説明

湿式電気集塵機の集塵極取付け構造

【課題】低価格で全面腐食、隙間腐食、孔腐食のすべての腐食に対し耐性がある湿式電気集塵機の集塵極取付け構造を提供する。
【解決手段】集塵極エレメント3にハステロイ(Hastelloy;登録商標)からなる支持部材5Aを取り付ける。このハステロイ(登録商標)製支持部材5Aと吊ビーム片2Aに取付け孔5a、2aを開口させ、この取付け孔5a、2aを利用して締結手段6,7により共締めする。ハステロイ(登録商標)製支持部材は集塵極エレメント3の取付け孔3aの部分に面接合するか、端縁に張り出すようにして溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式電気集塵機の集塵極取付け構造に係り、詳しくは、稼動につれて捕集付着したダスト等を除去するための洗浄水洗浄による低pH環境における腐食を防止する湿式電気集塵装置の集塵極取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵機は、放電極と集塵極を交互に配列し、これらの間に排ガスを通過させることにより、排ガス中の微粒子(ダスト)を放電により帯電させ、集塵極に捕集させるようにしている。集塵機の集塵極には稼動するにつれてダスト等が捕集付着する。集塵機に通される排ガス中に硫黄成分が混合していると、これが硫黄酸化物となって集塵機に付着して集塵機を腐食させてしまうおそれがある。一般に、捕集したダスト等を除去するために、湿式電気集塵機の集塵極にスプレー洗浄水を供給し、ダスト等を除去する。洗浄を常時行う場合、洗浄水のミストのpHを高く保つことで、集塵機の腐食進行を抑制できる。しかし、洗浄が間欠的である場合には、捕集したダストが長時間付着し続け、洗浄水ミストのpH値が0.5という厳しい腐食環境で稼動しなくてはならない。
【0003】
また、湿式電気集塵機は、放電極に対面して、ダスト等を付着させる集塵極板が縦方向に平面配列され、締結部材を介して上下端を吊ビームに接続することにより吊下保持して形成される。集塵極と吊ビームとの支持構造は集塵極と吊ビームとに取付け孔を形成し、この取付け孔にボルトを挿通させて締結するものであることから、集塵極、吊ビーム、支持構造との間には隙間や孔が生じる。この隙間や孔にpH値の低い洗浄水のミストが入り込むと腐食が進行してしまうので、これを有効に防止することが必要である。この種、集塵極に付着したダスト等を除去する湿式電気集塵機として特許文献1、特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−154652号公報
【特許文献2】特開2000−189836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、集塵極、吊ビーム、支持構造の間には隙間や孔が生じることと、材質の特徴とを考え合わせ、安価で全面腐食、隙間腐食、孔腐食のすべての腐食に対し耐性がある湿式電気集塵機の集塵極取付け構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
湿式電気集塵機はダスト等を付着させる集塵極と、集塵極を吊り下げる吊ビームとが支持構造を介して接続されているが、低pHとなった洗浄水ミストによる腐食を防止するためには、その材質の選択が重要である。集塵極板には通常ステンレス材(スーパーステンレス:日本冶金工業株式会社製NAS254N)が用いられているが、これは全面腐食に対して耐性がある一方、隙間腐食、孔腐食に耐性が弱いという特徴がある。これに対し、全面腐食、隙間腐食、孔腐食に対し耐性があるハステロイ(Hastelloy;登録商標)が知られており、これを集塵極板に用いることにより隙間腐食などの問題を改善できるとの着想を得たものの、ハステロイは単価が一般的に高価である難点がある。そこで、本発明は、集塵極の吊ビームとスーパーステンレスで製作した集塵極エレメントの接触部位のみの材質をハステロイとして支持する構成とすることで、課題の解決を図ったものである。スーパーステンレスで製作したエレメントとハステロイ製の支持部材とは溶接により接合する構造を採用すればよい。
【0007】
すなわち、本発明に係る湿式電気集塵機の集塵極取付け構造は、集塵装置建屋に横架した吊ビームにスーパーステンレス材からなる集塵極板の端部を締結して吊下げ支持する集塵極取付け構造において、前記集塵極板にハステロイ(Hastelloy;登録商標)からなる支持プレートを取り付け、この支持プレートと前記吊ビームに取付け孔を開口させ、この取付け孔を利用して共締めすることにより吊ビームに集塵極板を吊下げ支持させつつ、吊ビームと集塵極板との間にハステロイ製支持プレートを介在させて両者を離間させてなる。
