説明

湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤、及び化粧造作部材

【課題】 使用可能な温度幅が広く、低温条件下でも適度なオープンタイムを確保でき、且つ優れた耐久性(特に防湿性)を有しているので、化粧造作部材に用いた場合に反りや膨れをなくすことができる湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤、及びそれを用いた化粧造作部材、フラッシュパネルを提供する。
【解決手段】 ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤であって、前記成分(A)が、多塩基酸と脂環構造含有グリコールを反応させて得られるポリエステルポリオール(a1)、及び一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)を含有し、且つ、前記成分(A)中の前記(a1)と前記(a2)との質量比が、(a1)/(a2)=90/10〜50/50の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤、及び化粧造作部材、フラッシュパネルに関するものである。更に詳しくは、適度なオープンタイム、優れた防湿性や初期クリープなどの性能を発現可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤、及びそれを用いた化粧造作部材、フラッシュパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建材分野等で使用される化粧造作部材やフラッシュパネルに関して、美観や耐久性(特に防湿性)などの品質向上の強い要請があった。
【0003】
一般に、化粧造作部材とは、例えば木材、集成材、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード;中密度繊維板。即ち、木質繊維を接着剤で固めたもの。)、パーチクルボード等を基材として、その基材表面に化粧シートなどの表面に装飾的な色や模様が施されているシート又はフィルムなどを貼り合せて得られる化粧造作部材が広く利用されており、このような化粧造作部材を芯材の両面に貼着しフラッシュパネルとして用いている。
【0004】
軽量化や断熱性の付与などの目的から、芯材は中空構造である場合が多いが、建築部材の内部(特に中空部)と外部環境とでは大きな温度差が生じやすく、特に夏場と冬場には結露が発生する場合が頻発していた。結露が化粧造作部材に吸収された場合、化粧造作部材を構成する部材の間での吸湿度の相違等によって、化粧造作部材の反りや膨れ等の変形が生じる懼れがあった。そこで結露による化粧造作部材の反りや膨れを抑制して、耐久性(特に防湿性)を向上させる目的で、化粧造作部材の内部に耐透湿層を設ける方法が検討されてきた。
【0005】
例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有し、前記ポリオール成分は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオールを含有し、前記ウレタンプレポリマー中の前記シクロオレフィン構造の含有量が10〜30質量%の範囲内である湿気硬化型ホットメルト接着剤が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
前記特許文献1によれば、防湿性能が比較的良好であるので、得られる化粧造作部材及びフラッシュパネルの反りや膨れを抑えることが可能であるという。
【0007】
しかしながら、特許文献1の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤は、低温条件下(10℃程度)でのオープンタイム(被着体の貼り合わせ可能時間)が極端に短いために、前記接着剤の使用可能な温度幅が非常に狭い範囲に限定されてしまい、作業環境条件が限定され作業性に極めて劣るという問題があった。
【0008】
従って、低温条件下(10℃程度)でも適度なオープンタイムと優れた防湿性能、初期クリープなどの性能が発現可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤が要望されているものの、未だ見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−231151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低温条件下(10℃程度)でも適度なオープンタイムを確保でき、且つ優れた防湿性や初期クリープなどの性能が発現可能な湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤、及びそれを用いた化粧造作部材、フラッシュパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有してなり、前記ポリオール成分が、多塩基酸と脂環構造含有グリコールを反応させて得られるポリエステルポリオール、及び特定の一般式で示されるポリエステルポリオールを含有し、且つ、ポリオール成分中の前記2つのポリエステルポリオールの質量比が特定の範囲である湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤が、低温条件下でも適度なオープンタイムを確保でき、且つ優れた防湿性、初期クリープなどの性能を発現でき、且つ美観や耐久性(特に防湿性)などの品質が向上した化粧造作部材及びフラッシュパネルを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
即ち、本発明は、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤であって、前記ポリオール成分(A)が、多塩基酸と脂環構造含有グリコールを反応させて得られるポリエステルポリオール(a1)、及び下記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)を含有し、且つ、前記ポリオール成分(A)中の前記(a1)と前記(a2)との質量比が、(a1)/(a2)=90/10〜50/50の範囲であることを特徴とする湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤に関するものである。
【0013】
【化1】

【0014】
(一般式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつRおよびRの有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
【0015】
また、本発明は、シート又はフィルムである表面部材と基材の間に、前記表面部材と前記基材とを接着する接着剤層を有し、前記接着剤層が前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を硬化し形成してなることを特徴とする化粧造作部材に関するものである。
【0016】
更に、本発明は、芯材の両面に、造作部材を、請求項1〜6の何れか一項に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を塗布し接着してなることを特徴とするフラッシュパネルに関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤は、使用可能な温度幅が広く、低温条件下でも適度なオープンタイムを確保でき、且つ優れた耐久性(特に防湿性)を有しているので、化粧造作部材及びフラッシュパネルに用いた場合に反りや膨れをなくすことができる。また、本発明は、ポリオール成分(A)として、ポリエステルポリオール(a1)、及び前記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)に加え、更にポリカプロラクトンポリオール(a3)を含有させることにより、前記特性に加えて、初期クリープ性(初期接着性)も一層向上させることができる。本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、例えばドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具、窓枠、幅木、床部材等の建築部材の耐透湿層として好適に適用され、本発明の造作部材およびフラッシュパネルは、例えば上記のような建築部材として好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤>
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(以下、「ポリウレタンホットメルト接着剤」と略す)は、後述する特定のポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)との反応物であるウレタンプレポリマーを主成分とし、必要によりその他公知の添加剤等を含有してなるものである。
【0019】
