説明

湯面設定装置

【課題】浴槽内の湯面を一定に保つもので、入浴者の体格に合わせて湯面を適宜に設定することができる湯面設定装置とすること。
【解決手段】浴槽体9と、該浴槽体9の浴槽底部95側と連通する湯流入路11と,該湯流入路11の高さ方向に沿って異なる位置に形成された複数の湯面設定分岐路2とが形成されたハウジング1と、前記湯面設定分岐路2に対応して接続すると共に,軸方向及び周方向に重ならずに形成された排湯口31を有する排湯シリンダ3とからなること。該排湯シリンダ3は前記ハウジング1に収納されると共に周方向に回動操作されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽内の湯面を一定に保つもので、入浴者の体格に合わせて湯面を適宜に設定することができる湯面設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
身障者、老人等の被介護者のための介護専用の入浴設備における簡易浴槽には、溢水口が備えられたオーバーフロー装置が設けられ、浴槽に常時一定した湯面を確保している。特に、介護専用の浴槽は、一般家庭の入浴設備とは異なり小さいものである。そのために、入浴者の体格によって湯面が大きく変動し易いものであり、体格の大きな入浴者の場合には湯が浴槽から溢れてしまうことがある。そのようなことを防止する手段が、以下に示す特許文献1及び2に開示されている。
【特許文献1】特許2875248号
【特許文献2】実公平4−2360号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1は、シリンダの内筒を回転させることによって、溢水口の高さを変えて、オーバーフローの高さを変えることができる。しかし、特許文献1では、開示された構造上において、浴槽内部の高い位置、即ち湯内で且つ湯面付近に設定されなければならない。そのために、湯が浴槽上部から溢水口に供給される場合、湯面側の温かい湯が排出されてしまう不都合がある。
【0004】
さらに特許文献2では、浴槽とは別に、浴槽の湯面と同水位となるように設置された内筒を浴槽に接続し、この内筒にオーバーフロー時の溢水口を設置した例が開示されている。この内容は、給湯装置から浴槽への湯の供給配管への途中に上記内筒があり、そこにオーバーフロー溢水口が設置されている。そのため湯が規定の水位を超えた場合には温かい湯から排出される。加えて、オーバーフローの水位を変更することはできない不都合がある。本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的)は、介護専用入浴設備の簡易浴槽において、オーバーフロー時の溢水を浴槽下部より排出し、且つ予め湯の水位を設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明を、浴槽体と、該浴槽体の浴槽底部側と連通する湯流入路と,該湯流入路の高さ方向に沿って異なる位置に形成された複数の湯面設定分岐路とが形成されたハウジングと、前記湯面設定分岐路に対応して接続すると共に,軸方向及び周方向に重ならずに形成された排湯口を有する排湯シリンダとからなり、該排湯シリンダは前記ハウジングに収納されると共に周方向に回動操作自在に構成されてなる湯面設定装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0006】
請求項2の発明を、前述の構成において、前記湯面設定分岐路は、適宜複数箇所形成され、前記排湯シリンダには前記湯面設定分岐路に対応する位置に排湯口が複数箇所形成されてなる湯面設定装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、前述の構成において、前記排湯シリンダを周方向に回転させる動力手段と、適宜に選定された前記湯面設定分岐路と,該湯面設定分岐路に対応する前記排湯口とが一致する位置を検出すると共に前記動力手段を停止させる検出手段とが具備されてなる湯面設定装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0007】
