説明

湿気硬化型ホットメルト接着剤

【課題】環境面、成分の相溶性、初期接着強度、オープンタイム及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスに優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤及びその湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、(A)ウレタン変性ロジン及び(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体を含み、ウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内装材分野(又は建材分野)及び電子材料分野等の様々な分野で、湿気硬化型ホットメルト接着剤が利用されている。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む接着剤である。一般に加熱溶融状態で被着体同士(又は基材と被着体)に塗工され、冷却固化することにより初期接着する。その後、イソシアネート基が大気中の水分で架橋して、ウレタンプレポリマーが高分子量化する湿気硬化によって、接着力及び耐熱性等が向上する。
【0003】
湿気硬化型ホットメルト接着剤に要求される性能の一つとして、初期接着強度がある。初期接着強度を高くするために、湿気硬化型ホットメルト接着剤に粘着付与樹脂を配合して基材への初期の濡れ性を高めること、又は熱可塑性樹脂を配合して初期凝集力を向上させること等が行われる。しかし、粘着付与樹脂や熱可塑性樹脂は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の主成分であるウレタンプレポリマーとの相溶性が必ずしも十分ではなかった。
【0004】
特許文献1は、粘着付与樹脂及び可塑剤を含まず、熱可塑性樹脂である(メタ)アクリル酸エステルの低分子量重合体とウレタンプレポリマーを含むポリウレタン−ホットメルト接着剤組成物を開示する(特許文献1請求項1及び第2頁右欄第33行〜第42行参照)。低分子量重合体を含むことで接着剤の初期凝集力は向上するが、粘着付与樹脂を含まないので、接着剤の基材への初期の濡れ性が不十分となり、初期接着強度も低くなり得る。
【0005】
特許文献2は、イソシアネート化合物、ポリエステルポリオール化合物、イソシアネート化合物に対する反応性を有する反応性粘着付与樹脂、熱可塑性樹脂を含むウレタンホットメルト接着剤を開示する(特許文献2段落番号0001参照)。しかし、特許文献2のウレタンホットメルト接着剤は、耐熱性が不十分なので、耐熱性を高めるに過剰のイソシアネート化合物を含むことが必要である。近年、環境面から、イソシアネート化合物を多量に含むことは好ましくない。
【0006】
特許文献1及び2の接着剤は、初期接着強度が改善されるが、オープンタイムが短いという問題がある。オープンタイムの短い接着剤は、硬化の開始が早いので、複雑な形状の被着体に作業者が直接塗工することに適さない。
【0007】
このように、近年では、環境面、成分の相溶性(接着剤の均一性又は接着剤の相分離を生じない)、初期接着強度、オープンタイム及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスに優れた湿気硬化型ホットメルト接着剤が望まれており、その開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−4840号公報
【特許文献2】特表2003−515637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その課題は、環境面、成分の相溶性、初期接着強度、オープンタイム及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスに優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤及びそのような湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、特定の粘着付与樹脂と特定の熱可塑性樹脂の組み合わせを用いると、イソシアネート化合物を過剰に用いなくとも、初期接着強度、湿気硬化後の耐熱性、オープンタイム及び相溶性等のバランスに優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、一の要旨において、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(以下「ウレタンプレポリマー」ともいう)を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、
(A)ウレタン変性ロジン
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体(以下「(B)共重合体」ともいう)
を含み
ウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0012】
本発明は、一の態様において、(B)共重合体は、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、他の態様において、(B)共重合体は、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及び/又はエチレン−n−ブチルアクリレートを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0013】
本発明は、好ましい態様において、上記ウレタンプレポリマーはポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られ、該ポリオールは、芳香族ポリエステルポリオールを含有する湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、更に好ましい態様において、(A)ウレタン変性ロジン、(B)共重合体、及びウレタンプレポリマーを混合することで得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0014】
本発明は、他の要旨において、
(i)イソシアネート化合物と水酸基を有するロジン誘導体の反応で(A)ウレタン変性ロジンを得る工程、
(ii)(A)ウレタン変性ロジン、(B)共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を混合する工程
を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法を提供する。
本発明は、一の態様において、
(ii)工程において、ポリオールとイソシアネート化合物を混合することでウレタンプレポリマーを得る工程を含む湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法を提供する。
本発明は、好ましい要旨において、上述の製造方法で製造される上述の湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0015】
