説明

湿気硬化性樹脂組成物

【課題】貯蔵安定性に優れ、高温多湿下においても十分な可使時間を確保することができる湿気硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】ウレタンプレポリマーと、下記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物とを含有し、
前記ウレタンプレポリマーが、分子内の全てのイソシアネート基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有し、
前記ケチミン化合物を、(前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基)/(前記ケチミン化合物中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜2となるように含有する、湿気硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンプレポリマーとケチミン化合物とを含有する湿気硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1液型または2液型のポリウレタン系硬化性樹脂組成物は数多く知られている。
1液型としては、例えば、ウレタンプレポリマーと、ケチミン、オキサゾリジンなどの潜在性硬化剤とを含有する組成物が挙げられる。この組成物は、大気中の水分により潜在性硬化剤が加水分解して再生されたアミンがウレタンプレポリマーと反応して硬化するものであり無発泡性であるが、貯蔵安定性が悪く、また、適度な可使時間が確保できない場合がある問題があった。
同様に、ウレタンプレポリマーと、アミン系、酸または酸無水物系などの硬化剤とを使用時に混合する2液型の組成物においても、高温多湿下では可使時間が十分でないという問題があった。
【0003】
これらの問題に対し、本出願人により、特定のウレタンプレポリマーを用いる種々の樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
具体的には、特許文献1には、「(A)分子内の全てのイソシアネート(NCO)基に第二級炭素または第三級炭素が結合した構造のイソシアネート化合物と、(B)ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有し、該ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素または環員炭素が結合した構造のケチミンと、(C)ウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウムとを含有する一液湿気硬化性樹脂組成物。」が記載されている。
また、特許文献2には、「2級または3級脂肪族炭素原子に結合したイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの該イソシアネート基を、窒素原子のα位炭素原子に置換基を有する2級アミンでブロックしてなるブロックウレタンと、アミン系潜在性硬化剤とを含有する1液硬化性樹脂組成物。」が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−81307号公報
【特許文献2】特開2003−48949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、貯蔵安定性に優れ、高温多湿下においても十分な可使時間を確保することができる湿気硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有するウレタンプレポリマーと、特定のケチミン化合物とを特定量含有する組成物が、貯蔵安定性に優れ、高温多湿下においても十分な可使時間を確保することができる湿気硬化性樹脂組成物になることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(i)〜(vii)に示す湿気硬化性樹脂組成物を提供する。
【0007】
(i)ウレタンプレポリマー(A)と、下記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(B)とを含有し、
上記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内の全てのイソシアネート基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有し、
上記ケチミン化合物(B)を、(上記ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基)/(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜2となるように含有する、湿気硬化性樹脂組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよい。
【0010】
(ii)ウレタンプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(C)と、上記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(B)とを含有し、
上記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内の全てのイソシアネート基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有し、
上記エポキシ樹脂(C)を、上記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して0.5〜100質量部含有し、
上記ケチミン化合物(B)を、(上記ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基および上記エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基の合計官能基数)/(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜4となるように含有する、湿気硬化性樹脂組成物。
【0011】
(iii)更に、下記式(2)で表されるケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(D)を、上記ケチミン化合物(B)と併せて上記当量比で含有する、上記(i)または(ii)に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、R5およびR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基または水素原子を表し、R6は、メチル基またはエチル基を表し、R8は炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R8は、R5またはR6と結合して環を形成することができる。また、R8がR6と結合して環を形成し、更に、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、該環に含まれる炭素原子が、R6またはR8と二重結合で結合する場合、R7は存在しない。
【0014】
(iv)上記式(1)で表されるケトンが、下記式(3)で表されるケトンである、上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【0015】
【化3】

