説明

湯切り蓋材

【課題】飲食の前に排水または排湯が必要な蓋材に関するものであり、湯切り孔を露出させる際の剥離強度が低く、製造時にハーフカット孔の見当合わせが必要なく、剥離時の孔脱落が発生しない、剥離機構の優れた蓋材を提供する。
【解決手段】上材と下材とを剥離する時、孔が形成される蓋材であって、上材の腰強度を3.0N/15mm以上20N/15mm以下、かつ前記下材の腰強度を0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下であり、孔が辺A、B、Cの3辺と、辺B、辺Cとで挟まれる角に設けたR、辺Aと辺Bとの間の角度α、辺Aと辺Cとの間の角度βを持った形状であり、該形状の辺A、B、Cと、R、角度α、βがそれぞれ、2mm≦A≦10mm、4mm≦B+C≦20mm、1mm≦R≦8mm、角度αと角度βは、鋭角とし、蓋を開け始める方向に、上記孔の辺B、辺Cとに挟まれる角に設けたRが向くように、方向を合わせたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば、スパゲッティ、マカロニ、乾麺、春雨などの他、予め調味液に浸したゼリーやところてん等のように、飲食の際、排水または排湯が必要な食品を収納する容器の蓋材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそばは、飲食の際、排湯が必要である。容器に設けられた孔の表面に接着された蓋の一部分を剥離し、調理の仕上げに、容器の孔を使用して湯切りする機構になっている。
【0003】
従来、即席焼きそばの食品容器は、図9に示すような蓋材1が取り付けられた食品容器が使用されていた。食品容器は、内部に食品が充填される容器本体2の開口した上部を覆うように蓋材1が取り付けられて構成されている。蓋材1の端近傍に、容器本体2の内部に連通する液体排出口である孔5が所定の部位に形成されている。孔5の表面側に、孔5を覆うシート18がある。
【0004】
このような食品容器で、蓋とシートを別々に製造し、蓋には予め孔を開けておく方法は、工程が複雑で、費用も掛かる。見た目にも、あまりよくない。そこで、蓋に予め孔を開けるのではなく、2つに剥離可能なフィルムを使用し、それにハーフカットで孔を形成し、蓋の一部分を剥離して孔状の液体排出口を露出させる事が安価で、効率的である。この方法を、より安定的に剥離を行うため、色々改善の提案が出されている
孔を露出させる機構として、孔形状に沿って剥離ニスを部分的に塗り分ける方法が知られている(特許文献1)。しかし、孔を形成する為にシーラント側から施すハーフカットと剥離ニスとの位置合わせが難しいという製造上の問題があった。
【0005】
それに対し、プラスチックフィルムおよび樹脂間での界面剥離機構を用いて湯切り孔を露出させる方法に関し、湯切り孔の表面材を剥離することによって湯切り孔形成用ハーフカットの内側部分が大きく撓むことなく基材側から分離できるとの内容が報告されているが(特許文献2)、実際には剥離強度のばらつきにより孔の脱落が発生する問題があった。
【0006】
また、孔形状をU字型にすることによって孔脱落を防ぐことができるとの内容が報告されているが(特許文献3)、湯切りの際内容物が詰まりやすいなどの不具合が発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−290725号公報
【特許文献2】特許第4369713号公報
【特許文献3】特許第4231311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば、春雨など、またはゼリーやところてん等のように、飲食の前に排水または排湯が必要な容器の湯切り蓋材に関するものであり、湯切り孔を露出させる際の剥離において、排水、排湯に用いる孔が確実に開けられ、かつ、製造時に剥離ニスの印刷位置とハーフカット孔の見当合わせのよ
うな効率の悪い工程が必要なく、さらに剥離時液体排出口形成部の脱落が発生しない、剥離機構の優れた湯切り蓋材に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係わる発明は、一部の層を剥離することによって、孔を露出させる湯切り蓋材であって、少なくとも 