサ11の試料導入口41が装置本体12よりも上側となる姿勢である場合、空間40から血液が漏れると、漏れた血液は、バイオセンサ11に沿って装置本体12へ流れ落ちる。しかし、本実施形態においては、一対のドア81,82が第2姿勢をとっているとき、バイオセンサ11と装置本体12とが当接して開口14が液密に閉塞されているため、血液が装置本体12の内部に入り込む可能性は低い。よって、血液の接続部13や電極24,26,27への付着による接続端子61〜63の短絡に起因する血糖測定装置10の故障の可能性を低減できる。
【0073】
また、本実施形態においては、一対のドア81,82が第2姿勢をとっているとき、一対のドア81,82は、軸83,84と反対側の端部が軸83,84側の端部よりも後方となるように傾斜している。よって、漏れた血液は、傾斜している一対のドア81,82に沿って、装置本体12における左右方向102の両端側、つまり接続部13から離間した側に流れていく。よって、上述同様、接続端子61〜63の短絡に起因する血糖測定装置10の故障の可能性を低減できる。
【0074】
また、本実施形態においては、一対のドア81,82が軸83,84を中心として回動する。ここで、本実施形態のように第2姿勢で開口14が液密に閉塞される構成の場合、仮に軸83,84が固定であると、回動過程において間隙87が小さくなり、バイオセンサ11が挿入不可能となってしまう。しかし、本実施形態においては、軸83,84は、間隙87を一定とするように移動する。これにより、一対のドア81,82が回動するように血糖測定装置10が構成されている場合であっても、バイオセンサ11を装置本体12に挿入することができる。
【0075】
また、一対のドア81,82が軸83,84を中心として回動するとともに、軸83,84が移動するように構成されることで、一対のドア81,82は、第1姿勢において図4(A)に示されるように傾斜する。これにより、ユーザは、視覚的にバイオセンサ11を装置本体12に装着し易い。
【0076】
また、本実施形態においては、スイッチ58の第1位置から第2位置への移動に連動して、血糖測定装置10の電源をオフからオンに切り換える電源スイッチ59が備えられている。これにより、血糖測定装置10の電源は、バイオセンサ11が装着されることによって、自動的にオンにされることが可能である。
【0077】
[変形例1]
以下、前述された実施形態の変形例が説明される。スイッチ58、一対のドア81,82及び連動機構90の構成は、スイッチ58が第1位置及び第2位置に移動可能であり、一対のドア81,82が第1姿勢及び第2姿勢に姿勢変化可能であるならば、上述の実施形態で説明された構成に限らない。変形例1では、図7に示されるように、スイッチ58、一対のドア81,82及び連動機構90の構成が、上述の実施形態とは異なる。以下、各々の構成について、上述の実施形態と異なる部分について説明する。
【0078】
図7に示されるように、スイッチ58は、奥板71及び突板72,73に加えて、上板131及び下板132を備えている。上板131及び下板132は、上下方向103において、突板72,73よりも上下両端側の位置から前向きに突設されている。また、上板131及び下板132は、突板72,73のうち、排出レバー74に固定されていない板(変形例1では突板72)の上下両端側において突設されている。
【0079】
ドア81は、左右方向102に延設された軸135と、軸135に支持され軸135を中心として回動可能な円弧板136とで構成されている。ドア82は、左右方向102に延設された軸137と、軸137に支持され軸137を中心として回動可能な円弧板138とで構成されている。一対のドア81,82は、スイッチ58の奥板71よりも前方であって、上板131と下板132の間に設けられている。
【0080】
円弧板136は、その上側に円弧状に形成された円弧面139を有しており、円弧板138は、その下側に円弧状に形成された円弧面140を有している。つまり、一対のドア81,82は、第2姿勢をとったときに外部に露出する側の面が円弧状に形成されている。
【0081】
軸135は、円弧面139を円周の一部とする円の中心となる位置に設けられている。軸138は、円弧面140を円周の一部とする円の中心となる位置に設けられている。軸135,138の左右方向102の長さは、円弧板136,138の左右方向102の長さより長く、軸135,138は、円弧板136,138の左右端から突出されるように取り付けられている。軸135,138は、その左右両端において、内部空間15の内面76によって回転可能に支持されている。