【0016】
式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよく、複数のR3およびR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0017】
(v)上記アミンが、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンである、上記(i)〜(iv)のいずれかに記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【0018】
(vi)上記ポリアミンが、直鎖状のポリアルキレンポリアミンである、上記(v)に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【0019】
(vii)上記ポリアミンが、炭素数3〜6の直鎖状のアルキレンの両末端にアミノ基を有する、上記(vi)に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、高温多湿下においても十分な可使時間を確保することができる湿気硬化性樹脂組成物を提供することができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の湿気硬化性樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、特定の構造を有するウレタンプレポリマー(A)と、上記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(B)とを特定量含有する湿気硬化性樹脂組成物であり、更に、接着性を向上させる観点からエポキシ樹脂(C)を特定量含有しているのが好ましく、可使時間を調整する観点から上記式(2)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(D)をケチミン化合物(B)とともに含有しているのが好ましい。
次に、本発明の湿気硬化性樹脂組成物に用いるウレタンプレポリマー(A)、ケチミン化合物(B)および(D)ならびにエポキシ樹脂(C)について詳述する。
【0022】
<ウレタンプレポリマー(A)>
本発明の組成物に用いられるウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物(即ち、水酸(OH)基に対して過剰のイソシアネート(NCO)基)を反応させて得られる反応生成物のうち、下記式(4)で表されるように、分子内の全てのNCO基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有するものである。
このような構造を有することにより、得られる本発明の湿気硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となり、高温多湿下においても十分な可使時間を確保することができ、また、硬化後の耐熱性および耐水性も良好となる。
【0023】
【化4】

【0024】
上記式(4)中、pは2以上の整数を表し、R9、R10およびR11は、それぞれ独立に、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいてもよい有機基であり、R10は水素原子であってもよい。また、複数のR9およびR10は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。更に、R10が水素原子である場合においては、R9とR10の一部とが結合して環を形成していてもよい。
【0025】
ここで、上記有機基としては、具体的には、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基などの炭化水素基;O、NおよびSからなる群より選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ有する基(例えば、エーテル、カルボニル、アミド、尿素基(カルバミド基)、ウレタン結合など)を含む有機基等が挙げられる。これらのうち、R5およびR6で表される有機基は、アルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基であることが好ましい。
【0026】
このようなウレタンプレポリマー(A)を生成するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
一方、このようなウレタンプレポリマー(A)を生成するポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0028】
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;ソルビトールなどの糖類;等が挙げられる。
【0029】
次に、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとしては、通常、上記低分子多価アルコール類から導かれるものが用いられるが、本発明においては、更に以下に示す芳香族ジオール類、アミン類、アルカノールアミン類から導かれるものも好適に用いることができる。
ここで、芳香族ジオール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン(m−ジヒドロキシベンゼン)、キシリレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、スチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール;下記に示すようなビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のビスフェノール骨格を有するもの;等が挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
また、アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
【0032】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類として例示した化合物から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0033】
同様に、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類のいずれかと、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
ここで、上記縮合系ポリエステルポリオールを形成する多塩基性カルボン酸としては、具体的には、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、他の低分子カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコール(もしくはプロピレングリコール)との反応生成物などのヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
また、上記ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを適当な重合開始剤で開環重合させたもので両末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0034】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、以上で例示した種々のポリオール化合物を1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の組成物に用いられるウレタンプレポリマー(A)は、上述したように、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物を反応させることによって得られるもののうち、分子内の全てのNCO基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有するものであり、その具体例としては、上記で例示した各種ポリオール化合物と、各種ポリイソシアネート化合物との組み合わせによるものが挙げられる。
【0037】
本発明においては、ウレタンプレポリマー(A)の製法は特に限定されず、その具体例としては、反応温度を30〜120℃、好ましくは50〜100℃程度とし、常圧下でポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを得る方法等が挙げられる。また、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物のようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0038】
また、本発明においては、ウレタンプレポリマー(A)の製造において、ポリオール化合物のOH基に対するポリイソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)は、1.2〜5.0であるのが好ましく、1.5〜3.0であるのがより好ましい。NCO/OHがこの範囲にあると、ポリイソシアネート化合物の残存による発泡や、分子鎖延長に起因するウレタンプレポリマーの粘度増加がなく、本発明の組成物の硬化後の物性が良好となる。
【0039】
本発明においては、このようなウレタンプレポリマー(A)を用いることにより、得られる湿気硬化性樹脂組成物の粘度が適当(23℃下で5〜100Pa・s)となるため作業性がより良好となる。
【0040】
<ケチミン化合物(B)>
本発明の組成物に用いられるケチミン化合物(B)は、下記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物である。
このような特定のケトンを用いて得られるケチミン化合物(B)を含有する湿気硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、高温多湿下においても十分な可使時間を確保することができる。これは、カルボニル炭素のいずれの結合手にも炭素数2〜6のアルキル基を有し、かつ、カルボニル炭素の少なくとも一方のβ位の炭素が分岐炭素であることにより、分岐炭素由来の嵩高い置換基の可動範囲をある程度確保するとともに、該置換基の立体障害の効果により上記ウレタンプレポリマー(A)のNCO基がケチミン化合物(B)の窒素原子に接近し難くなるためであると考えられる。また、本発明においては、ケチミン化合物(B)とともに併用する上記ウレタンプレポリマー(A)が上述した特定構造を有していることにより、上記ウレタンプレポリマー(A)のNCO基がケチミン化合物(B)の窒素原子に更に接近し難くなるためであると考えられる。
【0041】
【化6】

