説明

湿分分離加熱器

【課題】蒸気湿分加熱器で、蒸気受入室と回収マニホールド室とを仕切る天井板の強度信頼性を高める。
【解決手段】ケーシング10内には、蒸気受入室21と、供給マニホールド室22と、供湿分分離室と、軸方向Hで蒸気受入室と隣接し、熱交換管群55Bが収納されている加熱室24と、加熱室と連通し且つ加熱室及び蒸気受入室の上側に隣接している回収マニホールド室26と、が形成されている。蒸気受入室と加熱室とは、上下方向Vに広がり且つ熱交換管群の軸方向Hの端部56aが貫通する横仕切板33と、横仕切板33を貫通している熱交換管群の端部を囲い且つ仕切板に接合されている囲い板44と、で仕切られ、蒸気受入室と回収マニホールド室とは、天井板30で仕切られている。蒸気受入室21内に、天井板30と横仕切板33と囲い板44とに接合された補強板47が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気中から湿分を分離すると共に加熱することにより、過熱蒸気を生成する湿分分離加熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントでは、高圧蒸気タービンで使用された蒸気をさらに低圧蒸気タービンで使用する場合がある。この場合、蒸気中に湿分(約12%前後)があると、低圧蒸気タービンのタービン翼が浸食されてしまうだけでなく、タービンの熱効率の低下を生じてしまう。そこで、この場合、高圧蒸気タービンと低圧蒸気タービンとの間に、高圧蒸気タービンから排出された蒸気中から湿分を分離すると共に加熱して過熱蒸気を生成する湿分分離加熱器が設けられている。
【0003】
このような湿分分離加熱器としては、例えば、以下の特許文献1に記載されているものがある。
【0004】
この湿分分離過熱器は、水平な軸方向に延び、軸方向の両端が封止されている筒状のケーシングと、ケーシング内に入り込んだ蒸気を加熱する熱交換管と、を備えている。このケーシングには、ケーシングの下部に蒸気受入口が形成され、ケーシングの上部に蒸気送出口が形成されている。ケーシングの内部には、蒸気受入口から流入した蒸気が入り込む蒸気受入室と、この蒸気受入室と連通し且つ軸方向で蒸気受入室と隣接している供給マニホールド室と、この供給マニホールド室と連通し且つ供給マニホールド室の下側に隣接し、蒸気から湿分を分離する湿分分離室と、この湿分分離室と連通し且つ軸方向で蒸気受入室と隣接して、熱交換管が収納されている加熱室と、この加熱室及び蒸気送出口と連通し且つ加熱室及び蒸気加熱室の上側に隣接している回収マニホールド室と、が形成されている。蒸気受入室と回収マニホールド室とは、天井板で仕切られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−62902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の湿分分離加熱器では、蒸気受入室と回収マニホールド室と間に圧力差があるため、天井板には、この圧力差より生じる力に十分に耐え得る強度が求められる。特に、原子力発電プラントのように、発生蒸気量が多い場合には、湿分分離加熱器のケーシングが大きくなると共に、天井板の面積も大きくなるため、蒸気受入室と回収マニホールド室と間の圧力差により天井板にかかる力が大きくなり、天井板に対してより高い強度信頼性が求められる。
【0007】
そこで、本発明は、上記状況を鑑み、天井板の強度信頼性を高めることができる湿分分離加熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明に係る湿分分離加熱器は、
