説明

湿式画像形成装置

【課題】画像ノイズを発生させることなく、かつ、オフセットの発生を防止することが可能な湿式画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置5においては、第1定着ローラ61と第2定着ローラ62との間にキャリア液搬送ローラ91を設ける。記録用紙8上のキャリア液は、第1定着ローラ61と接触することにより回収され、第1定着ローラ61により回収されたキャリア液は、キャリア液搬送ローラ91を介して第2定着ローラ62に供給されることになる。第2定着ローラ62に供給されたキャリア液は、第2定着ローラ62と第2加圧ローラ72とのニップ領域において離型剤として機能し、記録用紙8から過剰にキャリア液が除去されることを防止し、キャリア液の過剰除去によるオフセットが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に関し、液体現像剤を用いてトナー像を形成する湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、現像装置を用いて感光体上に静電潜像がトナーにより現像される。そして、例えば、感光体上に現像された静電潜像が記録用紙に転写されて画像が形成されることになる。このような画像形成装置の転写プロセスでは、一般に静電転写方式が採用されている。
【0003】
トナー像を被転写体である用紙に転写する場合は、感光体に対向するように配置された用紙の裏面から転写ローラ等により電圧を印加し、感光体と記録用紙との間に電界を形成してこの電界によりトナー像を記録用紙に静電吸着させている。
【0004】
そして、その後、定着装置により加圧定着することにより転写されたトナー像を記録用紙に定着させている。
【0005】
一方で、近年、大量プリント用のオフィスプリンタやオンデマンド印刷装置などの、より高画質及び高解像度が要求される画像形成装置では、トナー粒子径が小さく、トナー画像の乱れが生じにくい液体現像剤を用いた湿式現像装置が知られている。当該液体現像剤は、パラフィン系溶媒等をキャリア液にトナーを分散させたものが用いられており、現像や転写工程においては、電界による泳動でトナーを移動させ記録用紙に画像を転写させている。
【0006】
この液体現像剤を用いた湿式画像形成装置の場合、定着性の確保のためにはトナー層中のキャリア液を取り除かなければならない。
【0007】
トナー層中のキャリア液は、揮発、定着部材での除去、用紙浸透により取り除かれるが、定着回数が1回である1段の定着部材で定着性を確保するためには記録用紙を高温にする必要がある。その場合、トナーを溶融させ過ぎると発生する高温オフセットや記録用紙を加熱し過ぎると発生するペーパーブリスタ等の問題があり、1段の定着部材では定着性を確保することが難しい。この点で、定着回数を複数に分ける、つまり多段定着にする方式が提案されている。
【0008】
しかしながら、定着回数を重ねた場合には、トナー層表面に存在して離型剤として機能するキャリア液の除去が過剰になり過ぎ、オフセット防止効果が失われるという問題がある。
【0009】
この点で、特開2009−204909号公報においては、多段定着の構成において、第1の定着ローラを通過後の記録用紙に当接ローラを当接し、当該当接ローラの当接により回収されたキャリア液を後段の第2の定着ローラに供給することによりキャリア液の過剰除去を防止する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−204909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記公報に示される方式は、第1の定着ローラを通過後の記録用紙に当接ローラを当接する方式であり、その際当接ローラの接触により画像が乱れる可能性がある。すなわち、画像ノイズを生じさせる可能性がある。
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、画像ノイズを発生させることなく、かつ、オフセットの発生を防止することが可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある局面に従う湿式画像形成装置は、キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いる湿式画像形成装置であって、液体現像剤により現像された記録媒体について、熱定着する第1の定着ローラと、第1の定着ローラを通過した記録媒体について、さらに熱定着する第2の定着ローラと、第1および第2の定着ローラとの間に設けられ、第1の定着ローラに付着したキャリア液を回収して第2の定着ローラに供給するキャリア液搬送手段とを備える。
【0014】
好ましくは、キャリア液搬送手段は、第1および第2の定着ローラとにそれぞれ当接され、それぞれのニップ領域において第1および第2の定着ローラの回転方向とカウンタ方向となるように回転駆動される。
【0015】