請求項4の発明を、前述の構成において、動力手段は前記排湯シリンダを周方向に回転させる操作軸と,モータと,該モータに直結する駆動軸と,該駆動軸から前記操作軸に回動伝達する歯車機構部とからなり、前記検出手段は前記湯面設定分岐路に対応する数の円板と,該円板の切欠き部を検知するセンサとからなり、前記円板は前記駆動軸に装着されてなる湯面設定装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、前述の構成において、前記排湯シリンダは手動操作手段にて回動してなる湯面設定装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、前述の構成において、前記湯流入路と前記湯面設定分岐路とは直交してなる湯面設定装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によって、湯面設定分岐路に対応して接続すると共に,軸方向及び周方向に重ならずに形成された排湯口を有する排湯シリンダが収納されると共に周方向に回動操作自在に構成されているので、前記排湯シリンダを周方向に回動させるのみで、前記高さ方向に異なる湯面設定分岐路と排湯口とは1組のみが接続連通することとなる。これによって、所定の湯面設定分岐路と接続する排湯口のみの組み合わせ以外の湯面設定分岐路と対応する排湯口は、同一高さであっても、相互に位置がずれており、接続することがなく湯の排出は行われない。したがって、湯面の高さは、前記排湯シリンダを回転させるのみで、適宜に設定することができるものである。
【0009】
また、湯流入路は、浴槽体の浴槽底部側と連通する構造としたので、浴槽体内の設定された湯面を越える水位となったときには、浴槽体の浴槽底部側の湯から前記ハウジングの湯流入路に送り込まれることで、まず冷めやすい湯から排出することができ、浴槽体内にて温かい湯を上下に循環させることになり、浴槽体内の湯を常時一定の温度に保つことができる。請求項2の発明によって、湯面の設定を3段階にすることができ、通常の入浴者の体格を大柄,中柄及び小柄の3つに分けた一般的な体型区分にすることができ、体格に合わせた湯面の位置設定を容易に行うことができる。請求項3の発明によって、動力手段によって排湯シリンダを回動させ、選定された前記湯面設定分岐路と,該湯面設定分岐路に対応する前記排湯シリンダの排湯口とが一致する位置を検出手段が検出すると共に動力手段を停止させることにより、浴槽体の湯面を入浴者の体格に合わせて極めて簡単な操作で、適正且つ略正確に設定することができる。
【0010】
請求項4の発明によって、動力手段は、モータと歯車機構部等から構成し、検出手段は、切欠き部を有する円板と、前記切欠き部を検知するセンサから構成しているので、極めて高い精度にて、選定された適宜の湯面設定分岐路と、対応する排湯口とを一致させることができる。また、湯面の設定位置を3段以上とした場合において、前記円板とセンサの数を適宜増減することで、対応することができ最も簡単な構成によって好適な所望の湯面の設定ができる。
【0011】
請求項5の発明を、前記排水管は手動操作手段にて回動してなる湯面設定装置としたことにより、最も上記課題を解決した簡単な構成にすることができる。請求項6の発明によって、前記湯流入路と前記湯面設定分岐路とは直交させたことにより、各湯面設定分岐路によって正確な湯面設定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の構成は、図1に示すように、ハウジング1と排湯シリンダ3と、動力手段4と、検出手段5とから構成されている。前記ハウジング1は、サイドカバー部14及び上部カバー部15が構成部材として含まれている〔図1(B)参照〕。前記ハウジング1には、図1(B),図2に示すように、湯流入路11、湯面設定分岐路2及び管収納室12が形成されている。前記ハウジング1は、サイドカバー部14,上部カバー部15がビス等の固着具16によって接合され、後述する湯面設定分岐路2の開口孔や、前記湯流入路11及び管収納室12の上方を密封閉鎖する構造となっている〔図1(B)参照〕。
【0013】
