説明

湿式画像形成装置

【課題】簡易な構成で、画像が形成された記録用紙に対して効率的な加熱によりキャリア液の除去が可能な湿式画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着器10を構成する加熱加圧手段9a,9bの前段(上流側)に、記録用紙に過熱蒸気を吹き付ける過熱蒸気吹付手段8を設ける。また、過熱蒸気吹付手段8は、記録用紙Pの少なくともトナー像11が形成された画像形成面に設けられる。画像形成面から過熱蒸気を吹き付けることにより効率的に液体現像剤を加熱して、キャリア液を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に関し、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、現像装置を用いて像担持体である感光体上に静電潜像がトナーにより現像される。そして、例えば、感光体上に現像された静電潜像が記録用紙に転写されて画像が形成されることになる。このような画像形成装置の転写プロセスでは、一般に静電転写方式が採用されている。
【0003】
トナー像を被転写体である用紙に転写する場合は、感光体に対向するように配置された用紙の裏面から転写ローラ等により電圧を印加し、感光体と記録用紙との間に電界を形成してこの電界によりトナー像を記録用紙に静電吸着させている。
【0004】
そして、その後、定着器により加圧定着することにより転写されたトナー像を記録用紙に定着させている。
【0005】
一方で、近年、大量プリント用のオフィスプリンタやオンデマンド印刷装置などの、より高画質及び高解像度が要求される画像形成装置では、トナー粒子径が小さく、トナー画像の乱れが生じにくい液体現像剤を用いた湿式現像装置が知られている。当該液体現像剤は、パラフィン系溶媒等をキャリア液にトナーを分散させたものが用いられており、現像や転写工程においては、電界による泳動でトナーを移動させ記録用紙に画像を転写させている。
【0006】
キャリア液は、トナーの移動に重要な役割を果たしているが、定着工程においては、キャリア液がトナー粒子間やトナーと記録用紙との間に介在し、トナーの固着を阻害し、十分な定着性が得られにくいという問題がある。
【0007】
さらに、紙などの多孔質な記録用紙の場合、キャリア液が記録用紙中に浸透し、記録用紙の光散乱性を低下させる問題が生じる。そのため記録用紙裏面から表面のトナー画像が透けて見える裏抜けの問題が生じる。
【0008】
一方で、樹脂シート等の非吸液性の記録用紙の場合、キャリア液が記録用紙中に浸透しないため、記録用紙上のトナー像に含まれるキャリア液量が多く、流動性が高い状態が維持される。そのため、トナーを記録用紙に溶融固着させるために加熱加圧手段を用いるとトナー像が乱されるという問題が生じる。
【0009】
それゆえ、定着工程において、キャリア液の除去が重要となってくる。
特に、記録用紙中に浸透したキャリア液を除去することは容易ではなく、そのためには主にキャリア液を揮発させる必要が生じる。
【0010】
この点で、キャリア液除去手段としては、種々の方式が提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−251158号公報
【特許文献2】特開2009−169269号公報
【特許文献3】特開2009−163065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般的には、ローラ定着器のような加熱されたローラ等で記録用紙を挟み、そのニップ部で加圧しながら加熱する加熱加圧手段が用いられており、例えば、特許文献1においては、過熱水蒸気を熱源としてローラ等を加熱する方式が開示されているが、このような接触加熱方式の定着手段は、トナーの溶融、変形の点では有利であるものの、キャリア液の揮発の観点では、密閉されているために揮発したキャリア液蒸気が逃げていかずに、昇温状態を有効に活用できていないという問題がある。
【0013】
特許文献2および特許文献3では、非接触式の加熱方式が示されており、特許文献2においては、たとえば熱風による対流伝熱を用いる場合が開示されているが、当該方式ではキャリア液蒸気の対流が生じ、揮発を促進することが可能となるが熱伝達効率が低く、加熱速度が遅くなるという問題がある。また、特許文献3においては、非接触加熱方式としてハロゲンヒータ、キセノンフラッシュランプおよび送風といった手段を用いる場合が開示されているが、装置が大型化するという問題がある。