好ましくは、記録媒体上から第1の定着ローラにより回収されたキャリア液は、キャリア液搬送手段を介して第2の定着ローラにより記録媒体上で第1の定着ローラにより回収された位置と略同一の位置に供給される。
【0016】
特に、第1の定着ローラと記録媒体との第1のニップ領域の出口と第2の定着ローラと記録媒体との第2のニップ領域の入口までの記録媒体の搬送時間と、キャリア液搬送手段を介して第1のニップ領域の出口から第2のニップ領域の入口にキャリア液が到達するキャリア液の搬送経路の搬送時間とが略同一となるように設計される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある局面に従う湿式画像形成装置において、第1および第2の定着ローラとの間に設けられ、第1の定着ローラに付着したキャリア液を回収して第2の定着ローラに供給するキャリア液搬送手段を設けることにより、第1の定着ローラにより回収されたキャリア液は、キャリア液搬送手段を介して第2の定着ローラに供給され、第2の定着ローラに供給されたキャリア液は、第2の定着ローラのニップ領域において離型剤として機能し、キャリア液の過剰除去によるオフセットを防止することが可能である。また、記録媒体にキャリア液搬送手段は接触しないため記録媒体上の画像を乱すことも無く、画像ノイズを生じさせることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置における画像形成部の構成について説明する概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に従う定着装置5の構成を説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態1の変形例1に従う定着装置5aの構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例2に従う定着装置5bの構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態2に従う定着装置5の設計方式を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態2の変形例に従う定着装置5bの設計方式を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一であるものとする。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に従う湿式画像形成装置における画像形成部の構成について説明する概略図である。なお、当該図1には、湿式画像形成装置における画像形成部の概略断面図が示されている。
【0021】
図1を参照して、画像形成部は、現像装置1と、感光体2と、中間転写体3と、転写ローラ4とを含む。そして、画像形成後の記録用紙8は定着装置5に搬送される。
【0022】
感光体2および中間転写体3は、像担持体として機能する。
この感光体2を中心に、図示しない周囲に配設される感光体2の表面を均一に帯電させる帯電装置と、帯電した感光体2上にLED光またはレーザビームを照射して、静電潜像を形成する露光装置とが設けられ、そして、その静電潜像を液体現像剤を用いて現像する現像装置1と、現像されたトナー像を転写する中間転写体3とがさらに設けられる。
【0023】
中間転写体3に転写されたトナー像は、転写ローラ4との間の転写位置に移動し、記録用紙8に転写される。具体的には、中間転写体3の周速と同速度で搬送される記録用紙8に帯電を施し、あるいは電圧を印加することで、中間転写体3上の現像されたトナー像が記録用紙8に転写される。なお、本例においては、中間転写体3を用いて、一旦中間転写体3に転写したトナー像を記録用紙に転写する方式について示しているが、感光体2から直接、記録用紙に転写する方式を採用するようにしても良い。
【0024】
なお、図1においては、現像装置1が1台のみ配置されているが、カラー画像形成のために複数台配置される構成としても良い。また、カラー現像の方式、中間転写の有無等は任意に設定すればよく、それに合わせた任意の構成配置をとることが可能である。
【0025】
転写ローラ4でトナー像が転写された記録用紙8は、搬送方向の下流側の定着装置5に搬送され、加熱定着の上、排出される。
【0026】
次に、現像に用いる液体現像剤について説明する。液体現像剤は、溶媒であるキャリア液体中に着色されたトナー粒子を高濃度で分散している。また、液体現像剤には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。
【0027】
液体現像剤は、キャリア液である絶縁性液体と、静電潜像を現像するトナーと、トナーを分散させる分散剤とを主要成分としている。
【0028】