前記ポリウレタンホットメルト接着剤を構成するウレタンプレポリマーは、空気中やそれが塗布される基材中に存在する水分(湿気)と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を分子内に有する化合物であって、常温で固体、ワックス状等の半固体、あるいは粘稠な性状を有するものである。
【0020】
一般に「ウレタンプレポリマー」といわれるものは、比較的低分子量のものが多いが、当業者においては、数万の数平均分子量(Mn)を有するものもウレタンプレポリマーと称されており、本発明においても数万の数平均分子量を有するウレタンプレポリマーを使用することができる。
【0021】
前記ウレタンプレポリマーのMnは、500〜30000の範囲が好ましく、1000〜10000の範囲がより好ましい。ウレタンプレポリマーのMnが前記範囲であれば、流動性や加工性に優れるポリウレタンホットメルト接着剤を得ることができる。
【0022】
本発明で使用するウレタンプレポリマーは、湿気架橋反応性とホットメルト性の2つの特性を共に有するもので、ホットメルト性を有する化合物、例えばエチレン酢ビ系に代表されるホットメルトを入れなくともホットメルト性を有するものである。
【0023】
前記ウレタンプレポリマーが有する湿気架橋反応性は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と水分(湿気)が反応して開始する架橋反応に由来するものであり、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に起因する性質である。
【0024】
一方、前記ウレタンプレポリマーが有するホットメルト性は、選択するウレタンプレポリマーの分子構造に起因する性質であり、常温では固体、ワックス状等の半固体、あるいは粘稠な性状であるが、加熱すると溶融し、流動状態あるいは液状となる性質もしくは物質の総称である。
【0025】
ホットメルト接着剤は、無溶剤型であるとともに、常温では固形あるいは粘稠な性状であるが、熱を加えると溶融して塗布が可能な状態となり、冷却により再度凝集力が出る性状を有すため、例えば、無溶剤型の接着剤やコーティング材などとして有用である。
【0026】
ホットメルト性は軟化点と密接な関係があり、一般に使用するウレタンプレポリマーの軟化点が低いほど作業性は良好となり、逆に、軟化点が高いほど接着強度は良好になる傾向がある。
【0027】
本発明で使用するウレタンプレポリマーの軟化点は、好ましくは40〜120℃の範囲である。前記軟化点がかかる範囲であれば、作業性も良好であり、接着強度に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が得られる。
【0028】
なお、本発明でいう軟化点とは、ウレタンプレポリマーの温度を段階的に上昇させた場合に、熱流動し始めて凝集力を失う温度を指し、具体的には、環球法(JIS K−6301)によって求めた値を指す。
【0029】
本発明で用いるウレタンプレポリマーは、以下に説明するポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを、前記成分(B)の有するイソシアネート基が、前記成分(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0030】
<ポリオール成分(A)>
先ず、本発明で使用するポリエステルポリオール(a1)と特定の一般式で示されるポリエステルポリオール(a2)とを必須に含有するポリオール成分(A)について、以下に説明する。
【0031】
前記ポリオール成分(A)は、多塩基酸と脂環構造含有グリコールを反応させて得られるポリエステルポリオール(a1)、及び下記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)を必須に含有するものである。
【0032】
【化2】

【0033】
(一般式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつRおよびRの有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
【0034】
前記ポリオール成分(A)中の前記(a1)と前記(a2)の含有比は、(a1)/(a2)=90/10〜50/50質量比であり、より好ましくは80/20〜60/40である。前記(a1)と(a2)の含有比がかかる範囲であれば、防湿性能、適度なオープンタイム、初期クリープ性に優れる。前記(a1)/(a2)の質量比が9を超える場合には、粘度が高くなりすぎ、また低温でのオープンタイムが短くなるため作業性に劣る傾向にあり、更に初期クリープ性に劣るため好ましくない。一方、前記(a1)/(a2)の質量比が1未満の場合には、低温でのオープンタイムが短くなり、また防湿性能に劣る傾向にあり、好ましくない。
【0035】
また、本発明において、前記特性に加えて、初期クリープ性(初期接着性)も一層向上させたい場合には、前記ポリエステルポリオール(a1)、前記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)と共に、ポリカプロラクトンポリオール(a3)を併用するとよい。
【0036】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)を併用する場合、ポリオール成分(A)中の前記(a1)と(a2)と(a3)の質量比は、好ましくは(a1)/(a2)/(a3)=50〜90/10〜50/5〜30であり、より好ましくは60〜80/20〜40/10〜25である。
【0037】
前記ウレタンプレポリマーの製造時に使用する前記ポリオール成分(A)に用いるポリエステルポリオール(a1)とは、多塩基酸と脂環構造含有グリコールを反応させて得られる脂環構造を有するポリオールである。
【0038】
前記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸類、あるいは1,2−及び1.3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロプロパンジカルボン酸、1,2−及び1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,2−及び1.3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−及び1,3−及び1,4−シクロヘプタンジカルボン酸、1,2−及び1.3−及び1,4−及び1,5−シクロオクタンジカルボン酸、1,2−及び1,3−及び1,4−及び1,5−及び1,6−シクロノナンジカルボン酸、1,2−及び1,3−及び1,4−及び1,5−及び1,6−及び1,7−シクロデカンジカルボン酸、1,2,3−シクロプロパントリカルボン酸、1,2,3−シクロブタントリカルボン酸、1,2,3−シクロペンタントリカルボン酸、1,2,3−シクロヘプタントリカルボン酸、1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸及びダイマー酸、1,2−及び1,3−及び1,4−シクロヘキサンジ酢酸などの脂環式カルボン酸類、あるいはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防湿性、初期クリープ、幅広い低温条件下でも適度なオープンタイムを確実に得ることができることから、アジピン酸を使用することが好ましい。
【0039】
前記多塩基酸は、酸無水物、メチルエステル化合物などの低級アルキルエステル、酸無水物などの誘導体を使用してもよい。
【0040】
前記脂環構造含有グリコールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロオクタン−1,4−ジオール、2,5−ノルボルナンジオールなどの脂環構造を有するグリコールが挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用してもよい。これらの中でもシクロヘキサン環含有グリコールが、優れた防湿性能、適度なオープンタイムおよび優れた初期クリープ性を得ることができるので好ましく、シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
【0041】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、脂環構造を有さないグリコールを、前記脂環構造含有グリコールと共に用いてもよい。
【0042】
前記脂環構造を有さないグリコールとしては、特に限定されるものではないが、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−メチルプロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,6−ヘキサンジオール、2,3,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジエチル-1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族化合物、あるいはp−キシレンジオール、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,5−ナフタレンジオール等の芳香族化合物が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記ポリエステルポリオール(a1)は、前記多塩基酸と、前記脂環構造含有グリコールとを公知の方法で重縮合反応させて得ることができる。
