説明

湯水使用管理システム

【課題】湯水の使用に応じて消費されるエネルギーをきめ細かく管理できる湯水使用管理システムを提供すること。
【解決手段】湯水使用管理システム1は、湯及び水の供給を受けて適温水を吐水する複数の水栓2〜4と、吐水する適温水が有する熱エネルギーを測定するために各水栓に対応して設けられたエネルギー測定手段25、45と、適温水の熱エネルギーが吐水に応じて消費されたとして対応する水栓の消費エネルギーを把握し、吐水に応じた消費エネルギーのデータを水栓毎に個別に蓄積する消費エネルギーデータ蓄積手段11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水の使用に応じて消費されるエネルギーを管理する湯水使用管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅で消費されるエネルギーを管理するためのシステムとして、HEMS(Home Energy Management System)等のエネルギー管理システムが知られている。エネルギー管理システムによれば、住宅内の各装置で実際にどのようにエネルギーが消費されているかを管理できる。エネルギー管理装置としては、各装置の消費エネルギーを報知することで使用状況の「見える化」を実現したシステムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このシステムでは、キッチン水栓、洗面水栓、浴室水栓等による湯水の使用状況を給湯ポンプの稼動状況に応じて検知することにより、湯水の使用に応じて消費されるエネルギーを管理対象に含めている。
【0003】
しかしながら、前記従来のエネルギー管理システムでは、次のような問題がある。すなわち、前記従来のシステムでは、キッチン水栓、洗面水栓、浴室水栓など各水栓の使用状況を個別に検知できず、住宅等で消費されるエネルギーの1/3程度を占めると言われる給湯に伴うエネルギー消費をきめ細かく把握できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−169314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、湯水の使用に応じて消費されるエネルギーをきめ細かく管理できる湯水使用管理システムを提供しようとする発明である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、湯及び水の供給を受けて適温水を吐水する複数の水栓と、吐水する適温水が有する熱エネルギーの大きさを測定するために各水栓に対応して設けられたエネルギー測定手段と、適温水が有する熱エネルギーが吐水に応じて消費されたとして対応する水栓の消費エネルギーを把握し、吐水に応じた消費エネルギーのデータを水栓毎に個別に蓄積する消費エネルギーデータ蓄積手段と、を備えた湯水使用管理システムにある。
【0007】
本発明の湯水使用管理システムでは、適温水の吐水に応じて消費されたエネルギーのデータが水栓毎に個別に把握され、蓄積されている。例えば、住宅を対象としたシステムであれば、キッチン水栓、洗面水栓、浴室水栓など各水栓の使用状況を個別に検知可能となり、住宅等で消費されるエネルギーの1/3程度を占める給湯に伴うエネルギー消費をきめ細かく把握、管理できる。
【0008】
本発明の湯水使用管理システムは、湯水の使用に応じて消費されるエネルギーをきめ細かく管理できる優れたシステムである。
【0009】
本発明における消費エネルギーデータ蓄積手段が、各水栓の消費エネルギーデータを蓄積するに当たっては、過去1週間については1時間毎の消費エネルギーデータを記憶し、1年前から1週間前までの期間については1日毎の消費エネルギーデータを記憶しても良い。このように古いデータほど蓄積する際の刻みを粗くして集約すれば、長期間に渡る消費エネルギーデータを効率良く蓄積できると共に、所望のデータを検索して取り出す際の処理負担を軽減できる。
【0010】