キャリア液としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば特に制限することなく使用することができるが、例えば、キャリア液として、イソパラフィン系のアイソパー(G、H、L、Mなど)(エクソンモビール)、IPソルベント(1620、2028、2835など)(出光興産)や、パラフィン系のモレスコホワイト(P−40,P−70,P−120)(松村石油研究所)を挙げることができる。また、シリコンオイル、ミネラルオイルを用いることも可能である。
【0029】
トナー粒子は、主として、樹脂と着色のための顔料や染料からなる。樹脂には、顔料や染料を樹脂中に均一に分散させる機能と、記録用紙に定着させる際のバインダとしての機能がある。
【0030】
トナー粒子としては、一般に電子写真用液体現像剤に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。またこれらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。
【0031】
また、トナーの着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。たとえば、顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としてはソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0032】
液体現像剤の調整方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調整することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。そして、得られたトナー粒子をキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、液体現像剤を得ることができる。
【0033】
トナーの平均粒径は、湿式画像形成方式を採用しているため、0.1μm〜5μmとすることが可能である。0.1μm未満では現像性が大きく低下し、5μmより大きい粒径では画像品位が低下するため、0.1〜5μmに設定することが望ましい。
【0034】
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10〜50%程度が適当である。
【0035】
10%未満の場合、トナー粒子に沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問題があり、また、必要な画像濃度を得るため、多量の液体現像剤を供給する必要があり、記録用紙に付着するキャリア液が増加し、定着時に乾燥させた際の蒸気の処理が問題となる可能性がある。一方で、50%を超える場合には、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も取り扱いが困難になる可能性がある。
【0036】
液体現像剤の粘度は、25℃において、0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下が望ましい。10000mPa・sより大きくなると液体現像剤の攪拌や送液等の取り扱いが困難となり、均一な液体現像剤を供給する装置の負担が大きくなる可能性がある。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態1に従う定着装置5の構成を説明する図である。
図2を参照して、定着装置5は、第1定着器51と、第2定着器52と、キャリア液搬送ローラ91とを含む。
【0038】
第1定着器51は、第1定着ローラ61と、第1加圧ローラ71とを含む。第2定着器52は、第2定着ローラ62と、第2加圧ローラ72とを含む。第1定着ローラ61および第1加圧ローラ71には、それぞれヒータランプ81,83が内蔵されている。第2定着ローラ62および第2加圧ローラ72には、それぞれヒータランプ82,84が内蔵されている。
【0039】
第1定着ローラ61と第1加圧ローラ71とは上下に並行に配列して、それぞれ両端側を不図示の軸受部材に回転自在に支持させてあり、バネなどを用いた不図示の加圧機構によって第1加圧ローラ71を第1定着ローラ61の回転軸方向に付勢して、第1定着ローラ61の下面部に所定の加圧力で圧接させて、圧接ニップ部(定着ニップ)を形成させている。第1加圧ローラ71は、不図示の駆動機構により矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0040】
第1定着ローラ61は、圧接ニップ部での第1加圧ローラ71との圧接摩擦力によって第1加圧ローラ71の回転に伴い、従動回転する。なお、第1定着ローラ61を回転駆動させて、第1加圧ローラ71を従動回転させるようにしてもよい。
【0041】
ヒータランプ(ハロゲンランプ)81,83は、図示しない制御手段により表面温度が所望の温度となるように制御される。
【0042】
