説明

湿式電子写真用記録紙

【課題】 湿式トナーの定着性および転移性が良好でありながら高光沢を有する塗工タイプの湿式電子写真用記録紙およびそれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】シート状基材の少なくとも一方の面に1層以上の塗工層を有する湿式電子写真用記録紙において、前記塗工層の最外側塗工層表面の白紙光沢度が45〜85%、パーカープリントサーフの測定値が1.2μm以下、かつ吸油度試験方法(JAPAN TAPPI No.67)に基づき測定したインク吸収時間が17秒以下であることを特徴とする湿式電子写真用記録紙及びそれを用いた画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式電子写真用記録紙に関するものであり、さらに詳しくは、湿式トナーを使った湿式電子写真方式を用いて印刷した際に、優れたトナー転写性および定着性を有するとともに、高白紙光沢を有する湿式電子写真用記録紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、文字や画像などの情報を多量に複写する方法としては、オフセット、グラビア等の印刷方法があった。これらの印刷方法は、同一情報を多量に複写する方法としては優れているが、多様な情報を少しずつ複写する場合には不適当な方法である。そこで、インクジェットプリンターやコピー機に代表される電子印刷法が少量の印刷を行う方法として主流になってきている。電子印刷法としては、感熱方式、電子写真方式、インクジェット方式、熱転写方式等の方式があり、これらの方式を利用したプリンターや印刷機が開発されている。特に、安価に複写を行う場合、インクジェット方式と電子写真方式が適している。しかしながら、インクジェット方式は色材として染料を用いた染料インクを使用するため耐光性や耐水性の点で劣り、またインク受容層を設けた専用紙を使用しなければならない。このため、高画質、高速、安価等の条件を満たすことを考えた場合、電子写真方式が最も好ましい。
【0003】
電子写真方式には乾式と湿式とがある。乾式電子写真方式は事務用複写機等に代表される方式で、画像を形成するトナーとして、顔料と合成樹脂とからなる固体粉末トナーを使用する。画質形成は、コロナ帯電によって発生させた静電潜像にトナーを吸着させ、このトナーを被記録シートに転写し、加熱圧着する方式で行われる。この乾式電子写真方式では、トナーが微細であればあるほど周辺環境に飛散しやすく、これを吸入した場合、健康上の問題があるため、固体粉末トナーを微細化するには限度があり、そのため高解像度が得られにくいという欠点がある。また被転写物の厚さが不均一であると、コロナ放電による被転写物面の電荷密度にばらつきが生じ、非画線部に「かぶり」と呼ばれる好ましくない曇りが生じたり、ある程度高い温度で溶融固化を行わなければならない等といった問題がある。
【0004】
一方、液体トナーを使用する湿式電子写真方式では、液体媒体中にトナーを分散させるため、粉体の飛散などが問題とならず、乾式電子写真方式に用いるトナーと比べてトナーの粒子径を1/10ほどに微細化できること、すなわちドットを微細にできることに加えて、色材として顔料が使用できるために耐候性や耐水性の問題がない。実際、近年の湿式電子写真印刷方式による印刷画像はオフセット印刷と同等レベルに達している。
【0005】
よって、書籍カバー、CDジャケット、高級美術印刷雑誌の表紙などで、高度な品質を要求される用途には、湿式電子写真印刷方式の分野の応用が可能であり、高品位を醸し出すために、高白紙光沢の塗工紙が必要とされる。しかし、これに適した湿式電子写真用記録紙はほとんどないのが現実である。
【0006】
湿式トナーは、ブランケットロールから記録紙に画像を転写するときに電荷などを利用せず、熱と圧力によって画像を転写させる。つまり、短時間でブランケットロールから湿式トナーが剥離し、記録紙へ転写、定着しなければならない。このため、湿式電子写真方式では、記録紙の種類によっては、ブランケットロールにトナーが多く残存したり、トナーが記録紙に定着せず剥がれてしまう欠点がある。
【0007】
このような問題を解決するために、塗工紙の表面の平滑度をスムースターやベック平滑度で規定した例(特許文献1〜8参照。)があるが、不十分で、トナー転写性および定着性の向上を充分に成し遂げることは難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−215407号公報
【特許文献2】特開2005−215406号公報
【特許文献3】特開2005−215405号公報
【特許文献4】特開2005−215404号公報
【特許文献5】特開2005−134535号公報
【特許文献6】特開2005−134534号公報
【特許文献7】特開2005−134533号公報
【特許文献8】特開2005−99652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後の印刷物の高品位化を達成し、さらに高速印刷、後工程の操業性を考え合わせると、湿式トナーとの定着性に優れた湿式電子写真用記録紙は強く求められている。本発明の目的は、記録紙表面の物性値をコントロールすることにより、湿式トナーの転写性および定着性が良好であり、なおかつ高光沢を有する塗工タイプの湿式電子写真用記録紙およびそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)シート状基材の少なくとも一方の面に1層以上の塗工層を有する湿式電子写真用記録紙において、前記塗工層の最外側塗工層表面の白紙光沢度が45〜85%、パーカープリントサーフの測定値が1.2μm以下、かつ吸油度試験方法(JAPAN TAPPI No.67)に基づき測定したインク吸収時間が17秒以下であることを特徴とする湿式電子写真用記録紙。
【0011】
(2)前記塗工層の内、最外側塗工層に、該最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、カオリンを60質量部以上、中空の有機顔料を3〜10質量部含有する(1)に記載の湿式電子写真用記録紙。
【0012】