【0042】
式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよい。
【0043】
ここで、上記式(1)中、R1の置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソプロピル基、1−メチルプロピル基等が挙げられる。
また、上記式(1)中、R2の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。
また、上記式(1)中、R3およびR4の炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基が挙げられる。
【0044】
上記式(1)で表されるケトンとしては、具体的には、例えば、下記式(5)で表されるエチルイソブチルケトン、下記式(6)で表されるイソブチルプロピルケトン、下記式(7)で表されるエチル(2−メチルブチル)ケトン等が挙げられる。
【0045】
【化7】

【0046】
本発明においては、上記式(1)で表されるケトンが下記式(3)で表されるケトンであるのが、該ケトンから得られるケチミン化合物を含有する湿気硬化性樹脂組成物の作業性および貯蔵安定性がより良好となる理由から好ましい。これは、上記ウレタンプレポリマー(A)のNCO基が、下記式(3)で表されるケトンから得られるケチミン化合物の窒素原子に更に接近し難くなるためであると考えられる。
【0047】
【化8】

【0048】
式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよく、複数のR3およびR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ここで、上記式(3)中のR1、R2、R3およびR4は、それぞれ、上記式(1)中において説明したR1、R2、R3およびR4と同様である。
【0049】
上記式(3)で表されるケトンとしては、具体的には、例えば、下記式(8)で表されるジイソブチルケトン等が挙げられる。
【0050】
【化9】