水平な軸方向に延び、該軸方向の両端が封止されている筒状のケーシングと、該ケーシング内に入り込んだ蒸気を加熱する熱交換管群と、を備え、前記ケーシングには、該ケーシングの下部に外部から蒸気を受け入れる蒸気受入口が形成され、該ケーシングの上部に外部に蒸気を排出する蒸気送出口が形成され、前記ケーシングの内部には、前記蒸気受入口から流入した蒸気が入り込む蒸気受入室と、前記蒸気受入室と連通し、且つ前記軸方向で該蒸気受入室と隣接している供給マニホールド室と、前記供給マニホールド室と連通し、該供給マニホールド室の下側に隣接し、蒸気から湿分を分離する湿分分離室と、前記湿分分離室と連通し、且つ前記軸方向で前記蒸気受入室と隣接し、前記熱交換管群が収納されている加熱室と、前記加熱室及び前記蒸気送出口と連通し、且つ該加熱室及び前記蒸気受入室の上側に隣接している回収マニホールド室と、が形成され、前記蒸気受入室と前記加熱室とは、上下方向に広がり且つ前記熱交換管群の前記軸方向の端部が貫通する仕切板と、該仕切板を貫通している該熱交換管の端部を囲い且つ該仕切板に接合されている囲い板と、で仕切られ、前記蒸気受入室と前記回収マニホールド室とは、前記仕切板に接合されている天井板で仕切られ、前記蒸気受入室内には、前記囲い板に接合されているか又は該囲い板の一部と一体形成されていると共に、前記天井板と前記仕切板とに接合された補強板が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
当該湿分分離加熱器では、蒸気受入室と回収マニホールド室との間の圧力差により、天井板は、回収マニホールド室側、つまり上側に向う力を受ける。補強板が設けられていない場合、天井板がこの力を受けると、天井板と仕切板とが接する角部に応力が集中する。一方、当該湿分分離加熱器では、天井板と仕切板と囲い板とに接合された補強板を設けているので、天井板と仕切板とが接する角部にかかる応力を、補強板の周縁に沿った部分に拡散することができる。
【0010】
しかも、当該湿分分離加熱器では、蒸気受入室内で、天井板、仕切板及び囲い側板で囲まれて、この蒸気受入室内に流入した蒸気が澱む場所に補強板を配置しているので、この補強板が蒸気の流れ抵抗にならず、当該湿分分離加熱器の湿分分離加熱性能に悪影響を及ぼすおそれはない。
【0011】
ここで、前記湿分分離加熱器において、前記囲い板は、前記熱交換管群の前記端部を基準にして、水平方向であって前記軸方向と垂直な横幅方向における両側で互いに対向している一対の囲い側板と、一対の囲い側板の縁相互を連結する囲い連結板と、を有し、前記補強板は、前記囲い側板に接合されているか又は該囲い側板と一体形成されていることが好ましい。
【0012】
当該湿分分離加熱器では、補強板を上下方向の剛性が比較的高い囲い側板に接合することで、補強板を接合する対象部材として、この補強板から受ける上下方向の力に対して剛性を有する部材を別途設ける手間を省くことができる。また、囲い板自体を新製する場合などに、この補強板と囲い側板とを一体形成すれば、補強板の支持剛性を確保しつつ、部品点数の削減が可能である。
【0013】
また、前記湿分分離加熱器において、前記補強板は、該補強板が接合されている前記仕切板と反対側の縁は、上下方向に広がる面内で該仕切板側に凹む凹形状を成していることが好ましい。
【0014】
補強板で、仕切板と反対側の縁が凹形状を成していると、上下方向Vの力に対して、補強板中の縁近傍が上下方向に変形し易いため、天井板が上向きの力を受けた際に、補強板の縁近傍が上下方向に変形することで、この縁と天井板との角部にかかる応力を逃がすことができる。
【0015】
また、前記湿分分離加熱器において、前記補強板の前記凹形状は、円弧形状であることが好ましい。
【0016】
補強板の縁が円弧形状であると、補強板の縁に沿った部分にかかる応力の均等化を図ることができる。
【0017】
また、前記湿分分離加熱器において、前記補強板の前記円弧形状の円弧中心は、前記囲い板中で、該補強板が接合されている前記仕切板から最も遠い遠距離位置よりも、該仕切板側に位置していることが好ましい。
【0018】