【0014】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で、画像が形成された記録用紙に対して効率的な加熱によりキャリア液の除去が可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある局面に従う画像形成装置は、キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いる画像形成装置であって、液体現像剤により記録媒体上に像を形成する像形成手段と、像形成手段により形成された記録媒体上の液体現像剤に含まれるキャリア液を揮発させるために過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段とを備える。
【0016】
好ましくは、記録媒体上に形成された像を定着させるための定着手段をさらに備え、過熱蒸気供給手段は、像形成手段と定着手段との間に設けられる。
【0017】
好ましくは、記録媒体上に形成された像を定着させるための定着手段をさらに備え、過熱蒸気供給手段は、定着手段よりも後に設けられる。
【0018】
好ましくは、記録媒体上に形成された像を定着させるための定着手段をさらに備え、過熱蒸気供給手段は、複数設けられ、像形成手段と定着手段との間と、定着手段よりも後にそれぞれ設けられる。
【0019】
好ましくは、過熱蒸気は、水蒸気である。
好ましくは、過熱蒸気を回収して排気する手段をさらに備える。
【0020】
好ましくは、過熱蒸気供給手段から供給された過熱蒸気を回収して再利用する循環手段をさらに備える。
【0021】
好ましくは、輻射熱を用いて記録媒体上の液体現像剤に含まれるキャリア液をさらに揮発させる輻射加熱手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従う画像形成装置において、像形成手段により形成された記録媒体上の液体現像剤に含まれるキャリア液を揮発させるために過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段とを設けることにより、簡易な構成で、画像が形成された記録用紙に対して効率的な加熱によりキャリア液の除去を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置の全体構成の一部について説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態1に従う過熱蒸気吹付手段8について説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態1の変形例1に従う過熱蒸気吹付システムを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例2に従う過熱蒸気吹付システムの一部を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態2に従う過熱蒸気吹付システムを説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態3に従う過熱蒸気吹付システムを説明する図である。
【図7】実施の形態に従う構成と比較例の構成との実験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一であるものとする。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置の全体構成の一部について説明する図である。
【0026】
図1を参照して、本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置には、ドラム状の像担持体である感光体1が設けられ、感光体1の周辺には矢印Aで示す回転方向の順に現像装置4、転写ローラ5、感光体1に残留したキャリア液を除去するためのクリーニング部材であるクリーニング装置6、帯電装置2および露光装置3がそれぞれ配設される。
【0027】
現像装置4は、現像ローラ等の部材が設けられ、液体現像剤を感光体1の静電潜像に供給して画像部を現像する。なお、本例においては、1つの現像装置が示されているがカラー画像を形成する場合には、複数のトナー色が異なる現像装置を設けるようにしても良い。
【0028】
感光体1の表面は、帯電装置2により所定の表面電位に一様に帯電される。そして、その後、図中のE点の位置で露光装置3により感光体1の表面に光を照射し、照射領域内の帯電レベルを低下させて、感光体1の表面に静電潜像を形成する。
【0029】