また、前記エネルギー測定手段は、水栓から吐水する適温水の温度、又は水栓に供給された湯の温度を計測する温度計測手段と、水栓からの適温水の吐水量、又は水栓に対する湯の供給量を計測する湯水量計測手段と、を含んでいると共に、適温水の温度及び吐水量、あるいは湯の温度及び供給量に基づいて適温水が有する熱エネルギーの大きさを計測することが好ましい。
【0011】
適温水の温度を計測する温度計測手段と、適温水の吐水量を計測する湯水量計測手段と、を組み合わせたエネルギー測定手段によれば、適温水の熱エネルギーを直接的に測定できる。測定する熱エネルギーとしては、絶対零度を基準とした熱エネルギーであっても良く、20℃や10℃等、季節や地域に応じた平均的な温度を基準とした相対的な熱エネルギーであっても良い。
【0012】
さらに、水道水の温度を基準とした適温水の相対的な熱エネルギーであれば、湯の供給量及び温度を利用して測定可能である。水道水の温度を基準とした場合には、適温水を得るために使用された水道水の熱エネルギーをゼロと取り扱いでき、これにより、前記適温水の相対的な熱エネルギーが、供給された湯の熱エネルギーと等しくなるからである。水栓に供給された湯の温度を計測する温度計測手段と、その供給量を計測する湯水量計測手段と、を組み合わせたエネルギー測定手段によれば、適温水を得るために使用された湯の熱エネルギーを測定することにより前記適温水の相対的な熱エネルギーを測定可能である。ここで、前記供給量や吐水量は、例えば、単位時間当たりの流量と、その流量が維持された時間と、の積により計測できる。蓄積型の流量計であれば、直接的に計測することも可能である。
【0013】
また、前記エネルギー測定手段が測定した熱エネルギーを水道水の温度あるいは外気温度により補正する補正手段を備えていることが好ましい。
適温水の吐水に応じて消費されるエネルギーは、その適温水を得るために使われたエネルギーとほぼ等しいと考えることができる。例えば、40℃の適温水を得るとき、夏と冬では必要となるエネルギーが異なってくる。適温水を得るために使用する水道水の温度が異なるからである。そこで、前記エネルギー測定手段が測定した熱エネルギーを水道水の温度で補正すれば、熱エネルギーの計測精度を向上できる。
【0014】
外気温度は、給湯器等の湯の供給源から水栓に至る給湯配管からの放熱量に影響を与える。外気温度が低いほど、給湯配管等からの放熱量が増えてエネルギー効率が悪くなる。外気温度に応じた上記のような傾向を補正すれば、熱エネルギーの計測精度を向上できる。さらに、配管長さが長くなるほど、上記の傾向は一層、顕著になるので、給湯配管が長くなるほど、外気温度に応じた補正度合いを高めることも良い。
【0015】
また、前記消費エネルギーデータ蓄積手段が蓄積する消費エネルギーデータを水栓毎に区別して表示する表示手段を備えていることが好ましい。
この場合には、水栓毎のエネルギーの消費度合いを「見える化」でき、使用者に知らしめることができる。各水栓のエネルギーの消費度合いを把握できた使用者は、どの水栓の湯水の使用に留意すれば効率良く節約できるかを判断できるようになる。
【0016】
また、前記消費エネルギーデータ蓄積手段が水栓毎に個別に蓄積する消費エネルギーデータに基づいてエネルギー節約のアドバイスを生成し、表示する節約ナビ手段を備えていることが好ましい。
前記節約ナビ手段によるアドバイスとしては、例えば、消費エネルギーが最も多い水栓を指定して節約を心掛けるように勧めるアドバイスであっても良い。その水栓について設定温度や設定流量を抑えたときに予測される節約効果を併せて提示することも良い。予測される節約効果としては、冷房の設定温度を2℃高くすれば30%の省エネが可能というような一般的な節約効果であっても良い。前記アドバイスの有効性を高めるためには、対応する水栓の過去の使用実績に基づき、新しい設定を適用したときの節約効果を定量的に提示するのが良い。金銭的な節約効果を具体的に提示することも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例における、湯水使用管理システムの構成を示すシステム図。