【0044】
前記重縮合反応としては、公知の方法が何れも採用でき、例えば、前記多塩基酸と前記脂環構造含有グリコールの所定量を反応容器に仕込み、必要に応じて、キシレン等の高沸点の不活性溶剤中で、エステル化触媒、重合禁止剤などを添加し、脱水重縮合させることによりエステル化反応を進行させる方法が挙げられる。前記重縮合反応の反応温度は、好ましくは140〜240℃、より好ましくは170〜230℃であり、反応時間は好ましくは5〜20時間、より好ましくは7〜17時間である。また、反応は、常圧、減圧、加圧の何れの条件で行ってもよい。
【0045】
前記エステル化触媒としては、例えば、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化バナジウム等の金属酸化物、パラトルエンスルホン酸、硫酸、リン酸等のブレンステッド酸、三フッ化ホウ素錯体、四塩化チタン、四塩化スズ等のルイス酸、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ステアリン酸亜鉛、アルキルスズオキサイド、チタンアルコキサイド等の有機金属化合物等が挙げられ、これらは単独または2種以上併用して使用することができる。
【0046】
前記エステル化触媒の使用量は、前記多塩基酸と前記脂環構造含有グリコールとの合計質量に対して、好ましくは0.001〜0.1質量%の範囲であり、より好ましくは0.005〜0.03質量%の範囲である。
【0047】
また、前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、モノメチルエーテルハイドロキノン、トルハイドロキノン、ジ−tert−4−メチルフェノール、トリモノメチルエーテルハイドロキノン、フェノチアジン、tert−ブチルカテコール等を挙げられ、これらは単独または2種以上併用して使用することができる。
【0048】
前記重合禁止剤の使用量は、前記多塩基酸と前記脂環構造含有グリコールとの合計質量に対して、好ましくは0.001〜0.3質量%の範囲であり、より好ましくは0.005〜0.07質量%の範囲である。
【0049】
前記ポリエステルポリオール(a1)の酸価は、好ましくは2mgKOH/g以下であり、より好ましくは0〜1の範囲であり、更に好ましくは0〜0.5の範囲である。
【0050】
尚、前記(a1)の酸価は、JIS K1557−5に準拠して測定した値である。
【0051】
また、前記前記ポリエステルポリオール(a1)の水酸基価は、好ましくは45〜225mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは75〜225の範囲である。
【0052】
尚、前記(a1)の水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定した値である。
【0053】
前記ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量(以下、Mnという。)は、好ましくは500〜2500の範囲であり、より好ましくは500〜1500の範囲である。前記(a1)のMnがかかる範囲であれば、低温条件下における適度なオープンタイムの確保、及び優れた防湿性を得ることができる。
【0054】
尚、前記(a1)のMnは、ポリスチレンを分子量標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により求めた値である。
【0055】
前記ポリエステルポリオール(a1)の含有量は、前記ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは25〜75質量部の範囲であり、より好ましくは35〜65質量部の範囲である。前記(a1)の含有量がかかる範囲であれば、適度な粘度、オープンタイムが得られるため作業性に優れ、また防湿性能、初期クリープ性に優れるため、好ましい。
【0056】
次に、前記ポリエステルポリオール(a2)について、以下に説明する。
【0057】
前記ポリオール成分(A)として、前記ポリエステルポリオール(a1)と共に必須に用いるポリエステルポリオール(a2)は下記一般式(I)で示すポリオールである。
【0058】
【化3】

【0059】
(一般式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつRおよびRの有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
【0060】
一般式(I)中のRは、炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基であり、RおよびRの有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択することができるが、炭素原子数が4以上の偶数である直鎖のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0061】
一般式(I)中のRは、Rとは独立して炭素数が偶数である直鎖のアルキレン基であり、RおよびRの有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択できるが、炭素原子数が10以上の偶数である直鎖のアルキレン基であることが好ましい。
【0062】
およびRが、それぞれ上記の範囲内の炭素原子数を有する直鎖のアルキレン基である長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用する場合、得られるウレタンプレポリマーの結晶性が高まり、湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および防湿性能がより良好となる。
【0063】
一般式(I)中のnは3〜40の整数であり、9〜25の範囲内であることがより好ま
しく、9〜15の範囲内であることがさらに好ましい。nが3以上である場合、湿気硬化
型ホットメルト接着剤の硬化後の機械強度および防湿性能が特に良好である。また、nが40以下である場合、湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度が高くなり過ぎず適度となり、作業性及び加工性が特に良好である。
【0064】
前記ポリエステルポリオール(a2)としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸、1,6−ヘキサンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸、1,4−ブタンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸、1,10−ノナンジオールとコハク酸、1,10−ノナンジオールとアジピン酸、1,8−オクタンジオールとアジピン酸をそれぞれ反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0065】
本発明で用いる前記ポリエステルポリオール(a2)の融点は、好ましくは60〜80℃の範囲、より好ましくは65〜80℃の範囲、更に好ましくは70〜80℃の範囲である。前記(a2)の融点がかかる範囲であれば、得られる湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化後の機械的強度、防湿性など優れた性能を発現することができる。
【0066】
前記ポリエステルポリオール(a2)の合成時のグリコールと多塩基酸の好ましい組合せとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸、1,6−ヘキサンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸、1,4−ブタンジオールと1,12−ドデカンジカルボン酸、1,10−ノナンジオールとコハク酸、1,10−ノナンジオールとアジピン酸、1,8−オクタンジオールとアジピン酸をそれぞれ反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。前記のようなグリコールと多塩基酸の組合せを選択し合成すれば、適性の融点を有するポリエステルポリオール(a2)を得ることが得られ、且つ湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化後の機械的強度、防湿性など優れた性能を発現することができる。
【0067】