本明細書において「オープンタイム」とは、溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤を被着体へ塗工したときから、接着剤の流動性がなくなり被着体表面を濡らすことができなくなる迄の時間をいう。
「初期接着強度」とは、湿気硬化型ホットメルト接着剤を溶融して被着体に塗布した後、接着剤の温度が低下して固化した時の接着強度をいう。初期接着強度は、濡れ性や凝集力に影響される。初期接着強度は、大きいことが好ましい。
【0016】
「濡れ性」とは、加熱して溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤を基材(固体)に接触させたとき、溶融した接着剤が基材と接触する端部が作る角度(α)の大きさで測ることができる。αが小さいほど濡れ性が大きく、接着し易い。
「凝集力」とは、加熱溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤を、アプリケーターを用いて塗布した後、冷える過程で生じる、接着剤中の分子間に働く相互作用に起因する力をいう。
「最終接着強度」とは、溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤が固化後、接着剤中のイソシアネート基と大気中の水分が反応して硬化した、即ち、湿気硬化後の接着強度をいう。最終接着強度は、大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、
粘着付与樹脂として、(A)ウレタン変性ロジン及び
熱可塑性樹脂として、(B)エチレンと(メタ)アクリル誘導体との共重合体
を含み、
ウレタンプレポリマーがポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られるので、
環境面、相溶性、初期接着強度、オープンタイム及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスに優れる。
【0018】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、特定の粘着付与樹脂として(A)ウレタン変性ロジン、及び特定の熱可塑性樹脂として(B)共重合体を含むので、イソシアネート化合物を過剰に用いて製造する必要がなく、環境面、相溶性、湿気硬化後の耐熱性、初期接着強度及びオープンタイム等のバランスに優れる。好ましくは、環境面に優れ、各成分の相溶性にも優れ、湿気硬化後の耐熱性に優れ、初期の濡れ性及び凝集力が高くなるので初期接着強度にも優れ、且つ、オープンタイムがある程度長くなる。
オープンタイムが長い湿気硬化型ホットメルト接着剤を用いると、作業者は、基材(例えば、木質材料及びプラスチック等)と、被着体(例えば、フィルム、化粧シート及びプラスチック等)とを貼り合わせて積層品を製造する際に、時間的な余裕を有するので、慌てず丁寧に塗工作業をすることができる。
【0019】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(B)共重合体が、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する場合、相溶性、初期接着強度、オープンタイム及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスにより優れる。
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(B)共重合体は、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及び/又はエチレン−n−ブチルアクリレートを含有する場合、更に、初期接着強度、オープンタイム及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスに優れる。
【0020】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ウレタンプレポリマーがポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られ、このポリオールが芳香族ポリエステルポリオールを含有する場合、ポリオールに由来する芳香環を有する。この芳香環が存在することで、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期接着強度を向上しつつ、オープンタイムがより長くなり、作業者がより塗工し易く成り得る。
【0021】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、(A)ウレタン変性ロジン、(B)共重合体、及びウレタンプレポリマーを混合することで得る場合、(A)ウレタン変性ロジンが実質的にイソシアネート化合物と反応することがなく、過剰のイソシアネート化合物を含む必要なく、耐熱性に優れる。
【0022】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法は、
(i)イソシアネート化合物と水酸基を有するロジン誘導体の反応で(A)ウレタン変性ロジンを得る工程、
(ii)(A)ウレタン変性ロジン、(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を混合する工程
を有するので、
ポリオールとイソシアネート化合物との反応に(A)ウレタン変性ロジンが実質的に関与せず、イソシアネート化合物を過剰に用いることなく、湿気硬化型ホットメルト接着剤の湿気硬化後の耐熱性を高めることができる。
更に、本願の製造方法は、イソシアネート化合物を過剰に用いる必要がないので、環境面も優れる。得られた湿気硬化型ホットメルト接着剤は、環境面、相溶性、湿気硬化後の耐熱性、初期接着強度及びオープンタイム等のバランスに優れる。好ましくは、オープンタイムがある程度長くなるので塗工作業に余裕が生まれ、初期凝集力が高くなるので初期接着力にも優れる。
【0023】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法は、
(ii)工程において、ポリオールとイソシアネート化合物を混合することでウレタンプレポリマーを得る工程を含む場合、
イソシアネート化合物がポリオールと効率良く反応し、ウレタンプレポリマーが得られる。従って、イソシアネート残存量が少なくなるので、環境面に好ましく、過剰のイソシアネート化合物を用いることなく、耐熱性に優れる湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、「イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー」を含んで成る。
本発明に係る「イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー」とは、通常「ウレタンプレポリマー」と理解されるものであって、「イソシアネート基を末端に有するもの」であれば、目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。このようなウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソシアネート化合物とを従来既知の方法にしたがって反応させることで得られる。尚、本明細書では、「イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー」を、単に「ウレタンプレポリマー」とも記載する。