【0051】
一方、本発明においては、上記ケチミン化合物(B)の合成に用いられるアミンとしては、広く公知のものを使用することができ、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンであるのが好ましい。
【0052】
ポリアミンとしては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(例えば、デュポン・ジャパン社製のMPMD等)のような脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン(MXDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタンのような芳香族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン;3−ブトキシイソプロピルアミンのような主鎖にエーテル結合を有するモノアミン;サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(例えば、三菱ガス化学社製の1,3BAC等)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミンのような脂環式ポリアミン;ノルボルナンジアミン(例えば、三井化学社製のNBDA等)のようなノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、ポリプロピレングリコール(PPG)を骨格に持つサンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
また、本発明においては、ポリアミンのうち、硬化物に柔軟性を付与できるという観点から、直鎖状のポリアルキレンポリアミンであるのがより好ましく、融点が50℃以下で沸点が100℃以上となり、取り扱い性が良好になるという観点から、炭素数3〜6の直鎖状のアルキレンの両末端にアミノ基を有するポリアミンであるのが更に好ましい。
具体的には、上記で例示した各種ポリアミンのうち、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノルボルナンジアミンであるのが好ましい。
【0054】
本発明の組成物に用いられるケチミン化合物(B)としては、上記で例示した各種ケトンと、各種アミンとの組み合わせによるものが挙げられる。
具体的には、ジイソブチルケトン(DIBK)とテトラメチレンジアミン(TMDA)とから得られるもの;DIBKとヘキサメチレンジアミン(HMDA)とから得られるもの;DIBKとノルボルナンジアミンとから得られるもの;DIBKとトリメチレンジアミンとから得られるもの;エチル(2−メチルブチル)ケトンとHMDAとから得られるもの;エチル(2−メチルブチル)ケトンとTMDAとから得られるもの;エチル(2−メチルブチル)ケトンとトリメチレンジアミンとから得られるもの等が好適に例示される。
【0055】
また、本発明の組成物に用いられるケチミン化合物(B)は、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとを、無溶媒下、またはベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒存在下、加熱環流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることにより得ることができる。
【0056】
本発明の組成物は、上記ケチミン化合物(B)を、(上記ウレタンプレポリマー(A)中のNCO基)/(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜2、好ましくは0.7〜1.5となるように含有するものである。
なお、本発明の組成物が後述するエポキシ樹脂(C)を含有する場合には、本発明の組成物は、上記ケチミン化合物(B)を、(上記ウレタンプレポリマー(A)中のNCO基および上記エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基の合計官能基数)/(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜4、好ましくは0.7〜3となるように含有するものである。
【0057】
<ケチミン化合物(D)>
本発明の組成物に所望により用いられるケチミン化合物(D)は、下記式(2)で表されるケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物である。
【0058】
【化10】

【0059】
式中、R5およびR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基または水素原子を表し、R6は、メチル基またはエチル基を表し、R8は炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R8は、R5またはR6と結合して環を形成することができる。また、R8がR6と結合して環を形成し、更に、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、該環に含まれる炭素原子が、R6またはR8と二重結合で結合する場合、R7は存在しない。
【0060】
ここで、上記式(2)中、R8の炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、1−メチルプロピル基等が挙げられる。
また、上記式(2)中、R8が、R5またはR6と結合して環を形成する場合、形成されてなる環状炭化水素としては、例えば、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0061】
上記式(2)で表されるケトンとしては、具体的には、例えば、メチル−t−ブチルケトン(MTBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルシクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキシルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン等が挙げられ、上記式(2)で表されるアルデヒドとしては、具体的には、例えば、ピバルアルデヒド(トリメチルアセトアルデヒド)、カルボニル基に分岐炭素が結合したイソブチルアルデヒド((CH3)2CHCHO)等が挙げられる。
このようなケトン、アルデヒドは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、MTBK、MIPKが好ましい。
【0062】
一方、本発明においては、上記ケチミン化合物(D)の合成に用いられるアミンとしては、広く公知のものを使用することができ、上記ケチミン化合物(B)の合成に用いられるアミンとして上記で例示したものを用いることができる。
【0063】
このようなケチミン化合物(D)を含有することにより、得られる本発明の組成物の可使時間を調整、具体的には、可使時間を短縮することができる。そのため、本発明の組成物を低温乾燥下(例えば、冬期の乾燥下)で使用する場合には、上記ケチミン化合物(D)を上記ケチミン化合物(B)とともに含有することが望ましい。
【0064】
本発明の組成物は、上記ケチミン化合物(D)を含有する場合、上記ケチミン化合物(B)および上記ケチミン化合物(D)を、(上記ウレタンプレポリマー(A)中のNCO基)/(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合および上記ケチミン化合物(D)中のケチミン結合の合計)で表される当量比が0.5〜2、好ましくは0.7〜1.5となるように含有するものである。
なお、本発明の組成物が後述するエポキシ樹脂(C)を含有する場合には、本発明の組成物は、上記ケチミン化合物(B)および上記ケチミン化合物(D)を、(上記ウレタンプレポリマー(A)中のNCO基および上記エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基の合計官能基数)/(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合および上記ケチミン化合物(D)中のケチミン結合の合計)で表される当量比が0.5〜4、好ましくは0.7〜3となるように含有するものである。
また、本発明の組成物は、上記ケチミン化合物(D)を含有する場合、上記ケチミン化合物(B)および上記ケチミン化合物(D)の含有比率は特に限定されないが、(上記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)/(上記ケチミン化合物(D)中のケチミン結合の合計)で表される当量比が0.1〜10となるのが好ましく、0.2〜8となるのがより好ましい。
【0065】
<エポキシ樹脂(C)>
本発明の組成物に所望により用いられるエポキシ樹脂(C)は、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物からなる樹脂であれば特に限定されず、一般的に、エポキシ当量が90〜2000のものである。
このようなエポキシ樹脂(C)としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、更にナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、三官能型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
下記式(9)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;
【0066】
【化11】