(3)シート状基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層の塗工層を有し、前記塗工層の内、シート状基材に接する下塗り層に、下塗り層中の全顔料100質量部に対し、紡錘状軽質炭酸カルシウムを60質量部以上含有する(1)又は(2)に記載の湿式電子写真用記録紙。
(4)前記最外側塗工層に、最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、紡錘状または針状の軽質炭酸カルシウムを10〜35質量部含有する(1)〜(3)に記載の湿式電子写真用記録紙。
【0013】
(5)湿式トナーによる画像が、湿式電子写真装置のブランケット胴に形成された後、圧力と熱によって前記湿式トナーが、(1)〜(4)に記載の湿式電子写真用記録紙に転写および定着されることを特徴とする画像形成方法。
(6)前記湿式トナーが、カラートナーであり、かつ各色のカラートナーは、アクリル系樹脂に、それぞれイエロー顔料、シアン顔料、マゼンダ顔料、黒顔料を添加して作成されたものである(5)に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、湿式電子写真印刷において優れた湿式トナー転写性および定着性を有するとともに、高光沢を備えた湿式電子写真用記録紙が得られ、それを用いて良好な画像が形成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の湿式電子写真用記録紙について、詳細に説明する。本発明者は、書籍カバー、CDジャケット、高級美術印刷雑誌の表紙などに多く用いられる、高光沢塗工紙の湿式電子写真方式におけるトナーの転写性および定着性について研究を重ねた結果、湿式トナーの転写性および定着性の付与には、表面が高平滑であり、且つ塗工層が、湿式トナー成分中の非極性溶媒を早く吸収することが必要であることを見出した。
【0016】
本発明に係る湿式電子写真用記録紙は、シート状基材の少なくとも一方の面に1層以上の塗工層を有し、前記塗工層の内、画像記録される最外側塗工層の、JIS P8142に基づき、反射角75度で測定した白紙光沢度が45〜85%であることを特徴とし、より好ましくは白紙光沢度が50〜85%である。白紙光沢度が45%未満では、湿式電子写真方式で印画した画像部分の光沢度が低下し、光沢印刷物としての商品価値が低下し、85%を超えると光沢により画像が見づらくなる。
【0017】
また、本発明に係る湿式電子写真用記録紙は、前記最外側塗工層の、パーカープリントサーフの測定値が1.2μm以下であることを特徴とするものである。パーカープリントサーフの測定値が1.2μmより大きい場合は、湿式トナーの転写性が劣ることがある。一方、インク吸収時間が17秒を越える場合は、湿式トナーの塗工層への投錨性が悪くなり、湿式トナーの定着性が劣ることがある。パーカープリントサーフの測定値は、1.0μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることが更に好ましい。下限値については、特に限定しないが、0.1μm未満では、湿式トナーの塗工層への投錨性が悪くなり、湿式トナーの定着性が劣ることがあるため、0.1μm以上であることが好ましい。
【0018】
本発明のパーカープリントサーフ測定は、ISO8791−4に基づき下記測定条件により測定されるものである。尚、試験片は、JIS P8111に準じて調湿したものを用い、試験片の測定面については10点以上測定し、その平均値を算出するものである。測定値の単位はμmである。
(測定条件)
測定機器;Lorentzen & Wettre社製
「L&W PPS TESTER」
測定時のバッキング;ソフトバッキング
測定時のクランプ圧力;2MPa
【0019】
パーカープリントサーフの場合、バッキングの材質とクランプ圧を変えて測定することでいろいろな条件、圧力下での平滑性を測定することができるが、本発明は、前記の条件で湿式電子写真用記録紙の平滑性を規定する。湿式電子写真方式のプリンターは、湿式トナーによる画像がブランケット胴に形成された後、圧力と熱によって湿式トナーが、記録紙に転写される機構を有するが、これに近い状態を前記プリントパーカーサーフの測定方法は再現しているものと推測できる。
【0020】
更に、本発明に係る湿式電子写真用記録紙は、吸油度試験方法(JAPAN TAPPI No.67)に基づき測定したインク吸収時間が17秒以下であることを特徴とするものである。インク吸収時間は、15秒以下であることがより好ましく、10秒以下であることが更に好ましい。下限値については、特に限定しないが、1秒未満では、湿式トナーの塗工層への浸透が過剰となり、印画濃度が低下することがあるため、1秒以上であることが好ましい。
【0021】
(シート状基材)
本発明に用いられるシート状基材としては、広葉樹、針葉樹の木材繊維が利用可能である。この木材繊維を木材パルプにする製法には特に限定されず、クラフト蒸解法、ポリサルファイド蒸解法、亜硫酸蒸解法等の蒸解法により得られた未晒しパルプの1段ないしは2段以上の脱リグニン処理、しかる後の塩素、苛性ソーダ、ハイドロサルファイト等を適宜添加して行われる多段漂白方法で漂白されたもの(クラフトパルプ、サルファイドパルプ等)であってよく、有機塩素化合物の排水への負荷などを考慮すると、塩素の代替に二酸化塩素を用いた漂白方法から得られたECFパルプや、オゾンを用いた塩素系漂白薬品を使用しない多段漂白方法から得られたTCFパルプが好ましい。また砕木パルプ(GP)、サーモメカニカル・パルプ(TMP)、ケミサーモ・メカニカル・パルプ(CTMP)などの機械パルプ、セミケミカル・パルプ(SCP)、ケミグラウンド・パルプ(CGP)などの半化学パルプが使用可能である。また非木材繊維である麻パルプ、ケナフパルプ、バガスパルプも挙げることができ、資源の有効利用から古紙パルプも使用可能である。
【0022】
前記パルプを適宜選択し、300〜500mlCSFの範囲で叩解し、長網多筒型抄紙機、長網ヤンキー型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機、円網型抄紙機、傾斜ワイヤー型抄紙機で抄紙する。尚、本発明は使用する抄紙機について何等制限を受けない。