外側より、紙基材層10、ポリオレフィン系樹脂層20、プラスチックフィルム層30、シーラント層40、の順序で積層され、プラスチックフィルム層30とポリオレフィン系樹脂層20との間で界面剥離が可能であり、剥離後に紙基材層10とポリオレフィン系樹脂層20よりなる上材と、プラスチックフィルム層30とシーラント層40よりなる下材とを剥離する時、ハーフカットに囲まれた液体排出口形成部11が上材に追従して形成した孔5を設けた湯切り蓋材であり、前記プラスチックフィルム層(30)と前記ポリオレフィン系樹脂層(20)間の剥離強度が0.1N/15mm以上、1.0N/15mm以下であって、上材の腰強度を3.0N/15mm以上20N/15mm以下、かつ前記下材の腰強度を0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下であり、孔が辺A、B、Cの3辺と、辺B、辺Cとで挟まれる角にRを設け、辺Aと辺Bと間の角度α、辺Aと辺Cとの角度βを持った形状であり、該形状の辺A、B、Cと、R、角度α、βがそれぞれ、2mm≦A≦10mm、4mm≦B+C≦20mm、1mm≦R≦8mm、また、角度αと角度βは、鋭角または直角とし、蓋を開ける方向に、上記孔5の辺B、辺Cとに挟まれる角に設けたRが向くように、方向を合わせたことを特徴とする湯切り蓋材である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記蓋材において、プラスチックフィルム層30とシーラント層40の間にアルミニウム層32が積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の湯切り蓋材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば、またはゼリーやところてん等のように、飲食の際排水または排湯において、孔を露出させる際の剥離追従性が高く、確実に孔を開けることができる。また 剥離ニスを剥離部に使用する方式ではないので、そのような製造時にハーフカット孔の見当合わせなどの必要なく、能率的、効率的である。剥離時に孔脱落が発生しにくく、確実に孔を開けることができる。この為、液体排出口形成部11が上材50から外れて、容器内部などに落下するなどのことが起きにくい、開口機構の優れた湯切り蓋材を提供できる。
【0012】
本発明の請求項1によれば、本発明の湯切り蓋材は、紙基材層10、ポリオレフィン系樹脂層20、プラスチックフィルム層30、シーラント層40、の順序で積層された湯切り蓋材である。
この構成の内、ポリオレフィン系樹脂層20とプラスチックフィルム層30の間では、一定の融着強度を持つが、元々、大きな融着力はない。剥離のきっかけさえできれば、容易に剥離できるが、剥離のきっかけがなければ、簡単には剥離しない。また、プラスチックフィルム層30は、結晶化樹脂などで構成すれば、引っ張りなどの強度があり、剥離する時に形状や状態を保ち易い。これらの性質を利用して、剥離ニスを部分的に設けるなどの方式を取らなくても、簡単で、確実に開口する湯切り蓋材を発明するに至った。
【0013】
開口する部分には、予め開口する孔5にしたい所を、シーラント層40の方向からプラスチックフィルム層30までの深さは確実に、ハーフカットで切り込みを入れて囲み、プラスチックフィルム層30、シーラント層40から離し、ポリオレフィン系樹脂層20と紙基材層10の上材50には深くカットの刃が入らないようにする。このハーフカットで液体排出口形成部11を形成し、紙基材層10、ポリオレフィン系樹脂層20で構成される上材50にこの液体排出口形成部11は融着したままにする。
そして、上記上材50と、プラスチックフィルム層30、シーラント層40で構成される下材60とに分離する時、液体排出口形成部11を上材50に追随させることで、液体排出口形成部11を下材60から外して露出させ、孔5を得る。
この時の上材50の腰強度が3.0N/15mm以上20.0N/15mm以下であり、かつ下材60の腰強度が0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下とすることによって、上材と下材とを剥離する時に、上材と下材が合わさっている面と上材50のみになっている境目の上材に発生する剥離角度rが大きくなり、ハーフカットに囲まれた液体排出口形成部11が上材50に確実に追随するようになる。
【0014】
さらに、孔5が辺A、B、Cの3辺と、辺B、辺Cとで挟まれる角に曲線であるRを設け、辺Aと辺Bと間の角度α、辺Aと辺Cとの角度βを持った形状とし、該形状の辺A、B、Cと、R、角度α、βがそれぞれ、2mm≦A≦10mm、4mm≦B+C≦20mm、1mm≦R≦8mm、また、角度αと角度βは、鋭角または直角とし、蓋を開け始める方向に、上記孔5の辺B、辺Cとに挟まれる角に設けたRが向くように、剥離する方向を合わせる。このことにより、液体排出口形成部11の外側の周囲では、上材の剥離しない点が剥離方向では1点で局所的であり、その剥離しない液体排出口形成部11における1点の周囲はRなので、剥離しないようその周囲が支え、かつ、剥離開始に要する力が少ない状態でいる。そして、剥離される部分と剥離しない部分との境が、1点から徐々に2点になり、その開口幅が剥離と直角方向に次第に拡大していくように上材50と下材60の大部分の所は剥離していくようになるので、無理がなく、液体排出口形成部11は上材50とは剥離せず、下材60に孔5が形成される。