前記湿分分離加熱器では、補強板の囲い板側の縁の全体を囲い板に接合でき、補強板を囲い板に対して安定接合することができる。さらに、円弧形状の円弧中心が仕切板側に位置して円弧半径が小さくなることで、補強板の仕切板と反対側の縁が仕切板側へ凹む寸法量が大きくなり、上向きの力に対してこの縁近傍が上下方向により変形し易い形状にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、蒸気の流れに悪影響を及ぼすことなく、蒸気受入室と回収マニホールド室との間の圧力差により、天井板にかかる上向きの力に対して、天井板及びこの天井板に接合されている部材に対する応力集中を緩和することができる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、蒸気の流れに悪影響を及ぼすことなく、天井板の強度信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る一実施形態における湿分分離加熱器の縦断面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線断面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における湿分分離加熱器の要部切欠斜視図である。
【図6】図5におけるVI矢視図である。
【図7】図5におけるVII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る湿分分離加熱器の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
本実施形態の湿分分離加熱器は、例えば、高圧蒸気タービンで使用された蒸気中から湿分を分離すると共に加熱して過熱蒸気を生成し、この過熱蒸気を低圧蒸気タービンに送るものである。
【0024】
この湿分分離加熱器は、図1〜図4に示すように、蒸気Sが内部に入り込む筒状のケーシング10と、ケーシング10内に入り込んだ蒸気Sを加熱する熱交換管群55A,55Bと、を備えている。なお、図2は図1におけるII−II線断面図であり、図3は図2におけるIII−III線断面図であり、図4は図1におけるIV−IV線断面図である。
【0025】
ケーシング10は、水平な軸方向Hに延び、軸方向Hの両端が封止されている。なお、以下では、水平な方向であって軸方向Hと垂直な方向を横幅方向Wとする。
【0026】
ケーシング10には、ケーシング10内に蒸気Sを受け入れる蒸気受入口11と、ケーシング10内で湿分分離及び加熱された過熱蒸気HSを送出する複数の蒸気送出口12と、蒸気ドレンDをケーシング10内から排出する複数の蒸気ドレン排出口13と、が形成されている。蒸気受入口11は、ケーシング10の下部であって、軸方向Hの中央部に形成されている。また、複数の蒸気ドレン排出口13は、ケーシング10の下部であって、蒸気受入口11を基準として軸方向Hの両側に形成されている。複数の蒸気送出口12は、ケーシング10の上部に、軸方向Hに並んで形成されている。なお、複数の蒸気送出口12のうち、1つの蒸気送出口12は、蒸気受入口11と同様、軸方向Hの中央部に形成されている。
【0027】
ケーシング10の内部には、蒸気受入口11から流入した蒸気Sが入り込む蒸気受入室21と、蒸気受入室21と連通し且つ軸方向Hにおける蒸気受入室21の両側に隣接している供給マニホールド室22(図3及び図4)と、供給マニホールド室22と連通し且つ供給マニホールド室22の下側に隣接している湿分分離室23(図3及び図4)と、湿分分離室23と連通し熱交換管群55A,55Bが収納されている加熱室24と、湿分分離室23に連通し且つこの湿分分離室23及び加熱室24の下側に隣接している蒸気ドレン回収室25(図3及び図4)と、加熱室24及び蒸気送出口12と連通し且つ蒸気受入室21、供給マニホールド室22及び加熱室24の上側に隣接している蒸気回収マニホールド室26(図1〜図4)と、が形成されている。
【0028】
蒸気回収マニホールド室26は、図1に示すように、ケーシング10の軸方向Hのほぼ全体にわたって、ケーシング10内の上部に形成されている。一方、蒸気受入室21は、ケーシング10の軸方向Hの中央部に、蒸気回収マニホールド室26の下側に隣接して形成されている。この蒸気回収マニホールド室26と蒸気受入室21とは、天井板30により仕切られている。