【0023】
本発明におけるシート状基材に用いるパルプは、木材パルプ以外にも綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維を木材パルプに混合させることが可能であり、またそれらをシート状にしたもの、またはその上に樹脂フィルム層を設けたものが使用される。
【0024】
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙法、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0025】
また抄紙に際して、無機または有機の填料が使用可能である。たとえば、カオリン、タルク、クレー、炭酸カルシウム、焼成クレー、酸化チタン、珪藻土、微粒子状無水シリカ、活性白土、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、二酸化珪素、コロイダルシリカなどの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダーなどの有機填料が挙げられる。
【0026】
内添用、外添用サイズ剤としては特に限定されることなく、あらゆるものが使用可能である。たとえばサイズ剤としてはロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤などが使用可能であり、ステキヒトサイズ度が10秒以上になるように添加する。またその他の内添用薬品として、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤などの製紙用補助薬品が使用可能である。紙力増強剤としてはカチオン変性澱粉、ポリアクリルアミド等、湿潤紙力増強剤としてはポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂等が使用できる。ただし、湿潤紙力増強剤の使用は、離解性を極端に悪化させるため、使用にあたっては注意が必要である。
【0027】
層間強度を向上させる目的で、各種バインダー樹脂を外添剤として使用できる。酸化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン変性澱粉、エステル澱粉、エーテル澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシセルロース、完全(または部分)鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド、アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミドエステル、メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、カゼイン等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体等のラテックス等が挙げられる。
【0028】
上記材料を外添する方法には特に限定はなく、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、キャストコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、チャンプレックスコータ、ブラシコータ、ゲートロールコータ、ハミルトンコータ、KCMコータ、サイズプレスコータ、メタードサイズプレス、メタードフィルムトランスファロールコータ、リップコータ、スライドビードコータ等の塗布装置を備えたオンマシンやオフマシンコータで塗布乾燥する。
【0029】
一方、シート状基材として樹脂基材を使用する場合は、ビスコース、アセテート等のセルロース系原料、または、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の有機樹脂に、必要に応じ填料や薬品を混入し、押し出し法、カレンダー法、延伸法などの公知の方法でシート化したものが使用できる。また合成紙やスパンボンド不織布も使用できる。
【0030】
その他のシート状基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、中質コート紙、グラビア用紙、インディア紙、コートアイボリー、ノーコートアイボリー、アートポスト、コートポスト、ノーコートカード、特板、コートボール、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、感熱紙、インクジェット用紙、熱転写用紙、合成紙などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂やプラスチック、金属をフィルム状に成形したものも含まれる。
【0031】
塗工する前のシート状基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
【0032】
(最外側塗工層)
本発明の湿式電子写真用記録紙はシート状基材の少なくとも一方の面に1層以上の塗工層を有する。該塗工層の内、最外側塗工層は、最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、カオリンを60質量部以上含有することが好ましく、より好ましくは65質量部以上含有するものである。カオリンの含有量が60質量部未満では、白紙光沢度が45%以上を保てなくなくなる場合があり、所望する印刷物の質感が得られない場合がある。
【0033】
本発明の湿式電子写真用記録紙の最外側塗工層は、最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、中空の有機顔料を3〜10質量部含有することが好ましい。中空の有機顔料は、湿式トナーとの親和性が高く、湿式トナーの転写性向上に寄与する。