次いで、感光体1上の静電潜像は、上述したように現像ローラによりトナーおよびキャリア液を含む液体現像剤で現像され、感光体1の表面にトナー像が形成される。このとき、トナーだけでなくキャリア液も感光体1の表面に付着する。
【0030】
具体的には、現像のプロセスにおいては、現像装置4の現像ローラに電源(不図示)からトナーと同極性の現像バイアス電圧が印加される。同じくトナーと同極性の感光体1上の静電潜像の電位とのバランスで電界の大小差が形成され、静電潜像に従って液体現像剤中のトナーが感光体1に静電吸着され、感光体1上に静電潜像が現像される。
【0031】
次に、転写ローラ5は感光体1と対向するように配置される。感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ5とのニップ領域(転写位置)に移動し、当該転写位置において記録用紙に転写される。
【0032】
具体的には、転写プロセスにおいては、転写ローラ5に電源(不図示)からトナーと逆極性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、転写位置において、感光体1と転写ローラ5とは記録用紙を挟んで対向するように配置されており、記録用紙を介して接触回転する。そして、感光体1上に形成されたトナー像は、記録用紙に対して転写される。
【0033】
なお、トナー像が記録用紙に転写されると、クリーニング装置6が感光体1上の残存トナーを除去する。
【0034】
そして、トナー像が転写された記録用紙は、搬送方向Cの方向である定着器10へと搬送される。
【0035】
定着器10に搬送される際に、過熱蒸気吹付手段8が設けられており、過熱蒸気吹付手段8によって記録用紙に過熱蒸気を吹き付け、記録用紙およびトナー像として形成された液体現像剤を効率的に加熱し、キャリア液を揮発させる。過熱蒸気吹付手段8の詳細については後述する。
【0036】
そして、定着器10において、より強固な定着強度を得るためや光沢度制御等のためにローラで構成された加熱加圧手段9a,9bが設けられている。なお、ここでは、ローラで構成されている場合が示されているがベルトであっても良い。
【0037】
なお、転写に関して、中間転写体を介してトナー像を記録用紙に転写させる構成を採用することも可能である。
【0038】
各ローラ等は、円柱状であり、本例では、その断面部分が示されている。
なお、クリーニング装置6のクリーニングブレードは、ゴム体であっても剛体であっても良い。ゴム体は、ウレタンゴムや、NBRゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。剛体の場合には、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート等の樹脂類や、アルミ、アルマイト、SUS、真鍮などの金属類が挙げられる。
【0039】
なお、クリーニングブレードを用いて残留したキャリア液を除去する構成について説明しているが、ウェブロール状の紙,布等を感光体に圧接し、巻き取り移動させながら残留したキャリア液を除去するいわゆるウェブクリーニングを採用することも可能である。また、バイアスを印加してトナーを引き付けるようにしてもよい。
【0040】
液体現像剤は、キャリア液である絶縁性液体と、静電潜像を現像するトナーと、トナーを分散させる分散剤とを主要成分としている。
【0041】
キャリア液としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば特に制限することなく使用することができるが、例えば、キャリア液として、イソパラフィン系のアイソパー(G、H、L、Mなど)(エクソンモビール)、IPソルベント(1620、2028、2835など)(出光興産)や、パラフィン系のモレスコホワイト(P−40,P−70,P−120)(松村石油研究所)を挙げることができる。また、シリコンオイル、ミネラルオイルを用いることも可能である。
【0042】
トナー粒子は、主として、樹脂と着色のための顔料や染料からなる。樹脂には、顔料や染料を樹脂中に均一に分散させる機能と、記録用紙に定着させる際のバインダとしての機能がある。
【0043】
トナー粒子としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。またこれらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。
【0044】