【0082】
第1連動部91は、第1ラックギヤ143、第1ピニオンギヤ144及び第1ギヤ部145を備えており、第2連動部92は、第2ラックギヤ146、第2ピニオンギヤ147及び第2ギヤ部148を備えている。
【0083】
第1ラックギヤ143は、スイッチ58の上板131の下面に、前後方向101に沿って延設されている。第1ピニオンギヤ144は、第1ラックギヤ143と噛合されており、第1ラックギヤ143がスライドすることによって回転する。第1ギヤ部145は、円弧板136に設けられたギヤであり、第1ピニオンギヤ144と噛合されている。
【0084】
第2ラックギヤ146は、スイッチ58の下板132の上面に、前後方向101に沿って、延設されている。第2ピニオンギヤ147は、第2ラックギヤ146と噛合されており、第2ラックギヤ146がスライドすることによって回転する。第2ギヤ部148は、円弧板138に設けられたギヤであり、第2ピニオンギヤ147と噛合されている。
【0085】
以下、図7乃至図9が参照されつつ変形例1における血糖測定装置10の動作が説明される。以下、血糖測定装置10の動作について、上述の実施形態と異なる部分について説明する。
【0086】
図7に示されるように、一対のドア81,82が第1姿勢をとっている状態においては、ラックギヤ143,146は、後端部においてピニオンギヤ144,147と噛合されており、ギヤ部145,148は、前端部においてピニオンギヤ144,147と噛合されている。このとき、一対のドア81,82の間には、間隙87が存在する。
【0087】
バイオセンサ11がユーザによって開口14から装置本体12に挿入されると、スイッチ58が後方へスライドするため、ラックギヤ143,146も後方へスライドする。これにより、ピニオンギヤ144は図7の紙面において時計回りに回転し、ピニオンギヤ147は図7の紙面において反時計回りに回転する。ピニオンギヤ144,147の回転によって、ギヤ部145が取り付けられているドア81は、図7の紙面において反時計回りに回動し、ギヤ部148が取り付けられているドア82は、図7の紙面において時計回りに回動する。これにより、一対のドア81,82は、図7に示される状態から図8に示される状態に移行する。
【0088】
バイオセンサ11が、装置本体12に更に挿入されると、図9に示されるように、一対のドア81,82が第2姿勢をとる。このとき、ラックギヤ143,146は、前端部においてピニオンギヤ144,147と噛合され、ギヤ部145,148は、後端部においてピニオンギヤ144,147と噛合される。一対のドア81,82は、第2姿勢をとっているとき、前側の端部がバイオセンサ11の上面及び下面と当接する。つまり、一対のドア81,82が第2姿勢をとっているとき、上述の実施形態と同様に、開口14は液密に閉塞されている。
【0089】
このような変形例1によっても、一対のドア81,82が第1姿勢をとるときに、バイオセンサ11が挿入可能な間隙87が形成されることが可能である。また、一対のドア81,82が第2姿勢をとるときに、一対のドア81,82がバイオセンサ11と当接することによって、開口14が液密に閉塞されることが可能である。
【0090】
[変形例2]
一対のドア81,82は、第2姿勢においてバイオセンサ11と当接する先端部がゴムなどの弾性部材(不図示)で構成されていてもよい。弾性部材が本発明における変形部に相当する。
【0091】
変形例2の場合、一対のドア81,82が第2姿勢をとっているときの間隙87は、バイオセンサ11の厚さ(上下方向103の長さ)よりも若干小さく構成されることが好ましい。これにより、一対のドア81,82が第2姿勢をとっているときに、弾性部材がバイオセンサ11の上面及び下面に圧接される。詳細には、バイオセンサ11の装置本体12への装着過程において、一対のドア81,82とバイオセンサ11とが当接すると、ドア81の先端部に設けられた弾性部材は、バイオセンサ11の上面に押されることによって上向きに弾性変形する。一方、ドア82の先端部に設けられた弾性部材は、バイオセンサ11の下面に押されることによって下向きに弾性変形する。これにより、弾性部材がバイオセンサ11の上面及び下面に圧接される。
【0092】