前記ハウジング1は、図2、図3(A)に示すように、略長方形状の立方体であって、上下方向が長手方向となるように使用される。その上下方向に沿って湯流入路11が形成されている。該湯流入路11は、断面円形状の通路であり、ハウジング1の上下方向を貫通するようにして形成されており、湯流入路11の上端箇所は前記上部カバー部15にて密封閉鎖される。前記湯流入路11の下端には流入口部11aが備わっており、後述する浴槽体底部からホースが連結されるようになっている。
【0014】
前記ハウジング1内において、図1(B),図2(A)に示すように、前記湯流入路11の上下方向に沿って、適宜の間隔で且つ複数の湯面設定分岐路2,2,…が形成されている。該湯面設定分岐路2は、ハウジング1の上下方向に沿って同一面上に平行となるようにして形成され、前記湯流入路11と管収納室12との間に亘って形成され、湯流入路11と管収納室12とを連通しており、前記湯流入路11に流入した湯は、各湯面設定分岐路2に流入する。該湯面設定分岐路2は、前記湯流入路11の通路方向に対して直交する方向に形成される〔図2(A)参照〕。前記湯面設定分岐路2は、ハウジング1に対して、外部からドリル等を介して穿孔される。その湯面設定分岐路2の成形時に穿孔された開口を前記サイドカバー部14によって、密閉状に塞ぐものである〔図1(B)参照〕。
【0015】
そして、前記湯流入路11の長手方向が湯面に略垂直方向に形成されることに対して、前記湯面設定分岐路2は湯面に略水平方向に形成されることになる〔図2(A)参照〕。湯面設定分岐路2は、上下方向に適宜の間隔をおいて、適宜複数個所形成されるものであり、その間隔は適宜に設定されるが、該間隔は通常では等間隔に形成される。具体的には、該湯面設定分岐路2は、3個形成される〔図1(B),図2(A)乃至(C)参照〕。すなわち、3個の湯面設定分岐路2は、湯面設定の位置を3段階に設定することができるものである。前記湯面設定分岐路2は、3個形成される場合には、下方の位置より低湯面分岐路21,中湯面分岐路22,高湯面分岐路23と称する〔図1(B),図2(A)乃至(C)参照〕。
【0016】
また、湯面設定分岐路2は、図8に示すように、2個形成されることもあり、この場合には低湯面分岐路21及び高湯面分岐路23とするものであるが、低湯面分岐路21及び中湯面分岐路22としてもよい。さらに湯面設定分岐路2が4個以上形成され、湯面位置の設定を4段階以上にすることも可能であり、浴槽体のサイズ等に応じて湯面設定分岐路2の数が決定される。通常は、湯面設定分岐路2の数は、3個又は2個とすることが入浴者の標準的な体格、すなわち、大柄,中柄,小柄等のような体型区分けに対して好適である。
【0017】
前記排湯シリンダ3は、図1(B),図3(B)に示すように、管状に形成されたものであって、前記排湯シリンダ3は、前記ハウジング1の管収納室12に収納される。前記排湯シリンダ3の外周側面には軸方向に沿って、複数の排湯口31,31,…が形成されている。また、排湯シリンダ3の内部は軸方向に沿って、排湯通路32となっており、溢れた湯をハウジング1の外部に送り出す役目をなすものである。前記排湯口31は、前記湯面設定分岐路2の数に対応し、排湯シリンダ3の長手方向に沿って等間隔に形成されている〔図3(B)参照〕。さらに、排湯口31は、周方向において重なり合わないように形成されている〔図3(B),(D)乃至(F)参照〕。
【0018】
すなわち、排湯口31は、複数の湯面設定分岐路2,2,…の間隔に対応して、前記排湯シリンダ3の軸方向に沿って同一の間隔に形成されるものであり、しかも排湯口31,31同士は排湯シリンダ3の軸方向及び周方向には重なり部分が存在しない状態となっている。これによって、排湯シリンダ3の軸方向における各排湯口31は、いずれか一つのみが対応する位置の前記湯面設定分岐路2と接続且つ連通する。具体的には、前記湯面設定分岐路2が3個形成されている場合には、前記排湯口31も3個形成される。
【0019】
そして、3個の排湯口31は、排湯シリンダ3の周方向において等間隔に形成されるものであり、具体的には等角度(120度)に形成される〔図3(D)乃至(F)参照〕。すなわち、排湯シリンダ3が120度の角度で回転することによって、該排湯シリンダ3の軸方向におけるいずれか一つの排湯口31のみが高さ方向にて対応する前記湯面設定分岐路2に接合且つ連通することができる〔図1(B)、図5参照〕。排湯シリンダ3は、前述したように前記管収納室12に収納されるものであるが、該管収納室12の内径と、排湯シリンダ3の外径とは高い寸法精度にて密着し、且つ排湯シリンダ3の周方向への回動が自在で且つ滑らかに行われるようになっている〔図3(C)参照〕。