その結果、下材60から上材50を剥離する時に、液体排出口形成部11の上材50からの脱落が発生しないので、安定して液体排出口である孔5を形成できる。
【0015】
さらに、本発明の請求項1によれば、ポリオレフィン系樹脂層20とプラスチックフィルム層30との剥離強度が、0.10N/15mm以上1.0N/15mm以下にしたので、液体排出用剥離部4の上材50を下材60からさらに、容易に剥離できる。かつ、下材60から上材50を剥離する際に、液体排出口形成部11の上材50からの脱落を防ぎ、孔5をより安定的に形成できる。
【0016】
本発明の請求項3によれば、蓋材において、プラスチックフィルム層30とシーラント層40の間にアルミニウム層32を積層することで下材60の腰強度が向上させ、ポリオレフィン系樹脂層20とプラスチックフィルム層30との界面剥離を安定させて、剥離のRを確実に大きくすることができるので、下材60から上材50を剥離する際に、液体排出口形成部11の上材50からの脱落を防ぎ、液体排出口である孔5をさらに安定的に形成できる。
【0017】
以上のように、本発明により、水または湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば、またはゼリーやところてん等のように、飲食の際排水または排湯において、孔を露出させる際の剥離強度が低く、確実に孔を開けることができる。また、製造時にハーフカット孔の見当合わせが必要ない。さらに剥離時に孔脱落が発生せず、確実に孔を開けることができ、孔部のハーフカット部フィルムが外れて、容器内部などに落下することもない、剥離機構の優れた湯切り蓋材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の蓋材が取り付けられた食品容器の一例を示す図で、図1−1は平面図、図1−2は側面図である。
【図2】本発明の容器に焼きそばを入れた実施例の使用方法を断面図で現したもので、図2−1は、蓋の液体注入用剥離部3を剥がし、お湯を注入している図であり、図2−2は、蓋の液体注入用剥離部3を閉じて、熱湯による調理中の図であり、図2−3は、蓋の液体排出用剥離部4を剥がし、液体だけ排水する孔5を開けて、排湯している状態の図である。
【図3】本発明の蓋材における熱湯排湯用剥離部4を剥がし、熱湯だけ排湯する液体排出口である孔5を開けている斜視図である。
【図4】図1の液体排出口形成部、D−D線における断面図である。
【図5】図4の蓋材の上材50と下材60とを界面剥離して液体排出口である孔5を形成する状態の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の蓋材にアルミニウム層32を積層した構成の一例を示す断面図である。
【図7】図6の蓋材の上材50と下材60とを界面剥離して液体排出口である孔5を形成する状態の一例を示す断面図である。
【図8】図3の蓋材の液体排出口である孔5の形状を表す図である。
【図9】従来の即席焼きそば容器の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、蓋材1が取り付けられた食品容器で、即席焼きそばの一例を示す図面である。本発明の食品容器は、例えば熱湯を注いで調理する即席ラーメンや即席焼きそば、またはゼリーやところてんなどの容器として使用できるものである。液体注入用剥離部3は、剥離開始用のつまみ6で引き剥がすことで、容器本体2と、蓋材1のシーラント層40との間で剥離するように設計されている。その液体注入用剥離部3の範囲は、剥離指示線8で指示され、そこまで、剥離してから、熱湯などを入れるようになっている。もちろん、この液体注入用剥離部3は、即席焼きそばには必要であるが、蜜まめ、ゼリーやところてんなどでは、予め調味液に浸しており、調理用の液体(湯)の注入は必要ないので、その場合は、液体注入用剥離部3は設けなくても良いが、食す直前に液体を排出しやすいよう、空気を入れる小穴が開けられるように、通常、同様の対応をしておく。液体排出用剥離部4は、中身の調理用液体を排出する時に、排出用剥離部のつまみ14を持って引き剥がす。この時、ハーフカットの剥離開始線7があるので、そこから、蓋材1表面側の上材50と下材60との間で剥離する。上記ハーフカットの剥離開始線7に設けたハーフカットの代わりに、つまみ14部分のみ下材がない状態にするか、融着阻害剤を塗布するなどで、上材50と下材60が融着しない状態にしていてもかまわない。
【0021】
図2は、本発明の蓋材1を使用した容器として、代表的な即席焼きそばにおける実施例の使用方法を模式的に現した図である。
図2−1は、蓋のつまみ6で、液体注入用剥離部3を剥がし、お湯17を注入している図で、容器本体2と、蓋材1のシーラント層40との間で剥離させている。この部分は、蓋材1全体が、調理用液体である湯を注入するので、注入可能な大きさの面積が必要だが、再度蓋ができるよう、できるだけ小さい面積に抑える必要があり、図1の剥離指示線8位置が目安である。但し、ゼリーやところてんなどでは、調理用の液体(湯)の注入は必要ないので、このような液体注水用剥離部3や剥離指示線8はいらない。