【発明の効果】
【0008】
集塵機内は、捕集ダストによりpH値の低い洗浄水ミストの環境に晒されることになる。その際、集塵極は全面がミストに晒されるが、本発明によれば、集塵極板はスーパーステンレス材により形成されており、全面腐食に対し耐性があるので、全面腐食を防止することができる。もちろん、スーパーステンレス材に限らず他の材料を用いることができるが、全面腐食防止効果があるステンレス材料であることが望ましい。一方、集塵極は、吊ビーム、支持構造の接合部位間はそれぞれ洗浄水ミストに晒されるが、取付け孔が形成された支持部材はハステロイから形成されており、隙間腐食、孔腐食に対し耐性があることから、それぞれの隙間、孔の部分の腐食を防止することができる。よって、全面腐食、隙間腐食、孔腐食のすべての腐食を防止することができるとともに、高価なハステロイは吊ビームと接触する支持プレートにのみ使用するので、その使用量を少なくして安価に製造することができる。もちろん、吊ビーム自体をハステロイにより製作すれば、より腐食防止効果の高い集塵機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る集塵機取り付け構造を示す全体正面図である。
【図2】図1の部分正面図である。
【図3】集塵極と吊ビームの吊下支持部分の分解斜視図である。
【図4】同実施形態の集塵極と吊ビームの吊下支持部分の断面図である。
【図5】同実施形態の吊ビーム側から見た部分平面図である。
【図6】第2実施形態の例を示す支持構造の断面図である。
【図7】第3実施形態を示し、その全体正面図である。
【図8】図7の部分正面図である。
【図9】第4実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】第5実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜5は第1の実施形態にかかる湿式電気集塵機の集塵極取付け構造を示しており、図1は湿式電気集塵機における集塵極1の全体正面図、図2は部分正面図、図3は集塵極と吊ビームの吊下支持部分の分解斜視図、図4は集塵極と吊ビームの吊下支持部分の断面図、図5は部分平面図である。
【0011】
湿式電気集塵機の集塵極1は、建屋に配置されており、図1、2に示すように、建屋に横架したステンレス材(特にスーパーステンレス材)により形成された上下一対の吊ビーム2と、この吊ビーム2に平面配列され、スーパーステンレスにより形成されて吊下支持される複数の集塵極エレメント3と、前記吊ビーム2に前記集塵極エレメント3を吊下するための締結手段4とを備えて構成されている。
【0012】
図3、4に示すように、上記吊ビーム2は長尺板からなる一対のビーム片2A、2Aにより構成され、集塵極エレメント3はその上下端を両面からビーム片2A、2Aにより挟持して吊り下げ支持している。ビーム片2A、2Aには取付け孔2a、2aが形成され、一方、集塵極エレメント3には前記取付け孔2a、2aと同芯になるように配置され、後述する締結手段4が貫通する取付け孔3aが形成されている。
【0013】
この実施形態では、前記集塵極エレメント3に取付けられたハステロイ(Hastelloy;登録商標)からなる支持部材5を有し、前記吊ビームと集塵極板との間にハステロイ製支持部材5を介在させて前記吊ビーム2と前記集塵極板エレメント3とを離間させて吊下げ支持させるようにしている。前記支持部材5は、前記集塵極エレメント3と両ビーム片2A、2Aとの間に配置される板状の支持プレート5A、5Aから構成され、このハステロイ製支持部材5には、前記吊ビーム2と前記集塵極エレメント3に開口されている取付け孔2a、3aと同芯となるように開口させた取付け孔5a、5aが開口されている。そして、ボルト6、ナット7から構成されている締結手段により、中央に集塵極エレメント3を配置し、その両側に一対のハステロイ製支持プレート5A、5Aを重ね、更にその外側にビーム片2A、2Aを重ねるように積層させた状態で、それらの取付け孔3a、5a、5a、2a、2aを同芯配置し、ボルト6を貫通させ、ナット7で締め付けて共締めするようにして組み立てるようにしている。支持プレート5A、5Aには前記取付け孔2a、3a、2aと同芯の取付け孔5a、5aが形成されている。
【0014】
この実施形態では、上記支持プレート5A、5Aはハステロイにより形成されており、集塵極エレメント3の両面に溶接されている。溶接材料8はハステロイとは異なる材料を用いる。溶接以外にあるいは溶接とともに樹脂材料を用いて隙間を埋めるようにすることもできる。
【0015】