【0020】
該排湯シリンダ3の上端にはキャップ33が装着され、その下端には排出部34が形成されている〔図1(B)参照〕。前記キャップ33は、排湯シリンダ3の上端の周縁が食い込む溝が形成され、該溝に排湯シリンダ3上端が食い込み固着される。前記排出部34は、ホースを接続する部位であり、前記湯流入路11,湯面設定分岐路2と連通する排湯口31から排湯通路32に排出された湯をさらに、ホースを介して外部に排出する役目をなす。
【0021】
前記排湯シリンダ3は、図1(B)に示すように、動力手段4によって周方向に回転される。該動力手段4は、モータ41、前記モータに直結する駆動軸42と、前記排湯シリンダ3を周方向に回転させる操作軸43と、歯車機構部44から構成されている。そして、ブラケット45が前記ハウジング1に固着され、前記ブラケット45にモータ41が装着されている。該モータ41には、前記駆動軸42が接続され、モータ41の始動により駆動軸42が回転するものである。
【0022】
前記操作軸43は、図1(B)に示すように、軸下部が前記排湯シリンダ3のキャップ33に装着されており、軸上部が前記ハウジング1の上端より突出している。前記駆動軸42と前記操作軸43は、歯車機構部44によって、駆動軸42から操作軸43に回転が伝達される。歯車機構部44は、主動歯車44aと従動歯車44bとから構成されており、主動歯車44aが駆動軸42に固着され、従動歯車44bが操作軸43に固着され、前記主動歯車44aと従動歯車44bとを噛合させて、駆動軸42から操作軸43に回転伝達を行っている。そして、前記操作軸43が回動することによって、前記排湯シリンダ3の回動操作が自在に行われる。
【0023】
前記動力手段4のモータ41は、検出手段5によって制御される〔図1(B)参照〕。該検出手段5は、円板51と、該円板51を検知するセンサ52とから構成される。前記円板51は、前記駆動軸42に装着され、該駆動軸42の回動と共に回動する。またセンサ52は、前記ブラケット45に装着された取付具53に取り付けられる〔図1(B)参照〕。そして、センサ52が前記円板51に近接するように設置される。具体的には、センサ52は、図4(B)に示すように、略「コ」(又は「C」字形状)に形成され、前記円板51の外周箇所に非接触状態で、上下方向を覆う形で設置されている。
【0024】
前記円板51には、図4(A),図5(A),(C),(E)に示すように、切欠き部51aが形成されており、前記センサ52によって、前記切欠き部51a箇所が検知されることにより、モータ41が停止する。センサ52は、磁気センサ又は光センサ等が使用される。一つの円板51と、一つのセンサ52によって、1組の検出手段5を構成する。そして、前記湯面設定分岐路2の数に相当する組数の検出手段5が設置される。たとえば、前述したように、湯面設定分岐路2の数が3個の場合、前述したように湯面設定分岐路2は、低湯面分岐路21,中湯面分岐路22及び高湯面分岐路23に分別される。前記円板51及びセンサ52の数も、それぞれ3個となる。
【0025】
前記3枚の円板51,51,…は、それぞれの湯面設定分岐路2(低湯面分岐路21,中湯面分岐路22及び高湯面分岐路23)に対応して設けられたものであり、最下段の円板51は、低湯面分岐路21に対応し、中段の円板51は中湯面分岐路22に対応し、最上段の円板51は高湯面分岐路23に対応している。そして、それぞれの円板51の切欠き部51aの位置は、図5に示すように、角度120度の位相差を有するように設ける。そこで、まず適宜に選定された湯面設定分岐路2が低湯面分岐路21の場合において、該低湯面分岐路21と排湯シリンダ3の対応する排湯口31とを接続連通させるときには、モータ41によって前記排湯シリンダ3を回動させ、最下段の円板51の切欠き部51aがセンサ52によって検知されると共に前記モータ41が停止するように設定される。
【0026】