図2−2は、注湯後、再度液体注水用剥離部3を閉じて、熱湯17による調理中の図であり、蓋をしてから一定の時間調理するので、蓋材に金属層などが入っていると無理に、蓋が巻き上がらないように固定しやすい。この状態で内容物である麺11が茹でられる。 図2−3は、蓋の液体排出用剥離部4を剥がし、液体だけ排水する孔5を開けて、排湯している状態の図である。蓋材1は、剥離指示線9の位置から、上材50と下材60に分かれ、上材50のみが容器本体2から剥がれるが、その時、液体排出用の孔5部分の下材60は、ハーフカットされ、上材50に融着したまま持っていかれる状態にする必要がある。
【0022】
図3は、本発明の蓋材における熱湯排出用剥離部4を剥がし、熱湯だけ排湯する液体排
出口である孔5を開けている斜視図である。剥離された上材50には、つまみ9の下材部分や液体排出口である孔5に相当する下材が融着したまま残っている。
このように、部分的に熱湯排湯用剥離部4のみ剥離して孔5を形成する為に、本発明者は蓋材の製造を工夫し、目的を達成することが可能になった。
【0023】
本発明の上材と下材の剥離後、紙基材層10とポリオレフィン系樹脂層20よりなる上材の腰強度を3.0N/15mm以上20N/15mm以下、かつプラスチックフィルム層30とシーラント層40よりなる下材の腰強度を0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下とした。この腰強度の制約をすることで、剥離時に上材の剥離角部に発生する剥離角度rが大きくなり、ハーフカット14にて形成した孔部分11が上材50に追随し、確実に剥離しやすくなる。
さらに、辺A、B、Cがそれぞれ 2mm≦A≦10mm、4mm≦B+C≦20mmを満たし、かつ辺Bと辺Cを延長した際の交点となる部分に、1mm≦R≦8mmを満たすRを付与することによって、剥離きっかけ部分の長さがより小さく局所的になり、剥離開始に要する力が少なくてすむため、剥離時の孔脱落が発生しにくくなる。ここで、辺Aと辺Bと間の角度α、辺Aと辺Cとの角度βは、鋭角または直角(0度<α≦90度、0度<β≦90度)にする。また、このRは、上記性能を発揮する為には、剥離が開始する側に設ける。
もし、この辺B、辺Cとで挟まれる角に、Rが小さいか、角の場合、上材の剥離しない液体排出口形成部11における開始点の1点を、剥離しないようその周囲が支えられず、下材に取られたりしやすい。また、この辺B、辺Cとで挟まれる角のRが8より大きい場合も、剥離される部分と剥離しない部分との境が、一気に一定の幅で引っ張り合いになり、端部も上材に支えきれず、下材に取られたりしやすい問題が出るので、上記制約を設け、確実に液体排出口形成部11である孔5は、1mm≦R≦8mm の制限をつけている。液体排出口形成部11は、こうした上記条件を付けることで、上材の剥離しない点が剥離方向では1点で局所的であり、その剥離しない液体排出口形成部11における1点の周囲はRなので、剥離しないようその周囲が支え、かつ、剥離開始に要する力が少ない状態でいる。そして、剥離される部分と剥離しない部分との境が、1点から徐々に2点になり、その開口幅が剥離と直角方向に次第に拡大していくように上材50と下材60の大部分の所は剥離していくようになるので、無理がなく、液体排出口形成部11は上材50とは剥離せず、下材60に孔5が形成される。このことが、確実に孔5を得るのに重要なことである。
【0024】
ここで、腰強度は、紙、フィルム、金属箔などの単体や、それら複合積層体の剛性、弾性などと同様な特性を表す一つの特性値である。腰強度は、ループスティフネス測定値である。測定方法は、幅15mm、長さ12cmの短冊状のサンプルでループを作り、押し潰し距離20mm、圧縮速度3.5mm/秒にてループを潰し、ループの反発力を測定し、ループスティフネス測定値とする。測定装置としては、ループスティフネステスター{(株)東洋精機製作所製)}が例示できる。
【0025】
本発明の請求項2によれば、ポリオレフィン系樹脂20とプラスチックフィルム層30との剥離強度が、0.10N/15mm以上1.0N/15mm以下であることを特徴とする。0.15N/15mm以上0.5N/15mm以下が好ましい。0.10N/15mm以上1.0N/15mm以下であれば、ほとんどのユーザーが液体排出用剥離部4の上材を容易に剥離除去して液体排出口を露出することができる。また剥離強度が0.10N/15mm未満になると、除去領域部の上材50を剥離したときに、液体排出口形成部11の一部が上材に追随されないで液体排出口を形成しない場合がある。剥離強度が1.0N/15mm以上になると強度が強い面、剥離時にバラツキが生じて安定して液体排出口が形成されないこともあるし、小さな剥離開始のつまみ7では、女性や子供では剥離するのに力が足りない場合があり、確実に剥離するのが難しい。