また、トナーの着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。たとえば、顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としてはソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0045】
液体現像剤の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。そして、得られたトナー粒子をキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、液体現像剤を得ることができる。
【0046】
トナーの平均粒径は、湿式画像形成方式を採用しているため、0.1μm〜5μmとすることが可能である。0.1μm未満では現像性が大きく低下し、5μmより大きい粒径では画像品位が低下するため、0.1〜5μmに設定することが望ましい。
【0047】
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10〜50%程度が適当である。
【0048】
10%未満の場合、トナー粒子に沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問題があり、また、必要な画像濃度を得るため、多量の液体現像剤を供給する必要があり、記録用紙に付着するキャリア液が増加し、定着時に乾燥させた際の蒸気の処理が問題となる可能性がある。一方で、50%を超える場合には、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も取り扱いが困難になる可能性がある。
【0049】
液体現像剤の粘土は、25℃において、0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下が望ましい。10000mPa・sより大きくなると液体現像剤の攪拌や送液等の取り扱いが困難となり、均一な液体現像剤を供給する装置の負担が大きくなる可能性がある。
【0050】
次に、本発明の実施の形態1に従う過熱蒸気吹付手段8について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に従う過熱蒸気吹付手段8について説明する図である。
【0051】
図2を参照して、定着器10を構成する加熱加圧手段9a,9bの前段(上流側)に、記録用紙に過熱蒸気を吹き付ける過熱蒸気吹付手段8を設ける。
【0052】
また、過熱蒸気吹付手段8は、記録用紙Pの少なくともトナー像11が形成された画像形成面に設けられる。画像形成面から過熱蒸気を吹き付けることにより効率的に液体現像剤を加熱することが可能となる。なお、使用する過熱蒸気としては、入手の容易性、安全性等の観点から水蒸気(水)を用いることが好ましい。なお、本例においては、水蒸気を過熱蒸気として用いる例について説明するがこれに限られず他の蒸気を利用することも可能である。過熱水蒸気の温度としては150℃〜300℃が好ましい。なお、当該温度は、加熱速度や記録用紙Pの耐熱性を考慮して適切な値に設定することが可能である。なお、空気による伝熱は対流伝熱であるのに対して、過熱水蒸気では、対流に加えて、放射伝熱、凝縮伝熱によって熱を伝達することが可能である。
【0053】
したがって、本発明の実施の形態1に従う過熱蒸気吹付手段8により記録用紙Pに過熱水蒸気を吹き付けることにより、記録用紙Pおよび記録用紙上の液体現像剤を急速に加熱して昇温させ、キャリア液の揮発が生じる。そして、記録用紙Pの表面近傍の揮発したキャリア液蒸気は拭きつけた過熱水蒸気が形成する記録用紙Pの表面に沿った気流により除去され、記録用紙Pの表面近傍のキャリア液の蒸気圧を低く維持可能であり、さらに、キャリア液の揮発を促進することが可能である。
【0054】
なお、図2の構成においては、過熱水蒸気を記録用紙Pの搬送方向に対して垂直な方向から吹き付ける構成が示されているが、特に当該構成に限定されるものではなく、記録用紙Pと同方向の気流を形成するように吹き付けることも可能であるし、逆方向に吹き付けるようにしても良い。
【0055】
キャリア液が揮発除去された記録用紙Pは、加熱加圧手段9a,9bからなる定着器10に搬送され、トナー像11は、確実に記録用紙Pに定着される。
【0056】
(実施の形態1の変形例1)
図3は、本発明の実施の形態1の変形例1に従う過熱蒸気吹付システムを説明する図である。
【0057】
図3を参照して、過熱蒸気吹付システムは、過熱蒸気吹付手段8と、整流板13と、排気手段14と、キャリア液回収装置18と、水蒸気発生手段16と、加熱装置17と、電磁弁B1,B2を含む。ここで、当該過熱蒸気吹付システムは、定着器10の上流側に設けられる。