同様に、選定された湯面設定分岐路2が中湯面分岐路22の場合において、該中湯面分岐路22と排湯シリンダ3の対応する排湯口31とを接続連通させるときには、モータ41によって前記排湯シリンダ3を回動させ、中段の円板51の切欠き部51aがセンサ52によって検知されたときにモータ41が停止するように設定する〔図5(C),(D)参照〕。このとき、最上段の円板51の切欠き部51aは、前記センサ52の位置から120度ずれた位置となっている〔図5(A)参照〕。また最下段の円板51の切欠き部51aは、前記センサ52の位置から(−)120度ずれた位置となっている〔図5(E)参照〕。これによって、前記高湯面分岐路23及び低湯面分岐路21は、共に排湯口31と接続連通していない〔図5(B),(F)参照〕。
【0027】
このように複数の湯面設定分岐路2の中から、いずれか1つのみが選定され、前記排湯口31と連通しているときには、その他の湯面設定分岐路2は、排湯口31とは接続しない構造となっている。すなわち、複数の湯面設定分岐路2の中から、選定された湯面設定分岐路2と、これに対応する排湯口31とのみが連通を行うことができる。さらに、高湯面分岐路23と排湯シリンダ3の対応する排湯口31とを接続連通させるときには、モータ41によって前記排湯シリンダ3を回動させ、最上段の円板51の切欠き部51aがセンサ52によって検知されたときにてモータ41が停止するように設定する。検出手段5によって検知された信号による動力手段4への指令は、制御操作部によって行われる。該制御操作部は、浴槽体9の上部の位置に設けられている。また、湯面設定分岐路2の数が2個の場合では、前記検出手段5は2組となる〔図8(A)参照〕。このように、前記湯面設定分岐路2の数と同数の検出手段5が設置される。また図8では、前記排湯シリンダ3に接続された操作軸43にモータ41が直結され、且つ前記操作軸43に円板51が装着され、センサ52が備えられた実施形態である。
【0028】
また、前記排湯シリンダ3は、図9に示すように、手動手段による操作によって回動自在とした構成の実施形態も存在する。この実施形態では、前記操作軸43の軸端に操作ダイアル6が装着されたものである。該操作ダイアル6は、図9(A),(B)に示すように、後述する浴槽体9の(図示しない)操作面上に配置され、操作ダイアル6を回動させることによって、湯面の位置設定を行うものである。操作ダイアル6には、選択する湯面位置を示す表示〔H(高水位),M(中水位),L(低水位)〕が記載又は刻印され、浴槽体9の操作面上には位置確認の目盛が記載又は刻印されている。そして前記操作ダイアル6を回動させて、所望の湯面位置を示す表示を目盛に合わせることにより、前記排湯シリンダ3が回動して、所望の水位となる湯面設定分岐路2と排湯口31とが接続連通し、所望の湯面水位を維持することができる。
【0029】
浴槽体9は、図1(A),図6(B),図7等に示すように、主に浴槽本体部91と浴槽開閉部92とから構成される。その浴槽本体部91と浴槽開閉部92によって、入浴者が入る浴槽室部93が形成されている。前記浴槽本体部91の形状は、略立方体又は略直方体等で且つ開口が形成され、カプセル或いは繭形等の筐体形状に形成されたものである。そして、前記浴槽本体部91の上方に位置する開口部が上面開口部91aとなり、正面側に位置する開口部が出入り口部91bとなる。該出入り口部91bは、入浴者が浴槽体9の浴槽室部93内に出入りするための開口となり、前記浴槽開閉部92を浴槽本体部91に閉じることで浴槽室部93は水密性が保たれる。
【0030】
その浴槽本体部91と浴槽開閉部92とは、合成樹脂で形成されており、それぞれが成形型によって一体成形品として形成される。その浴槽本体部91と浴槽開閉部92とが開閉する構成となっており、その開閉構造は、前記浴槽本体部91に前記浴槽開閉部92が枢支連結されて、スイングする扉状構造である。また、図示しないが、前記浴槽本体部91と前記浴槽開閉部92とが完全に分離する構造とした実施形態も存在する。前記浴槽本体部91の内部には座席部94が形成されている。
【0031】