【0026】
上記剥離強度は、引張り・圧縮試験機テンシロンRTF−1250{(株)エー・アンド・デイ製}を用い、JIS−Z1707に従って測定したものである。
【0027】
図4は、図1の液体排出口形成部、D−D線における断面図である。蓋材1は、紙基材層10、ポリオレフィン系樹脂層20、プラスチックフィルム層30、イージーピール性を有するシーラント層40からなっている。ハーフカット15に囲まれた液体排出口形成部11は、プラスチックフィルム層30、シーラント層40の一部から形成されている。またハーフカット15は、少なくともプラスチックフィルム層30まで貫通していればよい。
【0028】
図5は、蓋材1の上材50と下材60とを界面剥離して、液体排出口5を形成する状態の一例を示す断面図である。蓋材1の液体排出用剥離部4における上材50を剥離するときに、ハーフカット15に囲まれた液体排出口形成部11が上材50に追随して、下材60に液体排出口である孔5が露出され形成される。
【0029】
図6は、蓋材のプラスチックフィルム層30とシーラント層40との間にアルミニウム層32を積層した一例を示す断面図である。アルミニウム層の厚みは、通常食品用途の包装材に使用される7〜12μmが好ましい。また即席麺のように注湯が必要な場合、アルミニウム層を設けることによって、蓋材の剛性、腰強度が向上し、また、調理中に蓋を戻して容器本体2に引っ掛けておく為に必要な追従性も向上するので、開封した状態を維持し易くなる。その結果の作業性が向上され、使い易い蓋材とすることができる。またアルミニウム層を設けることにより、蓋材に遮光性やガスバリア性を付与することができるために、内容物の保存性を向上できるという利点もある。
【0030】
紙基材10としては、アート紙、コート紙、上質紙、晒クラフト紙、などが主に挙げられるが、特に限定されるものではない。紙坪量について特に規定はないが、50〜250g/m、好ましくは、80〜150g/mがより望ましい。また、紙基材の表面や裏面に、絵柄や遮光性を付与する印刷を付与してもよい。
【0031】
プラスチックフィルム層30としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂類、6−ナイロン、6,6−ナイロンや11−ナイロン等のポリアミド樹脂類、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化樹脂、ポリイミド樹脂など、あるいはこれらの高分子の共重合体など、耐熱性を有するプラスチックフィルムが使用できる。厚みについて特に規定はないが、9〜100μmのものが好ましく、9〜25μmがより望ましい。また、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの添加剤を加えることができ、必要に応じて適宜添加される。なお、これらのプラスチックフィルムの内面に遮光性を付与する印刷、若しくは遮光性材質のフィルムをラミネートしたものを用いても良いし、バリア性を有するものでも良い。
【0032】
シーラント層40としては、低温シール性に優れたものが望ましく、シール温度の変化によらず、シール強度に変化のないものが望ましい。シーラント層40は、充填時後、容器フランジ部とシールされるが、蓋材への抜き加工自体は、充填時、充填後のいずれでもよく、限定されない。
剥離特性については特に限定されず、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプ、界面剥離タイプのいずれのタイプを用いてもよい。
【0033】
凝集破壊タイプは、シーラント層自体が凝集破壊するタイプで、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂を混合した樹脂を用いて、フィルム化し、中間層であるプラスチックフィルム層30に積層したり、またはこの樹脂の塗工液を塗布することに
より使用することができる。
【0034】
層間剥離タイプは、共押出し法にて3層フィルムを作成し、中間から剥離するものである。この共押出しフィルムを中間層であるプラスチックフィルム層30に積層し使用することができる。
【0035】
界面剥離タイプは、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の酢酸ビニルの混合比率を上げた樹脂を用いて、フィルム化し、プラスチックフィルム層30に積層して使用することができる。
【0036】