【図2】実施例における、各水栓について蓄積された消費エネルギーデータを説明する説明図。
【図3】実施例における、エコ一覧画面を示す正面図。
【図4】実施例における、エネルギー消費画面を示す正面図。
【図5】実施例における、節約ナビ画面を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、住宅内の湯水の使用を管理する湯水使用管理システム(以下、管理システム1という。)に関する例である。この内容について、図1〜図5を参照して説明する。
【0019】
本例の管理システム1は、住宅内の各水栓について湯水の使用に伴う消費エネルギーを個別に把握し、管理するシステムである。この管理システム1では、タッチパネルディスプレイ111を備える管理装置11を中心として、無線通信を介して各水栓が接続されている。以下の説明では、まず、管理対象となる水栓の構成及び機能を説明し、その後で管理装置11の構成及び機能を説明する。
【0020】
本例のシステムで管理対象となる水栓は、キッチン台や洗面台の自動水栓2、バスタブ31に給水するお湯張り水栓3、浴室のシャワー水栓(図示略)、トイレットルーム内の手洗い水栓4など、適温水を吐水する混合水栓である。混合水栓に対しては、エコキュート(R)や温水器等の給湯器から延設された給湯配管122と、公共側から各戸に引き込まれた水道管から分岐した給水配管124と、が接続されている。
【0021】
混合水栓として、キッチン台及び洗面台の自動水栓2、バスタブのお湯張り水栓3、トイレットルームの手洗い水栓4の3例を説明する。
キッチン台及び洗面台の自動水栓2は、図示しないキッチン台等に立設される吐水管21と、吐水温度等を設定する操作部212と、吐水管21に適温水を供給する電子バルブユニット22と、制御機能や通信機能等を備えた制御通信ボックス25と、を備えている。この自動水栓2は、商用電源から電力供給を受けて動作する。
【0022】
吐水管21は、略J字状の円筒部材よりなり、Jの書き終わりの位置に吐水口が設けられている。Jの書き初めの位置に設けられたプレート状の台座211には、吐水の温度、流量を設定するための操作部212が形成されている。吐水口近くの外周面には、手かざし操作を検知する非接触スイッチ210が埋設されている。
【0023】
図示しないキッチン台の内部には、給湯配管122及び給水配管124の流量を個別に制御して湯と水を適宜、混合して適温水を生成する電子バルブユニット22が配設されている。電子バルブユニット22には、給湯配管122、給水配管124、及び両配管が集合した集合配管125が接続されている。集合配管125は、吐水管21に適温水を供給する下流側の配管である。なお、給湯配管122、給水配管124には、手動の止水栓230、231がそれぞれ設けられている。
【0024】
電子バルブユニット22では、外部制御可能な電子バルブ220、221が給湯配管122、給水配管124に設けられている。給湯配管122の電子バルブ220は、湯の流量を調整する流量制御弁222と、単位時間当たりの湯の流量Qhを計測する流量センサ224と、湯の温度Thを計測する温度センサ226と、を備えている。給水配管124の電子バルブ221は、水道水の流量を調整する流量制御弁223と、単位時間当たりの水の流量Qcを計測する流量センサ225と、水の温度Tcを計測する温度センサ227と、を備えている。集合配管125には、吐水管21に供給する適温水の温度Tmを計測する温度センサ24が設けられている。
【0025】
制御通信ボックス25は、CPU、ROM、RAM、I/Oを含むマイコンのほか、無線アンテナが外部接続された無線通信IC等が実装された制御基板(図示略)を備えている。この制御基板に対しては、流量制御弁222、223の制御線、温度センサ226、227、流量センサ224、225のセンサ信号線、操作部212の操作信号線等が接続されている。制御通信ボックス25は、ROMから読み出したソフトウェアをCPUで実行することにより、流量制御弁222、223の流量制御機能、吐水に応じた消費エネルギーを測定するエネルギー測定機能、管理装置11との間の通信機能等を実現する。なお、通信機能としては、特定小電力無線、ZigBee(R)規格の無線通信、無線LAN等の無線通信機能や、PLC(Power Line Communications)、有線LAN等の有線通信機能などを採用できる。