【0058】
具体的には、搬送手段15を介して搬送される記録用紙Pに対して過熱蒸気吹付手段8により過熱水蒸気を吹き付ける。整流板13により記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気は記録用紙の搬送方向Cの方向に案内され排気手段14により回収される。その際、過熱水蒸気とともに記録用紙Pのトナー像11が形成された画像形成面から揮発したキャリア液蒸気も排気手段14により回収される。なお、排気手段14および整流板13を設けることにより過熱水蒸気気流12の流速を維持するとともに、キャリア液蒸気の除去性能が向上する。また、記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気が機内や機外に拡散することを抑制することが可能であり、機内や機外で過熱水蒸気の温度が低下し、結露が生じる不具合も回避することが可能である。なお、キャリア液の揮発を促進するために複数の過熱蒸気吹付手段8や排気手段14を設ける構成とすることも可能である。
【0059】
そして、排気手段14により回収された過熱水蒸気およびキャリア液蒸気はキャリア液回収装置18に送られる。キャリア液回収装置18において、キャリア液が除去された後に、再び水蒸気発生手段16に送られる。そして、水蒸気発生手段16で発生された水蒸気がポンプによって加熱装置17に送られる。そして、加熱装置17で所定の温度に水蒸気が加熱されて電磁弁B1を介して過熱蒸気吹付手段8に送られる。そして、過熱蒸気吹付手段8で過熱水蒸気が吹き付けられ、過熱水蒸気が循環して利用される。なお、水蒸気発生手段16で生成した過熱水蒸気は、バーナー、電気ヒータ、電磁誘導等で構成された加熱装置17で加熱される。電磁弁B1,B2は所定のタイミングで開閉される。具体的には、排気手段14が動作する際に電磁弁B2が開かれ、動作しない場合には閉じているものとする。同様に、過熱蒸気吹付手段8を用いる際に、電磁弁B1が開かれ、用いない場合には閉じているものとする。
【0060】
なお、過熱水蒸気の不要な温度低下やそれに伴う結露を抑制するために整流板13や搬送手段15、配管等の過熱蒸気の流路を形成する各部材を周囲から断熱するように構成することが望ましい。
【0061】
当該本発明の実施の形態1の変形例に従う構成においても、キャリア液が揮発除去された記録用紙Pは、加熱加圧手段9a,9bからなる定着器10に搬送され、トナー像11は、確実に記録用紙Pに定着される。
【0062】
(実施の形態1の変形例2)
図4は、本発明の実施の形態1の変形例2に従う過熱蒸気吹付システムの一部を説明する図である。
【0063】
図4を参照して、ここでは、図3の過熱蒸気吹付システムを一部変更した場合が示されている。具体的には、輻射加熱手段25をさらに設けた点が異なる。その他の点については図3で説明したのと同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
【0064】
本例において、輻射加熱手段25は、赤外線ヒータや、キセノンフラッシュ等を用いることが可能である。
【0065】
過熱蒸気吹付手段8と併用して輻射加熱手段25を用いることによりさらに、記録用紙Pの昇温を促進して、キャリア液を揮発除去することが可能である。
【0066】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に従う過熱蒸気吹付システムを説明する図である。
【0067】
図5を参照して、本発明の実施の形態2に従う過熱蒸気吹付システムは、過熱蒸気吹付手段8と、整流板13と、排気手段14と、キャリア液回収装置18と、水蒸気発生手段16と、加熱装置17と、電磁弁B1,B2を含む。ここで、当該過熱蒸気吹付システムは、定着器10の下流側に設けられる。
【0068】
具体的には、定着器10通過後、搬送手段15を介して搬送される記録用紙Pに対して過熱蒸気吹付手段8により過熱水蒸気を吹き付ける。整流板13により記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気は記録用紙の搬送方向Cと逆方向に案内され排気手段14により回収される。その際、過熱水蒸気とともに記録用紙Pの残留する揮発したキャリア液蒸気も排気手段14により回収される。なお、排気手段14および整流板13を設けることにより過熱水蒸気気流12の流速を維持するとともに、キャリア液蒸気の除去性能が向上する。また、記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気が機内や機外に拡散することを抑制することが可能であり、機内や機外で過熱水蒸気の温度が低下し、結露が生じる不具合も回避することが可能である。なお、キャリア液の揮発を促進するために複数の過熱蒸気吹付手段8や排気手段14を設ける構成とすることも可能である。