なお、ハステロイはヘインズインターナショナル社(Haynes International, Inc.)の登録商標であり、60%のNiにMo、Crを含有させてなるものであり、また、集塵極エレメント3に使用するスーパーステンレスは、日本冶金工業株式会社(Nippon Yakin Kogyo Co.,Ltd)製のNAS254NMを用いることができる。
【0016】
また、集塵極エレメント3は端部3Aが、図5に示すように、ビーム片2A、2A間に折り返されてビーム片2A、2A間に突張配置されている。これにより、集塵極エレメント3の端部の剛性が向上し、集塵極エレメント3の撓みが防止されるようになっている。
【0017】
前記支持プレート5A、5Aは、集塵極エレメント3の端部3Aがビーム片2A、2Aに当接した場合の、ボルト貫通孔部分の隙間を埋める厚さを有する平板部材であり、ビーム片2A、2Aと集塵極エレメント3の板面との間で相互に密着するように形成配置されている。これによって、ビーム片2A、2Aの内側において、ボルト6が貫通する孔5a、2a、3a、2a、5aへの開口隙間が確実に密封される。同時に、同質材料からなるビーム片2A、2Aと集塵極エレメント3は、ハステロイ製支持プレート5A、5Aによって分離されることになる。すなわち、吊ビーム2に組み付ける集塵極エレメント3の接触部をハステロイ材にして組み立て要素同士を離間させているのである。
【0018】
かかる構成において、集塵極エレメント3、吊ビーム2、支持部材5は捕集されるpH値の低い洗浄水ミストに晒されることになる。
この際、集塵極エレメント3は全面がミストに晒されるが、集塵極エレメント3はスーパーステンレスにより形成されており、全面腐食に対し耐性があるので、全面腐食が防止される。
【0019】
一方、集塵極エレメント3、吊ビーム2、支持部材5の接合部位は、支持プレート5A、5Aと吊ビーム2、集塵極エレメント3、ボルト6、ナット7との間がそれぞれミストに晒されるが、取付け孔5a、5aが形成された支持プレート5A、5Aはハステロイから形成されて集塵極エレメント3に溶着されていることから、支持プレート5A、5Aと接合する箇所の隙間が密封され、孔の部分の腐食に耐性があるので、隙間腐食、孔腐食が防止される。
【0020】
よって、この湿式電気集塵機の集塵極1は、全面、隙間、孔の部分が腐食に対し耐性があるので、全面腐食、隙間腐食、孔腐食のすべての腐食を防止することができる。
また、高価なハステロイは隙間腐食、孔腐食が生じやすい支持プレート5A、5Aにのみ使用されており、使用量を少なくすることができるので、安価に製造することができる。
【0021】
上記実施形態において、前記吊ビーム2をハステロイにより形成することができる。このように構成すると上記実施形態の場合よりはコスト高になるが、隙間腐食の耐性が増加し、より長期使用が可能となるメリットが得られる。
【0022】
図6は第2実施形態の例を示す支持構造の断面図である。
この実施形態は、支持部材を板材ではなく、ハステロイ製の円筒ボスにより形成し、円筒ボス型支持部材50としたものである。その円筒長さは前述した集塵極エレメント3の端部3Aの幅寸法に一致するように形成されている。そして、この円筒ボス型支持部材50は、集塵極エレメント3に形成された取付け孔3aに貫通して配置され、集塵極エレメント3との接合位置は溶接材料8により溶接されている。溶接材料8は樹脂製あるいはハステロイ製のものを使用している。
【0023】
この支持部材50には上記ビーム片2A、2Aの取り付け孔2a、2aを貫通してボルト6を貫通させる取付け孔50aが形成されている。
この第2実施形態では、支持部材50が円筒ボス1個のみであるので、取付け部品の削減と取付工程の削減を図ることができるばかりでなく、集塵極エレメント3とボルト6との接合箇所をなくすことができるので、両者間の隙間あるいは孔を減少させることができ、支持部材50がハステロイに形成されていることと相俟って隙間腐食、孔腐食を防止することができる。
【0024】
次に、図7及び図8は第3実施形態を示しており、図7は集塵極の全体正面図、図8は集塵極エレメント部分正面図である。
この第3実施形態は、集塵極エレメント3の吊ビーム2による吊下支持部材を板状の支持プレート5のみにより形成したものである。すなわち、第1実施形態の支持プレート5を集塵極エレメント3の板面に溶着するのではなく、集塵極エレメント3の上下端縁の複数個所にハステロイ製支持プレート5の一縁部を溶着(溶着箇所13)して、支持プレート5が外側に張り出すように取付け、この張り出したハステロイ製支持プレート5を一対のビーム片2A、2Aにより三層重ねにして挟着して共締めし、当該ハステロイ製支持プレート5を介して集塵極エレメント3を吊下げるようにしたものである。支持プレート5と吊ビーム2とはそれらの取付け孔2a、5a、2aを貫通するボルト・ナット(図示省略)により締め付けて共締めしている。特に、集塵極エレメント3は、図7に示されるように、吊ビーム2と離間して配置するように構成され、エレメント吊下げ支持部の吊ビーム2と集塵極エレメント3とが、ハステロイ製支持プレート5によって、離間分離するようにしている。