【0026】
(流量制御機能)
制御通信ボックス25は、止水中に非接触スイッチ210が手かざし操作されたとき、流量制御弁222、223を開弁して適温水の吐水を開始させる。吐水中においては、操作部212を利用して設定された吐水温度、吐水流量の適温水を吐水できるように流量制御弁222、223の弁開度を個別に制御する。単位時間当たりの吐水流量Qmは、流量センサ224による湯の流量Qhと、流量センサ225による水の流量Qcと、の合計流量として計測される。吐水される適温水の温度Tmは、集合配管125に設けられた温度センサ24により計測される。なお、本例の説明では、単位時間当たりに流れる体積を流量といい、吐水された総量(体積)、あるいは供給された総量(体積)を吐水量、供給量という。
【0027】
(エネルギー測定機能)
エネルギー測定手段としての制御通信ボックス25は、計測温度Tmの適温水の吐水に応じた消費エネルギーを測定する。本例では、水道水の温度Tcによって補正された適温水の熱エネルギーを測定し、この熱エネルギーを適温水の吐水に応じて消費されたエネルギーとして取り扱っている。所定の時間区間Δtにおける適温水の吐水量は(Qh+Qc)×Δtとして計測され、適温水の吐水に応じた消費エネルギーは、次式1のように測定される。

(消費エネルギー)=(Qh+Qc)×Δt×(Tm−Tc) ・・・式1
【0028】
式1のように消費エネルギーが測定される自動水栓2では、湯水量計測手段を構成する流量センサ224、225と、温度計測手段である温度センサ24と、の組み合わせによりエネルギー測定手段が構成されている。また、本例では、式1において水道水の計測温度Tcを適温水の計測温度Tmから差し引くことで補正された消費エネルギーを測定している。このように、本例の制御通信ボックス25は、適温水の熱エネルギーを補正する補正手段としての機能を備えている。なお、消費エネルギーの測定は、適温水の吐水中にのみ実行され、止水中は実行されない。
【0029】
(無線通信機能)
制御通信ボックス25は、消費エネルギーを測定する毎にそのデータを管理装置11に送信する。制御通信ボックス25は、消費エネルギーデータを送信するに当たって、送信元の自動水栓2を特定可能なIDコードを付加して送信する。さらに、管理装置11との間では、温度や流量等の設定データの送受信が可能になっている。
【0030】
別例の水栓は、バスタブ31のお湯張り水栓3である。このお湯張り水栓3は、前記操作部212に代えてコントロールパネル32を備えている点、図示しない吐水管がバスタブ31の内周壁面に開口している点、止水栓230、231が省略されている点を除き、キッチン台等の自動水栓2とほぼ同様に構成されている。なお、お湯張り水栓3の構成中、自動水栓2と同じ機能を備えた構成には、同じ符号を付してある。
【0031】
別例の水栓は、手洗い水栓4であり、商用電源からの電力供給を必要としない機械式の混合水栓である。商用電源を必要としない水栓であれば、住宅リフォーム時の後付け設置による管理システム1への組み込みが容易であり、例えば、トイレットルーム等への後付け設置に好適である。このような手洗い水栓4を本例の管理システム1に対応させるためには、エネルギー測定機能、無線通信機能等を備えた通信ボックス45を付設する必要がある。本例では、手洗い水栓4に供給される湯水を利用して自己発電した電力により通信ボックス45を動作させている。さらに、自己発電のための発電ユニット422、423を流量センサとして活用している。
【0032】