本発明の湿式電子写真用記録紙の最外側塗工層に含まれる中空の有機顔料の例としては、顔料の内部に有機溶剤が容易に浸透可能なものが好ましく使用される。このような中空の有機顔料としては、重合体形成性材料をシェル形成用材料として含み、かつ揮発性液体を気孔形成用材料として用いて、マイクロカプセル重合方法により製造されたマイクロカプセルから前記気孔形成用材料を揮発逃散させて得られたマイクロカプセル状中空粒子等が挙げられ、市販品としては、中空エマルジョンHP−1055(ロームアンドハース社製)、中空エマルジョンAE−82(JSR社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明の湿式電子写真用記録紙において最外側塗工層に中空の有機顔料を含有する場合、中空の有機顔料が湿式トナー成分中の非極性溶媒を吸収することによって、吸油度試験方法(JAPAN TAPPI No.67)に基づき測定したインク吸収時間が短くなり、湿式トナーの定着性をより優れたものとすることができる。
また、中空の有機顔料は、吸油性無機顔料とは異なり、塗工層表面の光沢度及び平滑性を低下させることがないため、本発明において、最外側塗工層中に中空の有機顔料を含有する場合、湿式電子写真用記録紙の白紙光沢度45%以上、パーカープリントサーフの測定値1.2μm以下を保ち、インク吸収時間をより短くすることが可能である。
前記中空の有機顔料の含有量が最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、3質量部未満では、所望の湿式トナーの転写性および定着性が保てなくなくなる場合があり、10質量部を超えると、湿式トナー転写性および定着性に対する中空の有機顔料の効果が飽和に達し、コストアップとなるため好ましくない。
【0035】
さらに、最外側塗工層中に紡錘状または針状の軽質炭酸カルシウムを含有することによって、更に湿式トナーの転写性及び定着性を上げることも可能である。この場合、最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、紡錘状または針状の軽質炭酸カルシウムを10〜35質量部の範囲で調整することが好ましく、10〜30質量部の範囲で調整することがより好ましい。紡錘状または針状の軽質炭酸カルシウムが10質量部未満では、湿式トナーの転写性が低下する場合があり、35質量部を超えると白紙光沢度45%以上、或いはパーカープリントサーフの測定値1.2μm以下を保てなくなる場合がある。
【0036】
最外側塗工層の塗工量は3〜20g/mであることが好ましい。この塗工量は片面の塗工量を表すものであり、両面に湿式トナー適性を持つ塗工層を設ける場合は合計で6〜40g/mであることが好ましい。ここで、3g/m未満では、目標とする白紙光沢が得られないことがあり、20g/mより多いと塗工層強度に問題が生じる場合がある。
【0037】
(下塗り層)
本発明の湿式電子写真用記録紙はシート状基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層の塗工層を有するなることが好ましく、前記塗工層の内、シート状基材に接する下塗り層に、下塗り層中の全顔料100質量部に対し、紡錘状軽質炭酸カルシウムを60質量部以上含有することが好ましい。最外側塗工層に吸収された非極性溶媒を下塗り層中へ浸透させることによって、更に湿式トナーの転写性及び定着性を上げることができる。下塗り層中の紡錘状軽質炭酸カルシウムの配合量が、下塗り層中の全顔料100質量部に対し60質量部未満では、湿式トナーの転写性及び定着性向上効果が得られない場合がある。
【0038】
本発明において、下塗り層の塗工量は3〜20g/mであることが好ましい。この塗工量は片面の塗工量を表すものであり、両面に湿式トナー適性を持つ塗工層を設ける場合は合計で6〜40g/mであることが好ましい。ここで、3g/m未満では、湿式トナーの転写性及び定着性向上効果が得られない場合があり、20g/mより多いと塗工層強度に問題が生じる場合がある。
【0039】
本発明において、最外側塗工層や下塗り層には、カオリン、中空の有機顔料、紡錘状または針状の軽質炭酸カルシウム以外にも、例えば、タルク、紡錘状および針状以外の形状の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、中空構造を有さない有機顔料なども発明の効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0040】
塗工液に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。
【0041】
さらに、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。加えて、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0042】
また塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
また必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤が用いられる。
【0043】
本発明において、塗工層を塗工する方法は、特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコータ、エアーナイフコータ、ロッドコータ、ブレードコータ、ダイレクトファウンテンコータ、スプレーコータ、キャストコータなどの各方式を適宜使用可能である。
【0044】
また、湿式電子写真用記録紙の白紙光沢度を45〜85%、パーカープリントサーフの測定値を1.2μm以下、吸油度試験方法(JAPAN TAPPI No.67)に基づき測定したインク吸収時間を17秒以下に調整するためには、製造の最後にスーパーカレンダー等による平滑化処理を行うことが望ましい。
【0045】
これらの手段を用いて製造した湿式電子写真用記録紙は、湿式トナーによる画像がブランケット胴に形成された後、圧力と熱によって湿式トナーが、記録紙に転写されることを特徴とする湿式電子写真方式のプリンターに適応可能である。
【0046】
(画像形成方法)
また本発明に係る画像形成方法は、湿式トナーによる画像が、湿式電子写真装置のブランケット胴に形成された後、圧力と熱によって前記湿式トナーが、前記湿式電子写真用記録紙に転写および定着されるものである。
【0047】
(湿式トナー)