【0025】
本明細書において「ポリオール」とは、目的とするウレタンプレポリマーを得ることができれば、特に制限されるものではなく、「ポリオール」として、通常のポリウレタン製造に使用される公知のポリオールを用いることができる。ポリオールとして、官能基数が1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性ポリオール、いわゆるジオールが好ましい。ポリオールは、単独で又は組み合わせて用いることができる。ジオールには、例えば、エチレングリコール、1−メチルエチレングリコール、1−エチルエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール等の低分子量ジオールが含まれる。エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール及びデカンジオールから選択される少なくとも一種が好ましい。これらのジオールは、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明における、「ポリオール」として、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を使用することができる。
ポリエーテルポリオールには、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及び、ポリオキシエチレングリコール(PEG)等が含まれる。ポリエーテルポリオールとして、特にポリオキシプロピレングリコールが好ましい。
本発明における、ポリエステルポリオールとして、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールを例示できる。
【0027】
本発明では、ポリオールとして、芳香族ポリエステリポリオールを含むことが、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を高め、オープンタイムもある程度長くすることができるので、好ましい。
芳香族ポリエステルポリオールは、芳香族カルボン酸とジオールとの反応で得られるものが好ましい。芳香族ポリカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。芳香族ポリエステルポリオールの一例として、ポリアルキレンフタレート、ポリアルキレンイソフタレート、ポリアルキレンテレフタレートを例示できる。芳香族ポリエステルポリオールとして、特にポリアルキレンフタレートが好ましい。
【0028】
脂肪族ポリエステルポリオールは、脂肪族カルボン酸とジオールとの反応で得ることができる。脂肪族カルボン酸として、例えばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸を例示できる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。脂肪族ポリエステルポリオールの一例として、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)、ポリブチレンアジペート(PBA)を例示できる。脂肪族ポリエステルポリオールとして、特にポリヘキサメチレンアジペートが好ましい。
従って、本発明では、最も好ましいポリオールの態様はポリオキシプロピレンポリオール、ポリアルキレンフタレート、ポリヘキサメチレンアジペート、の混合物である。
【0029】
本発明における、イソシアネート化合物は、目的とするウレタンプレポリマーを得ることができれば特に制限されるものではなく、通常のポリウレタン製造に使用されるものであれば差し支えない。イソシアネート化合物として、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性イソシアネート化合物、いわゆるジイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
「イソシアネート化合物」として、例えば、エチレンジイソシアネート、エチリデン−ジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレン−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、トルエン−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、アゾベンゼン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジクロロヘキサメチレンジイソシアネート、フルフリデンジイソシアネート、及び1−クロロベンゼン−2,4−ジイソシアネート等を例示できる。イソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明に係る「ウレタンプレポリマー」を製造する場合、目的とするウレタンプレポリマーを得られる限り、モノオールやモノイソシアネートを用いることができ、三官能性ポリオール及び三官能性イソシアネートを用いることもできるが、二官能性ポリオール(ジオール)及び二官能性イソシアネート(ジイソシアネート)を用いて製造することが好ましい。「ウレタンプレポリマー」は、二官能性ポリオール及び二官能性イソシアネートを反応させて製造することが、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性及び製造方法(及びその製造工程)の制御の点から、より好ましい。尚、1モルの二官能性ポリオールに対して2モルの二官能性イソシアネートを用いると、比較的容易に目的とするウレタンプレポリマーを製造できるので好ましい。
【0032】
本発明において「(A)ウレタン変性ロジン」とは、水酸基を有するロジン誘導体とイソシアネート化合物との反応によって得られ、水酸基とイソシアネート基との反応によって形成されるウレタン結合を分子中に有する変性ロジンをいう。
「水酸基を有するロジン誘導体」とは、ロジンが水酸基を有するように変性された誘導体をいう。例えば、ロジンと多価アルコール、例えばジオールとの反応によって、ロジンのカルボキシル基と多価アルコールの一つの水酸基とをエステル結合で結合することで、水酸基を有するロジン誘導体を得ることができる。
(A)ウレタン変性ロジンは、実質的に水酸基を有さず、その結果、イソシアネート化合物との実質的な反応性を有さない。尚、(A)ウレタン変性ロジンを得る際は、「水酸基を有するロジン誘導体」の水酸基と「イソシアネート化合物」のイソシアネート基が当量となるように反応させることが好ましい。
(A)ウレタン変性ロジンを製造する際は、更に、重量平均分子量1000以下のジオールを使用しても良い。
【0033】