【0025】
この実施形態では、集塵極エレメント3の吊下支持部位は溶着箇所13のみであることにより、吊下げ締結部位の隙間腐食の影響が集塵極エレメント3側に出ないようになっている。集塵極エレメント3の材料を低減することができ、材料費を削減することができる。
【0026】
図9は第4実施形態を示す分解斜視図である。
この第4実施形態は、支持部材を着脱機構付き支持部材100とし、これを集塵極エレメント3の上下端面に設けたものであり、支持部材100はハステロイからなる着脱自在なプレート本体21と、集塵極エレメント3の上下端面に固定配置され、プレート本体21を横方向から挿入配置する受け部材22とから構成されている。
【0027】
前記着脱機構を構成するため、プレート本体21は立上がり片21Aの下端にベース板21Bを一体にした逆T字状に形成され、その立上がり片21Aに取付け孔21aが形成されている。一方、受け部材22はプレート本体21のベース板21Bを挿入可能なレール溝22Aを有するCチャンネル材によって形成されている。ベース板21Bには取付け孔21bが形成されており、この取付け孔21bとプレート本体21に形成された取付け孔(図示せず)とをボルト及びナットにより締結することにより、組み付け後に分離しないようにしている。
【0028】
そして、このものは、集塵極エレメント3の平坦面部3Bの上下端に固定された受け部材22のレール溝22Aに取付け板21のベース板21Bが挿入配置される一方、図示は省略したが、上記プレート本体21は前記ビーム片2A、2Aにより両面から挟持されており、ビーム片2A、2Aに形成された取付け孔2a、2aと取付け孔21aとに締結手段であるボルト6が貫通してナット7により共締されて締結されている。
【0029】
ここで、前記集塵極エレメント3は、凹凸が交互に現れるような波型形状とされ、平面視で図10に実線で示されるように、前記支持部材100をエレメント平坦面部3Bの上下端縁部分に取り付ければよいが、図10に破線で示したように、集塵極エレメント3の斜交板部3Cの上限端縁であって、エレメント中心線Lに沿った位置に取り付けるようにしてもよい。中心線Lに沿った配置にすれば吊下げ時の重量バランスが良くなる。
【0030】
この第4実施形態では、プレート本体21は集塵極エレメント3を介在させることなく、直接吊ビーム2に接合し、着脱機構をもって連結することで集塵極エレメント3を吊下げることになる。少なくともプレート本体21をハステロイ製とすることで、吊ビーム2との間の隙間、孔は隙間腐食、孔腐食に耐性があり、その間の隙間腐食、孔腐食を防止することができる。もちろん、吊ビーム2やプレート本体21と対となる受け部材22をハステロイ製とすることもできる。また、プレート本体21は受け部材22のレール溝22A内に固定されているので、固定が確実であるにも関わらず、受け部材22と取付け孔21bの1箇所で締結していることにより、固定解除を容易に行うことができるので、集塵極エレメント3の取り付け、取り外し作業を容易に行うことができる。
【0031】
図11は第5実施形態を示す分解斜視図である。
この実施形態に用いる支持部材110を集塵極エレメント3の平坦面部3Bの表面部に設けたものであり、支持部材110はハステロイからなる着脱自在な支持プレート31と、集塵極エレメント3の平坦面部3Bに固定され、横方向から支持プレート31を挿入配置する鞍型の受け部材32とから構成されている。支持プレート31は取付け孔31aが形成された平板に形成される一方、受け部材32は、支持プレート31を挿入可能な凹状部32Aが形成されるとともに、凹状部32Aの両端に集塵極エレメント3の平坦面部3Bに固定されるフランジ32B、32Bが設けられており、さらに、凹状部32Aには支持プレート31の取付け孔31aが見通せる開口部32Cが形成されている。上記支持プレート31には取付け孔31bが1個形成されており、この1個の取付け孔31bと受け部材32に形成された取付け孔32bとを1個のボルト及びナットにより締結している。
【0032】
そして、このものは、集塵極エレメント3の平坦面部3Bの上下部位に固定された受け部材32の凹状部32Aに支持プレート31が挿入配置される一方、図示は省略したが、この支持プレート31、受け部材32の凹状部32A、集塵極エレメント3が前記ビーム片2A、2A間に挟持されており、ビーム片2A、2Aに形成された取付け孔2a、2aと支持プレート31の取付け孔31aと、集塵極エレメント3に形成された取付け孔3aに締結手段であるボルト6が貫通してナット7により締結されている。