前記湿式トナーの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法で製造されたものを用いることができる。例えば、特公昭55−3696号公報、特開昭52−125333号公報、特開昭48−49445号公報等に開示されているような、予め微細化されている顔料または染料と熱可塑性樹脂とを主成分とするトナーをトナー分散媒中に分散してなる湿式トナーがある。また類似のものとして、特開昭61−36759号公報に記載されているような、熱可塑性樹脂、着色剤に少量の非水溶媒を加えてボールミル、高速攪拌機などの混練手段により混練し、濃縮トナーとし、さらにこれを非水溶媒中に分散機を用いて分散する方法もある。さらに最近では、特公平5−87825号公報等に示されるような製造方法が提案されている。これは、40℃以下では無極性溶媒に不溶性であるが、50℃を超えると無極性溶媒に溶媒和する性質を有する熱可塑性樹脂を、一旦、無極性溶媒に溶媒和させた後、冷却することにより、微細な熱可塑性樹脂微粒子を形成し、湿式トナーを製造する方法である。
【0048】
前記湿式トナーは、通常4色のカラートナーが使用される。カラートナー用着色剤としては、公知の顔料、染料あるいは両者の混合物を用いることができる。例えば、ハンザエロ、ベンジジンエロ、ベンジジンオレンジ、ファーストレッド、ブリリアントカーミン3B、銅フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スピリットブラック、オイルブルー、アルカリブルー、ローダミン6B、ニグロシン、カーボンブラック、ジクロロキナクリドン、イソインドリノンなどが挙げられる。
【0049】
また湿式トナーに顔料とともに使用される添加剤に関しては、従来公知のものを使用することができる。一般的に湿式トナーは、可視化するための顔料や染料などの着色剤の他に、トナー粒子を記録紙上に固定するための定着剤と、湿式トナーに電気的特性を付与するための電荷付与剤等を含有する。
【0050】
静電荷現像用湿式トナー用定着剤としては、従来から静電荷現像用湿式トナーに使用されてきた公知の樹脂を用いることができる。特に熱可塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等を単体もしくは混合したものが挙げられる。本発明の画像形成方法においては、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂にイエロー顔料、シアン顔料、マゼンダ顔料、黒顔料を添加して作成された4色のカラートナーを用いることが、本発明の湿式電子写真用記録紙への転写性、定着性に優れ、特に好ましい。
【0051】
本発明に使用される静電荷現像用湿式トナーには、電荷調整剤を添加することができる。電荷調整剤としては、ナフテン酸、オクテン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸の金属塩、スルホコハク酸エステルの金属塩、特公昭45−556号公報に記載の油溶性スルホン酸金属塩、特公昭48−25666号公報に記載のアビエチン酸もしくは水素添加アビエチン酸の金属塩、特公昭55−2620号公報に記載のアルキルベンゼンスルホン酸Ca塩、特開昭52−107837号公報に記載の芳香族カルボン酸あるいはスルホン酸金属塩、ポリオキシエチル化アルキルアミンのような非イオン性界面活性剤、レシチン、アマニ油などの油脂類、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステルなど公知の電荷付与剤、調整剤がすべて使用できる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。使用した顔料をレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac3300ExII、日機装社製)にて測定し、得られた体積分布のメジアン径を平均粒子径として示した。
【0053】
<シート状基材の作製>
下記の原紙処方にて、パルプ、内添薬品を調整し、坪量87.2g/mの原紙及び坪量97.2g/mの原紙を長網式抄紙機で作製した。
<原紙処方>
LBKP(濾水度400mlcsf) 70部
NBKP(濾水度400mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム 8部(シート状基材中灰分)
カチオン化澱粉 1.0部
【0054】
上記原紙に対して、サイズプレスにより両面で0.80g/mの酸化澱粉を付着させ、坪量88g/mのシート状基材及び坪量98g/mのシート状基材を得た。
【0055】
実施例1
下記の下塗り塗工液A−1を調整し、ファウンテン方式で塗工液を供給し、ブレードコータを用いて前記坪量88g/mのシート状基材上に、片面10g/m、両面で20g/mの塗工量で塗工し、下塗り層塗工シートを得た。
<下塗り塗工液A−1>
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 85部
重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.5μm) 15部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 10部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 3部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0056】
下記の上塗り塗工液B−1を調整し、ファウンテン方式で塗工液を供給し、ブレードコータを用いて、前記下塗り層塗工シート上に、片面10g/m、両面で20g/mの塗工量で塗工した。塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<上塗り塗工液B−1>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 70部
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 30部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0057】