【0067】
下記式(10)で表されるトリシクロ〔5,2,1,02,6〕デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;
【0068】
【化12】


式中、mは、0〜15の整数を表す。
【0069】
脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
上記で例示した各種エポキシ樹脂のうち、骨格に芳香環を有するエポキシ樹脂を用いるのが、得られる湿気硬化性樹脂組成物の物性(例えば、引張強度等)および接着性がより良好となる理由から好ましい。
また、このようなエポキシ樹脂(C)としては、旭電化工業社製のEP4100Eや、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート807、エピコート806、エピコート154、エピコート630等の市販品を用いることができる。
【0071】
本発明の組成物は、上記エポキシ樹脂(C)を含有する場合、上記エポキシ樹脂(C)を、上記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して0.5〜100質量部、好ましくは1〜90質量部含有するものである。エポキシ樹脂(C)の含有量がこの範囲であると、得られる本発明の組成物がウレタンプレポリマー(A)に由来する柔軟性を有しながら、エポキシ樹脂(C)に由来する接着性および引張強度を付与できるため好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、作業性調整の観点から、上記ケチミン化合物の加水分解触媒を含有するのが好ましい態様の一つである。
本発明の組成物に所望により用いられる加水分解触媒は、特に限定されず、その具体例としては、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸などのカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートなどのリン酸類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレートなどの有機金属類;等が挙げられる。
【0073】
本発明においては、このような加水分解触媒の含有量は、上記ケチミン化合物(B)および所望により添加される上記ケチミン化合物(D)の合計100質量部に対して0.01〜20質量部であるのが好ましく、0.05〜10質量部であるのがより好ましい。
【0074】
本発明の組成物は、シランカップリング剤を含有するのが好ましい態様の一つである。
本発明の組成物に所望により用いられるシランカップリング剤は、特に限定されず、その具体例としては、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシラン、ケチミンシランもしくはこれらの混合物もしくは反応物、または、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0075】
ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン等が挙げられる。
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メタクリルシランとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
イソシアネートシランとしては、例えば、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ケチミンシランとしては、例えば、ケチミン化プロピルトリメトキシシラン、ケチミン化プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
本発明においては、このようなシランカップリング剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマー(A)および所望により添加される上記エポキシ樹脂(C)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましい。シランカップリン剤の含有量がこの範囲であれば、本発明の組成物をシーリング材として用いた際の接着性がより良好となる理由から好ましい。
【0077】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記各種成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、安定剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
【0078】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、特開平9−263708号公報に記載の表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0079】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0080】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0081】
上記のような各成分から本発明の組成物を製造する方法は、特に限定されないが、上述したウレタンプレポリマー(A)およびケチミン化合物(B)ならびに所望により添加するエポキシ樹脂(C)、ケチミン化合物(D)および各種添加剤を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法が挙げられる。
【0082】
本発明の組成物は、湿気硬化型であり、1液型の組成物として使用することができる。また、必要に応じて、ウレタンプレポリマー(A)を主剤(A液)側とし、ケチミン化合物(B)を硬化剤(B液)側とした2液型の組成物として使用することもできる。