「ロジン」として、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジンの他、これらのロジンをベースにした不均斉化ロジン、水素添加ロジン、重合ロジン及び、これらの精製物等を例示することができる。またこれらのロジン類にマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸などを付加した強化ロジンや、更にその変性物を使用することも可能である。
【0034】
多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の四価アルコール、ジペンタエリスリトール等の六価アルコールを例示できる。
ロジンと多価アルコールとのエステル(以下、「ロジンエステル」ともいう)は、既知の方法を使用して得ることができる。例えば、窒素ガス等の不活性雰囲気下に、ロジンとアルコールとを加熱して得ることができる。この際の反応条件は、一般的に250〜280℃で、5〜20時間かけて行われる。
【0035】
上記製造方法は、ホルマリン変性ロジン、変性ロジンアルコール等についても適用することができ、更にフェノール化などの変性を施したロジンについても適用できる。
ウレタン変性ロジンの原料となる「イソシアネート化合物」は、「ウレタンプレポリマー」の製造の際に記載した「イソシアネート化合物」と同一でも、異なってもいてもよい。ウレタン変性ロジンの原料となる「イソシアネート化合物」は、化合物中に一つ以上のイソシアネート基を有するものであれば良く、モノイソシアネートでも、ジイソシアネートであってもよい。多価アルコール等に付加されたイソシアネートであってもよい。
【0036】
本発明において、「(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体」とは、「エチレン」と「(メタ)アクリル酸誘導体」が共重合した重合体をいう。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸誘導体」とは、メタクリル酸誘導体及びアクリル酸誘導体の双方を意味し、「メタクリル酸誘導体」とは、メタクリル酸とメタクリル酸の誘導体の双方を意味する。「アクリル酸誘導体」とはアクリル酸とアクリル酸の誘導体の双方を意味する。尚、ビニル基と酸素が結合した構造を有するビニルエステル、例えば酢酸ビニル等は、本明細書において、(メタ)アクリル酸誘導体に含まれない。
本発明では、(B)共重合体は、熱可塑性樹脂であり、初期凝集力及び被着体への濡れ性を向上し得るので、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を向上し得る。
【0037】
メタクリル酸誘導体の具体例を以下に例示する。
メタクリル酸;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;
を例示できる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
メタクリル酸エステルは、アリールエステルであってもアルキルエステルであってもよいが、アルキルエステルであることが好ましい。アルキル基は(例えば、シクロヘキシル及びイソボルニル等の)環状構造を有していても(例えば、メチル、エチル及びプロピル等の)鎖状構造であってもよく、(例えば、n−プロピル、n−ブチル等の)直鎖状でも、(例えば、イソブチル及びt−ブチル等の)分枝状でもよく、(例えば、メトキシ基、ジメチルアミノ基及びトリフルオロメチル基等の)置換基を有していても有していなくてもよい。メタクリル酸エステルは、メチルメタクリレートであることが特に好ましい。
【0038】
アクリル酸誘導体としては、具体的に、
アクリル酸;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、i−オクチルアクリレート、デシルメチルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、トリフルオロメチルアクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート等のアクリル酸エステル;
を例示できる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アクリル酸エステルは、アリールエステルであってもアルキルエステルであってもよいが、アルキルエステルであることが好ましい。アルキル基は(例えば、シクロヘキシル及びイソボルニル等の)環状構造を有していても(例えば、メチル、エチル及びプロピル等の)鎖状構造であってもよく、(例えば、n−プロピル、n−ブチル等の)直鎖状でも、(例えば、イソブチル及びt−ブチル等の)分枝状でもよく、(例えば、メトキシ、ジメチルアミノ及びトリフルオロメチル等の)置換基を有していても有していなくてもよい。アクリル酸エステルは、n−ブチルアクリレートであることが特に好ましい。
【0039】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤の相溶性、初期接着強度及び湿気硬化後の耐熱性等のバランスを考慮すると、(B)共重合体は、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及び/又はエチレン−n−ブチルアクリレート共重合体を含むことが好ましく、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及び/又はエチレン−n−ブチルアクリレート共重合体であることがより好ましい。(B)共重合体は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明では、(B)共重合体は、メルトインデックスが10〜500g/10分であることが好ましく、特に300〜500g/分であることがより好ましい。「メルトインデックス」とは、ヒーターで加熱された円筒容器内で、一定量の合成樹脂を定められた温度で加熱及び加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間当たりに押出された樹脂量をいう。その値は、単位:g/10分で表示される。(B)共重合体のメルトインデックスが10〜500g/10分である場合、(B)共重合体と他成分との相溶性がより向上し、更に、最終生成物の湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度を高くすることができ、好ましい。
【0041】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、必要に応じて種々の添加剤を含んでもよい。「添加剤」とは、湿気硬化型ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤に使用することができるものであれば特に制限されるものではない。そのような添加剤として、例えば、可塑剤、酸化防止剤、顔料、光安定剤、難燃剤及び触媒、ワックス等を例示することができる。
【0042】
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ミネラルスピリット等を例示できる。
「酸化防止剤」として、例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を例示できる。