上述したような長鎖脂肪族ポリエステルポリオールは、例えば、炭素原子数が偶数である直鎖脂肪族ジオールと炭素原子数が偶数である直鎖脂肪族ジカルボン酸とを縮合反応させることによって製造することができる。直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられ、それらの中でも1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0068】
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等が挙げられ、それらの中でも、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸が好ましい。
【0069】
また、長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを製造する際に使用する直鎖脂肪族ジオールと直鎖脂肪族ジカルボン酸との組み合わせは、前述の一般式(I)で示されるRおよびRに含まれる炭素原子数の合計が12以上、好ましくは12〜20の範囲内で適宜選択することができる。中でも、直鎖脂肪族ジオールとして1,6−ヘキサンジオールを、直鎖脂肪族ジカルボン酸として1,12−ドデカンジカルボン酸又はセバシン酸を反応させて得られる長鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0070】
前記ポリエステルポリオール(a2)のMnは、1000〜10000であることが好ましく、3000〜5000であることがより好ましい。前記Mnがかかる範囲であれば、優れた作業性、加工性、最終接着強さを発現できる。特に前記Mnが3000〜5000である場合には、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の硬化後の機械的強度、防湿性が格段に優れるので、より好ましい。
【0071】
本発明では、ポリオール成分(A)として、前記ポリエステルポリオール(a1)と前記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)とを組合せて用いることで初めて、低温条件下での適度なオープンタイムと優れた防湿性を両立させた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得ることができる。
【0072】
前記ポリオール成分(A)として、前記(a1)あるいは前記(a2)の何れか一方のみ用いる場合では、低温条件下での適度なオープンタイム及び防湿性という2つの性能の両立を実現させることは決してできない。
【0073】
前記ポリオール成分(A)中における、前記(a1)と前記(a2)との質量割合は、低温条件下におけるオープンタイムと防湿性のバランスがより良好となることから、好ましくは(a1)/(a2)=90/10〜50/50質量比であり、より好ましくは80/20〜60/40である。
【0074】
また、前記ポリエステルポリオール(a2)の含有量は、前記ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは5〜45質量部の範囲であり、より好ましくは10〜35質量部の範囲である。前記(a2)の含有量がかかる範囲であれば、適度な粘度、オープンタイムが得られるため作業性に優れ、また防湿性能、初期クリープ性に優れるため、好ましい。
【0075】
次に、前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)について、以下に説明する。
【0076】
また、本発明では、前記のような特性に加えて、特に初期クリープ性(初期接着性)も更に向上させたい場合には、前記ポリオール成分(A)に、前記ポリエステルポリオール(a1)、前記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)と共に、ポリカプロラクトンポリオール(a3)を併用するとよい。
【0077】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)を併用する場合、ポリオール成分(A)中の前記(a1)と(a2)と(a3)の質量比は、好ましくは(a1)/(a2)/(a3)=50〜90/10〜50/5〜30であり、より好ましくは60〜80/20〜45/10〜25である。
【0078】
また、前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)のMnは、好ましくは20000〜200000であり、より好ましくは30000〜100000であり、更に好ましくは50000〜100000である。前記(a3)のMnがかかる範囲であれば、適度なオープンタイム、優れた防湿性に加えて、より優れた初期クリープ性を得ることができる。前記(a3)のMnが20000未満の場合、又は200000を超える場合には、初期クリープ性を向上できないおそれがある。
【0079】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)は、公知の方法に従い得られ、例えば、開始剤及び触媒の存在下、ε−カプロラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0080】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物等の2価の水酸基含有化合物や、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等の3価の水酸基含有化合物、ペンタエリスリトール等の4価の水酸基含有化合物を使用することができる。
【0081】
また、前記触媒としては、例えばテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン系化合物、あるいはオクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、塩化第1スズ、臭化第1スズ等のスズ系化合物等を使用することができ、中でも、スズ系化合物を使用することが、重合転化率を向上する観点から好ましい。
【0082】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)は、具体的には、窒素ガス雰囲気下で、前記開始剤とε−カプロラクトンとを混合し、次いで、前記触媒を前記ε−カプロラクトンの全量に対して0.1〜100ppm程度を混合し、150〜200℃程度で4〜10時間程反応させることによって製造することができる。
【0083】
前記製造方法により得た生成物中には、比較的低分子量のポリカプロラクトンポリオールが混合している場合があるが、かかる場合には、必要に応じて、減圧蒸留などの手法でそれらを除去したものを使用してもよい。
【0084】
また、前記ポリオール成分(A)としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記(a1)〜(a3)以外に、その他のポリオール(a4)を含んでもよい。
【0085】
前記その他のポリオール(a4)としては、例えば、前記(a1)と(a2)以外のポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0086】
<ポリイソシアネート成分(B)>
次に、本発明で使用するポリイソシアネート成分(B)について説明する。
【0087】
前記ポリイソシアネート成分(B)としては、特に限定されず、公知のものが使用でき、例えばポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、あるいはヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート等が挙げられ、これらの中でも、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’−及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0088】
また、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤中における、前記ポリイソシアネート成分(B)の使用割合は、前記接着剤の溶融粘度を適度な範囲に調整する観点から、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは15〜40質量%である。
【0089】
<ウレタンプレポリマー>
次に、本発明で使用するウレタンプレポリマーについて説明する。
【0090】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール成分(A)と、前記ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中若しくは基材表面に存在する水分(湿気)と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を分子末端や分子内に有するものである。