【0033】
この第5実施形態では、支持プレート31はハステロイにより形成されているので、支持プレート31と接合する集塵極エレメント3、受け部材32、ボルト、ナットとの間の隙間、孔の腐食に耐性があり、これらの間の隙間腐食、孔腐食を防止することができる上に、支持プレート31は受け部材32の凹状部32A内に固定されているので、固定が確実であるにも関わらず、受け部材32と取付け孔31bの1箇所で締結していることにより、固定解除を容易に行うことができるので、集塵極エレメント3の取り付け、取り外し作業を容易に行うことができる。
【0034】
以上説明した実施形態から理解できるように、本発明は、以下の態様を採ることができる。
1.集塵装置建屋に横架した吊ビームにステンレス材からなる集塵極板の端部を締結して吊下げ支持する湿式電気集塵機の集塵極取付け構造において、前記集塵極板に取付けられたハステロイ(Hastelloy;登録商標)からなる支持部材と、このハステロイ製支持部材と前記吊ビームに取付け孔を開口させ、この取付け孔を利用して共締めする締結手段と、を有し、前記吊ビームと集塵極板との間にハステロイ製支持部材を介在させて前記吊ビームと前記集塵極板とを離間させて吊下げ支持することを特徴とする湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【0035】
この構成によれば、全面腐食、隙間腐食、孔腐食のすべての腐食を防止することができるとともに、高価なハステロイは吊ビームと接触する支持部材にのみ使用するので、その使用量を少なくして安価に製造することができる。
【0036】
2.前記吊ビームをハステロイにより形成したことを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
この構成では、吊ビームの全面腐食、隙間腐食、孔腐食のすべての腐食防止効果を持たせた構造とすることができる。
【0037】
3.ハステロイ製支持部材をプレート材として形成し、前記集塵極板の端縁部の両面にハステロイ製支持部材を接合して溶着し、これらの接合部分を前記吊ビームにより挟着し、これらの挟着部分に取付け孔を貫通させて前記締結手段により共締めさせてなることを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
支持部材がプレート材であるため、共締め構造が簡易にできつつ、的確に腐食防止効果を発揮させることができる。
【0038】
4.前記ハステロイ製支持部材を円筒ボスとし、これを集塵極の取付け孔に貫通して溶着し、円筒ボス端面を前記吊ビームで挟着しつつ、ボス孔を通じて前記締結手段により共締めしてなることを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【0039】
支持部材が集塵極に貫通溶着される円筒ボスにより形成されることにより、支持部材は1個で済み、取付け部品の削減と取付け工程の削減を図ることができるばかりでなく、集塵極と吊ビームとの接合箇所、集塵極とボルトとの接合箇所がなくなり、両者間の隙間あるいは孔を減少させることができるので、円筒ボスの支持部材がハステロイに形成されていることに加えてより一層隙間腐食、孔腐食を防止することができる。
【0040】
5.前記ハステロイ製支持部材を前記集塵極板の端縁に溶着して上下に張り出させ、この張り出した前記支持プレートを吊ビームにて挟着しつつ、挟着部分に貫通させた取付け孔を利用して前記締結手段により共締めしてなることを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
集塵極の材料を低減することができ、材料費を削減することができる。
【0041】
6.前記ハステロイ製支持部材を前記吊ビームに挟着されるプレート本体と、前記集塵極板の端縁に溶着される前記プレート本体の受け部材とから構成し、前記プレート本体と前記受け部材との間に着脱機構を設けたことを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
集塵極エレメントの吊下支持部位は溶着箇所のみであることにより、吊下げ締結部位の隙間腐食の影響が集塵極エレメント側に出ないようになっている。
【0042】
7.前記集塵極板の端部板面には取付け孔を臨む受け部材を取付け、この受け部材に取付け孔を有するハステロイ製支持部材を取付け、この支持部材の外面から前記集塵極板を挟着して前記締結手段により共締めしてなることを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