「顔料」として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等を例示できる。
「光安定剤」として、例えば、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、ベンゾエート、ベンゾトリアゾール等を例示できる。
【0043】
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
「触媒」として、金属系触媒、例えば錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属系触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
「ワックス」として、例えば、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等のワックスを例示できる。
【0044】
上述の本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、その製造方法は、特に制限されるものではないが、下記製造方法を用いて好適に製造することができる。即ち、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、
(i)イソシアネート化合物と、水酸基を有するロジン誘導体の反応で(A)ウレタン変性ロジンを得る工程、
(ii)(A)ウレタン変性ロジン、(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を混合する工程
を有する製造方法を用いて製造することができる。
【0045】
(i)工程のイソシアネート化合物と、水酸基を有するロジン誘導体の反応は、イソシアネート化合物と水酸基を有する一般的な化合物との反応方法と同様の方法を用いて行うことができる。通常、両者を混合することで、反応を行うことができる。
(ii)工程の(A)ウレタン変性ロジン、(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を混合する方法は、既知の混合方法を用いて行うことができる。
(i)工程に係る「混合」と(ii)工程に係る「混合」は、同様の混合方法を用いて行うことができる。
【0046】
更に、本発明は、上述の本発明に係る製造方法で製造される、上述の本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤を提供する。
【0047】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、従来から湿気硬化型ホットメルト接着剤が使用されている分野で用いることができる。更に高い初期接着強度を要求される建築材料用の外装材及び内装材、フローリング、基材への化粧シートの貼り付け及びプロファイルラッピング等に用いることもできる。
【0048】
上記湿気硬化型ホットメルト接着剤は、化粧材料を建築内装部材として、床に貼り付ける際に好適であるが、床への貼り付けに限定されるものではなく、他の基材にも化粧シートを貼り付けることも出来る。従って、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、木工用、紙加工用、繊維加工用、一般用等として用いることもできる。
【0049】
本発明では、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、従来の湿気硬化型ホットメルト接着剤と同様の方法を用いて使用することができ、目的とする部材又は積層品を得られる限り、その使用方法は特に制限されるものではない。また、例えば、基材に被着体を貼り付ける際、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、基材側及び/又は被着体側に塗布して良い。
【0050】
「被着体」は、通常使用されているものでよく、特に限定されるものではないが、具体的には、フィルム及び化粧シート等を例示できる。
フィルムは、無色であっても着色されていても、透明であっても不透明であってもよいが、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から作られたフィルムを例示できる。ポリオレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンを例示でき、ポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレートを例示できる。
【0051】
化粧シートは、例えば以下のものを例示できる。
硬質もしくは半硬質の塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック材料で作られたシート;
木材をシート状に加工した突板;並びに
各種化粧印刷の施された化粧紙。
【0052】
「基材」は、通常使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば以下のものを例示できる。
ラワン合板等の合板、中繊維板(MDF)、パーティクルボード、無垢材、木質繊維板等の木質系材料;並びに
セメントボード、石膏ボード、軽量気泡コンクリート(ALC)等の無機系材料;
塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック材料。
【0053】
これらの被着体と基材とを、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤で貼り合わせることで得られた積層品は、具体的に、建築材料、電子材料及び自動車分野等、種々の用途に利用可能である。
積層品を製造するために、特別な装置を使う必要はなく、搬送機、コーター、プレス機、ヒーター、裁断機を含む一般的に既知の製造装置を用いて製造することができる。
例えば、積層品は以下のように製造することができる。基材及び被着体を搬送機で流しながら、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤をコーターで基材若しくは被着体に塗布する。塗布する時の温度は、ヒーターで所定の温度に制御する。被着体をプレス機で基材に軽く押し付け、湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して、被着体と基材とを貼り合わせる。その後、貼りあわされた被着体と基材を放冷し、そのまま搬送機で流して、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させる。その後、被着体が貼られた基材を裁断機で適当な大きさに裁断加工する。
【0054】
尚、本発明では、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期接着強度が高く、オープンタイムが長いので、コーターを使わずに、作業者が接着剤を塗工し、積層品を製造することも可能である。製造ラインに乗せにくい複雑な形状や細かい基材(被着体)に塗工する湿気硬化型ホットメルト接着剤が必要な場合、本発明の製造方法は好適である。
【0055】
本発明に係る上述の湿気硬化型ホットメルト接着剤及びその製造方法は、上述したような優れた効果を奏するが、その理由は、下記のように考えられる。