【0029】
供給マニホールド室22、湿分分離室23、加熱室24及び蒸気ドレン回収室25は、いずれも、図1及び図3に示すように、軸方向Hにおける蒸気受入室21の両側に隣接している。図4に示すように、軸方向Hで蒸気受入室21からズレた位置では、横幅方向Wの中央に加熱室24が形成され、横幅方向Wにおける加熱室24の両側に供給マニホールド室22が形成され、横幅方向Wにおける加熱室24の両側であって供給マニホールド室22の下側に湿分分離室23が形成されている。軸方向Hで蒸気受入室21からズレた位置では、加熱室24及び供給マニホールド室22の上側には、蒸気回収マニホールド室26が形成され、加熱室24及び湿分分離室23の下側には蒸気ドレン回収室25が形成されている。
【0030】
軸方向Hで蒸気受入室21と隣接している供給マニホールド室22、湿分分離室23、加熱室24及び蒸気ドレン回収室25のうち、湿分分離室23、加熱室24及び蒸気ドレン回収室25は、図1〜図3に示すように、蒸気受入室21との間が横仕切板33により仕切られている。なお、供給マニホールド室22は、蒸気受入室21と連通させるため、蒸気受入室21との間は横仕切板33で仕切られておらず、開口している。
【0031】
供給マニホールド室22は、図4に示すように、この供給マニホールド室22の上側に隣接している蒸気回収マニホールド室26との間が傾斜板35により仕切られている。この傾斜板35は、横幅方向Wにおいて、その中央部から遠ざかるに連れて次第に上側に向って傾斜し、中央部から最も遠い端部がケーシング10の内面に接合されている。
【0032】
湿分分離室23は、この湿分分離室23の上側に隣接している供給マニホールド室22との間が分配板36により仕切られている。この分配板36には、上下方向Vに貫通し、横幅方向Wに長いスリット37が複数形成されている。蒸気ドレン回収室25は、この蒸気ドレン回収室25の上側に隣接している加熱室24及び湿分分離室23との間が底板38により仕切られている。加熱室24は、横幅方向Wにおける加熱室24の両側に隣接している供給マニホールド室22及び湿分分離室23と縦仕切板43により仕切られている。この縦仕切板43の上端43uには、図5に示すように、蒸気回収マニホールド室26と蒸気受入室21との間を仕切る天井板30の軸方向Hの端縁が接合されている。さらに、この縦仕切板43の上端43uには、図4〜図7に示すように、供給マニホールド室22と蒸気回収マニホールド室26との間を仕切る傾斜板35の中央側端部が接合されている。また、この縦仕切板43の上下方向Vの中央部には、湿分分離室23と供給マニホールド室22との間を仕切る分配板36の中央側端部が接合されている。
【0033】
蒸気受入室21内には、図1、図2、図5に示すように、軸方向Hに垂直な断面形状がU字型を成し、U字の湾曲箇所に相当する部分が下側を向いているバッフルプレート50が配置されている。
【0034】
湿分分離室23内には、図3及び図4に示すように、ミストセパレータ53が配置されている。このミストセパレータ53は、複数の波板(不図示)を軸方向Hに等間隔に配置したもので、波板の各頂部に蒸気Sの流れに対向するよう邪魔板(不図示)が設けられている。複数の波板の頂部及び底部は、いずれも、上下方向Vに延びている。湿分分離室23と蒸気ドレン回収室25との間を仕切る底板38には、ミストセパレータ53を構成する複数の波板の下部に相当する位置で上下方向Vに貫通した開口39が形成されている。
【0035】
加熱室24に収納される熱交換管群55A,55Bは、図1に示すように、加熱室24内の下方に配置されている第一熱交換管群55Aと、加熱室24内の上方に配置されている第二熱交換管群55Bとがある。各熱交換管群55A,55Bを構成する熱交換管は、いずれもU字管56である。U字管56は、湾曲側の端部56aがケーシング10の軸方向Hの中央部側に向けられ、U字管56の管端56bがケーシング10の軸方向Hの端部側に向けられている。U字管56の管端56bは、ケーシング10外に突出しており、管板57に固定されている。この管板57は、U字管56と反対側がボンネット58で覆われ、管板57とボンネット58の内面とで空間が形成されている。この空間は、仕切板59で上下に仕切られ、上側の空間が蒸気受入室59aを成し、下側の空間が蒸気回収室59bを成している。ボンネット58には、外部と蒸気受入室59aとを連通させる蒸気入口58iと、外部と蒸気回収室58bとを連通させる蒸気出口58oとが形成されている。