実施例2
実施例1において、下塗り塗工液A−1の代わりに下記組成の下塗り塗工液A−2を用いた以外は、実施例1と同様に塗工し、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<下塗り塗工液A−2>
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 60部
重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.5μm) 40部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 10部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 3部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0058】
実施例3
実施例1において、下塗り塗工液A−1の代わりに下記組成の下塗り塗工液A−3を用い、上塗り塗工液B−1の代わりに下記組成の上塗り塗工液B−2を用いた以外は、実施例1と同様に塗工し、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<下塗り塗工液A−3>
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 100部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 10部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 3部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
<上塗り塗工液B−2>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 70部
針状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径0.9μm) 30部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0059】
実施例4
実施例2において、上塗り塗工液B−1の代わりに下記組成の上塗り塗工液B−3を用いた以外は、実施例2と同様に塗工し、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<上塗り塗工液B−3>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 70部
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 26部
中空の有機顔料 4部
(商品名:中空エマルジョンAE−82、JSR社製、平均粒子径:1.0μm)
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0060】
実施例5
実施例2において、上塗り塗工液B−1の代わりに下記組成の上塗り塗工液B−4を用いた以外は、実施例2と同様に塗工し、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<上塗り塗工液B−4>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 70部
針状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径0.9μm) 20部
中空の有機顔料 10部
(商品名:中空エマルジョンAE−82、JSR社製、平均粒子径:1.0μm)
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0061】
実施例6
実施例2において、上塗り塗工液B−1の代わりに下記組成の上塗り塗工液B−5を用いた以外は、実施例2と同様に塗工し、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<上塗り塗工液B−5>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 65部
重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.5μm) 31部
中空の有機顔料 4部
(商品名:中空エマルジョンAE−82、JSR社製、平均粒子径:1.0μm)
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0062】
実施例7
下記塗工液C−1を調整し、ファウンテン方式で塗工液を供給し、前記坪量98g/mのシート状基材上にブレードコータを用いて片面10g/m、両面で20g/mの塗工量で塗工した。塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<塗工液C−1>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 70部
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 20部
中空の有機顔料 10部
(商品名:中空エマルジョンAE−82、JSR社製、平均粒子径:1.0μm)
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0063】
比較例1
下記塗工液C−2を調整し、ファウンテン方式で塗工液を供給し、前記坪量98g/mのシート状基材上にブレードコータを用いて片面10g/m、両面で20g/mの塗工量で塗工した。塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<塗工液C−2>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 70部