プラスチックフィルム層30とシーラント層40の厚みについては、蓋材の剥離後に下材となる部分である為、プラスチックフィルム層30とシーラント層40の積層部分の腰強度が0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下となるよう、適宜それぞれの厚みを設計する必要がある。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂層20としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの共重合樹脂などが挙げられるが、取り扱いの面から低密度ポリエチレンの使用がより好ましい。
また、紙基材層10とプラスチックフィルム層30をエクストルージョンラミネート法によりラミネートする押出し温度としては280℃〜340℃が適しており、280℃より低い場合は製膜性が劣るだけでなく、ポリエチレン自身の表面酸化が不足し、紙基材10とプラスチックフィルム層30のラミネート強度の低下を引き起こしてしまう。また、340℃よりも高い温度では樹脂の分解がすすんでしまうため、均一な加工ができないだけでなく、ラミネート強度の低下を引き起こしてしまう。
【0038】
プラスチックフィルム層30とオレフィン系樹脂20の界面にはアンカーコートを塗布しないことが望ましい。アンカーコートを塗布しないことによりプラスチックフィルム30とオレフィン系樹脂20間のラミネート強度を0.10N/15mm以上3.0N/15mm以下とすることが可能となる。
また、紙基材10とポリオレフィン系樹脂20間のラミネート強度を安定させる為、紙基材10にコロナ処理、オゾン処理などを施しても良い。
オレフィン系プラスチック樹脂20の厚みとしては、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより望ましい。
この際、蓋材の剥離後に上材50となる紙基材10とポリオレフィン系樹脂層20の積層部分の腰強度は、3.0N/15mm以上20.0N/15mm以下となるよう設計する必要がある。
【0039】
プラスチックフィルム層30とシーラント層40との接着方法としては、例えば、ウエットラミネーション方法、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、ホットメルトラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、及び該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などの公知の方法を使用することができる。
【0040】
容器フランジ部のシールする端面である被着体がポリエチレン樹脂(PE)の場合は、シーラント層40の樹脂として、「ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂」の組合せで製造する。例えば、「ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)」、「ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)」、「ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)」、「ポリエチレン樹脂(PE)/エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)」の組合せが好ましい。
【0041】
次に、容器の該被着体がポリスチレン樹脂(PS)の場合は、シーラント層40の樹脂として、「ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂」の組合せで、「エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)/ポリブテン樹脂(PB)」、「ポリエチレン樹脂(PE)+エラストマー+石油樹脂/ポリブテン樹脂(PB)」の組合せが好ましい。
【0042】
次に、容器の該被着体がポリプロピレン樹脂(PP)の場合は、シーラント層40の樹脂として、「ベース樹脂/ブレンド用の熱可塑性樹脂」の組合せで、「ポリプロピレン樹脂(PP)/ポリスチレン樹脂(PS)」、「ポリプロピレン樹脂(PP)/ポリエチレン樹脂(PE)」の組合せが好ましい。
【0043】
シーラント層40の厚さは、シール強度、加工性を考慮すると、15〜100μmの範囲内であることが好ましく、30〜70μmの範囲内がより好ましい。
【0044】
また、孔5を露出させる為のハーフカット線はポリオレフィン系樹脂層30の内側で止まることが好ましいが、深くても、紙層に深く食い込まないようにする。
【0045】
蓋材形状として、注湯部を開口する為のつまみ以外に、蓋材の剥離を目的としたつまみを少なくとも1つ以上設けても良い。また、注湯部の対角線上に貫通スリットを付与したタブを設けても良い。そこに注湯部の開口タブを差し込むことにより、開口部を更に安定して保持させることもできる。但し、この貫通スリットを設ける場合、内容物の劣化が起きにくいものであることが前提になる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