【0091】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート成分(B)の入った反応容器に、前記ポリオール成分(A)として、必須に用いる前記ポリエステルポリオール(a1)と前記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)と、必要に応じて前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)及びその他のポリオール(a4)を別々に又は混合物を滴下、分割、一括などの適当な方法で発熱を制御しながら仕込み加熱し、前記ポリイソシアネート成分(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール成分(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0092】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際に使用するポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)との使用割合としては、前記(B)が有するイソシアネート基と前記(A)が有する水酸基との当量比(以下、[NCO基/OH基]という。)が、好ましくは1.1〜5.0の範囲であり、より好ましくは1.5〜3.0の範囲である。前記[NCO基/OH基]をかかる範囲に調整することにより、適度な溶融粘度を有していて、塗装作業性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤を得ることができる。
【0093】
前記ウレタンプレポリマーの製造は、通常、無溶剤で行うことができるが、有機溶剤中で反応させ製造してもよい。有機溶剤中で反応させる場合には、反応を阻害しない溶剤を選択すべきであり、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶剤が挙げられる。使用した前記有機溶剤は、反応の途中又は反応終了後に減圧加熱等の適当な方法により有機溶剤を除去・回収する。
【0094】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を使用することができる。ウレタン化触媒は、前記反応の任意の段階で、適宜加えることができる。
【0095】
前記ウレタン化触媒としては、特に限定せず、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどの含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛及びオクチル酸錫などの金属塩;ジブチル錫ジラウレートなどの有機金属化合物が挙げられる。
【0096】
前記ウレタンプレポリマーのMnとしては、低温条件下における適度なオープンタイムと防湿性とを両立させるうえで、好ましくは500〜30000の範囲であり、より好ましくは1000〜10000の範囲である。
【0097】
また、前記ウレタンプレポリマーの120℃での溶融粘度としては、低温条件下における適度なオープンタイムと防湿性とを両立するうえで、好ましくは1000〜50000mPa・sの範囲であり、より好ましくは3000〜30000mPa・sの範囲である。なお、前記120℃における溶融粘度は、B型粘度計で測定した値を示す。
【0098】
また、前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有率(即ち、NCO%)としては、低温条件下における適度なオープンタイムと防湿性能とを両立するうえで、好ましくは1〜10%であり、より好ましくは2〜8%である。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、逆滴定法により測定した値を示す。
【0099】
なお、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤に含有される前記ウレタンプレポリマーは、湿気架橋反応性およびホットメルト性の2つの特性を共に有する。ウレタンプレポリマーが有する湿気架橋反応性は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と湿気(水)とが反応して開始する架橋反応に由来するものであり、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に起因する性質である。
【0100】
一方、ウレタンプレポリマーが有するホットメルト性は、ウレタンプレポリマーの分子構造に起因する性質であり、常温では固体であるが加熱によって溶融して塗布可能となるため、溶融状態で塗布し、冷えると固化し接着性を発現することができる性質である。
【0101】
ホットメルトとは、常温では固体あるいは粘稠な性状であるが、加熱すると溶融し、流動状態あるいは液状となる性質もしくは物質の総称であり、例えばエチレン酢酸ビニル系に代表されるホットメルトなどが一般に知られている。ホットメルトは、無溶剤型であるとともに、常温では固体あるいは粘稠な性状であるが、熱を加えると溶融して塗布が可能な状態となり、冷却により再度凝集力が出る性状を有すため、無溶剤型の接着剤として有用である。
【0102】
ホットメルト性は軟化点と密接な関係があり、一般に、ウレタンプレポリマーの軟化点が低いほど作業性は良好となり、逆に、軟化点が高いほど最終接着強さは良好になる傾向がある。
【0103】
前記ウレタンプレポリマーの軟化点は、好ましくは40〜120℃の範囲であり、より好ましくは60〜100℃の範囲である。前記軟化点がかかる範囲であれば、優れた最終接着強さと作業性を有する湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を得ることができる。
【0104】
なお、本発明でいう軟化点とは、ウレタンプレポリマーの温度を段階的に上昇させた場合に、熱流動し始め凝集力を失う温度を云い、JIS K 5902に準拠した環球法により求められた値である。
【0105】
前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤中の前記ウレタンプレポリマーの含有量は、好ましくは50〜100質量%の範囲であり、より好ましくは70〜99質量%の範囲である。
【0106】
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤は、前記ウレタンプレポリマーのみから構成されてもよいが、必要に応じて、公知の添加剤や熱可塑性樹脂等を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。
【0107】
前記添加剤としては、特に限定しないが、例えば、粘着付与剤、硬化触媒、可塑剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックスなどが挙げられる。
【0108】
前記粘着付与剤としては、例えばロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂や、石油樹脂としてC5系の脂肪族樹脂、C9系の芳香族樹脂、およびC5系とC9系の共重合樹脂等を使用することができる。
【0109】
前記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、トリオクチルホスフェート、エポキシ系可塑剤、トルエン−スルホアミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油等を使用することができる。メチルアシッドホスフェート(AP−1)、アクリル系表面調整剤(BYK−361N)も使用できる。
【0110】
前記安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等を使用することができる。
【0111】
前記充填材としては、例えばケイ酸誘導体、タルク、金属粉、炭酸カルシウム、クレー、カーボンブラック等を使用することができる。
【0112】
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤は、低温条件下においても適度なオープンタイムを有することから、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の使用可能な温度域が広く、また、防湿性能も具備することから、化粧造作部材及びフラッシュパネルの反りや膨れを抑えることが可能である。
【0113】
また、本発明は、ポリオールとして、特定のポリカプロラクトンポリオールを更に含有することにより、低温条件下における適度なオープンタイム及び防湿性能に加え、更に初期クリープ性にも優れる湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を提供することができる。
【0114】
以上のように、従来のホットメルト接着剤の場合では、防湿性に極めて劣るため、住宅やオフィスなどの2部屋の温度差や湿度差により、ドア板の反りや経時での表面平滑性の損失などの問題があった。