第1定着ローラ61および第1加圧ローラ71は、アルミ等の熱伝導率の良好な中空の金属製芯金(厚み0.5〜5mm)の外周に、ニップ幅確保のための弾性層としてのシリコンゴム層(厚み0.5〜3mm)と、表面の離型性を高めるために離型層として例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフルオロポリエーテル(PFA)等の厚さ10〜50μmのフッ素系樹脂離型層を設けたローラを用いることが可能である。
【0043】
第2定着器52についても第1定着器51と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0044】
また、キャリア液搬送ローラ91は、第1定着ローラ61と第2定着ローラ62とにそれぞれ当接するように設けられる。また、ここでは、キャリア液搬送ローラ91は、第1定着ローラ61および第2定着ローラ62に従動する方向に回転する。
【0045】
キャリア液搬送ローラ91は、アルミ、SUS等の金属製芯金(厚み0.5〜2mm)の外周に、弾性層としてのシリコンゴム層(厚み0.5〜2mm)と、表面の離型層としてPTFEやPFA等の厚さ10〜50μmのフッ素系樹脂離型層を設けたローラを用いることが可能である。
【0046】
本発明の実施の形態1に従う定着装置5においては、第1定着ローラ61と第1加圧ローラ71とのニップ領域の出口付近において記録用紙8上のキャリア液が第1定着ローラ61に付着して搬送される。そして、当該キャリア液は、第1定着ローラ61とキャリア液搬送ローラ91とのニップ領域に突入し、当該ニップ領域の出口付近において、キャリア液搬送ローラ91に付着して搬送されることになる。そして、今度は、第2定着ローラ62とキャリア液搬送ローラ91とのニップ領域に突入し、当該ニップ領域の出口付近において、第2定着ローラ62に付着して搬送されることになる。
【0047】
したがって、記録用紙8上の第1定着ローラ61と接触することにより、第1定着ローラ61により回収されたキャリア液は、キャリア液搬送ローラ91を介して第2定着ローラ62に供給されることになる。すなわち、この第2定着ローラ62に供給されたキャリア液は、第2定着ローラ62と第2加圧ローラ72とのニップ領域において離型剤として機能し、記録用紙8から過剰にキャリア液が除去されることを防止し、キャリア液の過剰除去によるオフセットを防止することが可能である。また、当該構成においては、定着ローラ以外に記録用紙8に当接する部材は設けられておらず、記録用紙8上の画像(トナー像)を乱すことも無く、画像ノイズを生じさせることなく、かつ、オフセットの発生を防止することが可能である。
【0048】
(変形例1)
図3は、本発明の実施の形態1の変形例1に従う定着装置5aの構成を説明する図である。
【0049】
図3を参照して、図2の定着装置5と比較して、キャリア液搬送ローラ91の回転方向を変化させた点が異なる。その他の点については同様であるのでその詳細な説明は繰り返さない。
【0050】
本変形例1においては、キャリア液搬送ローラ91は、第1定着ローラ61とのニップ領域において、第1定着ローラ61とカウンタ方向となるように回転する。また、キャリア液搬送ローラ91は、第2定着ローラ62とのニップ領域において、第2定着ローラ62とカウンタ方向となるように回転する。
【0051】
当該構成により上記の実施の形態1と同様の効果、すなわち、記録用紙8上の画像(トナー像)を乱すことも無く、画像ノイズを生じさせることなく、かつ、オフセットの発生を防止することが可能である。
【0052】
また、キャリア液搬送ローラ91と第1定着ローラ61との当接をカウンタ方向となるように設定することで、第1定着ローラ61とキャリア液搬送ローラ91とのニップ領域の入口付近において、第1定着ローラ61に付着しているキャリア液量の大半がキャリア液搬送ローラ91に転移する。また、キャリア液搬送ローラ91と第2定着ローラ62との当接をカウンタ方向となるように設定することで、第2定着ローラ62とキャリア液搬送ローラ91とのニップ領域の入口付近において、キャリア液搬送ローラ91に付着しているキャリア液量の大半が第2定着ローラ62に転移する。すなわち、当該キャリア液搬送ローラ91と第1定着ローラ61および第2定着ローラ62との当接方向をカウンタ方向とすることによりキャリア液の転移効率を向上させることが可能となる。
【0053】
したがって、転移効率の向上により、第1定着ローラ61で除去されたキャリア液がキャリア液搬送ローラ91を介して第2定着ローラ62に十分な量、搬送されるため、オフセットの発生をさらに防止することが可能となる。
【0054】
なお、キャリア液搬送ローラ91との当接方向により転移効率を向上させるために第2定着ローラ62の表層の離型性を下げて転移効率を向上させる必要はない。また、第1定着ローラ61におけるキャリア液除去性を高めるために、第1定着ローラ61の表層を上記フッ素系樹脂よりも離型性の低いフッ素ゴム、あるいはシリコンゴムを使用するようにしても良い。第1定着器51のニップ領域においては、キャリア液が多量に存在するため、オフセットに対して有利であり表層材料の離型性を下げてもオフセットを防止することは可能である。