これによれば、部品交換が容易になり、保守が低コストで実現できる。
【0043】
8.前記支持部材の周囲を封止する樹脂封止部を設けてなることを特徴とする項目1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
支持部材の周囲を封止する樹脂封止部を設けてなることにより、支持部材と集塵極との間の隙間、孔をなくすことができるので、支持部材がハステロイに形成されていることに加えて支持部材周囲の隙間腐食、孔腐食を一層防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1……集塵極、2…吊ビーム、2A…ビーム片、3…集塵極エレメント、3A…エレメント端部、3B…平坦面部、3C………斜交板部、4…締結手段、2a、3a、5a………取付け孔、5…支持部材、5A…ハステロイ製支持プレート、6…ボルト、7…ナット、8…溶接材料、13…溶着箇所、21…プレート本体、21A…立上がり片、21B…ベース板、22…受け部材、22A…レール溝、21a………取付け孔、21b………取付け孔、L…中心線、110…支持部材、31…支持プレート、31a………取付け孔、31b………取付け孔、32…鞍型受け部材、32A…凹状部、32C………開口部、32b………取付け孔、50…円筒ボス型支持部材(第2実施形態)、50a………取付け孔(ボス孔)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵装置建屋に横架した吊ビームにステンレス材からなる集塵極板の端部を締結して吊下げ支持する湿式電気集塵機の集塵極取付け構造において、
前記集塵極板に取付けられたハステロイ(Hastelloy;登録商標)からなる支持プレートと、
このハステロイ製支持プレートと前記吊ビームに取付け孔を開口させ、この取付け孔を利用して共締めする締結手段と、を有し、
前記吊ビームと集塵極板との間にハステロイ製支持部材を介在させて前記吊ビームと前記集塵極板とを離間させて吊下げ支持することを特徴とする湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項2】
前記吊ビームをハステロイにより形成したことを特徴とする請求項1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項3】
ハステロイ製支持部材をプレート材として形成し、前記集塵極板の端縁部の両面にハステロイ製支持部材を接合して溶着し、これらの接合部分を前記吊ビームにより挟着し、これらの挟着部分に取付け孔を貫通させて前記締結手段により共締めさせてなることを特徴とする請求項1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項4】
前記ハステロイ製支持部材を円筒ボスとし、これを集塵極の取付け孔に貫通して溶着し、円筒ボス端面を前記吊ビームで挟着しつつ、ボス孔を通じて前記締結手段により共締めしてなることを特徴とする請求項1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項5】
前記ハステロイ製支持部材を前記集塵極板の端縁に溶着して上下に張り出させ、この張り出した前記支持プレートを吊ビームにて挟着しつつ、挟着部分に貫通させた取付け孔を利用して前記締結手段により共締めしてなることを特徴とする請求項1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項6】
前記ハステロイ製支持部材を前記吊ビームに挟着されるプレート本体と、前記集塵極板の端縁に溶着される前記プレート本体の受け部材とから構成し、前記プレート本体と前記受け部材との間に着脱機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項7】
前記集塵極板の端部板面には取付け孔を臨む受け部材を取付け、この受け部材に取付け孔を有するハステロイ製支持部材を取付け、この支持部材の外面から前記集塵極板を挟着して前記締結手段により共締めしてなることを特徴とする湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。
【請求項8】
前記支持部材の周囲を封止する樹脂封止部を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の湿式電気集塵機の集塵極取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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