前記ハウジング1は、図1(A),図6(B)に示すように、浴槽体9の外部で上方の位置に設定される。具体的には、前記湯流入路11と、前記浴槽体9の浴槽底部95との間を浴槽外配管部96によって接続されている。該浴槽外配管部96は、ホース及び配管の組み合わせによって構成されたものである。前記浴槽底部95は、浴槽体9の下方側の範囲のことであり、具体的には底面95a付近から座席部94付近の範囲である〔図6(B),図7参照〕。そして、ハウジング部1の各湯面設定分岐路2,2,…の浴槽底部95の底面95aからの高さ位置は、所望の湯面の設定位置と同等の高さとなるように設置される。
【0032】
ここで、前記低湯面分岐路21は、小柄な入浴者の入浴に好適な低湯面に設定し〔図7(B)参照〕、前記中湯面分岐路22は、中柄な入浴者の入浴に好適な中湯面に設定し、高湯面分岐路23は、大柄な入浴者の入浴に好適な高湯面に設定する〔図7(A)参照〕。そして、前記低湯面分岐路21は浴槽底部95の底面95aの位置からDLであり、中湯面分岐路22は浴槽底部95の底面95aの位置からDMであり、高湯面分岐路23は浴槽底部95の底面95aの位置からDHで示されている〔図6(A)参照〕。また、前記低湯面分岐路21に対応する低湯面の浴槽底部95の底面95aからの深さはLとし、前記中湯面分岐路22に対応する中湯面の浴槽底部95の底面95aからの深さはMとし、前記高湯面分岐路23に対応する高湯面の浴槽底部95の底面95aからの深さはHとする〔図6(B)参照〕。
【0033】
図6(A)は、入浴者が中柄の場合の適正な湯面の設定状態を示すものである。3個の湯面設定分岐路2の中から、中湯面分岐路22が選定され、該中湯面分岐路22と対応する排湯シリンダ3の排湯口31と接続連通するようにしている。排湯シリンダ3は前記動力手段4を介して回動し、前記検出手段5の命令信号によって、前記中湯面分岐路22とこれに対応する排湯口31とが正確に接続且つ連通する。前記湯流入路11において、中湯面分岐路22は、前記浴槽底部95の底面95aからの高さDMの位置に存在している。そして、中柄の入浴者に適正な設定湯面(中湯面)が維持されているときには、前記湯流入路11内の湯面の位置は、前記高さDMの位置又は僅かに低い位置にある。湯面が設定湯面を越えた場合には、前記湯流入路11内の湯面が上昇して、前記中湯面分岐路22から対応する排湯口31に流れ込み、前記排湯通路32を通して溢れた湯が外部に排出される。また、高さDMよりも低いときには、給湯の指令が発せられ適量の湯が浴槽体9に補給される。
【0034】
入浴者が大柄の場合の適正な湯面の設定においては、図7(A)に示すように、3個の湯面設定分岐路2の中から、高湯面分岐路23が選定され、該高湯面分岐路23と対応する排湯シリンダ3の排湯口31と接続連通するように、前記動力手段4を介して前記排湯シリンダ3を回動させる。該排湯シリンダ3は、制御操作部の選択スイッチにて高湯面に設定し、前記検出手段5に命令信号を発令し、動力手段4によって排湯シリンダ3を回動させる。そして、前記高湯面分岐路23と、該高湯面分岐路23に対応する位置の排湯口31とを接続連通させる。また、手動による場合には、操作ダイアル6によって、高湯面を選択して、排湯シリンダ3を回動させる。
【0035】
これによって、浴槽体9内の湯面が設定された高湯面の場合には、ハウジング1内の湯流入路11内の湯の水位は高湯面分岐路23を越えない。そして、浴槽体9内の湯面が設定された高湯面を超えると、ハウジング1内の湯流入路11の湯の水位が上昇し前記高湯面分岐路23を越えて、排湯シリンダ3の排湯口31に湯が流れ込み、排湯シリンダ3の排出部34から外部に湯が排出され、浴槽体9内の設定された湯面(高湯面)が維持される。また、入浴者が小柄な場合に、浴槽体9内の湯面が低湯面に設定され、図7(B)に示すように、設定された湯面を超えた湯が低湯面分岐路21から排湯シリンダ3の外部に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(A)は浴槽体に本発明を装着した略示図、(B)は(A)の(ア)部の一部断面にした拡大詳細断面図である。
【図2】(A)はハウジングの縦断正面図、(B)は(A)のXa−Xa矢視断面図、(C)は(A)のXb−Xb矢視断面図、(D)は(A)のXc−Xc矢視断面図、(E)は(A)の(A)のXd−Xd矢視断面図である。