また、本発明の組成物は、湿気にさらすと、ケチミン化合物の加水分解により生起するアミン化合物により硬化反応が進行するが、適宜水分を供給して、硬化反応を進行させることもできる。
【0083】
本発明の組成物は、以上のような特性を有することから、外壁のパネルとパネルまたはタイルとの間や窓のサッシとガラスの間などに使用される建築用シーリング材、コンクリートやモルタル中の構造用接着剤、ひび割れ注入材等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0084】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
<ウレタンプレポリマーA1>
ウレタンプレポリマーA1として、数平均分子量3,000の2官能PPG(エクセノール3020、旭硝子社製)および数平均分子量5,000の3官能PPG(エクセノール5030、旭硝子社製)の質量比1:1の混合物と、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、日本サイテックインダストリーズ社製)とを、イソシアネート基/水酸基(水酸基1個あたりのイソシアネート基の基数)(以下、「NCO/OH」という。)=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間反応させて得られたウレタンプレポリマー(イソシアネート基含有量:2.2質量%)を用いた。
【0086】
<ウレタンプレポリマー1>
ウレタンプレポリマー1として、数平均分子量3,000の2官能PPG(エクセノール3020、旭硝子社製)および数平均分子量5,000の3官能PPG(エクセノール5030、旭硝子社製)の質量比1:1の混合物と、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを、「NCO/OH」=2.0となる当量比で混合し、スズ触媒の存在下、窒素気流中、80℃で8時間反応させて得られたウレタンプレポリマー(イソシアネート基含有量:2.28質量%)を用いた。
【0087】
<エポキシ樹脂C1>
エポキシ樹脂C1として、汎用ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEP4100E(東都化成社製、エポキシ当量188)を用いた。
【0088】
<ケチミン化合物B1>
ケチミン化合物B1として、ノルボルナンジアミン(NBDA)と、上記式(8)で表されるジイソブチルケトン(DIBK)とを、モル比が1:4となるように、共沸溶媒として用いるトルエンとともにフラスコに添加し、生成する水を共沸により除きながら160℃で20時間反応させることで合成したケチミン化合物を用いた。
【0089】
<ケチミン化合物B2>
ケチミン化合物B2として、ノルボルナンジアミン(NBDA)の代わりにヘキサメチレンジアミン(HMDA)を用いた以外はケチミン化合物B1と同様の方法により合成したケチミン化合物を用いた。
【0090】
<ケチミン化合物B3>
ケチミン化合物B3として、ジイソブチルケトン(DIBK)の代わりに上記式(7)で表されるエチル(2−メチルブチル)ケトンを用いた以外はケチミン化合物B2と同様の方法により合成したケチミン化合物を用いた。
【0091】
<ケチミン化合物D1>
ケチミン化合物D1として、ジイソブチルケトン(DIBK)の代わりにメチルイソプロピルケトン(MIPK)を用いた以外はケチミン化合物B1と同様の方法により合成したケチミン化合物を用いた。
【0092】
<ケチミン化合物D2>
ケチミン化合物D2として、ノルボルナンジアミン(NBDA)の代わりにヘキサメチレンジアミン(HMDA)を用いた以外はケチミン化合物D1と同様の方法により合成したケチミン化合物を用いた。
【0093】
<ケチミン化合物1>
ケチミン化合物1として、メチルイソプロピルケトン(MIPK)の代わりにジ−n−ブチルケトン(DBK)を用いた以外はケチミン化合物B1と同様の方法により合成したケチミン化合物を用いた。
【0094】
(実施例1〜14、比較例1〜6)
上述した各組成成分を、下記表1に示す成分比(質量部、当量比)で配合し、各組成物を調製した。得られた各組成物について、以下に示す貯蔵安定性、可使時間および接着性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。なお、比較例3で得られた組成物はゲル化のため測定不能となり、下記表1には「−」と表記した。
【0095】
<貯蔵安定性>
貯蔵安定性の評価として、得られた組成物の調整直後および貯蔵後の粘度の比(増粘率)を調べた。
増粘率(倍)は、得られた各組成物の調整直後および23℃2ヶ月貯蔵後のぞれぞれについて、E型粘度計を用いて、23℃下、回転速度10rpm下で粘度(Pa・s)を計測し、(23℃2ヶ月貯蔵後の粘度)/(調製直後の粘度)により求めた。なお、下記表1中、「>2.0」は、増粘率(倍)が2.0倍超であったことを示す。
ここで、貯蔵安定性は、増粘率が2.0倍未満であれば優れていると評価できる。
【0096】
<可使時間>
可使時間(時間)は、得られた各組成物の調製直後および23℃2ヶ月貯蔵後のぞれぞれについて、40℃・60%相対湿度下において、硬化物表面のタックがなくなるまでの時間を計測した。なお、下記表1中、「>12」は、可使時間が12時間超であったことを示し、「<1」は、可使時間が1時間未満であったことを示し、「ゲル化」は、ゲル化により計測不能であったことを示す。
ここで、可使時間が2時間以上であれば、作業性等に優れていると評価できる。
【0097】
<接着性>
接着性は、得られた各組成物を用いて、2枚の陽極酸化アルミニウム板(サイズ:100mm×25mm×1.6mm)の接着を行った。具体的には、得られた組成物をアルミニウム板にビード状(幅:5mm程度)に厚さ5mmとなるように塗布した。
塗布後、室温下で1週間硬化させた後、硬化後の組成物を手で剥離した際のはく離状態を目視により確認した。下記表1中、はく離の状態をCF(凝集破壊)、AF(界面はく離)で示した。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】