【0069】
そして、排気手段14により回収された過熱水蒸気およびキャリア液蒸気はキャリア液回収装置18に送られる。キャリア液回収装置18において、キャリア液が除去された後に、再び水蒸気発生手段16に送られる。そして、水蒸気発生手段16で発生された水蒸気がポンプによって加熱装置17に送られる。そして、加熱装置17で所定の温度に水蒸気が加熱されて電磁弁B1を介して過熱蒸気吹付手段8に送られる。そして、過熱蒸気吹付手段8で過熱水蒸気が吹き付けられ、過熱水蒸気が循環して利用される。なお、水蒸気発生手段16で生成した過熱水蒸気は、バーナー、電気ヒータ、電磁誘導等で構成された加熱装置17で加熱される。電磁弁B1,B2は所定のタイミングで開閉される。具体的には、排気手段14が動作する際に電磁弁B2が開かれ、動作しない場合には閉じているものとする。同様に、過熱蒸気吹付手段8を用いる際に、電磁弁B1が開かれ、用いない場合には閉じているものとする。
【0070】
なお、過熱水蒸気の不要な温度低下やそれに伴う結露を抑制するために整流板13や搬送手段15、配管等の過熱蒸気の流路を形成する各部材を周囲から断熱するように構成することが望ましい。
【0071】
本発明の実施の形態2に従う構成においては、定着器10を通過後の記録用紙P中に残留するキャリア液を揮発させる。特に、吸液性の高い記録用紙P(具体的には紙ベースの記録材)を用いた場合には、記録用紙P中に浸透するキャリア液量が多くなる。そのために、定着器10でキャリア液がトナーの溶融固着を阻害する作用は小さくなり、定着強度は得やすくなる。しかしながら、紙等の吸液性の高い多孔質な記録用紙はその空隙での光散乱のために白色不透明になっており、キャリア液が浸透すると空隙での光散乱性が低下する。その結果、記録用紙の裏面から見た際に表面に形成された画像が透けて見える裏抜けという問題が発生する可能性があるが、本発明の実施の形態2に従う方式により、記録用紙P中に浸透したキャリア液を揮発させて裏抜けの問題を回避することが可能となる。
【0072】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に従う過熱蒸気吹付システムを説明する図である。
【0073】
図6を参照して、本発明の実施の形態3に従う過熱蒸気吹付システムは、過熱蒸気吹付手段8,19と、整流板13,20と、排気手段14,22と、キャリア液回収装置18と、水蒸気発生手段16と、加熱装置17と、電磁弁B1,B2,B3,B4を含む。ここで、当該過熱蒸気吹付システムは、定着器10の上流側および下流側に設けられる。
【0074】
具体的には、搬送手段15aを介して搬送される記録用紙Pに対して過熱蒸気吹付手段8により過熱水蒸気を吹き付ける。整流板13により記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気は記録用紙の搬送方向Cの方向に案内され排気手段14により回収される。その際、過熱水蒸気とともに記録用紙Pのトナー像11が形成された画像形成面から揮発したキャリア液蒸気も排気手段14により回収される。なお、排気手段14および整流板13を設けることにより過熱水蒸気気流12の流速を維持するとともに、キャリア液蒸気の除去性能が向上する。また、記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気が機内や機外に拡散することを抑制することが可能であり、機内や機外で過熱水蒸気の温度が低下し、結露が生じる不具合も回避することが可能である。なお、キャリア液の揮発を促進するために複数の過熱蒸気吹付手段8や排気手段14を設ける構成とすることも可能である。
【0075】
そして、排気手段14により回収された過熱水蒸気およびキャリア液蒸気はキャリア液回収装置18に送られる。キャリア液回収装置18において、キャリア液が除去された後に、再び水蒸気発生手段16に送られる。そして、水蒸気発生手段16で発生された水蒸気がポンプによって加熱装置17に送られる。そして、加熱装置17で所定の温度に水蒸気が加熱されて電磁弁B1を介して過熱蒸気吹付手段8に送られる。そして、過熱蒸気吹付手段8で過熱水蒸気が吹き付けられ、過熱水蒸気が循環して利用される。なお、水蒸気発生手段16で生成した過熱水蒸気は、バーナー、電気ヒータ、電磁誘導等で構成された加熱装置17で加熱される。電磁弁B1,B2は所定のタイミングで開閉される。具体的には、排気手段14が動作する際に電磁弁B2が開かれ、動作しない場合には閉じているものとする。同様に、過熱蒸気吹付手段8を用いる際に、電磁弁B1が開かれ、用いない場合には閉じているものとする。