反応性ホットメルト接着剤は、水分の吸収・拡散がないために寸法安定性に優れていることが知られており、中でも、分子内に脂環構造を有する反応性ホットメルト接着剤は、比較的良好な防湿性が得られることが知られていた。しかしながら、低温条件下では可使時間が極端に短く作業性に劣り、且つ初期クリープ性が低く、実用上の問題があった。
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤は、低温条件下(10℃程度)でも適度なオープンタイムを確保でき、且つ優れた防湿性や初期クリープなどの特性を発現でき、例えば、化粧造作部材、フラッシュパネルなどの造作部材を得ることができる。
【0115】
<化粧造作部材、及びフラッシュパネル>
次に、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を使用した態様である、化粧造作部材、及びフラッシュパネルについて、以下に説明する。
【0116】
図1は、本発明に係る化粧造作部材の構成の例を示す断面図である。
図1の化粧造作部材1は、基材11と、シート状又はフィルム状の表面部材14、15とが、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を硬化して形成された接着剤層12、13で貼り合わされることにより形成されている。
尚、図1では、基材の両面に表面部材が形成される場合について示しているが、本発明では、表面部材が基材の片面のみに形成されても構わない。
【0117】
前記化粧造作部材としては、例えば、ドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具、階段の踏板、ドア枠、窓枠、敷居、手摺りなどの種々の造作部材を挙げることができる。
【0118】
前記基材としては、例えば、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材や、アルミ、鉄等の金属基材、プラスチック基材、紙等を使用することができる。また、前記基材は、溝部、R部、逆R部等の複雑な形状の部位を有していてもよい。
【0119】
前記シート又はフィルムの表面部材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなるシート又はフィルムや、紙、突板、金属箔等を使用することができる。なかでも、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートからなるシートやフィルム及び紙が好ましい。
【0120】
前記表面部材は、無地又は多彩な色、模様等の装飾を施された、一般に化粧紙、化粧板用原紙、化粧シートなどと呼称されているようなものであってもよい。また、表面部材の裏面、即ち基材側となる面に、樹脂等によるプライマー処理が施されていてもよい。
【0121】
前記基材と前記表面部材とを貼り合わせて造作部材を形成する方法としては、例えば、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を60〜150℃の範囲内に加熱することで溶融させ、ロールコーター、スプレコーター、T−ダイコーター、ナイフコーター等を用いて前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を基材上に塗布し、塗布面に表面部材を貼り合わせる方法や、上記と同様に溶融させた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を、ロールコーター等を用いて表面部材の上に塗布し、その塗布面に基材を貼り合わせて、ロールプレス、フラットプレス、ベルトプレス等の方法で基材の形状に合わせて適宜、圧着させる方法等が挙げられる。
【0122】
また、本発明の造作部材が使用される態様としては、例えば、フラッシュパネルを製造する際の部材として使用される態様が挙げられる。本発明のフラッシュパネルは、ドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具等に使用することができる。
【0123】
図2は、本発明に係るフラッシュパネルの構成の例を示す断面図である。
フラッシュパネル200においては、接着剤層12、13を介して基材11の両面に表面部材14、15が貼り合わされてなる造作部材1と、接着剤層22、23を介して基材21の両面にフィルム状又はシート状の表面部材24、25が貼り合わされてなる造作部材2とが、芯材3の両面に接着されている。
尚、図2では、芯材の両面に造作部材が形成される場合について示しているが、本発明の造作部材が芯材の片面のみに形成されても構わない。
【0124】
前記芯材としては、例えば、LVL(単板積層材)、合板、OSB(配向性ストランドボ−ド)、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質材、アルミニウム、マグネシウム、鋼板、SUS等の金属材、紙材等を使用することができる。中でも、フラッシュパネルの軽量化や断熱性の向上が可能な点で、芯材はハニカム構造を有することが特に好ましい。
【0125】
前記芯材と前記造作部材とを接着してフラッシュパネルを形成する方法としては、例えば、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を、例えばロールコーター、ナイフコーター、バーコーター等で化粧造作材に塗布し、例えばフラットプレス、ロールプレス、ベルトプレス等の方法により芯材と造作部材とを接着する方法等が挙げられる。
【0126】
図3は、造作部材の常態接着強さの評価に用いた試験片の作製方法について説明する図である。
基材31としてのミディアム デンシティ ファイバーボード(MDF:縦300mm、横300mm、厚み2.4mm)の片表面に、表面部材(図示せず)としてのオレフィン化粧シートが貼り合わされた造作部材を用意し、該造作部材のオレフィン化粧シートが貼り合わされていない方の面に、120℃で加熱溶融させた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を、ロールコーター(速度5m/分)を用いて、塗布量が120g/m2となるように塗布した。
次いで、上記で形成した湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の塗布面32に、基材33として、単板積層材(LVL(Laminated Veneer Lumber)合板:縦300mm、横30mm、厚み25mm)10本を、図3に示すように載置した。
その後、上記塗布面32の上に載置されたLVL合板上に、上記と同様の方法で湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を塗布した上記と同様の造作部材を載置し、載置から1分後に、2kgf/cm2で30秒間、平面プレス器を用い圧締して、1辺50mmの立方体を切り出したものを、常態接着強さを評価するための試験片を得た。
図3に示す試験片を用いて、常態接着強さの評価をJAS(昭和44年10月施行)の平面引張試験方法に準拠して行なった。
具体的には、上記で作製した試験片を、オレフィン化粧シートからなる面が上になるように固定した後、その面に、LVL合板に達する深さの正方形の溝(1辺が20mm)を作製した。次に、該正方形の表面を♯120のサンドペーパーを用いて研磨した後、該表面に接着剤(商標;アロンアルファ、プロ用No.3、東亜合成株式会社製)を塗布し、同形の金属部材を接着した。
接着した該金属部材を上方に引き上げたときの造作部材とLVL合板との接着強さを測定した。評価は、10個の試験片に対して行ない、その平均値(単位:kg/cm2)を算出した。
【0127】
図4は、フラッシュパネルの作製に用いた枠材についての説明図であり、図5は、フラッシュパネルの反り評価の方法についての説明図である。
ミディアム デンシティ ファイバーボード(MDF:縦300mm、横300mm、厚み2.4mm)の片表面にオレフィン化粧シートが貼り合わされた造作部材51を用意し、該造作部材のオレフィン化粧シートの貼り合わされていない方の面に、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を、ロールコーター(速度5m/分)を用いて、塗布量が120g/m2となるように塗布した。
次いで、上記で形成した湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の塗布面に、図4に示す枠材400を載置し、該枠材400上に、上記と同様に湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布した上記と同様の造作部材51を載置した。
載置から1分後に、平面プレス器を用いて2kgf/cm2で30秒間、圧締することによってフラッシュパネル500を得た。
上記で作製したフラッシュパネルにつき、温度40℃および相対湿度30%の雰囲気下での養生を8時間、ならびに、温度40℃および相対湿度90%の雰囲気下での養生を16時間行なうことを1サイクルとし、これを5サイクル行なった後の、フラッシュパネルの反りを測定した。