【0036】
各熱交換管群55A,55Bを構成するU字管56の湾曲側の端部56aは、横仕切板33を軸方向Hに貫通し、この横仕切板33及び天井板30の軸方向Hの端部よりも、ケーシング10の軸方向Hにおける中央部側に位置し、囲い板44で覆われている。囲い板44は、図5〜図7に示すように、横幅方向Wで互いに対向している一対の囲い側板45と、一対の囲い側板45の縁相互を連結する囲い連結板46とを有している。一対の囲い側板45は、軸方向Hにおける中央部側の縁が中央部側に突出した円弧形状を成している。このため、一対の囲い側板45の中央部側の縁相互を連結する囲い連結板46は、その断面形状が中央部側に突出した円弧形状を成している。囲い板44におけるケーシング10の軸方向Hの端側の端部は、横仕切板33に接合されている。
【0037】
蒸気受入室21と加熱室24との間は、この囲い板44と横仕切板33とで仕切られている。
【0038】
蒸気受入室21内で、天井板30と第二熱交換管群55B用の囲い側板45との間には、図5〜図7に示すように、補強板47が配置されている。この補強板47の上縁47uは天井板30の横幅方向Wの端部に接合され、下縁47dは囲い側板45に接合されている。また、この補強板47の軸方向Hにおける加熱室24側の端縁(以下、加熱室側縁47hとする)は横仕切板33に接合されている。この補強板47の軸方向Hの他方の端縁(以下、中央側縁47cとする)は、上下方向Vの広がる面内で横仕切板33側に凹んだ円弧形状を成している。この補強板47の円弧形状の円弧中心Cは、図7に示すように、囲い板44中で、最も横仕切板33から遠い遠距離位置Lよりも横仕切板33側に位置している。
【0039】
次に、以上で説明した湿分分離加熱器の作用について説明する。
【0040】
図1、図2及び図5に示すように、例えば、高圧蒸気タービンで使用された蒸気Sが蒸気受入口11から蒸気受入室21内へ流入すると、この蒸気Sは、バッフルプレート50で蒸気受入室21内への流入時の衝撃を緩和されながら、上方で且つ横幅方向Wの両側に案内されて、供給マニホールド室22内へ流入する。
【0041】
供給マニホールド室22内へ流入した蒸気Sは、図3及び図4に示すように、分配板36のスリット37を介して湿分分離室23内に流入する。湿分分離室23内では、蒸気Sがミストセパレータ53を構成する複数の波板及び邪魔板等に接触することで、この蒸気S中の湿分が複数の波板及び邪魔板に捕捉され、下方に流れ落ち、底板38の開口39から蒸気ドレン回収室25内に流れ込む。蒸気ドレン回収室25に流れ込んだ湿分、つまり蒸気ドレンDは、蒸気ドレン排出口13から外部に流出する。
【0042】
一方、ミストセパレータ53を通過した蒸気Sは、加熱室24内に流入して、この加熱室24内を上方に流れる過程で、第一熱交換管群55A及び第二熱交換管群55Bにより加熱され、過熱蒸気HSになる。この過熱蒸気HSは、加熱室24から蒸気回収マニホールド室26に流入した後、蒸気送出口12から外部に流出する。この湿分分離加熱器から流出した過熱蒸気HSは、例えば、低圧蒸気タービンに送られる。
【0043】
ところで、本実施形態の湿分分離加熱器では、図5〜図7に示すように、蒸気Sが流入し、ケーシング10内の複数の室のうちで最も圧力の高い蒸気受入室21と、蒸気Sが流出し、ケーシング10内の複数の室のうちで最も圧力の低い蒸気回収マニホールド室26とが、天井板30を介して上下方向Vで隣接している。
【0044】