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤では、水酸基を実質的に有さない(A)ウレタン変性ロジンと、(B)共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を配合すれば、ポリオールとイソシアネート化合物との反応は、(A)ウレタン変性ロジンに実質的に影響されることはないと考えられる。即ち、本発明では、ウレタン変性ロジンとウレタンプレポリマーの製造を別々に行うことによって、各々の成分を独立して制御することを一つの特徴とする。
従って、本発明者等は、湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造する際、イソシアネート化合物を過剰に使用する必要はなく、より少量でさしつかえないと考えた。
【0056】
更に、上述の本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、粘着付与樹脂である(A)ウレタン変性ロジンと、熱可塑性樹脂である(B)共重合体の両方を含むので、環境面、相溶性、湿気硬化後の耐熱性、初期接着強度及びオープンタイム等のバランスに優れ、好ましくは、環境面に優れ、各成分の相溶性にも優れ、湿気硬化後の耐熱性に優れ、初期の濡れ性及び凝集力が高くなるので初期接着強度にも優れ、且つ、オープンタイムがある程度長くなると考えられる。
【0057】
本発明に係る製造方法では、水酸基を有するロジン誘導体とイソシアネート化合物を反応させて(A)ウレタン変性ロジンを製造し、その後、(A)ウレタン変性ロジン、(B)共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を混合する。即ち、本発明に係る製造方法は、まず水酸基を有するロジン誘導体とイソシアネート化合物を反応させて、水酸基含有粘着付与樹脂の水酸基を消失させることを一つの特徴とする。従って、本発明に係る製造方法は、反応性粘着付与樹脂、ポリオール、イソシアネート化合物、熱可塑性樹脂を一度に(又は一括で)混合する(即ち、反応する)特許文献2に記載の製造方法とは全く異なる。
【0058】
即ち、特許文献2に記載された反応性粘着付与樹脂は、イソシアネート化合物と反応し得る水酸基を有する。この水酸基は、イソシアネート化合物や、ウレタンプレポリマー末端のイソシアネート基と反応し、鎖長延長反応の進行を停止させる。鎖長延長反応が停止することで、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、不十分な湿気硬化により、十分な耐熱性が得られないことと成り得る。そこで、耐熱性を高くするために過剰のイソシアネート化合物を用いると、湿気硬化型ホットメルト接着剤中に多量のイソシアネート化合物が残存し得る。多量のイソシアネート化合物が残存する湿気硬化型ホットメルト接着剤を加熱して溶融すると、多量のイソシアネート化合物が熱により揮散し、作業環境が非常に悪くなる。更に、反応性粘着付与樹脂がウレタンプレポリマー中に組入れられて、ウレタンプレポリマーの結晶性が低下するので、初期凝集力の発現が遅れる。
【0059】
従って、本発明では、ウレタンプレポリマー形成反応に(A)ウレタン変性ロジンが関与せず、ウレタンプレポリマーと(A)ウレタン変性ロジンの各々が独立して接着剤中で機能することによって、相乗的な効果を生じ、後述する実施例と比較例のような結果が得られたと考えられる。
しかし、本発明は、このような理由に、何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り下記の実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例及び比較例で使用する湿気硬化型ホットメルト接着剤の成分を以下に示す。
<粘着付与樹脂>
(A−1)ウレタン変性ロジン(その製造方法は後述する通り。)
(A’−2)ロジンエステル(荒川化学社製のスーパーエステルA100(商品名):水酸基価15、重量平均分子量920、軟化点100℃)
【0062】
<熱可塑性樹脂>
(B−1)エチレン−メチルメタクリレート共重合体(以下、「EMMA樹脂」ともいう)(住友化学社製のアクリフトCM5022(商品名):メルトインデックス450g/10分、メチルメタクリレート含有量32%)
(B−2)エチレン−メチルメタクリレート共重合体(以下、「EMMA樹脂」ともいう)(住友化学社製のアクリフトCM5021(商品名):メルトインデックス450g/10分、メチルメタクリレート含有量28%)
(B−3)エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体(以下、「EnBA樹脂」ともいう)(エクソンモービル社製のENABLE EN33330(商品名):メルトインデックス330g/10分、n−ブチルアクリレート含有量33.5%)
【0063】
(B’−4)エチレン−ビニルアセテート共重合体(以下、「EVA樹脂」ともいう)(東ソー社製のウルトラセン726(商品名):メルトインデックス700g/10分、ビニルアセテート含有量31%)
(B’−5)メタクリル酸メチル−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体(三菱レーヨン社製のダイアナールBR113(商品名))
(B’−6)オレフィン(エチレン/プロピレン/1−ブチレン)共重合体(エボニックデグサ社製のベストプラスト728(商品名))
【0064】
<ポリオール>
(C−1)脂肪族ポリエステルポリオール(アジピン酸及び1,6−ヘキサンジオールを用いて製造された豊国製油社製のHS 2H−351A(商品名):水酸基価32、融点55℃、結晶性)
(C−2)脂肪族ポリエステルポリオール(アジピン酸、ネオペンチルグルコール及び1,6ヘキサンジオールを用いて製造された豊国製油社製のHS 2H−231AS(商品名):水酸基価56、非晶性)
(C−3)芳香族ポリエステルポリオール(フタル酸及びネオペンチルグルコールを用いて製造された豊国製油社製のHS 2F−136P(商品名):水酸基価110、ガラス転移点27℃、非晶性)
(C−4)芳香族ポリエステルポリオール(フタル酸及びネオペンチルグルコールを用いて製造された豊国製油社製のHS 2F−306P(商品名):水酸基価37、ガラス転移点27℃、非晶性)
(C−5)芳香族ポリエステルポリオール(テレフタル酸及び1,6−ヘキサンジオールを用いて製造された豊国製油社製のHS 2H−458T(商品名):水酸基価37、ガラス転移点27℃、非晶性)
(C−6)芳香族ポリエステルポリオール(テレフタル酸及び1,6−ヘキサンジオールを用いて製造された豊国製油社製のHS 2H−359T(商品名):水酸基価32、融点110℃、結晶性)
(C−7)脂肪族ポリエーテルポリオール(ポリオキシプロピレングリコール、第一工業製薬社製のハイフレックスD2000(商品名))
【0065】
<イソシアネート化合物>
(D)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」ともいう)(日本ポリウレタン工業社製のミリオネートMT(商品名))
【0066】