針状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径0.9μm) 30部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0064】
比較例2
下記の下塗り塗工液A−4を調整し、ファウンテン方式で塗工液を供給し、ブレードコータを用いて前記坪量88g/mのシート状基材シート状基材上に、片面10g/m、両面で20g/mの塗工量で塗工し、下塗り層塗工シートを得た。
<下塗り塗工液A−4>
重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.5μm) 100部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 10部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 3部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0065】
下記の上塗り塗工液B−6を調整し、ファウンテン方式で塗工液を供給し、ブレードコータを用いて、前記下塗り層塗工シート上に、片面10g/m、両面で20g/mの塗工量で塗工した。塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が75%となるようにスーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。
<上塗り塗工液B−6>
カオリン(平均粒子径0.4μm) 45部
重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.5μm) 55部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0066】
実施例8
実施例1において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例1と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
実施例9
実施例2において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例2と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
実施例10
実施例3において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例3と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
【0067】
実施例11
実施例4において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例4と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
実施例12
実施例5において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例5と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
実施例13
実施例6において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例6と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
実施例14
実施例7において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は実施例7と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
【0068】
比較例3
比較例1において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は比較例1と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
比較例4
比較例2において、塗工後、JIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度が50%となるようにスーパーカレンダー処理した以外は比較例2と同様にして、湿式電子写真用記録紙を得た。
【0069】
比較例5
実施例3において、上塗り塗工液B−2の代わりに上塗り塗工液B−7を用いた以外は、実施例3と同様に塗工した。塗工後、スーパーカレンダー処理して、湿式電子写真用記録紙を得た。但し、スーパーカレンダー処理の条件を調整しても、湿式電子写真用記録紙のJIS P8142(反射角75度)に基づく白紙光沢度は、40%を超えることはなかった。
<上塗り塗工液B−7>
紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1.3μm) 30部
重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.5μm) 70部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダー 8部
(商品名:0569、JSR社製)
燐酸エステル化澱粉 1部
ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 0.2部
ステアリン酸カルシウム(商品名:ノプコ1407K、サンノプコ社製) 0.01部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤(CMC) 0.05部
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

各実施例および各比較例で得た湿式電子写真用記録紙について、下記の測定方法により物性の測定及び品質の評価を行い、結果を表1及び表2に示した。
【0072】
1.坪量
JIS P8124に基づき、各実施例および各比較例で得た湿式電子写真用記録紙の坪量を測定した。
2.厚み
JIS P8118に基づき、各実施例および各比較例で得た湿式電子写真用記録紙の厚みを測定した。
3.密度