表面の紙基材層10として、坪量が105g/m2の紙基材(グラビアアート紙)と、プラスチックフィルム層30として厚み12μmのポリエステルフィルム(PET)(フタムラ化学製 FE2001)を、エクストルージョンラミネート法により、2層目のポリオレフィン系樹脂層20として低密度ポリエチレン樹脂をサンドイッチさせ、320℃で押出し貼り合わせた。さらにそのプラスチックフィルム層30面にポリスチレン系樹脂を含むシーラント層40を同様に、エクストルージョンラミネート法により、280℃で押出し積層品を得た。続いて、この巻取り状の積層品をシーラント側からA=6mm、B=6mm、C=6mm、R=2mmとなるような湯切り孔をハーフカット11にて設け、蓋材形状に抜き加工を実施し、蓋材を得た。
その後、発砲ポリスチレン容器に、135℃、20N、0.5秒間の条件にてシールし、評価用サンプルを得た。
尚、この構成の剥離強度は0.35N/15mmであった。
<実施例2>
プラスチックフィルム層30とシーラント層40の間にアルミ箔7μmを積層する以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを得た。
<実施例3>
湯切り孔をA=10mm、B=7mm、C=10mm、R=1mmにハーフカットにて設けとする以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。
<実施例4>
紙坪量を85g/m2とし、A=10mm、B=8mm、C=8mm、R=4mmとする以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。
<実施例5>
アルミ箔の厚みを9μmとし、A=10mm、B=8mm、C=8mm、R=8mmとする
以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。
<実施例6>
アルミ箔の厚みを12μmとする以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。<比較例1>
プラスチックフィルム層とシーラント層の間にアルミ箔15μmを積層する以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例2>
紙坪量を75g/m2とし、アルミ箔を9μmとする以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例3>
アルミ箔を7μmとし、R=0mmとする以外は、実施例2と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例4>
紙機材層20とポリエステル基材層の間にポリオレフィン系樹脂層20をエクストルージョンラミネート法でサンドイッチさせるのに、275℃で押出し貼り合わせた以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例5>
R=0.8mmとする以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例6>
A=12mm、B=8mm、C=6mm、R=2mmとする以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例7>
A=8mm、B=11mm、C=11mm、R=2mmとする以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを得た。
<比較例8>
R=9mmとする以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを得た。
下記に主な性能評価法を説明する。
(a)剥離強度・・・ サンプルを15mm幅にカットし、テンシロン(エー・アンドディー製:RTF-1250)を使用し、JIS−Z1707に従って測定した。
(b)腰強度・・・ サンプルを25mm幅にカットした後、上材、下材に剥離し、幅25mm、長さ12cmの短冊状にしてからループを作り、上材、下材各々の腰強度を、押しつぶし距離20mm、圧縮速度3.5mm/secにてループスティフネステスター(東洋精機製)にて測定した。
(c)孔脱落有無・・・ ハーフカット部分を開封した際の孔脱落有無をそれぞれ注湯前、注湯後にて評価した。
注湯後の評価は、容器に約95度のお湯を注入し3分間放置した後実施した。
【0047】
表1に実施例、比較例の評価結果を示す。
【0048】
【表1】