【図3】(A)はハウジングとサイドカバー部の断面斜視図、(B)は排湯シリンダの斜視図、(C)はハウジングに排湯シリンダを装着した状態の横断平面図、(D)は(B)のXe−Xe矢視断面図、(E)は(B)のXf−Xf矢視断面図、(F)は(B)のXg−Xg矢視断面図である。
【図4】(A)は検出手段の斜視図、(B)は検出手段の要部拡大側面図である。
【図5】(A)は最上段の円板とセンサの位置の状態を示す平面図、(B)は(A)に対応する高湯面分岐路と排湯口の位置関係を示す横断平面図、(C)は中段の円板とセンサの位置の状態を示す平面図、(D)は(C)に対応する中湯面分岐路と排湯口の位置関係を示す横断平面図、(E)は最下段の円板とセンサの位置の状態を示す平面図、(F)は(E)に対応する低湯面分岐路と排湯口の位置関係を示す横断平面図である。
【図6】(A)は低湯面分岐路,中湯面分岐路及び高湯面分岐路の位置を示すハウジングの縦断側面図、(B)は各湯面設定分岐路と浴槽体の湯面との位置関係を示す略示図である。
【図7】(A)は大柄体格の入浴者の設定湯面と高湯面分岐路との位置関係を示す略示図、(B)は小柄体格の入浴者の設定湯面と低湯面分岐路との位置関係を示す略示図である。
【図8】(A)は動力手段のモータを排湯シリンダに直結した実施形態の縦断側面図、(B)は(A)のXh−Xh矢視断面図、(C)は(A)のXi−Xi矢視断面図である。
【図9】(A)は操作ダイアルを装着した実施形態の縦断側面図、(B)は操作ダイアルの平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ハウジング、11…湯流入路、2…湯面設定分岐路、3…排湯シリンダ、
31…排湯口、4…動力手段、41…モータ、42…駆動軸、43…操作軸、
5…検出手段、51…円板、52…センサ、9…浴槽体、95…浴槽底部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽体と、該浴槽体の浴槽底部側と連通する湯流入路と,該湯流入路の高さ方向に沿って異なる位置に形成された複数の湯面設定分岐路とが形成されたハウジングと、前記湯面設定分岐路に対応して接続すると共に,軸方向及び周方向に重ならずに形成された排湯口を有する排湯シリンダとからなり、該排湯シリンダは前記ハウジングに収納されると共に周方向に回動操作自在に構成されてなることを特徴とする湯面設定装置。
【請求項2】
請求項1において、前記湯面設定分岐路は、適宜複数箇所形成され、前記排湯シリンダには前記湯面設定分岐路に対応する位置に排湯口が複数箇所形成されてなることを特徴とする湯面設定装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記排湯シリンダを周方向に回転させる動力手段と、適宜に選定された前記湯面設定分岐路と,該湯面設定分岐路に対応する前記排湯口とが一致する位置を検出すると共に前記動力手段を停止させる検出手段とが具備されてなることを特徴とする湯面設定装置。
【請求項4】
請求項3において、動力手段は前記排湯シリンダを周方向に回転させる操作軸と,モータと,該モータに直結する駆動軸と,該駆動軸から前記操作軸に回動伝達する歯車機構部とからなり、前記検出手段は前記湯面設定分岐路に対応する数の円板と,該円板の切欠き部を検知するセンサとからなり、前記円板は前記駆動軸に装着されてなることを特徴とする湯面設定装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、前記排湯シリンダは手動操作手段にて回動してなることを特徴とする湯面設定装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5のいずれか1項の記載において、前記湯流入路と前記湯面設定分岐路とは直交してなることを特徴とする湯面設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−58162(P2009−58162A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224905(P2007−224905)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】