【0055】
(変形例2)
図4は、本発明の実施の形態1の変形例2に従う定着装置5bの構成を説明する図である。
【0056】
図4を参照して、図3の定着装置5aと比較して、キャリア液搬送ローラ91をキャリア液搬送ベルト92に置換した点が異なる。キャリア液搬送ベルト92は、第1定着ローラ61と第2定着ローラ62に当接する。具体的には、キャリア液搬送ベルト92は、第1定着ローラ61とのニップ領域において、第1定着ローラ61とカウンタ方向となるように回転する。また、キャリア液搬送ベルト92は、第2定着ローラ62とのニップ領域において、第2定着ローラ62とカウンタ方向となるように回転する。キャリア液搬送ベルト92は、張架ローラ93および駆動ローラ94に懸架された無端ベルトである。キャリア液搬送ベルト92は、ポリイミド等の樹脂基材、あるいはニッケル等の金属基材の外周に離型層としてPTFEやPFA等の厚さ10〜50μmのフッ素系樹脂離型層を設けることが可能である。張架ローラ93および駆動ローラ94は、アルミ、SUS等の金属製芯金(厚み0.5〜2mm)の外周に弾性層としてのシリコンゴム層(厚み0.5〜2mm)を設けることが可能である。
【0057】
当該構成においても上記の実施の形態1と同様の効果および上記変形例1と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(実施の形態2)
上記の実施の形態1においては、記録用紙8上において、前段の定着ローラで除去したキャリア液をキャリア液搬送ローラ91を用いて後段の定着ローラの離型剤として用いる方式について説明した。
【0059】
一方で、実際に記録用紙上に形成される画像は様々であり、画像領域(画像部)、非画像領域(背景部)は記録用紙上の任意の位置に存在することとなる。
【0060】
画像部からは第1定着器51の定着ニップにおいてキャリア液が析出し、第1定着ローラ61により除去されるが、背景部にはキャリア液が極微量しか存在しないため、第1定着ローラ61にて除去されるキャリア液量は極めて微量である。
【0061】
一方、第2定着器52の定着ニップにおいて、オフセットが発生する可能性があるのは画像部であるため、第1定着器51の定着ニップにて画像部から除去したキャリア液が、第2定着器52の定着ニップにおいて、オフセットが発生する可能性のある画像部に対して供給されるならば、キャリア液は離型剤として効果的に機能し、オフセット防止に対して有利である。
【0062】
本発明の実施の形態2においては、記録用紙上において、第1定着ローラにより回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラにより供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とすることにより、より効果的にオフセットを防止する方式について説明する。
【0063】
図5は、本発明の実施の形態2に従う定着装置5の設計方式を説明する図である。
図5を参照して、ここでは、上記の図2の構成と同一の構成が示されている。
【0064】
記録用紙上において、第1定着ローラ61により回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラ62により供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とするということは、第1定着ローラ61により回収位置において記録用紙から回収されたキャリア液がキャリア液搬送ローラ91を介して搬送されて、第2定着ローラ62により供給位置において記録用紙に供給されるまでのその搬送経路の搬送時間と、記録用紙が搬送される搬送経路において回収位置から供給位置までの記録用紙の搬送時間とを略同一となるように設計するということである。
【0065】
ここで、一例として、回収位置と供給位置との搬送経路の長さを距離A、キャリア液搬送ローラ91を介する回収位置から供給位置までの搬送経路の長さを距離B、C、Dとして示している。
【0066】
距離B、C、Dについては、距離Bは、第1定着ローラ61の記録用紙からの回収位置からキャリア液搬送ローラ91に対する供給位置(キャリア液搬送ローラ91の回収位置)までの長さ、距離Cは、キャリア液搬送ローラ91の回収位置から第2定着ローラ62に対する供給位置(第2定着ローラ62の回収位置)までの長さ、距離Dは、第2定着ローラ62の回収位置から第2定着ローラの記録用紙への供給位置までの長さに対応する。
【0067】
本例においては、一例として、第1定着ローラ61および第2定着ローラ62の外径φは90mmに設定した。また、記録用紙の搬送速度(システムスピード)は、300mm/sに設定されているものとする。また、キャリア液搬送ローラ91を第1定着ローラ61と第2定着ローラ62にそれぞれ当接するように設け、その外径φは34mmに設定した。そして、キャリア液搬送ローラ91と第1定着ローラ61との当接位置に関して、第1定着ローラ61上で定着ニップの出口から50.9°下流側において当接した。また、キャリア液搬送ローラ91と第2定着ローラ62との当接位置に関して、第2定着ローラ62上で定着ニップの入口から50.9°上流側において当接した。