フラッシュパネルの反りは、図5に示すフラッシュパネルの長方向の反り量Hが、養生前のフラッシュパネルを基準としたときに、5mm未満である場合を「○」と評価し、5mm以上である場合を「×」と評価した。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例及び比較例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0129】
〔溶融粘度の測定方法〕
得られた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤をコーンプレート粘度計(ICI株式会社製、コーン直径;19.5mm、コーン角度;2.0°)を用いて、測定温度120℃で測定した。
【0130】
〔10℃でのオープンタイムの評価方法〕
得られた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融状態にし、基材であるポリプロピレンシート上に50μmの厚みとなるように塗布した。次いで、前記で塗布した接着剤層の上に、表面部材としてクラフト紙を載置し、直ちに10℃の恒温槽へ放置した。恒温層内へ放置した時点を基点(T)とし、前記クラフト紙が前記接着剤層に接着しなくなるまでの時間(即ち、固化時間)(T、単位:秒)を測定して、「10℃でのオープンタイム」とした。
低温条件(10℃)下でのオープンタイムの評価基準。
○:100〜300秒の場合、固化時間が適度である。
×:100秒未満の場合、固化時間が短すぎて、貼り合せ作業が困難である。又は、300秒を超える場合、硬化時間が遅すぎて、充分な貼り合せができない。
【0131】
〔防湿性の評価方法〕
防湿性を透湿度で評価した。
表面温度100℃に調整したガラス板上に、ポリエチレンテレフタレートからなる離型フィルムを載置した。該離型フィルム上に、120℃で加熱溶融状態にした湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を、膜厚100μmになるようにアプリケーターを用いて塗布し、塗布物とした。
該塗布物を、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽内で1週間放置した後、該湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤から形成されたフィルムを該離型フィルムから剥離し、測定用試料とした。
得られた測定用試料の透湿度を、透湿度カップ法(JIS Z 0208 B法)に基づいて測定した(単位;g/m・24hr)。
防湿性の評価基準。
○:透湿度が35g/m・24hr未満の場合
×:透湿度が35g/m・24hr以上の場合
【0132】
〔初期クリープ性の評価方法〕
得られた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融状態にし、該溶融した湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤をポリプロピレンシート上に50μmの厚みとなるように塗布し、次いで、塗布した該接着剤層の上にMDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)を載置し、貼り合わせた。
貼り合わせから3分後に35℃の雰囲気下で、該MDFに対し、75gの荷重を90°方向にかけて、15分後の該MDFの剥離長さを測定した。
初期クリープ性の評価基準。
○:剥離長さが5mm以下の場合。
×:剥離長さが5mmを超える場合。
【0133】
〔合成例1〕<ポリエステルポリオール(a1−1)の合成>
反応容器に、脂環構造含有グリコールとして1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMと略す。)を565質量部、多塩基酸としてアジピン酸(以下、AAと略す。)を435質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.05質量部添加し、内温120℃で溶融させた。
次いで、撹拌しながら3時間にて220℃まで昇温し、220℃で4時間保持した後、100℃に冷却することにより、ポリエステルポリオール(a1−1)(数平均分子量1000、酸価0.8、水酸基価111.5)を得た。
なお、前記ポリエステルポリオール(a1−1)は、第1表において「CHDM/AA#1000」と略記する。
【0134】
〔合成例2〕<ポリエステルポリオール(a1−2)の合成>
反応容器に、CHDMを610質量部、AAを390質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.05質量部添加し、内温120℃で溶融させた。
次いで、撹拌しながら3時間にて220℃まで昇温し、220℃で4時間保持した後、100℃に冷却することにより、ポリエステルポリオール(a1−2)(Mn600、酸価0.7、水酸基価187.1)を得た。
なお、前記ポリエステルポリオール(a1−2)は、第1表において「CHDM/AA#600」と略記する。
【0135】
〔合成例3〕<ポリエステルポリオール(a2−1)の合成>
反応容器に、1,12−ドデカン二酸(以下、DDAと略す。)を600質量部、1,6−ヘキサンジオール(以下、HGと略す。)を400質量部、及びエステル化触媒としてテトライソプロポキシチタンを0.05質量部添加し、内温120℃で溶融させた。
次いで、撹拌しながら3時間にて220℃まで昇温し、220℃で4時間保持した後、100℃に冷却することにより、ポリエステルポリオール(a2−1)(Mn3500、酸価0.4、水酸基価31.6、融点72℃)を得た。
なお、前記ポリエステルポリオール(a2−1)は、第1表において「HG/DDA」と略記する。
【0136】
〔実施例1〕
反応容器に、合成例1で得た脂環構造含有のポリエステルポリオール(a1−1)47.5質量部、及び合成例3で得たポリエステルポリオール(a2−1)14.0質量部を仕込み攪拌し混合して、内温100℃で減圧条件にて加熱することにより、反応容器内の生成物全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水を継続した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃に溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン株式会社製、以下MDIと略す。)を19質量部加えて、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;14000mPa・s、NCO%;2.5%)を得、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(実1)を得た。
【0137】
〔実施例2〕
反応容器に、合成例1で得た脂環構造含有のポリエステルポリオール(a1−1)47.5質量部、合成例3で得たポリエステルポリオール(a2−1)14質量部、及びポリカプロラクトンポリオール(パーストープ株式会社製、分子量80000、第1表において「PCL#80000」と略す。)14質量部を仕込み、混合し、100℃で減圧加熱することにより、反応容器内の生成物全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃に溶融したMDIを25.5質量部加えて、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;24000mPa・s、NCO%;4.1%)を得、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(実2)を得た。
【0138】
〔実施例3〕
反応容器に、合成例2で得た脂環構造含有ポリオール(a1−2)36質量部、合成例3で得られたポリエステルポリオール(a2−1)14質量部、及びポリカプロラクトンポリオール(パーストープ社製、分子量80000)14質量部を仕込み、混合し、100℃で減圧加熱することにより、反応容器内の生成物全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃で溶融したMDIを33.8質量部加えて、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;20000mPa・s、NCO%;5.8%)を得、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(実3)を得た。
【0139】
〔比較例1〕