この手洗い水栓4は、図示しない手洗いカウンタ等に立設される円柱状のポスト部410と、ポスト部410の外周側面から径方向に立設された吐水管411と、ポスト部410の最上部に位置する操作部414と、を有している。操作部414は、ポスト部410と略同一径の円形キャップ415と、その外周面から径方向に突出する細長いピン状の操作レバー416と、により構成されている。
【0033】
手洗い水栓4の内部には、操作レバー416により弁開度を調整可能な機械式の混合バルブ(図示略)が収容されている。混合バルブは、2系統の流入路と1系統の流出路を備えている。2系統の流入路に対して湯、水がそれぞれ供給され、1系統の流出路から適温水が流出する。操作レバー416は、ポスト部410の軸回りの水平方向の回動操作と、レバー先端を引き上げるような垂直方向の回動操作と、が可能である。水平方向の回動操作に応じて湯と水の混合比率を変更して吐水温度を調節でき、垂直方向の回動操作に応じて吐水流量を調節可能である。
【0034】
手洗い水栓4に接続される給湯配管122には、湯の流れを電力に変換する発電ユニット422と、湯の温度Thを計測する温度センサ424と、が配設されている。給水配管124には、水道水の流れを電力に変換する発電ユニット423と、水の温度Tcを計測する温度センサ425と、が配設されている。発電ユニット422、423は、湯等の流れに応じて回転する水車と、水車に従動して回転する発電モータ(図示略)と、を備えている。発電モータの回転数は、湯等の流量に略比例している。本例では、発電ユニット422の回転数を所定の換算式に代入して流量Qhを算出している。発電ユニット422、423で発電された電力は、2次電池43に蓄電される。
【0035】
この手洗い水栓4に付設される通信ボックス45は、2次電池43から供給された電力で動作する。この通信ボックス45は、自動水栓2等の制御通信ボックス25と同様の無線通信機能を備えている。一方、エネルギー測定機能の構成は、若干相違している。エネルギー測定手段としての通信ボックス45は、湯の計測温度Thと湯の計測流量Qhを利用して消費エネルギーを測定する。
【0036】
通信ボックス45は、湯の熱エネルギーと水の熱エネルギーとの和が適温水の熱エネルギーとなる旨に基づき、次式2により消費エネルギーを測定する。

(消費エネルギー)=Qh×Δt×(Th−Tc)+Qc×Δt×(Tc−Tc)
・・・式2
【0037】
式2は、式1と同様、水道水の温度Tcによる補正を含んでおり、これにより、水道水の熱エネルギー分がゼロになるので、式2は、次式3のように整理される。

(消費エネルギー)=Qh×Δt×(Th−Tc) ・・・式3

この式3の通り、通信ボックス45では、補正のための水道水の温度Tcのほか、湯の温度Thと湯の流量Qhを利用して消費エネルギーが測定されている。つまり、自動水栓2とは異なり、手洗い水栓4では、流量センサ(湯水量計測手段)として利用可能な発電ユニット422と、温度計測手段である温度センサ424と、の組み合わせによりエネルギー測定手段が構成されている。なお、自動水栓2やお湯張り水栓3についても、手洗い水栓4と同様に消費エネルギーを測定することも可能である。
【0038】
次に、各水栓の消費エネルギーを管理する管理装置11について説明する。管理装置11は、薄い箱状の筐体に制御基板(図示略)を収容すると共に、正面側にタッチパネルディスプレイ111を設けた装置である。管理装置11は、キッチン等の壁への埋め込み設置に適した装置形状を有している。
【0039】
図示しない制御基板は、CPU、ROM、RAM、フラッシュROM、I/Oを含むマイコンのほか、無線アンテナが外部接続された無線通信IC、LCDコントローラIC等が実装された電子基板である。タッチパネルディスプレイ111は、液晶ディスプレイの液晶表示面に沿ってタッチスクリーンが配設されたタッチ機能付きディスプレイである。管理装置11は、無線通信により相互に通信可能な状態で各水栓の制御通信ボックス25、あるいは通信ボックス45等と接続されている。
【0040】