変形例2においては、バイオセンサ11と一対のドア81,82とが当接している箇所が、弾性部材によって、圧接された状態となる。そのため、空間40から漏れた血液が、装置本体12の内部に入り込む可能性を、上述の実施形態の場合よりも更に低くすることが可能である。
【0093】
[変形例3]
一対のドア81,82が第2姿勢においてバイオセンサ11と当接する先端部と反対側の端部、つまりドア81の上側の端部及びドア82の下側の端部の近傍には、血液を貯留可能な液溜め部(不図示)が設けられていてもよい。液溜め部は、例えば血液を染みこませることが可能なスポンジである。
【0094】
変形例3においては、液溜め部の一例としてのスポンジが、一対のドア81,82に沿って流れ落ちてきた血液を染みこませることによって貯留するため、血液がドア81の上側の端部及びドア82の下側の端部から装置本体12の内部に入り込む可能性を低くすることができる。
【符号の説明】
【0095】
10・・・血糖測定装置(測定装置)
11・・・バイオセンサ
12・・・装置本体
14・・・開口
40・・・空間(試料空間)
41・・・試料導入口(導入口)
58・・・スイッチ(スライド部材)
59・・・電源スイッチ
81・・・ドア
82・・・ドア
83・・・軸(回動軸)
84・・・軸(回動軸)
87・・・間隙
90・・・連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口を介して液状の生体試料が導入される試料空間を有するバイオセンサと、
上記バイオセンサが開口を介して挿入されることにより、上記導入口が外部に露出された状態で上記バイオセンサが装着可能な装置本体と、
上記装置本体の内部に設けられており、上記開口に近接している第1位置、及び上記開口から上記バイオセンサの装着向き側に離間している第2位置に移動可能であり、上記開口への上記バイオセンサの挿入に連動して、上記第1位置から上記第2位置に移動するスライド部材と、
上記開口へ一対が突出されており、その一対の間に上記バイオセンサが挿入可能な間隙が形成される第1姿勢、及び上記一対の各先端が上記開口へ挿入された上記バイオセンサに当接して上記開口が液密に閉塞された第2姿勢に姿勢変化可能な一対のドアと、
上記スライド部材と上記一対のドアとを連結しており、上記スライド部材が上記第1位置のときに上記一対のドアを上記第1姿勢とし、上記スライド部材が上記第2位置のときに上記一対のドアを上記第2姿勢とする連動機構と、を具備している測定装置。
【請求項2】
上記一対のドアは、上記先端と反対側の端部に設けられた回動軸を中心として、上記バイオセンサの装着方向に沿って回動可能に構成されており、
上記回動軸は、上記一対のドアが上記第1姿勢及び上記第2姿勢の間で姿勢変化する過程において、上記間隙を一定とするように移動する請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
上記一対のドアは、上記装置本体の外部に露出する側の面が円弧状に形成されており、上記円弧を外周の一部とする円の中心位置を軸として、上記円弧に沿った方向に移動する請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
上記一対のドアの各先端に、上記バイオセンサとの当接によって上記バイオセンサから離間する向きへ弾性変形可能な変形部を更に具備する請求項1から3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
上記一対のドアの各先端と反対側の端部に、上記生体試料を貯留可能な液溜め部を更に具備する請求項1から4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
上記スライド部材の上記第1位置から上記第2位置への移動に連動して、装置の電源をオフからオンに切り換える電源スイッチを更に具備する請求項1から5のいずれかに記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232170(P2011−232170A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102638(P2010−102638)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)