【0068】
当該配置構成により、一例として距離Aは100mm、距離Bは40mm、距離Cは53.4mm、距離Dは40mmに設定されることになる。
【0069】
上記配置構成において、キャリア液搬送ローラ91の回転速度を762.9mm/sに設定することにより、第1定着ローラ61により回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラ62により供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とすることが可能である。
【0070】
距離Aの記録用紙の搬送時間は0.33secである。そして、距離Bの搬送経路の搬送時間は0.13secである。距離Cの搬送経路の搬送時間は0.07secである。距離Dの搬送経路の搬送時間は0.13secである。
【0071】
したがって、距離Aの搬送経路の搬送時間と、距離B、C、Dの搬送経路の搬送時間とは等しくなる。
【0072】
当該設計方式により、記録用紙上において、第1定着ローラにより回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラにより供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とすることにより、より効果的にオフセットを防止することが可能である。
【0073】
なお、上記においては、第1定着ローラにより回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラにより供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とするために、一例としてキャリア液搬送ローラ91の回転速度を設定した場合について説明したが、特に、キャリア液搬送ローラ91の回転速度を設定する場合に限られず、システムスピードを調節するようにしても良いし、あるいは、キャリア液搬送ローラ91の外径を調節するようにしても良いし、あるいは、当接角を調節するようにしてもよく、特にその設計方式については限定されない。
【0074】
(変形例)
図6は、本発明の実施の形態2の変形例に従う定着装置5bの設計方式を説明する図である。
【0075】
図6を参照して、ここでは、上記の図4の構成と同一の構成が示されている。
記録用紙上において、第1定着ローラ61により回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラ62により供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とするということは、第1定着ローラ61により回収位置において記録用紙から回収されたキャリア液がキャリア液搬送ベルト92を介して搬送されて、第2定着ローラ62により供給位置において記録用紙に供給されるまでのその搬送経路の搬送時間と、記録用紙が搬送される搬送経路において回収位置から供給位置までの記録用紙の搬送時間とを略同一となるように設計するということである。
【0076】
ここで、一例として、回収位置と供給位置との搬送経路の長さを距離E、キャリア液搬送ベルト92を介する回収位置から供給位置までの搬送経路の長さを距離F、G、Hとして示している。
【0077】
距離F、G、Hについては、距離Fは、第1定着ローラ61の記録用紙からの回収位置からキャリア液搬送ベルト92に対する供給位置(キャリア液搬送ベルト92の回収位置)までの長さ、距離Gは、キャリア液搬送ベルト92の回収位置から第2定着ローラ62に対する供給位置(第2定着ローラ62の回収位置)までの長さ、距離Hは、第2定着ローラ62の回収位置から第2定着ローラの記録用紙への供給位置までの長さに対応する。
【0078】
本例においては、一例として、第1定着ローラ61および第2定着ローラ62の外径φは90mmに設定した。また、記録用紙の搬送速度(システムスピード)は、300mm/sに設定されているものとする。また、キャリア液搬送ベルト92を第1定着ローラ61と第2定着ローラ62にそれぞれ当接するように設けた。張架ローラ93および駆動ローラ94の外径φは16mmに設定した。キャリア液搬送ベルト92のベルト径は114mmに設定した。
【0079】
そして、キャリア液搬送ベルト92と第1定着ローラ61との当接位置に関して、第1定着ローラ61上で定着ニップの出口から44.6°下流側において当接した。また、キャリア液搬送ベルト92と第2定着ローラ62との当接位置に関して、第2定着ローラ62上で定着ニップの入口から44.6°上流側において当接した。
【0080】