管理装置11は、ROMから読み出したソフトウェアをCPUで実行することにより、各水栓側から送信されてくる消費エネルギーデータを受信等するデータ通信機能、受信データに基づいて各水栓の消費エネルギーデータを蓄積する消費エネルギーデータ蓄積機能を実現する。さらに、管理装置11は、タッチパネルディスプレイ111に各水栓の消費エネルギーデータを表示する表示手段、エネルギーの節約をアドバイスする節約ナビ手段としての機能を備えている。
【0041】
(データ通信機能)
管理装置11は、各水栓側から送信された消費エネルギーデータを受信する。管理装置11は、受信したデータに含まれるIDコードにより送信元の水栓を特定する。さらに、本例の管理装置11は、各水栓側から温度や流量等の設定データを受信したり、各水栓の設定温度等を変更するための設定データを送信する。
【0042】
(消費エネルギーデータ蓄積機能)
消費エネルギーデータ蓄積手段としての管理装置11は、各水栓の消費エネルギーデータをフラッシュROMに個別に記憶させて蓄積する。管理装置11は、図2のごとく、1日のうちの1時間毎の各水栓の消費エネルギーデータ(同図中(a))、日毎の各水栓の消費エネルギーデータ(同図中(b))、月毎の各水栓の消費エネルギーデータ(同図中(c))等を蓄積している。また、本例の管理装置11は、管理対象の住宅と同じ家族構成、同様の設備を備え、気候的環境が似通った住宅の季節毎の平均的な消費エネルギーデータを予め蓄積している。
【0043】
前記表示手段及び節約ナビ手段としての機能を備える管理装置11は、タッチパネルディスプレイ111の表示画面に、図3のエコ一覧画面51、図4のエネルギー消費画面52、図5の節約ナビ画面53等を表示する。
エコ一覧画面51では、給湯器のシンボル515のほか、住宅内の各水栓がシンボル511で表示されている。画面内の左下には、節約アドバイスを受けるためのエコボタン513が配置されている。図3の例では、洗面台の手洗い水栓、トイレットルームの手洗い水栓、キッチン水栓、バスルームのお湯張り水栓及びシャワー水栓の各シンボル511が表示されている。各水栓のシンボル511の近傍には、省エネの達成度合いを表すエコ表示512が配置されている。エコ表示512では、同じ家族構成、同様の設備を備えた住宅の平均的な消費エネルギーに対して、直近の1週間で実際に消費されたエネルギーを対比した結果が葉っぱの数で表示される。平均的な消費エネルギーに対して実際の消費エネルギーが少ないほど葉っぱの枚数が多くなり、超過するほど葉っぱの枚数が少なくなる。
【0044】
エコ一覧画面51上で何れかの水栓のシンボル511にタッチ操作すれば、その水栓に対応する図4のエネルギー消費画面52を表示させることができる。一方、画面内左下のエコボタン513が操作されると、エコ表示512の葉っぱの枚数が2枚以下の水栓が選択され、図5の節約ナビ画面53が表示される。葉っぱが2枚以下の水栓が複数あれば、対応する節約ナビ画面53が順番に表示される。
【0045】
図4のエネルギー消費画面52は、キッチン水栓に対応する画面の例である。このエネルギー消費画面52は、エコ一覧画面51(図3)上で左下のキッチン水栓のシンボル511がタッチ操作されたときに表示される。このエネルギー消費画面52には、消費エネルギーの変化を表す実績グラフ521、グラフの横軸スケールを切り換えるためのスケール切換ボタン522、節約アドバイスを受けるためのエコボタン523、戻るボタン528が配置されている。
【0046】
実績グラフ521は、消費エネルギーデータ蓄積手段が蓄積する消費エネルギーデータ(図2参照。)を表示するグラフである。実績グラフ521では、縦軸に消費エネルギーが規定され、横軸に時間が規定されている。スケール切換ボタン522である日ボタン522A、月ボタン522B、年ボタン522Cをタッチ操作すれば、実績グラフ521の横軸を、それぞれ、1日24時間、1月、1年に切り換え可能である。なお、エネルギー消費画面52のエコボタン523は、省エネの度合いが十分ではなく図3のエコ一覧画面51で葉っぱが2枚以下であったときにのみ表示される。エコボタン523を操作すると、次の節約ナビ画面53が表示される。