上材50と下材60間での剥離強度では、実施例1〜6、比較例1〜3、比較例5〜8では、0.10N/15mm以上1.0N/15mm以下の範囲内におさまっており、平均的なユーザーが手で容易に剥離できる強度であった。また上記各実施例では、5回の測定において良好に液体排出口が形成され、液体排出口形成部が脱落することは発生しなかった。比較例4では、剥離強度が0.1N/15mmを大きく下回り、0.05N/15mmであり、お湯の注入をしていない場合でも、上材50を剥離する時に、ハーフカット10に囲まれた液体排出口形成部11は、簡単に上材から剥離して、開口できなかったり、落下する問題が生じた。
【0049】
腰強度では、実施例1〜6では、上材の腰強度が3.0N/15mm以上20.0N/
15mm以下、下材の腰強度が0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下の範囲におさまっており、剥離強度も上述した範囲内であり、かつ良好に液体排出口が形成された。比較例1では、下材の腰強度が3.0N/15mmを上回り、3.5N/15mmで、注湯後液体排出口形成部11の脱落が発生した。比較例2では、上材の腰強度が、3.0N/15mmを下回り、2.4N/15mmであり、液体排出口形成部の脱落が注湯後に見られた。
【0050】
液体排出口形成部のでは、実施例1〜6では、辺A、B、Cがそれぞれ 2mm≦A≦10mm、4mm≦B+C≦20mmを満たし、かつ辺Bと辺Cを延長した際の交点となる部分に、1mm≦R≦8mmも満たすRになっており、液体排出口形成部の脱落は見られなかった。しかし、比較例3、5では、Rが1mm未満で、5個中4個で、液体排出口形成部の脱落が注湯前でも発生した。Rが8mm以上の比較例8でも、5個中3個で液体排出口形成部の脱落が注湯前に発生した。
比較例6では、Aが10mmよりも大きく、液体排出口形成部の脱落が注湯後に見られ、比較例7では、B+C=22mmで、液体排出口形成部の脱落が注湯後に見られた。なお、Aが2mmよりも小さいものや、B+C≦4mmの場合、フィルム加工の段階で抜き刃に液体排出口形成部が入り込み、加工時に抜けてしまい、製品が作ることができなかった。
【符号の説明】
【0051】
1・・・ 湯切り蓋材
2・・・ 容器本体
3・・・ 液体注水用剥離部
4・・・ 液体排出用剥離部
5・・・ (液体排出用)孔
6・・・ つまみ(注水側)
7・・・ 剥離開始線(排水用)
8・・・ 剥離指示線(注水用)
9・・・ 剥離指示線(排水用)液体排出口形成部
10・・・ 紙基材層(表面層)
11・・・ 液体排出口形成部
12・・・ 剥離部(上材と下材との間)
14・・・ つまみ(排水側)
15・・・ ハーフカット
16・・・ 麺
17・・・ 湯
20・・・ ポリオレフィン系樹脂層
30・・・ プラスチックフィルム層
32・・・ アルミニウム層
40・・・ シーラント層
50・・・ 上材
60・・・ 下材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部の層を剥離することによって、孔を露出させる蓋材であって、少なくとも 外側より、紙基材層(10)、ポリオレフィン系樹脂層(20)、プラスチックフィルム層(30)、シーラント層(40)、の順序で積層され、プラスチックフィルム層(30)とポリオレフィン系樹脂層(20)との間で界面剥離が可能であり、剥離後に紙基材層(10)とポリオレフィン系樹脂層(20)よりなる上材と、プラスチックフィルム層(30)とシーラント層(40)よりなる下材とを剥離する時、ハーフカットに囲まれた液体排出口形成部(11)が上材に追従して孔(5)が形成される湯切り蓋材であり、前記プラスチックフィルム層(30)と前記ポリオレフィン系樹脂層(20)間の剥離強度が0.1N/15mm以上、1.0N/15mm以下であって、前記上材の腰強度を3.0N/15mm以上20N/15mm以下、かつ前記下材の腰強度を0.30N/15mm以上3.0N/15mm以下であり、孔が辺A、B、Cの3辺と、辺B、辺Cとで挟まれる角にRを設け、辺Aと辺Bとの間の角度α、辺Aと辺Cとの間の角度βを持った形状であり、該形状の辺A、B、Cと、R、角度α、βがそれぞれ、2mm≦A≦10mm、4mm≦B+C≦20mm、1mm≦R≦8mm、また、角度αと角度βは、鋭角または直角とし、蓋を開け始める方向に、上記孔(5)の辺B、辺Cとに挟まれる角に設けたRが向くように、方向を合わせたことを特徴とする湯切り蓋材。
【請求項2】
前記蓋材において、プラスチックフィルム層(30)とシーラント層(40)の間にアルミニウム層(32)が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の湯切り蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23245(P2013−23245A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158757(P2011−158757)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】