反応容器に、エタナコール UC−100(商品名、宇部興産株式会社製、シクロヘキサンジメタノールからなるポリカーボネートジオール、Mn1000、第1表において「CHDM−PC」と略す。)7.1質量部と、エタナコール UM−90(商品名、宇部興産株式会社製、シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールからなるポリカーボネートジオール(シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール=1/1の質量比)、Mn900、第1表において「CHDM/HG(1/1)−PC」と略す。)49.6質量部、及び合成例3で得たポリエステルポリオール(a2−1)14.2質量部を仕込み攪拌混合し、内温100℃で減圧条件にて加熱することにより、反応容器内の生成物全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水を継続した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃に溶融したMDIを25.6質量部加えて、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;11000mPa・s、NCO%;5.0%)を得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(比1)を得た。
【0140】
〔比較例2〕
反応容器に、エタナコールUC−100を7.1質量部と、エタナコールUM−90を 36.5質量部と、合成例3で得られたポリエステルポリオール(a2−1)14質量部と、ポリカプロラクトンポリオール(パーストープ社製、分子量80000)14質量部とを仕込み、混合し、100℃で減圧加熱することにより、反応容器内の全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃で溶融したMDIを26質量部加え、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;21000mPa・s、NCO%;4.5%)を得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(比2)を得た。
【0141】
〔比較例3〕
反応容器に、合成例1で得られた脂環構造含有ポリオール(a1−1)20質量部、合成例3で得られたポリエステルポリオール(a2−1)40質量部、及びポリカプロラクトンポリオール(パーストープ社製、分子量80000)14質量部とを仕込み、混合し、100℃で減圧加熱することにより、反応容器内の全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃で溶融したMDIを20質量部加え、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;10000mPa・s、NCO%;4.2%)を得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(比3)を得た。
【0142】
〔比較例4〕
反応容器に、合成例1で得られた脂環構造含有ポリオール(a1−1)60質量部、及びポリカプロラクトンポリオール(パーストープ社製、分子量80000)14質量部とを仕込み、混合し、100℃で減圧加熱することにより、反応容器内の全量に対する水分が0.05質量%となるまで脱水した。
次いで、内温70℃に冷却後、70℃で溶融したMDIを30質量部加え、イソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で3時間反応させることによってウレタンプレポリマー(120℃における溶融粘度;61000mPa・s、NCO%;4.6%)を得、湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤(比4)を得た。
【0143】

【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤は、使用可能温度域が広く、低温条件下でも適度なオープンタイムを確保でき、且つ優れた防湿性能を有しているので、化粧造作部材及びフラッシュパネルの反りや膨れを抑えることができる。また、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤で、ポリオール成分として、特定のポリカプロラクトンポリオールを更に含有させることにより、前記特性に加え、初期クリープ性(初期接着性)も一層向上させることができる。本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、例えばドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具、窓枠、幅木、床部材等の建築部材の耐透湿層として好適に適用され、本発明の造作部材およびフラッシュパネルは、例えば上記のような建築部材として好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は、本発明に係る化粧造作部材の構成の例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係るフラッシュパネルの構成の例を示す断面図である。
【図3】図3は、造作部材の常態接着強さの評価に用いた試験片の作製方法の説明図である。
【図4】図4は、フラッシュパネルの作製に用いた枠材の説明図である。
【図5】図5は、フラッシュパネルの反り評価についての説明図である。
【符号の説明】
【0146】
1・・・・化粧造作部材
11・・・基材
12・・・接着剤層
13・・・接着剤層
14・・・表面部材
15・・・表面部材
200・・フラッシュパネル
2・・・・造作部材
21・・・基材
22・・・接着剤層
23・・・接着剤層
24・・・表面部材
25・・・表面部材
3・・・・芯材
31・・・基材(ミディアム デンシティ ファイバーボード(MDF))
32・・・湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤の塗布面
33・・・基材(単板積層材(LVL(Laminated Veneer Lumber)合板)
400・・枠材
51・・・造作部材
500・・フラッシュパネル
H・・・・フラッシュパネルの長方向の反り量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤であって、
前記ポリオール成分(A)が、多塩基酸と脂環構造含有グリコールを反応させて得られるポリエステルポリオール(a1)、及び下記一般式(I)で示されるポリエステルポリオール(a2)を含有し、且つ、
前記ポリオール成分(A)中の前記(a1)と前記(a2)との質量比が、(a1)/(a2)=90/10〜50/50の範囲であることを特徴とする湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤。

(一般式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素原子数が偶数の直鎖のアルキレン基を示し、かつRおよびRの有する炭素原子数の合計が12以上である。nは3〜40の整数を示す。)
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(a1)が、多塩基酸とシクロヘキサン環含有グリコール又はその誘導体を反応させて得られるものである請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量が、500〜2500の範囲である請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール(a2)の融点が、60〜80℃の範囲である請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項5】
更に、前記ポリオール成分(A)に、ポリカプロラクトンポリオール(a3)を含有する請求項1に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記ポリオール成分(A)中の前記(a1)と(a2)と(a3)の質量比が、(a1)/(a2)/(a3)=50〜90/10〜50/5〜30である請求項5に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤。
【請求項7】
シート又はフィルムである表面部材と基材の間に、前記表面部材と前記基材とを接着する接着剤層を有し、前記接着剤層が請求項1〜6の何れか一項に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を硬化し形成してなることを特徴とする化粧造作部材。
【請求項8】
前記基材が木質基材であり、且つ、前記表面部材がフィルム、シート、及び紙からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の化粧造作部材。
【請求項9】
芯材の両面に、造作部材を、請求項1〜6の何れか一項に記載の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を塗布し接着してなることを特徴とするフラッシュパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87150(P2013−87150A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226806(P2011−226806)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】