【0047】
節約ナビ画面53は、図5のごとく、エネルギー節約のための節約アドバイスを表示するアドバイス表示欄535と、節約効果を表す節約グラフ531と、各種の操作ボタンと、が配置された画面である。アドバイス表示欄535には、エネルギーを節約するためのお勧めの温度及び流量設定が表示される。節約グラフ531は、水栓の消費エネルギーの実績グラフ(図4の実績グラフ521と同じ)に対して、お勧めの設定下で予測される消費エネルギーの予測グラフ(白抜きの棒グラフ)が重ね合わせて表示されたグラフである。さらに、グラフ内の余白には、お勧めの設定下で予測される省エネ率、及び節約できる金額の表示欄536が表示される。
【0048】
操作ボタンとしては、アドバイスを受ける旨のOKボタン534、画面表示を終了させるための戻るボタン538、適温水の温度、流量をマニュアルで変更するためのマニュアルボタン532がある。OKボタン534を操作すれば、対応する自動水栓について、アドバイス表示欄535のお勧めの温度、流量が自動設定される。マニュアルボタン532を利用して温度、流量を変更すると、その設定下で予測される消費エネルギーにより節約グラフ531の予測グラフが随時、更新される。このとき、予測される省エネ率、節約金額(設定によってはマイナスとなる可能性も有り得る。)も随時、書き換えられる。OKボタン534を操作すれば、マニュアルで選択された温度、流量が自動設定される。戻るボタン538を操作すると、節約ナビ画面53の表示が終了され、元の画面に切り換えられる。なお、非自動水栓に対応する節約ナビ画面(図示略)では、温度、流量を自動設定するためのOKボタン534が省略される。
【0049】
以上の通り、本例の管理システム1では、住宅内の各水栓の消費エネルギーが管理装置11により一括管理されている。管理装置11による水栓毎の消費エネルギーの表示があれば、各水栓によるエネルギーの消費状況を極めて容易に把握できる。さらに、本例の管理システム1は、効果的に消費エネルギーを低減するためのアドバイスである節約ナビを実行可能である。特に、自動水栓の場合であれば、消費エネルギーを効果的に低減するための吐水温度や吐水流量が節約ナビによって自動設定される。
【0050】
なお、本例では、個人の住宅を対象とした湯水使用管理システム1を例示しているが、マンション一棟全体であっても良く、オフィスビル一棟全体であっても良い。さらには、市町村やコミュニティなどのエリア内の各水栓を管理対象としても良い。広いエリア内の水栓を本例の湯水使用管理システム1で管理するに当たっては、各水栓と管理装置とをインターネット等の公衆回線を介して通信可能な状態で接続することも良い。
なお、本例では、図2に例示するごとく各水栓の消費エネルギーデータを蓄積している。蓄積期間や蓄積する際の刻み(1時間、1日等)を変更しても良い。さらに、休日と平日とで区別して消費エネルギーデータを蓄積することも良い。
【0051】
本例では、無線通信を介して各水栓を管理装置に接続しているが、これに代えて、一部の接続を有線通信により実現することも良い。また、本例では、各水栓側が、管理装置11と直接、通信している。これに代えて、少なくともいずれかの水栓に中継機能を具備させることも良い。この場合には、いずれかの水栓が他の水栓の通信を中継できるようになる。このようなアドホック通信を実現すれば、管理装置11から遠距離で直接、通信できない水栓についても管理装置11との間のデータの送受信を可能にできる。
【0052】
本例は、管理装置11を水栓とは別に設けた例である。これに代えて、キッチン水栓に管理装置を付設すると共に、キッチン水栓の操作機能や、流量制御機能などをこの管理装置に具備させることもできる。この場合には、キッチン水栓の操作パネルを利用して住宅内の各水栓の消費エネルギーを管理できる。
【0053】