【0076】
なお、過熱水蒸気の不要な温度低下やそれに伴う結露を抑制するために整流板13や搬送手段15a、配管等の過熱蒸気の流路を形成する各部材を周囲から断熱するように構成することが望ましい。
【0077】
また、定着器10通過後、搬送手段15bを介して搬送される記録用紙Pに対して過熱蒸気吹付手段19により過熱水蒸気を吹き付ける。整流板20により記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気は記録用紙の搬送方向Cと逆方向に案内され排気手段22により回収される。その際、過熱水蒸気とともに記録用紙Pの残留する揮発したキャリア液蒸気も排気手段22により回収される。なお、排気手段22および整流板20を設けることにより過熱水蒸気気流21の流速を維持するとともに、キャリア液蒸気の除去性能が向上する。また、記録用紙Pに吹き付けた過熱水蒸気が機内や機外に拡散することを抑制することが可能であり、機内や機外で過熱水蒸気の温度が低下し、結露が生じる不具合も回避することが可能である。なお、キャリア液の揮発を促進するために複数の過熱蒸気吹付手段19や排気手段22を設ける構成とすることも可能である。
【0078】
そして、排気手段22により回収された過熱水蒸気およびキャリア液蒸気はキャリア液回収装置18に送られる。キャリア液回収装置18において、キャリア液が除去された後に、再び水蒸気発生手段16に送られる。そして、水蒸気発生手段16で発生された水蒸気がポンプによって加熱装置17に送られる。そして、加熱装置17で所定の温度に水蒸気が加熱されて電磁弁B3を介して過熱蒸気吹付手段19に送られる。そして、過熱蒸気吹付手段19で過熱水蒸気が吹き付けられ、過熱水蒸気が循環して利用される。なお、水蒸気発生手段16で生成した過熱水蒸気は、バーナー、電気ヒータ、電磁誘導等で構成された加熱装置17で加熱される。電磁弁B3,B4は所定のタイミングで開閉される。具体的には、排気手段22が動作する際に電磁弁B4が開かれ、動作しない場合には閉じているものとする。同様に、過熱蒸気吹付手段19を用いる際に、電磁弁B3が開かれ、用いない場合には閉じているものとする。
【0079】
なお、過熱水蒸気の不要な温度低下やそれに伴う結露を抑制するために整流板20や搬送手段15b、配管等の過熱蒸気の流路を形成する各部材を周囲から断熱するように構成することが望ましい。
【0080】
本発明の実施の形態3に従う構成においては、前段において、定着前に過熱蒸気吹付手段8により記録用紙Pおよびトナー像中のキャリア液を揮発除去することにより、トナー像11は、確実に記録用紙Pに定着される。また、後段において、定着器10を通過後の記録用紙P中に残留するキャリア液を揮発させることにより、裏抜けの問題を回避することが可能となる。
【0081】
なお、本例においては、キャリア液回収装置18、水蒸気発生手段16、加熱装置17等を共通として用いる構成であるためシステムとしての部品点数を少なくすることが可能である。
【0082】
(実施例)
図7は、実施の形態に従う構成と比較例の構成との実験結果を説明する図である。
【0083】
図7を参照して、定着強度、像乱れ、裏ぬけについて実験結果を評価した。
なお、像乱れについては、OHPシートのみ評価した。また、裏ぬけについては上質紙のみ評価した。
【0084】
実験方法としては、2種類の記録用紙を用いた。具体的には、OHPシート(厚さ100μm)およびコート紙(坪量128g/m2)を用いて画像を形成した。
【0085】
定着性の評価方法としては、定着後の画像にテープ(住友スリーエム製メンディングテープ)を貼り、剥離後のテープに付着したトナー量を目視評価した。
【0086】
付着トナーがない場合を良「○」、付着トナーがある場合を不良「×」とした。
また、像乱れの評価方法としては、定着後の画像の乱れを目視評価し、画像の乱れがない場合を良「○」、乱れがある場合を不良「×」とした。
【0087】
また、裏ぬけの評価方法としては、定着後の画像を裏面から観察し、表面の画像の透け具合を目視評価した。透けがない場合を良「○」、透けがある場合を不良「×」とした。
【0088】
実施例1の構成として、図6の過熱蒸気吹付システムの構成を用いて、定着器10の前段および後段において、それぞれ過熱水蒸気を記録用紙(OHPシートおよびコート紙)に吹き付けた。