このため、天井板30は、蒸気受入室21と蒸気回収マニホールド室26との間の圧力差により、蒸気回収マニホールド室26側、つまり上側に向う力Fを受ける。天井板30がこの力Fを受けた場合、天井板30と横仕切板33とが接する角部A1(図7)に応力が集中する。そこで、本実施形態では、補強板47の上縁47uを天井板30に接合し、補強板47の加熱室側縁47hを横仕切板33に接合することで、天井板30と横仕切板33とが接する角部にA1かかる応力を、補強板47の上縁47uに沿った部分及び加熱室側縁47hに沿った部分に拡散している。
【0045】
以上のように、補強板47の上縁47uを天井板30に接合し、補強板47の加熱室側縁47hを横仕切板33に接合しても、応力の緩和を図ることができるが、本実施形態では、補強板47の下縁47dをさらに第二熱交換管群55B用の囲い側板45に接合しているため、さらなる応力の緩和を図ることができる。また、本実施形態では、補強板47の下縁47dを上下方向Vの剛性が比較的高い囲い側板45に接合することで、補強板47の下縁47dを接合するために、この補強板47から受ける上下方向Vの力に対して剛性を有する部材を別途設ける手間を省いている。
【0046】
なお、本実施形態では、補強板47と囲い側板45とを接合しているが、囲い板44自体を新製する場合などに、この補強板47と囲い側板45とを一体形成すれば、補強板47の支持剛性を確保しつつ、部品点数の削減が可能である。
【0047】
ここで、天井板30を補強するための補強板47は、蒸気回収マニホールド室26内に設けることも可能である。しかしながら、蒸気回収マニホールド室26中で、蒸気受入室21の上部の部分は、過熱蒸気HSが通過する流路になり、ここに補強板を配置すると、この補強板が過熱蒸気HSの流れ抵抗になってしまう。一方、本実施形態では、蒸気受入室21内で、天井板30、横仕切板33及び第二熱交換管群55B用の囲い側板45で囲まれて、この蒸気受入室21内に流入した蒸気Sが澱む場所であり、ここに補強板47を配置しても、この補強板47が蒸気Sの流れ抵抗にならない。このため、本実施形態では、補強板47を蒸気受入室21内に配置している。
【0048】
また、本実施形態では、補強板47の中央側縁47cを円弧形状にしているが、この中央側縁47cを上下方向Vに直線状に延びる形状にしてもよい。この場合、補強板の形状は矩形板形状になる。このように、補強板を矩形板形状にしても、補強板の上縁47uを天井板30に接合し、補強板の加熱室側縁47hを横仕切板33に接合し、補強板の下縁47dを第二熱交換管群55B用の囲い側板45に接合すれば、天井板30と横仕切板33とが接する角部A1にかかる応力を緩和することができる。但し、この場合、補強板の上縁47uと天井板30との接合部中で、補強板の中央側縁47c近傍、つまり補強板47の上縁47uと中央側縁47cとの角部A2(図7)に比較的応力が集中してしまう。そこで、本実施形態では、補強板47の中央側縁47cを加熱室24側に凹む円弧形状にしている。
【0049】
このように、補強板47の中央側縁47cを加熱室24側に凹む円弧形状にすると、上向きの力Fに対して、補強板47の中央側縁47c近傍が上下方向Vに変形し易い形状になるため、この変形により補強板47の中央側縁47c寄りの角部A2にかかる応力を逃がすことができ、この補強板47の中央側縁47c寄りの角部A2にかかる応力を緩和することができる。
【0050】
ここで、本実施形態において、補強板47の円弧形状の円弧中心Cは、前述したように、囲い板44中で、最も横仕切板33から遠い遠距離位置Lよりも横仕切板33側に位置している。これは、補強板47の下縁47dの全体を囲い側板45に接合させるため、及び、円弧半径をある程度小さくするためである。このように、円弧半径を小さくするのは、補強板47の中央側縁47cが加熱室24側に凹む寸法量を大きくし、上向きの力に対して補強板47の中央側縁47c近傍が上下方向Vにより変形し易い形状にするためである。
【0051】
なお、補強板47の中央側縁47cの形状としては、加熱室24側に凹む形状であれば、円弧形状でなくても、例えば、滑らかに湾曲した凹形状であっても、V字形状であってもよい。但し、V字形状にした場合、V字の頂点部に応力が集中するため、中央側縁47cの全体に応力が分散するよう、滑らかに湾曲した凹形状の方が好ましく、円弧形状がより好ましい。
