説明

湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤

【課題】初期の凝集力が強く被着材の反発を抑えることができ、メラミン化粧板を用いたフラットラミ加工やポストフォーム加工に有用な湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールを全ポリオールに対して15〜100重量%を含有するポリオール組成物と、多官能イソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期の凝集力が強く被着材の反発を抑えることができ、フラットラミ加工やポストフォーム加工に有用な湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
合板、MDF、パーティクルボード等の木質基材やケイカル板等の無機基材等に化粧シートを貼り合わせることにより製造される化粧材は、壁面パネル、ドア、窓枠、家具等に使用されており、従来は主にエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンが用いられてきた。近年、反応性ホットメルト接着剤は生産性に優れることや、樹脂分が100%のため基材が接着剤中の水分を吸収して反りが発生するおそれがないこと等が評価され、メラミン化粧板のフラットラミ加工においても使用されるようになっている。
【0003】
メラミン化粧板は温度、湿度の影響や保管時の状況などの要因で反りが発生することがあるため、フラットラミ加工としてメラミン化粧板を用いる場合、接着直後に反りによって浮きが発生する場合がある。特にメラミン化粧板を巻き込みながら接着するポストフォーム加工においては浮きが発生しやすくなる。このため、メラミン化粧板の接着後には圧力をかけながら養生したり、養生時間を長くとる必要があった。
【0004】
特許文献1には歪みのある被着体の浮き、剥がれの防止、特に夏場の作業環境(35℃雰囲気下)における被着体の浮き、剥がれの防止及び接着体の切削加工までの養生時間の大幅な短縮が可能となる反応性ホットメルト接着剤が開示されている。この文献において木製薄板のような基材の浮き、剥がれを防止することはできているが、メラミン化粧板のように剛直で反りの力が強い基材には対応できなかった。
【特許文献1】特開2005-314445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、初期の凝集力が強く被着材の反発を抑えることができ、メラミン化粧板を用いたフラットラミ加工やポストフォーム加工に有用な湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールを全ポリオールに対して15〜100重量%を含有するポリオール組成物と、多官能イソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明になる湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、メラミン化粧板等の接着に対して良好な密着性を有しており、十分な初期凝集力を持つため、反りやすいメラミン化粧板に対しても浮きを発生させることがない。したがって、メラミン化粧板を用いたフラットラミ加工やポストフォーム加工に特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、ポリオール組成物と、多官能イソシアネート化合物とを反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有する。ポリオール組成物は、構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールを全ポリオールに対して15〜100重量%を含有する。さらに、分子量が30000以上のポリオールを全ポリオールに対して5〜15重量%含有することが好ましく、この場合は前記構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールは15〜85重量%となる。このような組成により、十分な初期凝集力が得られる。
【0009】
構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールとは、少なくともセバシン酸を含むジカルボン酸をジオールと反応させることによって得られるものである。セバシン酸以外のジカルボン酸として、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ノナメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。ジオールとしては、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
【0010】
分子量が30000以上のポリオールの例として、6−ヘキサノリドなどを開環重合したポリカプロラクトンが挙げられるが、この限りではない。
【0011】
ポリオール組成物は前記2種のポリオールの他、構成単位としてセバシン酸を含まないポリエステルポリオールや、ポリエーテルポリオールなどのポリオール成分を含有してもよい。
【0012】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得るため、前記ポリオール組成物との反応に用いる多価イソシアネート化合物としては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類等が挙げられる。中でも湿気硬化性、安全面等の点から、4,4’−MDIやそのカルボジイミド変性体であるカルボジイミド変性MDIが好ましく用いられる。
【0013】
また、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基とポリエステルポリオールに含まれる水酸基の当量比率NCO/OHは1.5〜3.0であることが望ましい。この範囲内であれば、溶融装置内で長時間加熱溶融状態にあっても顕著な増粘がなく、硬化反応時の二酸化炭素による発泡が少ない。また、未反応の多官能イソシアネート化合物の揮発による作業環境への影響が少ない。
【0014】
本発明の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤に、さらに分子量が30000以上の熱可塑性樹脂を添加することによって初期凝集力を向上させることができる。熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂の添加量は、湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤全体に対して5〜15重量%となるように添加することが好ましい。熱可塑性樹脂はイソシアネート末端ウレタンプレポリマー合成時にポリオールとともに添加してもよいし、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー合成後に添加してもよい。
【0015】
本発明における湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤は、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー以外にも、必要に応じて粘着付与樹脂、触媒、造核剤、着色剤、老化防止剤、熱可塑性樹脂等を添加することができる。粘着付与樹脂としては、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。触媒としては、3級アミン系、錫系の触媒が挙げられる。造核剤としてはパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。なお、低温下における硬化性を向上させるためには、触媒や造核剤の添加が有効である。
【0016】
以下、実施例、比較例に基づき本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0017】
実施例及び比較例に使用したポリエステルポリオールは、表1に記載した性状を有する市販品を用いた。例えば、ポリエステルポリオール1は、ジカルボン酸としてセバシン酸を構成成分とし、ジオールとしてヘキサンジオールを構成成分とし、結晶性であり、分子量が5000であることを示す。
【0018】
【表1】

【0019】
湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤の製造
ポリエステルポリオール1 55重量部、ポリエステルポリオール3 55重量部、ポリエステルオール4 150重量部、ポリエステルポリオール5 50重量部、触媒としてJEFFCAT DMDEE(三井化学ファイン社製、商品名)0.15重量部、ポリカプロラクトン(6-hexanolideの開環重合物、分子量50000)20重量部を攪拌装置、温度制御装置、真空ポンプを取り付けたセパラブルフラスコに入れ、100℃、減圧下で2時間攪拌し、脱水した。次に、多官能イソシアネート化合物としてミリオネートMT(4、4’−MDI、日本ポリウレタン工業社製、商品名)50重量部を加え(NCO/OH=2.7)、100℃、窒素雰囲気下で2時間攪拌して反応させ、常温で固体の実施例1の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を得た。また、表2記載の配合で実施例1と同様に製造を行い、各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤を得た。各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤について、以下の評価を行った。
【0020】
試験評価方法
図1に示すように、120℃で溶融した湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤をパーチクルボード(幅25mm×長さ75mm)に125μmドクターブレードにて端部から25mmの長さ塗布し、メラミン化粧板(幅25mm×長さ75mm×厚0.7mm)を図のように貼り合せた後、線圧5kg/cmで圧締することにより試験体を作製した。作製直後に試験体を30℃雰囲気下に置き、2分後にメラミン化粧板の接着部分が試験台からはみ出すようにセットし、メラミン化粧板の端部から12mmの位置に100gの重りをかけ、90°方向へのクリープ試験を行った。100gの加重に10分以上耐えた試験体は○、10分以内に剥離したものを×と評価した。
【0021】
【表2】

【0022】
表2に示されるように、実施例の各湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤はメラミン化粧板の反りを模したクリープ試験において良好な結果を示した。一方、構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールを含有しない比較例においてはクリープ性能が悪く、メラミン化粧板の反りを抑えることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】クリープ試験方法を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位としてセバシン酸を含むポリエステルポリオールを全ポリオールに対して15〜100重量%を含有するポリオール組成物と、多官能イソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記ポリオール組成物において、さらに、分子量が30000以上のポリオールを全ポリオールに対して5〜15重量%含有することを特徴とする請求項1記載の湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84109(P2010−84109A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257972(P2008−257972)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】