本例では、適温水の吐水に応じた消費エネルギーを測定するために、水栓に供給される湯の温度及び供給量や、適温水の温度及び吐水量等を計測している。これに代えて、適温水の温度及び吐水量を直接、計測することも良い。さらに、給湯器の出口配管に設けた温度センサによる計測温度と、水栓に供給された湯の供給量と、の組み合わせにより各水栓に供給された湯の熱エネルギーを計測し、この熱エネルギーを吐水に応じて消費されたエネルギーとして取り扱うことも可能である。
【0054】
外気温度等により消費エネルギーを補正して精度を高めることも良い。例えば、外気温度が低いとき、1.0を超える補正係数を乗じて消費エネルギーを補正することができる。このような補正を行えば、給湯器から各水栓に至る配管経路からの放熱分のエネルギーを考慮して消費エネルギーを計測できる。外気温が低くなるほど上記の放熱分のエネルギーが増えるので、外気温の低下に応じて補正係数を高くすることが良い。
【0055】
本例の管理システム1において、水栓毎の消費エネルギーの管理に加えて、湯水の使用量を水栓毎に個別に管理しても良い。このとき、トイレの洗浄水の使用量については、流量センサを利用して計測する方法のほか、洗浄回数を計数し、洗浄1回当たりの水の使用量との乗算により計測することも可能である。
なお、本例では、管理対象の水栓として自動水栓や手動水栓等を例示したが、操作に応じて電動で開弁あるいは閉弁する電動式の水栓を管理対象に含めることも良い。
【0056】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0057】
1…湯水使用管理システム、11…管理装置(消費エネルギーデータ蓄積手段、表示手段、節約ナビ手段)、2…自動水栓、22…電子バルブユニット、224、225…流量センサ(湯水量計測手段)、226、227、425…温度センサ、24、424…温度センサ(温度計測手段)、25…制御通信ボックス(エネルギー測定手段、補正手段)、3…お湯張り水栓、4…手洗い水栓、45…通信ボックス(エネルギー測定手段、補正手段)、422…発電ユニット(湯水量計測手段)、51…エコ一覧画面、512…エコ表示、52…エネルギー消費画面、53…節約ナビ画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯及び水の供給を受けて適温水を吐水する複数の水栓と、
吐水する適温水が有する熱エネルギーの大きさを測定するために各水栓に対応して設けられたエネルギー測定手段と、
適温水が有する熱エネルギーが吐水に応じて消費されたとして対応する水栓の消費エネルギーを把握し、吐水に応じた消費エネルギーのデータを水栓毎に個別に蓄積する消費エネルギーデータ蓄積手段と、を備えた湯水使用管理システム。
【請求項2】
請求項1において、前記エネルギー測定手段は、水栓から吐水する適温水の温度、又は水栓に供給された湯の温度を計測する温度計測手段と、水栓からの適温水の吐水量、又は水栓に対する湯の供給量を計測する湯水量計測手段と、を含んでいると共に、適温水の温度及び吐水量、あるいは湯の温度及び供給量に基づいて適温水が有する熱エネルギーの大きさを計測する湯水使用管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記エネルギー測定手段が測定した熱エネルギーを水道水の温度あるいは外気温度により補正する補正手段を備えた湯水使用管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記消費エネルギーデータ蓄積手段が蓄積する消費エネルギーデータを水栓毎に区別して表示する表示手段を備えた湯水使用管理システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記消費エネルギーデータ蓄積手段が水栓毎に個別に蓄積する消費エネルギーデータに基づいてエネルギー節約のアドバイスを生成し、表示する節約ナビ手段を備えた湯水使用管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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