【符号の説明】
【0052】
10:ケーシング、11:蒸気受入口、12:蒸気送出口、21:蒸気受入室、22:供給マニホールド室、23:湿分分離室、24:加熱室、25:蒸気ドレン回収室、26:蒸気回収マニホールド室、30:天井板、33:横仕切板、35:傾斜板、36:分配板、37:底板、43:縦仕切板、44:囲い板、45:囲い側板、46:囲い連結板、47:補強板、50:バッフルプレート、53:ミストセパレータ、55:熱交換管群、56:U字管、56a:(U字管の)湾曲側の端部、56b:(U字管の)管端、S:蒸気、HS:過熱蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な軸方向に延び、該軸方向の両端が封止されている筒状のケーシングと、該ケーシング内に入り込んだ蒸気を加熱する熱交換管群と、を備え、
前記ケーシングには、該ケーシングの下部に外部から蒸気を受け入れる蒸気受入口が形成され、該ケーシングの上部に外部に蒸気を排出する蒸気送出口が形成され、
前記ケーシングの内部には、
前記蒸気受入口から流入した蒸気が入り込む蒸気受入室と、
前記蒸気受入室と連通し、且つ前記軸方向で該蒸気受入室と隣接している供給マニホールド室と、
前記供給マニホールド室と連通し、該供給マニホールド室の下側に隣接し、蒸気から湿分を分離する湿分分離室と、
前記湿分分離室と連通し、且つ前記軸方向で前記蒸気受入室と隣接し、前記熱交換管群が収納されている加熱室と、
前記加熱室及び前記蒸気送出口と連通し、且つ該加熱室及び前記蒸気受入室の上側に隣接している回収マニホールド室と、
が形成され、
前記蒸気受入室と前記加熱室とは、上下方向に広がり且つ前記熱交換管群の前記軸方向の端部が貫通する仕切板と、該仕切板を貫通している該熱交換管の端部を囲い且つ該仕切板に接合されている囲い板と、で仕切られ、
前記蒸気受入室と前記回収マニホールド室とは、前記仕切板に接合されている天井板で仕切られ、
前記蒸気受入室内には、前記囲い板に接合されているか又は該囲い板の一部と一体形成されていると共に、前記天井板と前記仕切板とに接合された補強板が設けられている、
ことを特徴とする湿分分離加熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の湿分分離加熱器において、
前記囲い板は、前記熱交換管群の前記端部を基準にして、水平方向であって前記軸方向と垂直な横幅方向における両側で互いに対向している一対の囲い側板と、一対の囲い側板の縁相互を連結する囲い連結板と、を有し、
前記補強板は、前記囲い側板に接合されているか又は該囲い側板と一体形成されている、
ことを特徴とする湿分分離加熱器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の湿分分離加熱器において、
前記補強板は、該補強板が接合されている前記仕切板と反対側の縁は、上下方向に広がる面内で該仕切板側に凹む凹形状を成している、
ことを特徴とする湿分分離加熱器。
【請求項4】
請求項3に記載の湿分分離加熱器において、
前記補強板の前記凹形状は、円弧形状である、
ことを特徴とする湿分分離加熱器。
【請求項5】
請求項4に記載の湿分分離加熱器において、
前記補強板の前記円弧形状の円弧中心は、前記囲い板中で、該補強板が接合されている前記仕切板から最も遠い遠距離位置よりも、該仕切板側に位置している、
ことを特徴とする湿分分離加熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11422(P2013−11422A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145402(P2011−145402)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)