JIS P8118に基づき、各実施例および各比較例で得た湿式電子写真用記録紙の密度を測定した。
4.白紙光沢度
JIS P8142に基づき反射角75度で、各実施例および各比較例で得た湿式電子写真用記録紙の光沢度を測定した。
【0073】
5.パーカープリントサーフの測定
ISO8791−4に基づき、下記測定条件で測定した。試験片はJIS P8111に準じた方法により調湿して用い、各試験片の測定面について10点測定し、その平均値を算出した。測定値の単位はμmである。
(測定条件)
測定機器;Lorentzen & Wettre社製
「L&W PPS TESTER」
測定時のバッキング;ソフトバッキング
測定時のクランプ圧力;2MPa
【0074】
6.吸油度試験機
インクはコダック社DS6240ヘッド用黒インク(#1007)を使用し、JAPAN TAPPI No.67に準じて測定した。具体的には、#1007インクを5μl滴下し、ローラーを転がした後の湿式電子写真用記録紙上の前記インクの光沢が消失する迄の時間を測定した。
【0075】
7.湿式トナー転写性試験
<湿式トナーの調整>
アクリル系樹脂に、それぞれイエロー顔料、シアン顔料、マゼンダ顔料、黒顔料を添加した平均粒子径0.8μmのトナー粒子を、炭化水素系のキャリアー液(アイソパーL:エクソンモービル化学社製)に分散し、イエロー、シアン、マゼンダ、黒それぞれの正帯電の湿式トナーを調製した。
厚さ1mmで、3cm×5cmのアルミ箔を電極として、2枚とアルミ箔の間に1mmのシリコン板を挟み、電極をつないで、各色の湿式トナーをアイソパーに分散した液に浸漬させ、100Vの電圧を掛けて湿式トナーをアルミ箔に付着させる。この湿式トナーが付着したアルミ箔と作成した湿式電子写真用記録紙とを重ね合わせて、温度80℃、加圧する。加圧後、アルミ箔と湿式電子写真用記録紙とを剥がし、湿式トナーの湿式電子写真用記録紙への転写度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。
◎:トナーがアルミ箔に残っておらず、記録紙上へ良好に転写されている。
○:トナーがアルミ箔に若干残っているが、記録紙上へ良好に転写されている。
×:トナーがアルミ箔に多く残っており、記録紙上に白く抜けた部分があり、実用上問題がある。
【0076】
8.湿式トナー定着性試験
印刷後、24時間経過した印刷サンプルにセロファンテープ(登録商標 セロテープ(R)、ニチバン社製)を黒ベタ印字部に貼り付け、180度剥離で約5mm/秒の速さでゆっくりとテープを剥がした。剥離後のトナーの紙への定着度合いを目視により判定し、以下の基準で4段階評価を行った。
◎:トナーがテープに付着せず、テープ剥離後の印刷濃度の低下は全く判らない。
○:トナーがテープに若干付着しているがテープ剥離後の印刷濃度の低下は判らない。
△:トナーがテープに付着しており、テープ剥離後の印刷濃度がやや低下しているが、実用上問題ない。
×:トナーがテープに多く付着しており、テープ剥離後の印刷に白く抜けた部分があり、実用上問題がある。
【0077】
前記実施例の評価結果が示す通り、本発明の湿式電子写真用記録紙は、湿式電子写真印刷において優れた湿式トナー転写性および定着性を有するとともに、高光沢を備えた湿式電子写真印画物が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、湿式電子写真印刷において優れた湿式トナー転写性および定着性を有し、且つ白紙部、印画部ともに高光沢の印画画像を印刷できる湿式電子写真用記録紙が得られ、産業界に寄与するところは大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の少なくとも一方の面に1層以上の塗工層を有する湿式電子写真用記録紙において、前記塗工層の最外側塗工層表面の白紙光沢度が45〜85%、パーカープリントサーフの測定値が1.2μm以下、かつ吸油度試験方法(JAPAN TAPPI No.67)に基づき測定したインク吸収時間が17秒以下であることを特徴とする湿式電子写真用記録紙。
【請求項2】
前記塗工層の内、最外側塗工層に、該最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、カオリンを60質量部以上、中空の有機顔料を3〜10質量部含有する請求項1に記載の湿式電子写真用記録紙。
【請求項3】
シート状基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層の塗工層を有し、前記塗工層の内、シート状基材に接する下塗り層に、下塗り層中の全顔料100質量部に対し、紡錘状軽質炭酸カルシウムを60質量部以上含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載の湿式電子写真用記録紙。
【請求項4】
前記最外側塗工層に、最外側塗工層中の全顔料100質量部に対し、紡錘状または針状の軽質炭酸カルシウムを10〜35質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の湿式電子写真用記録紙。
【請求項5】
湿式トナーによる画像が、湿式電子写真装置のブランケット胴に形成された後、圧力と熱によって前記湿式トナーが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の湿式電子写真用記録紙に転写および定着されることを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
前記湿式トナーが、カラートナーであり、かつ各色のカラートナーは、アクリル系樹脂に、それぞれイエロー顔料、シアン顔料、マゼンダ顔料、黒顔料を添加して作成されたものである請求項5に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2011−28198(P2011−28198A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206952(P2009−206952)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】