上記成分を表1及び表2に示す割合で用い、実施例1〜8及び比較例1〜7の湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造し、その性能を評価した。以下に湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法及び評価方法について記載する。
【0067】
[ウレタン変性ロジンの製造]
反応容器に(A’−2)ロジンエステルを90重量部仕込み、120℃オーブン中にて樹脂を溶解させた後、反応容器を120℃オイル浴中で加熱し、減圧下、1時間攪拌して、水分を除去した。
次に同温度で、(D)MDIを3.3重量部仕込み、同温度で減圧下、2時間攪拌を行い、(A−1)ウレタン変性ロジンを得た。
(A−1)ウレタン変性ロジンの分子量分布をゲルパーミェーションクロマトグラフィー分析(GPC分析)にて測定した結果、(A−1)ウレタン変性ロジンの分子量は(A’−2)ロジンエステルの分子量の約2倍であることが確認できた。又、赤外分光スペクトル分析(IR分析)を行った結果、2300cm−1のイソシアネート基の吸収がほぼ消失していることが確認された。
【0068】
[湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造]
<実施例1>
表1に示すように、(A−1)ウレタン変性ロジン27.5重量部、(B−1)EMMA樹脂14.0重量部を反応容器に仕込み、次に120℃で(C−1)ポリオール21.0重量部、(C−3)ポリオール11.6重量部、(C−5)ポリオール4.7重量部、(C−6)ポリオール4.7重量部、(C−7)ポリオール8.4重量部を仕込み、減圧下、1時間攪拌して、水分を除去した。次に、同温度で(D)MDIを14.1重量部仕込み、減圧下、2時間攪拌して、湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
【0069】
<実施例2〜7>
表1に示す組成で湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造した。製造条件及び操作等は、実施例1と同様である。
実施例2では、実施例1で用いた(B-1)EMMA樹脂の代わりに(B-2)EMMA樹脂を用いた。
実施例3では、実施例1で用いた(B-1)EMMA樹脂の代わりに(B-4)EnBA樹脂を用いた。
実施例5及び6では、実施例1で用いなかった(C−4)ポリオールを用いた。
実施例7では実施例1で用いなかった(C−2)ポリオールを用いた。
【0070】
<比較例1>
実施例1で用いた(A-1)ウレタン変性ロジンの代わりに、(A’−2)ロジンエステルを粘着付与樹脂として使用した。
<比較例2〜6>
比較例2〜4では、実施例1で用いた(B−1)EMMA樹脂の代わりに、(B’−4)EVA樹脂、(B’−5)メタクリル酸メチル―アクリル酸―アクリル酸ブチル共重合体及び(B’−6)オレフィン共重合体を、各々用いた。
比較例5では、(A-1)ウレタン変性ロジンを用いなかった。
比較例6では、(B−1)EMMA樹脂を用いなかった。
【0071】
<実施例8、比較例7>
(A−1)ウレタン変性ロジンを用いなかったが、湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造の過程で、(A’−2)ロジンエステルを、イソシアネート化合物と混合して、ウレタン変性ロジンを生じさせることで、ウレタン変性ロジンを実質的に使用した。但し、実施例8と比較例7では、(A’−2)ロジンエステルとポリオール及びイソシアネート化合物の混合方法(順序)が異なり、実施例8では、イソシアネート化合物の一部を、予め(A’−2)ロジンエステルと反応させた後、イソシアネート化合物とポリオールを反応させた。各成分の組成は、表2に示した。実施例8と比較例7の湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造の詳細は下記の通りである。
【0072】
実施例8
反応容器に(A’−2)ロジンエステルを21.0重量部、(B−2)EMMA樹脂を14.0重量部仕込み、120℃オーブン中で樹脂を溶解させた後、反応容器を120℃オイル中で加熱して、減圧下、1時間攪拌して、水分を除去した。同温度で(D)MDIを0.74重量部仕込み、減圧下、2時間攪拌した。次に、同温度で(C−1)ポリオールを21.0重量部、(C−3)ポリオールを11.6重量部、(C−5)ポリオールを4.7重量部、(C−6)ポリオールを4.7重量部、(C−7)ポリオールを8.4重量部仕込み、減圧下、1時間攪拌し、水分を除去した。更に、同温度で(D)MDIを14.1重量部仕込み、減圧下、2時間攪拌し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
【0073】
比較例7
実施例8と同様に、反応容器に(A’−2)ロジンエステル、(B-2)EMMA樹脂を反応容器に仕込んだ。次に、表2に示す組成で、ポリオール(C−1)、(C−3)、(C−4)、(C−5)、(C−6)及び(C−7)の各々を反応容器に仕込んだ。その後、(D)MDIを添加し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造した。
【0074】
<試験方法>
1.相溶性
湿気硬化型ホットメルト接着剤中の相分離の有無を調べることで、湿気硬化型ホットメルト接着剤中の各成分の相溶性を確認した。
まず、実施例及び比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤を容器に採取し、120℃オーブン中に1時間放置し、目視で相分離の有無を観察した。
次に、湿気硬化型ホットメルト接着剤を透明PET基材に塗工し、20℃で1時間乾燥させて厚さ100μmのフィルムを作製した。フィルムの均一性を目視観察して相溶性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
・接着剤の相分離がなく、かつ、フィルムが均一である:○
・接着剤の相分離がないが、フィルムが不均一である: △
・接着剤の相分離があり、かつフィルムが不均一である:×
【0075】
2.オープンタイム
実施例及び比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤をMDFボードに40g/mの塗布量で塗布した。塗布後、規定の時間毎に易接着処理されたシートの小片を貼り付け、翌日にそのシート小片を剥がし、MDFボードが材料破壊(以下、「材破」ともいう)する最長の貼り付けた時間をオープンタイムとした。オープンタイムの評価基準は以下のとおりである。尚、具体的な時間を表中に記載した。
・オープンタイムが30分以上: ○
・オープンタイムが5分以上で30分未満:△
・オープンタイムが5分未満: ×
・接着せず、測定不可能: −
【0076】
3.初期凝集力
実施例及び比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤を合板に40g/mの塗布量で塗布し、2分後にPETシートを貼り付け、0.5kg/cmの圧力でロールプレスを用いて加圧した。その3分後に、25mm×100mmの大きさに切断して得た試料について、引っ張り速度200mm/分で180°ピール強度を測定して、初期凝集力を評価した。初期凝集力の評価基準を以下に示す。尚、具体的なピール強度を表中に記載した。