当該配置構成により、一例として距離Eは200mm、距離Fは35mm、距離Gは179.132mm、距離Hは35mmに設定されることになる。
【0081】
上記配置構成において、キャリア液搬送ベルト92の回転速度を410.9mm/sに設定することにより、第1定着ローラ61により回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラ62により供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とすることが可能である。
【0082】
距離Eの記録用紙の搬送時間は0.67secである。そして、距離Fの搬送経路の搬送時間は0.117secである。距離Gの搬送経路の搬送時間は0.436secである。距離Hの搬送経路の搬送時間は0.117secである。
【0083】
したがって、距離Eの搬送経路の搬送時間と、距離F、G、Hの搬送経路の搬送時間とは等しくなる。
【0084】
当該設計方式により、記録用紙上において、第1定着ローラにより回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラにより供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とすることにより、より効果的にオフセットを防止することが可能である。また、キャリア液搬送ベルト92と第1定着ローラ61および第2定着ローラ62との当接方向をカウンタ方向とすることによりキャリア液の転移効率を向上させることが可能となり、転移効率の向上により、第1定着ローラ61で除去されたキャリア液がキャリア液搬送ベルト92を介して第2定着ローラ62に十分な量、搬送されるため、オフセットの発生をさらに防止することが可能となる。
【0085】
なお、上記においては、第1定着ローラにより回収されるキャリア液の回収位置と、第2定着ローラにより供給されるキャリア液の供給位置とを略同一の位置とするために、一例としてキャリア液搬送ベルト92の回転速度を設定した場合について説明したが、特に、キャリア液搬送ベルト92の回転速度を設定する場合に限られず、システムスピードを調節するようにしても良いし、あるいは、キャリア液搬送ローラ91の外径を調節するようにしても良いし、あるいは、当接角を調節するようにしてもよく、特にその設計方式については限定されない。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 現像装置、2 感光体、3 中間転写体、4 転写ローラ、5,5a,5b 定着装置、8 記録用紙、51 第1定着器、52 第2定着器、61 第1定着ローラ、62 第2定着ローラ、71 第1加圧ローラ、72 第2加圧ローラ、81〜84 ヒータランプ、91 キャリア液搬送ローラ、92 キャリア液搬送ベルト、93 張架ローラ、94 駆動ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いる湿式画像形成装置であって、
前記液体現像剤により現像された記録媒体について、熱定着する第1の定着ローラと、
前記第1の定着ローラを通過した記録媒体について、さらに熱定着する第2の定着ローラと、
前記第1および第2の定着ローラとの間に設けられ、前記第1の定着ローラに付着したキャリア液を回収して前記第2の定着ローラに供給するキャリア液搬送手段とを備えた、湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記キャリア液搬送手段は、前記第1および第2の定着ローラとにそれぞれ当接され、それぞれのニップ領域において前記第1および第2の定着ローラの回転方向とカウンタ方向となるように回転駆動される、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体上から前記第1の定着ローラにより回収されたキャリア液は、前記キャリア液搬送手段を介して前記第2の定着ローラにより前記記録媒体上で前記第1の定着ローラにより回収された位置と略同一の位置に供給される、請求項1または2記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の定着ローラと前記記録媒体との第1のニップ領域の出口と前記第2の定着ローラと前記記録媒体との第2のニップ領域の入口までの前記記録媒体の搬送時間と、前記キャリア液搬送手段を介して前記第1のニップ領域の出口から前記第2のニップ領域の入口に前記キャリア液が到達する前記キャリア液の搬送経路の搬送時間とが略同一となるように設計される、請求項3記載の湿式画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−181326(P2012−181326A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43765(P2011−43765)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】