【0100】
表1に示す結果より、実施例1〜14に示す組成物は、比較例1〜6の組成物に比べ、貯蔵安定性および可使時間ならびに接着性がいずれにも優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー(A)と、下記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(B)とを含有し、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内の全てのイソシアネート基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有し、
前記ケチミン化合物(B)を、(前記ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基)/(前記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜2となるように含有する、湿気硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよい。)
【請求項2】
ウレタンプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(C)と、下記式(1)で表されるケトンとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(B)とを含有し、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内の全てのイソシアネート基が第二級炭素または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有し、
前記エポキシ樹脂(C)を、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して0.5〜100質量部含有し、
前記ケチミン化合物(B)を、(前記ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基および前記エポキシ樹脂(C)中のエポキシ基の合計官能基数)/(前記ケチミン化合物(B)中のケチミン結合)で表される当量比が0.5〜4となるように含有する、湿気硬化性樹脂組成物。
【化2】


(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよい。)
【請求項3】
更に、下記式(2)で表されるケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物(D)を、前記ケチミン化合物(B)と併せて前記当量比で含有する、請求項1または2に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【化3】


(式中、R5およびR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基または水素原子を表し、R6は、メチル基またはエチル基を表し、R8は炭素数1〜6のアルキル基を表す。ただし、R8は、R5またはR6と結合して環を形成することができる。また、R8がR6と結合して環を形成し、更に、カルボニル基のα位の炭素原子のうち、該環に含まれる炭素原子が、R6またはR8と二重結合で結合する場合、R7は存在しない。)
【請求項4】
前記式(1)で表されるケトンが、下記式(3)で表されるケトンである、請求項1〜3のいずれかに記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【化4】


(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。R3およびR4はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表し、いずれか一方は水素原子であってもよく、複数のR3およびR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記アミンが、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンである、請求項1〜4のいずれかに記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミンが、直鎖状のポリアルキレンポリアミンである、請求項5に記載の湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミンが、炭素数3〜6の直鎖状のアルキレンの両末端にアミノ基を有する、請求項6に記載の湿気硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−169490(P2007−169490A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369629(P2005−369629)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】