・ピール強度が30N以上: ◎
・ピール強度が20N以上、30N未満:○
・ピール強度が10N以上、20N未満:△
・ピール強度が10N未満: ×
・接着せず、測定不可能: −
【0077】
4.耐熱性(100℃ 温水試験)
実施例及び比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤を合板に40g/mの塗布量で塗布し、2分後にPETシートを貼り付け、0.5kg/cmの圧力でロールプレスを用いて加圧した。その後、23℃、60%RHの環境下で3日間養生し、10cm×10cmの大きさの試験体を作製した。試験体を沸騰水中に4時間浸漬後、60℃で20時間乾燥し、更に沸騰水中に4時間浸漬後、60℃で3時間乾燥した。合板に貼り付けたPETシートを手で剥離する際の様子を目視で観察して、耐熱性を評価した。耐熱性の評価基準を以下に示す。
・合板の材料破壊を生じた: ○
・PETシートの破壊もしくは剥離を生じた、又は
接着剤の凝集破壊を生じた: ×
・接着せず、測定不可能: −
【0078】
5.耐熱接着性
耐熱性試験4.と同様の方法で試験体を作製した。試験体のPETシート(25mm幅)をわずかにめくってに500gの負荷をかけ、70℃乾燥機中で7日間放置した後、ズレ幅で耐熱接着性を評価した。評価基準を以下に示す。
・ズレ幅が10mm未満:○
・ズレ幅が10mm以上:×
・接着せず、測定不可能:−
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すように、実施例1〜7の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(A)ウレタン変性ロジン及び(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体を含む。(A)ウレタン変性ロジンは、(C)ポリオールと(C)MDIとの反応に実質的に関与することがないので、ロジンが存在する場合と比較して、(C)ポリオールと(C)MDIは、より効率的に反応する。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(D)MDIの残存率が低下するので、環境的に好ましい。(B)共重合体は、(A)ウレタン変性ロジンとも相溶性に優れ、更に、湿気硬化型ホットメルト接着剤の初期凝集力を高める作用、及びオープンタイムを伸ばす作用を有する。表1から、実施例1〜7の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、相溶性に優れ、オープンタイムがある程度長く、初期凝集力及び耐熱性に優れることが明らかである。
【0081】
これに対し、比較例1〜6の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、(A)ウレタン変性ロジン、又は(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体のいずれかを含まない。比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、相溶性、オープンタイム、初期凝集力、又は耐熱性のいずれかが、実施例の湿気硬化型ホットメルト接着剤より劣る。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例8及び比較例7については、表2に示すようにいずれも、先ず、(A’−2)ロジンエステルと(B−1)EMMA樹脂とを混合し、その後、ウレタンプレポリマーの原料となる(C)ポリオールと(D)MDIを加える。しかし、実施例8では、(C)ポリオール、(D)MDIを加えてウレタンプレポリマーを調製する前に、(D)MDIのみを加えて(A’-2)ロジンエステルと反応させ、予め(A)ウレタン変性ロジンを生成させる。
【0084】
これに対し、比較例7は、(D)MDIのみを加えて、予め(A)ウレタン変性ロジンを生成させることなく、(A’-2)ロジンエステルが存在する状態で、(C)ポリオールと(D)MDIとを同時に加えて、ウレタンプレポリマーを生成させる。その結果、(A’−2)ロジンエステルがウレタンプレポリマーの末端にあるイソシアネート基と反応し、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの生成収率が低下する。湿気硬化型ホットメルト接着剤には、(D)MDIが多く残存することとなり、環境的に好ましくない。更に、比較例7の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、初期凝集力、耐熱性も満足するものではないことが表2から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤及びその製造方法を提供する。本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、建築材料用の外装材及び内装材、フローリング、基材への化粧シートの貼り付け及びプロファイルラッピング等に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、
(A)ウレタン変性ロジン及び
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体
を含み、
ウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体は、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有する、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項3】
上記ウレタンプレポリマーはポリオールとイソシアネート化合物との反応で得られ、
該ポリオールは、芳香族ポリエステルポリオールを含有する請求項1又は2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
【請求項4】
(i)イソシアネート化合物と水酸基を有するロジン誘導体の反応によって(A)ウレタン変性ロジンを得る工程、
(ii)(A)ウレタン変性ロジン、(B)エチレンと(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体、ポリオール及びイソシアネート化合物を混合する工程
を有する湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法。
【請求項5】
(ii)工程において、ポリオールとイソシアネート化合物を混合することでウレタンプレポリマーを得る工程を含む、請求項4に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法。

【公開番号】特開2011−116817(P2011−116817A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273378(P2009−273378)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】