【0089】
定着強度、像乱れ、裏ぬけを確認したところ全て良「○」の結果を得た。
実施例2の構成として、図6の過熱蒸気吹付システムの構成を用いて、定着器10の前段のみにおいて、過熱水蒸気を記録用紙(OHPシート)に吹き付けた。
【0090】
定着強度、像乱れを確認したところ全て良「○」の結果を得た。
実施例3の構成として、図6の過熱蒸気吹付システムの構成を用いて、定着器10の後段のみにおいて、過熱水蒸気を記録用紙(コート紙)に吹き付けた。
【0091】
定着強度、裏ぬけを確認したところ全て良「○」の結果を得た。
一方、比較例1としては、図6の過熱蒸気吹付システムの構成を用いて、過熱水蒸気を吹き付けず定着器10のみを用いた。
【0092】
定着強度、像乱れ、裏ぬけを確認したところ全て不良「×」の結果を得た。
また、比較例2としては、図6の過熱蒸気吹付システムの構成を用いて、定着器10の前段、後段において、過熱水蒸気を吹き付けず、代わりに乾燥空気を吹き付けた。
【0093】
定着強度、像乱れ、裏ぬけを確認したところ全て不良「×」の結果を得た。
したがって、本願の実施の形態に従う過熱蒸気吹付手段8を用いた方式により、定着性は良「○」であり、像乱れも良「○」、裏抜けも良「○」となり、簡易な構成で、画像が形成された記録用紙に対して効率的な加熱におりキャリア液の除去が可能であり、良好な品質の画像を形成することができることを確認した。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1 感光体、2 帯電装置、3 露光装置、4 現像装置、5 転写ローラ、6 クリーニング装置、8,19 過熱蒸気吹付手段、9a,9b 加熱加圧手段、10 定着器、13,20 整流板、14,22 排気手段、15,15a,15b 搬送手段、16 水蒸気発生手段、17 加熱装置、18 キャリア液回収装置、25 輻射加熱手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いる画像形成装置であって、
前記液体現像剤により記録媒体上に像を形成する像形成手段と、
前記像形成手段により形成された前記記録媒体上の前記液体現像剤に含まれるキャリア液を揮発させるために過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給手段とを備えた、湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体上に形成された像を定着させるための定着手段をさらに備え、
前記過熱蒸気供給手段は、前記像形成手段と前記定着手段との間に設けられる、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体上に形成された像を定着させるための定着手段をさらに備え、
前記過熱蒸気供給手段は、前記定着手段よりも後に設けられる、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
前記記録媒体上に形成された像を定着させるための定着手段をさらに備え、
前記過熱蒸気供給手段は、複数設けられ、
前記像形成手段と前記定着手段との間と、前記定着手段よりも後にそれぞれ設けられる、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項5】
前記過熱蒸気は、水蒸気である、請求項1〜4のいずれかに記載の湿式画像形成装置。
【請求項6】
前記過熱蒸気を回収して排気する手段をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の湿式画像形成装置。
【請求項7】
前記過熱蒸気供給手段から供給された前記過熱蒸気を回収して再利用する循環手段をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の湿式画像形成装置。
【請求項8】
輻射熱を用いて前記記録媒体上の前記液体現像剤に含まれるキャリア液をさらに揮発させる輻射加熱手段をさらに備える、請求項1〜7のいずれかに記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−118206(P2012−118206A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266510(P2010−266510)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】